[819] SECTION07 完全なるポリゴン、誕生! |
- フリッカー - 2009年05月22日 (金) 18時09分
あたし、ヒカリ! 出身はフタバタウン。 あたしがサトシ達と合流した時にいた、あたしと瓜1つの姿を持つ女の子。その正体はシンオウ一のお金持ち、ベルリッツ家出身の女の子、プラチナ・ベルリッツ。この子が偶然あたし達の近くにいた事が、騒動の原因だった。 こんなひょんな事から知り合ったあたしとプラチナは意気投合、一緒にプラチナの泊まる高級ホテルでご飯を食べたりした。そして一緒に製鉄牧場へ行ったその時、ゲイリー率いるプラチナを狙う黒ずくめの集団が襲ってきて、プラチナを人質に取って牧場に立てこもったの! そんなゲイリーの要求するものは、『Zファイル』。ベルリッツ家の人が封印していたファイルで、そこにはポケモンの秘密を暴く、悪にも転がりかねない技術が封印されているんだって! プラチナのパパ、コバルトさんはやむを得ずZファイルをゲイリーに渡したけど、ゲイリーはそれを使って、何かとんでもない事を企んでいるみたい……!
SECTION07 完全なるポリゴン、誕生!
「これって、まさか……」 「進化……!?」 ヒカリとサトシが、声を洩らしました。 間違いなく、進化が始まっています。ポリゴンの進化系と言えば、ポリゴン2やポリゴンZがいます。でも、目の前のポリゴンは、明らかにポリゴン2に進化するとは思えない進化をしていました。 体から2本の手と、2本の足が伸びて、首も長く伸びていきます。シルエットも角が取れて、どんどんスマートになっていきます。そして光が収まると、ポリゴンは今まで見た事のない、全く別のポケモンになっていました。 カラーリングにポリゴンの面影は残してはいますが、そのシルエットは全くの別物で、細長い足はしっかりと床を踏みしめています。短いけど手も生え、そして長い尻尾と少し鋭くなった顔。まるでずつきポケモン・ズガイドスなどのような、恐竜時代のポケモンのような姿になっていたんです。 「見たか!! これがポリゴンの真の姿だ!!」 ゲイリーは高らかに叫びました。 「何なんだ、あのポケモンは……!?」 サトシがポケモン図鑑を取り出しましたが、図鑑の画面には『NO DETA』という文字が表示され、「データなし」という言葉が流れるだけでした。 「まあ、あえて名前を付けるなら、『パーフェクト・ポリゴン』と言ったところか」 ゲイリーはサトシの言葉に答えるように、そうつぶやきました。 「さあ、パーフェクト・ポリゴンよ!! お前の力を見せてやれ!!」 ゲイリーが指示すると、パーフェクト・ポリゴンは風を巻いてこちらに向かって走ってきました。すぐにサトシが前に出て、応戦しました。 「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」 「“でんじほう”!!」 ピカチュウとパーフェクト・ポリゴンが、ほぼ同時に電撃を発射しました。その電撃は正面からぶつかり合い、そして大きな爆発を起こしました。黒い煙が、辺りの視界を遮りました。このように視界が遮られた状況では、自分の影は見えなくなりますが、当然敵の姿も見えなくなります。ですから、何も考えずに指示を出す事はできません。つまり、何か周りの状況を探る方法がない限りは、両者共うかつに動く事はできません。サトシもそれをわかっているのか、すぐには指示を出しませんでした。 「“トライアタック”!!」 でもゲイリーは、すぐに指示を出しました。このように周りが見えない状況にも関わらず。すると、煙の中から爆発音が響いたと思うとピカチュウの悲鳴が聞こえてきました。そして煙の中から、ピカチュウが弾き飛ばされてきました。そして煙が晴れると、勝ち誇ったように立つパーフェクト・ポリゴンの姿が。あの煙の中で、攻撃できたというのでしょうか!? 「ピカチュウ!?」 「へへっ、こいつの目にはジバコイルのデータを使っていてな、あんな煙の中でも暗視ゴーグルのように相手を見つけられるのさ」 「ジバコイルのデータを……!?」 ゲイリーの言葉に、私は驚きました。