タマムシ大附属学校
ポケモンのオリトレ小説、学園パラレル企画掲示板。
要するに、オリトレ達のドタバタ学園コメディ(待て)。
物語がどう突き進むかは全く不明ですが、何はともあれ楽しみましょう。
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[402] 学園ネタ読み切り(5)「破局すべき契りの符(フラグ・ブレイカー)」 |
- アット - 2008年02月17日 (日) 00時47分
今回からは、新エキスパション・ブロック。 宝具『破局すべき契りの符(フラグ・ブレイカー)』を中心に展開される、ブレイカー・ブロックがスタートします。
「Σなんで突然、マジック・ザ・ギャザリング的になってるの!?」
おお、的確なツッコミ! ……今話のシクーの出番、これで終了。
「えぇっっ!!?(涙)」
まぁ、仮にも本編の主役なのに、この扱いはかわいそうか。 仕方ないから、あと一回だけ発言を許そう……。
「(それ、ちっとも慰めになってない……(凹み))」 ←これはノーカウント(ぁ)
元々は化学教師、七海麻耶(ナナミ マヤ)先生が作ろうした、とある2つの秘薬が原因だった。 一方は、意中の相手を強制ゲットするために用いる、惚れ薬。 もう一方は、すでに付き合ってるカップルを別れさせる為の、別れ薬。
それがまさか、双方の効果を内包する、1つの禁断の薬品を生み出す結果になろうとは……。 製薬過程でその可能性に着目した黒魔術部ゴウスターは、マヤから薬のデータをこっそり奪って、研究開始。 結果が出るまで、思ったほどの時間は費やされなかった。
そして、その宝具は完成する。
24時間のあいだ、服用直後に初めて目にした異性に対し、圧倒的な効果を発揮する媚薬。 身も心も捧げる勢いと化す効能を持ちながら、されども効果終了と共に別れることになってしまう。 そんな、究極の惚れ薬兼、別れ薬。
「……ふふふ……。今度は……この薬の、実験体になってもらいましょうかねぇ……」
「断固拒否!! っていうか、何で僕はゴウスターの黒魔術部部室にいるの!?」
哀れなる小学六年生、コウは喚く。 随分前の死神化事件<http://bbs4.sekkaku.net/bbs/?id=Tamamushi&mode=res&log=76>の一件以来、彼は必要とあらば、召還に従い参上せねばならなくなってしまった。 今の彼は、そーいう体質なのだ。
「治らないの、この体!!?(涙)」
「……仕方ないですねぇ……もっとも、今回は幅広い実験結果が欲しいところです……。色んな人に試してみましょうかねぇ……この、宝具『破局すべき契りの符(フラグ・ブレイカー)』の力を……」
かくして、タマ大附属校に激震が走る(!?)。
学園ネタ読み切り(5)「破局すべき契りの符(フラグ・ブレイカー)」
Phase 1 古流剣術部壊滅事件
「ダイスケ君……。あの子、今日も来てるよ?」
「はぁ……。どうも、あの人の事は苦手だなぁ……」
古流剣術部師範代、ダイスケの憂鬱。 隣にいたヒカルも気遣う彼の憂いは、とある1人の後輩女子生徒が一因となっている。
ヒカルとダイスケ、2人は高等部一年B組の男子生徒。 実はこの2人、異性に極端な苦手意識がある。 (ただし、苦手の要因や形態については、若干違いが見られる模様) その為、自ら女の子に近づいていく事など、まず無いのだが……。
「ダイスケくぅん♪ 今日こそ放課後、デートしにいこうねぇ〜!」
何故か……そんな男に限って、意図せず異性を引き付けてしまうらしい。
「はぁ……」
彼がため息をつく対象は、大抵の男子ならば、思わず目がついてしまうような端麗の容姿。 むしろ目につくのは、その大きく膨らんだ胸が特徴的な体つきに……かも知れないが。 加えて明るく、積極的な性格の彼女は、多くの男子が惹かれるであろう美少女。
しかし、運命の神様は皮肉だったというか……。 彼女の迫る男ダイスケは、その『多くの男子』には該当しない、少数派存在なのだ。
彼女、中等部二年A組の崎原穂波(サキハラ ホナミ)は、ダイスケにとって特に馴染み難い性格だった。 静寂を好む彼にとって、ましてや苦手である異性が騒がしいのは、最も近寄りがたい存在に他ならない。
「僕……あの子にいられると、気が散って集中できないんだけど(汗)」
「僕も同じだよ、ヒカル君……。はぁ……まったく僕も、まだまだ未熟だなぁ」
「ダイスケ君は、十分凄いと思うんだけどね……」
ちなみに気が散るのは、ヒカルとダイスケだけではない。 彼らとは全く別の理由で、部内の男子生徒にとっては精神(こころ)の毒だ。 すると連鎖反応的に、『なぜか』一部の女子がその事に対して腹を立て、結果として全体の足並みが乱れて行く。 部の建て直しを任され、ようやく軌道に乗ってきたと実感しつつあったダイスケにとって、これほど由々しき問題はあるまい。
問題なのは、ホナミ自身には全く非が無い点である。 悪意が無いのはもちろんのこと、行動そのものに部の活動を直接阻害するものがない。 目に見えて邪魔しに来た者なら、早々に排除すれば良いだけの話。 しかし、ただ見学に来て、声援をかけてくれているのだから、追い出すのも気がひけた。
「頑張って、ダイスケくーん! ケガはしちゃダメだよぉ♪」
「……そうも言ってられないかなぁ……」
害が無いというのは、あくまで彼女自身の意思では、直接的に妨害をしてくる訳ではないというだけ。 実際には上記の通り、弊害は存在しているのだ。
そして、弊害といえばもう1つ。 ダイスケ自身もあずかり知らぬ方面で、発生している問題があった。
「あうぅ……」
弓道部所属の女子生徒ヒカリは、医学に長けていることもあり、古流剣術部のかかりつけ医師的な役目も担っていた。 彼女はヒカルの双子の妹であると共に、ダイスケやヒカルのクラスメートでもある。
「! ヒ、ヒカリ……」
「…………(どんより)」
暗く黙り込むヒカリの様子を、いたたまれない気持ちでヒカルは見つめていた。 彼女の想い人こそ、ヒカルの親友ダイスケなのである。 もちろんダイスケは、そんな事など露とも気づいていない。 ただ、ヒカルだけがその事実を知り、妹を心配するのみなのだった。
「(ヒカリは、ホナミちゃんのように積極的じゃない……。いつも、影で見つめてるだけなんだ。それなのにこれじゃ、あまりにも不憫だよ……)」
兄として何もしてあげられず、ヒカルは自身の無力を嘆く。 彼にとって、ホナミを苦手視することよりも、そっちの方が一大事なのだ。
高等部二年A組のクミは、古流剣術部道場の裏手に立っていた。 トイレに行ったクラスメートのレンを、1人で待っていたのである。
そんな彼女に、どこぞの阿呆が声をかけたことが事件の始まり。 あまり人目のつかない場所を選んでいたのに、それでも妙な輩に遭遇してしまうのは、運が悪かったとしか言いようがない。
「…………」
「なぁ、いいだろ。ちょっと遊びに行こうぜ?」
「……うるさい……」
「そんな冷たい事言うなよ。行きたいトコがあったら、どこへでも連れてってやるからさ!」
学校内でナンパしてること自体、なかなかに度胸のある奴だと思う(ぇ)。 ともあれ、しつこく迫る彼の行動は、後の惨事を考えれば愚かとしか言いようがなかった……。
ガチャリ……と、クミの頭の中の撃鉄が落ちる。 発動は、その刹那の後だった。
ズドォォォンっっ!!
