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[534] ヒカリストーリー STORY14 強さの代償(第3部)
フリッカー - 2008年05月13日 (火) 22時10分

 3部作『強さの代償』、遂に完結! いよいよ物語はクライマックスへ!

 第2部はこちら→http://bbs4.sekkaku.net/bbs/?id=watafa&mode=res&log=33

・オリジナルキャラクター(ポケモン)
ミュウツー・セカンド
 かつてフジ博士が『最強のポケモン』としてミュウの遺伝子から生み出したポケモン、ミュウツーをクリエイショニストが再現した色違いのミュウツー。クリエイショニストでは最初に生み出されたミュウツーと区別して『セカンド』と呼ばれている。
 かつて生み出されたミュウツー以上に戦闘用ポケモンとしての性格を強められているため、感情は極度に乏しく、敵味方の区別なく攻撃を行う危険なポケモンである。そのため、最初は『フォースド・アーマー』という赤い拘束具によってコントロールされていた。使うわざも戦法も、以前のミュウツーとは大きく異なる。

[535] SECTION07 ヒトミの願いと決意!
フリッカー - 2008年05月13日 (火) 22時14分

 あたしはヒカリ。トップコーディネーターになるために旅に出たポケモントレーナー。
 クリエイショニストに捕まったあたし達は、アジトから脱出する事を決めた。捕まえようとする団員やライラを何とか追い払って、捕まったミュウを助ける事もできた。でも、そんな所に現れたのが、赤い鎧を身に着けたデザインポケモン、セカンドだった! あたし達は必死に戦って、鎧を壊す事ができた。でも、その素顔はポケモンで一番凶暴な心を持つっていうミュウツーだった! パワーを解放したミュウツー・セカンドは、クリエイショニストのアジトを簡単に崩して、あたし達までも鬼のように簡単に退けた・・・


SECTION07 ヒトミの願いと決意!


 森の中で、大きな爆発が起きた。それから逃げ惑うポケモン達。その爆風の中から、あのセカンドが姿を現した!
「ウウウウウオオオオオオオオオッ!!」
 声にならない叫び声をあげながら、“はどうだん”を連射! 森のポケモン達を無差別に攻撃する! たくさんの爆発が起きて、森はたちまち火の海になる。
「フフフ・・・最高だ・・・!! 誰もセカンドを止める事はできん!!」
 セカンドを追いかけるダイノーズの上から、ライラはセカンドの様子を見つめていた。
「セカンド!! 全てを破壊しつくしてしまえ!! お前の力を知らしめるのだ!!」
 ライラが叫んだ。すると、セカンドはライラの方を向いて、いらだっているように“はどうだん”をダイノーズに向けて発射した! 直撃! そして爆発!
「うおっ!!」
 それをもろに受けたダイノーズは、地面に落ちそうになったけど、何とか体勢を立て直した。
「生み出した主に逆らうか・・・それもまたおもしろい・・・!!」
 でも、ライラは逆にそれを喜んでいるようだった。その時、セカンドに向けて“はどうだん”が飛んできた! それに気付いたセカンドは、右手から“サイコカッター”を伸ばして、それを切り払った! セカンドの見つめる先。そこには、あのミュウの姿が。ミュウは、鋭い目付きでセカンドをにらんでいた。
「オオオオオオオオッ!!」
 セカンドは、すぐに“サイコカッター”を振り上げて、ミュウに猛スピードで向かっていく! ミュウも、“アイアンテール”でセカンドに向かって行った! 2匹が何度もすれ違う。その度に、攻撃がぶつかり合う。そして、ミュウが反転して“かえんほうしゃ”! 命中! でも、セカンドも“でんげきは”で応戦する! 命中! それでもミュウは怯まない。2匹はにらみ合って、互いに“サイコキネシス”で念じ始めた! サイコパワーの押し合いが始まる。2匹のパワーはほとんど互角。ぶつかり合うサイコパワーで、周りの木が揺れた。結局2匹は最後までお互いに譲らなかった。体勢を立て直した2匹は、同時に“はどうだん”の発射態勢をとった! そして、2匹は同時に“はどうだん”を発射! 正面から飛んでいく2つの“はどうだん”。それは、ミュウとセカンドの間でぶつかって、大きな爆発を起こした!
「・・・おもしろい、実におもしろい・・・!!」
 それを見ていたライラは、興奮しているようにそうつぶやいていた。

 * * *

「う・・・う〜ん・・・」
 あたしはゆっくりと目を開けた。視界に、大きな木が映った。外はもう日が昇って、明るくなってる。
「あ、あれ・・・ここは・・・?」
 起き上がって周りを見ると、そこは森の中だった。近くには、いつも使うテーブルやテントがある。今まで置いてきていたカバンも。
「あっ、ヒカリさん!」
 そんな時、ハルナの声が聞こえた。声のした方を見ると、ハルナがこっちに駆け寄ってくるのが見えた。
「ハルナ・・・ここ、どこなの?」
「ヒカリさん達が最初にいた場所です。ヒトミさんがキャプチャしたフライゴンで助けてくれて、ここに連れてってくれたんです」
 ハルナが説明した。そうか、やっぱりここはあたし達が休憩してた場所・・・あっ! そういえば!
「ポッチャマは? ポッチャマはどうしたの?」
「ポッチャマですか? 心配しないでください、タケシが手当てしてますよ」
 ハルナは笑みを浮かべてるけど、あたしは笑ってなんかいられない! あたしはすぐに立ち上がった。

「ポッチャマ!」
 そう叫んで、あたしはテントに入った。そこには、横になっているポッチャマ、その手当てをしているタケシ、手伝いをしているサトシ、そしてポッチャマの様子を見守るパチリスがいた。
「ヒカリ!?」
 2人がこっちを見て驚いたのも気にしないで、あたしはすぐにポッチャマの側に行った。
「ポチャ・・・?」
 ポッチャマが、ゆっくりとこっちに顔を向けた。かろうじて無事みたい。でも、体はボロボロ。でも、そんなポッチャマの姿があたしにとっては衝撃的だった。
「タケシ! ポッチャマはどうなってるの!」
「ま、まあ落ち着くんだヒカリ。大ケガだったが、応急処置で何とか対処できた」
「大ケガ・・・!?」
 その言葉が、あたしにグサリと突き刺さった。あたしの心に、やりきれない思いが込み上げてきた。ポッチャマは、あたしをかばってこんな姿に・・・
「当分、安静にしていれば治るだろう・・・」
 そんなタケシの言葉も、あたしの耳には入らなかった。膝の上の両手に自然と力が入る。そんなあたしの様子に、2人も気付いた。
「・・・ヒカリ?」
「ごめん、ポッチャマ・・・あたしがしっかりしてなかったから・・・あなたをこんな目に・・・!」
 顔をうつむけながら言うあたし。握った両手に、冷たいものがこぼれ落ちた。元をたどればあんなライラの誘いについて行っちゃったせいで、あんな悪魔のような奴と戦って、ポッチャマがこんな目に・・・後悔先に立たずって言うけど、どうしてもそう思っちゃう。
「ヒカリ・・・お前のせいじゃないよ・・・」
 サトシがなぐさめようとして、あたしに手を伸ばした。
「こんなあたしじゃ・・・強くなんてなれない・・・!!」
 そうつぶやいたあたしは、すぐにテントを出て行った。
「お、おいヒカリ!!」
 そんなサトシの声も耳に入らなかった。テントの入口にはハルナもいたけど、それも気に留めなかった。
「チパーッ!」
 パチリスが、すぐにそんなあたしの後を追いかけて行った。

 1人になりたくなったあたしは、みんなのいる所から少し離れた所に行った。そこにある木の側で、あたしは2個のモンスターボールを開けた。ミミロルと、エテボースが出てくる。そこに、追いかけてきたパチリスも加わる。
「みんな・・・あたし、ポッチャマをひどい目に逢わせちゃった・・・あたしがしっかりしてなかったせいで・・・あんな誘いについて行っちゃったせいで・・・!」
 そんな事を打ち明けると、みんなの表情が曇った。
「あたし、どうしたらいいかわからない・・・こんなんであたし、強くなれるの・・・うっ・・・うっ・・・!」
 思わずかがみ込んで、サトシ達の前では見せられない涙を、顔を両手で覆って思い切り流した。ああ、強くなりたい・・・! もっと、強くなれたら・・・!
「ヒカリさん・・・?」
 あたしの後ろから、そんな声が聞こえてきた。見ると、そこにはハルナが。
「大丈夫、ですか・・・?」
 ハルナが少し遠慮がちにそう聞いた。
「・・・ごめん、全然ダイジョバない・・・」
 あたしは泣いてる様子を見られるのが恥ずかしくて、すぐ背中を向けて、そう答えた。
「ごめんねハルナ・・・こんな、頼りない先輩で・・・」
 あたしは、そんな事をハルナに言った。ハルナが動く様子はない。どうしていいかわからなくて、戸惑ってるのかな?
「何泣いてるの?」
 今度は別の声が聞こえた。見ると、そこにはヒトミさんが肩にはフカマル、その後ろにはハルナがキャプチャしたって言ってた、フライゴンが。ヒトミさんは左手でふきんを持って、バトナージ・スタイラーを磨いていた。
「ヒトミさん・・・」
「こんな所で人知れず泣くなんて、カッコ悪すぎるよ」
 そう言って、ヒトミさんがあたしの側に来た。
「なんで泣いてるの? 1人で悩み続けるのはよくないよ?」
「・・・・・・」
 ヒトミさんがあたしの横にしゃがんで、あたしの肩にポンと手を置いた。でも、あたしは話す気になれなかった。
「・・・じゃあ、こっちから聞いていい? ヒカリはどうして、強くなる事にこだわるの?」
「・・・!」
 そんな質問に、あたしは少し驚いた。
「だって、あの時も強くなりたくてって言ってたし、それにさっきの話でも、強くなれるのって言ってたじゃない」
 ヒトミさん、聞いてたんだ、さっきの話・・・
「さ、聞かせてよ。恥ずかしがる必要はないから」
「・・・はい」
 そう聞かれると、あたしもとうとう、黙り続ける事ができなくなった。あたしは、これまでのいきさつを話した。トップコーディネーターになりたい事、でもポケモンコンテストに2回連続で失敗しちゃった事、次のために充電しようとしてるけど、また失敗しちゃいそうで怖い事、だから、強くなりたいって思ってる事・・・

