[539] FINAL SECTION もう逃げない! 夜明けへ向かって! |
- フリッカー - 2008年05月15日 (木) 00時18分
「あ・・・ああ・・・っ!!」 こっちに飛んでくる“でんげきは”。あたしの体は完全にすくんでいた。逃げようとしても体が動かない・・・! 「ブイーッ!!」 そこに、ブイゼルがあたしの前に飛び出した! 「ブウウウウウウッ!!」 ブイゼルはあたしの盾になって、代わりに“でんげきは”を受けた! 悲鳴を上げるブイゼル。効果は抜群! あたしの目の前で倒れるブイゼル。 「ブ、ブイゼルッ!?」 あたしは、すぐにブイゼルの側に行った。ブイゼルは、自分からあたしをかばって・・・!? 「ブ、ブイ・・・」 それでもブイゼルは、「平気だ」って言ってるみたいに、こっちに笑みを浮かべた。そして、ブイゼルは立ち上がって、倒れていたあたしの体を起こした。 「ご、ごめん、ブイゼル・・・」 「ブイ」 あたしを気遣ってくれるブイゼルにあたしがそう言うと、「気にするな」って言ってるように、ブイゼルは答えた。 「みんな・・・ダイジョウブ?」 「ミ・・・ミッ!」 「チパ・・・ッ!」 「エイ・・・ポッ!」 あたしはみんなの様子を確かめる。ミミロル、パチリス、エテボースはかなりダメージを受けてる。それでも3匹は立ち上がった。
「ヒトミさん・・・このままじゃ、みんなやられてしまいます・・・!」 「何言ってるの! ここは賭けてみようじゃない、3人に!」 弱腰になるアユリに、ヒトミさんはそう言い聞かせた。 「ああ、今は3人を信じるしかない・・・!」 タケシがつぶやいた。 「ポチャ・・・!」 タケシの腕の中で、ポッチャマは不安そうにあたしを見つめていた・・・
FINAL SECTION もう逃げない! 夜明けに向かって!
「よ、よくもやってくれたわね!! ルーナ、ハルナスペシャルその3、『流星乱舞スターダストセレナーデ』!!」 ハルナが反撃する。ルーナは“スピードスター”を発射した後、“ねんりき”でそれを操ってセカンドに飛ばす! 「オオオオオオオオッ!!」 でも、セカンドは止まらない! 飛んでくる“スピードスター”を“サイコカッター”で切り払いながらルーナに迫る! そして、そのままルーナを切りつけた! 「ルーナ!!」 ハルナの目の前に落ちるルーナ。ルーナは何とか浮かび上がった。 「くそっ!! ピカチュウ、“アイアンテール”だ!!」 「ピッカアッ!!」 ピカチュウはセカンドに向けて飛び出した! そして、力を込めた尻尾でセカンドに躍りかかった! 「カアッ!!」 でも、セカンドは“サイコカッター”で“アイアンテール”の一撃を受け止めた! そのままピカチュウを弾く。ピカチュウは体勢を立て直した。 「パチリス、“スパーク”!!」 「チパアアアアアッ!!」 あたしも負けてられない。パチリスが“スパーク”でセカンドに突撃していく! でも、セカンドはそれに気付いて、右手をパチリスに突き出して、“サイコキネシス”で念じ始めた! 「・・・チパ!?」 パチリスは、セカンドの右手の目の前で押さえつけられて、止まっちゃった! どんなに足をジタバタさせても、パチリスは動けない! 「ブイゼル、回りながら“アクアジェット”だ!!」 「ブゥゥゥゥィッ!!」 そんなパチリスを助けようと、ブイゼルはスピンをかけながら“アクアジェット”でセカンドに突撃していく! 前にトバリジム戦でも使ったあの戦法。でも。セカンドは捕まえたパチリスを、向かってくるブイゼルに投げた! 「チパアアアアアアッ!!」 電気を纏ったまま、投げられるパチリス。そのまま、パチリスはブイゼルと衝突! そして爆発! 「ブイイイイイッ!!」 「チパアアアアッ!!」 お互いに弾き飛ばされるパチリスとブイゼル。ブイゼルは電撃を受けちゃったから、効果は抜群! 「パチリス!! ブイゼル!!」 あたしは声を上げた。心が焦る。パチリスとブイゼルはそろそろやばい! このままじゃ・・・! 