[862] 本格リレー小説《Dream Makers》 8日目 (1) |
- あきはばら博士 - 2010年09月11日 (土) 16時04分
・ここは塔の72階、ゴットフリートがいるフロア・・・ ・・・の別室。 客人をもてなすほどではないが、綺麗に整理された真っ白なベッド・・・そこにはアーマルドのソアラが眠っていた。 同じ目的でもやり方の違いから、ソアラとゴットフリートは何度もこのような衝突を繰り返してきたのか・・・ 説得されたソアラは今、そこで静かに眠っていた・・・ 「・・・ん・・・」 「お目覚めになりましたか、ソアラ様」 「お前は・・・」 そこには、ゴットフリートの側近、スターミーのサリットが、たくさんのきのみやポケまんまを[サイコキネシス]で運んでいた 「お食事を用意しました、さあ、お食べください」 「・・・ありがとう」 ソアラは目を覚まし起き上がると、静かにその食事を口にしながらつぶやいた 「なんでもお話し板の投稿者達にドリームメイカー軍・・・これまでたくさんの血が流れてきた・・・」 「はい」 「僕には彼の目的には賛成です、しかし彼のあのやり方が正しいとは思えない」 ソアラはポケまんまを食べ終わり、オボンのみを手に眺めながらまた考えていた 「ビーストを倒すためなら、一時的とはいえたくさんの犠牲者がでてもいいという考え・・・彼とはまた意見が分かれるかもしれない・・・」 そのソアラが食事を完食する前にサリットが言った 「ご安心を、ゴットフリート様があなたを軟禁する必要ももうありません」 「?」 「彼らは現在60階にいます。我々が悠達の強さを測る必要はもうなくなりました」 ソアラはサリットのその言葉を聞くと、オボンのみを食べ終わった[たべのこし]を置き 「そうか・・・悠達がこの戦いの真の目的を知った時・・・全ての戦いが終わった時・・・その時、僕の出番ですね」 「はい」 サリットはソアラの[たべのこし]を持って去ろうとしながら、ソアラに告げた 「我々はもう貴方に対して手荒なことはいたしません、しかし悠とゴットフリート様の戦いで何があっても貴方は介入なさらないでください、私はゴットフリート様のお側でその勝負の行く末を見守りたいと思います」 ソアラは黙ってうなずくが、サリットに一言だけ返した 「好きなのですね、ゴットフリートのことが・・・」 サリットはその言葉に当然のような表情で・・・(正確にはその表情を思わせる声で) 「はい、愛しております」 ・・・そう答えると、ソアラのいる別室から[たべのこし]を持って出て行った
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「失礼いたします、ゴットフリート様」 「サリットか・・・」 サリットは別室からゴットフリートがいるフロアへ出てくると、 「ご存知かと思いますが悠とワタッコの2人がジルベールを倒し、現在60階まで上がってきております」 「うむ・・・」 「しかしワタッコは両羽の骨を折る重症、悠は片腕を痛め全身を強打・・・両者ともジルベールを倒した後、動くことができない模様です」 「・・・」 「サリット、ドリームメイカーの内部が不安定な状況下、よく今まで私の元についてきてくれたな・・・改めて礼をいうぞ」 「私になど勿体無いお言葉・・・ゴットフリート様のためならばこの命ある限り・・・」 ゴットフリートはサリットの報告を聞き、しばらく考えていた 「(今が大事な時だ・・・ここで悠に動いてもらわなければ)」 「いかがいたしましょう、ゴットフリート様?」 サリットの問いにゴットフリートはこう言い渡した 「悠には先に進ませるのを拒む理由など今はもう無くなった・・・サリット、お前に動けない悠の案内を命ずる・・・頼めるか?」 「はっ・・・かしこまりました」 「サリット、お前は私の身に万が一の事があった時の・・・いや、今はまだ言うまい」 「ゴットフリート様・・・」 サリットは少し言い残したことがあるような心境ながらも ゴットフリートの命を受け、今すぐにと下へ向かっていった・・・ 「・・・」 ゴットフリートは悠の到着を今や遅しと待ちつつ、沈黙を続けていた・・・
「・・・」 サリットが下りる途中、そこには72階へ上がっていくゼロがいた 「ゼロ・・・」 「ふん・・・」 サリットは気がかりながらもゴットフリートの命を優先すべくすれ違い、悠のいる階へ下りていった・・・
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・「・・・うう・・・」 悠が目を覚ますと、そこにはワタッコとジルベールの激戦を思わせる無数の血の跡が散乱していた・・・ 「気が付いたか」 「ワ・・・ワタッコさん」 悠の目の前にはワタッコが痛々しく血のついた両羽をぶらさげていた 「ジルベールさんはどうしたんですか?」と、いちいち聞かなくてもわかる。 悠はワタッコの折れた両羽と大量の返り血を見てジルベールとの激戦とその結果がどうなったのかを理解した・・・ しかし、あれからもうどれだけの時間が経ったんだろう・・・ 「見ての通り、俺の両腕もこの始末だ・・・今は無駄に動いてトラップの危険に巻き込まれるより、こうしてじっとして体力を回復していた方が得策だろう」 足踏み状態・・・AB同時押しをして、下手に動かず足踏みしていることで徐々にHPを回復させるポケダンの能力だ。 その分敵ポケモンが近づいてきてしまうが、この60階にもう敵ポケモンはもういない あるのはでかい壁の穴だけだ 「っ・・・痛っ!!」 