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[814] ヒカリストーリーEvolution 30作達成記念3部作 第2部:ベルリッツ家の秘密
フリッカー - 2009年05月08日 (金) 22時13分

 30作達成記念3部作、遂に2部へ!

 今回から物語の核心へと近づいていき、単なるヒカリとプラチナの共演だけでは済まない展開が待っています!
 お楽しみに!

[815] SECTION04 そっくりさんと大共闘!
フリッカー - 2009年05月08日 (金) 22時14分

 あたし、ヒカリ! 出身はフタバタウン。
 突然あたし達の前に現れた、謎の黒ずくめの集団。そいつらはあたしを狙っていて、あたしの事をなぜか『プラチナ・ベルリッツ』って呼ぶの。なんでそんな風に呼ぶのかは知らないけど、そいつらのせいであたしはサトシ達とはぐれちゃった!
 サトシ達を探すあたしの前に現れたケンゴ。でもケンゴは、最近会ってないはずなのにあたしと会ってどうのこうのと、訳わかんない事ばっかり言った。そんな時に、また襲ってきた黒ずくめの男、ゲイリー。そいつから逃げている中で、あたしはサトシ達と合流できたけど、2人には、信じられない人が一緒にいた……


SECTION04 そっくりさんと大共闘!


 バトルの最中、目の前に現れたのは、信じられない人でした。




 見慣れた服装に、見慣れた髪型、見慣れた帽子の女の子。

 それもそのはず、それはいつも私が鏡で見ている姿、つまり、私と全く同じ姿だったのです。

 もっと驚いたのは、その顔です。

 その女の子の表情も、見慣れたものだったのです。

 それもそのはず、それはいつも私が鏡で見ている顔……つまり、私と同じ顔にしか見えなかったのです。

 私と全く同じ姿をした女の子が、今私の目の前に立っているのです。何をどう見ても、鏡に映った像ではありません……




「あ、あ……あたしがいる〜〜〜〜!?」
 その女の子は信じられないものを見たかのように、私を指差して声を上げました。その指は少しだけ震えています。私はその女の子のように声を上げる事はしませんでしたが、信じられない気持ちは同じです。逆に、あまりに信じられなくて声が出ないのかもしれません。
「ど、どうなってるんだ!? ヒカリが2人いるぞ!?」
「しかも顔だけじゃなくて、服装まで瓜2つだぞ……!?」
 サトシとタケシも驚きを隠せないようです。
「ど、どっちが本物のヒカリなんだ!?」
 女の子が乗ってきた2ほんキバポケモン・マンムーから降りた人が、私達の間に入って声を上げました。その姿は、見覚えがありました。そう、製鉄牧場に行った時、私を『ヒカリ』と呼んだケンゴ。同時に、サトシが連れていたエテボースも間に入って、私と女の子を見て動揺を隠せないようです。
「みんな、なんでわからないの!? あたしがヒカリです〜っ!!」
 すると女の子が、いらだった様子でそう主張しました。その横に現れた小さなポケモンも主張しています。見るとそれは、私の手持ちにいるのと同じ種類、ペンギンポケモン・ポッチャマです。ただ、体の色は青。私のポッチャマは、体の色が水色の『色違い』なので、普通の体のポッチャマとすぐに見分けがつきました。その側にいるのは、ミミロップの進化前のうさぎポケモン・ミミロル。そのミミロルは、オレンジ色のポケモン用の服を着ています。そして、でんきりすポケモン・パチリスに、2ほんキバポケモン・マンムー。
「……うん、向こうにいるのは、確かに俺達の見慣れてるヒカリのポケモンだ……」
「それに、こっちの方は服の色が若干違うぞ。それに顔立ちも少し違う。第一、こっちの方は指輪まで着けているぞ」
 サトシが『ヒカリ』と名乗った女の子の側にいるポケモンを見て、タケシが私を見てそう言いました。なるほど私の服の色は、『ヒカリ』と名乗った女の子のものがピンクの所が、暗めの赤です。マフラーも短め。それに、その顔立ちも、鏡で見る私の顔とは少しだけ違う気がしました。何より、その両手には私が両手に付けているような、究極の硬度・ダイヤモンド、究極の真円・パールの指輪は着けていません。
 これで謎が解けました。彼らが私の事を『ヒカリ』と呼び、ポッチャマやミミロップの事を知っているような素振りを見せていた理由が。全ては、私の事をあの『ヒカリ』という女の子と勘違いしたのが原因なのですね。それにしても、まさか私と顔がそっくりで、似た服装をした人がいたなんて……
「じゃあ、こっちの方は……」
「あっちがニセモノよ!!」
 ヒカリは私を指差して、いきなりそんな事を言い出しました。全員の視線がこっちに向きました。ニセモノ。そんな事をいきなり言われて、私は当然驚きました。
「あ、いえ、あの……私は……」
「あんた、あたしに成りすまして、何を企んでいるの!! 正体を見せなさい!! ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」
 私はすぐにそれは違うという事を言おうとしましたが、言葉が思いつきません。そんな余裕も与えないまま、すぐにヒカリのポッチャマが、“バブルこうせん”をこっちに撃ってきました。とっさに私のポッチャマが、“みずのはどう”で応戦します。2つの攻撃は正面からぶつかり合い、相殺されて炸裂しました。2匹のポッチャマが、正面からにらみ合います。そしてこちらを鋭い視線を浴びせるヒカリ。このままこのポッチャマとバトルになってしまうのでしょうか……?