 * * *

「そうだったのね・・・」
 ヒトミさんはバトナージ・スタイラーを磨きながら、つぶやいた。
「その気持ち、あたしもわかるよ」
「・・・え?」
 ヒトミさんの言葉に、あたしは耳を疑った。
「あたしもね、ヒカリと同じような思いをした事があったの。トップレンジャーなんて凄いって思うかもしれないけど、なるのは簡単な事じゃなかったの。レンジャースクールでもズバ抜けて成績がよかった訳でもなかったし、エリアレンジャーになってからも、なかなかうまくいかない事ばっかりだった。『根性だけがお前の取り柄だ』なんて言われた事もあったっけ。それで、今のヒカリのように、トップレンジャーになんてなれるのかなって思った事もあった・・・」
 ヒトミさんは手を止めて空を見上げながら、淡々と語った。
「それでもあたしはあきらめるって事が嫌いでね、下積みを続けたの。今は辛くても、こうやってがんばっていれば、必ずいい結果が返ってくるって信じてね。それが実って、あたしはトップレンジャーになれたの。『鉄壁のヒトミ』なんて通り名ももらってね。だからあたしは、下積みを続けてよかったと思ってる。苦労して手にしたこのバトナージ・スタイラーも、あたしにとっては命と同じようなものなのよ。だから、暇があったらこうやって磨きたくなるの」
 ヒトミさんは磨いたバトナージ・スタイラーを見つめていた。ヒトミさんはホントに、あきらめるのが嫌いなんだ。でも、あたしはそうじゃない・・・
「ヒカリも今、思い通りにうまくいかなくなって、わらをもすがる思いで強くなろうとして必死でもがいてる。それなら、あんな甘い事につられちゃうのもわかるよ。でも、それは『現実逃避』になるんじゃないの?」
「現実、逃避・・・」
 ヒトミさんが言ったそんな言葉を、あたしは繰り返してみる。
「辛い事は嫌?」
 ヒトミさんの質問に、あたしは少しだけうなずいた。
「そりゃ、誰だってそうだよね。でも、だからって辛い事から逃げたって、何もいい事はないと思う。あいつらは楽に強くなろうとして、デザインポケモンなんて生み出したんだろうけど、あたしは、楽に強くなれる方法なんてないと思うの。ちょっと外れちゃうけど、『学問に王道なし』って言うしね。本当に強い人は、辛い事をいっぱい経験した人だと思うの」
 そう言った後、ヒトミさんはふきんをしまって、ゆっくりと立ち上がった。
「辛い事をいっぱい経験した人・・・?」
「そう。いっぱい辛い事を経験した人ほど、強い人になれる。そう思うの。確かに、すぐに才能を発揮して、向かう所敵なしみたいな人もいるけど、幾多の修羅場を乗り越えて強くなった人の方が、カッコイイって思わない?」
 ヒトミさんが、少しだけ笑みを浮かべた。
「だからヒカリ、今が辛くたって、そんな現実から逃げていたら、強くなんてなれないよ。どんな辛い事でも、まずは受け入れる。それからそれに従うか、抗うか決める。そうすれば、どんな辛い事だって、力に変わる。そして、何よりも自分の誇りと信念を貫く事ね。まだ人生の半分も生きてないからわからないけど、そうすれば年を取ってから、辛い時の事を誇りに思えるようになるんじゃないかな?」
「ヒトミさん・・・」
 あたしの涙は、いつの間にか止まっていた。
「過去は戻る事もできないし、変える事もできない。でも、未来なら進む事も、変える事もできる! ヒカリがその気になればね。そうでしょ?」
 ヒトミさんがウインクした。
「そうですよ! ハルナも応援します! ヒカリさんの悩みは、ハルナの悩みです! 世界中のみんながヒカリさんをバカにするようになっても、ずっとヒカリさんを信じます! だから、泣かないでください!」
 ハルナはそう言った後、あたしの横に1枚のハンカチを差し出した。
「ミミ!」
「チパ!」
「エイポ!」
 ミミロル、パチリス、エテボースも、あたしを励ますようにそう言った。
「ほら、そうやって応援してくれる人だっているし、ポケモン達も力になってくれるでしょ。1人で戦ってる人なんていないわ。あたしだってそうよ。さ、泣くのはこれまでにして。どうせ泣くなら、喜んで泣く方がいいでしょ?」
 ヒトミさんも、笑みを浮かべる。
「みんな・・・!」
 そんなみんなの姿を見て、あたしは嬉しくなった。
「ありがとう・・・」
 あたしは立ち上がって、ハルナが差し出したハンカチを取って、目に溜まった涙を拭いた。
「傷付かぬ者に青空は見えない、迷い歩む度命は輝く、ってね」
 ヒトミさんがあたしに背を向けて、そんな格言みたいな事をつぶやいた。そして、そのままその場を去って行った。
「ヒカリさん、ポッチャマもきっと、ヒカリさんは悪くないって思ってますよ」
「・・・そうね」
 ハルナの言葉に、あたしはいつも通りの顔を作って答えた。

 * * *

 ヒトミさんが歩いて行った先には、たくさんの野生ポケモンがいた。どの野生ポケモンも落ち着きがない。そこには、アユリの姿も。
「どう、様子は?」
「逃げてきたポケモン達は増えるばかりです。恐らく、セカンドの攻撃が激しさを増しているのでしょう・・・」
 アユリとヒトミさんは、そんなやり取りをしていた。
「くっ・・・! あたしは絶対に許さない! あのミュウツー・セカンドとそれを作り出したライラを・・・!」
 ヒトミさんはわなわなと右手を握って、そうつぶやいた。
「これからどうするのですか? このまま野放しにしていては・・・」
「もちろん、何があっても止めるつもりよ」
「ですが、セカンドはかなりの強敵です。まともにぶつかりあったら、勝ち目はないでしょう・・・」
「それでもやるのよ。あたし達がやらなかったら、誰がやるっていうの?」
 そう言って、ヒトミさんは野生ポケモン達がいる所に行った。そして、右腕のバトナージ・スタイラーを構えた。
「キャプチャ、オンッ!!」
 そう叫ぶと、バトナージ・スタイラーから、ディスクが発射された。ディスクが飛んでいった先には、ロズレイドとレントラーが。
「森を荒らす化け物退治に力を貸して! バトナージッ!!」
 そう叫んで、ヒトミさんは人差し指と中指を立てた右手をひと振り。たちまち、2匹を囲んで輪を描く。そしてその輪は、2匹に吸い込まれていった。
「ヒトミさん・・・」
「力になってくれるポケモン達の力は、多く借りた方がいいからね。こっちも、それなりの覚悟はできてるわ」
 ヒトミさんは、力強くアユリに言った。
「そうですか・・・なら、私も力になりましょう!」
 アユリも、力強くそう答えた。

 * * *

 あたしとハルナはテントに戻って、ポッチャマの手当ての手伝いをしていた。
「ポッチャマ、これ食べて」
 あたしが差し出したのは、ポケモンフーズ。少しでも早く、ポッチャマに元気になってもらいたいって思って・・・ポッチャマはその1個に手を伸ばして、口に運んだ。
「・・・ポチャマッ!」
 それを食べたポッチャマは、大ケガをしているとは思えない笑顔を見せた。そして、どんどん口に運んでいく。あたしもほっとして、笑顔を浮かべた。
「よかったですね、食欲があって」
「ええ」
 ハルナの言葉に、あたしはそう答えた。
「そんな! どうしてですか!」
 すると、外からサトシの声が聞こえてきた。何があったんだろうと思って様子を見てみると、サトシはヒトミさんと何やら話している。
「俺も行かせてください! このまま逃げるなんて俺はできない!!」
「ダメよ」
 サトシの主張を、ヒトミさんはあっさりと断る。
「どうして・・・?」
「その志は認めるけど、今一緒に行けば、あなた達が危険にさらされるわ。あたし達は、あなた達を危険な目に巻き込みたくないの」
「でも・・・!」
 一体何の話? あたしは、そんな2人の所に行った。
「サトシ、ヒトミさん」
「あっ、ヒカリ、ちょうどあなたにも話そうと思っていた所なの」
 ヒトミさんがあたしの方に体を向けた。
「えっ?」
「今すぐ荷物をまとめて、ここから逃げるのよ」
「ええっ!?」
 突然の言葉に、あたしは驚いた。
「この当たりにも、もうすぐセカンドが来ると思うの。だから、来る前に逃げるのよ」
 ヒトミさんの目付きは真剣だった。
「でも・・・俺もあいつを許せないんだ! 行かせてください!」
「ダメって言ってるでしょ!」
 サトシは相変わらず主張を続けるけど、ヒトミさんはそれでも断り続ける。
「サトシ、ここはヒトミの言う通りにした方がいい。こっちには、大ケガをしたポッチャマがいるんだ」
 そこにタケシが間に入って、サトシに言った。
「・・・わかったよ」
 さすがにサトシはあきらめがついたのか、ヒトミさんの前を後にした。
「ヒカリ、すぐ出発するぞ」
 そう一言言って、タケシも準備に取り掛かった。
「ヒトミさん、どうして・・・?」
 あたしは、なんでヒトミさんがそんな事を言ったのかわからなかった。
「あたしは守りたいのよ、ヒカリの夢を」
「えっ・・・!?」
 ヒトミさんの言葉に、あたしは驚いた。
「さっきのヒカリの話を聞いてね、そう決めたの。あいつに・・・ライラに、もうこれ以上ヒカリを苦しめさせないって! デザインポケモンという餌を使って、ヒカリ、いや、ヒカリだけじゃない。それ以外の人も釣って、夢を壊そうとしてるライラが許せないの・・・!」
「私も同じです」
 そこに、アユリも現れた。
「私は、今になって後悔しています。もっと自分の力で努力して、強くなろうとしなかった事を・・・その思いをヒカリさんに託したいのです。ですから、これからの戦いに巻き込ませたくないのです」
「アユリ・・・」
 アユリまで、そんな事を・・・
「ヒカリのポケモンさばきは、見ててなかなかのものだと思ったよ。もう少し工夫すれば、必ず強くなれると思うわ。だからヒカリ、自分の力で強くなるのよ! どんな暗闇にも、恐れないで立ち向かうのよ! きっとたくさんの人が、あなたを応援してるから!」
 ヒトミさんはあたしの両肩に手を置いて、そんな事を言った。
「ヒ、ヒトミさん・・・」
 そんな言葉を聞くと、こっちが悪い気がして、何だかこのまま逃げるのが嫌になってきた。
「ダイジョウブ、なんですか・・・?」
「心配しないで。あたし達を信じて!」
 そんなヒトミさんの真剣な眼差しを見て、断る事もできなかった。
「・・・うん!」
 あたしがうなずくと、ヒトミさんも笑みを浮かべた。その時、アユリの懐からカタカタと何かが揺れる音がした。
「!?」
 アユリは、1個のモンスターボールを取り出した。そのモンスターボールは、激しく揺れている。あれって、ルカリオが入っていた奴・・・?
「ルカリオ・・・? まさか・・・!」
 アユリがそうつぶやいた時、突然、あたし達のいる所に、空から“はどうだん”が降って来た!
「!!」
 あたし達が気付いた時はもう手遅れ。“はどうだん”の爆発が容赦なくあたし達を襲った!
「きゃあっ!!」
 弾き飛ばされるあたし。ヒトミさんは、受身を取ってまた立ち上がった!
「みんな!!」
「ヒカリさん!!」
 サトシとタケシ、そしてハルナがあたし達の側に駆けつけた。
「な、何なのいきなり!?」
 あたしが立ち上がって“はどうだん”が飛んできた方向を見ると、そこにはこっちに飛んでくるミュウツー・セカンドが!
「ミュウツー・セカンド・・・!!」
 今まで忘れかけていたセカンドを見て、あたしの背筋に寒気が走った。
「来たわね・・・!!」
 ヒトミさんが鋭い眼差しでセカンドをにらみつけた。そんなセカンドの後ろから、炎が飛んできた! ミュウだ!
「ミュウまで!?」
 あたしは驚いた。どこに行ったのか聞いてなかったけど、セカンドを追いかけていたなんて! セカンドも、すぐにミュウの存在に気付いた。セカンドの前に立ちはだかるミュウ。でも、その体はボロボロだった。息も荒い。セカンドは、そんなミュウに“はどうだん”を発射! 直撃! ミュウはそのまま、地面へと落ちて行った。
「ミュウ!!」
 サトシが声を上げた。ミュウは立ち上がろうとするけど、かなりのダメージを受けてたせいか、なかなか立ち上がれない。
「おやおや、誰かと思えばお前達か・・・」
 すると、今度は違う場所から声が聞こえた。見ると、セカンドから少し離れた所に、飛んでいるダイノーズの上に立つライラの姿が!
「ライラ・・・!」
 ヒトミさんの鋭い視線がライラに向いた。
「ちょうどいい。ここであの裏切り者を始末してしまえ、セカンド!!」
 ライラはセカンドに向かってそう叫んだ。すると、セカンドはいらだったようにライラの乗るダイノーズに左手を向けて“でんげきは”を発射!
「うおっ!!」
 直撃! 大ダメージを受けたダイノーズは、地面に真っ逆さまに落ちて行った。ライラはダイノーズが落ちる直前にジャンプして、地面に着地した。ダイノーズはズシンと音を立てて落ちて、そのまま動かなくなった。そんなセカンドの行動に、みんなが驚いた。
「仲間割れしてる!?」
 ハルナが声を上げた。そう思ったのは、あたしも同じだった。あんな事するなんて、セカンドってどんなポケモンなの!?
「・・・みんな、今の内に逃げて!」
 ヒトミさんはあたし達の方を向いて、そう叫んだ。
「えっ!?」
「オオオオオオオオッ!!」
 突然の言葉に驚いてる間に、セカンドがあたしの方に向けてまた“はどうだん”を発射!
「ヒ、ヒカリさん、危ない!!」
 アユリがとっさに飛び出して、あたしを押し倒した。
「きゃっ!」
 あたしはアユリと一緒に倒れた。“はどうだん”が上を通り過ぎたのがわかった。そして爆発! 爆風が吹き込んできた。
「みんな!!」
 ヒトミさんの一声で、3匹のポケモンがヒトミさんの側に来た。フライゴンに、レントラー、そしてロズレイド。
「ロズレイド、“ミサイルばり”!!」
 ロズレイドが、両手の花から“ミサイルばり”を発射! 命中! 思わず後ずさりするセカンド。
「ヒカリさん、早く、今の内に・・・!」
 あたしに覆いかぶさっているアユリが、そう言った。
「・・・うん!」
 迷ってる暇はなかった。あたしはすぐに立ち上がった。あたしは素早くテントの中に入って、ポッチャマを抱いて連れ出した。
「みんな行くぞ!」
「ええ!」
 タケシを先頭に、あたし達はその場から逃げ出した。ここはヒトミさんとアユリを信じて・・・

