[559] 人殺しと呼ばれた少年(前編) |
- 闇ツルギ - 2008年09月08日 (月) 02時13分
「・・・ここがタマムシ大附属学校か・・・。」
入学式のことだった。たくさんの生徒で賑わう中、左目に眼帯をした少年が1人ポツンと立っていた。名をユウキという。この少年どちらかというと少女のような顔つきをしており、体つきもがっしりした方ではないのでいじめられそう感じだが彼はここ数年いじめられることはなかった。むしろ、恐れられていた。ある事件以来・・・。
人殺しと呼ばれた少年(前編)
「・・・またいじめられたのか。」
「うん・・・。」
小学生のときだった。このときはユウキもよくいじめられたいた。それを慰めていたのが幼なじみのコウという少年だった。
「なんでいつもやられっぱなしなんだよ、くやしくないのか?」
「だって・・・こわいし・・・。」
「本当にお前は臆病だな・・・だからお前に剣道教えたのに・・・。実際お前は俺よりも上達しているんだからもっと自信を持ったほうがいいぞ・・・ほら、もう泣くなよ・・・。」
コウとはお互いに幼い頃に両親を亡くしたということで昔から仲がよかった。親友・・・というよりも兄弟のような仲でいつもユウキがいじめられると助けてくれた。コウがいるからどんなにいじめられてもユウキはくじけることはなかった。いつまでもコウは自分のそばにいてくれると思っていた。しかしそれは数ヵ月後に突然終わった・・・。
「・・・・・痛!」
誰もいない調理室でのことだった。ユウキは数人に囲まれてまた暴力を受けていた。・・・そこへコウが現れた。
「なにしてるんだよ、お前ら!・・・ユウキ大丈夫か?」
「うう・・・。」
「お前らこんなことして楽しいのかよ!」
「うるせえ!ムカつくんだよ、こいつ見てると!」
「そうだ!男のくせになよなよしやがって。」
「だからっていじめていいのかよ!」
するとその中の1人が言った。
「やっぱり親がいないからこんなふざけたやつになるのかな・・・。」
「なんだと・・・?」
その言葉にユウキも反応した。
「まあ、どうせこいつが子供なんだからろくでもない親なんだろうけどよ!」
「このやろう、言わせておけば・・・。」
少年たちは冷たく笑った。その時ユウキが何か呟いた。
「何だよ、何か言いたいことでもあるのか!?」
再びユウキを殴ろうとした。・・・がユウキはそれを受け止めた。
「・・・・・・・・・・・・・・うな。」
「な、何だこいつ・・・。」
「2度と・・・父さんと母さんの悪口を言うな!!」
怒鳴ったかと思うとそばにあった引き出しから包丁を取り出しいきなり少年たちの一人を切りつけた。あたりに血がまき散った。
「う・・・うわああああ、血が!!」
「おい、こいつやばいぜ・・・。」
「早く逃げるぞ!」
「逃げるな!!殺してやる・・・お前ら全員殺してやる!!」
再び少年たちに向かっていったがコウがそれをとめた。
「ユウキ、やめろ!」
「どけ!!あいつら・・・許さない!!」
「だからって殺せばいいってわけじゃないだろ!」
「うるさい!!」
何とかコウはユウキから包丁を取り上げようとするがかなり暴れているためなかなか取り上げることができなかった。しばらく間争っていた。・・・そして最悪の事態が起きた。・・・コウの腹のあたりに包丁が刺さってしまった。かなり深く刺さったようでみるみるうちに床が赤く染まっていく・・・。ユウキは今ので大人しくなった。
「コ・・・・コウ・・・?」
「ユウ・・・・・良か・・・・。」
今の状況にユウキは言葉が出なかった。今、何が起こってるのか理解できなかった。ただ震えていた。
「どんなに・・・・・怒って・・・・・殺しは・・・・・駄目・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・ウキ・・・・俺・・・・・・お前のこと・・・・・。」
コウのからだから力が抜けた。突然しゃべらなくなった。
「・・・・コウ・・・・・コウ?」
どんなに話しかけても友は答えなかった。呼吸もしてなかった。友は完全に息絶えた・・・。
「コウ・・・・。」
信じたくなかった。これはきっと夢なんだ。そう思いたかった。しかしあまりにも現実的だった。コウは死んだ。自分のために・・・自分のせいで・・・・。
「嘘だ・・・・嘘だあああああ!!」
それからしばらくユウキは数年間学校に行くことができなかった。・・・そしてそれから何年かたった後再び学校に行きはじめた。もうユウキをいじめる人は1人もいなかった。だが、話してくれる人もいなかった・・・。目線が会うと同級生も先生も目をそらして自分から離れていった・・・。離れたときかすかに聞こえた。
「あんなことしてよく学校これるよな。」
「人殺しが・・・。」
・・・がユウキが睨みつけるとすぐに逃げていった。まだどこかにコウがいる気がした。・・・しかしどこにもコウはいなかった。親もいない・・・友もいない・・・・ユウキは完全に1人ぼっちになってしまった。誰もいないところで顔も覚えていない両親と優しかった親友を思ってユウキは泣いた・・・。
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