「うわああああっっ!!?」
建物が! ヒヨコが! ……まとめて吹っ飛んだ(ぁ)。 道場はおろか、辺り一体に生えていた木々や、鉄製の冊といった小物も含め、問答無用で周囲をぶち壊す。
「ヒカルくーん!!?」
100%『破滅の力』を放つクミの力は、甚大だ。 攻撃対象は、あくまで絡んで来た節操無しの男子、ただ1人のみだったことだろう。 それでもひとたび炸裂すれば、周りを無差別に駆逐してしまうこの威力。 運悪く、場所が古流剣術部の活動場所すぐ横であっただけに、多くの者が巻き込まれる結果となった。
「……やめろ……」
そして。 スイッチが入ったのは、こちらも同じ。
「今すぐ、やめろっ!!」
普段、冷静なダイスケが豹変する。 宝具『虚空斬り裂く樹神の刃(ソウワ)』を駆り(ぇ)、クミを止めにかかった。
「(ヒカル君を、草木達を……みんなを傷つける事は許さない!)」
ダイスケは、護ると決めたものは必ず護り抜く。 常にその信念を以って、彼は刀を振るう。 ゆえに、それを傷つけるものがいたとすれば、容赦はしない。 ひとたび『敵』と認識した相手は、ただちに……。
「敵は……斬る!!」
「くっ。何よ、あんた!」
クミもまた、ダイスケの存在を感知。 彼女も彼女で、一切手を緩めることもなく、完全にフルパワー。 出せる限りの力を引き出し、まさしく最高最大出力の『破滅の力』を放った。
「!! クミ……?」
そして、これまた最悪のタイミングで、レンはやって来る。 クミが待っていた相手である彼女は、戻ってくるなり、何者かがクミに斬りかかる様を目の当たりにしてしまったのだ。
「何っ……するの……!?」
レンの身に、ゾっと悪寒が走った。 これが並の相手ならば、そんな事にはならなかっただろう。
しかし、今回ばかりは相手が悪かった。 あの剣士……あれは、まずい。 今まで見て来た、どんな存在とも異なる、明らかに別格な存在。 たとえ世界の調律を守護する神であろうと、彼に敵と見なされれば即刻斬り捨てられる……そんな、強大かつ高鮮度に集束された、純粋な力。
理性より先に、レンは本能で悟ってしまった。 いつもの、頭の回転の速い彼女ならば、こうはならなかったはずである。 力を放ってるクミの方を冷静に見つめ、クミと共にテレポートするなり、もしかしたらクミの方に非があると察するなりができただろう。
だが、今回ばかりは絶対的な例外だった。 クミに斬りかかる剣士の力は、一秒たりとも放置し、静観してて良いようなものではない。 ましてや、『逃げ』に徹して無事で済まされるような相手にも、到底見えなかった。
「『混沌兵団(カオスレギオン)』……『破壊の力』!!」
やらねば、やられる……!! 未曾有(みぞう)の、今までの経験の中では確実に次元違いの相手を前に、レンは飛び出していた。 持てる能力の、文字通りの完全解放を以って、クミに加勢する。
「斬る……敵は、斬る!!」
「うるさい、邪魔するな!!」
「クミは、やらせない……!!」
タチが悪いことに、3人ともが絶対クラスの力を100%、一切の出し惜しみもなく発動している。 こうして、すっかり大乱闘スマッシュタマムシーズX状態になってしまう(謎)。 周囲の被害がますます拡大していくのだから、まったく学園にとってはいい迷惑である(オイ)。
余談だが、学園編の話にポケモンは登場しない(擬人化キャラはいるけど)。 なのでダイスケには天解が無いし、レンやクミにもLv-Xが無い。 条件は、まったくの対等。 お互い一歩も譲らず、互角の勝負が繰り広げられていった。
「…………。いい加減に……」
だが、不覚にも彼らは失念していた。 いや、レンやクミは知らないだけかも知れない。 ともあれ軽率だったのは、ここが古流剣術部の道場だったのを皆が忘却していた事。 即ち、(カナを除けば)一番怒らせてはならない、究極のにゃんこ大魔神もまた、その場に居合わせていて然り。
「……いい加減に、しろぉぉぉっっ!!」
「……はい?」
「ん?」
「え゛……」
ダイスケ、レン、クミの目が、揃いも揃って点と化す。
奈月が発生させた絶対命中極大台風は、あらゆる神々、世界の管理者までもを完膚なきまでに叩きのめすパワーの結晶。 その気になれば全宇宙、全次元をも瞬時に抹消させかねないそれは、全てをぶっ飛ばすことで事態を終息させるのであった……。
Phase 2 ネーミングはナイフ宝具の流用ですがコレは薬です
「げっ。何だこりゃ!?」
ヒカル達と同じクラスである不良(っぽい男子生徒)ラグナは、目の前の様子を見て唖然とする。 自分が向かっていた、古流剣術部道場が、跡形もなく吹き飛んでいたのだ。
「…………。見なかった事にするか(ぁ)」
何か、危険な香りを感じたのか。 ラグナは回れ右して、即座にその場を離れることにする。
「しっかし、どうすりゃいいんだ。古流剣術部にはカザトがいるから、コロナもやって来てるかと思ったんだが……」
ラグナはズボンのポケットから、そっと何かを取り出す。 小さな小袋に入ったそれは、白い粉末状の怪しい薬。 右手で袋をつまみつつ、ラグナはじと目でそれを眺める。
「……けっ、何やってんだ俺。くだらねぇ!」
ポイっと、ラグナは後ろに袋を投げ捨てた。 いや……捨てかけたが、寸前のところで手を止めた。
「…………」
結局、それを名残惜しげに、ポケットに戻してしまう。 挙動不審のラグナは、その姿を誰にも見られること無く、すたすた歩いて行くのだった。
発端は、小一時間ほど前。 縁もゆかりもない黒魔術部部室に、なぜか呼び出されたのが始まりである。
「媚薬、だとぉ?」
「……ただし……別れ薬でもありますけどね……」
ゴウスターの説明を聞いたラグナは、不審げに渡された小袋を眺めた。
「……効能は、話した通りです……。24時間の間……服用直後に目にした異性に惚れ薬として働き……効果が切れれば、2人は別れるようになっております……」
「けっ。眉唾くせぇな」