ジバコイルの目は暗視ゴーグルの役割をするそうですが、その能力をパーフェクト・ポリゴンに取り入れられている……!? 「さあ、そろそろ見せてやろうか。完全なるベルリッツ・システムを組み込んだ、パーフェクト・ポリゴンの真の力を!! “ラーニング”だ!!」 余裕の表情を見せるゲイリーが、今まで聞いた事のないわざを指示しました。すると、パーフェクト・ポリゴンの目が一瞬光ったと思うと、パーフェクト・ポリゴンの体が、急に粘土で形を作るように、形を変え始めました。そしてその姿は、全く違うシルエットのポケモンへと変わったんです。 「あれは……ドンファン!?」 長い鼻に太い4本の足、そして大きな耳。その姿は紛れもなく、サトシの言う通り、よろいポケモン・ドンファンだったんです。 「そんな、ドンファンに“へんしん”した……!?」 私は思わず、声を上げてしまいました。それに驚く間もなく、ゲイリーはドンファンの姿となったパーフェクト・ポリゴンに指示を出しました。 「“だいちのちから”だ!!」 ドンファンの姿となったパーフェクト・ポリゴンが吠えると、ピカチュウの足元の床が割れ、そこから白い光線が飛び出しました。突然の攻撃を、よけられるはずがありません。効果は抜群。ピカチュウは容赦なく跳ね飛ばされてしまいました。 「ピカチュウ!!」 「こうなったらポッチャマ、“バブルこうせん”よ!!」 とっさにヒカリがフォローに出ました。ヒカリのポッチャマがドンファンの姿となったパーフェクト・ポリゴンの前に飛び出しました。 「“ラーニング”だ!!」 するとゲイリーは、またあのわざを指示しました。すると、ドンファンの姿となったパーフェクト・ポリゴンの目がまた光り、また姿が変わり始めました。今度は一転して背が高くなり、体の色は緑色に変わり、木のような尻尾を持つ、2本足で立つドラゴンポケモンのような姿になりました。 「あれは、ジュカイン!?」 その姿は、紛れもなくみつりんポケモン・ジュカインでした。その姿に変わった瞬間、ヒカリのポッチャマの“バブルこうせん”が飛んできました。でも、くさタイプのジュカインには効果は今ひとつ。決定打にはなりません。 「また変わった!? 何なのあいつ!?」 「“リーフブレード”!!」 ヒカリが驚いた直後、ゲイリーが指示を出しました。ジュカインの姿となったパーフェクト・ポリゴンは、腕の葉を使って素早くポッチャマを切りつけました。効果は抜群。ポッチャマはたちまちヒカリの前へと弾き飛ばされてしまいました。 「ポッチャマ!?」 「続けて“タネマシンガン”!!」 ヒカリが驚くのを尻目に、ジュカインの姿となったパーフェクト・ポリゴンは、“タネマシンガン”をこちらに発射しました! それはポケモン達だけでなく、私達も容赦なく襲いかかりました。 「わあああああっ!!」 私達は反射的に後ろに下がりました。“タネマシンガン”の雨は容赦なく続き、それがやっと止んだのは、私達が建物の外に出てしまった時でした。 「くっ、何なんだよあのポリゴン……!」 「どうしてあんなにコロコロ姿が変わるの!?」 サトシとヒカリは、唇を噛んでいました。そこに、ジュカインの姿から元に戻ったパーフェクト・ポリゴンとゲイリーがゆっくりと歩いてきました。 「どうだい? このパーフェクト・ポリゴンは、“ラーニング”ってわざを使えば、体のデータを書き換えて相手のポケモンに有利なタイプのポケモンにいくらでも姿をかえられるのさ。つまり、こいつは弱点がない、無敵のポケモンって事だ! それもこれも、手に入れたベルリッツ・システムのお陰さ!」 ゲイリーは勝ち誇ったように堂々と叫びました。 これが、ベルリッツ・システム……ポケモンの細胞に住む共生生命体『P』を思い通りに変化させる。それができるから、このような事ができるのでしょう。お爺様はこれが悪用される事を恐れていたようですが、それが現実のものになってしまった。私はベルリッツ・システムがどれほど恐ろしいものなのか、この力を目の当たりにして初めてわかりました。 「さあ、弱点がないこいつに、お前達はどう戦う?」 ゲイリーは挑発するように、私達に向けてそう言いました。