「ミミロル、“れいとうビーム”でセカンドを止めて!!」 「ミィィィ、ミイイイイイッ!!」 ミミロルは“れいとうビーム”を発射! でも、それに気付いたセカンドは、ジャンプしてそれをかわす。 「ハアアアアアアアッ!!」 そして、ミミロルの上を取ったセカンドは、“はどうだん”をミミロルに向けて発射! 「ミミロルよけて!!」 あたしはあわてて指示した。ミミロルは、“とびはねる”でジャンプして間一髪“はどうだん”をかわした。でも安心したのもつかの間、セカンドは“サイコキネシス”で念じ始めた! 「ミ!? ミミィィィィッ!!」 一瞬、ミミロルの動きが止まったと思うと、ミミロルは突然、ものすごいスピードで真っ逆さまに地面に落とされた! 土煙が舞い上がった。 「オオオオオオッ!!」 そこに、セカンドは“はどうだん”を発射! ミミロルはよけられる訳ない! 直撃! 効果は抜群! 「ミミィィィィッ!!」 悲鳴を上げるミミロル。 「ミミロル!!」 思わず声を上げるあたし。 「ピカアアアアッ!!」 そこに、ピカチュウが“でんこうせっか”で飛び込んだ! 不意打ちを受けるセカンド。 「ミミ・・・!!」 ミミロルの前に降り立ったピカチュウを見て、ミミロルは目を輝かせた。 「ピカチュウ、最大パワーで“ボルテッカー”だ!!」 「ピカピカピカピカアッ!!」 ピカチュウは必殺の“ボルテッカー”でセカンドに一直線に向かっていく! 「カアアアアアアアッ!!」 セカンドは、“はどうだん”を発射してこれに応戦! 命中! 「ピカ・・・ッ!!」 ピカチュウの速度が緩まった。でも、ピカチュウは怯まないで、突撃を続ける。そこに、セカンドは2発、3発、4発と“はどうだん”を撃ち込んでいく! 「ピ・・・カ・・・ッ!!」 ピカチュウの動きが止まった。その表情も苦しくなってきている。そして、“ボルテッカー”を保ったまま“はどうだん”を受け続けるピカチュウ。でも、ピカチュウの我慢も、限界に来ていた! 「カアアアアアアアッ!!」 そして、セカンドが渾身の力を込めた“はどうだん”を発射! その直撃で、とうとう“ボルテッカー”が壊された! 爆発! 「ピカアアアアアッ!!」 弾き飛ばされるピカチュウ。ピカチュウは、ミミロルの目の前に倒れた。 「ピカチュウ!!」 「ミミッ!!」 サトシとミミロルが声を上げた。ピカチュウのダメージも、かなり大きい。 「オオオオオオオオッ!!」 セカンドは、今度はエテボースに狙いを定めて、“はどうだん”を発射! 「エテボース、“きあいパンチ”!!」 「エイポォォォォォォッ!!」 慌ててあたしは指示を出した。エテボースは、尻尾の拳に力を込めて、飛んでくる“はどうだん”に向けて振った! 拳は、“はどうだん”を正面から受け止めた。 「ウウ・・・ッ!!」 “はどうだん”のパワーがかなりあるのか、エテボースは苦しそうな表情を浮かべた。一瞬、“はどうだん”に押されそうになる。 「がんばって!! エテボースッ!!」 あたしは、必死で呼びかけた。 「ウウッ・・・ポォォォォォッ!!」 そんなあたしの応援に答えて、エテボースはまた尻尾に力を込めた! すると、“はどうだん”が爆発! エテボースはよろけて、少し後ろに下がった。エテボースは荒い息をする。結構体力を使っちゃったみたい! 「ハアアアアアアアッ!!」 そこに、セカンドが“サイコカッター”を振りかざしてエテボースに襲い掛かる! 「エイポォォォッ!!」 エテボースはもろに切られた! 倒れるエテボース。さらにセカンドは、追い討ちをかけようと“サイコカッター”を振り上げた! その手を尻尾で受け止めるエテボース。そのまま尻尾と腕の押し合いになる。 「エ・・・ポ・・・!!」 でも、エテボースは疲れがかなり出ている。食い止めるのが精一杯の状態。 「エテボースッ!! 負けないでっ!!」 あたしは必死になって呼び掛ける。それに答えようとして、エテボースは必死でセカンドの腕を食い止めている。