「……確かに、まだ試した事はありません……。ですから、テストしてみて欲しいのですよ……」
「それが、何だって俺なんだよ?」
乗り気ではない様子のラグナが尋ねると……。
「……クスッ……」
っと笑い、ラグナの背筋を程よく冷やすゴウスター。 いやはや、まったく黒い(何)。
「……抱いてみたいでしょう……? ……この薬なら……誰でも好きな娘を、思うがままにできますよ……?」
「…………(汗)」
「……それとも……使うのが怖いとか……? ラグナさん、そんなにもヘタレだったのですねぇ……」
「なっ、ふざけんじゃねぇ!」
ガタっ! イスから立ち上がって、ラグナは吼える。
「そんなに言うなら、使ってやろうじゃねぇか!」
「……クスクス……その意気ですよ……。もっとも、薬のテストですから……あまり期待はせずに、効果を見てみてください……」
かくして。 恐るべき秘薬こと、宝具『破局すべき契りの符(フラグ・ブレイカー)』を手にしたラグナは、学園中を練り歩いていた。
ターゲットは、ラグナ好みな胸の大きな女子。 中でも一番の標的は……。
「くそ……。こんなに歩き回っても、コロナの姿を全然見かけねぇ」
以前<http://bbs4.sekkaku.net/bbs/?id=Tamamushi&mode=res&log=98>、彼自身が語っていた相手。 かつての同級生にして、ラグナが留年した今となっては一学年上の先輩。 高等部二年A組、コロナ=ケルベロンの行方を追っていた。
「あいつは、カザトが好きらしいからな。カザトのいる所に行けば、会えるんじゃねぇかと思ってたんだが……古流剣術部はあんなだったし。どうすっかな」
そんな独り言を口にした矢先。 ぴたりと、ラグナの足が止まる。
「待て待て……。そもそも、こんな薬が本当に効くかどうかも怪しいもんだ。第一、あのゴウスターの手の平で踊らされてるのが気にくわねぇ」
案外、彼は度胸が無かった(ぁ)。 こう言ってはいるが、実際のところは逃げの口実。 ただ単に、一線を踏み越える覚悟を持てずにいる。 時おり足を止めては、こんな感じに自問自答してしまうが為に、捜索は難航中。
「おーい、ラグナ。何やってんだ?」
「あぁ? なんだ、カズキかよ」
そんな中、遭遇したのはクラスメートの澤野一樹(サワノ カズキ)。 女好きで馬鹿、そのくせ色んな女の子に声をかけてもスルーされるという、イクムとタイチを足して2で割ったような男子生徒である。
「Σちょっと待て! 人様のキャラクターに対し、あまりにも酷いんじゃないか!?」
だって、設定にそう書いてあるし。
「確かにな」
「ラグナ、お前まで……(汗)」
大体、そんな事言ってたら、引き合いに出されたイクムやタイチはどうなるっていうんだ!
「引き合いに出したの、てめぇだろ」
「それにその2人なら、元々あんまり株は高くないと思うしな」
そりゃそうだ(オイ)。
「んで? そんな事よりラグナ、こんな所をさっきからうろついてて何やってんだよ」
「(ナンパついでに見てやがったのか?(汗))……まぁ、教えてやってもいいが……」
ラグナは、事のあらましを語ることにした。 黒魔術部に行ってきた事、そこでのゴウスターの言葉、そして宝具『破局すべき契りの符(フラグ・ブレイカー)』の存在。 やがて彼が食いつくまでに、そう時間はかからなかった。
「ラグナ!! それ、いくつ持ってるんだ!?」
「分かり易い奴だな……。試験用って事で、いくつかは貰っているけどよ」
やっぱり、教えない方がよかっただろうか。 眉をひそめたラグナは、面倒くさげに言う。
「言っておくが、お前にはやらねぇぞ」
「な、何でだよ!? 独り占めするなんて、ずりぃぞ!!」
「こんな危険なモン、お前みたいな奴渡したら、どうなるか分かったもんじゃねぇ。犠牲が出る事に加担したくはねぇからな」
「しょっちゅう覗きしてるお前が言うな! 1つぐらい分けてくれたっていいじゃねぇか!」
「駄目だ」
「ケチ!!」
カズキがどんなにねだろうと、ラグナは頑なに拒否するのであった。 ……が。
「……仕方ないですねぇ……。カズキ君にも特別に……1つだけ差し上げましょう……」
「マジで!? サンキュー♪」
「Σうぉっ!? ゴウスター、てめぇ!!」
どこからともなく出てきたのは、神出鬼没な霊狐栗鼠。 疾風の如きに現れ、カズキに小袋1つを手渡すと、また疾風の如きに去っていく。
「……何なんだ、あいつは(汗)」
「やったぜ。これが、本当に惚れ薬なのか……媚薬なのか……!」
カズキは、まるで縁起物でも頂いたかのような仕草で、丁重にその薬をしまい込む。 確かに、イクム級かも(何っ)。
「(ったく、アホらしい。まさかこんな薬1つで、本当に女をどうにかできるとでも思ってるのかよ……)」
あまりに分かり易いカズキの態度に、ラグナは呆れてしまう。 もっとも、彼自身そんなものを持ち合わせているのだから、カズキをとやかく言う資格もないのだが。
「よっしゃ。これで、マリンちゃんを……!」
ラグナがコロナを一番と言ってた時に、カズキの方はクラスメートでは断然マリンだと口にしていた。 そんな訳なので、カズキが標的を定めて拳を作り、気合を入れ直した……その時。
「ねぇ〜ライトぉ♪ 今度の休み、一緒に出かけようよ〜!」
「マ、マリン!? ちょっ……くっつかないで(赤面)」
ラグナと比べ、彼のターゲットはあまりにもあっさり見つかる。 ラグナとカズキのクラスメート、マリンは目の前10mほどを歩いていたのだ。
しかし、問題が無かった訳ではない。 マリンの近くには、すでに同じクラスのネフライトの姿が。
「何っ!? ネフの野郎……もう、マリンちゃんを落としたのか!!」
「……いや、あの2人は元からああだろ」
と、ラグナはすかさずカズキの言葉を訂正。
「くそっ。あんなベタベタしてたら、薬を飲ませるチャンスも無いじゃねぇか。ネフめ、羨ましい奴だな……!」
「無理にマリンを狙わなくても、いいんじゃねぇのか? 女はマリン1人じゃねぇんだし」
