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[12818] SDH欠損GIST治療薬 ― 高い可能性を示す二相治験結果のポスター発表 Sunny北加 - 2025/05/03(土) 14:37 -

昨日LRG Scienceからメールが届きました。それのGoogle翻訳にちょっと手を加えました。

Fibroblast growth factor receptor (FGFR) inhibition demonstrates anti-tumor activity in succinate dehydrogenase deficient gastrointestinal stromal tumor (SDHd GIST)

ポスター発表 - 募集要項|2025年4月25日
要旨 CT215:
FGFR阻害はSDH欠損GIST(SDHd GIST)における抗腫瘍活性を示した

要約
背景:

SDHd GISTは、SDH複合体サブユニット遺伝子またはSDHCプロモーターのメチル化の変異によって定義され、ゲノム全体のDNA過剰メチル化を引き起こす。過剰なメチル化がゲノム インシュレーターとクロマチン トポロジーを破壊し、発癌性リガンドであるFGF3およびFGF4の異常な産生と、主にFGFR1を介した下流シグナル伝達を誘導することが最近の研究で示されている。前臨床研究でFGFR阻害が腫瘍の増殖を抑制することが示された。我々はSDHd GISTの患者由来異種移植(PDX)モデルにおいてFGFR阻害薬(FGFRi)の潜在的なクラス効果を評価するため、追加のFGFR阻害薬(FGFRi)を評価し、進行期SDHd GIST患者を対象としたFGFRiの第II相試験を実施した。

方法:
FGFR阻害薬ロガラチニブおよびペミガチニブを、SDHd GIST PDX(PG-20)において個別に評価し、対照薬、スニチニブ、およびレゴラフェニブと比較した。投与は28〜35日間毎日行い、増殖率を評価した。進行期SDHd GISTにおけるロガラチニブの多施設共同第2相試験(NCT04595747)が実施された。患者はロガラチニブ800 mgを1日2回投与された。主要評価項目はRECIST 1.1による奏効率であり、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)および忍容性であった。探索的研究として試験対象患者の腫瘍サンプルの全エクソーム シーケンスおよびRNAシーケンスが行われた。

SDHd PDXモデルの評価:ロガラチニブまたはペミガチニブのいずれかの投与後には有意な腫瘍増殖抑制が認められたが、スニチニブまたはレゴラフェニブでは認められなかった。臨床試験にはSDHd GIST患者24名が登録され、そのうち50%にSDHA遺伝子変異が認められた。
前治療歴の中央値は1回(範囲:0〜6回)。
最終データカット時点の追跡期間の中央値は17.8か月(95%信頼区間:13.4〜NA)、
9名がロガラチニブ治療を継続中である。

最良奏効率: (比較参考 イマチニブの治験結果
ロガラチニブ   イマチニブ
部分奏効(PR)10名(41.7%) 79名(53.7%)
病勢安定 12名(50%) 41名(27.9%)
PFS中央値 31.1か月 24週間の追跡調査後も奏効期間の中央値には達していなかった

有害事象(AE)は、ほとんどがグレード1および2で、FGFR阻害剤に典型的な症状であった。
高リン血症(84%)、疲労(52%)、脱毛症(52%)、下痢(45%)、吐き気(45%)だった。
2名以上の患者に認められたグレード3のAEは、高血圧、下痢、呼吸困難。
グレード4/5のAEはなし。

RNAseqでは、前臨床モデルと一致して、FGF3およびFGF4の発現増加が示された。
客観的奏効率はSDHサブユニットの変化とは無関係であった。

結論:
FGFR阻害薬はSDHd GISTにおいて顕著な活性を示した。前臨床データはこれがFGFRを阻害する薬剤のクラス効果であることを示唆している。この研究はSDHd GIST 患者のエピジェネティックな変化から生じる異常な FGFR シグナル伝達を標的とすることを支持するものです。

