21歳 男 東京 背中をまるめてうずくまっていると、その背中ヘむけて大きな釘が打ちこまれていく。大きいといっても目に見えないほと大きいのだ。金槌で釘を打ちこんでいる人がいるらしいのだが、その人は見えない、私は胸の内があまりにも痛く、その痛さに耐えきれずに、うずくまった恰好のまま、首だけ後ろにまわす。と、釘を打ちこんでいる人の顔がうっすら見えた。その顔の前を薄い雲が通りすぎると、すこしはっきりした。母の悲愁の顔だった。あ、と私は大きい声をたて、とてもおそろしくなり、また背中をまるめると、背中にがあんがあんと釘が打ちこまれていく。ゆるやかなリフレーンのような動きである。それに合わせてこんな声が聞えてくる、卓蔵さん、わたしはね、あなたが途中で気づいてくれるのを待ってたの、そう、四回目の時と五回目の時と六回目のときですよ。わたしはあなたに合図をしたでしょ、あれがわかりまちんでしたか、けれどもあなたは気づかずに七回目まで続けました、だから、わたしはもう死なざるをえませんわ、卓蔵さん、卓蔵さん
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