その状態がしばらく続くと思ったら、セカンドは空いている左手をエテボースに突き出して、“はどうだん”を至近距離で作り出した! エテボースもあたしも、気付いた時はもう手遅れだった。 「エイポォォォォッ!!」 そのままセカンドは“はどうだん”をゼロ距離で連射! 効果は抜群! 悲鳴を上げるエテボース。 「エテボースッ!!」 あたしが声を上げるのも空しく、セカンドの腕を抑えていたエテボースの尻尾は、力なく地面に落ちた。エテボースはもう、瀕死の一歩手前。 「そんな・・・!!」 あたしは絶望した。セカンドはとどめを刺そうとして、“サイコカッター”をエテボースに振り上げた! ダメ・・・このままじゃ、エテボースは・・・! 「もうやめてえっ!!」 あたしは思わず、そう叫んでいた。セカンドの顔がこっちを向いた。 「オオオオオオオオッ!!」 すると、セカンドは邪魔をするなと言わんばかりに、こっちに左手を突き出して“でんげきは”を発射した! 「きゃあああああっ!!」 電撃があたしの体を通り抜けた! あたしの体の力が抜けて、あたしはまた倒れた。 「ヒカリさんっ!!」 ハルナが声を上げた。 「・・・っ!! よくもヒカリさんをっ!! ルーナ!! “シャドーボール”!!」 ボロボロのあたしを見たハルナが、怒ってルーナに指示を出した。 「ダメ・・・ハルナ・・・ッ!!」 ハルナは完全に周りが見えなくなってる。あたしはハルナに手を伸ばして立とうとしたけど、立ち上がれるほどの体力が出ない。そんなあたしをよそに、ルーナは“シャドーボール”を発射! セカンドは、ジャンプしてかわす。そして、“はどうだん”をルーナに向けて発射! 直撃! 弾き飛ばされたルーナは、ハルナの所に飛んでくる! 「きゃああっ!!」 ルーナともろにぶつかったハルナは、ルーナと一緒に折り重なって倒れた! ルーナは完全に戦闘不能になっていた。 「ハルナ・・・ッ!!」 あたしは声を上げる事しかできなかった。やっぱり立ち上がれるほどの体力が出ない。 「くそっ!! これ以上やらせるか!! ナエトル、君に・・・」 サトシが怒って別のモンスターボールを取り出そうとした。その時、セカンドは右手を突き出して“でんげきは”をサトシに向けて発射した! 「ぐわああああっ!!」 悲鳴を上げるサトシ。サトシはその場で膝をついた。 「サトシ・・・ッ!!」 あたしはサトシに向けて手を伸ばす。これくらいの事しかできる体力がない。 「カアアアアアアッ!!」 セカンドは“サイコカッター”を伸ばして、サトシに向かっていく! ああっ、このままじゃ、サトシが・・・! 「エ・・・エイポォォォォッ!!」 その時、倒れていたエテボースが立ち上がった。セカンドの後ろから尻尾をつかんで、精一杯引っ張ってセカンドを止めようとする! 「エテボース・・・?」 サトシが目を丸くした。エテボースは、このままサトシがやられちゃうのを黙って見てられなかったんだ! でも、体力の少ないエテボースは、セカンドの尻尾のひと振りで、簡単に振りほどかれた。 「エ・・・エテボースッ!!」 サトシが声を上げた。そのまま力なく倒れるエテボース。そんなエテボースを尻目に、セカンドは“はどうだん”をサトシに向けて発射! 「ぐわああああっ!!」 「サトシ・・・ッ!!」 直撃を受けたサトシを見て、あたしは思わず声を上げた。そのまま倒れるサトシ。 「そんな・・・サトシまで・・・!?」 あたしは完全に絶望した。これじゃ、あたし達にもう、勝ち目は・・・ 「フ、フフ・・・哀れな末路だな、裏切り者共よ・・・」 そんな様子を見ていたライラは、笑みを浮かべていた。セカンドは、あたしにギロッと顔を向けた。 「い・・・嫌・・・来ないで・・・!」 あたしは怖くなって、逃げようとするけど、体が思うように動かない。セカンドはそのまま、“サイコキネシス”で念じ始めた! 「ああっ・・・!!」 あたしの体がサイコパワーで持ち上げられた。あたしの怖さは絶頂に達した。 「ブ・・・ブイイイイイッ!!」 