「いいんですね、ヒトミさん」
「ええ、いいのよ。ここで終わりかもしれないって覚悟をしたから、ああ言ったんだから。でも、もしそうなっても、最後まであきらめるつもりはないわ。最後まで『鉄壁のヒトミ』でい続けるつもりよ!」
 ヒトミさんとアユリは、そんなやり取りをしていた。そして、2人でセカンドをにらみつけた!
「行くよアユリ!」
「はい!」
 2人は身構えた。
「ロズレイド!!」
「キルリア!!」
 ヒトミさんの指示で、ロズレイドが飛び出した! アユリも、モンスターボールからキルリアを出す!
「ロズレイド、“エナジーボール”!!」
「キルリア、“シャドーボール”!!」
 2人は一斉に指示した。ロズレイドは“エナジーボール”を、キルリアは“シャドーボール”をセカンドに向けて発射! でも、セカンドは両手から“サイコカッター”を伸ばして、2つのボールをひと振りで簡単に切り裂いた! そして、そのまま“サイコカッター”を2匹に投げつけた! 直撃! そして爆発! ロズレイドには効果抜群! 弾き飛ばされるロズレイドとキルリア。
「フフフ、無駄な抵抗はよせ。お前達に、セカンドは倒せん!」
 ライラが動かなくなったダイノーズの横から、そう叫んだ。
「ライラ・・・!! あんたは、人の夢を打ち砕く悪魔よ!! あたしは、そんなあんたが許せない!!」
「全てはセカンドを作り上げるための生贄なのだ!! 私はこの力が欲しかったのだ・・・ロケット団でミュウツーを運用した時から!!」
「尚更、腹が立ってきたわね・・・!! あんたなんかにこの森を・・・ヒカリの夢を壊させはしない!!」
 そんなヒトミさんの叫びに答えるように、ロズレイドは両手を高くあげて、パワーを蓄え始めた!
「“ソーラービーム”!!」
 ヒトミさんの怒りの混じったその叫びに合わせて、ロズレイドは“ソーラービーム”を発射!
「ハアアアアアアアッ!!」
 セカンドも、“はどうだん”を発射して応戦! “ソーラービーム”と“はどうだん”は、正面からぶつかり合って、大きな爆発を起こした!

「!!」
 逃げていたあたしは後ろで起きた大きな爆発を見て、思わず足を止めて、振り向いた。
「ヒカリさん、何してるんですか! 早く逃げないと・・・!」
 そんなハルナの言葉も、あたしの耳には入らなかった。
「ヒトミさん・・・アユリ・・・!」
 あたしは、2人の事が心配になった。そんなあたしの心の中で、1つの思いが込み上がってきていた・・・


TO BE CONTINUED・・・

[538] SECTION08 アユリとヒトミ! 決死の死闘!
フリッカー - 2008年05月14日 (水) 21時57分

「キルリア、“さいみんじゅつ”!!」
 アユリの指示で、キルリアは目を光らせてセカンドをにらんだ。すると、セカンドはまぶたが重くなって、そのまま寝ちゃった。地面に墜落するセカンド。
「今です!! “ゆめくい”!!」
 アユリの指示で、キルリアはまた念じ始めた。すると、寝ているセカンドは寝たままもがき始めた。
「こっちも行かせてもらうわ!! “はなびらのまい”!!」
 続けてヒトミさんも指示を出す。ロズレイドは、たくさんの花びらをセカンドに向けてばら撒いた! 命中! 花びらの嵐が、セカンドを飲み込む。
「“ミサイルばり”!!」
「“10まんボルト”!!」
 2匹の攻撃ラッシュは続く。ロズレイドが“ミサイルばり”を、キルリアが“10まんボルト”を発射! 直撃! そして爆発! “ミサイルばり”の効果は抜群!
「“エナジーボール”!!」
「“シャドーボール”!!」
 さらに、ロズレイドが“エナジーボール”を、キルリアが“シャドーボール”を発射! 直撃! そしてまた爆発! “シャドーボール”の効果は抜群!
「“ソーラービーム”!!」
 最後は、ロズレイドの“ソーラービーム”! 太陽のパワーを一気に蓄えて、セカンドに向けて発射! 光線がセカンドを飲み込む! そして大爆発!
「これでどう!! いい加減くたばったでしょ!!」
 倒れたままのセカンドを見て、ヒトミさんはそう言い放った。でもその時、セカンドが目を覚ました! セカンドはムクリと起き上がると、2匹に向けて両手を突き出して、“はどうだん”を発射! 直撃! 弾き飛ばされるロズレイドとキルリア。
「くっ!! なんてしぶといの!?」
「こんな攻撃にもやられないなんて・・・!!」
 ヒトミさんとアユリは唇を噛んだ。そして、セカンドはロズレイドに向けて右手を突き出して“サイコキネシス”で念じ始めた! 一気に突き飛ばされるロズレイド! 効果は抜群! 木に叩きつけられたロズレイドは、一撃でノックアウトされた。ロズレイドは、完全に戦闘不能。
「くっ・・・!!」
 ヒトミさんが唇を噛んだ。


SECTION08 アユリとヒトミ! 決死の死闘!