「メガヤンマ、“ぎんいろのかぜ”!!」
「マスキッパ、“タネマシンガン”!!」
「マニューラ、“ふぶき”!!」
 その3人の声で、あたしは現実に引き戻された。あたし達の前と後ろから違う攻撃が飛んでくる。それに気付いたあたし達は、慌ててよけようとしてその場から逃げた。あたしのすぐ後ろに降ってくる氷の雨。間一髪だった。あたしが振り向くとそこには、さっきまであたしを追いかけてきていた、プテラに乗るゲイリーがいた。その横にはマニューラがいる。
「へっ、まさか影武者を連れていたとはな……随分と慎重な奴じゃねえか、プラチナ・ベルリッツ!!」
 プラチナ・ベルリッツ。その名前を聞いて、あたしははっとした。まさか、この『プラチナ・ベルリッツ』って言うのは、あの子の名前……!? それなら、あたしがプラチナ、プラチナって呼ばれていた理由も説明がつく。後ろを見ると、ゲイリーの姿を見て驚いた様子を見せる女の子――プラチナの姿が見えた。プラチナはゲイリーの事を知っているように見えた。きっとゲイリーは、プラチナの事を狙っていたんだ。間違いない。それであたしの事をプラチナと間違えて……
「ニセモノだかクローンだか遺伝子パターンが同じなのか知らねえが、そっくりさんが2人いるなら両方やるまでだ!!」
「こうなったら2人のポケモン、まとめてゲットよ!!」
 向こう側には、メガヤンマとマスキッパを連れたロケット団の3人が。今までサトシ達の事やこのプラチナの事で、すっかりいるのを忘れていた。
 じりじりと迫ってくるメガヤンマとマスキッパ、そしてプテラとマニューラ。挟み撃ち状態。まさに前門のゲイリー、後門のロケット団。後ずさりすると、自然とプラチナと背中が合わさった。
「『プラチナ・ベルリッツ』って、あなたの名前なの?」
 あたしは背中合わせのプラチナに、そう聞いた。するとプラチナは、少しだけ驚いた様子を見せたけど、すぐにはい、とうなずいた。
「じゃああいつは、あなたを狙っていたのね?」
 あたしは続けて、こっちをにらむゲイリーに視線を向けて、そう聞いた。するとプラチナは答えた。
「ええ、この間いきなり襲われて……という事は、あのロケット団も、あなたを?」
 今度は逆にプラチナが聞いてきた。
「ええ、いっつもあたし達を追いかけてくる、しつこい奴らなの。とにかく、さっきはごめん。ニセモノだ、なんて言っちゃって」
 質問に答えた後、あたしはそう謝った。挟み撃ち状態のバトルが始まる前に、そう言いたかった。ただの見間違いであんな事になったのがわかったから。プラチナはそんな事をここで言われると思っていなかったのか、また少し驚いたような表情を見せたけど、すぐにその表情は緩んだ。許してくれたみたい。
「……わかりました」
「ありがとう。じゃ、ここは一緒にあいつらを……!!」
「そうですね……!!」
 あたしとプラチナは、そんなやり取りを交わして、改めてロケット団とゲイリーに視線を向けた。
「あの2人、何だか和解しちゃってるぞ……?」
「今は感心してる場合じゃないぞ!!」
 ケンゴのつぶやきに、タケシがツッコミを入れたのが聞こえた。あたしの前ではポッチャマが身構えていて、あたしの指示を待っている。あたしはそんなポッチャマに、指示を出した。
「行くわよ、ポッチャマ!!」
「行け、ポッチャマ!!」
「ポチャッ!!」
 あたしの指示が、プラチナの指示と重なった。そして、2匹のポッチャマの声も合わさった。
「マニューラ、“かわらわり”だ!!」
 先に仕掛けてきたのはゲイリーだった。マニューラがその足の速さを活かして、真っ直ぐポッチャマに向かっていった!
「ポッチャマ、“バブルこうせん”で足止めするのよ!!」
 ポッチャマはすぐに“バブルこうせん”を発射! それはいつも撃つよりも広く飛んで行った。たちまちマニューラの周りを“バブルこうせん”が回り始める。それに惑わされて、マニューラの足が自然と止まる。
「くっ、それならこっちにも手がある!! “ふぶき”!!」
 するとゲイリーは近づけないとわかったのか、戦法を変えたみたい。マニューラは口から勢いよく“ふぶき”を発射して、周りを回る“バブルこうせん”を吹き飛ばした。そしてそのまま、“ふぶき”はこっちに向かってくる!
「ポッチャマ、“うずしお”!!」
 すぐにあたしは指示した。ポッチャマは水の渦を作り出して、それを横に向けて投げつけた。そこに“ふぶき”が飛んでくるけど、“うずしお”に簡単に止められる。“うずしお”はそのまま凍り付いて、大きな氷の塊になってマニューラに襲いかかる!
「しまった!! また『カウンターシールド』って奴か!!」
 ゲイリーが気付いた時にはもう手遅れ。氷の塊は、たちまちマニューラに覆いかぶさった。氷の塊が崩れ落ちて、マニューラは氷の山の下敷きになった。これも立派な『カウンターシールド』!
「今よ、エテボース!!」
 あたしはエテボースに声をかけた。エテボースはさっきは少し戸惑っていたけど、本物があたしだとわかった事もあって、すぐに反応してくれた。
「“きあいパンチ”!!」
 エテボースは氷の山目掛けてまっしぐらに突っ込む。マニューラがやっと氷の山から顔を出した時には、もうエテボースの尻尾の拳がマニューラの目の前にあった。直撃! 効果は抜群! 氷の山ごと衝撃でマニューラを吹っ飛ばしたエテボース。マニューラのダメージはかなり大きいはず。
「く……!!」
 ゲイリーが唇を噛んだ。
「メガヤンマ、“ぎんいろのかぜ”!!」
「マスキッパ、“かみつく”だ!!」
 一方で、メガヤンマとマスキッパが、プラチナの水色のポッチャマ目がけて2匹がかりで向かってきた! それでもポッチャマは動かない。まさに2匹がポッチャマの目の前に迫った時、プラチナが初めて指示を出した。
「伏せて!!」
 その指示で、ポッチャマは指示通りその場にサッと伏せた。2匹の攻撃がポッチャマの上で空を切った。2匹は驚いた瞬間、2匹はそのまま、ポッチャマの上で衝突した。ポッチャマが素早くその場から離れると、2匹はそのまま折り重なって倒れた。
「ポッチャマ、“ふぶき”!!」
 そこを狙って、ポッチャマは“ふぶき”を発射! 折り重なっているメガヤンマとマスキッパに、容赦なく襲いかかった! 効果は抜群! たちまち2匹は氷の塊になった。
「ミミロップ、“きあいだま”!!」
 そこに、ミミロップが“きあいだま”を発射! メガヤンマとマスキッパを覆っていた氷を砕いて、そのまま弾き飛ばした! 2匹はそのままロケット団の所へと飛んで行って、ロケット団の2人に折り重なって倒れた。
「やるじゃない、プラチナ!!」
「そちらも、攻撃を攻撃で防ぐ戦法、見事でしたよ」
 あたしが言うと、プラチナもそう言葉を返してくれた。プラチナが『カウンターシールド』を知っていたのは少し驚いたけど、サトシの所にエテボースがいたんだから、あたしがいない間に何かの形で見せていたのかもしれない。
「く〜っ、やってくれるじゃないの!! 行くのよハブネーク!!」
「調子に乗りやがって!! サンダース!!」
 すると、ムサシのハブネークと、ゲイリーのサンダースが飛び出してきた。ほとんど同時に、こっちに向かってくる。
「“ポイズンテール”!!」
「“アイアンテール”!!」
 そして2匹は、ほとんど同時にこっちに向かってくる! あたしとプラチナは、顔を合わせて、うなずいた。こういう時は、挟み撃ちになっているのを利用して……!
「みんな、こっち!!」
 あたしはポケモン達に呼びかけて、すぐに横に逃げた。プラチナもそれに合わせる。プラチナも考えていた事は同じだったみたい。すると、ハブネークもサンダースも狙っている相手が急にいなくなって驚く。
「ミミロル、地面に“れいとうビーム”!!」
 すぐにあたしは指示を出した。ミミロルは地面に向かって“れいとうビーム”を発射! ハブネークとサンダースの間の地面が、たちまち凍りついた。ちょうどその場所に走ってきたサンダースとハブネークが、氷で足を滑られた。そのまま2匹はブレーキをかける事もできないまま、正面衝突!
「今よポッチャマ、“バブルこうせん”!!」
「ポッチャマ、“みずのはどう”!!」
 あたしとプラチナの指示が合わさった。あたしのポッチャマとプラチナのポッチャマが、一斉に攻撃! 2匹の攻撃は、衝突したハブネークとサンダースに見事命中! そんな連携攻撃に、ムサシもゲイリーも驚いていた。
「凄い……あの2人、息がピッタリじゃないか!!」
 タケシが驚いて声を上げた。あたし自身も、これほど初めて会った人と息を合わせられるとは思っていなかったけどね。
「ど、どうするんだムサシ……ハブネークがやられちまったぞ……?」
「……仕方ないわね、今日の所はひとまず撤収よ!!」
「撤収って、逃げるのかニャ!?」
「逃げるんじゃないわよ!! 一旦作戦を練り直すために、出直すのよ!!」
「そう言うのを逃げるって言うんじゃないのか……?」
「とにかく、撤収!!」
 ロケット団はそんなやり取りをした後、一目散にその場を離れていった。
「……ちっ、このままだと分が悪い。ここは俺も撤収するか。だが、何としてでも奴を誘拐して、『Zファイル』を手に入れねえと……!」
 ゲイリーもそんな事をつぶやいて、倒れたマニューラとサンダースをモンスターボールに戻すと、プテラは反転して空へと消えていった。

 * * *

 騒ぎが一段落した所で、あたし達はこれまで起きた騒動の事をまとめていた。
 ケンゴが少し前にあたしだと思って製鉄牧場で会っていたのは、プラチナ。そこで一悶着あった所にロケット団もたまたまやってきて、プラチナをあたしだと見間違えた。
 そしてロクショウシティに来てからあたしを狙っていた黒ずくめの集団は、あたしをプラチナと見間違えていた。それであたしがサトシ達と離れ離れになっている間に、サトシ達がプラチナを偶然見つけて、プラチナをあたしと見間違えて一悶着あった。
「……という事なんだな?」
 ケンゴがそうまとめて、聞く。そういう事になるな、とサトシがうなずく。
「ホント、ごめんな。結構ヒカリにそっくりだったから見間違えちゃって……なあ」
「あ、ああ……ホントにごめん」
「いいんです。こうやって解決できたんですから」
 プラチナに顔を向けて謝るケンゴとサトシに、プラチナはそう答えた。プラチナは許してくれているみたい。でも、本物のあたしがわからなかったって事は、あたしはちょっとだけムカついた。だからそんな2人に、あたしは「もう間違えたりしないでよ」と言ってやった。それを聞いたケンゴもサトシは、苦笑いするしかなかった。
「そういえば、名前はなんて言ったんだっけ?」
 タケシが聞く。そういえば、プラチナは3人にはまだ名前を教えていない。
「プラチナ・ベルリッツです」
 プラチナは、すぐに答えた。するとタケシは、最後の『ベルリッツ』って言葉を何度か繰り返した。何か聞いた事がある言葉の意味を、思い出そうとしているように。
「ちょっと待て!? ベルリッツっていう事は、あの大財閥のベルリッツ家……って事か!?」
 そしてタケシはいきなり、声を上げた。プラチナは、それを聞いてうなずいた。
「大財閥、って事は……」
「つまり……『お金持ち』って事!?」
 あたしはサトシと顔を合わせて、思わずそう声を上げちゃった。
「ああ、シンオウ地方で一番の大財閥で、学者の家計でもある一族だと、前に聞いた事があるんだ」
「ええ〜っ!?」
 しかも、ただのお金持ちじゃない。シンオウ地方で一番のお金持ち。それを聞いて、あたし達は揃って声を上げちゃった。こんなお金持ちの女の子が、あたしのそっくりさんだなんて、あたしはどういう訳か運命的なものを感じずにはいられなかった。
「だからこんな指輪着けてたのね! いいなあ〜、あたしもこういうの着けてみた〜い!」
 あたしはプラチナの両手を取って、両手についた指輪を間近で見つめた。プラチナの左手で輝くダイヤモンドの指輪と、右手で輝くパールの指輪。いかにもお金持ちって雰囲気を醸し出している。こういうものは、女の子なら誰でも着けてみたいって思うはず。それが目の前にあるんだから、胸をときめかせずにはいられない。これって、何カラットぐらいなのかな?
「あ、あの……」
「ねえ、他にもこういうのいっぱいあるんでしょ? あたし見てみたい!」
 プラチナは少し困った表情を見せていたけど、指輪を見て興奮していたあたしはそんな事なんて気にも留めないで、そう聞いた。