それを見たブイゼルが、セカンドに飛び込んだ! でも、セカンドは左手で“はどうだん”を発射! 「ブゥゥゥゥゥッ!!」 ブイゼルは、簡単に返り討ちにされた。そのまま力なく倒れるブイゼル。 「ブイゼルッ・・・はうっ!?」 その時、あたしの首が、急に絞められた! 当然、息が苦しくなる。思わず首を手で押さえる。見ると、セカンドが右手をゆっくりと握っている!? 「や・・・やめて・・・く・・・苦しい・・・!!」 セカンドが手を握っていくと、首が絞められる強さはどんどん強くなっていく。息がだんだん辛くなってくる。このままじゃ、息ができなくなって・・・! 「たす・・・け、て・・・だれ・・・か・・・」 あたし、このまま首を絞め殺されちゃうの・・・!? そんな・・・リボンを2つ取れないまま・・・グランドフェスティバルにも行けないまま・・・トップコーディネーターにもなれないまま・・・あたし、終わっちゃうの・・・!? あたし、最初からそんな運命だったの・・・!? そんなの・・・そんなの・・・嫌・・・!! 誰か・・・誰か・・・助けて・・・!!
その時、どこからか“バブルこうせん”が飛んできて、セカンドに命中した! よろけたセカンドは、“サイコキネシス”を緩めた。あたしの体が地面に落ちた。やっと息ができるようになったあたしは、ゲホゲホと咳き込んだ。そんなあたしの前に立つ、小さな影。それは・・・
「ポチャマッ!!」 両手を広げて立つ、ポッチャマだった! 「ポ・・・ポッチャマ・・・!?」 あたしは驚いた。大ケガしてたのに、あたしを助けてくれたの・・・!? 「ポッチャマアアアアアッ!!」 ポッチャマは思い切り叫ぶと、ポッチャマの体から青いオーラが出た! 『げきりゅう』が発動したんだ! 「オオオオオオッ!!」 セカンドはそんなポッチャマに、“サイコカッター”を振り上げてポッチャマに躍りかかった! 「ポッチャマアアアアアアッ!!」 ポッチャマは“サイコカッター”のひと振りをかわして、パワーアップした“バブルこうせん”を発射! 直撃! パワーアップした威力を前に、さすがのセカンドも押し出された。 「ヒカリ・・・! しっかりしろ・・・!」 すると、あたしの体が誰かに持ち上げられた。そのままあたしの肩を担いだのは、サトシだった。 「ごめんサトシ・・・ダイジョウブなの・・・?」 「心配すんなって。これくらい、どうって事ないさ・・・!」 サトシがそう言った時、コトンと、地面に何かが落ちた音がした。 「ヒカリ、何か落ちたぞ?」 サトシは落ちたものを拾ってみる。それは、あたしがあの時拾った紫色のモンスターボール! 「これって・・・マスターボールじゃないか!? なんでこんなもの持ってたんだ、ヒカリ!?」 それを見たサトシは驚いて、聞き慣れない言葉を口にした。マスターボールって名前は初めて聞いた。 「えっ、アジトから逃げる時にパチリスが拾ってきたんだけど・・・サトシ、知ってるの?」 そうだ、今までサトシ達に聞こう聞こうって思ってて、すっかり忘れてた。 「狙ったポケモンを一発で必ずゲットできる、究極のモンスターボールだよ! 一度見た事があるんだ」 狙ったポケモンを一発で必ずゲットできる・・・その言葉が引っ掛かった。 「ちょっと待って。狙ったポケモンを一発で必ずゲットできるって、どんなポケモンでも同じなの?」 「多分、そうだと思うけど・・・」 サトシは思い返すようなしぐさを見せてそう答えた。 「それなら・・・セカンドを止められるかもしれない・・・!!」 あたしは確信した。 「止められるって・・・どうやって!?」 「セカンドをこのマスターボールでゲットするのよ!!」 あたしはマスターボールをサトシの手から取って、思いついた事をサトシに言った。 「そうか!! それはいいアイデアだぜ!!」 サトシも納得して声を上げた。 「2人共、大丈夫か?」 そこに、タケシが現れた。タケシはハルナの肩を担いでいる。 