彼自身もコロナに固執していたし、人の事は言えない気もするが……。
とはいえ、彼の言葉も一理ある。 カズキの好みのタイプであるマリンは、『才女たる知性と美貌を兼ね備えた**(確認後掲載)美少女』と、なかなかに希少。 しかしこの学園、どういう訳だか飛び級経験のある秀才も、可愛い系から綺麗系まで様々なタイプの美少女も、双方が数多く在籍しているのだ。 加えて学園**(確認後掲載)率も全国トップクラスであり(ぇ)、確かに彼らの求める存在は、他にも探せば見つかる見込みが十分あるというもの。
「しょうがねぇか。こうなったらマリンちゃんは諦めて、他の美少女を見つけてやるぜ!!」
カズキは、どたどたと駆け出す。 結果、ラグナだけが1人ぽつんと、その場に取り残された。
「……なんかもう、結末が見えてきたな」
こういうシーンは、あらゆる物語でのお約束である。 この手の場面になったら、大抵狙い通りにはいかないのが筋。 何かの理由で薬を無くしたり、狙ってもない相手に飲まれてしまったり、結果として痛い目を見るのが常である。 カズキの行く末も、恐らくはそんな使い古されたコントのオチに等しいと、意図せずとも悟れてしまう。
「けっ……気が削がれちまった。今日は帰るか」
途端に、ラグナのやる気が失せた。 カズキを見ているうちに、彼と同じ末路が待っていそうだと気づいたからだ。
……しかし、彼の読みは甘かった。
翌日。 クラス内におけるワンシーンにて。
「なぁ、知ってるか? あのカズキが夕べ、ヒスイ女子学園の**(確認後掲載)美女と抱き合ってたって話!」
「聞いた聞いた! 中一にナツキちゃんっていう、すっげー可愛い**(確認後掲載)の子がいるだろ? あの子のお姉さんなんだってな」
「マジかよ? 俺の聞いた話じゃ、その子と一晩を共にしたっていうことだったぜ!?」
「うわっ、羨ましい奴……。それって、つまり……」
「けど、なぜか次の日に別れたんだってな……」
「あぁ。一体、どういう事だったんだ? 訳が分からないぜ」
……そんな噂話を、片隅で聞いていたラグナ。 複雑そうというか、やつれるというか……ラグナの顔は、惨事を目の当たりにしたかのような面持ちになっていた。
噂になっているのは、夢里瑞樹(ユメザト ミズキ)という、ヒスイ女子学園の中学三年生。 最近シクーと付き合い出したという美少女ナツキの姉であり、ラグナも知る女の子だ。 何せ、着替えを覗いたことがある(爆)。 確かに彼女は、妹に勝るとも劣らぬナイスバディと、美貌の持ち主だったが……。
「あのミズキが、まさかカズキの手に……(汗)。ど、どうする……?」
図らずも、薬の有用性は実証されてしまった。 それこそ寸分違わず、ゴウスターの述べた通りになっている。
ラグナの心は、揺れ動く。 そりゃあ、男の欲望というものは、この男でなくったって抱いてる者が多かろう。 されど同時に、この宝具の危険性も再確認できてしまった。 強力過ぎる力は、人に欲望と恐怖を駆り立てるものである。
「どうする? どうするよ、俺……!?」
手札……『使用』『破棄』『保管』『暴走』 何故か、ライフカード(ぇ)。
かくしてラグナは、深く葛藤することに。
Phase 3 2つの紅槍! ゲイボルグ対ローレライ
死を告げる天使……告死天使シクーとラグナ。 タマ大附属校には、この2名の告死天使が在籍しているのだ(違)。
彼らが持つ『ディバイン』とは、神が告死天使に与えた神造兵装。 神界屈指の実力を誇る、告死天使の精鋭ラグナが持つは、炎のディバインこと『神槍ローレライ』。
「己(おの)が罪、この刃に……!」
そして、プール開きの際<http://bbs4.sekkaku.net/bbs/?id=Tamamushi&mode=res&log=109>にも、バーサーカー化したプールの化け物を殲滅した……。 彼が必殺とする、究極の絶技が放たれる。
「告死、ロストセフィっ!!」
ザシュッ!! ドシュッ!! ズシャアァッッ!! 比類無き力が爆発する、ラグナ専用告死奥義。 強烈な炎槍の乱舞攻撃に加え、トドメに炎熱の衝撃波。 対象は切り刻まれ、断罪の焔(ほむら)にて葬られる。
「ナァーッハッh(ry」
まぁ、誰を始末したかまでは、あえて語るまい(何)。
「つーか、のっけから何やらせんだよ!? ノリでつい動いちまったけど!」
ま、まさかノリで告死奥義を放つとは……。 さすがはラグナ、トップクラスの告死天使だ。
「そういう問題じゃねぇ! 大体、ボイスイメージさえ合えば、何やらせてもいいとでも思ってるのか!?」
うん。
「Σちょっとは悩め。そもそも、学園に戦闘とか合わねぇっつーのに……」
神槍ローレライは、告死天使のみが扱える、神々がもたらした武具ことディバインの1つ。 加えて、この力を完全解放して放つ告死奥義は、最強無比の力を発揮する。 彼の『告死ロストセフィ』もまた、まごうことなく神界きっての力の具現。
「聞け、コラ!! 話を勝手に進めるんじゃねぇ!!」
それはそれとして……。 カズキの噂については、複数の目撃情報も出て信憑性が強かったこともあり、予想以上に大事(おおごと)となっていた。 同時にあの一件以来、ラグナがゴウスターの秘薬を受け取った事実も、徐々に一般生徒達に漏れ始めていたらしい。
「……ったく、妙な噂が流れ始めやがったな」
さっきは相手がナシェンだったから、問題もなく事無きを得た(相手が誰だったのか語ってるじゃん!)。 されども、今後もそう上手くいくとは限らない。
そして、とうとう。 ラグナのライバルまでもが、話を聞きつけて現れた。
「媚薬の力で女の子を物にするとは……この、人でなしめ!」
「Σてめぇっ! 俺はまだ何もやってねぇぞ!」
「まさかお前が、そこまでする奴だったとは思わなかった。だが、これ以上の暴挙は放っておけねぇ!」
「だから、聞けよ!!(怒)」
タマムシ大学三年、蛇神伴(ヘビガミ バン)。 ついに、大学部の人間までが動き出した!