「カアアアアアアアッ!!」
 セカンドは、“サイコカッター”を振りかざして、キルリアに襲い掛かる!
「キルリア、“かげぶんしん”!!」
 それに対してキルリアは、自分の体を一気に分裂させた! セカンドの“サイコカッター”が空を切った。たくさんのキルリアの分身が、セカンドを取り囲む。足を止めるセカンド。セカンドはどれが本物なのかわからなくなって、少し戸惑う。
「この隙に!! “シャドーボール”!!」
 分裂したキルリアは、一斉に“シャドーボール”を発射! セカンドは不利だと判断したのか、ジャンプしてかわす。
「オオオオオオオオッ!!」
 そしてまた着地すると、両手を横に突き出して、そのまま回転しながら“はどうだん”を連射! たくさんの影が、“はどうだん”を受けて消えていく。そして、とうとう本物が“はどうだん”を受けちゃった!
「キルリア!!」
 声を上げるアユリ。
「レントラーッ!!」
 ヒトミさんの指示で、今度はレントラーが飛び出した。
「どんなにしぶとくたって、攻撃し続けていれば!! “かみなり”!!」
 ヒトミさんの怒りに答えるように、レントラーはキルリアに気を取られているセカンドに“かみなり”を発射! 直撃!
「“とっしん”!!」
 続けてレントラーはセカンドに向けて突撃した! でも、セカンドは“サイコキネシス”を使って、レントラーを目の前で動きを止めた!
「っ!?」
 驚くヒトミさん。そして、そのまま右手から“サイコカッター”を伸ばして、動けないレントラーを切りつけた! よけられる訳ない! そのまま弾き飛ばされるレントラー。
「キルリア、“シャドーボール”!!」
 そんなレントラーをフォローしようと、キルリアが“シャドーボール”を発射! でも、それも“サイコカッター”で受け止められて、逆に打ち返された! 不意を突かれたキルリアは、よける事ができなかった! 爆発! 効果は抜群!
「ああっ!!」
 声を上げるアユリ。
「カアアアアアアッ!!」
 セカンドはさらに、“サイコカッター”を振りかざして、キルリアに襲い掛かる!
「レントラー、“スパーク”!!」
 そこに、レントラーが“スパーク”で割って入った! 直撃! 弾き飛ばされそうになったセカンドだけど、すぐに体勢を立て直した。
「“じゅうでん”!!」
 レントラーは足を止めて、体に電気を蓄え始める。
「オオオオオオオオッ!!」
 セカンドはその隙を見逃さない。すかさずレントラーに向けて“はどうだん”を発射!
「いけない!! キルリア、“サイコキネシス”!!」
 とっさにアユリがフォローした。キルリアは、“はどうだん”に向けて、念じ始めた。すると、“はどうだん”の軌道がそれて、レントラーとは全然違う場所に飛んで行った。
「さあ、思い切りやっちゃって!! “かみなり”!!」
 “じゅうでん”が終わったレントラーは、蓄えた電気エネルギーを開放して、パワーの上がった“かみなり”をセカンドに向けて発射! でも、セカンドは“サイコカッター”の刃で、“かみなり”を受け止めた! そのまま“サイコカッター”の刃に吸い込まれていく“かみなり”。
「そんな・・・!? “サイコカッター”に、あんな使い方もありなの!?」
 ヒトミさんは動揺した。
「カアアアアアアアッ!!」
 そうしている間に、セカンドは両手から“でんげきは”を発射! 命中! 悲鳴を上げるキルリアとレントラー。それだけじゃない。キルリアとレントラーは、まるで“でんげきは”につながれたように電撃を受けたまま“サイコキネシス”で持ち上げられた! そのまま、2匹は思い切り投げ飛ばされた!
「ああああっ!!」
 キルリアはアユリに、レントラーはヒトミさんにぶつかった! 同時に、電撃もアユリとヒトミさんを襲った! そのまま折り重なって倒れる2人と2匹。キルリアとレントラーは、完全に戦闘不能。
「くっ・・・!!」
 それでも立ち上がるアユリとヒトミさん。
「どうだ? これでわかっただろう? お前達がどんなにあがこうが、セカンドを倒す事はできんと・・・!」
 ライラの声が聞こえる。
「冗談じゃないわ・・・ここで負ける訳にはいかないのよ!! この森のためにも、ヒカリのためにも!! フライゴンッ!!」
 ヒトミさんの一声で、フライゴンが前に出た。そして、ヒトミさんが背中に飛び乗ると、フライゴンは勢いよく飛び上がった。
「うおおおおおおおっ!!」
 そんなヒトミさんの叫び声に答えるように、フライゴンはセカンドに向けて突撃していった!

 * * *

「ヒトミさん・・・アユリ・・・!」
 あたしは2人の事が心配になって、足を止めて振り向いていた。あたしの見つめる先で、またいくつかの爆発が起きた。
「あたしのために・・・2人は戦ってる・・・」
 そんな2人を思い浮かべると、あたしはヒトミさんが言った言葉を思い出した。
『今が辛くたって、そんな現実から逃げていたら、強くなんてなれないよ。どんな辛い事でも、まずは受け入れる。それからそれに従うか、抗うか決める。そうすれば、どんな辛い事だって、力に変わる。そして、何よりも自分の誇りと信念を貫く事ね』
 そう、あたしはがんばるって決めた時から、あんな嫌な事を忘れようと必死になってた。でも、ヒトミさんの言葉を聞いて、それが『現実逃避』なんじゃないかって思った。だからあたしは、『簡単に強くなれる方法』って話に乗っちゃったのかもしれない。今、あたしはヒトミさんやアユリが戦ってる所から、そうしろって、あたしの夢を守りたいからって言われた事もあるけど、逃げようとしてる。それで、ホントにいいの、あたし・・・?
『ヒカリ、自分の力で強くなるのよ! どんな暗闇にも、恐れないで立ち向かうのよ! きっとたくさんの人が、あなたを応援してるから!』
 今まであたしは、みんなの手助けを借りながら、旅を続けてきた。あたしがあの失敗で落ち込んだ時も、みんなは励ましてくれた。ダメな所を教えてくれたノゾミ、あたしの様子を気にかけていたケンゴ、「自分が本当は、何がしたいのかを考えて」って言ったミライさん、ちょっと極端だけどあたしを信じてくれるハルナ、あたしと同じような経験をしていたスモモ、そして何よりも、テレビでいつもあたしを見てるママ、一緒に旅をしているサトシとタケシ、そして、あたしのポケモン達・・・そんな事を、ヒトミさんは気付かせてくれた。そんなヒトミさんやアユリが、あたしのためにがんばってるって時に、やっぱり自分だけ逃げるなんて・・・
「できない・・・!」
 自然と、口からそんな言葉がこぼれた。
「何が、ですか?」
 ハルナが首を傾げた。
「やっぱり、このまま逃げるなんてできない!!」
 あたしは、その気持ちをはっきりと確かめた。
「タケシ、ポッチャマをお願い!」
 あたしはケガをしているポッチャマを無理やりタケシに託した。そして、元来た道を逆に走って行った。
「お、おい! ヒカリ!」
 タケシが呼び止めるけど、あたしの耳には入らなかった。
「ヒカリ・・・よし、俺も行くぜ!!」
「ピッカ!!」
「ヒカリさん、ハルナもついて行きますよ!!」
 それを見たサトシとハルナも、あたしに続いて走り出した。
「お、おい、ちょっと!!」
 タケシも、仕方がないと思ったのか、ポッチャマを抱いたままあたし達の後を追いかけ始めた。