「うん、何とか・・・」 「あっ、それってマスターボールじゃないですか!」 ハルナがマスターボールを見て、声を上げた。 「うん、たまたま拾ったものなの。これを使って、セカンドをゲットして止めようと思うの!」 「凄〜い!! さすがヒカリさん!!」 そう言うと、ハルナは歓声を上げた。 「だが、そうするにはセカンドの体に確実に当てなきゃいけないぞ。いくら究極のモンスターボールでも、外れてしまったら何の意味もない」 タケシが言った。 「なら、動きを止めればいいのね・・・」 あたしは改めて、セカンドを見た。ポッチャマと戦い続けているセカンド。『げきりゅう』も発動しているし、“うずしお”なら・・・! 「ポッチャマ、“うずしお”!!」 「ポォォチャアアアアアッ!!」 あたしの指示で、ポッチャマが“うずしお”を作り出す。『げきりゅう』の効果もあって、いつもよりも大きく大きくなっていく! 「ポチャマアアアアアッ!!」 ポッチャマはそれを、セカンドに目掛けて投げた! 飲み込まれるセカンド。 「やったあ!!」 これでセカンドの動きが止まった! あたしは、マスターボールを構えて、投げようとした。 「カアアアアアアアッ!!」 でも、セカンドはそれを“サイコキネシス”で簡単に壊しちゃった! 「そんな・・・!?」 あたし達は動揺した。『げきりゅう』でパワーアップしてる“うずしお”でも・・・!? 「どうするんですか、ヒカリさん・・・?」 ハルナが聞いた。“うずしお”がダメなら、他に何があるの・・・? えっと・・・えっと・・・ええっと・・・ 「ミ・・・ミッ!」 「チパ・・・ッ!」 「エイ・・・ポッ!」 「ブ・・・イッ!」 「ピ・・・カッ!」 すると、セカンドの猛攻で倒れていたみんなが、ぎこちなくだけど立ち上がったのが見えた。 「みんな・・・そうだ!」 それを見たあたしは、1つの方法をひらめいた。 「みんな!! ポッチャマにパワーを分けてあげて!!」 「ミミ・・・!?」 「チパ・・・!?」 「エイポ・・・!?」 「ブイ・・・!?」 「ピカ・・・!?」 あたしの言葉に、みんなは目を丸くした。 「セカンドの動きを止めればいいの・・・そのために、みんなの力を借りたいの!! 直接戦わなくていいから、ポッチャマに力を分けてあげて!!」 そんな思いを、あたしはみんなに話した。 「・・・ミミッ!!」 「・・・チパッ!!」 「・・・エイポッ!!」 「・・・ブイッ!!」 「・・・ピカッ!!」 すると、みんなはうなずいた。 「ありがとう、みんな!」 あたしも、笑顔で答えた。みんなは、ポッチャマの所に向き直った。 「ポッチャマ、みんなのパワーを、あなたに託すわ!!」 「ポチャッ!!」 あたしが言うと、ポッチャマはうなずいてくれた。 「ポッチャマ、最大パワーで“うずしお”!!」 「ポォォチャアアアアアッ!!」 ポッチャマはもう一度“うずしお”を作り出した。最大パワーだけあって、さっきよりも大きくなっていく! 「みんな、お願い!!」 「ミィィィ、ミイイイイイッ!!」 「チィィィィパ、リィィィィィッ!!」 「エイッ、ポォォォォォォッ!!」 「ピィィィィカ、チュウウウウウッ!!」 「ブイイイイイイイッ!!」 ミミロルが“れいとうビーム”、パチリスが“ほうでん”、エテボースが“スピードスター”、ピカチュウが“かみなり”、ブイゼルが“みずのはどう”! 5匹のエネルギーが、ポッチャマの“うずしお”に集まっていく! みんなのパワーをもらった“うずしお”は、白く光り始めた! 「行け、ポッチャマ!!」 「ポッチャマ、行っけえええっ!!」 ポッチャマにパワーを分けるように、サトシとハルナが叫ぶ。 「頼む、ポッチャマ!!」 タケシも叫ぶ。 「ポッチャマ!!」 ヒトミさんとアユリも。 「ポッチャマ・・・ダイジョウブッ!!」 あたしも、ポッチャマにパワーが届くように、思い切り叫んだ。 「ポッチャマアアアアアアアッ!!」 みんなのパワーをもらったポッチャマは、思い切り“うずしお”をセカンドに投げつけた! 