私のコメント:
SDH欠損GISTは全GISTの5%ー10%ほどの発生頻度ですから、小数の患者さん対象の第二相治験結果ですが、イマチニブの治験と比較できるほど良い結果だと感じています。ロガラチニブはBayer社が開発した薬です。2018年にBayer Yakuhinがスポンサーで日本人対象に 開発薬名BAY 1163877、後のロガラチニブの第T相の治験をしています。
An open label, Phase I study to evaluate the safety, tolerability, pharmacokinetics and efficacy of BAY 1163877 in Japanese subjects with refractory, locally advanced or metastatic solid tumors
確認できませんでしたが、日本のバイエル薬品社がロガラチニブを開発した可能性が高いと感じました。
しかし、Bayer社の2021年のAnnual Report、52ページに
“In February 2022, Bayer decided not to pursue further development activities for rogaratinib, a
pan-FGFR inhibitor, for the treatment of different types of cancer.”
「2022年2月、バイエルは、汎FGFR阻害剤であるロガラチニブについて、さまざまな種類の癌の治療を目的としたさらなる開発活動を追求しないと決定した」ーと明記されています。

それが理由か、このSDH欠損GIST患者対象のロガラチニブ治験のスポンサーはBayer社でなく、National Cancer Institute、アメリカの国立がん研究所です。治験医も著明なGIST治療医の羅列です。第II相ですがSDH欠損GIST患者対象の良好な治療効果を鑑み、ロガラチニブがSDH欠損性GISTの第一線薬としてファストトラックされることは予言されていると感じるのですが。

好奇心から特許は?と調べたら、「新規用途特許」とNational Cancer Instituteともしかして治験医に与えられるでしょう。もちろん、新薬特許はバイエル製薬のものでしょう。

Qinlock (Ripretinib)やAyvakit (Avapritinib)らのようにヴェンチャー企業の薬品でなく大製薬社、バイエルで、もしも日本バイエル製薬社の開発薬であれば日本でも入手可能になりやすい? 早くSDH欠損GIST患者さんらの良い新治療薬になりますように。

[12820] ありがとうございます Yuna - 2025/05/09(金) 09:06 -

Sunny北加さん、大変貴重な情報をありがとうございます。10代の子供がSDH欠損型Gistと診断されており、薬の開発状況を常に気にしておりました。

アメリカで承認されても、国内で使えるようになるには、多くの山があり、何年もかかるものなのかな、と思っていましたが
「バイエルで、もしも日本バイエル製薬社の開発社であれば日本でも入手可能になりやすい? 」というところが光に思えました。使えるようになるといいです。。
状況を注視していきたいと思います。

SDH欠損型は情報も少なく、Life RaftやFacebookのSDH Cancer Supportなどで追っていますが、全部を追い切れてなく・・・。事務局のみなさんからの情報やSunny北加さんの過去の投稿も何度も読んでいます。また新しい情報ありましたら教えていただけると大変助かります。ありがとうございます。

[12821] 二つのSDH欠損GIST治療薬が第三相治験に登録されています。 Sunny北加 - 2025/05/09(金) 12:45 -

Yunaさん、

GIST全体の5-10%の頻度のSDH欠損GISTですから、レスポンスがないのかなーと思っていました。お役に立てれば嬉しいです。

このポストをする前に調べ、中国で開発され、中国ですでにCML治療薬として承認されているolverembatinibがSDH欠損GIST治療薬としての第二相治験結果(2024 ASCO Annual Meeting) のAbstractをみつけました。

Updated efficacy results of olverembatinib (HQP1351) in patients with tyrosine kinase inhibitor (TKI)-resistant succinate dehydrogenase (SDH)-deficient gastrointestinal stromal tumors (GIST) and paraganglioma.
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2024.42.16_suppl.11502

この薬のSDH欠損GIST患者さんへの臨床的有益性率(CBR;完全奏効[CR] + PR + SD > 4サイクル)は92.3%(24/26)で、最長治療期間は40か月―と書かれていました。詳細は書かれていませんが、まともに受ければBayer社のロガラチニブに優る、少なくとも劣らないでしょう。

アメリカのClinical Trial登録サイトにSDH Deficient GIST, Phase IIIと検索したら、両者の薬が第三相治験と登録されていました。

NCT06640361Recruiting
A Study of Olverembatinib in SDH-deficient GIST.
https://clinicaltrials.gov/study/NCT06640361?cond=SDH-deficient%20GIST&rank=1&tab=table
研究完了日(推定)2029年6月30日 

