海堂のメニュー、そろそろ変えないとな
部活前に乾が漏らした一言を思い出す。
今、もしかして考えてるのか?
自主練で残っている自分の他に部室の明かりが点いてるのは誰かがいる証拠。
海堂は深く息を吐きタオルで汗を拭きながら部室へ足を向けた。
「・・・・・ん?もう終わったのか?」
「・・・ス」
部室にはやはり乾がいた。
パイプイスに長い足を組みノートを広げている。
海堂が視線をそこにやると乾が、ああ、と顔を上げた。
「もうすぐ出来るよ」
「・・・」
小さく首だけを下げる海堂。
そしてクルリと背を向けロッカーを開けて着替え始める。
汗で張り付いたランニングシャツを脱ぎ上半身を外気にあてる。
ふぅ、と息を吐いた時に何かが足元に転がってきた。
「あ」
「・・・・?」
海堂の足元に転がってきた何かは海堂の靴に当たりロッカーの下の隙間に入ってしまう。
「すまん、消しゴム・・・とれるか?」
「ウス」
海堂は小さく頷いて身を屈めた。
「悪いな、海ど・・・・・・・・・う」
乾は海堂に近寄ろうとして思わず口元を押さえた。
今の海堂の格好に固まる。
地べたに張り付きロッカーの細い隙間に手を差し入れている為に高く上げられた腰。
しかも上半身裸で白いハーフパンツからはギリギリのラインまでスラリとした長い足を露にしている。
精一杯に手を伸ばそうとして乾の前にある小さなお尻がフリフリ揺れる。
乾は動かない。
いや、動けなかった。
何故ならそこは海堂の悩ましげな格好を眺めるベストポジションだったからだ。
乾の目の前で可愛らしく揺れるお尻。
しかも高く突き出されていて。
自分の目の前に腰を突き出していて!!
「か・・・・・・海堂、取れそうか・・・・?」
「・・・んっ・・・・・んっ・・・・」
「!!!!」
そうそう、狭い所に入り込んだ何かを取る時、思いっきり手を伸ばすと何故か声が漏れる。
漏れる・・・・漏れる、が!!
乾は眩暈を覚えた。
(頼むから・・・俺の目の前でそんな格好でそんな声を出さないでくれ・・・・!)
在らぬところに急激に血が集まってしまう。
そんな乾にお構いなしに海堂は必死になって消しゴムを取ろうとしている。
お尻が、フリフリフリ
「んっ・・・・くっ・・・」
お尻が、フリフリフリ
「あっ・・・・・チッ・・・・・」
(落ち着け、落ち着け貞治。軽くデータにない事が起きたくらいで取り乱すな落ち着け)
フリ、フリ、フリ
「あ・・・・も・・・・すこ、し・・・・」
(もう少しなんだ海堂!!!もう少し具体的に何をして欲しいんだ!!??)
軽くデータにない事が起きたくらいで軽くトリップしてしまう乾だった。
「!」
乾を夢中にさせた可愛い海堂のお尻がピタリと止まる。
「取れたっス・・・・!」
どこか目をキラキラさせて振り向いた海堂の姿に乾はボールを拾ってきた子犬の嬉しそうな姿を思い出した。
(殺す気か・・・海堂!俺を悶え殺す気か・・・・!)
思いっきり胸を鷲掴みされた気分だ。
某CMのチワワを思い出した。
だがそんな事を思っているとは全く表情に出さず、ありがとう、と言う乾。
海堂は小さく頷いてまた着替えに戻る。
このまま
このまま本能に従って襲ってしまいたい
だがその後のことを考えれば当然出来るはずもない。
今はまだ我慢だ。
自分は今、良い先輩の立場としている。
もう少し
もう少し海堂の心を開いて。
もう少し海堂の中へ入り込んで。
もう少し、もう少し、海堂との距離を縮めれば・・・・
自分は今、いいポジションにいる。
今のところ自分がベストポジションにいるはずだ。
チラリと海堂の隣の桃城のロッカーに目をやる。
だが油断は出来ない。
今の自分がベストポジションならアイツはしっかりとセカンドをキープしている。
負けられない。
「じゃ、帰るっス・・・・・」
「ああ、海堂。もうすぐ出来るんだコレ・・・一緒に帰らないか?」
「・・・いいっスよ」
とりあえず乾は固く決意をする。
次はシャーペンを転がそう!