悠は起き上がり、体を動かそうとして片腕の感覚のない痛みを感じた 「むやみに動かすな、お前の片腕だって俺の両羽ほどでなくとも使い物にならないんだぞ」 悠はワタッコの言葉で思い出した 「(そうだ・・・僕もジルベールさんとの技の打ち合いの時に片腕を壊されていたんだ・・・)」 しかし、悠は上を見上げながらもどかしそうにしていた 「でも・・・今はもう時間がないんですよ!トラップの危険を承知でも僕達が前進していかないと!」 「そうだな・・・これからどうするか」 2人は体中の痛みに[こらえる]を使いながらも動くことができず上を眺めていた 「・・・ん?」 ワタッコが何かにきづいた 「なんだあれは・・・悠、ちょっとあれを見て」 「何ですか・・・ワタッコさん?」 ちょうどワタッコと悠が眺めていた上の階からである。 ワタッコがくちばしで示す方向には・・・何やら発光する物体がが高速回転しながら悠達の元へと接近してきた! 「う・・・うわっ!」 「こいつは・・・スターミー!?」 そのスターミーは悠たちの前で[こうそくスピン]を止めるとゆっくりとコアを点滅させながら、 「なるほど・・・確かにこれは重症ですね」 と口ずさむ 「だ・・・誰だお前は?」 悠はいきなり現れては戦う気配を示さないスターミーを見て敵なのか味方なのかと、かろうじて体勢を立て直したが・・・ 「お前は・・・サリット!」 ワタッコはそのスターミーが誰なのか一発でわかったようだ! 「お久しぶりです、ジルベール・・・いや、正式にはワタッコ様とは初対面でしたね・・・」 サリットは悠にも自己紹介を始めた 「私はゴットフリートの側近を任されているサリットと申します、悠様、以後お見知りおきを・・・」 「は・・・はあ・・・」 休戦とはいえ、いつものドリームメイカー軍となら悠は少なからず敵か味方かと警戒するのだが・・・このスターミーのサリットのあまりに礼儀正しい、敵意を感じさせない態度に思わず悠も普通に返事を返してしまった。 「単刀直入にですが申し上げます。悠様、ゴットフリート様の命により、貴方の案内にまいりました」 「ゴットフリートが・・・僕を?」 「はい、そうです。貴方のその傷では次の階はおろかこの60階のトラップさえ避けきることができずに倒れてしまうだろうとの事・・・私がトラップのある位置から貴方をお守りすべく、安全にゴットフリート様のいる72回までご案内致します」 「で・・・でも」 悠は自分よりひどい傷のワタッコに目をやった 「動けないワタッコさんだけを置いて僕だけ進むことなんてできないよ・・・」 しかし、そんな悠を気づかうかのようにワタッコは言った 「俺のことなら心配するな、両羽がやられてもまだくちばしがある。そう簡単にやられたりはしないから・・・悠、お前はゴットフリートへ会って来い」 「それに下の階からポケモンの足音が聞こえる。気配からすると敵ではない・・・俺はここでそいつらを待とうと思う」 しかし悠は 「だけど・・・」 と、ぐずぐずしている。 「・・・」 ワタッコは少しキッとなった表情にかわり 「悠!!」 「お前はゴットフリートの真意を確かめるんじゃなかったのか!!」 と悠を叱りつけた! 「!」 「ワタッコさん・・・」 (そうだった・・・僕はゴットフリートの真意をたしかめるためにここまでやってきたんだ!) 悠はワタッコの言葉に一喝されると、すぐにサリットのほうへ振り返った! 「サリットさん・・・僕をゴットフリートの所まで案内してください!」 「・・・わかりました、では悠様、私について来て下さい」 悠はサリットの[はっこう]をたよりにトラップに掛からないように迷路を抜け、61階へと上がっていった・・・ 悠は、ワタッコには何も告げずに去っていった・・・ここで何か別れの言葉をつげるともう会えないような気がしたからだ。 それだけ、これから会うゴットフリートにただならぬものを感じていた・・・
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翌朝。 ホテルのロビーでは、ポケ書の住民とアッシマー一同が集まっていた。 「さて、君達の目的はビーストの討伐だったな。」 と、ディグダマンがアッシマーに向かって言う。 「はい。昨日、搭の中にビーストが現れて、大変なことになったんです。 もともと僕達もゴットフリートを倒すために搭を上っていたのですが、ビースト出現で急を要する事態になって・・・ それで、僕達は悠さんたちと別れて、ここへ来たんです。」 アッシマーは自分たちがここへ来た理由を端的に説明した。 「なるほど・・・そうだったのか。 ビースト討伐となれば、私たちと目的は同じ。我々も可能な限り手を貸そう!」 ディグダマンは力強く答えた。 「あ・・・ありがとうございます!」 アッシマー達はそもそもポケ書チームをクチバから避難するように言おうと思っていた、しかし昨日の戦いからこれだけの人数で戦うのはあまりにも少なすぎる、味方は多いほうがいい。 それにアッシマーは昨晩一緒に寝たラティアスにかっこいいところを見せたいと思っていた。 「あ、そういえば・・・アッシマー。あんたに渡したいものがあるんだ。見てくれよ。」 アッシマーがディグダマンに礼を言ったとき、ふと、バク次郎がアッシマーに声をかけた。 「あいつは俺達の目をおかしくして本当の自分を隠す事ができるからな。これが役に立つと思ってな。 ドリームメイカーやビーストでカントー中大混乱してるから、手に入れるの大変だったんだぜ。」 そう言ってバク次郎がアッシマーに見せた物は、なにやら風変わりな格好をした暗視ゴーグルのようなものだった。 「これって・・・」 「『シルフスコープ』だよ。コイツがあれば、ビーストが分身してたり姿を消したりしていても、本物のビーストを見分ける事ができるって訳だよ。」 そう言って、バク次郎はシルフスコープをアッシマーに手渡した。
と、その時!