「まるで敵の幹部みたいな扱いだな!?」
「力づくは好みじゃないが、仕方ねぇ。覚悟してもらおうか!」
バンは、1本の紅き槍を取り出した。 同じ槍でも、ラグナの神槍ローレライとは全く形状が異なっている。
対人宝具『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』。 それが、ボイスネタによりバンに与えられた武装だ。
「やっぱボイスネタか!?(ぁ)」
「さぁ、覚悟しやがれ」
ちなみに、そのゲイボルグって宝具。 真名で発動すると、必ず心臓に命中するから気をつけてね。
「Σ気をつけようがあるのか、それっ!!」
この呪いの槍を回避するには、敏捷(AGI)値ではなく、幸運(LUK)値の高さが重要となるのだが……。 HIROさん曰く、ラグナの幸運は良くてDランクだから、こりゃ駄目だ。
「もろ人事だな、てめぇっ!!(怒)」
気づけば、ラグナの足は戦線離脱を図っていた。 そりゃ、相手の射程に入れば心臓が必ず貫かれるんだから、命がいくつあっても足りない。
「こらっ。逃げるな、ラグナ! 正々堂々、戦え!」
「そんな呪いの槍持ってきて、何が正々堂々だ!? ちくしょうっ!!」
でもさー、神槍ローレライだって実質上は神造兵装に同意だぞ? 神々の武具ディバインを持ってるんだから、その気になれば十分どうにかできると思うんだけどなぁ。
「うるせぇっ、てめぇは信用できるかっ!! もう俺に話しかけるな!!」
ただし、『告死ロストセフィ』については、そう易々と使っていい訳ではない。 実は告死奥義、1回の戦闘につき一度しか放つことができないのだ。 大抵の敵なら、ほとんど必殺となる秘奥義なのだが、相手がゲイボルグ使いとなるとそれも分からない。 仕留め損なえば、それこそ絶体絶命である。
「ラグナめ、逃げながら独り言とは余裕だな! それとも何か。お前は電波系だったのか!」
「知るかよ、そんなもん!! 俺は書き手と口論してるんだっ。そんぐらい察しろ、アホ!!」
「そんな非常識的現象、察してられるか!! どっちがアホだ、コラ!!」
「ボイスイメージ引っ張り出してる時点で、常識もへったくれもねぇ!! 終いにはシバくぞ、てめぇ!!」
……うーん。 これじゃ槍対決じゃなくて、単なる追いかけっこと口喧嘩だな(ぁ)。
「だったら、これで終わりだ!! 突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)っ!!」
ゲイボルグの、真の力。 それは『死棘』の槍ではなく、『死翔』の槍。 本来ゲイボルグは投げ槍であり、真名を口にすると共に投げつけることで、本来の効果を発揮する。 当然呪いは健在であり、これなら相手が逃げていようと関係なしに絶対命中となるのだ。
ま、要するに……。 ラグナ、死亡確定。
「Σふざけんな、てめぇっっ!!」
ラグナは、キレた(ぁ)。 そしてこれが、彼の『天使覚醒』となる。
「全てを……解き放つ!!」
「何っ……?」
すでに、ゲイボルグは投げられた。 刹那の後には、ラグナの身を砕くであろう(爆)。
……にも関わらず、バンは感じていた。 ラグナが放つ、圧倒的な殺気。 ゲイボルグとは違い、神槍ローレライの刃は射程範囲外だし、これでは頼みの告死奥義も届くまい。
正直、『告死ロストセフィ』さえ来なければ、バンには必勝の自負があった。 接近戦なら確実に心臓を射抜けるし、いざとなれば必中の投げ槍で勝負は決まる。 敗北の余地はどこにもないと、確信して疑わなかったのだが……。
「ラ、ラグナっ……お前……」
「断罪、炎に燃えよ……!!」
ディバインに込められた、神の加護ゆえなのか。 呪いの槍は炎で弾き飛ばされ、直後に逆襲を許す。
「告死、ローゼンクライっ!!」
「がッ!!?」
四肢が、炎に引き裂かれる。 届かないはずの刃が、バンの身の上を縦横無尽に駆け巡った。
投げた訳でも、槍が伸びた訳でも、ましてやラグナ自身が接近した訳でもない。 空間の歪みなのか、自分が引き寄せられたのか、全てが実体のない衝撃波に過ぎないのか……。
斬られて、焼き尽くされる。 焼かれて、斬り尽くされる。 炎が先か、刃が先か、もはやそれすら認識が追いつかない。
「……か……はぁっ……!!」
バンはその場で崩れ落ち、仰向けに横たわった。
「はぁっ……はぁっ……!!」
戦いに勝ち残ったのは、ラグナ。 断罪を終えた相手を見下げて、彼はひたすら激しい呼吸を整える。 ディバインを構えた体勢を、すぐに休ませる事ができないのであった。
タマムシジェネレーション<http://bbs4.sekkaku.net/bbs/?id=Tamamushi&mode=res&log=129> 設定集のラグナの必殺技に、『告死ローゼンクライ』が追加されました(ぇ)。
Phase 4 カイリ・ケン・エアー
「Σ『乖離剣エア』のつもり!!?」
はい。 今のでシクーは、今話で許されていた最後の発言を終えました。 彼はほっといて、引き続き物語をお楽しみください。
「〜〜〜〜っっ!!?(えぇっ、そんなぁ!!?)」 ←電波障害(ぁ)
ここは古流剣術部道場跡地。 そろそろ忘れた人もいるかも知れないが、Phase 1にて奈月が全てを吹き飛ばしてしまったが為、今はあくまで『跡地』なのです。
「バカねぇ。にゃんこ大魔神を怒らせるなんて、『私以外の』神でさえも数千万年は早い、無謀な愚行よ(ぁ)」
by.カナ
そんなこんなで現在、道場の修復が行われているのだった。 しかし、その片隅には、暗く落ち込む師範代の姿もある。
「…………(ずーん)」
今回の一件で、ダイスケはますます異性が苦手になった事うけあい(待て)。 同時に自身の未熟さと、力と心を制御できなかった非を自覚し、暗く暗く沈み込んでいた。
「はう〜っ♪ カイリ君、ここお宝の山だよぅ。お持ち帰りぃ♪」
「いや、カズハ……どう見たって『瓦礫(がれき)の山』だから(汗)」
「…………」
悪気のない、通りすがりのカイリが述べた、たわいもない一声。 しかし、そんなカイリの言葉が、よりいっそうダイスケの心をえぐった。
「え゛。今ここって、ひぐらしにあった例のゴミ捨て場みたいになってるの!? いくらなんでも、それ無理があるんじゃ……」
「……ダイスケ君」
