[567] 作品別 演劇大会 1 |
- 津波 - 2008年09月19日 (金) 02時10分
「本日はここまでお越しいただきありがとうございます♪」
前説を話すオルガに、お母様方もメロメロ(死語)になっているのを裏から見つめているのは、元WW学園の生徒達である。 今回のお話、実は、学園祭だ。
たとえばWWなら、アイスやシャーウは登場しても、エイはその劇には登場しない仕様である。
それはさておき。
「今回は僕たち『WW』の項目は『番外・ラプンツェル』です。本来のラプンツェルとは別のラプンツェルをお楽しみくださいませ」
ちなみにWWの前の演劇は『PMA』で『白雪姫』だったりする。 セリンとコウが主演で、お姫様の方が背が高いということでヤジが飛んだが、王子様の腹黒スマイルで黙ったとか。
「ほら、最初はシャーウのシーンだろ!」
「なんでオレがお姫様!?」
「適役なんだよ!」
「どこがーっ!?」
背中を押されて強制的に着替えさせられたシャーウ。 しかも、アイスの協力もあり、セリフは覚えてしまっているのだから、可哀想である。
まーそんなわけで、シャーウに萌えたら負け♪な演劇が始まるのであったのであーるー(by天の声)
「……『あぁ、もしここに王子様が来てくれたならば、この塔も崩れ去るであろうに』」
ヘリウムガスで声を高音に変えたシャーウ。 その声と、整えられた容姿から、学園の生徒すらシャーウを女と間違えた。 ……実際に、シャーウは女になったこともあるが(ドラッグパニック参照)。 どこからか野太い歓声が聞こえた気がする。 いつもならば体育系部活の助っ人をしているシャーウは、今ではただのお姫様役。 しかも似合っているのが問題。
(うげ……)
「『幼き時代に出会いし名も知らぬ王子様。もしこの叫びが聞こえているならば、この私の眼前に……』」
手を観客席に向かって伸ばすと、男が騒ぎ出す。 裏方にいる女としては、なんで男のシャーウに人気が出ているのだと思っていたが、同時に、シャーウが面白いのでヨシ!
「『なにかを考えているとしてもそれは杞憂に終わり、決してお前はこの塔から出ることは無い』」
そうセリフを言ったのは、厳格そうな男だ。
「『お父様……っ』」
そしてシャーウはさらに言葉を続ける。
「『分かっております。私は塔の中の存在――ラプンツェルですから』」
「『あの童話のように逃げられては困るからな』」
そして剣で綺麗に髪が切られる。 カツラとはいえ、結構怖かったりする。
「『――っ』」
男退場。 シャーウは一人舞台で呟く。
「『あぁ、もし、王子様がいるのなら、この眼前に』」
そして再び伸ばした手は、勘違いをしている観客を沸かせた。
「結構上手いじゃん♪」
「なんでオレが! ここは普通女であるお前が」
「私は魔女役なのさ♪」
そう言って黒いローブに身を包み込んだアイスは、確かに童話の魔女のようではあったが、妙に……可愛い。 ローブから少しだけ飛び出した手。そして魔法の杖と思われる棒を振り回していると、魔女といわれれば確かに魔女だが、童話の様な怪しさが足りなかった。
「あ、お兄ちゃんだ。見てみ!」
オルガは王子様のシーンで、森に迷い込んだ様子だ。 森でお姫様の呟きが聞こえて、その声のする方向へと歩いていく。 先ほどのシャーウのセリフが流されて、シャーウは恥ずかしさから耳をふさいだ。
「『……幼き頃出会ったお姫様。もしいるのなら、僕の眼前に』」
そう言ってオルガは観客席に降りていく。
ここで一人一人にセリフを言うのがオルガの本番に強いところだった。
「『僕と君が出会ったのはどこだったかな?』」
「え……えっと……」
「『すまない。君ではないようだ』」
結構ショックだが、それでも普通にやれるのがオルガの凄い部分。きっとシャーウならできない。てか絶対に(ぁ)
そして何人かの手にキスを落とすと、再び舞台に上がる。 そのパフォーマンスが、容姿もさることながら、オルガの堂々としたその演技に女性観客は目がハートになりかかっていた。