突然、外から何かが崩れる音がした。それと共に、ロビーの天井が崩れ落ちた! 「わああっ!」 一同は成す術もなく、瓦礫の山に飲み込まれた。
「きゃああああああ!」 「嘘だろ・・・なんでこんな所に!」 「どうして今まで気付かなかったんだ!!」 「くそ・・・当たれ、当たれえっ!」 「攻撃が来るぞ! よけろ!」 「だめだ! 全然効いて・・・ぐわあっ!」 「あなた! しっかりして! お願い・・・死んじゃいや!」 「鬼だ・・・コイツは鬼だあああ!」 「畜生・・・打つ手なしかよ!」 爆音、ガレキの崩れる音、非常サイレン、ポケモン達の悲鳴、叫び声・・・そんな音があちらこちらから聞こえる。 「げほげほ・・・なんなんだ?」 もうもうと立ち上る砂煙にむせながら、瓦礫をよけてようやく外に出たアッシマーが見たもの、それは・・・
「約束どおり、来てやった」
たくさんのポケモンたちがビーストに襲い掛かり、片っ端から殺されてゆく、まれで地獄絵図のような光景だった。 もし自分が人間だったら、この光景も見ることはなかったかもしれない・・・ そう考えると、余計に背筋に冷たいものが走った。 「片目のジュカイン・・・貴様には、今度こそはあの世に行ってもらうぞ!」 ビーストがこちらをにらみつける。 悪い事にビーストは、アッシマーの姿を覚えていてくれていたようだった。 ビーストは叫びと共に、アッシマー目掛けシャドーボールを放つ! 「わあっ!」 アッシマーはみきりを使って紙一重で攻撃をかわす。 「よけたか・・・だが次はどうかな?」 ビーストは不敵に笑うと、もう1度シャドーボールの構えに入る! 「ちくしょ・・・!!」 アッシマーはそれを横とびでよけようとした。 しかし、運が悪い事に、瓦礫に脚を取られてバランスを崩してしまった! 「この死にぞこないが!!」 ビーストはシャドーボールを放った! 駄目だ、よけられない! 「わああああああああああっ!」 アッシマーはいいようのない恐怖に襲われ、目を固く閉じた。
「・・・?」 まだ生きている? アッシマーは目を開けた。 「大丈夫か!?」 目の前には、知らない顔のフシギソウがいた。 「あ・・・ありがとう・・・君は?」 「そんな事は後だ! コイツを何とかしないと!」 フシギソウはビーストに視線を向ける。 「くらえ! はっぱカッター!」 フシギソウは無数の葉をビーストに向け放った! ビーストは微動だにしない。その葉はビーストに直撃した・・・かに見えた。 「!?」 ビーストの姿は、蜃気楼のように掻き消えてしまった。 「幻だ! あいつは幻を・・・」 「いまさら遅い!」 アッシマーはフシギソウに向かってビーストの能力を伝えようとした。だが、それはビーストの声に遮られた。 「わわ・・・わあっ!」 フシギソウが『サイコキネシス』で宙に浮かぶ様が、アッシマーの目に映った。 「俺に楯突いた事を・・・あの世で後悔するんだな!」 ビーストはサイコパワーをさらに強める!