そこへ、顧問のケン先生が登場。 ヒカルの指摘はスルーされた(爆)。
「ケン先生……。こんな事になってしまい、申し訳ありません……」
「そんなに気を落とさないでくれ、ダイスケ君。君は立派に、古流剣術部を引っ張ってくれている。まだまだ、これからじゃないか!」
「……これから……ははっ。……道場の管理もロクにできず、護れてすらいない……僕が引っ張った結果が、これなんだ……ははっ……」
ケンの励ましも、逆効果にしかならないようだった。 自嘲するダイスケを前に、かえって彼を追い詰めてしまう危惧が恐ろしく、ケンもヒカルも次の発言に移れずにいた。
「ダイスケくぅんっ♪ 今日は部活ないなら、一緒に遊びに行こうよ♪」
そこへやって来たのは、状況を読めない1人の娘。 すっかりストーカーになりつつあるホナミの言葉は、いろんな意味で沈みきった空気をぶち壊した。
「…………」
意味もなくハイテンションなホナミが、ダイスケは苦手で仕方なかった。 ましてや今は、激しい嫌悪感すら心に芽生える。
「ダイスケ君、ねぇったら! 私、お気に入りの場所があるんだよぉ。2人で一緒に行って……」
「……やめて」
爆走気味のホナミを静止したのは、意外にもヒカリだった。 ダイスケの様子がいたたまれなかったのが、それまで全くの無言だったがゆえ、ほとんどの者が彼女の存在自体を認識の外においていたようで。 その場にいた、多くの者を驚かせる。
「……今は……ダイスケ君、そっとさせてあげたい。……だから、やめて」
ヒカリの言葉は、怒りに近い感情が混じっていた。 ホナミの服をつかみ、訴え、そのまま離そうとしない。 身動きが取れなくなったホナミはきょとんとして、ヒカリとダイスケの顔を見比べる。
「…………」
ダイスケの目には、睨みの如き警告が映っていた。 これ以上近づくな、関わるな。 剥き出しの声無き声明が、ホナミの瞳に食い込んだ。
「…………。ごめんなさい……」
ようやく、ホナミの声がトーンを落とす。 それを聞いて、ヒカリは彼女から手を離した。
「……ごめん……なさい」
もう一度謝ると、ホナミは一同に背を向ける。 更に数秒、そのままの状態で固まっていたが、やがては歩き出して去って行く。
「…………」
コツン。 不意に頭を、何かにこづかれた気がしたダイスケ。
「……何ですか?」
彼の、睨む対象が変わる。 横には、神槍ローレライで軽くつついてきていた、ラグナが立つ姿を確認できた。
「分かってねぇんだな、てめぇ」
「……何がです?」
「けっ。今のてめぇに言っても、分かりゃしねぇよ」
何の用があったのやら。 ラグナはきびすを返すと、後は何も言わずに立ち去るのだった。
やがて……古流剣術部には、新たな道場が建てられた。 もちろん一同、改めて修行に励む日々をスタートさせる。
しかし。 今なお、ダイスケの心は折れたまま。
「……はぁ……」
「ダイスケ君……」
たまに溜め息をつくだけのダイスケを、ヒカルやヒカリは痛々しい面持ちで見守っている。 どう声をかけていいかも分からず、まごついていると……。
「ダイスケ先輩。ホナミ先輩、また来てるアルよ?」
応援部としてやってきていた中等部一年A組のエアーが、彼に尋ね人の存在を伝える。 むしろ、古流剣術部が応援部を呼ぶことなんてあるのだろうか……。 ひょっとすると、応援部の方が勝手に押しかけてるだけかもしれない。 何せ古流剣術部、ダイスケ対ナシェンの時から一躍有名になった訳だし(何)。
「…………」
ふるふるっ……と、ダイスケは首を横に振る。 今の彼に、ホナミの無意味なハイテンションに付き合っていられるような、そんな心のゆとりはない。 実質上の拒絶しか、彼に取るべき選択肢はなかった。
「じゃあ、今日も会わないアルね? 伝えとくアル」
実は、古流剣術部壊滅事件以降でも、ホナミが尋ねて来るのは今日だけではない。 彼女は毎日、ダイスケに会いにやって来ては拒絶され、それでも懲りずに通い詰めていた。
「……ダイスケ君。明日も来るからね?」
いつもは黙って帰るホナミだが、今日は珍しく一声かけてきた。 しかし、ダイスケの反応がない事を見て取ると、潔く回れ右。
「……師範代。いい加減、ちょっとは話を聞いてあげたら?」
「…………」
稽古の合間に声をかけたのは、中等部二年A組の御園堂せれな(ミオンドウ セレナ)。 実は彼女、ホナミのクラスメートである。
「…………」
されど、やはりダイスケからの反応はない。 今の彼が、若干でも受け答えできるとするなら、それは相手がヒカルやヒカリの場合のみ。 だが、彼にとって特別な存在であるこの双子相手にしても、最近はまとな言動が取れていなかった。
「実はね。どうしてホナミが、飽きもせずに毎日こうしてやって来てるのか、ちょっと聞いてみたの」
それでも、構う事はない、と。 聞いてさえいればそれでいいと、セレナは話を続ける。
「あの子はあの子なりに、真面目に師範代を元気付けてあげたいって言ってたのよ。やり方がいけなかったんだって、ちゃんと反省もしてるみたいだったわ」
「…………」
「それでね。今度は、ホナミのお気に入りの場所に、師範代を連れてってあげたいって。そこは見晴らしのいい小高い岡らしくてね。周りに草木もいっぱいあるから、きっと気に入ってくれるって言ってたわ」
「…………」
「ホナミ、小さい頃からそこが大好きだったんだって。1人でいて寂しくなったら、よくその場所に行ってたんだってさ」
「…………。1人……?」
ぽつり、と。 ダイスケが、ようやく小さな反応を示した。
「…………。ホナミは……あの子は、両親がいないのよ。小さい頃に亡くなったんだって」
「……っっ!!?」
息が詰まった。 ダイスケのみならず、そばで話を聞いていた、ヒカルやヒカリも含めて。
「……えっ……」
「あっ……あ……」
特に、ヒカリの反応が大きかった。 体を小刻みに震わせて、若干目に涙もたまってきている。
「……!!」
すると、どうだろう。 ダイスケは予告もなしに立ち上がると、勢いよく駆け出していってしまう。
「えっ!? 師範代……?」
これには、セレナも度肝を抜かれていた。 呆然とその背を目で追うが、数秒もたたぬ内に、彼の姿は道場を出ていってしまったのだ。
……ダイスケは、走った。 特にどこへという訳でもない。
「……!」