 * * *

 私は、ヒカリ達を自分が泊まっているホテル、ホテル・グランドロクショウへと案内しました。私とそっくりな顔の人を連れてきた事で、当然ホテルの人達は驚いていましたが。
 ヒカリ達は一度このホテルを見た事があるらしく、ここに私がいた事に、驚いた様子でした。そして何より、ホテルの中を見て、みんな驚いていました。下々の者には見られていないものでしょうから、当然の事なのですが。特に目立っていたのは、ヒカリ。
「すご〜い!! こんな豪華なホテルに泊まれるなんて、まるで夢みたい!! ねえポッチャマ?」
 ヒカリは目を輝かせてフロア中を見渡しながら、声を上げ続けていました。周りの人の視線がそんなヒカリに集まりますが、彼女は気にしている様子がありません。むしろ、フロアに見とれて周りの様子が見えていないようです。
「こんなホテルに、毎回泊まっていたりするの?」
「ええ。それにこのホテルは、私の所有物ですから」
「へえ、すご〜い!! いいなあ、あたしもこういう所に泊まれたらなあ……」
 ヒカリはうらやましそうにつぶやくと、またフロアをきょろきょろと眺め始めました。そんなヒカリの周りにいるサトシ達は、ヒカリの様子を見て少し呆れた表情を見せていましたが。
 そもそも、ここに招待しようと私が思ったのは、単にヒカリにせがまれただけではありません。
 私は、ヒカリそのものに興味があるのです。
 世の中には、自分と同じ顔を持つ人が3人いると聞いた事がありますが、それは本当の事だと彼女との出会いで実感しました。最初こそ驚きましたが、そんな人とひょんな事から関わりあいを持ったというのは、奇跡的な事なのかもしれません。本当に、外の世界は私の知らない事ばかりです。
 私とそっくりな顔を持ち、かつ手持ちポケモンも私と似ているヒカリ。私は知りたい。そんなヒカリの事を。そして、自分とそっくりな人に出会ったという経験を、しっかりとこの身に刻み込みたい。私はそう考えていました。
「あの、1ついいですか?」
「何?」
 という訳で、私が1つある事を提案しようとヒカリに声をかけると、ヒカリはこちらを向きました。
「ヒカリの都合がよければ、こちらで一緒に夕食でも取りませんか?」
「えっ、いいの!?」
 私の提案に、ヒカリは驚いた様子で声を上げました。私ははい、とうなずきました。
「行く行く!! 絶対行きたい!! みんなも行きたいでしょ?」
 ヒカリはそう言って、サトシ達の方に顔を向けました。
「俺も行きたいぜ!!」
「ボクも!!」
「それなら、お言葉に甘えて俺も」
 サトシもケンゴも、タケシも乗り気です。
 それなら、ここにいる皆さんを、一緒に夕食に招待しましょう。私は決めました。

 * * *

 そしてその日の夕方。
 私はホテルの6階にあるレストランの前で、ヒカリ達の到着を待っていました。予約はもう済ませたので、後は到着を待つだけです。
 ここにあるレストランは、一流のシェフ達が集まる、5つ星級の高級洋風レストランです。訪れる客からの評判もよく、ヒカリ達なら必ず喜んでくれるでしょう。
 私は、左手に着けているポケッチのアナログ時計に目を配りました。そろそろ待ち合わせの時間です。
「お待たせ〜!」
 すると、ヒカリの声が耳に入りました。時間通りに来てくれたみたいです。
 私はヒカリ達の姿を確かめましたが、正面に立つヒカリの姿を見て、私は少し驚きました。
 ヒカリは、ピンク色のドレスを着ていたのです。ブーツも赤い靴に履き替えていて、その髪も、後ろで1つに縛っています。顔が私と似ているとはいえ、私は一瞬見違えてしまいました。
「ヒカリ、そのドレスは……?」
「これ? ポケモンコンテストで着るドレスを着て来たの。せっかく高級ホテルのレストランに行くんだから、これ着て雰囲気合わせてみようかな、って思って」
 ヒカリは笑みを見せて答えました。その足元にいるヒカリのポッチャマは、えへんと言わんばかりに胸を張っていました。
「でも、ちょっと身だしなみに手間取って、俺達遅れそうになったんだけどな……」
 その横で、サトシが苦笑いを浮かべて言いました。そんなサトシに、ヒカリはいいじゃない、間に合ったんだから、と言葉を返していました。
 それにしても、ヒカリがまさか、このようなドレスを着てここに来るとは思ってもいませんでした。ポケモンコンテストで使うドレスという事は、ヒカリはポケモンコンテストに出た事があるみたいです。
 とにかく、そのような話を今しても仕方ありません。食事の間にすればいいのですから。
 私は早速、ヒカリ達をレストランの中へと案内しました。

 大きな円卓の前に並べられる料理を前にして、ヒカリ達は目を輝かせていました。このような料理を目にした事は、ほとんどないのでしょう。
 わあ、凄くうまそうだ! こんな料理なんて、滅多に食べられないぞ! これは食べ応えがありそうだな!
 それぞれコメントするサトシ達。
「本当にこれ、全部食べていいのね?」
「もちろんです」
 ヒカリの質問に私はそう答えました。それを聞いたヒカリ達は、早速いただきまーす、と挨拶をして早速目の前の食事を食べ始めました。
 そしてすぐに、全員の口からこぼれるおいしい! の言葉。ヒカリ達の食事は、どんどん進んでいきます。それは、とても楽しそうな雰囲気でした。
 私は丁寧に食事をしていました。テーブルマナーをしっかり守っているだけです。ですが、そのようにヒカリ達がわいわい嬉しそうに食べる表情を見ていると、私も心が和んできました。
「ねえ、プラチナ」
 すると、ヒカリが私に声をかけてきました。
「何ですか?」
「プラチナって、どんな目標持って旅をしてるの?」
 そんな質問をされたのは、旅を始めてから初めての事でした。私は少し戸惑いましたが、答えました。
「私の一族の継ぐ者は、家紋を刻んだアクセサリーを作るために、その材料を自らテンガン山まで採りに行かねばならない、という掟があるのです。私はそれに挑戦するために、旅をしています」
「そうなんだ、一族の掟って事は、そうしないと後を継げないって事?」
「そうです。ですから、一族にふさわしい者になるための、修練の旅でもあるんです」
「へえ……」
 ヒカリはそうつぶやいて少し間を置いた後、自分から話し始めました。
「あたしはね、トップコーディネーターになる事を目指して旅をしてるの」
「トップコーディネーター、という事は、やっぱりポケモンコンテストですか?」
「ええ。あたしのママはね、凄いトップコーディネーターだったの。だからあたしもそんなママみたいになりたいって思って、旅をしてるの」
 ヒカリのお母様は、ポケモンコーディネーター。それもその中でも高い実力を持つ、トップコーディネーター。そんなお母様のようになろうと、ヒカリは旅をしている。私と同じような所があるのですねと、少し親近感が湧きました。
 ふと横に視線を向けると、テーブルの上に座るヒカリのポッチャマが、私のポッチャマと仲良さそうにやり取りをしているように見えました。ポッチャマはプライドが高いポケモンですが、『類は友を呼ぶ』という言葉通りなのでしょうか。
「俺は、シンオウリーグに出場して、そして世界一のポケモンマスターになる事が目標さ」
「俺は、ブリーダーを目指しているんだ」
「ボクだって、ヒカリと同じでトップコーディネーターを目指しているんだ」
 すると、サトシとタケシ、ケンゴも続けてそう言いました。
 ポケモンを極めし者の称号・ポケモンマスター。ポケモンを育てるポケモンブリーダー。そしてトップコーディネーター。みんなそれぞれが、違う目標を持って旅をしているのですね。
 それからも続いたヒカリ達との会話は、とても楽しいものでした。
 旅の中ではいろいろ楽しかった事がありましたが、これもその1つとして、私の心の中に残るものになりそうです。


TO BE CONTINUED……

[816] SECTION05 プラチナに迫る黒い影!
フリッカー - 2009年05月13日 (水) 19時20分

 ヒカリ達との夕食を楽しんだ、次の日。
 私はホテルの門の前でポケッチを見つめながら、立っていました。私の足元では、ポッチャマが辺りをせわしなく見回しています。そしてその側には、いつでも出発できるように待機させているポニータ。
 私はここで、待ち合わせをしているのです。もちろんヒカリ達と。
 ヒカリ達は私と同じく、製鉄牧場へ行こうとしていたという話を聞きました。ちょうど私と同じ場所に行こうとしていたという事で、昨日の夕食の際、一緒に行く事を決めたのです。だからこうやって、ホテルの前で待ち合わせをしている訳です。
 すると、ポッチャマが声を上げました。見ると、こちらに向かってくる、ヒカリ達の姿がありました。
「プラチナーッ!」
 こっちに向かって手を振るヒカリと、彼女のポッチャマの姿。その後ろには、サトシ達の姿も見えます。ポケッチを見ると、約束した時間通りです。
「待っていましたよ」
「じゃ、早速行こうよ。製鉄牧場に」
 ヒカリは笑みを浮かべてそう言いました。私はすぐにうなずき、ポニータの背中に乗りました。


SECTION05 プラチナに迫る黒い影!


 あたしはプラチナと一緒に、製鉄牧場に向かって歩いていた。一度行った事のあるプラチナが道を案内するって形になっているから、先頭を歩くプラチナに、あたし達がついていく状態。
 隣で歩くポッチャマは、プラチナのポッチャマと仲良く一緒に歩いている。ポッタイシやエンペルトに対してはいばり合い対決になってたのに、ポッチャマ同士だとなんで仲良くなれるんだろう? 不思議。
 そしてしばらく歩いて行くと、一度見た事のある景色が見えてきた。といっても、アングルは違うんだけど。
「見えました。あそこが製鉄牧場です」
 プラチナが見つめる先には、木でできた柵で囲まれた、牧場がある。ほとんどの場所で茶色の地面がむき出しになっていて、少し荒れ果てた土地のような感じだから見た目は、普通の牧場のようにきれいじゃないけど、そこにはたくさんのココドラがいるのが見える。中には進化形のコドラやボスゴドラの姿もある。
 ロクショウシティに入る前に見た、あの牧場がタケシの言った通り製鉄牧場だった。
「ここが製鉄牧場ね……!」
 あたしは思わず声を上げた。改めて見ると、心がウキウキしてくる。
「お、君はあの時の……!」
 すると、牧場の中から男の人の声が聞こえてきた。見るとそこには、柵の裏に1人の男の人がいた。製鉄牧場の人みたい。
「先日は失礼しました。今日改めて見学しようと思うのですが、よろしいでしょうか?」
 プラチナが、男の人にすぐに答えた。プラチナは、この人と一度会ってるみたい。前に行った時に会ったんだ、きっと。
「ああ、もちろんだよ。あの時はもう、騒ぎで見学どころじゃなかったからね」
「今日は団体で来たのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだよ。団体だって大歓迎……」
 男の人がそう言いかけてこっちに顔を向けた。その顔があたしの方に向いた時、男の人は驚いたように目を丸くして声を詰まらせた。
「そ、その子は……双子かい?」
 あたしはその言葉を聞いて、驚いた理由が実感できた。そっか、今そっくりさんが一緒にここにやってきたんだから、驚くのも当然よね。
「いいえ、ただのそっくりさんなんです。たまたま知り合って、こうやって一緒に……」
 それをフォローしたのはタケシだった。
「ああ、そういう事か。ビックリしたよ、顔も服装も似てるんだから……ハハハ……」
 男の人はほっと一息ついて、苦笑いした。
 あたしは、プラチナと互いに顔を合わせた。そして、自然と顔に笑みが浮かんだ。