「ぎゃあああああああああああ!!!」
フシギソウの絶叫が響き渡った。 どくタイプをもつフシギソウにエスパーわざは効果抜群、それにさらに強めたサイコパワーが重なり、フシギソウの体は潰されていく。 「あ・・・あ・・・・・・」 目の前でフシギソウの惨殺シーンを見せ付けられたアッシマーは、言葉も出なかった。 念力に握り潰されたフシギソウの体は、見るも無残に変わり果てていた。 「な・・・なんてことを!」 アッシマーの怒りが爆発した。 「世界中の人間にに夢を与えなきゃいけないポケモンの世界で、こんな事があっちゃいけない! こんな世界で殺戮を繰り返したら・・・ポケモンを愛する人々の心もすさんでしまうだろうに!」 アッシマーはリーフブレードでビーストを切りつけた・・・はずだった。 そのリーフブレードもまた、虚空を切るだけだった。 「その『夢』があるからこそ・・・人は欲望にかられ、愚かな行為を繰り返すのだ! 『夢』さえなくなれば人間は欲望を抱くこともなく、醜い争いをする事もなく生きていけるという事がなぜわからない!」 後ろから声が聞こえた、とその瞬間、体に大きな衝撃と鈍い痛みが走った。 「ぐあっ!」 アッシマーは瓦礫の山に倒れこんだ。 「俺の目的の邪魔をする奴は・・・葬り去るのみだ!」 ビーストの手には巨大なスプーンがあった。多分さっきの衝撃はそれで殴られたためだろう。 ビーストはスプーンを高く掲げる。それで自分を撲殺するつもりのようだ。 「死ね!」 とビーストが言った瞬間だった。 「やめろおおおっ!」 甲高い声が響き渡り、ビーストが弾き飛ばされた! 「悪い人・・・おにいちゃんをいじめる悪い人!」 某ニ○ータ○プのセリフを引用しながら現れたのは、例によってルカ☆であった。 「ふぅ・・・やっと出られたよ。」 「援護するぜ! アッシマー!」 「まともに戦えるかもわからないけど・・・がんばるわ!」 ルカ☆の後ろからも声がする。見ると、バク次郎、オバサナ、ディグダマン、ノクタスちゃん、ラティアス、ラティオス、ベルカの姿があった。 「10まんボルト!」 「何!?」 突如、アッシマーの後ろのほうから、ビーストに向かって電光が走った! アッシマーは後ろを振り返る。 「・・・秋葉さん!」 アッシマーは驚いた。今まであまり戦おうともしなかった秋葉が、頬や尾に火花を散らしながら、そこに仁王立ちしていたのだ。 「ドリームメイカーの目的が私が考えていたものとは違うという事が解った以上、私が戦いを避ける意味はもうありません。 私が犯した過ちを償うためにも・・・私も戦います!」 そのわりには離れたところにいるが、秋葉は堂々とした声で言った。 「貴様らが・・・そんなに仲良くあの世へ行きたいか・・・ ならば貴様らが望むようにしてくれる! 覚悟しろ!」 ビーストはアッシマーたちに踊りかかった。
かくして、アッシマーたちとビーストとの2度目の戦いの火蓋が切られた!
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ゼロの2人の仲間、グロスとザキを撃破したガムとアカリンはフィを大事に抱え、そのまま2階上の46階に到着していた 「ここは確か・・・」 ガムが周囲を見回す・・・ここは1度だけ来た事がある・・・たしかここには 「ガムくん!あそこ見て!」 アカリンが指す方向には・・・3匹のウインディが! 「・・・その声は、いつかのブースターか」 「アグル・・・チップ・・・オルティア!」 ガムは3人を見るや否やすぐさま戦闘体勢をとろうとした・・・が 「ガムくんっっっ!!!」 「うわっ!」 アカリンの叱り声にガムの動きは止まってしまった 「ご・・・ごめん、アカリン・・・」 今のガムには理由を聞かずともその叱り声の意味がしっかりわかっていた ガムはアカリンに『ドリームメイカーの全てを敵視しない』と約束したのに、アカリンが静止してくれなければガムは危うく、また誤った行動をとる所だった・・・ 「ううん、わかってくれればいいんだよ☆」 頑ななガムにとって、アカリンは唯一心を許せる相手であると同時に生涯の伴侶とも呼べるべき存在なのだ・・・ 「ははは・・・ずいぶん♀のブースターの尻に敷かれているようだな」 とアグルが言うと 「何を!」 とガムが言い返そうとしたが 「慌てないで下さい、私達はもう君達と争う気はありません」 とチップがガムへ告げた 「なんだって・・・?」 ・・・少し困惑した表情のガムの横からアカリンが出てきて、アグル達に聞いてみた 「ユーリさんから聞いたことがある・・・あなた達は『赤い3連星』だよね?」 アカリンの問いにオルティアが答えた 「そうよ、ブイズのことはしってたけんね、お前は・・・ブースターのアカリンか?」 「はい☆ブイズ斬り込み隊長、『モエる朱色』ことブースターのアカリンです!」 どうやら、アカリンの反応からするとアカリンと3連星は初対面のようだ 「マシュリから聞いるぞ、アカリン、噂にたがわぬ実力のようだな」 「!?・・・マシュリを!?マシュリの事を知っているの?」 アカリンはアグルの言葉に驚き、思わず問い掛けてみた! 「・・・少し長話になるが、いいか?」 アグルはガムとアカリンを引き止め、その場で座り込んだ。
