[355] 天然な君と奥手な選手 直球勝負! 〜ヘタレは羽化してもヘタレなままなのか編〜 |
- 津波 - 2007年12月30日 (日) 02時42分
「ショウ先輩――――好きです」
風が吹いた。 二人以外いない校庭で、アイスとショウは向き合い、アイスは自分の気持ちを素直に伝えた。 その答えは怖いけど――アイスはショウと向き合って、その澄んだ青い瞳は、スカイブルーの瞳と交差する。
「…………」
「…………」
沈黙が怖く、アイスは眼を伏せようとしたけど、逃げていては一生思いが伝わることがないと知っているので、顔を上げた。 「アイス――。ぼ、僕は――――!」
その答えは。
『天然な君と奥手の選手 直球勝負!』 (ショウアイPART2)
冷泉アイスは、幼い頃に重い病気になり、学校に満足に通えない生徒だったが、今は普通に学校に通うことが出来る。 健康とは言いがたいので部活に所属していないし、体育の授業も滅多に出席することがない。 それは、高等部のショウも同じだった。
同じく病弱と言う事で仲良くなったアイスとショウだが、ショウはアイスのように、恋心を抱いているとは言いがたい。 しかし、アイスは自分の中に生まれたその感情を隠す術を持たない、知らない。 自分の感情を隠すなんて、自分を偽るなんて、出来なかった。
『一目ぼれ』なのかもしれない。
アイスは、ショウに告白をした。 一回目は噛んでしまって失敗したが、二回目は噛まずに、落ち着いて告白が出来ただろう。 だが、そんなアイスとショウの関係を快く思わない人間がいた。彼は、アイスに一番近い存在だった。
「シャーウ、なんか不機嫌だな」
「……ムッキー」
「Σだから俺はムッキーじゃなくって、ムキルだっ!」
彼は、前回にも登場した少年、十字シャーウ。ところで、十字っつー苗字は実際に存在するらしいです(ぇ)。 シャーウは、まぁ読んでいればなんとなくわかりますが、アイスに恋をしている純情なヘタレ少年なのだ。 「ヘタレは関係無いだろっ!」
ヘタレなので、大好きなアイスに告白する度胸も無い。なのに、アイスがショウに恋をしたと知った途端に、ショウに理不尽な怒りを感じるわがままな奴。 自分勝手だ。告白する勇気も無いのに。
「……分かってるよ、でも……気に食わない」
前回、ショウの所属する野球部に助っ人として参加したが、野球では当然ショウに勝てない。 容姿はシャーウも一応美形(設定)なので負けないと思うが、高感度はショウの方が高いので、今のままではシャーウはショウに対抗できない。 それをシャーウは理解している。 でも、いきなり現れた人に、アイスという自分の想い人を掠め取られたシャーウのショックは一入ではない。
そんなときだった。シャーウの耳に入ってきた情報は、シャーウを更に落ち込ませる情報だった。
「そーいやアイスがショウ先輩に告白したらしいぞ」
紙パックの牛乳を飲みながら、ムキルはシャーウに告げる。
「Σえ」
「さっき、萌がカナ先生に話してるの聞いたし」
※萌とは、萌黄萌という少女で、シャーウがWW学園で7種類も女装をすることになった元凶である。
「…………うっそぉん」
ショックで、たいした台詞もはけないシャーウであった。
さて、場所は変わり……。
竹刀を構え、素振りを続ける少年がいた。
シュッ シュッ シュッ と、何度も素振りを繰り返す少年は、学園一の鈍感とも呼ばれるダイスケという少年だった。 「………………」
無言である。
「………………」
始終、無言である。
「…………それが僕にどう関係するというのですか?」
やっと口を開いたかと思えば、『自分は関係ない。興味ない』という態度だ。 実際に関係ないのだが、話しかけた側としては、その台詞は少々悲しくなる。
「……それに、貴方が来るとは珍しいものです。どうゆう風の吹き回しですか?」
竹刀を片付けると、ダイスケはその人と向き合った。
「オルガ♂長」
どこか楽しそうに笑っているオルガは、地面に胡坐をかいて座ると、その笑みを崩さないまま話しかける。 オルガとダイスケ。 女たらしと、恋愛に興味ない生徒。 正反対の二人が話すところなんて、他の生徒は想像できないだろう。
「生徒会長として、言うとだね。君はもう少し恋愛に興味があったほうがいいよ? 社会に出るのに、そんなんじゃ浮いてしまうよ?」
「君に言われる筋合いはありません」
ピシャリと言い退ける。
「でも、俺個人としては……面白くないか? 俺の妹と、野球部のショウ先輩――。でも貴方は興味ないか?」
「なんで僕が人の恋愛なんかに首を突っ込む必要あるんですか……はぁ……くだらない」
「……」 口を開けたまま固まるオルガ。 だが、すぐに笑みを戻すと
「やっぱり、貴方は面白いなぁ……。くくく」
嗤う。
ダイスケは、こんなオルガという後輩が、少し苦手だった。
翌日のこと。 シャーウは、なんとショウのクラスにまで行っていた。 シャーウのような、度胸の無いヘタレにしては珍しく行動的である。こんな度胸があるなら、アイスに告白しろと思いたくなるが、それは置いておこう。 「俺は十字シャーウと言います」
「知ってるよ。アイスの話に何度も出てくるから」
シャーウはショウに指を差す。失礼な態度だが、シャーウの頭はそんなことは削除し、ただショウをアイスを取った人としか思っていない。
「俺と勝負してください」
「え…………?」
あまりにも急なことだったが、シャーウは言葉を続けた。
「俺と、アイスを賭けて勝負してください!」
PART3に続く……。
登場人物
・アイス ・シャーウ ・ムキル ・ショウ ・ダイスケ ・オルガ
(名前だけ登場) ・萌黄萌 ・カナ
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