 * * *

 元の場所に戻ってみると、そこには、壮絶な戦いを繰り広げるヒトミさん達の姿が! ヒトミさんを乗せたフライゴンとセカンドは、激しい空中戦を繰り広げていた。
「“かえんほうしゃ”!!」
 フライゴンが口から火を吹く! 命中! でも、すかさずセカンドも“はどうだん”で反撃! フライゴンは旋回してかわそうとしたけど、右の羽に“はどうだん”が当たった! 一瞬、バランスを崩すけど、何とか体勢を立て直す。そこに、セカンドが“サイコカッター”を伸ばしてフライゴンと間合いを詰める! フライゴンは後ろに下がって、間一髪“サイコカッター”をかわした。
「“はがねのつばさ”!!」
 一旦間合いを取った後、フライゴンは羽に力を込めて、セカンドに一気に突撃していった! そのまますれ違いざまに羽でセカンドを切りつけた! 直撃! はね飛ばされるセカンド。でも、セカンドは体勢を立て直した後、右手を突き出して“サイコキネシス”でフライゴンを捕まえた! 動けなくなるフライゴン。そして、セカンドは突き出した右手を一気に振り下ろして、フライゴンを地面にたたき落とした!
「何をっ!!」
 それでも、ヒトミさんの一声でフライゴンは立ち上がって、また飛び上った。ヒトミさんの言葉は、1つ1つに怒っている事がそのまま出ていて、聞いているとちょっと怖い。何だかヒトミさんの姿をした、ヒトミさんじゃない違う人のようにも見える。
「す、凄ぇ・・・あれが、ヒトミさん・・・?」
「でも、何だか怖い・・・」
 あたし達は、戦おうとしている事も忘れて、ヒトミさんとアユリの戦いに見入っていた。
「それなら、“すなあらし”!!」
 ヒトミさんの指示で、フライゴンは羽を一振りした。たちまち砂が舞い上がって、砂の嵐となって辺りを覆った! あたし達の所にも、当然“すなあらし”が吹きつけてきた。視界が悪くなる。セカンドも、思わず顔を遮る。
「これで、フライゴンもルカリオも有利になるわ!! 覚悟しなさい!!」
 ヒトミさんが叫んだ。周りが“すなあらし”状態になった今、じめんタイプでもはがねタイプでもないセカンドは“すなあらし”のダメージを受け続ける事になる。
「“すなじごく”!!」
 フライゴンは、羽のひと振りで砂の竜巻を起こした! たちまちそれに飲み込まれるセカンド。
「アユリ!! 攻撃しまくって!!」
「わかりました!! ルカリオ!!」
 ヒトミさんの叫び声に、アユリも力強く答えた。ルカリオも身構えた。
「“かえんほうしゃ”!!」
「“あくのはどう”!!」
 フライゴンは“かえんほうしゃ”! ルカリオは“あくのはどう”を発射! 砂の渦に飲み込まれて、動けないセカンドに直撃! そして爆発! “あくのはどう”の効果は抜群!
「“はがねのつばさ”!!」
「“はっけい”!!」
 続けてフライゴンとルカリオは、セカンドに飛び込む! まずフライゴンが、“はがねのつばさ”で砂の渦ごとセカンドを切り裂いた! 壊れる砂の渦。そこに、ルカリオが右手を突き出して飛び込む! セカンドに右手の平が触れようとした所で、手の平が光って爆発! 地面に落ちるセカンド。
「フカマル!! あなたも行って!!」
 ヒトミさんの一声で、今までヒトミさんの肩にいたフカマルも飛び出した! すると、フカマルの姿は“すなあらし”の中にスウッと消えていった。
「消えた!?」
 それを見たあたし達は驚いた。
「“ドラゴンクロー”!!」
 ヒトミさんが指示すると、フカマルがセカンドの後ろから飛び出して、ツメでセカンドを切り裂いた! そのままフカマルは、また“すなあらし”の中に消えた。辺りを見回すセカンド。
「もう一発!!」
 ヒトミさんが指示すると、今度はセカンドの右側からフカマルが飛び出した! そのままツメの一撃をもう一発! そしてまた、“すなあらし”の中に消えていった。
「“すなあらし”の中に身を隠せる『すながくれ』のとくせいを利用したヒット&アウェイ戦法か・・・」
 あたし達の後ろで見ていたタケシがつぶやいた。
「ルカリオ、“はどうだん”!!」
 ルカリオが“はどうだん”を発射! フカマルにばかり気を取られていたセカンドは、気付くのが遅かった! 直撃! そして爆発!
「フカマル、“とっしん”!!」
 そこに、フカマルが背中から飛び出して、強烈な体当たりをお見舞いした! 直撃! 正面から倒れるセカンド。
「さあ、これでとどめよ!! フライゴン、“はかいこうせん”!!」
 ヒトミさんの指示で、フライゴンは倒れたセカンドに向けて、口から“はかいこうせん”を発射! 発射された光線は、容赦なくセカンドを飲み込んだ! 大爆発! その時、“すなあらし”が晴れて、辺りの視界が元に戻った。“はかいこうせん”の爆発の煙は、まだセカンドを包んでいる。
「やったのか・・・?」
 サトシがつぶやいた。そのまま何も動きがないように見えた、その時!
 煙の中から、たくさんの“はどうだん”がヒトミさん達に飛んできた!
「きゃああああっ!!」
 たくさんの爆発が起きて、ヒトミさん達が飲み込まれたのが見えた!
「ヒトミさんっ!! アユリッ!!」
 あたしは、思わず声を上げた。そして煙が晴れると、そこに仁王立ちしたセカンドの姿が映った!
「そんな・・・!?」
 爆発で倒れたアユリは、ぎこちなく立ち上がりながら、絶望した声を上げた。
「これでもやられないっていうの・・・!?」
 フライゴンの上にかろうじて残っていたヒトミさんも、唇を噛んでそうつぶやいた。
「でも、まだこっちだって・・・!! “はがねのつばさ”!!」
 ヒトミさんを乗せたフライゴンは、羽を広げてセカンドに突撃していく!
「カアアアアアアアッ!!」
 でも、セカンドは右手を突き出して“サイコキネシス”で念じ始めた! すると、突撃していったフライゴンが、サイコパワーで止められた!
「しまった・・・!!」
 苦しそうに声を上げるヒトミさん。ヒトミさんも、サイコパワーに捕まってるみたい!
「オオオオオオオオッ!!」
 セカンドはそのまま、“はどうだん”を両手で連射! “はどうだん”の雨は容赦なくフライゴンとヒトミさんを襲う!
「きゃあああああああっ!!」
 悲鳴を上げるヒトミさん。そこに、それを止めようとフカマルが飛び出した!
「ハアッ!!」
 でも、すぐに気づいたセカンドは、“サイコカッター”でフカマルを返り討ちにした! そのまま力なく倒れるヒトミさんとフライゴン、そしてフカマル。フライゴンとフカマルは、完全に戦闘不能・・・!
「くっ・・・!!」
 ボロボロになったヒトミさんは、それでも立ち上がる。
「カアアアアアアアッ!!」
 そこに、セカンドが“サイコカッター”を振りかざして、ヒトミさんに襲い掛かる!
「ルカリオ!! “ボーンラッシュ”!!」
 そこに、にょい棒を伸ばしてルカリオが割って入った! ガチンと“サイコカッター”を受け止めるルカリオ。そのままつばせり合いになる! しばらくそれが続いた後、2匹は一旦距離を取って、仕切り直しになる。
「もう1回です!!」
 アユリの指示で、ルカリオはもう一度にょい棒を振り上げてセカンドに突撃していく! でも、セカンドは“サイコカッター”をしまったと思うと、両手を突き出して“でんげきは”を発射! その先には、アユリも!
「きゃああああっ!!」
 ルカリオと一緒に“でんげきは”に捕まるアユリ。
「オオオオオオオオッ!!」
 そのまま“サイコキネシス”でセカンドは念じ始める! ルカリオとアユリは、“でんげきは”の鎖につながれたまま、思い切り投げ飛ばされた! そのまま力なく倒れるルカリオとアユリ。ルカリオは、もう戦闘不能・・・!
「そんな・・・!!」
 このままじゃ、ヒトミさんとアユリが・・・!
「フフフ、勝負はついたようだな」
 そこに、ライラが余裕そうに現れた。でも、それに気付いたセカンドは、ライラに右手を向けて、“でんげきは”を発射!
「ぐわああああっ!!」
 悲鳴を上げるライラ。そのまま、ライラはバタリと倒れた。
「フフ・・・自業自得って奴ね、ライラ。でも、あたしはまだあきらめてなんか・・・!!」
 ヒトミさんは、右腕を突き出してバトナージ・スタイラーを構えた!
「・・・!?」
 でもその時、ヒトミさんは動揺した。「命と同じようなもの」と言っていたバトナージ・スタイラーは、火花と煙を出して、ボディも割れていて動かなくなっていた!