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「フィ〜♪」 「うっわー!かわいかー!ほら!こっちにくるとよ!」 「キャッ!キャッ!」 オルティアはフィを気に入り、背中に乗せて遊んでいる 「・・・そうですか、悠さん達は今、上の階に・・・」 「はい、悠とワタッコはだいぶ前にこの階を通過して・・・今は60階あたりでしょうか?」 ガムとチップはこれまで塔であった事についてお互いの情報を交換していた 「マシュリは・・・かつて我々と共にドリームメイカー軍の正規兵になるよう訓練していた仲間だったんだ」 「・・・」 アカリンはアグルからマシュリの話を聞いていた 「マシュリは毎日のようにアカリン、おまえの事を話していた」 「アグルさん・・・私」 アカリンが2年前の肝試しのことをアグルに話そうとした時 「話さなくともよい、あの事件はお前のせいではない・・・その代わり、これを」 アグルは自分についている[レトロメール]をアカリンへと見せた 「これは?」 「これは・・・肝試しに行く前に、マシュリがお前宛に書いていたものだ・・・おそらくあの日、命を落としたために出せなかったのだろう」 そのメールにはこう書かれていた
『いま まで ありがとう ずっと ずっと ともだち だよ ・・・・・・ マシュリより』
「・・・」 「マシュリは死ぬその前夜まで、お前との友情を大事にしていた」 そのわずかな文の中には本物のマシュリからのアカリンへの気持ちが込められていた・・・ 「・・・アグルさん、このメール、私がもっててもいいかな・・・?」 「ああ、そのためにお前に見せたのだ」 アカリンはアグルから[レトロメール]を受け取ると大事に握りしめた・・・ 「チップさん、わかりました!僕達もこのまま上の階へ上がらせてもらえますね?」 「もちろん、かまいませんよ・・・47階からは罠の数が特に多くなる・・・気をつけてください!」 丁度ガムとチップの情報交換も済んだようだ 「よいしょ!ほーら!フィ!これはどうね?」 「フャ〜!キャッ!キャッ!」 オルティアは背中を滑り台にしてフィを遊ばせている 「アカリン、フィ、先を急ぐよ!チップさんの言う限りでは、僕達は悠さんからもう20階近くも離されている・・・早く合流しないと!」 「うん☆わかった!ガムくん!」 「フィ〜!」 ガムとアカリンはフィを背中に乗せながら、再び上の階へと、[でんこうせっか]の移動体勢に入った! 「きをつけてな!」 「健闘を祈りますよ!」 「フィちゃんー!また遊ぼーなー!!」 赤い3連星はガム達を快く見送った! 「?・・・アカリン?そのメールは?」 「ガムくん、このメールはマシュリが2年前・・・」
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「(マシュリ・・・)」 「そうだったのか・・・アカリン、マシュリさんは最後までアカリンのことを・・・」 妄想ではない、本物のマシュリの気持ちを再確認したガムとアカリンはさらに強い意志を固め、一刻も早く悠達と合流すべく上を目指していった! 「ガムくん次は47階だけど・・・ここから先は私も知らないの・・・気をつけていこう」 「うん・・・僕もチップさんから聞いた・・・『罠の数が特に多くなる』とか」 「ガムくん、ここからは私についてきてね☆ユーリさん直伝の[しりょくじまん]で正しく誘導してあげるから!」 「え?でもアカリン?」 ガムはアカリンの言葉に少し心配になった だってアカリンは44階でフィを落としただけでなく、[バクスイッチ]にも見事にひっかかっていたのだから・・・ 「ガムくん、私をあまくみないで・・・あの時は、油断していたけど、私はね! 同じ間違いは二度とくりかえさないんだから!」 ・・・ガムは、どことなくたくましさをも感じさせるようになったアカリンの表情を見て、前言を撤回したくなり 「アカリン・・・わかった!僕はアカリンの誘導を信じてついて行くよ!」 「えへっ☆!ありがとう!」 早く上の階へ!といわんばかりの[でんこうせっか]で、移動を再開した!