一体何なの、あのポリゴン? ゲイリーは勝手に『パーフェクト・ポリゴン』なんて名付けてるけど、あのポケモンは普通じゃない。 聞いた事もないわざ“ラーニング”を使って、姿がコロコロ変わる。それも、相手にするポケモンに有利なタイプのポケモンになるように。奪ったZファイルを使ってああしたみたいだけど、『ベルリッツ・システム』って何? それでどんな細工をしたって言うの? もうわからない事だらけ。 「サトシー!!」 「ヒカリー!!」 すると、後ろからタケシとケンゴの声が聞こえてきた。振り向くと、タケシとケンゴがこっちに向かってきている。周りの黒ずくめの集団はほとんど警官達に捕まっていて、あの大乱戦は終わっていたみたい。2人はゲイリーが連れているパーフェクト・ポリゴンの姿を見て、思わず足を止めた。 「何だ、あのポケモンは!?」 「あんなポケモン、見た事ないぞ!? 新種か!?」 2人は当然、見た事のないパーフェクト・ポリゴンの姿に驚きを隠せない様子だった。 「犯人に告ぐ!! あなた達の仲間達の多くは捕まったわ!! もうあなたに勝ち目はないから、無駄な抵抗は止めなさい!!」 すると、ジュンサーさんがたくさんの警官達を連れて、ゲイリーの前に出てそう叫んだ。それでもゲイリーは。余裕の表情を崩さないまま、ゆっくりと前に出る。 「……嫌だと言ったら? 行け!!」 ゲイリーの一声で、パーフェクト・ポリゴンが一気に前に飛び出した。見た事のないポケモンの姿に、ジュンサーさん達も驚きを隠せなかった。その間に、パーフェクト・ポリゴンの目が光った。まさか、また“ラーニング”!? その予想は的中した。パーフェクト・ポリゴンの姿は、大きく羽を広げたプテラへと変わって、勢いよく空へと舞い上がった。 「“はかいこうせん”!!」 ゲイリーが指示すると、プテラになったパーフェクト・ポリゴンは、速いスピードで飛びながら、口から“はかいこうせん”を発射! 光線は固まっていた警官達を、まとめてなぎ払った! 起きた爆発の上を、素早く飛び去るプテラになったパーフェクト・ポリゴン。 「“へんしん”した!?」 「とにかく、あいつの足を止める!! キノガッサ!!」 すると、ケンゴがすかさずモンスターボールを投げた。出てきたのはきのこポケモン・キノガッサ。ポケモンコンテスト・ズイ大会でも使ったあのポケモン。 「“しびれごな”だ!!」 キノガッサは頭の傘から、黄色い粉をばら撒いた。“しびれごな”は、相手を『まひ』させるわざ。動きの速いプテラに使うのは、有効な戦法。すると、プテラになったパーフェクト・ポリゴンの目がまた光って、プテラの姿からまた違う姿へと変わり始めた。また“ラーニング”!? 変わった姿は、茶色の人型のシルエット。長い足が特徴のキックポケモン・サワムラーだった。サワムラーになったパーフェクト・ポリゴンは“しびれごな”の中にそのまま飛び込む。でも“しびれごな”は全然聞いてない。 「また変わった!?」 「まずい!! とくせい『じゅうなん』でサワムラーは『まひ』しないぞ!!」 驚いたケンゴに、タケシが叫んだ時にはもう手遅れだった。サワムラーになったパーフェクト・ポリゴンは、あっという間にキノガッサの前に躍り出た。 「“ブレイズキック”!!」 ゲイリーが指示すると、サワムラーになったパーフェクト・ポリゴンの足が、炎に包まれる。そしてその足で、キノガッサに強烈なキックをお見舞いした! 直撃! 効果は抜群! 炎に包まれたキノガッサは、そのままケンゴの目の前まで跳ね飛ばされた。 「キノガッサ!!」 ケンゴが叫んでも、キノガッサは起き上がる事はなかった。完全に戦闘不能。 「相手がかくとうなら……行け、フーディン!!」 ケンゴはキノガッサをモンスターボールに戻すと、今度はねんりきポケモン・フーディンを繰り出した。ポケモンコンテスト・ソノオ大会で使ったポケモン。 「“サイコキネシス”!!」 フーディンが念じ始めると、サワムラーになったパーフェクト・ポリゴンが、念力に捕まえられた! 効果は抜群! 「やった!! 聞いてる!!」 「“ラーニング”だ!!」 でもゲイリーは、また“ラーニング”の指示を出した。するとサワムラーになったパーフェクト・ポリゴンの目がまた光って、また姿が変わり始めた。