もう一つ、ロガラチニブも第三相治験の登録がされたばかりでしょう。下以上の詳細はみつかりませんでした。

NCT04595747 Active, not recruiting
Testing the Anti-cancer Drug, Rogaratinib (BAY 1163877), for Treatment of Advanced Sarcoma With Alteration in Fibroblast Growth Factor Receptor (FGFR 1-4), and in Patients With SDH-deficient Gastrointestinal Stromal Tumor (GIST)

少なくとも、これら二つの薬が第三相治験に入っていますから、SDH欠損GISTの治療薬の曙も近いと感じてよいでしょう。御子さんに良報でしょう。頑張ってもらってください。

[12822] 大変有益な情報 にゃおは - 2025/05/10(土) 12:26 -

Sunny北加様

いつも貴重な情報を分かりやすくお伝え頂き、大変感謝しております。

昨年2024年、10年ぶりにGIST再発し、現状肝臓に転移している状況で、ゲノム検査等も全て行った結果、いわゆるSDH欠損のwild Typeで効果的な薬剤が無いという判定で、現状は経過を観察するしかないような状況でした。幸いにして進行が遅く、1年経過した今も腫瘍サイズにはそれほど変化が見られないのですが、SDH欠損型の患者も少なく、情報が乏しく不安な中で、このSunny北加様のレポートは、私にとって大変勇気づけられるニュースとなりました。

SDH欠損型はGISTの中でもさらに稀なので、一般的なメディアやニュースではこれらの情報がピックアップされることはほぼない中、一筋の光が見えた気がしました。

依然ドラッグロスの分厚い壁が日本にあることや認可までの道のりが平坦でないこと理解しつつも、第三相治験に至っている点などが知れるだけで、正直すごく元気が出ます。

見ず知らずの私達にいつも親切丁寧にコメントをくださったり、海外のレポートを私のような素人でも分かるように解説してくださる、Sunny北加様の存在が大変心強く、改めて感謝をお伝えさせて頂きたくコメント致しました。本当にありがとうございます!

[12823] わたしもWildTypeで、大変参考になります。 おっちゃん - 2025/05/10(土) 16:39 -

Sunny北加様

 またまた貴重なご教示をありがとうございます。
 2023年に胃GISTを切除し、35mmで小さかったものの核分裂が91/50HPFという高リスクのため、イマチニブを服用中です。その後、再々希望して遺伝子検査をしてもらったら、Exson9,11で変異を認められない、WildTypeのようでした。SRL社の検査だったため、SDH欠損型かどうかは判明しませんでした。
 このとき、Sunny北加様の資料が大変役立ち、「WildTypeは進行が遅い」というデータに望みを掛けて、細々と暮らしています。あと1年で標準治療が終わりということで、イマチニブも終了でしょうが、その後、再発の可能性が大きいらしいので悩んでいました。
 皆さまのご助言を参考に、今後も頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。

[12827] 勇気づけられます Yuna - 2025/05/19(月) 23:11 -

Sunny北加様

olverembatinibの情報もありがとうございます。見覚えがある、と思い振り返ったところ、SDH Cancer SupportのFacebookにも以下が投稿されていました。
https://gisttrials.org/iLRG/details.php?Trial=413#
メルボルンでも行われているんですね。

そして以下のリリースも見つけました。多少の好影響はあるでしょうか・・・
https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2024/takeda-signs-option-agreement-with-ascentage-pharma-to-enter-into-exclusive-global-license-for-olverembatinib/

長く、治療法がない、薬がないと言われてきたSDH欠損型ですので、少しでも光となる情報は救われる思いです。

なかなか自分たちだけではキャッチできないので本当に助かります。
子供にも伝えます!

[12828] 共にがんばりましょう Yuna - 2025/05/19(月) 23:19 -

にゃおはさん
おっちゃんさん


わたしは患者の家族(親)ですが、こうして書き込みがあり、がんばっていらっしゃる方がいるだけで励みになります。

国内で薬が使えるようになるには、まだまだ壁がありますが、道がないわけではないですよね。

わが子が属するAYA世代の場合、PARTNER試験制度というのも始まったようで(薬は限定的ですが・・・)、少しずつドラッグロスの解消の動きはでてきているのかなと思っています。

共にがんばっていけたらと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。




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