「『……夢ならば覚めぬよう。このまま森で迷い続けよう』」
そして再び裏へと行く。
「今回の演劇はヒットね!」
そう言ったのは、観客のアンバーだ。 その豊満な胸に、劇よりも彼女を見ている観客もいたりするが、本人にいたっては気付いていない。 照明が暗い事もあるのか、彼女は椅子に座りながら見ていると、オルガが目の前に来た。
「『失礼ですが、貴女と出会ったのはいつでしょうか』」
そうオルガはアンバーに問う。
「……。出会った事は無いとはいえない。今、出会ってしまったのだから」
その答えにオルガは目を見開いたが、そこは何度も生徒会で窮地にもまれただけはある。 そう簡単に動揺を顔には出さなかった。
「『貴女も違うようだ。しかしながら、美しいお嬢さん。運命でなくとも、名前を教えてもらえるでしょうか』」
「アンバーと申しますわ」
「『ありがとうございます。僕はラズリ。もし彼女よりも君に先に出会っていたならば、僕は君に恋をしただろう』」
そう言って手にキスを落とすと、オルガは舞台へと上がった。
「臭いセリフ……」
でも、とアンバーは言う。
「変に感じないから問題ね……あの子、絶対に将来、女たらしになるわ……!」
未来を予想させた。 そして舞台で一言喋ると裏へと下がっていく。 その全ての動作が優雅で、変に感じさせない。もし時代が時代ならば、彼は王子の影武者を出来る人間だろう。 あれは元々のものではなく、創り上げた動作だった。
「次は私のシーンね!」
アイスのシーンは、ジリーと一緒にやる。 王子様に相談されて、とある魔法の薬を渡すのだ。 その薬は蔓を伸ばすもので、瓶を開けると蔓が延びる。 そしてお姫様の塔まで行くのだが、それを登ろうとすると、もう一人の魔女の妨害がある。 魔女は王子に一目ぼれしたので、姫に合わせないように何度も妨害をする。 そのシーンがジリーに凄い似合っていたのは絶対に本人には言えない。
王子様に会えそうなのに会えなかった姫を慰める為に、魔女はその蔓を登ってお姫様の前に座る。
「『お姫様。もしあなたが望むなら、この蔓を降りましょう』」
「『だめよ……もう王子様は二度と私の前には現れない!』」
メソメソとなき続けるお姫様。
「『何故そうだと言い切れるのでしょうか。可能性があるならそれに縋りましょう』」
「『……私はラプンツェル。塔の中で朽ちるのです』」
そして魔女(アイス)はポケットから本を取り出す。え、ポケットに本は入らないだろうって? 魔法のポケットだと思ってください。そこはテキトーです(ぁ)
「『本の中のラプンツェルは最後は王子と結ばれるんだよ。知らないのか、この無知娘!』」
……え。 ちょっとアイスさん?
「『ほれ、さっさと出るぞ。てか落とすぞ。落とされたくなかったらちゃっちゃっと立てやボケェ!』」
……誰、この台本考えたのーっ!!?
(私だけど?)
アイス、貴様かーっ!? 通りで変な舞台だと思ったぁぁっ!!
「『……この剣は?』」
「『この剣で魔女を刺せば王子様ゲットできるよん♪』」
「『まだ私は犯罪は起こしたくないです!』」
「『奇麗事で人生歩めると思ってるの?』」
「『汚いよ!? この魔女、穢れてるよ、心が!!』」
この後、続く口論に、魔女から逃げてきた王子様と再会し、王子様のお姫様の剣に驚いて逃げ出すというシーンが演じられた。
お姫様が剣を持ったまま王子様を追いかけるシーンは、結構怖かったと後で観客は言う。
舞台を降りて、その追いかけっこは続く。
「『僕が悪かったです! ごめんなさい置いていってごめんなさい! だから許してーっ!』」
「『だったら逃げないで下さいーっ!!』」
「『逃げるに決まってるだろうがっ!?』」
「『なんでですかーっ!!?』」
気付いていないお姫様。 逃げる、弱虫な王子様。
つづく!?
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