 早速あたし達は、製鉄牧場へと案内された。
 そっくりさん同士が、こうやって出会ったのは奇跡的な事だから、しっかり思い出を作ってもらわないとね、と牧場の人ははりきっていた。
 牧場にあった建物は、小さな製鉄所になっていた。しかも見学も簡単なように作られていて、お客さんも比較的多かった。まず見せられたのは、展示用に用意された、ココドラの鎧。これをかまを使って熱しながら形を整えて鉄板にして、いろいろな鉄製品に使うんだって。軽くて丈夫だから、車のボディとかに使われるんだって。それにしても、かまの前は暑かった。
「このように、ココドラやコドラの鎧から取れる金属は、『コドラニウム』と呼ばれているんだ。今ではこの精錬はほとんど機械化されてしまって、このように一からココドラを育てて、人の手で精錬する所は、もうここしかないんだよ」
 男の人が説明する。その説明を、プラチナは熱心に聞いていた。プラチナは、余程この事に興味があるみたい。ココドラの鎧も触ってもらったけど、その時もプラチナは落ち着いた様子を保ってはいたけど、目を輝かせていた事にあたしは気付いていた。熱中しているのは明らかだった。
「プラチナ、面白いの?」
 あたしは、製鉄牧場がつまらないと思ってた訳じゃないけど、プラチナの目の輝かせぶりは普通じゃなくて、気になって仕方がなかった。だからそう聞いた。
「ええ、とっても!」
 プラチナは、すぐにそう答えた。そして、さらに言葉を続けた。
「やはり、違います。本で見る事と、実際にこの身で体験する事は。やはり知識は、体験する事で初めて、本物になるのですね」
 プラチナは学者の家系の出身だから、やっぱりこういう事には興味があるものなのかなと思っていたけど、あたしが思っていたのとは、違う興味の持ち方だった。百聞は一見にしかずって言葉があるけど、プラチナはまさにそんな考え方をしていたのね。
「確かに、そうよね。本で見ても、実際にやってみないとわからない事って、結構あるよね」
 あたしは、自然とそう口に出していた。

 その時だった。
「きゃあああああっ!!」
 あたしが目を離した直後に、プラチナの悲鳴が聞こえた。プラチナのいる場所が、一瞬光ったように感じた。見ると、横でプラチナの体が、ゆっくりと背中から倒れたのが見えた。側にいたプラチナのポッチャマも驚いている。
「プラチナ!?」
「どうしたんだ!?」
 あたしが声を上げた瞬間、みんなも異変が起きた事に気付いた。プラチナはよくわからないけど、気を失っている。あたしはすぐに、倒れたプラチナの側に来て、体を起こそうとした。でも、体に触れた瞬間、強い電気がバチッとあたしの指に流れた。反射的に手を引っ込める。
「電気!?」
「どうだ? こいつの大技“でんじほう”は?」
 すると奥から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。見るとそこには、驚く他のお客さんや牧場の人達の中に紛れて、黒ずくめの男の姿があった。その鋭い目付きは、見覚えのあるものだった。そしてその傍らにいたのは、角ばった体が特徴的な、小さな鳥のような姿をしたポケモンがいる。バーチャルポケモン・ポリゴン!? ポリゴンは人工的に作られたポケモン。だけどまだ開発中で、実際に見たのはポリゴンのプログラムを作っていたゲイルさんが持っていたものだけ。そんな普通はいないポケモンのはず。
「ゲイリー……!!」
 あたしは自然と、そいつの名前を口にした。
「お前は、あの時の!!」
 サトシが叫ぶ。
「お前達や影武者には用はねえ。用があるのはそこで伸びてるプラチナ・ベルリッツだ」
 ゲイリーは、あたし達の後ろで倒れてるプラチナを指差して、はっきりと答えた。あいつは、プラチナを狙っている。それは、プラチナと出くわした時に知った事。それに、あたしを見て『影武者』と言ったし、そもそも電撃にやられたのはプラチナ本人だったから、もうあいつはそっくりなあたしの姿に騙されてはいない。確実にプラチナを狙ってる!
「悪いが、それ以外の人間はここから身を引いてもらうぜ。俺達の目的の邪魔になるからな」
 そんなゲイリーの言葉を聞いたお客さん達は、途端に慌ただしくなって、一斉にその場から逃げ始めた。でもあたしは、逃げるつもりはなかった。ポッチャマやピカチュウが、すぐにあたし達の前に飛び出して、身構えた。
「さあ、逃げるなら今の内だぜ? 俺はプラチナ以外の奴とは関わりたくないからなあ」
 余裕を見せるように、ゲイリーはゆっくりと足を踏み出して、こっちに近づいてくる。きっとプラチナをさらうつもりなんだ。そんな事する奴なんかのいいなりになんか……!
「プラチナをどうするつもりなの!!」
「お前達には関係ない事だ。さあ、そこをどいてここから出て行くんだな」
「そんな事させない!! ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」
「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
 あたし達は、すぐに指示を出した。ポッチャマの“バブルこうせん”と、ピカチュウの“10まんボルト”が、ゲイリー目掛けて飛んで行った! でもその時、ゲイリーは笑みを浮かべた。まるでそれを、待っていたかのように。
「ポリゴン!!」
 ゲイリーが呼ぶと、ポリゴンは真っ先にゲイリーの前に飛び出した。ちょうどポッチャマとピカチュウの攻撃をかばう形になった。
「“テクスチャー2”!!」
 ゲイリーが指示すると、ポリゴンの体の色が、青くなった。そのまま“バブルこうせん”と“10まんボルト”を体で受け止めた。普通、2匹の同時攻撃なんて受けたら、ただじゃ済まない。でもポリゴンは、それに簡単に耐えて見せた。ダメージを受けたような様子はない。
「何!?」
「耐えた!?」
 サトシもあたしも、思わず声を上げた。
「へへっ、“テクスチャー2”は相手のわざの効果が弱まるようにタイプを変えるわざだ。お前達の攻撃は、ドラゴンタイプには通用しないぜ!!」
 ゲイリーは自信満々に叫んだ。そういえば、前にゲイルさんの研究所に立ち寄った時も、そんなわざを見せられた。ドラゴンタイプには、みずタイプのわざもでんきタイプのわざも効果は今ひとつ。それを利用して……!
「それならポッタイシ、“メタルクロー”!!」
「グレッグル、“どくづき”だ!!」
 負けじと、ケンゴとタケシも、モンスターボールを投げた。ケンゴが出したのはポッタイシ。そしてタケシが出したのはグレッグル。ポッタイシは“メタルクロー”で、グレッグルは“どくづき”でポリゴンに飛びかかった!
「無駄だ!!」
 でもゲイリーが叫んだ途端、ポリゴンの体の色がまた変わった。今度は銀色。“メタルクロー”と“どくづき”が同時にヒットしたけれど、やっぱり手応えがない。
「今度ははがねタイプか……!!」
 タケシが唇を噛んだ。はがねタイプは、いろんなタイプに対して、効果が今ひとつになるのが特徴の1つ。同じはがねタイプの攻撃はもちろん、どくタイプのわざは全く効かない。
「邪魔するってなら、こっちがどけるしかねえな!! ポリゴン、“サイコキネシス”!!」
 すると、ポリゴンの目が不気味に青く光った。すると、あたし達の体が、ポケモン達もろともふわりと一斉に持ち上がった。そのままあたし達は、思い切りその場から投げ飛ばされた。そして、さっきまであたし達がいた場所には、倒れたプラチナだけが残った状態に。
 ゲイリーはそのままプラチナに近づこうとする。でもそこに、プラチナのポッチャマが立ちはだかった。“みずのはどう”を撃って、ゲイリーを近づけさせまいとしている。
「“トライアタック”!!」
 でもプラチナのポッチャマは、ポリゴンが放った“トライアタック”で、簡単に退けられちゃった。凄い威力。プラチナのポッチャマは、立つ事もままならない状態になっちゃってる。ゲイリーはそのまま、プラチナのポッチャマの横を通り過ぎて、とうとうプラチナの前に出た。
「プラチナが!! ポッチャマ!!」
 あたしはすぐにポッチャマを呼んで、プラチナを助けようとした。
「おっと!! そこを動くんじゃねえ!! こいつがどうなってもいいのか!!」
 でもそんなゲイリーの言葉を聞いて、ポッチャマは動きを止めた。ゲイリーは、倒れたプラチナの二の腕をつかんで持ち上げている。その側にはポリゴン。完全に、プラチナはゲイリーに捕まっちゃっている。プラチナは、完全に人質になっちゃっている。これじゃ、迂闊に手が出せない。
「こいつに変な事をされたくなけりゃ、ポケモンをモンスターボールに戻すんだ」
 あたしは唇を噛んだ。助けたい気持ちもあるけど、こんな状況じゃもうどうしようもない。みんなも、戸惑った様子を見せた。
「どうするの……?」
「ダメだ……変に手が出せない。ここは言う通りにするしかないよ」
 あたしがケンゴに聞くと、ケンゴは唇を噛んで答えた。あたしはやむなく、モンスターボールを取り出して、ポッチャマをモンスターボールに戻す。そして、ケンゴとタケシも、モンスターボールにポッタイシとグレッグルを戻した。
「どうした? なぜお前だけモンスターボールに戻さない?」
 すると、ゲイリーの少しだけいらだった声が聞こえてきた。ゲイリーの見る先には、ピカチュウがいた。ピカチュウはモンスターボールには入りたがらない。サトシは、モンスターボールに入るのを嫌がるからだって言ってたけど、ゲイリーは当然そんな事を知ってる訳ない。その状況がまずい事には、サトシも気付いてたみたい。
「……ピカチュウは、モンスターボールに入るのを嫌がるんだ」
「ここでこいつを助けたい、からか?」
「違う!! ただ……!!」
「いい度胸だな、小僧。それならこっちにも手がある」
 サトシの言葉を聞こうとしないで、ゲイリーがそう言うと、ゲイリーはパチンと指を1回鳴らした。するとどこに隠れていたのか、黒ずくめの人達が、一斉にあたし達の前に出てきた。
「奴らを力ずくで追い払え!!」
 ゲイリーが言うと、黒ずくめの人達は、一斉にモンスターボールを投げた。中から飛び出してくる、たくさんのテッカニン。まずい! ピカチュウがモンスターボールに入りたがらない事が、ここでアダになっちゃうなんて……!
「くっ、ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
 そんな事を考えてる場合じゃない。サトシはすぐに指示を出した。ピカチュウが力を込めて、自慢の電撃を発射する。たくさんのテッカニンをまとめてしびれさせた。効果は抜群! それでも、テッカニンの数は減った様子がない。これじゃ、ピカチュウだけじゃ多勢に無勢。
「パチリス、あなたも行って!!」
 あたしはすぐにパチリスを出した方がいいと判断した。ポッチャマのものとは別のモンスターボールを取り出して、素早く投げるとパチリスが出てきた。
「“ほうでん”!!」
 あたしが指示して、パチリスが電撃を発射しようとした瞬間、テッカニン達が甲高い鳴き声を上げて一斉に騒ぎ始めた。あの時もされた“むしのさざめき”! 周りに響く甲高い声の前には、さすがのパチリスも電撃が出せない。もちろんあたし達も、反射的に耳を塞いだ。そのまま、隙を突いて襲いかかろうとするテッカニン達。
 あたし達は、自然と後ずさりを始めていた。タケシが何か喋っていたけど、テッカニンの鳴き声にかき消されて聞こえない。でも、こんな状況じゃプラチナを助ける事なんてできない。そう考えていたんだと思う。耳を塞いだまま、テッカニンに背中を向けないように、そっと後ずさりをする。パチリス達は応戦するけどでもテッカニン達も、こっちを押し出そうとしているように追いかけてくる。
 そして一旦、建物を出る。テッカニン達や黒ずくめの人達も、後を追いかけてくる。でもここなら、場所も広いから、さっきよりは戦いやすくなる。都合よく、テッカニンの“むしのさざめき”が止んだ。チャンス!
「パチリス、“ほうでん”!!」
 あたしはすぐに指示した。パチリスはテッカニン達に向かって、電撃を発射! 網の目のように放たれた電撃が、次々とテッカニンに命中! 効果は抜群! 直撃を受けたテッカニン達は、次々と地面に落ちていく。
 それに驚いたのか懲りたのか、テッカニン達と黒ずくめの人達は、建物の中へと戻って行った。
「戻って行くぞ?」
「よし、それなら今度は……!」
「待て、サトシ!」
 サトシがすぐに今度はこっちの番だと追いかけようとしたけど、タケシが止めた。
「どうしてだよ!?」
「ここで闇雲に突っ込むのはよくない。相手はプラチナを人質に取っているんだ。下手に突っ込むと何をさせるかわからないんだぞ」
「なら、尚更……」
「それに、向こうには敵が大勢いる。理由はわからないが、どうやら立てこもるつもりのようだ。何も考えずに突っ込めば、袋叩きに逢うだけだぞ」
 タケシにそう言われたサトシは、さすがに反論しなかった。
「プラチナ……」
 そんなサトシの気持ちは、あたしもわかった。できるなら、捕まったプラチナを助けに行きたい。でも、タケシの言葉は間違っていない。あたしは奴らが立てこもった建物の中をただ見つめる事しかできなかった。
 その時、道の向こう側から、甲高いサイレンの音が聞こえてきた。見ると道を何台かのパトカーが走ってくる。逃げ出した人の誰かが、警察を呼んだのは間違いない。
 パトカーが次々と、あたし達の前に高いブレーキの音を立てて止まる。パトカーのドアが開くと、たくさんの警官が姿を現した。そしてその中には、あのジュンサーさんの姿もあった。
「ここね? 黒ずくめの集団が襲撃したって場所は」
 ジュンサーさんのその言葉を聞くと、タケシが真っ先に反応した。あーあ、また始まっちゃうのね……