ただ、今の彼の中で強く光り始めた存在は、すぐに見つかった。 ほんの数分前まで、うっとうしい存在でしかなかった少女は、日に照らされるベンチに腰かけていた。
「……っ。ダ、ダイスケ……くん……?」
ぽかんとした様子のホナミは、目の前に現れた存在を信じられない気持ちで見つめる。 ダイスケはダイスケで、ひたすら彼女を見つめ続けている。
「…………。泣いていたんですか……?」
そんな事を、ダイスケは前ぶれなく口にする。 確かにホナミの頬には、よく見れば涙の後が見て取れたが……。
「……違うよぉ。今、ちょっと居眠りしちゃってたから。それで、ちょっと夢見てただけ」
「夢……ですか?」
「うん。……ちっちゃい頃の……家族3人で暮らしてた時の、そんな夢」
「……っ」
ダイスケの脳裏に、フラッシュバックが起こる。 セレナが口にした言葉を、たったいま初めて聞いたかのように。
“あの子は、両親がいないのよ。小さい頃に亡くなったんだって”
……木々が、ざわついた。 風が強くなってきたのだろう。
「……あっ……」
ホナミは、固まっていた。 彼女の背には今、ダイスケの両腕がまわされている。
「僕にできる事なら、何でも手伝います……」
「え……?」
「だから、助けが欲しくなったら……辛くなったら、言ってください。そうなったら、僕は貴女の力になりたい……!」
「……う……うんっ……」
ホナミは、呆然としていた。 ただ、心が熱い。 ダイスケに抱きしめられ、手足が硬直していたのに、心だけは形を保てずに激しく波打っている。
「…………」
そんなホナミは、柱の影にたたずむ、1人の少女を見つけていた。 はっきり姿を確認できた訳ではないが、あれは間違いなくヒカリである。
ヒカリにしてみれば、好きな人が自分以外の女の子を抱きしめている事になる。 しかし、今のヒカリには、それに対する不純な雑念は一切ない。 落ち込んだ時の暗さも、嫉妬心も、その目には映っていなかった。 あるのは、ただ痛みを受け入れる器が存在するのみ……。
「要するに、だ。フラグ・ブレイカーだか何だか知らねぇが、フラグを何でも壊せると思ったら大間違いって事だな!」
ひどく的外れな発言のラグナが、声も届かぬ遠くで1人、完膚なきまでにシリアスムードを粉砕する。 大体、今回ダイスケ達に宝具は関わっていないだろう。
「うるせぇ!! 何かして関わらねぇと、俺のことをみんな忘れるだろ!!(ぁ)」
そんなラグナは、手に持つカップのコーヒーを、ひたすらスプーンでかき混ぜ続ける。 入っている砂糖を、ゴリゴリすり潰して溶かしているようだ。
……いや。 この粉末、砂糖じゃない?
「あぁ、これ『破局すべき契りの符(フラグ・ブレイカー)』だ。ずっと持ってるのもアホらしくなってきたから、とっとと処分しようと思ったんだよ」
半分やけくそ気味に言うと、彼はそばにあったテーブルにカップを置く。
「けど、こんなの俺飲めねぇし。誰か飲んでくれねーかな……なんてな」
「あ。じゃあ、僕が飲む♪」
ひょいっと、横から伸びてきた手が1つ。
「あぁ?」
その手の主は、ためらいなくコーヒーを飲み干してしまった。
「ごくごくっ……ふぅ♪ コーヒーが苦手だなんて、意外ね。どうしてわざわざ入れたりしたの?」
「え゛」
現れた少女を見て、ラグナは愕然とする。 何ということだ。 あれだけ探していたコロナが今、なんとすぐ目の前に立っているではないか。
「けど、久しぶりだね、ラグナ君。今度は留年しないよう、ちゃんと頑張っ……」
「…………(汗)」
一瞬失念していたが、こうなると現実逃避も何もない。 ただ、目の前で発生する現象を、素直に受け止めるほかないのだ。
「……あ……」
コロナは、くらくらと体を揺らす。 そのまま崩れ落ちそうになるのを、気づけば自然と手が動き、ラグナは彼女を抱き止めていた。
……その宝具は、確かに禁断の秘薬だった。 今話だけで、その犠牲者は2名。
終わった?(謎)
ホナミは今んとこ、ほとんどキャラチャでしか出てきてません(ぇ)。 一応、短編とかサイトに置いてあるのもありますが……。 で、いつの間にか彼女、ダイスケ狙いになってましたね。 そこから、なぜかダイスケのヒカル並フラグ過多がスタートする(何)。
今では、ダイスケの中ではホナミに対する好感度は、割と高めらしいです(だいすさんによると)。 ただ、最初は結構、ホナミはダイスケにとって苦手な存在でした。 ある時をきっかけに、今話末に近い展開になった感じですね(ぇ)。
今話はある意味で今までのキャラチャの展開をまとめたような話でした。 が、やっぱりダイスケはダイスケなので、別にホナミに恋心が芽生えたとかじゃありません。 ダイスケは良くも悪くも、ただひたすらに『護る者』であるだけなんだと思います。
で、あとがきで語るものが乏しいラグナについて(ぇ)。 雪さんがリヴィエラを購入されたので、本格的にリヴィエラに走ってしまいました(爆)。 今後もラグナには、神槍ローレライを携帯させておこうと思います(オイ)。
……最後に水月さん。 奈月を暴走させてしまってすみませんでした(何)。 今話では文句なく、彼女が最強でした(ぁ)。
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[404] わははははははは!!!!!!(以下略 |
- ガルダ - 2008年02月17日 (日) 01時27分
・・・・って、笑ってる場合じゃねえっつ!(ぁ) 二人共、大丈夫かね。
レン「…台風は予想外でした…使える人いた事は、何となく知ってましたけど。」
場所が悪かったな…つーかクミ、少しは周りを見ろ(汗
クミ「……まさか斬りかかって来る人がいるなんて誰が予想出来るのよ。」
古流剣術部の裏手にいたのならば少し予測しろ(滝汗 ってか、ヒカルを巻き込んだのと、草木まで吹っ飛ばしたのが不味かったな。
レン「確かにそんな感じでした…」
いいか、ダイスケという人物は…
〜しばらくお待ち下さい〜
………と、いう訳だ、分かったか。
レン「はい。」
クミ「……ええ。」
とはいえ…ダイスケ相手にまともに戦闘出来ただけマシか…凡人じゃ瞬殺されるのがザラだろうしな。
クミ「……殺意とか、闘気とか、そういうのは並の強化人間より上ね。」
レン「本気というか…何か、強い意志…?そんな感じでした。」