「オオオオオオオオッ!!」 飲み込まれたセカンドが悲鳴を上げた。みんなのパワーを乗せた“うずしお”を、セカンドは破る事ができなかった。 「今だ、ヒカリ!!」 サトシが叫んだ。 「お願いっ!! マスターボオオオオルッ!!」 あたしは思い切り叫んで、マスターボールを投げつけた。マスターボールがセカンドに当たって、開いてセカンドを吸い込んだ。“うずしお”が消えると、閉じたマスターボールがその場に落ちた。スイッチの赤いランプが点滅しながら、少しモゾモゾと動いたけど、すぐにランプが消えて、動かなくなった。 「やった・・・セカンドを、止められた・・・!!」 あたしは嬉しくなった。 「やったぜ!!」 サトシの一声で、みんなが歓声を上げた。 「ポチャーッ!!」 「ポッチャマ!! ありがとう・・・!!」 あたしの胸に飛び込んできたポッチャマを、あたしは片手でもしっかりと受け止めて、抱きしめた。 「セカンド・・・私の、セカンド・・・!」 ライラが、セカンドの入ったマスターボールに近づいて、マスターボールを取ろうとした。でも、そんなマスターボールを、ヒトミさんの右足が押さえつけた。 「残念だけど、これは『証拠品』として押収させてもらうわ。さあ、もう観念してもらおうかしら、ライラ?」 ヒトミさんはマスターボールを器用に蹴り上げて、手にキャッチしながら言った。 「くっ・・・!!」 それを見たライラは、手をわなわなと握って、唇を噛むしかなかった。
* * *
あの戦いから数日後。 クリエイショニストのリーダー、ライラは警察に捕まった。壊れたアジトには、警察の捜査が入ったんだとか。そしてあたし達は、ポケモンセンターに行って充分な休みを取った。 そんなポケモンセンターの外で、あたし達は1匹のポケモンに出会った。紫色の体に大きな耳、そして背中や耳から伸びているトゲが特徴の4つ足のポケモン。そんなポケモンが、ポッチャマとにらみあっている。あたしは、ポケモン図鑑を取り出した。 「ニドラン♂、どくばりポケモン。草むらの上に耳だけ出して、周りの気配を探る。猛毒のツノで身を守る」 図鑑の音声が流れた。 「ニドランかあ・・・かわいいなあ・・・」 あたしの後ろにいるハルナが、そんな事をつぶやいた。よし、それなら・・・! 「行くわよ、ポッチャマ!!」 「ポチャ!!」 あたしの指示で、ポッチャマは身構えた! ニドランも戦闘態勢を取った! にらみ合う2匹。先に動いたのはニドランだった! 頭のツノを向けて、ポッチャマに向かっていく! 「ポッチャマ、“つつく”!!」 「ポチャマアアアアアッ!!」 ポッチャマも、クチバシに力を込めてニドランに向かっていく! ツノとクチバシは正面からぶつかり合った! そのまま押し合いになる2匹。 「“つのでつく”か・・・なかなかのパワーがありそうだ・・・」 タケシがつぶやいた。2匹はとうとう距離を取って仕切り直しになる。 「がんばれヒカリさん!!」 ハルナの声が聞こえた。すると、ニドランは耳のトゲを逆立てて、“どくばり”を発射! 「よけて!!」 ポッチャマは、後ろにステップして“どくばり”をかわした。 「“バブルこうせん”!!」 「ポッチャマアアアアッ!!」 ポッチャマが“バブルこうせん”を発射して反撃! 命中! 手ごたえある! すぐにニドランも反撃する! ニドランは頭のツノから白い光線を発射した! 「“れいとうビーム”!?」 あたし達は驚いた。ポッチャマは“れいとうビーム”をジャンプしてかわしたけど、下を通り過ぎた“れいとうビーム”が地面を凍らせたせいで、ポッチャマは着地した瞬間、氷で滑って転んじゃった。 「あのニドラン、“れいとうビーム”が使えるなんて・・・なんか凄い・・・!」 ハルナは、そんなニドランの能力に感心していた。そんなニドランは、その隙を突いてジャンプしてポッチャマの上を取った後、“つのでつく”でポッチャマを狙う! 「ポッチャマ!!」 あたしの一声で、ポッチャマは何とか立ち上がる。