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昼にもかかわらず薄暗い洞窟の中には青い光が満ちている。 カタカタカタカタという音だけが洞窟にこだまし、二三回跳ね返って・・・消える。 迫りくる時間と戦いながらビーストの情報を集めていたはずのベルは、ふと・・・顔を上げた。 (―威圧の気配―!) しばらく・・・といってもほんの数秒だがベルは固まった後、ふぅ・・・と溜息を漏らす。
「何のようです? ・・・クラッシュさん。」
そう言ったとたん、奥の気配は消えた。一瞬といえる間もおかずベルの隣にクラッシュこと光が現れる。――威圧の気配はもう無かった。 「いや、少し用があってね。一応こちらは協力関係を結んでいるからな、」 「・・・何を言いたいんですか? 時間の無い身としては率直に言ってもらえた方が嬉しいんですが・・・。」 ベルはそう色の無い声でそう言いながらパソコンに向かってキーを打ち続ける。隣から射してきた弱い光がふと・・・ベルの目に留まった。 「有り難い。俺も説明以外の長話は苦手なものでね。」 光はそう一度区切って唐突に切り出した。 「・・・ビーストの情報をリアルタイムで提供してもらえないだろうか?」 ほう、とベルはそのとき初めて振り返った。目に驚きと・・・何故か懐かしみの色が浮かんでいたのを光は見て取った。 「面白い提案ですね。実に面白い。・・・ですが、こんな大変な情報。貴女ならいくら同胞のよしみがあったとはいえただで渡すことは出来ないのは分かっていますよね。その価値に見合う物を貴女は持っておいでで?」 あぁ、とうなずいて光は首飾りをはずした。更に石をはずし、机の上に別々に置く。 「精神世界でイーナスより譲り受けた。"命の欠片の結晶"・・・こちらでは手に入らない宝具だが?」 石から放たれる光はこの世のものではない。売れば一生暮らすに困らない程の価値はある。しかし―― 「・・・ですが、何の力も無いその石に 今どれほどの価値が?」 確かに、今の状況ではどちらが重いかは自明の理であろう。だが、光は臆することなく言った。 「俺達は最前線で命を懸けることになる。その重さは・・・その情報どころではない。 それに、あんたなら俺達がやられて自分に被害が来る可能性は少しでも潰したいだろう? "敵を知り己を知れば百戦危うからず"とはあんたが一番よく知っている言葉と思うが?」 最初からそれを予想していたのかベルは深い溜息をつくと石をはずした首飾り本体に機械をつける。―それは元からあつらえていたかのようにぴったりだった― そしてぶっきらぼうに光に投げる。光は見事それを首でキャッチして、頭を下げた。 「無線でつながっているからいつでも最新の情報がそれを通して見れます。・・・はぁ、全く無駄な手間を・・・・・・」 表面の冷静さとは裏腹にベルの目の奥は驚きを隠しきれていない。何気ないように石を掴み、懐に入れる。光はそれに気付かなかったことにした。 「で、これで用は済みましたか?」 ベルの言葉に拒絶の意を感じ、光はもう一度深く礼をしてから踵を返す。・・・そのまま瑞達の元に帰りかけて、ふと振り返った。 「あぁそうだ、後一つ。あんまり溜息をついていると幸福が逃げるぞ。 折角あんたは生きているんだから希望を持ってみてもいいんじゃないか?」 そう言った瞬間パソコンの画面のビースト来襲の予想時間が二時間延びる。それを見たか見なかったか光はそのまま去っていった。
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後に残されたベルが一人。 一旦検索をオートに切り替え、ベルは懐から石を取り出し眺める。それと同時に石の内に、外に、光がちらちら踊った。 それは、とっくに色を失ったはずの彼の世界に現れた七色の光だった。 ベルは重いため息をつきかけて・・・なんとなくそれを止めた。時間がなければゆっくり眺めることも出来なかったであろうその石を眺めつつ、つぶやく。 「・・・参ったなぁ。運命の導き・・・じゃないけれどまさか・・・」 石の別名は"去りにし日々の光"。生前の者の暖かい思い出がごく稀に結晶化したものと言う。もっともその思い出に強い思い入れがあるものでない限り見ることは出来ないが・・・ 「ユーナ・・・」 彼はその中に一番大切な人を見た。何の偶然だったのかそれは、彼女の思い出の石だったのだ。 天の彼に送る最後の贈り物、彼は両手でそれをそっと抱きしめた。
――静けき夜の折節、 いまだ眠りの鎖の絡まぬうちに いとしき思い出の運びくるは 去りにし日々の光・・・・・・――