 * * *

 私の目が、ゆっくりと開きました。おぼろげに、建物の中の様子が見えました。周りはやけにひっそりとしていて、外からはサイレンの音。
 私は今まで、何を……? 見学していた時、突然電気のようなものが体を走って、そのまま目の前が真っ暗になって……
 私は壁にもたれかけている状態で、座っていました。そんな体を起こそうとしましたが、なぜか押さえつけられたように体も腕も動きません。体を見ると、私の体は縄で頑丈に縛られているではありませんか! なぜこんな事に!?
「フフ、お目覚めか」
 すると、視界の中に1人の人影が入りました。その姿を見て、私は驚きました。それは、私を狙っていたあの黒ずくめの男――確かヒカリはゲイリーと呼んでいました――だったのです。私の背筋が凍りつきました。
「な、なぜここに……!?」
 私は状況が飲み込めませんでした。いつの間にゲイリーがここに? 私はどうして縛られているのでしょう? そしてヒカリ達はどうしてしまったのでしょう?
「それを聞く前に、自分の立場をまず理解する事だな」
 ゲイリーが不敵に笑った直後、外から声が聞こえてきました。女の人の声でした。
「犯人に告ぐ!! あなた達は完全に包囲されています!! 無駄な抵抗はやめて出てきなさい!!」
 それを聞いたゲイリーは、面倒くさいと思っているような表情を見せた後、窓辺に出て叫びました。
「へっ!! こっちには人質がいるんだぜ!! 変な動きを見せたら人質がどうなるか、わかってるんだろうなあ!!」
 人質。その言葉を聞いて、私はようやく状況が理解できました。
 私は、知らない内にゲイリーに人質として捕えられていたのです。私があの時恐れていた事が、とうとう現実になってしまったのです。横を見ると、私の手の届かない場所に私の持つバッグと、檻に入れられたポッチャマの姿が見えました。抵抗する事はできない。今の私はもう、人形のように相手の思うままに動かされる事しかできません。
 ふとゲイリーが、私の前で小型の電話・ポケギアを1つ取り出しました。誰かと電話するつもりなのでしょうか。そのスイッチを押すと、ゲイリーは話し始めました。
「……コバルトか。久しぶりだな、俺だよ、ゲイリーだ。突然だが、お前の娘を今預かっている」
 コバルト。その名前は、私の知っているものでした。
 コバルト・ベルリッツ。ポケモンの研究者である、私のお父様の名前です。お前の娘と言っているからには、ゲイリーはお父様と電話をしている事に間違いありません。
「お父様!? お父様なのですか!?」
 私は思わず声を上げてしまいました。すると、ゲイリーはそれを待っていたように、ポケギアを自分の口元からこちらに向けました。
『……プラチナ!? プラチナなのか!?』
 すると、ポケギアからそんな声がかすかに聞こえました。間違いなくお父様の声です。その声をしっかりと聞こうとする間もなく、ゲイリーはポケギアを自分の口元に戻してしまいました。
「……という訳だ。これで俺がウソをついていない事がわかっただろう?」
『娘をさらって、どうするつもりなんだ!! 身代金でも欲しいのか!!』
「身代金? 俺が欲しいのは、そんな単純なものじゃねえ!」
『じゃあ、何が欲しいんだ!!』
 お父様の声はかすかにしか聞こえませんが、そんなやり取りをしているのがわかりました。ゲイリーはそこで、急に口を閉じました。そして少し間を置くと、また息を吸って、こう言いました。
「……『Zファイル』」
 それを聞いたお父様の、驚きの声が聞こえました。『Zファイル』とは何なのでしょう? 初めて聞く名前です。
『何を言ってるんだ!! そのファイルが、どんなものが入っているのかわかっているのか!?』
「わかっているさ。お前の親父が残した、ポケモンの秘密を解く技術が封印されているファイル……」
 ゲイリーの言葉は自信に満ちていました。お父様の親父という事は、私のお爺様、クロム・ベルリッツの事でしょうか? お爺様も、優秀な研究者だったとお父様から聞きましたが、それでも、ポケモンの核心を突く技術というのはピンと来ません。ポケモンの秘密を解くといわれても、ポケモンの事はまだわかっていない事も多いですし、もしそんな発見をしたなら、私もその事を知っているはずです。
『そんな事じゃない!! それを父さんがなぜ封印したのか、わかって……』
「とにかく、俺の欲しいものは、それだ。もし持ってこないと言うのなら、お前の娘がどうなるか、わかっているよな?」
 ゲイリーの横目が、こちらに向きました。ポケギアからお父様の声は聞こえなくなりました。言葉を詰まらせているのでしょうか。
「あと1つ言っておくが、ニセモノを持ってきたってムダだからな。それがわかったら、持ってこなかったのと同じだ。娘はただでは済まないぞ。さあ、どうなんだ? お前のかわいい娘と、お前の親父が封印した技術、どっちを取るんだ? もちろん、答えはわかっているよな?」
『……』
 ポケギアからのお父様の声は途切れたまま。そのまましばしの沈黙が続きます。そしてしばらく経って、お父様から答えが返ってきました。
『……わかった。渡そう』
「交渉成立、だな」
 ゲイリーは勝利を確信した時のように、笑みを浮かべました。