まあ何だ…ダイスケの意思というか、信念というか、とにかく並大抵じゃねえ。…よく言うだろ、何事も強い信念があれば出来ると。
レン「そうですね。」
さて…一つ問題がある。 一応建て直されたとはいえ、周辺に相当な被害が出たという事は事実…つまり、これを利用して処分を目論む奴等がいるはずだ。
クミ「……面倒ね…」
レン「クミ、それは言っちゃ駄目(汗」
だがまあ、その辺は何とかするさ…(黒笑)
〜ここからは次回の件〜
さて、折角アットさんがきっかけを作ってくれたんだ、俺も何か書く事にしよう…今回の行動を元にしてな。
では諸君、また会おう。
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[405] ・・・なるほど、要注意人物リストに追加ありか・・・。by機密部の面々(ぇ) |
- 日乃 水葉 - 2008年02月17日 (日) 15時47分
彼は、一冊のノートを持っていた。
悠火「・・・このリストに記されている、人物たちを怒らせるようなことがあったら、そいつは間違いなく『即死フラグ』であって・・・(ぶつぶつ)」
蒼夜「・・・何やってんだ?(滝汗)」
悠火「何って、機密部の要注意人物リスト作成だけど?(あっさり)」
Σあ、そういや悠火機密部にいたなぁ!(ぁ)
蒼夜「Σ作者覚えとけよ、その設定!」
スパーン!(扇子でどついた音)
そのノートとは、いわゆる『逆デスノート』と言われるものだ。(蒼夜のツッコミは無視)
効果:このノートに名前を書かれている人間を怒らせた人物は、即死確定w
蒼夜「『w』じゃねーよっ、そこっ!!」
悠火「ちなみに・・・このノートに記されている人物が知りたければ、条件次第で教えてもいいが・・・・・・その後の行動で起こった結果については責任はとらないから(黒笑)」
・・・よし、今度、要注意人物リストの作成をするかな(ぁ)
蒼夜「(もう、ツッコめない・・・(呆れ)」
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[407] レオンたちのキャラ設定も作らないとなぁ・・・ |
- HIRO´´ - 2008年02月17日 (日) 22時32分
今日もいつもと変わらない平和な一日だと思っていた。 でも、平和と感じていたのは私だけで、いつも私の知らないところで事件が起こっている。 それを風紀委員である私が止められないのが悔しい。
昨日、古流剣術部が潰れたり、今日、うちのクラスのカズキがヒスイ学園の女の子とやったとかどうのとかという噂で持ちきりだった。 普通にその話は聞いたことがあるけど、詳しい話はユウトさんから聞いた。 しかもその原因は、一期上のレン&クミ先輩だとか。 二人に会ったことはないけど、学校に来ないでタマムシの秩序を守っているとか、ないとか・・・。 私もいっそう学園の秩序のためにがんばろうと、尊敬したりした。
また、同様にユウトさんからラグナが怪しげな薬を持っているという情報を聞いた。 冗談で気をつけろって言われたけど、用心に越したことはないと気を引き締めていた。 ラグナのことだから、誰かに飲ませるに違いないと思っていたけど、今のところ、その様子はないみたい。 今、自分の机で『使用』『破棄』『保管』『暴走』という4枚のカードを持っているのが見える。 意外にラグナは使用するのをためらっているみたい。 覗きは好きなくせに、実際にその手の話になるとためらっちゃう奴なんだと思うと笑っちゃった。
まあいいか。ラグナなんてほっといて、今日はデートに行こう♪
<1年B組風紀委員日記>
レオン「今回の話は、棒切れのツッコミで始まり、薬狂の所から惚れ薬のデータを盗んできた黒魔が不良品に薬を渡す話だ。 だが、話の中心は侍にテンパが猛アタックする話だったなぁ。 流れ上、ヒヨコとムーンも出てきた。 かと思えば、アホ男が鉄球にナンパを仕掛け、レンきんが止められず、侍とバトルをはじめ、にゃんこが台風を起こしてしまった。 一方の不良品はシレンを探せばシロマが見つかると思い探していたが見つからず、逆にチップに見つかった。 そのチップに黒魔は同じ薬を渡し、エンジェルに飲ませようとするが、龍がいたため断念。しかしバニーの姉のBに飲ませることに成功したらしい。 そして、不良品は企みを知ってしまったナスと蛇男を撃退した。 後はまぁ、トラックとかタマとか神補佐とか中華とか赤巫女が出てたか? 最終的にはおいしい締めだったな。 ところで、黒魔のシーンでチビ助が出てきたのはツッコミのためかぁ?」
そうなんじゃないの?
ネス「Σって、全然名前の意味がわかんないし!!」
レオン「なんか文句あんのか?ラーメン」
ネス「だから、何で定着してんの!?」
しちゃっているからしょうがないんです。(ぁ)
ネス「そんなことより今回の感想は!?」
レオン「あーだから俺がヘナチョコの代わりに言ったじゃねえかよ」
ネス「これ、感想じゃなくて、一般的にあらすじって言うから!!」
日記も書いたし、いいじゃない。
ネス「Σ感想書いてよ!しかも、日記って作者目線じゃないじゃないか!」
『かんそー』・・・はい、書いたよ。
ネス「・・・」
レオン「さみぃーよ!ヘナチョコ!」
ええと、アットさんの書く小説は場面ごとの間隔が7行ごときっちり開いていると思いました。
ネス「それ、感想じゃない!わかったこと・・・事実だよ!!(汗)」
疲れた。てか、感想なんてチャットで話せばいいじゃん。
ネス「Σじゃあ、これ何のためのレスなのさ!!」
〜レオンの名前単語表〜
棒切れ=シクー 薬狂=マヤ 黒魔=ゴウスター 不良品=ラグナ 侍=ダイスケ
テンパ=ホナミ ヒヨコ=ヒカル ムーン=ヒカリ 鉄球=クミ レンきん=レン
にゃんこ=奈月 シレン=カザト シロナ=コロナ チップ=カズキ 龍=ネフライト
エンジェル=マリン バニー=ナツキ B=ミズキ ナス=ナシェン 蛇男=バン
タマ=カイリ トラック=カズハ 神補佐=ケン 中華=エアー 赤巫女=セレナ
チビ助=コウ ラーメン=ネス ヘナチョコ=作者
ネス「Σこんな表必要ないよっ!!(汗)」
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