「そんな・・・あたしのバトナージ・スタイラーが・・・!」
「どうやら・・・お前の『鉄壁』も崩れ落ちる時が来たようだな、『鉄壁のヒトミ』・・・」
 ライラがぎこちなく立ち上がりながら、そう言った。
「そんな・・・そんな事ないわ・・・あたしは・・・最後まで『鉄壁のヒトミ』よ!! どうせやられるなら、最後まで信念を貫き通して、カッコよくやられてやるわ!!」
 それでもヒトミさんは、強い眼差しで強気に言い放つ。
「ハアアアアアアアアッ!!」
 そこに、セカンドが“サイコカッター”を振り上げて、ヒトミさんに襲い掛かった! このままじゃ、ヒトミさんが! 気が付くとあたし達は、モンスターボールを投げて飛び出していた。
「エテボース、“スピードスター”!!」
「ブイゼル、“みずのはどう”!!」
「ルーナ、“シャドーボール”!!」
 あたし達の指示で、モンスターボールから飛び出したエテボース、ブイゼル、ルーナが一斉にセカンドに攻撃! 直撃! 不意打ちを受けたセカンドは、思わず後ずさりした。
「・・・!?」
 ヒトミさんが驚いて、こっちに振り向いた。
「あなた達、どうしているの・・・!?」
「逃げたのでは、ないのですか・・・!?」
 ヒトミさんとアユリが目を丸くして言った。あたしは、エテボースと一緒にセカンドの前に出る。そして、残りのモンスターボールも開けて、ミミロルとパチリスを出した。
「ヒトミさん・・・アユリ・・・あたし、もう逃げない!! あたしは・・・セカンドと戦う!!」
 あたしは両手を強く握って、強く言い放った。そして、セカンドをにらみつけた。
「ミミッ!!」
「チパッ!!」
「エイポッ!!」
 ミミロル、パチリス、エテボースも、あたしの思いに答えてくれる!
「俺達だっているぜ!!」
「ピカッ!!」
「ブイブイッ!!」
 サトシとピカチュウ、ブイゼルも力強く叫んだ。
「・・・助けようとした人に、逆に助けられるなんてね・・・」
 ヒトミさんが、笑みを浮かべた。
「どうやらあきらめない心に、神様が味方してくれたみたいね。やっぱり最後まであきらめなくてよかったわ。ね、アユリ」
 ヒトミさんは倒れたアユリの肩を担ぎながら、そう言った。
「・・・ほんとですね」
 アユリも、笑みを浮かべながら相槌を打った。
「フンッ、そんな所で・・・セカンドを止める事はできん!」
 ライラがよろよろと体をふらつかせながら、そう言った。でも、そんな言葉は気にも留めなかった。
「みんな・・・行くよ!!」
「ミミッ!!」
「チパッ!!」
「エイポッ!!」
 あたしの一声に、みんなが答えた。
「ウウウ・・・オオオオオオオオッ!!」
 セカンドが、うなり声を上げてあたし達に向かってきた! その『殺気』に負けそうになるけど、あたしはそんな自分に喝を入れた。
「ミミロル、“れいとうビーム”!!」
「ミィィィ、ミイイイイイッ!!」
 ミミロルが、向かってくるセカンドに向けて“れいとうビーム”を発射! セカンドはすぐによける。でも、“れいとうビーム”はセカンドの左手に当たった! 左手が凍りつく。
「ハアアアアアッ!!」
 でも、セカンドは右手を突き出して“はどうだん”を発射!
「ブイゼル、“みずのはどう”!!」
「ブイイイイイイイッ!!」
 それにブイゼルは“みずのはどう”で応戦する! “はどうだん”と“みずのはどう”が正面からぶつかって、爆発した!
「エテボース、“スピードスター”!!」
「エイッ、ポォォォォォォッ!!」
 すぐに、エテボースが“スピードスター”を発射! 飛んでいった“スピードスター”が、セカンドを飲み込んだ! 思わず目がくらむセカンド。
「よ〜し、チャンス!! ルーナ、ハルナスペシャルその2、『分裂魔球シャドーイリュージョン』!!」
 その隙をハルナは見逃さなかった。ルーナは“シャドーボール”を発射して、それを“ねんりき”で分裂させる! そしてそのまま操ってセカンドにぶつける! セカンドは“サイコカッター”を振り回して相殺するけど、何発かは相殺できないで受けた! 効果は抜群!
「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
「パチリス、“ほうでん”!!」
「ピィィィィカ、チュウウウウウッ!!」
「チィィィィパ、リィィィィィッ!!」
 ピカチュウとパチリスが、タイミングを合わせて電撃を発射! 直撃! 手ごたえある!
「ウウウウウウ・・・カアアアアアアアッ!!」
 でも、セカンドも負けじと“サイコキネシス”で6匹を一気に突き飛ばした! あたし達の前に弾き飛ばされる6匹。
「まだだ!!」
「ピカッ!!」
「ブイッ!!」
 サトシの一声で、ピカチュウとブイゼルが立ち上がる。
「みんな、まだやれる?」
「ミミッ!!」
「チパッ!!」
「エイポッ!!」
 ミミロルとパチリス、エテボースもまだまだやる気。
「こっちも大丈夫です!!」
 ハルナがそう言った。ルーナも問題ないみたい。
「オオオオオオオオッ!!」
 セカンドは“サイコカッター”を振りかざして、こっちに襲い掛かる!
「みんな、コンビネーションで行くぞ!!」
「ええ!!」
 サトシの一声で、6匹のポケモン達は集まった。
「まずはハルナから!! ルーナ、“ねんりき”!!」
 向かってくるセカンドに向けて、ルーナが念じ始めた! セカンドは、向かい風に吹かれるように、こっちに向かってくるスピードが遅くなる。そして、とうとう動きが止まった。
「今です、ヒカリさん!!」
「ええ!! エテボース、“ダブルアタック”!!」
「エイポォォォォォォッ!!」
 そこに、エテボースが2本の尻尾を振り上げてセカンドに飛び掛かる! 2本の尻尾を、一気に叩きつけた! 直撃!
「ブイゼル、“アクアジェット”!!」
「ブゥゥゥゥィッ!!」
 さらにそこに、ブイゼルが得意技の“アクアジェット”でセカンドに飛び込む! これも直撃! “アクアジェット”の勢いで一気に押し出されるセカンド。そのまま離脱するブイゼル。体勢を立て直すセカンド。
「パチリス、“ほうでん”!!」
「チィィィィパ、リィィィィィッ!!」
 そこに、パチリスが思い切り“ほうでん”! セカンドはかわそうとするけど、たくさん飛んでくる電撃に動きを制限される。命中はしなかったけど、これなら!
「今よミミロル!! “れいとうビーム”!!」
「ミィィィ、ミイイイイイッ!!」
 その隙に、ミミロルが“れいとうビーム”を発射! 完全に命中! セカンドの体は、たちまち氷漬けになった。
「ピカチュウ、“かみなり”だ!!」
「ピィィィィカ・・・ッ!!」
 凍ったまま動かないセカンドに向けて、ピカチュウが“かみなり”をお見舞いしようとパワーを蓄える。その時! セカンドを覆っていた氷が、突然バリンと音を立てて壊れた!
「!?」
 あたし達は驚いた。こんなに復活が早いなんて、予想外だった。
「チュウウウウウウウッ!!」
 ピカチュウは蓄えたパワーをそのままセカンドに向けて発射!
「ハアッ!!」
 でも、セカンドが素早く右手を突き出して“サイコキネシス”で念じると、“かみなり”の軌道がそれた! “かみなり”はセカンドの後ろの方に飛んで行った。
「何!?」
 動揺するサトシ。
「カアアアアアアアッ!!」
 そしてセカンドは、両手を突き出して、こっちに“はどうだん”を連射してきた! たくさんの“はどうだん”が、こっちに雨のように飛んでくる!
「きゃああああああっ!!」
 爆発! あたし達はたちまち巻き込まれた! 飛ばされて倒れるあたし達。
「み、みんな、大丈夫か・・・?」
「な、何とか・・・」
 サトシが何とか立ち上がる。
「う・・・くっ・・・」
 あたしは立ち上がろうとするけど、体中が痛い・・・! 立とうとすると痛みが走って、なかなか立ち上がれない。
「フ、フフ・・・無駄な抵抗はやめろ・・・どうあがいてもセカンドは倒せん・・・!」
 木にもたれかかるライラが、そんな事を言った。
「まだ・・・終わってない・・・!! あたし・・・最後まで・・・戦う・・・!!」
 そう言って、あたしは立ち上がろうとするけど、やっぱり体が痛くて立ち上がれない。
「ハアアアアアアアッ!!」
 そこに、セカンドが右手を突き出して、“でんげきは”を発射! その先にいるのは・・・あたし!?
「あ・・・ああ・・・っ!!」
 あたしは体がすくんで、逃げようとしても体が動かない・・・!