 * * *

 製鉄牧場は、重々しい空気に包まれていた。
 周りの道は封鎖されて、建物の前にはパトカーがたくさんいて、建物の周りは警官達が取り囲んでいる。それには、牧場のココドラ達も、戸惑いを隠せない様子だった。
 あたし達は警官達に追い出される形になっちゃったけど、その場から離れなくて、封鎖された場所の外から、ただ建物の様子を見つめる事しかできなかった。
 もうどれくらい時間が経ったんだろう……一向に建物に動きは見えない。
「プラチナ……ダイジョウブかな……?」
「プラチナ自身は大丈夫なはずだ。人質に取った方も、少なくともそう簡単に人質を捨てたりはできない。もしそうしたら、自分の要求が手に入らなくなるからな……だがこっちも下手に動きを見せたら、プラチナに何かしかねない。まさに膠着状態だ……」
 あたしのつぶやきに、タケシが答えた。
「それにしても、あいつの目的は何なんだろうなあ……?」
「お金持ちなんだから、身代金じゃないのか?」
「いや、人質に取ったからって、必ず身代金とは限らないぞ」
 ケンゴの疑問にサトシが答えて、タケシが突っ込みを入れる。確かにあたしも、あいつらの目的は気になる。ただ少なくとも言えるのは、プラチナと引き換えに何かを欲しがっているって事。
「……何? 犯人の要求するものがわかったのか?」
「ああ、さっき情報が入ったんだ」
 すると、封鎖している警官達の、そんなやり取りが耳に入った。何を要求したのかがわかったみたい。あたしは警官達のやり取りを聞いてみた。
「犯人が人質に取った少女の親に電話したみたいなんだ。それで要求したものは、『Zファイル』というものらしい」
「『Zファイル』? なんだそりゃ? たかがファイル1つ欲しいがために人質を取ったのか?」
「それが、ただのファイルじゃないみたいなんだよ。何でも犯人は、『ポケモンの秘密を解く技術が封印されているファイル』って言ってたらしいんだ」
「ポケモンの秘密を解く技術が封印されているファイル……? 何だかよくわからないな……」
 どうやらゲイリーが要求しているものは、身代金じゃなくて、『Zファイル』っていうファイルみたい。ポケモンの秘密を解く技術が封印されているファイルって言うけど、1回聞いてみただけじゃ何だかよくわかんない。そもそもそれは、人質を取ってまで奪う価値があるものなのかも、よくわかんない。
 ゲイリーの目的って、一体何なの?


TO BE CONTINUED……

[817] SECTION06 Zファイルの秘密!
フリッカー - 2009年05月19日 (火) 18時56分

「『Zファイル』とは、何なのですか?」
 私は、目の前を右に左に歩くゲイリーに聞きました。いくら私を人質に取っている相手とはいっても、『Zファイル』というものが何なのか、私は無性に知りたかったんです。
「ほう……同じベルリッツ家の人間なのにZファイルの事は知らないと来たか……まあ、Zファイルの事は奴らの中でも一握りの人間しか知らないみたいだからな。お前が知らないのも無理はない」
 ゲイリーは私の前を歩きながら、自信あり気に言いました。
「簡単に言えば、『ポケモンの秘密を解く技術が封印されているファイル』さ」
 ゲイリーの顔が、こちらに向きました。その言葉は、さっきも聞きましたが……
「それは一体何なのですか?」
「……知りたいか?」
 ゲイリーは私をじらすように、逆に聞き返しました。私ははっきりとうなずきました。
「それなら教えてやるよ。お前の爺さん、クロム・ベルリッツが残した、物凄え発見の事をな!」
 ゲイリーは語り始めました。


SECTION06 Zファイルの秘密!


 製鉄牧場の前を封鎖する警官達が、急に慌ただしく動き始めた。
「何の騒ぎだ?」
「何か動きがあったんじゃないか?」
 すると、目の前で1台の自動車がやってきて、あたし達の目の前で止まった。それは、きれいな白い自動車で、結構高級そうな印象があった。その運転席のドアが開いて、1人の男の人が降りてきた。眼鏡をかけていて、茶色のコートの下には、しっかりとしたスーツを着ている。その人の側に、ジュンサーさんが駆け寄ってきた。
「あなたが、コバルト・ベルリッツさんですね?」
「はい、そうです」
 ジュンサーさんの質問に、男の人ははっきりと答えた。コバルト・ベルリッツ!? って事は、プラチナのパパ?
「犯人が要求するものを、ここに持ってきた……」
 そう言いかけて何か取り出そうとした時、偶然コバルトさんの顔がこっちに向いた。そしてコバルトさんは当然、驚いた表情を見せた。ま、まさか……!
「プ、プラチナ!? どうしてここにいるんだ!? いつ助け出されたんだ!?」
 コバルトさんは、いきなりあたしに詰め寄ってきて、そんな事を聞いてきた。やっぱり思った通りだった。コバルトさんは、あたしの事をプラチナだと間違えてるみたい……
「ち、違います!! あたしは……」
「どういう事なんだ!? 娘はまだ人質に取られているんじゃなかったのか!?」
 あたしがすぐに違うと話そうとしても、コバルトさんはそう警官に対して怒鳴り付ける始末。完全にあたしが話す隙はなかった。
「待ってください! 彼女は、プラチナのそっくりさんなんですよ」
 そこをとっさにフォローしたのは、やっぱりタケシだった。それを聞いて、コバルトさんはようやく言葉を止めた。そして、目を見開いて、改めてあたしの顔を見る。
「そ、そうだったのか……ごめんごめん。あまりにそっくりだったものだから、つい……」
「本物の自分の子供もわからないんですか?」
 コバルトさんは謝ったけど、あたしは少しいらっとして、思わずそうぼやいた。

 その事がきっかけで、あたしはコバルトさんとプラチナとの関わりについて話をした。
 たまたまあたし達は、プラチナがやってきていたこのロクショウシティに来ていた事。その時、今プラチナを人質に取った黒ずくめの集団に、あたしがプラチナと勘違いされた事。そのいざこざの中で、あたしとプラチナが偶然会った事を。
「そうだったのか……それで君達は、プラチナと友達になって、ここを訪れていたっていう事なんだね」
 コバルトさんは納得してうなずいた。
「それにしてもコバルトさん、あいつらが狙っているものって何なんですか? その、『Zファイル』とかって、一体どんなものなんですか?」
 あたしは一番疑問に思った事を、コバルトさんに聞いてみた。それを聞いたコバルトさんは、一瞬驚いた様子を見せたけど、すぐに口を開いた。
「自分の父さんが生み出した、最重要機密を封印しているファイルだ」
「最重要機密!?」
 その言葉を聞いて、あたし達の声が合わさった。コバルトさんのパパって事は、プラチナのおじいちゃんって事だよね。
「父さんが生み出してしまった、ポケモンの秘密を解く技術が封印されているんだ。詳しい事は言えないが、それは悪にも転がりかねない技術なんだ」
「悪にも、転がりかねない……」
 コバルトさんの表情を見て、あたしは改めてゲイリーがどんな要求をしているのかを理解できた。プラチナと引き換えに欲しいものは、ポケモンの秘密を解く、悪にも転がりかねない技術。それが何なのかは、具体的にはわからないけど、もし悪い奴らに使われたら、大変な事になるのは間違いない。
 コバルトさんは、それと引き換えにプラチナを助けようとしている。あたしは事の重大さを、初めて理解できた。

 * * *

 事の始まりは、今から13年前の事だ。
 お前の爺さん、クロム・ベルリッツは、ポケモンの体を研究していく中で、あるとんでもねえ発見をしたんだ。

 ポケモンの細胞1つ1つに眠る、ポケモンの力の源を発見したんだ。

 そいつはどこからやってきたのかわらない、起源不明の小さな小さな生命体だったんだ。そいつは生命体だけでなく、非生命のものにも命と実体を与え、ポケモンに強いパワー、わざのエネルギー源を与える。そして、その属性の違いで、タイプや覚えられるわざが決まる。
 その摩訶不思議な共生生命体は、『P』と名前を付けられた。

 その発見は大発見だった。
 何せ、ポケモンの計り知れないパワーの源が、発見できたんだからな。その存在を実証できた者は、今まで誰もいなかった。
 そしてもっと重要なのは、『P』が俺達人間の細胞にも属性こそ違うが潜んでいる事、そして『P』そのものが生命体だった事だ。
 遺伝子操作技術を利用して、人の体から簡単に採取できる『P』を改良すれば、人の手で思うがままのポケモンを作り出せると、クロムは考えた。

 そして、クロムが中心となって、人工ポケモンの開発が始まったんだ。
 開発コード名『POkemon by aRtificial lIfe of new GeneratiON』、略して『ポリゴン』。『新世代の人工生命によるポケモン』って意味だ。
 まずは非生命のものにも命と実体を与える特徴を活かし、パソコン上で作り出したデータの体に、こいつを与えたんだ。
 そして見事、そいつは完成した。データの体だが実体を持ち、呼吸はしていないのに生きている、そして電脳空間に自ら出入りできる、常識で考えてありえねえポケモンの完成だ。
 だが、これはあくまで第1段階。これに喜んだクロムは、さらなる能力をポリゴンに与えるべく、『本命』といえるシステムの研究を始めた。