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あまりダメージを受けていなかった瑞はなんとなく目が覚めてしまった。 何となく立ちあがった途端に地面が揺れたような気がして慌ててソファーにしがみつく。 ・・・が、何のことは無い揺れていたのは地面じゃなく瑞の感覚のほうだった。空腹の感覚を瑞は思い出す。 お腹がすいているんだ・・・ということにやっと気がついた瑞はテーブルの上に置いてあったヒメリの実を食べた。 甘酸っぱく辛い味が瑞ののどを通って胃の腑に落ちる。採れたてだったようで苦味が殆ど無かった。 満腹になって改めて周りを見渡す余裕が出来ると、そこにクラッシュ(光)がいない事に気付いた。 そのまま、さっきのヒメリの実をいくつか持って光を探しに行く、何故かはわからないが何となくそうしなきゃいけないような気がしたのである。 曲がり角を曲がったところで瑞は立ち止まった。見慣れた闇色の炎が目の前に舞う、先にいたのは・・・言うまでもない光の姿だった。 「どうしたんだ?こんな所で・・・」 「クラッシュこそ・・・」 確かに私のほうが先に言うべきだな・・・と光は苦笑して話し始めた。 「前のつながりを利用して・・・ビーストの情報を手に入れてきた。早ければあと5時間半で着くそうだ。」 瑞はそれにはあまり驚かなかった。ついに来るべきものが来たという感じで 「そっか・・・・・・」 と受け止めた。そのまま数分間沈黙が続く。 「・・・ミュウツーだそうだ。」 唐突に光はそう言った。瑞はそれにもただうなずく。 二人とも一度は戦ったことの有る相手だ。その強さは十二分に分かる。また沈黙に陥りそうになったとき、瑞が不意にヒメリのみを差し出した。 「クラッシュ、これ。・・・体が出来たからまたお腹すくでしょ? 少し食べておかない?」 思い出したかのように光の胃が音を立てかけ・・・なんとか自制心で押さえつける。 「ありがとう。」 そう言ってヒメリの実を受け取り、食べながらふと瑞を見る。 「・・・そうだ。一つ忘れていたことがある。私の名・・・といってもHNだけれども、本当は光というんだ。 小鷹 光。」 瑞は一瞬ぽかんとして尋ねる。 「じゃあクラッシュは?」 「荒らしようの捨てハンだ。」 すぐに切り捨てて、そして語りだす。 「私はもともと・・・こちらに有害作品淘汰の目的で連れてこられた心算だったから、俗名を捨てて破壊活動に専念することにしたんだ。 本当は言葉だって特に年上の人には敬語を使うのが常だし、戦闘もそこまで好きじゃない。」 そこまで一気に言って、声を落とす。 「・・・ただどうしても許しがたかったんだ。」 その目に一瞬暗い光が宿る。荒らしのときそのままの・・・ 「大丈夫だよ。」 瑞は光の肩を叩いてみる。ただ、一寸高すぎて格好がつかないのだが・・・。 「まだ向こうの世界にも純粋にポケモン好きな人いっぱいいるし・・・きっと良くなると思う。」 「・・・有り難う。」 瞳にもう暗さは映っていなかった。ふっと振り払うように頭を振り、思い切りよく言った。 「さて、他の人には悪いけど叩き起こして対策を練らなくちゃならないな・・・。」 光が笑むと瑞もそれにこくんとうなずく。光は前を向いて改めてこの世界の空気を吸った。 〜風が清々しい〜 「じゃあ、行きましょうか?」 二人は意味も無く駆け出した。生者の世界の希望を守りに・・・ ******
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「10まんボルト!」 「いわなだれ!」 「サイコウェーブ!」 「ミサイルばり!」 秋葉、ルカ☆、ラティアス、ラティオス、ノクタスちゃんの一斉放火が、ビースト目掛け放たれた! 「・・・くっ!」 ビーストはそれをよけた。だが、攻撃をかわすことに専念するあまり、姿勢を保つことができないでいた。 「今だ!リーフブレード!」 「かみつく!」 「かえんぐるま!」 「かみなりパンチ!」 その隙目掛け、アッシマー、ベルカ、バク次郎、サナの肉薄攻撃が一度に向かって来た! 「この汚らわしい幻想どもめが!」 ビーストはスプーンを使い、4人の攻撃を食い止めた。 「汚らわしい幻想だって・・・そんなのはお前が勝手に抱いている偏見だ! そんな事を言うお前だって、現にポケモンの姿をしているじゃないか!」 アッシマーはそう言って、もう片方の腕のリーフブレードでビーストに斬りかかる! 「・・・小ざかしい事を言うな! 小僧!」 ビーストはサイコキネシスでアッシマーの腕を止めた! 「本当ならば俺も、このような姿はさらけ出したくないのだ! 実体を持たなくても存在できた精神世界はともかく、ここでは実体を伴わなければ生存できないからこの姿を借りているだけだ! こんな醜い姿など、誰が好き好んで借りるものか!!」 ビーストはさらにサイコキネシスのパワーを強め、肉薄攻撃をかけたベルカ以外の3体を弾き飛ばす! 「まだまだっ・・・!」 ベルカはスプーンから口を離し、体勢を立て直してビーストに飛びかかる・・・ 「・・・へん! よくそんなので強いって言えるわね! あんたなんかより私のほうがも〜っと強いんだから! 調子乗ってるんじゃないわよ!」 と思いきや、ベルカはいきなり根も葉もない誇大主張な自慢をし始めた。 「え・・・ちょっとベルカ、なにやって・・・」 「いや、あれはポケモンの技『いばる』よ、ルカ☆ちゃん。 ベルカちゃんはビーストを混乱させたんだわ。今がチャンスよ!」 ルカ☆の言葉に答えたサナは、前に歩み出た。 「この隙に! くらえ、かみつく!」 「必殺かみなりパンーチ!」 ベルカとサナは、ビーストに勢いよく飛び掛った。
「墓穴を掘ったな・・・」