NEXT:FINAL SECTION

[539] FINAL SECTION もう逃げない! 夜明けへ向かって!
フリッカー - 2008年05月15日 (木) 00時18分

「あ・・・ああ・・・っ!!」
 こっちに飛んでくる“でんげきは”。あたしの体は完全にすくんでいた。逃げようとしても体が動かない・・・!
「ブイーッ!!」
 そこに、ブイゼルがあたしの前に飛び出した!
「ブウウウウウウッ!!」
 ブイゼルはあたしの盾になって、代わりに“でんげきは”を受けた! 悲鳴を上げるブイゼル。効果は抜群! あたしの目の前で倒れるブイゼル。
「ブ、ブイゼルッ!?」
 あたしは、すぐにブイゼルの側に行った。ブイゼルは、自分からあたしをかばって・・・!?
「ブ、ブイ・・・」
 それでもブイゼルは、「平気だ」って言ってるみたいに、こっちに笑みを浮かべた。そして、ブイゼルは立ち上がって、倒れていたあたしの体を起こした。
「ご、ごめん、ブイゼル・・・」
「ブイ」
 あたしを気遣ってくれるブイゼルにあたしがそう言うと、「気にするな」って言ってるように、ブイゼルは答えた。
「みんな・・・ダイジョウブ?」
「ミ・・・ミッ!」
「チパ・・・ッ!」
「エイ・・・ポッ!」
 あたしはみんなの様子を確かめる。ミミロル、パチリス、エテボースはかなりダメージを受けてる。それでも3匹は立ち上がった。

「ヒトミさん・・・このままじゃ、みんなやられてしまいます・・・!」
「何言ってるの! ここは賭けてみようじゃない、3人に!」
 弱腰になるアユリに、ヒトミさんはそう言い聞かせた。
「ああ、今は3人を信じるしかない・・・!」
 タケシがつぶやいた。
「ポチャ・・・!」
 タケシの腕の中で、ポッチャマは不安そうにあたしを見つめていた・・・


FINAL SECTION もう逃げない! 夜明けに向かって!


「よ、よくもやってくれたわね!! ルーナ、ハルナスペシャルその3、『流星乱舞スターダストセレナーデ』!!」
 ハルナが反撃する。ルーナは“スピードスター”を発射した後、“ねんりき”でそれを操ってセカンドに飛ばす!
「オオオオオオオオッ!!」
 でも、セカンドは止まらない! 飛んでくる“スピードスター”を“サイコカッター”で切り払いながらルーナに迫る! そして、そのままルーナを切りつけた!
「ルーナ!!」
 ハルナの目の前に落ちるルーナ。ルーナは何とか浮かび上がった。
「くそっ!! ピカチュウ、“アイアンテール”だ!!」
「ピッカアッ!!」
 ピカチュウはセカンドに向けて飛び出した! そして、力を込めた尻尾でセカンドに躍りかかった!
「カアッ!!」
 でも、セカンドは“サイコカッター”で“アイアンテール”の一撃を受け止めた! そのままピカチュウを弾く。ピカチュウは体勢を立て直した。
「パチリス、“スパーク”!!」
「チパアアアアアッ!!」
 あたしも負けてられない。パチリスが“スパーク”でセカンドに突撃していく! でも、セカンドはそれに気付いて、右手をパチリスに突き出して、“サイコキネシス”で念じ始めた!
「・・・チパ!?」
 パチリスは、セカンドの右手の目の前で押さえつけられて、止まっちゃった! どんなに足をジタバタさせても、パチリスは動けない!
「ブイゼル、回りながら“アクアジェット”だ!!」
「ブゥゥゥゥィッ!!」
 そんなパチリスを助けようと、ブイゼルはスピンをかけながら“アクアジェット”でセカンドに突撃していく! 前にトバリジム戦でも使ったあの戦法。でも。セカンドは捕まえたパチリスを、向かってくるブイゼルに投げた!
「チパアアアアアアッ!!」
 電気を纏ったまま、投げられるパチリス。そのまま、パチリスはブイゼルと衝突! そして爆発!
「ブイイイイイッ!!」
「チパアアアアッ!!」
 お互いに弾き飛ばされるパチリスとブイゼル。ブイゼルは電撃を受けちゃったから、効果は抜群!
「パチリス!! ブイゼル!!」
 あたしは声を上げた。心が焦る。パチリスとブイゼルはそろそろやばい! このままじゃ・・・!
「ミミロル、“れいとうビーム”でセカンドを止めて!!」
「ミィィィ、ミイイイイイッ!!」
 ミミロルは“れいとうビーム”を発射! でも、それに気付いたセカンドは、ジャンプしてそれをかわす。
「ハアアアアアアアッ!!」
 そして、ミミロルの上を取ったセカンドは、“はどうだん”をミミロルに向けて発射!
「ミミロルよけて!!」
 あたしはあわてて指示した。ミミロルは、“とびはねる”でジャンプして間一髪“はどうだん”をかわした。でも安心したのもつかの間、セカンドは“サイコキネシス”で念じ始めた!
「ミ!? ミミィィィィッ!!」
 一瞬、ミミロルの動きが止まったと思うと、ミミロルは突然、ものすごいスピードで真っ逆さまに地面に落とされた! 土煙が舞い上がった。
「オオオオオオッ!!」
 そこに、セカンドは“はどうだん”を発射! ミミロルはよけられる訳ない! 直撃! 効果は抜群!
「ミミィィィィッ!!」
 悲鳴を上げるミミロル。
「ミミロル!!」
 思わず声を上げるあたし。
「ピカアアアアッ!!」
 そこに、ピカチュウが“でんこうせっか”で飛び込んだ! 不意打ちを受けるセカンド。
「ミミ・・・!!」
 ミミロルの前に降り立ったピカチュウを見て、ミミロルは目を輝かせた。
「ピカチュウ、最大パワーで“ボルテッカー”だ!!」
「ピカピカピカピカアッ!!」
 ピカチュウは必殺の“ボルテッカー”でセカンドに一直線に向かっていく!
「カアアアアアアアッ!!」
 セカンドは、“はどうだん”を発射してこれに応戦! 命中!
「ピカ・・・ッ!!」
 ピカチュウの速度が緩まった。でも、ピカチュウは怯まないで、突撃を続ける。そこに、セカンドは2発、3発、4発と“はどうだん”を撃ち込んでいく!
「ピ・・・カ・・・ッ!!」
 ピカチュウの動きが止まった。その表情も苦しくなってきている。そして、“ボルテッカー”を保ったまま“はどうだん”を受け続けるピカチュウ。でも、ピカチュウの我慢も、限界に来ていた!
「カアアアアアアアッ!!」
 そして、セカンドが渾身の力を込めた“はどうだん”を発射! その直撃で、とうとう“ボルテッカー”が壊された! 爆発!
「ピカアアアアアッ!!」
 弾き飛ばされるピカチュウ。ピカチュウは、ミミロルの目の前に倒れた。
「ピカチュウ!!」
「ミミッ!!」
 サトシとミミロルが声を上げた。ピカチュウのダメージも、かなり大きい。
「オオオオオオオオッ!!」
 セカンドは、今度はエテボースに狙いを定めて、“はどうだん”を発射!
「エテボース、“きあいパンチ”!!」
「エイポォォォォォォッ!!」
 慌ててあたしは指示を出した。エテボースは、尻尾の拳に力を込めて、飛んでくる“はどうだん”に向けて振った! 拳は、“はどうだん”を正面から受け止めた。
「ウウ・・・ッ!!」
 “はどうだん”のパワーがかなりあるのか、エテボースは苦しそうな表情を浮かべた。一瞬、“はどうだん”に押されそうになる。
「がんばって!! エテボースッ!!」
 あたしは、必死で呼びかけた。
「ウウッ・・・ポォォォォォッ!!」
 そんなあたしの応援に答えて、エテボースはまた尻尾に力を込めた! すると、“はどうだん”が爆発! エテボースはよろけて、少し後ろに下がった。エテボースは荒い息をする。結構体力を使っちゃったみたい!
「ハアアアアアアアッ!!」
 そこに、セカンドが“サイコカッター”を振りかざしてエテボースに襲い掛かる!
「エイポォォォッ!!」
 エテボースはもろに切られた! 倒れるエテボース。さらにセカンドは、追い討ちをかけようと“サイコカッター”を振り上げた! その手を尻尾で受け止めるエテボース。そのまま尻尾と腕の押し合いになる。
「エ・・・ポ・・・!!」
 でも、エテボースは疲れがかなり出ている。食い止めるのが精一杯の状態。
「エテボースッ!! 負けないでっ!!」
 あたしは必死になって呼び掛ける。それに答えようとして、エテボースは必死でセカンドの腕を食い止めている。その状態がしばらく続くと思ったら、セカンドは空いている左手をエテボースに突き出して、“はどうだん”を至近距離で作り出した! エテボースもあたしも、気付いた時はもう手遅れだった。
「エイポォォォォッ!!」
 そのままセカンドは“はどうだん”をゼロ距離で連射! 効果は抜群! 悲鳴を上げるエテボース。
「エテボースッ!!」
 あたしが声を上げるのも空しく、セカンドの腕を抑えていたエテボースの尻尾は、力なく地面に落ちた。エテボースはもう、瀕死の一歩手前。
「そんな・・・!!」
 あたしは絶望した。セカンドはとどめを刺そうとして、“サイコカッター”をエテボースに振り上げた! ダメ・・・このままじゃ、エテボースは・・・!
「もうやめてえっ!!」
 あたしは思わず、そう叫んでいた。セカンドの顔がこっちを向いた。
「オオオオオオオオッ!!」
 すると、セカンドは邪魔をするなと言わんばかりに、こっちに左手を突き出して“でんげきは”を発射した!
「きゃあああああっ!!」
 電撃があたしの体を通り抜けた! あたしの体の力が抜けて、あたしはまた倒れた。
「ヒカリさんっ!!」
 ハルナが声を上げた。
「・・・っ!! よくもヒカリさんをっ!! ルーナ!! “シャドーボール”!!」
 ボロボロのあたしを見たハルナが、怒ってルーナに指示を出した。
「ダメ・・・ハルナ・・・ッ!!」
 ハルナは完全に周りが見えなくなってる。あたしはハルナに手を伸ばして立とうとしたけど、立ち上がれるほどの体力が出ない。そんなあたしをよそに、ルーナは“シャドーボール”を発射! セカンドは、ジャンプしてかわす。そして、“はどうだん”をルーナに向けて発射! 直撃! 弾き飛ばされたルーナは、ハルナの所に飛んでくる!
「きゃああっ!!」
 ルーナともろにぶつかったハルナは、ルーナと一緒に折り重なって倒れた! ルーナは完全に戦闘不能になっていた。
「ハルナ・・・ッ!!」
 あたしは声を上げる事しかできなかった。やっぱり立ち上がれるほどの体力が出ない。
「くそっ!! これ以上やらせるか!! ナエトル、君に・・・」
 サトシが怒って別のモンスターボールを取り出そうとした。その時、セカンドは右手を突き出して“でんげきは”をサトシに向けて発射した!
「ぐわああああっ!!」
 悲鳴を上げるサトシ。サトシはその場で膝をついた。
「サトシ・・・ッ!!」
 あたしはサトシに向けて手を伸ばす。これくらいの事しかできる体力がない。
「カアアアアアアッ!!」
 セカンドは“サイコカッター”を伸ばして、サトシに向かっていく! ああっ、このままじゃ、サトシが・・・!
「エ・・・エイポォォォォッ!!」
 その時、倒れていたエテボースが立ち上がった。セカンドの後ろから尻尾をつかんで、精一杯引っ張ってセカンドを止めようとする!
「エテボース・・・?」
 サトシが目を丸くした。エテボースは、このままサトシがやられちゃうのを黙って見てられなかったんだ! でも、体力の少ないエテボースは、セカンドの尻尾のひと振りで、簡単に振りほどかれた。
「エ・・・エテボースッ!!」
 サトシが声を上げた。そのまま力なく倒れるエテボース。そんなエテボースを尻目に、セカンドは“はどうだん”をサトシに向けて発射!
「ぐわああああっ!!」
「サトシ・・・ッ!!」
 直撃を受けたサトシを見て、あたしは思わず声を上げた。そのまま倒れるサトシ。
「そんな・・・サトシまで・・・!?」
 あたしは完全に絶望した。これじゃ、あたし達にもう、勝ち目は・・・
「フ、フフ・・・哀れな末路だな、裏切り者共よ・・・」
 そんな様子を見ていたライラは、笑みを浮かべていた。セカンドは、あたしにギロッと顔を向けた。
「い・・・嫌・・・来ないで・・・!」
 あたしは怖くなって、逃げようとするけど、体が思うように動かない。セカンドはそのまま、“サイコキネシス”で念じ始めた!
「ああっ・・・!!」
 あたしの体がサイコパワーで持ち上げられた。あたしの怖さは絶頂に達した。
「ブ・・・ブイイイイイッ!!」
 それを見たブイゼルが、セカンドに飛び込んだ! でも、セカンドは左手で“はどうだん”を発射!
「ブゥゥゥゥゥッ!!」
 ブイゼルは、簡単に返り討ちにされた。そのまま力なく倒れるブイゼル。
「ブイゼルッ・・・はうっ!?」
 その時、あたしの首が、急に絞められた! 当然、息が苦しくなる。思わず首を手で押さえる。見ると、セカンドが右手をゆっくりと握っている!?
「や・・・やめて・・・く・・・苦しい・・・!!」
 セカンドが手を握っていくと、首が絞められる強さはどんどん強くなっていく。息がだんだん辛くなってくる。このままじゃ、息ができなくなって・・・!
「たす・・・け、て・・・だれ・・・か・・・」
 あたし、このまま首を絞め殺されちゃうの・・・!? そんな・・・リボンを2つ取れないまま・・・グランドフェスティバルにも行けないまま・・・トップコーディネーターにもなれないまま・・・あたし、終わっちゃうの・・・!? あたし、最初からそんな運命だったの・・・!? そんなの・・・そんなの・・・嫌・・・!! 誰か・・・誰か・・・助けて・・・!!