 長い研究機関を経て完成したそいつは、『ベルリッツ・システム』と名付けられた。
 遺伝子操作技術で、ポケモンの体内にいる『P』を思い通りに変化させる事ができるシステムだ。
 このシステムを組み込まれた暁には、ポリゴンは環境ごとに適応できるタイプと姿にデータの体を変化させる能力を持つ、今までの常識を超えたポケモンになるはずだった……

 だが、それは途中まで行った所で、実現しなかった。
 クロムが急に、ポリゴンの開発中止を決めやがったんだ。ポリゴンそのものに何も問題点はなかったにも関わらず、な。
 クロムはこう言いやがったんだ。
「今になって気付いた。人の手でポケモンが作れるようになってしまったら、この技術を悪へと利用するものが必ず現れる。そうなってしまえば、ポケモンは人間に利用されるだけの存在になってしまう。この世界そのものが、ひっくり返ってしまいかねない。私はそんな事を望んではいない」とな。
 そしてポリゴンは搭載されたベルリッツ・システムが不完全なまま、開発は中止。そして開発に使用された『ベルリッツ・システム』は、『P』の詳細なデータもろとも記録を全て抹消され、『なかった事に』された。そしてその記録は二度と使われる事がないように、1枚のファイルで厳重に封印された。それが、『Zファイル』だ。
 そしてそのまま、クロム・ベルリッツは亡き人となり、『Zファイル』の存在も、闇に消えていった……


 ゲイリーの口から発せられた言葉全てが、信じられないものでした。
 ポケモンの細胞に潜む共生生命体『P』。その発見にともない開発された人工のポケモン、ポリゴン。それに使用された技術、『ベルリッツ・システム』。『Zファイル』には、そんな事が封印されていたなんて……
「俺は、そんなポリゴンの開発チームの1人だった。ポリゴンが常識を超えたポケモンになる事を、俺は何より楽しみにしていた。だが、奴はそれを完成させないまま、グ術を全て封印しやがった……!」
 ゲイリーが、右手をグッと握り、拳を作りました。それには、強い怒りがこもっている事に。私はすぐに気付きました。
「だから俺は、その時作られたプロトタイプのポリゴンを奪い、ここまで来た。全ては、完全なポリゴンを作り出すためにな……! だからそのために、協力させてもらうぜ、プラチナ・ベルリッツ……!」
 ゲイリーの鋭い視線が、こちらに向きました。
 彼が求める、完全なポリゴン。それがどんなものなのかは、私にはわかりません。ただ、彼の求めるものは、とてつもなく恐ろしいもののような感じがしました。
『研究は、人を幸せにするためのもの』
 私はそう、お父様に教えられましたが、その研究が今、ゲイリーの手によって得体の知れないものに利用されようとしている事が、私は怖く感じました。

 * * *

 コバルトさんが、ゲイリー達が立てこもっている建物に、ゆっくりと向かって行った。警官達がしばらく様子を見て、安全を確かめてからコバルトさんを行かせたみたい。
 コバルトさんの後ろには、ジュンサーさん率いる警官達が、いつでも飛び出せるように待機している。プラチナの安全が確保された隙を突いて、ゲイリー達を捕まえようって作戦みたい。でも、立てこもっている黒ずくめの人達も、何かしようものならすぐに行動に移せるようにしているかのように、窓から顔を覗かせて周りをうかがっている。まさに一触即発の状態。重い空気が、辺りに漂う。あたし達はその様子を、固唾を呑んで見守るしかなかった。
「ゲイリー!! いるんだろう!! コバルト・ベルリッツだ!! 約束のものを渡しに来たぞ!!」
 コバルトが建物の入り口の前に出て、叫んだ。すると、入り口の大きなドアがゆっくりと開いて、中からゲイリーの姿が現れた。その横には、腕を後ろで縛られた状態のプラチナもいる。それを見たあたしは、すぐに助けに行きたい気持ちになったけど、下手に手が出せないのはわかっているから、その気持ちを押さえ込んだ。
「久しぶりだな、コバルト。例のものは持ってきてるんだろうな?」
 顔を見せたゲイリーは、真っ先にそう聞いた。プラチナはその横で、お父様、と声を上げた。
「まずは娘を渡してくれ。そうしないと……」
「それはこっちのセリフだなあ。まずは持ってきたファイルが本物かどうか確かめてからだ。そうでなきゃ、娘は渡せねえ」
 コバルトが言いかけた言葉の意味を、ゲイリーはそのまま返した。それを聞いたコバルトは、少し戸惑った様子を見せたけど、すぐに懐から何かを取り出した。それは、ケースに入った1枚のCDだった。そこに、『Z』の文字が書いてある。あれが『Zファイル』……!
 ゆっくりとそれをゲイリーに差し出すコバルトさん。それにゲイリーが手を伸ばした、その瞬間。