体が小さくなったと思うと、その姿はかぎづめポケモン・マニューラの姿になった。マニューラになったパーフェクト・ポリゴンは、フーディンの強い念力がまるで働いてないかのようにサッと飛び出した。そうだ、あくタイプにエスパーわざは全く効かないんだったっけ! そのままフーディンに躍りかかる! 「まずい!! フーディン、“ひかりのかべ”!!」 慌ててケンゴが指示を出した。フーディンはすぐに目の前に透明な壁を張って、マニューラになったパーフェクト・ポリゴンの攻撃に備える。 「“かわらわり”!!」 でもゲイリーが指示したのは、そんな“ひかりのかべ”を壊せるわざだった。マニューラになったパーフェクト・ポリゴンは、その鋭いツメを使って、簡単に“ひかりのかべ”を割ってみせた。 「“あくのはどう”!!」 そしてそのまま、“あくのはどう”を発射! 至近距離。よけられるはずがない! 効果は抜群! そのままフーディンは、仰向けに倒れた。戦闘不能。 「そんな……何なんだよ、あいつ!?」 ケンゴはマニューラになったパーフェクト・ポリゴンを見て、動揺を隠せない様子だった。その顔は、少しだけ怯えているようにも見える。そんなケンゴの表情を見たのは、幼馴染のあたしも初めてだった。あんな得体の知れない相手の能力を見たら、当然なのかもしれないけど。 「グレッグル、“かわらわり”だ!!」 今度はタケシのグレッグルが、マニューラになったパーフェクト・ポリゴンに向かって飛び出した。右手を振り上げて、マニューラになったパーフェクト・ポリゴンにチョップをお見舞いしようとした。でも、マニューラになったパーフェクト・ポリゴンの目が光って、また姿が変わり始めた。今度は背がどんどん高くなっていく。そこに、グレッグルのチョップが振り下ろされた。でもその手は、簡単に受け止められた。パーフェクト・ポリゴンの姿は、マニューラからほうようポケモン・サーナイトの姿に変わっていた。その手が、グレッグルの振り下ろそうとした手を簡単に受け止めている。 「“サイコキネシス”!!」 サーナイトになったパーフェクト・ポリゴンは、そのまま強い念力でグレッグルを吹き飛ばした! 効果は抜群! 「グレッグル!!」 タケシの叫び声も空しく、グレッグルはもう戦闘不能になっていた。 「言っただろう、パーフェクト・ポリゴンに弱点はないってな!! いくら戦おうがお前達に勝ち目はない!!」 ゲイリーのそんな叫び声に合わせるように、サーナイトになったパーフェクト・ポリゴンは、また念じ始めた。すると、あたし達の体が、宙に浮いて、そのまま吹き飛ばされた! 一瞬の出来事だった。気がついた時には、あたし達は地面に叩きつけられていた。 「という訳だ、いつまでもお前達の遊びに付き合うつもりはねえ。あばよ!!」 ゲイリーはあたし達の目の前を、サーナイトになったパーフェクト・ポリゴンと一緒に、悠々と走り去っていく。そして、誰も乗っていない1台のパトカーの中に乗り込んで、エンジンをかけた。 逃げられちゃう! あたしは何とか痛む体を立たせたけど、その時にはもう、奪われたパトカーは動きだして、もうその場を走り去っていこうとしていた。逃げられた……
と思ったその時。 突然、走り去ろうとしていたパトカーの前に、大きな地響きを立てて、大きな黒い塊が落ちてきた。パトカーは慌ててよけようとしたけど、その塊から延びた手に、あっさりと捕まって、持ち上げられた。そのシルエットはまるで怪獣みたいな感じだったけど、よく見たらそれはボスゴドラ! でもボスゴドラにしては大きすぎる。小さなビルくらいの、本当に怪獣みたいな大きさしてるし、何より体が何だかメカっぽい。 「何だあれ!?」 『降臨! 満を持して!!』 するとそのボスゴドラから、聞き慣れた声が聞こえてきた。あの声は、ロケット団のコジロウ!? すると ボスゴドラの胸の部分が開いて、中から何かがせり上がってきた。 「何だかんだの声を聞き!!」 「光の速さでやって来た!!」 「風よ!!」 「大地よ!!」 「大空よ!!」 「世界に届けよ、デンジャラス!!」 「宇宙に伝えよ、クライシス!!」 「天使か悪魔か、その名を呼べば!!」 「誰もが震える、魅惑の響き!!」 「ムサシ!!」 「コジロウ!!」 