どう聞いても混乱しているとは思えないほど、いつものように落ち着いた声でビーストが言った。 「・・・! しまった! まさか・・・」 アッシマーが気付いたときには最早手遅れだった。 「シャドーボール・・・ばくれつパンチ!」 ビーストは右手の拳をベルカに叩きつけ、左手で黒い塊をサナに投げ付けた! 効果は抜群だ! 「ああっ!」 「きゃあっ!」 2人は弾き飛ばされ、無抵抗に地面に叩きつけられた。
「惜しかったなぁ、お2人さん。悪いが『しんぴのまもり』を使わせてもらっていたんでね。 攻撃が上がる恩恵だけは頂かせてもらったよ・・・」 ビーストはニヤリとほほ笑み、ベルカに視線を向けた。 「さて・・・執行と行くか」 ビーストは携えたスプーンをフォークに変形させ、大ダメージを受けた上に混乱しているベルカに踊りかかる。 「ベルカちゃん! 逃げるんだ!」 アッシマーはベルカに向かって大声で叫んだ。しかし、大ダメージを受け体を動かす事もままならないベルカには、逃げることは最早不可能であった。
「ぎゃあっ!」 鈍い音、うめき声にも似た悲鳴、飛び散った血しぶき・・・ ベルカは、胴体を完全に銀のフォークに貫かれていた。 「・・・パパ・・・マ・・・マ・・・・・・」 茶色の体毛を赤黒く染めたベルカは力なく空を見上げ、小さな声で言った。そして、動かなくなった。
「ベルカちゃーん!!」
アッシマーの悲痛な叫びは、空しく空にこだまするだけだった。
「次は貴様だ」 ビーストはベルカの屍からフォークを抜くと、それをサナに向けた。 そして、サナ目掛け襲い掛かってくる! 「い・・・いやあああああっ!」 サナの悲鳴が響いた。と、そのとき。 「かえんぐるまぁ!!」 炎を身にまとったバク次郎が、ビーストに突撃した! 「アネさんは・・・誰にもやらせねぇ!」 バク次郎はサナの前に仁王立ちして、力強く言い放った。 「くそ・・・貴様ら・・・」 ビーストは体勢を立て直し、再び攻撃の態勢に入ろうとした。が・・・ 「ビーストさぁん、そんなにいじめないでよぉ・・・ もうちょっと優しくしてもいいでしょ? ねぇ、ビーストさんv」 「な・・・」 ラティアスが突然、ビーストに擦り寄った。『あまえる』だ。 ビーストの攻撃はガクッと下がり、これで能力はリセットされた! 「お兄ちゃん! 今よ!」 「わかった!」 ラティアスは後ろへ下がり、ラティオスが前へ出た。 「くらえ! ドラゴンクロー!」 ラティオスはドラゴンクローをビースト目掛け叩き込んだ! それはクリーンヒットした・・・かに見えた。 「そんな攻撃が効くと思ったか? そこの青ドラゴン」 「な・・・!?」 ついさっきまでそこにいた、ビーストの姿は掻き消えていた。 「コイツ・・・また幻を・・・」 「あ! 見て!」 突然、ルカ☆のけたたましい声がした。 「どうした・・・あ!」 その光景を目にした時、誰もが驚き、そして恐怖した。 「・・・なんなのだこれは!!」 ルカ☆の視線の先を見たディグダマンの顔が青ざめる。覆面のせいで見えないのだが・・・
「フフフ・・・これでも戦えるかな?」 そこには、何十にも分裂したビーストの姿があった。その一つ一つが不気味に笑い、こちらを見ている。 「・・・やれるかどうかわからない。でも、やるしかないんだ!」 そう言って真っ先にビーストの群れに突っ込んだのはルカ☆だった。 それに続いて、秋葉、ラティオス、ノクタスちゃん、バク次郎が群れの中へ突っ込んでいく。 「いわなだれ!」 「きあいパンチ!」 「ドラゴンクロー!」 「だましうち!」 「かえんぐるま!」 4体は群れの中で、ひたすら技を繰り出し続ける。 しかし、技はどれも空を切るばかり。それどころか、幻の数は際限なく増えていく。 「くそ! 数が多すぎる! 手に負えねぇ!」 バク次郎が叫ぶ。 「・・・待っててください! 僕も行きます!」 アッシマーはバク次郎からもらったシルフスコープを付けた。 そこには、何もない空間に向かって技を出し続けている仲間たちと、それを上から笑いながら見ているビーストの姿が見えた。 (なるほど・・・消耗するのを待ってから仕留めるつもりなんだな・・・だけど、そうはいくもんか!) アッシマーはビースト目掛けジャンプする! 「リーフブレード!」 「何!?」 不意を付かれたビーストは、リーフブレードの攻撃をもろに受けてしまった。 「ぐあっ!」 ビーストはその勢いで、地面に叩きつけられた。 「今度こそ・・・お前を倒す!」 アッシマーの目の色が変わっていく。怒り・・・そして決意に満ちた表情だった。 「とどめッ!!」 アッシマーは地面に手をあてた。彼の必殺技、『S・B・U・B』を繰り出す体制だ。 「がんせきふうじッ!!」 アッシマーの手元の地面が割れ、岩石が隆起していく。 そしてそれはビーストに直撃し、ビーストを岩の塊の中に閉じ込めた。 「続けて・・・!」 「わわっ・・・・・・きゃあっ!」 アッシマーがビーストに続けてリーフブレードを叩き込もうとした瞬間、甲高い悲鳴が彼の耳に飛び込んだ。 そして、アッシマーの目の前に何かが現れた。 「!!」 アッシマーは驚き、手を止めてしまった。 彼の目の前にいたもの、それは・・・
「ラティアス!?」
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