どんどん迫ってくるニドラン。まだまだ、まだまだ・・・! 「今よ!!」 あたしの指示で、ポッチャマはジャンプして、『回転』でニドランのツノをかわした! 「!?」 空を切ったニドランのツノは、そのまま地面の氷に突き刺さった。ポッチャマは凍っていない地面に着地した。ニドランはツノが引っこ抜けなくなったみたいで、逆立ち状態のまま足をジタバタ。今がチャンス! 「ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」 「ポッチャマアアアアッ!!」 そこを狙って、ポッチャマは“バブルこうせん”を発射! 直撃! 衝撃で弾き飛ばされるニドラン。ニドランは地面に倒れたまま、目を回した。よし、これなら! あたしは、モンスターボールを取り出した。 「お願いっ! モンスターボールッ!!」 あたしはニドラン目掛けて思い切りモンスターボールを投げた。ニドランに当たったモンスターボールは、開いてニドランを吸い込む。閉じたモンスターボールは、その場に落ちる。スイッチの赤いランプが点滅しながら、モゾモゾと揺れ始める。場に緊迫した空気が漂う。そしてしばらくすると、ランプが消えて揺れが止まった。あたしは、ニドランの入ったモンスターボールを拾う。 「やったあっ!! ヒカリさん、ニドランゲットですね!!」 ハルナが声を上げた。ホントなら、「ニドランゲットでダイジョウブ!!」って言う所だけど、今は言わない。 「ハルナ」 「はい?」 あたしはハルナを呼んだ後、ニドランの入ったモンスターボールをハルナに差し出した。 「このニドラン、ハルナにプレゼントするわ」 「ええっ!? なんでですか!? ヒカリさんがゲットしたんだから、ヒカリさんのポケモンなんじゃ・・・!?」 突然の言葉に、ハルナは戸惑った。 「あたし、ハルナに迷惑掛けっぱなしで何もしてあげられだったし、お詫びにプレゼントでもあげたいって思ったの。これなら、手持ちが2匹だけより心強いでしょ?」 「で、でも・・・」 「それに、新しいポケモンをゲットする事だけが、強くなる事じゃないってわかったから」 あたしは笑みを浮かべてそう説明した。 「ヒカリ・・・」 その言葉に、サトシ達も感心していた。 「・・・わかりました。なら、謹んで受け取ります!」 ハルナはそう言って、モンスターボールを手に取った。そして、モンスターボールを開けて。中のニドランを出した。 「君、凄いじゃない。“れいとうビーム”も使えるし、わざもなかなかキレがよかったじゃない」 きょとんとするニドランの前に、ハルナはしゃがんでそう言った。 「ねえ、ハルナと一緒においでよ。君にピッタリなおもしろい事、教えてあげるから!」 ハルナが笑みを浮かべると、ニドランも笑みを浮かべてうなずいた。 「じゃ、名前を付けてあげなきゃ。え〜っと・・・」 ハルナはニドランを抱き上げて、考え始めた。 「・・・そうだ! クレセント! クレセントにしよう! 今日から君の名前はクレセントよ! よろしくね!」 ハルナがそう言うと、ニドランも笑みを浮かべた。 「よ〜し!! ニドランゲットでダイジョウブ!!」 ハルナはあたしのマネをしてそう言って、Vサインを作った。 「よかったな、ハルナ」 サトシが言った。あたしも、何だか嬉しくなった。 「新しいポケモンゲットおめでとう、ハルナ」 すると、違う所から声が聞こえてきた。そこにいたのは、ヒトミさんにアユリ、そしてポケモンセンターで預けられていたミュウが。 「ヒトミさん、それにアユリ」 「出会いもあれば別れもある。ほらみんな、ミュウが森に帰るから、最後の挨拶をして」 ヒトミさんが言うと、ミュウがあたし達の前に出て、「ありがとう」って言ってるように笑みを浮かべた。 「治ってよかったな、ミュウ」 「これからも気をつけてね」 「また悪者に狙われないようにしてね!」 「達者でな」 あたし達がそう挨拶すると、ミュウはあたし達に背中を向けた。