「ニャースでニャース!!」 「時代の主役は、あたし達!!」 「我ら無敵の!!」 「ロケット団!!」 そこにいたのは、間違いなくいつものあいつら――ロケット団だった。なんでこんな時に出てきたの? ゲイリーを捕まえたって事は、ひょっとしてあたし達に味方するつもり? 「くっ、何なんだてめえらは!!」 パトカーからいつの間にか降りていたのか、ゲイリーがボスゴドラの足元で叫んだ。 「今度こそ製鉄牧場のココドラ達をゲットしようと思って、『メカコドラ』を『メカボスゴドラ』に進化させて来たら、見た事のないポケモンがいると来たじゃない!」 「しかも、いろんなポケモンに自在に変身すると来たら、我らロケット団がゲットするしかないぜ!」 「そのポケモンをボスにプレゼントすれば……!」 「幹部昇進!! 役員就任!! いい感じーっ!!」 ロケット団の2人と1匹は、揃ってそんな事を叫んだ。何だかあたし達に味方するんじゃなくて、パーフェクト・ポリゴンそのものを狙っているだけみたい…… 「そんな訳で、そのポケモンはいただいて行くわよ!!」 ムサシの一声に合わせて、ロケット団の2人と1匹は、すぐにボスゴドラ、もといメカボスゴドラにまた乗り込んだ。ハッチが閉まると、メカボスゴドラが動き出した。そして、持ち上げていたパトカーを強引に投げ捨てる。 『まずは“メタルクロー”なのニャ!!』 ニャースの声がスピーカーから聞こえてきたと思うと、メカボスゴドラは、その大きな腕を振り上げて、一気に振り下ろした! ゲイリーとサーナイトになったパーフェクト・ポリゴンは慌ててかわす。紙一重。メカボスゴドラの腕が、ズシンと地面に突き刺さった。それが外れたのを確かめると、突き刺さった腕を強引に引き抜く。 『ええい、すばしっこいわね!!』 『なら次は、“アイアンテール”なのニャ!!』 今度は尻尾を思い切り横に振る。勢いよく振られた尻尾が、横からゲイリーとサーナイトになったパーフェクト・ポリゴンに襲いかかる! これは当たる。あんまり期待している訳じゃなかったけど、ロケット団ならパーフェクト・ポリゴンを止められるかもしれないって、一瞬思っちゃった。 「くそっ、“サイコキネシス”だ!!」 ゲイリーはすぐに指示を出した。サーナイトになったパーフェクト・ポリゴンは、“サイコキネシス”を使ってメカボスゴドラの尻尾を受け止めてみせた。 『何ぃ!?』 ロケット団の驚いた声がスピーカーで響いた。 「そんな相手になりないなら、なってやるよ!! “ラーニング”だ!!」 ゲイリーが指示すると、サーナイトになったパーフェクト・ポリゴンの目が光って、また姿が変わり始めた。人よりも高く背が大きくなると、それはよろいポケモン・バンギラスの姿になった。 「パワーにはパワーだ。“はかいこうせん”!!」 ゲイリーが指示すると、バンギラスになったパーフェクト・ポリゴンは、口から“はかいこうせん”を発射! 光線はメカボスゴドラの首に命中! そして大きな爆発を起きると、メカボスゴドラの首がたちまち吹っ飛んだ。 『わあああああっ!!』 スピーカーで響くロケット団の悲鳴。そして、そのままメカボスゴドラは爆発の衝撃で大きな音を立て倒れて、動かなくなった。そんなメカボスゴドラの中から、ロケット団の2人と1匹が飛び出す。 「このーっ、こうなったらポケモンバトルよ!! 行くのよ、ハブネーク!!」 「マスキッパ、お前もだ!!」 ロケット団の2人はすぐにモンスターボールを取り出して、強く投げた。中から飛び出すハブネークとマスキッパ。でもマスキッパは相変わらず、嬉しそうにコジロウの頭に噛みついたけど。 「ハブネーク、“ポイズンテール”!!」 「マスキッパ、“タネマシンガン”!!」 ハブネークとマスキッパが、指示を聞いてバンギラスになったパーフェクト・ポリゴンに向かって飛び出した。 「へっ、こんな相手じゃ“ラーニング”を使うまでもないな。“いわなだれ”!!」 ゲイリーは余裕を見せて指示を出した。バンギラスになったパーフェクト・ポリゴンが吠えると、バンギラスになったパーフェクト・ポリゴンの上からたくさんの岩が雪崩のように落ちてきた! “いわなだれ”はハブネークとマスキッパの2匹をまとめて押し流して、ロケット団までも巻き込んだ。 