「ガーディ、“かえんほうしゃ”!!」
 ジュンサーさんの声が響いた。すると、ジュンサーさんの側にいたこいぬポケモン・ガーディがサッと飛び出した。そしてゲイリーに向かって口から火を吹いた!
 それにゲイリーもすぐに気付いた。すぐに飛んできた炎をよける。人質のプラチナを離さないようにしながら、一歩後ずさりした。
「全員、突撃!!」
 ジュンサーさんの指示で、警官達が一斉に建物に向かって突撃していった。
「そういう作戦だったのか……!」
 ゲイリーはすぐに、懐から銀色の太い銃を取り出した。ボールシューター。それをガーディの方に素早く向けて、ポンと乾いた音と同時に、モンスターボールが発射された。そのモンスターボールが開くと、プテラが飛び出した。そして風を巻いて警官達に襲いかかった! プテラのスピードを前にして、警官達は一瞬怯む。そしてそれを合図にしたかのように、黒ずくめの集団も、一斉に建物から飛び出して、テッカニンを連れて警官達と正面からぶつかった! たちまち建物の前で大乱戦が始まった。それはもう、まるで戦争映画の1シーンみたいだった。
「俺達も行こう!!」
「ええ!!」
 サトシの言葉に、あたし達はうなずいた。こうなったら俺達も黙っていられないとサトシも考えていたはず。それはあたしも同じだった。サトシを先頭に、あたし達は建物に向かっていった。あたし達だって、プラチナを助けてみせる!
「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
「ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」
 真っ先に攻撃したのは、ピカチュウとポッチャマ。黒ずくめの集団に撃ち込む。それに驚いた黒ずくめの集団の真ん中に穴が空いた。これで建物までの道が空いた。
 でも、向こうも黙っていない。テッカニン達が、一斉にこっちに向かってくる!
「ポッタイシ、“メタルクロー”!!」
 すぐにケンゴのポッタイシが応戦する。両手のツメを使って、近づいてくるテッカニン達を片っ端からなぎ払う。
「グレッグル、“どくばり”だ!!」
 タケシもグレッグルを出す。グレッグルは口から放つ“どくばり”で、近づこうとするテッカニン達を近づけさせない。
 とはいっても、テッカニンの攻撃も単純じゃない。近づけない事がわかると、黒ずくめの集団は“シャドーボール”の指示を出した。たちまち“シャドーボール”の雨あられ。あたしのすぐ側でも、“シャドーボール”が爆発した。衝撃で倒れそうになったけど、何とか踏み止まる。
「ヒカリ、大丈夫か?」
「ええ、何とか……」
 サトシの言葉に答えた時、どこからか今度は別の光線が飛んできた。白い光線。それが、ポッチャマ達の目の前で命中すると、地面がたちまち凍りついた。
「“れいとうビーム”!?」
「じゃあ、別のポケモンが!?」
 あたしはすぐにわかった。見ると“れいとうビーム”が飛んできた先には、何匹かのかぎづめポケモン・ニューラの姿があった。ニューラはすぐに、その素早さを活かして、こっちに間合いを詰めてくる! あたしとサトシは、反射的にもう1個モンスターボールを取り出した。
「ブイゼル、君に決めた!!」
「エテボース!!」
 サトシが出したのはブイゼル、あたしが出したのはエテボース。身軽なポケモンの方がいいと思ってエテボースを選んだけど、偶然だけど交換したポケモン同士になった。
「ブイゼル、“アクアジェット”だ!!」
 ブイゼルが“アクアジェット”で真っ先にニューラ達に切り込む。でも、そんなの見え見えの攻撃だと見たのか、ニューラに“れいとうビーム”の指示が入った。ニューラは“れいとうビーム”をブイゼルに向けて発射する。でもブイゼルはよけようとしないで正面から受け止める。たちまちブイゼルを纏う水が正面から凍っていく。それでもブイゼルのスピードは緩まない。氷の槍となったブイゼルは、そのままニューラに体当たり! ニューラは簡単に弾き飛ばされた。
「決まったぜ、『氷の“アクアジェット”』!!」
 これぞブイゼルの得意技、『氷の“アクアジェット”』! あたしが考えたこの戦法を、ブイゼルはもうすっかりモノにしている。
 あたしも負けてられない! あたしもエテボースに指示を出した。
「エテボース、“かげぶんしん”!!」
 エテボースの体が、いくつにも分裂し始める。それを前にした2匹のニューラは、突然の事に戸惑う。この隙に!
「“ダブルアタック”!!」
 分裂したエテボースが、一斉に“ダブルアタック”をかける。実際に攻撃しているのは1匹だけだけど、“かげぶんしん”しているからたくさんのエテボースに攻撃されているように見えて、ニューラは反撃がおぼつかない。それがあたしの狙い! ニューラはどうしていいかわからないまま、エテボースの分身が消えた頃には、ノックアウトされていた。
 でもその時、目の前に凍ったままのブイゼルが倒れこんだ。
「しまった!!」
 サトシの声が聞こえた。どうやら反撃に遭って、跳ね飛ばされちゃったみたい。凍ったままのブイゼルは、どうする事もできない。そこに、ニューラはツメを閃かせてブイゼルに向かっていく! 危ない!
「エテボース、ブイゼルを助けて!! “スピードスター”!!」
 とっさにあたしはそう指示を出した。エテボースはブイゼルに向かってくるニューラに“スピードスター”を発射! それに驚いたニューラは、怯んで足を止めたから、ブイゼルは攻撃されずに済んだ。
「サンキュ、ヒカリ。助かったぜ」
 そうお礼を言ったサトシに、あたしはこういう時は助け合わなきゃ、笑みを返した。
 ブイゼルの氷を壊さないと、と思ってふと見ると、ブイゼルを覆う氷の先が、削れているのに気付いた。さっきの“スピードスター”が少しだけ当たって、氷を削っていたみたい。鋭くなっていて、まるで氷の剣のように見えた。それを見て、あたしははっとひらめいた。
「エテボース、凍ったブイゼルを持ってみて! ほら、こんな風に!!」
 あたしはちょうど、細いものを両手で持つ時の手振りをエテボースに見せて、そう指示した。エテボースは少し驚いてたけど、言われた通り、エテボースは尻尾の手で凍ったブイゼルを持ち上げる。少し重さに戸惑っていたけど、エテボースはそれをしっかりと持ってみせた。エテボースが持つ凍ったブイゼルは、まさに氷の剣になっていた。
「何をする気なんだ?」
「ごめん、ちょっと乱暴かもしれないけど……」
 あたしがそう言った時、ニューラが真っ直ぐこっちに向かってきた! あたしはとっさに指示を出した。
「思いっきり振って、なぎ払っちゃって!!」
 あたしが指示すると、エテボースは持ち上げた氷の剣を、思いきり振った! それにニューラが驚いた時にはもう手遅れ。ニューラはたちまち氷の剣になぎ払われて、弾き飛ばされた。
「す、凄え……!! まるで氷の剣じゃないか!!」
 さすがのサトシも、それには驚いていた。
「そうよ、たまたま端っこが削れていたから、こんな事できるんじゃないかなって、思って」
 あたしは説明した。成り行きでできたとは言っても、ブイゼルの氷の剣は、かなりのリーチを持つ武器になっていた。これを振り回すエテボースに、ニューラ達はなかなか近付けない。結構強い。
「結構いけるじゃないか、これ!! なら俺も!!」
 すると、サトシも何かひらめいたようで、エテボースに顔を向けた。
「エテボース、こんな風に持ってみてくれ!!」
 サトシはエテボースに、鉄砲を持つような構え方を見せる。エテボースもそれを真似して、氷の剣の構え方を変える。氷の剣を横に倒して、まさに鉄砲を構えるような構え方になる。
「よし、そのまま狙いを定めるんだ!!」
 ちょうどそこに、ゲイリーが繰り出したプテラが真正面から向かってきた。サトシの指示通り、エテボースは刃先をプテラに向けて、狙いを定める。
「ブイゼル、“みずのはどう”!!」
 刃先がプテラに向いた時、氷の中のブイゼルが、“みずのはどう”を発射! 氷の刃先を割って、まさに鉄砲玉のように飛び出した“みずのはどう”。それに驚くプテラの顔面に、“みずのはどう”が直撃! 効果は抜群!
「今度は氷の鉄砲ね!!」
 あたしは思わず声を上げた。またサトシは、あたしが考えた戦法を進化させちゃった。
 たちまちプテラは地面に落ちる。飛ぶ力を失ったひこうポケモンなんて、ただの的にしかならない。そんなプテラを、エテボースはバッチリ狙っている。今がチャンス!
「今だブイゼル、“アクアジェット”だ!!」
 氷の中のブイゼルの周りを、水が覆った。氷の中でブイゼルは、パワーを溜めている。それを表すかのように、氷の後ろが割れて、そこから勢いよく流れた水が吹き出した。
「行っけーっ!!」
 サトシに合わせて、あたしも叫ぶ。すると、その声を力に変えたように、ブイゼルは氷を突き破って鉄砲玉のように飛び出した! そして起き上がろうとしたプテラに、ブイゼルは体当たり! 効果は抜群! 跳ね飛ばされたプテラはそのまま動かなくなっていた。戦闘不能!
「やったぜ!!」
「やったあ!!」
 あたしとサトシは、思わず一緒に声を上げて、ハイタッチした。ただの筒になった氷を捨てたエテボースの前に、ブイゼルが戻ってきた。でもブイゼルは着地した途端、急にふらりと地面に倒れちゃった。
「あっ、ブイゼル!?」
「エテボースに散々振り回されたから、気持ち悪くなっちゃった……? ごめんブイゼル、乱暴な事しちゃって……」
 あたしはすぐにブイゼルに謝った。するとブイゼルは右手を上げて、どうって事ない、って言ってるみたいに、少しだけ笑みを見せた。そんなブイゼルを、サトシはゆっくり休んでくれ、と言ってモンスターボールに戻した。
 そんな時、あたしは乱戦の中をどうしていいのかわからない様子で、端で体を縮めてしどろもどろしているコバルトさんを見つけた。あたしは周りを飛び回るテッカニンに気を付けながら、サトシと一緒にコバルトさんに近づいていく。
「コバルトさん、ダイジョウブですか!」
「君か……ああ、何とかね……」
「プラチナは……プラチナはどうしたんですか?」
 あたしは一番気になる事を、コバルトさんに聞いた。今の大乱戦の中確認する余裕はなかったけど、プラチナが逃げた様子は今まで見ていなかった。
「プラチナは……」
 コバルトさんの言葉は1回そこで途切れたけど、少し間を置いてコバルトさんは続けた。
「まだ、中だ……」
「ええっ!?」
 その言葉を聞いて、あたしとサトシは驚いた。
「ゲイリーは……どさくさに紛れてZファイルを奪って、そのままプラチナもろとも中に……」
 コバルトさんの視線の先には、開きっぱなしになったドアがあった。
 ゲイリー、Zファイルを渡せばプラチナを返すんじゃなかったの? Zファイル手に入れたら、そのまま逃げる気でもあったの? そんな怒りが、あたしの中でこみ上げてきた。
 あたしはサトシと顔を合わせて、無言でうなずいた。サトシも無言でうなずく。そしてあたし達は、すぐに建物の中へと向かった。コバルトさんが止める声が聞こえたけど、そんな事はどうでもよかった。プラチナを助けたかったから……!

 * * *

 建物の中に入ると、真っ先にプラチナの姿が見えた。
「おっと、強引に人質を連れ戻す気か?」
 その横には、ゲイリーの姿があった。ノートパソコンを片手に持っている。さっきまでノートパソコンをいじっていたみたい。
「ゲイリー、プラチナを返しなさい!!」
「ファイルを渡したら、返す約束じゃなかったのか!!」
「ああ、返してやるよ。ちょうど、このZファイルはニセモノじゃねえって事がわかったからなあ」
 すると、ゲイリーは横にいたプラチナの体を乱暴にドンと突き飛ばした。突き飛ばされたプラチナは、あたし達の目の前で倒れそうになった。あたしはそんなプラチナの体を受け止める。
「プラチナ、ダイジョウブ!?」
「ええ、何とか……」
「ほらよ、持ち物も返してやる」
 続けてゲイリーは、プラチナが持っていたバッグを乱暴に投げて、さらに側にあった檻を開けた。バッグはサトシが慌てて受け止めた。そして檻から出てきたのは、プラチナのポッチャマだった。プラチナのポッチャマはすぐにプラチナの所に駆け寄る。そして心配そうにしていたあたしのポッチャマと、少しだけやり取りをしていた。
「ヒカリ……ゲイリーは、Zファイルを使って何か企んでいます……」
 すぐにあたしが手を縛っている縄を解こうとした時、プラチナがそう言った。
「ええっ!?」
「企んでいるとは言葉が悪いなあ。俺はただ、こいつを完成形にしたいだけだからな」
 あたしが驚くと、ゲイリーが横槍を入れてきた。見ると、ゲイリーの横にはポリゴンがいる。そのポリゴンの体は、持っているノートパソコンと1本のケーブルで繋がっていた。ポリゴンは特殊なプログラムを使えば進化できるって聞いたけど……
「せっかくだから、見せてやるよ。本来の計画通りの、本当のポリゴンの姿をな……!」
 ゲイリーは自信に満ちた声でそう言うと、ノートパソコンのキーボードを1回叩いた。すると、ポリゴンの体が、急に眩しい光を出し始めた。
「これって、まさか……」
「進化……!?」
 間違いなく、進化が始まっている。ポリゴンの進化系と言えば、ポリゴン2だけど……目の前のポリゴンは、明らかにポリゴン2に進化するとは思えない進化をしていた。
 体から2本の手と、2本の足が伸びて、首も長く伸びていく。シルエットも角が取れて、どんどんスマートになっていく。そして光が収まると、ポリゴンは今まで見た事のない、全く別のポケモンになっていた。
 カラーリングにポリゴンの面影は残しているけど、そのシルエットは全くの別物で、細長い足でちゃんと立っていて、短いけど手も生えている。そして長い尻尾。顔も少し鋭くなっている。まるで恐竜時代のポケモンのような姿になっていた。
「見たか!! これがポリゴンの真の姿だ!!」
 ゲイリーは高らかに叫んだ。


SPECIAL STORY PART02:THE END
THE STORY IS CONTINUED ON PART03……



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