振り向いて何度も手を振りながら、ミュウは森の中へ飛んでいった。 「じゃあな〜ミュウ〜ッ!!」 「元気でね〜っ!!」 あたし達も手を振って見送った。ミュウは森の中に溶け込むように、あたし達の前から見えなくなった。 「・・・じゃ、あたし達も行こうか、アユリ」 「はい」 すると、ヒトミさんとアユリも、あたし達に背を向けた。 「ちょ、ちょっと待って。ヒトミさん、アユリは・・・」 あたしは気になった事をヒトミさんに聞いた。 「アユリには、いろいろ今回の事件で聞きたい事があるからね。あたしが身柄を預かる事になったの」 「それじゃ、アユリは・・・!」 まさか、アユリは逮捕されちゃうの!? あたし達と一緒に戦ったのに・・・ 「気にしないでください、ヒカリさん。私だって途中で逃げ出したとはいえ、悪事に手を染めてしまった者です。逃げも隠れもしません。それなりの罰は受ける覚悟でいます」 アユリは、いたって冷静に答えた。 「そうなんだ・・・」 あたしは、ちょっぴり悲しくなった。あたし達と一緒にがんばったのに、悪者になっちゃうなんて・・・ 「ヒカリさん、あなたにはとても感謝しています。自分の力で強くなる事の大切さを、改めて確かめられたのですから。私はそれから逃げようとしてた事を後悔しています。どうか、私のような人にはならないでください」 「アユリ・・・」 アユリの言葉から、あたしはアユリのあたしへの願いが読み取れた気がした。 「今回の事はいろいろと助けられちゃったけど、ヒカリはその気になれば結構やれる人だと思ったよ。自分の力を信じて、逃げないで最後までやり通せば、ヒカリにも必ず来るよ。夜明けがね」 「夜明け・・・」 ヒトミさんの『夜明け』って言葉にも、感じさせられるものがあった。 「じゃ、あたし達は行くわね。ヒカリ、幸運を祈ってるわ」 ヒトミさんとアユリは、あたし達に背を向けてその場を後にしていった。そんな2人の背中を、あたし達は無言で見送っていた・・・
* * *
そして空は赤くなって、日は西に傾き始めた。あたし達も、出発する時が来た。 「ねえ、ヒカリさん。次はいつ、コンテストに出るんですか?」 ハルナが、そんな事を聞いた。 「えっ!? そ、それは・・・」 あたしは、どう答えていいのかわからなくなって、一瞬答えに迷った。あたしは気持ちを落ち着かせて、今思っている事を答えた。 「まだ、わからない。でも、いつかは必ず、コンテストには出たいって思ってるの」 「そうですか。ハルナ、いつでも応援しますよ! ハルナ、信じてますから! 次は必ず勝てるって! だから、ハルナもがんばります!」 「ありがとう、ハルナ」 そう言われると、あたしの心に勇気が湧いてきた。ハルナだけじゃない。あたしには、応援してくれる人がいる。そのためにも、あたしは負けてられないなって思った。 「じゃ、行こうか」 「うん。じゃ、ハルナもがんばってね」 「はい!」 あたし達は、ハルナに背中を向けて出発した。ハルナは、「さよなら」も言わないで、黙って見送っている。そう思ったら、突然こんな声が聞こえてきた。 「フレーッ!! フレーッ!! ヒー、カー、リー、さんっ!! フレッフレッ!! ヒカリさんっ!! フレッフレッ!! ヒカリさんっ!! フレッフレッ!! ヒカリさんっ!!」 「ハ、ハルナ・・・!?」 両手を振りながらそう叫ぶハルナを見て、あたしはちょっと恥ずかしくなった。でも、何だかこういうのも悪くないって気がしてきた。
* * *
嫌な事をただ忘れようとしても、強くなんてなれない。それをあたしは知った。あたしは、今までの失敗と向き合って、強くなる事ができるのかな? それは、まだわからない。でも、だからってあたしは逃げない。最後に、本当に強くなれるのなら・・・!
こうしてあたし達の旅は、まだまだ続く。続くったら、続く・・・・・・
STORY14:THE END
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