「“はかいこうせん”!!」 続けてゲイリーが指示を出すと、バンギラスになったパーフェクト・ポリゴンは、もう一度“はかいこうせん”を、ロケット団に向けて発射! 光線は真っ直ぐ動けないロケット団に向けて吸い込まれていった。そして爆発! 「うっそだあああああっ!!」 そんな叫び声を響かせながら、ロケット団はあたし達にやられた時と同じように、空の彼方へと消えていった。 「へっ、口はでかくても中身は大した事のねえ奴だったな」 ゲイリーがそうつぶやくと、パーフェクト・ポリゴンはバンギラスの姿から元の姿に戻った。 やっぱりあいつは、ロケット団で相手にできるような奴じゃない……
* * *
目の前で思う存分披露された、パーフェクト・ポリゴンの力。 Zファイルに封印されたベルリッツ・システムの力が、これだけの力を与えるなんて……彼はこの力を、どんな悪事に利用しようとしているんでしょうか。それが何なのかはわかりません。ただ、これが悪事に利用されてしまえば、恐ろしい事態が待っている事だけは、理解できました。 私の一族が生み出し、その手で封印した技術が、今目の前で悪事に利用されようとしている。それだけは止めなければなりません。一族の人間として。そんな思いが、私の中で強くなっていきました。 私はロケット団が空へ消えていってすぐに、前へと飛び出しました。プラチナ、と私を止めるヒカリの声が聞こえましたが、それには構っていられません。 「ポッチャマ!!」 私が呼ぶと、ポッチャマがすぐに私の横から飛び出しました。 「“みずのはどう”!!」 向こうはまだこちらに気付いていません。この隙なら……! ポッチャマは“みずのはどう”をパーフェクト・ポリゴン目がけて発射しました。でもその瞬間を、ゲイリーに気付かれてしまいました。 「後ろだ!! かわせ!!」 ゲイリーのとっさの指示で、パーフェクト・ポリゴンは“みずのはどう”をジャンプしてかわしました。そして反転してこちらに体を向けて着地。 「誰かと思えばお前か、プラチナ・ベルリッツ」 「Zファイルの技術を、あなたに悪用させはしません!! ベルリッツ家の名に賭けて!!」 私はこちらに鋭い視線を突き刺すゲイリーに、はっきりとそう叫びました。 「ポッチャマ!!」 私が叫ぶと、ポッチャマは真っ直ぐパーフェクト・ポリゴンに向かって飛び出しました。 「名に賭けて……か。“ラーニング”!!」 ゲイリーは少しだけ笑みを見せると、また“ラーニング”の指示を出しました。するとパーフェクト・ポリゴンの目が光り、姿が変わり始めました。人に近いシルエットになって変わった姿は、でんげきポケモン・エレブーでした。 「“かみなりパンチ”!!」 ゲイリーが指示すると、エレブーの姿となったパーフェクト・ポリゴンの拳に電気が走りました。その拳を、向かってきたポッチャマに叩き込みました。直撃。そして効果抜群。ポッチャマはたちまち弾き飛ばされてしまいました。 「ポッチャマ!!」 「“ほうでん”!!」 私が叫ぶ間もなく、ゲイリーは次の指示を出しました。エレブーの姿となったパーフェクト・ポリゴンが放った電撃は、ポッチャマだけでなく、私にも襲いかかってきました。 「きゃあああああっ!!」 私の体に電撃が走り、体の力が抜けていきました。そのまま私の体はその場に崩れ落ちました。 「ベルリッツ家の名に賭けて悪用させないだと? 笑っちまうぜ。お前達が表に出さずに封印した技術を、俺は『有効に』利用してやろうと思っているだけなのにな」 せせら笑うゲイリーとエレブーの姿となったパーフェクト・ポリゴンの前には、倒れて動かなくなったポッチャマの姿が見えました。完全に戦闘不能になっています。 「ま、まだです……私は……あなたを、止めてみせます!!」 私は電気でしびれて力が入らない体にむち打って、その場から立ち上がり、出せる限りの声で叫びました。そして、もう1つのモンスターボールを取り出しました。 相手がこれだけ強い相手でも、あきらめずに何か行動を起こしていけば……!
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