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昨年のUK/ユーロ・ツアー、南米/メキシコ/カリフォルニア・ツアーでは、「電気レイラ」はおろか、「アコギ・レイラ」「ワンダフル・トゥナイト」というECライヴ定番曲が一度も演奏されなかった。いずれもパティ絡みの曲であることから、海外の一部のファンのあいだでは、ツアーに先立つ3月、ロンドン、クリスティーズ開催のオークションで、パティが多数の所有物を競売に出し、そのなかにエリックが彼女に宛てて出したラブレターを含むプライベートな物件が含まれていたことに彼が腹を立てたからだ、という推測が流れた。充分ありうる話だと思う。ユーロ・ツアー最終日のルッカからあと、かつての「ワンダフル・トゥナイト」の定位置で、パティとの関係の終わりを振り返る「オールド・ラヴ」がずっと歌われているのも、そんな印象を強める。
ここからしても、この先「電気レイラ」が登場する可能性は低そうに私には思える。人間気が変わることもあるので、シレッとした顔で演奏することがないとは言えないが(笑)。
[写真=フランス人画家の手になる、アルバム『レイラ』のジャケットに流用された原画。オークションに出されたアイテム中最高額、£1,976,000(当時のレートで約3億8千万円!)で落札された]
https://onlineonly.christies.com/s/pattie-boyd-collection/eric-clapton-derek-dominos-34/211875?ldp_breadcrumb=back
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「愛してます」
投稿者:ブルー爺
投稿日:2025年01月15日 (水) 11時10分
No.9607
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左は競売物件の一部。
1979年日本公演中、滞在先のホテルからエリックがパティに送った絵葉書。上と下が大阪プラザホテル(消印大阪12月2日)、真ん中が西鉄グランドホテル(消印福岡12月1日)。ECは11月30日に北九州市の新日鉄大谷体育館、12月1日に大阪府立体育館で公演を行なっているので、公演日の夜か、翌日ホテルをチェックアウトする前後にこれらを投函したものと思われる。会場は北九州市だが福岡に宿泊していたことも分かる。
「絵理久」=エリック、「蔵父頓」=クラプトン 、「根利衣」=ネリー(Nellyはパティの愛称)。
ホテルの部屋で参考書と首っ引きで漢字の筆記に挑んでいるエリックの姿が目に浮かぶ。3枚セットで競売に掛けられ、6,300ポンドで落札された。
たぶん終活を見据えてのこととは思うが、こういう個人的な思いの込められた品物を売りに出すかね普通。デリカシーなさすぎと感じるのは私だけだろうか。
https://onlineonly.christies.com/s/pattie-boyd-collection/lots/3508?page=2&sc_lang=en&sortby=LotNumber
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「あらクラプトンって字も上手いのね」
投稿者:ブルー爺
投稿日:2025年01月15日 (水) 23時10分
No.9608
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話は脇道に逸れるが、ここでトリビアを少し。
左は、エリックがパティに書いて送った手紙(落札価格107,100ポンド)。封筒も一緒に競売に出されていて、消印はTEESSIDE1970年10月5日となっている。ティーズサイドとは英国北西部、北ヨークシャーのティーズ川沿い、ミドルズバラ周辺一帯を指し、ドミノズは10月4日に同地域内の海辺保養地、レドカーで公演しているので、その旅先で投函されたものと分かる。 ”Dearest L……”で始まる(”L”とは”Love”または”Layla”を指しているのだろう)その文面に注目してほしい。クラプトンという人はたいそう字が上手い。ひとことで言うと「達筆」なのである。
欧米人が書く肉筆の字って、美意識みたいなものが余り感じられなくて、実用一点張り、読めればいいみたいな感じのが多い。いや、読むのに困難を伴うこともしばしば、単語の綴りを判読するのも一苦労だったりする。習字、書道(現在では書写というらしい)が義務教育の授業に取り入れられている日本と違って、綺麗な字を書こうという風習が発達しなかったのかな、と思ったり。そんななかで、クラプトンの字の上手さは際立っている。
クラプトンについて書かれた記事や書物で、この点に言及したものは皆無に近い。自分の見知る範囲では、Christopher Sandford著『Clapton: Edge of Darkness』(1994年初版/未訳)一冊があるのみ。いま手元にないが、サッと一筆したためるだけで、それがそのままカリグラフィーとしてプレゼントに使えるレベル、みたいな記述があった。
世の名だたるギタリストがみんな字が上手いかというと、別にそういうことはないので、これはやっぱり才能というほかないだろう。あのルックスで、あのギターが弾けて、字が上手い。神様はなんて不公平なんだ(笑)。
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君の名は「レイラ」
投稿者:ブルー爺
投稿日:2025年01月16日 (木) 00時48分
No.9610
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トリビアを続ける。
かなり前から気付いていたのだが、ある世代からこっち、日本で女の子に「レイラ」と名付ける親が一定数出てきた。この場合、親のどちらか一方(お父さんが多そう)または両方がクラプトンのファンであると見て、まず間違いない。漢字表記には、「玲麗」「玲羅」「麗羅」等が用いられ、どことなくキラキラネーム風。
去年8月、ウェールズの首都、カーディフでの体験。商店が並ぶ道路沿いの通りを昼間歩いていたら、背後でいきなり「レイラ! レイラ!」と叫ぶ女性の大声がした。驚いて振り向くと、中近東系の家族連れがいて、お母さんが小学生ぐらいの女の子に歩道をはみ出して車に跳ねられないよう注意しているらしかった。
クラプトンが曲作りの着想を得た悲恋物語『ライラとマジュヌーン』がペルシャの古い創作物であることからも分かるように、「ライラ=レイラ」はもともとはアラビア語で「夜」を意味していて、英語起源の言葉ではない。英国に多くいる中近東からの移民が子どもをそう名付け、日常会話で用いているであろう英語の読み「レイラ」で呼びかけても、何の不思議もない。彼らこそがオリジナル・ユーザーであって、日本人のように名付けに際しての余計な理由は要らないわけだ。
http://laylaandmajnun.org/hermitage-gallery
[写真:『ライラとマジュヌーン 』(東洋文庫 394)]
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最後の「電気レイラ」?
投稿者:ブルー爺
投稿日:2025年01月16日 (木) 01時46分
No.9611
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話を元に戻す。
「電気レイラ」は2009年を最後に日本では長年演奏されず、その後は2019年初日と2023年の日程前半3日間にやっただけなので、もう一度聴きたい人の気持ちは理解できる。私自身は近年、2019年と2022年のRAHで計3回体験して、是が非でも、という気持ちはない。そりゃやってくれれば嬉しいが、やらなきゃやらないで、まっ、しゃーねーか、ぐらいの感じ。2023年来日で「電気レイラ」に当たらなかったときがそんなふうだった。
が、今後いっさいお披露目されないとなると、話は別である。前回来日が「電気レイラ」公の場での最後の演奏になってしまう可能性が出てきたからだ。その後の物事の成り行きで、そのときと今とでは気持ちが変わってくる。
それも今後の公演で「電気レイラ」が演奏されれば気持ちはまた冷めるんだけどね(笑)。
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