 その時、どこからか“バブルこうせん”が飛んできて、セカンドに命中した! よろけたセカンドは、“サイコキネシス”を緩めた。あたしの体が地面に落ちた。やっと息ができるようになったあたしは、ゲホゲホと咳き込んだ。そんなあたしの前に立つ、小さな影。それは・・・


「ポチャマッ!!」
 両手を広げて立つ、ポッチャマだった!
「ポ・・・ポッチャマ・・・!?」
 あたしは驚いた。大ケガしてたのに、あたしを助けてくれたの・・・!?
「ポッチャマアアアアアッ!!」
 ポッチャマは思い切り叫ぶと、ポッチャマの体から青いオーラが出た! 『げきりゅう』が発動したんだ!
「オオオオオオッ!!」
 セカンドはそんなポッチャマに、“サイコカッター”を振り上げてポッチャマに躍りかかった!
「ポッチャマアアアアアアッ!!」
 ポッチャマは“サイコカッター”のひと振りをかわして、パワーアップした“バブルこうせん”を発射! 直撃! パワーアップした威力を前に、さすがのセカンドも押し出された。
「ヒカリ・・・! しっかりしろ・・・!」
 すると、あたしの体が誰かに持ち上げられた。そのままあたしの肩を担いだのは、サトシだった。
「ごめんサトシ・・・ダイジョウブなの・・・?」
「心配すんなって。これくらい、どうって事ないさ・・・!」
 サトシがそう言った時、コトンと、地面に何かが落ちた音がした。
「ヒカリ、何か落ちたぞ?」
 サトシは落ちたものを拾ってみる。それは、あたしがあの時拾った紫色のモンスターボール!
「これって・・・マスターボールじゃないか!? なんでこんなもの持ってたんだ、ヒカリ!?」
 それを見たサトシは驚いて、聞き慣れない言葉を口にした。マスターボールって名前は初めて聞いた。
「えっ、アジトから逃げる時にパチリスが拾ってきたんだけど・・・サトシ、知ってるの?」
 そうだ、今までサトシ達に聞こう聞こうって思ってて、すっかり忘れてた。
「狙ったポケモンを一発で必ずゲットできる、究極のモンスターボールだよ! 一度見た事があるんだ」
 狙ったポケモンを一発で必ずゲットできる・・・その言葉が引っ掛かった。
「ちょっと待って。狙ったポケモンを一発で必ずゲットできるって、どんなポケモンでも同じなの?」
「多分、そうだと思うけど・・・」
 サトシは思い返すようなしぐさを見せてそう答えた。
「それなら・・・セカンドを止められるかもしれない・・・!!」
 あたしは確信した。
「止められるって・・・どうやって!?」
「セカンドをこのマスターボールでゲットするのよ!!」
 あたしはマスターボールをサトシの手から取って、思いついた事をサトシに言った。
「そうか!! それはいいアイデアだぜ!!」
 サトシも納得して声を上げた。
「2人共、大丈夫か?」
 そこに、タケシが現れた。タケシはハルナの肩を担いでいる。
「うん、何とか・・・」
「あっ、それってマスターボールじゃないですか!」
 ハルナがマスターボールを見て、声を上げた。
「うん、たまたま拾ったものなの。これを使って、セカンドをゲットして止めようと思うの!」
「凄〜い!! さすがヒカリさん!!」
 そう言うと、ハルナは歓声を上げた。
「だが、そうするにはセカンドの体に確実に当てなきゃいけないぞ。いくら究極のモンスターボールでも、外れてしまったら何の意味もない」
 タケシが言った。
「なら、動きを止めればいいのね・・・」
 あたしは改めて、セカンドを見た。ポッチャマと戦い続けているセカンド。『げきりゅう』も発動しているし、“うずしお”なら・・・!
「ポッチャマ、“うずしお”!!」
「ポォォチャアアアアアッ!!」
 あたしの指示で、ポッチャマが“うずしお”を作り出す。『げきりゅう』の効果もあって、いつもよりも大きく大きくなっていく!
「ポチャマアアアアアッ!!」
 ポッチャマはそれを、セカンドに目掛けて投げた! 飲み込まれるセカンド。
「やったあ!!」
 これでセカンドの動きが止まった! あたしは、マスターボールを構えて、投げようとした。
「カアアアアアアアッ!!」
 でも、セカンドはそれを“サイコキネシス”で簡単に壊しちゃった!
「そんな・・・!?」
 あたし達は動揺した。『げきりゅう』でパワーアップしてる“うずしお”でも・・・!?
「どうするんですか、ヒカリさん・・・?」
 ハルナが聞いた。“うずしお”がダメなら、他に何があるの・・・? えっと・・・えっと・・・ええっと・・・
「ミ・・・ミッ!」
「チパ・・・ッ!」
「エイ・・・ポッ!」
「ブ・・・イッ!」
「ピ・・・カッ!」
 すると、セカンドの猛攻で倒れていたみんなが、ぎこちなくだけど立ち上がったのが見えた。
「みんな・・・そうだ!」
 それを見たあたしは、1つの方法をひらめいた。
「みんな!! ポッチャマにパワーを分けてあげて!!」
「ミミ・・・!?」
「チパ・・・!?」
「エイポ・・・!?」
「ブイ・・・!?」
「ピカ・・・!?」
 あたしの言葉に、みんなは目を丸くした。
「セカンドの動きを止めればいいの・・・そのために、みんなの力を借りたいの!! 直接戦わなくていいから、ポッチャマに力を分けてあげて!!」
 そんな思いを、あたしはみんなに話した。
「・・・ミミッ!!」
「・・・チパッ!!」
「・・・エイポッ!!」
「・・・ブイッ!!」
「・・・ピカッ!!」
 すると、みんなはうなずいた。
「ありがとう、みんな!」
 あたしも、笑顔で答えた。みんなは、ポッチャマの所に向き直った。
「ポッチャマ、みんなのパワーを、あなたに託すわ!!」
「ポチャッ!!」
 あたしが言うと、ポッチャマはうなずいてくれた。
「ポッチャマ、最大パワーで“うずしお”!!」
「ポォォチャアアアアアッ!!」
 ポッチャマはもう一度“うずしお”を作り出した。最大パワーだけあって、さっきよりも大きくなっていく!
「みんな、お願い!!」
「ミィィィ、ミイイイイイッ!!」
「チィィィィパ、リィィィィィッ!!」
「エイッ、ポォォォォォォッ!!」
「ピィィィィカ、チュウウウウウッ!!」
「ブイイイイイイイッ!!」
 ミミロルが“れいとうビーム”、パチリスが“ほうでん”、エテボースが“スピードスター”、ピカチュウが“かみなり”、ブイゼルが“みずのはどう”! 5匹のエネルギーが、ポッチャマの“うずしお”に集まっていく! みんなのパワーをもらった“うずしお”は、白く光り始めた!
「行け、ポッチャマ!!」
「ポッチャマ、行っけえええっ!!」
 ポッチャマにパワーを分けるように、サトシとハルナが叫ぶ。
「頼む、ポッチャマ!!」
 タケシも叫ぶ。
「ポッチャマ!!」
 ヒトミさんとアユリも。
「ポッチャマ・・・ダイジョウブッ!!」
 あたしも、ポッチャマにパワーが届くように、思い切り叫んだ。
「ポッチャマアアアアアアアッ!!」
 みんなのパワーをもらったポッチャマは、思い切り“うずしお”をセカンドに投げつけた!
「オオオオオオオオッ!!」
 飲み込まれたセカンドが悲鳴を上げた。みんなのパワーを乗せた“うずしお”を、セカンドは破る事ができなかった。
「今だ、ヒカリ!!」
 サトシが叫んだ。
「お願いっ!! マスターボオオオオルッ!!」
 あたしは思い切り叫んで、マスターボールを投げつけた。マスターボールがセカンドに当たって、開いてセカンドを吸い込んだ。“うずしお”が消えると、閉じたマスターボールがその場に落ちた。スイッチの赤いランプが点滅しながら、少しモゾモゾと動いたけど、すぐにランプが消えて、動かなくなった。
「やった・・・セカンドを、止められた・・・!!」
 あたしは嬉しくなった。
「やったぜ!!」
 サトシの一声で、みんなが歓声を上げた。
「ポチャーッ!!」
「ポッチャマ!! ありがとう・・・!!」
 あたしの胸に飛び込んできたポッチャマを、あたしは片手でもしっかりと受け止めて、抱きしめた。
「セカンド・・・私の、セカンド・・・!」
 ライラが、セカンドの入ったマスターボールに近づいて、マスターボールを取ろうとした。でも、そんなマスターボールを、ヒトミさんの右足が押さえつけた。
「残念だけど、これは『証拠品』として押収させてもらうわ。さあ、もう観念してもらおうかしら、ライラ?」
 ヒトミさんはマスターボールを器用に蹴り上げて、手にキャッチしながら言った。
「くっ・・・!!」
 それを見たライラは、手をわなわなと握って、唇を噛むしかなかった。

 * * *

 あの戦いから数日後。
 クリエイショニストのリーダー、ライラは警察に捕まった。壊れたアジトには、警察の捜査が入ったんだとか。そしてあたし達は、ポケモンセンターに行って充分な休みを取った。
 そんなポケモンセンターの外で、あたし達は1匹のポケモンに出会った。紫色の体に大きな耳、そして背中や耳から伸びているトゲが特徴の4つ足のポケモン。そんなポケモンが、ポッチャマとにらみあっている。あたしは、ポケモン図鑑を取り出した。
「ニドラン♂、どくばりポケモン。草むらの上に耳だけ出して、周りの気配を探る。猛毒のツノで身を守る」
 図鑑の音声が流れた。
「ニドランかあ・・・かわいいなあ・・・」
 あたしの後ろにいるハルナが、そんな事をつぶやいた。よし、それなら・・・!
「行くわよ、ポッチャマ!!」
「ポチャ!!」
 あたしの指示で、ポッチャマは身構えた! ニドランも戦闘態勢を取った! にらみ合う2匹。先に動いたのはニドランだった! 頭のツノを向けて、ポッチャマに向かっていく!
「ポッチャマ、“つつく”!!」
「ポチャマアアアアアッ!!」
 ポッチャマも、クチバシに力を込めてニドランに向かっていく! ツノとクチバシは正面からぶつかり合った! そのまま押し合いになる2匹。
「“つのでつく”か・・・なかなかのパワーがありそうだ・・・」
 タケシがつぶやいた。2匹はとうとう距離を取って仕切り直しになる。
「がんばれヒカリさん!!」
 ハルナの声が聞こえた。すると、ニドランは耳のトゲを逆立てて、“どくばり”を発射!
「よけて!!」
 ポッチャマは、後ろにステップして“どくばり”をかわした。
「“バブルこうせん”!!」
「ポッチャマアアアアッ!!」
 ポッチャマが“バブルこうせん”を発射して反撃! 命中! 手ごたえある! すぐにニドランも反撃する! ニドランは頭のツノから白い光線を発射した!
「“れいとうビーム”!?」
 あたし達は驚いた。ポッチャマは“れいとうビーム”をジャンプしてかわしたけど、下を通り過ぎた“れいとうビーム”が地面を凍らせたせいで、ポッチャマは着地した瞬間、氷で滑って転んじゃった。
「あのニドラン、“れいとうビーム”が使えるなんて・・・なんか凄い・・・!」
 ハルナは、そんなニドランの能力に感心していた。そんなニドランは、その隙を突いてジャンプしてポッチャマの上を取った後、“つのでつく”でポッチャマを狙う!
「ポッチャマ!!」
 あたしの一声で、ポッチャマは何とか立ち上がる。どんどん迫ってくるニドラン。まだまだ、まだまだ・・・!
「今よ!!」
 あたしの指示で、ポッチャマはジャンプして、『回転』でニドランのツノをかわした!
「!?」
 空を切ったニドランのツノは、そのまま地面の氷に突き刺さった。ポッチャマは凍っていない地面に着地した。ニドランはツノが引っこ抜けなくなったみたいで、逆立ち状態のまま足をジタバタ。今がチャンス!
「ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」
「ポッチャマアアアアッ!!」
 そこを狙って、ポッチャマは“バブルこうせん”を発射! 直撃! 衝撃で弾き飛ばされるニドラン。ニドランは地面に倒れたまま、目を回した。よし、これなら! あたしは、モンスターボールを取り出した。
「お願いっ! モンスターボールッ!!」
 あたしはニドラン目掛けて思い切りモンスターボールを投げた。ニドランに当たったモンスターボールは、開いてニドランを吸い込む。閉じたモンスターボールは、その場に落ちる。スイッチの赤いランプが点滅しながら、モゾモゾと揺れ始める。場に緊迫した空気が漂う。そしてしばらくすると、ランプが消えて揺れが止まった。あたしは、ニドランの入ったモンスターボールを拾う。
「やったあっ!! ヒカリさん、ニドランゲットですね!!」
 ハルナが声を上げた。ホントなら、「ニドランゲットでダイジョウブ!!」って言う所だけど、今は言わない。
「ハルナ」
「はい?」
 あたしはハルナを呼んだ後、ニドランの入ったモンスターボールをハルナに差し出した。
「このニドラン、ハルナにプレゼントするわ」
「ええっ!? なんでですか!? ヒカリさんがゲットしたんだから、ヒカリさんのポケモンなんじゃ・・・!?」
 突然の言葉に、ハルナは戸惑った。
「あたし、ハルナに迷惑掛けっぱなしで何もしてあげられだったし、お詫びにプレゼントでもあげたいって思ったの。これなら、手持ちが2匹だけより心強いでしょ?」
「で、でも・・・」
「それに、新しいポケモンをゲットする事だけが、強くなる事じゃないってわかったから」
 あたしは笑みを浮かべてそう説明した。
「ヒカリ・・・」
 その言葉に、サトシ達も感心していた。
「・・・わかりました。なら、謹んで受け取ります!」
 ハルナはそう言って、モンスターボールを手に取った。そして、モンスターボールを開けて。中のニドランを出した。
「君、凄いじゃない。“れいとうビーム”も使えるし、わざもなかなかキレがよかったじゃない」
 きょとんとするニドランの前に、ハルナはしゃがんでそう言った。
「ねえ、ハルナと一緒においでよ。君にピッタリなおもしろい事、教えてあげるから!」
 ハルナが笑みを浮かべると、ニドランも笑みを浮かべてうなずいた。
「じゃ、名前を付けてあげなきゃ。え〜っと・・・」
 ハルナはニドランを抱き上げて、考え始めた。
「・・・そうだ! クレセント! クレセントにしよう! 今日から君の名前はクレセントよ! よろしくね!」
 ハルナがそう言うと、ニドランも笑みを浮かべた。
「よ〜し!! ニドランゲットでダイジョウブ!!」
 ハルナはあたしのマネをしてそう言って、Vサインを作った。
「よかったな、ハルナ」
 サトシが言った。あたしも、何だか嬉しくなった。
「新しいポケモンゲットおめでとう、ハルナ」
 すると、違う所から声が聞こえてきた。そこにいたのは、ヒトミさんにアユリ、そしてポケモンセンターで預けられていたミュウが。
「ヒトミさん、それにアユリ」
「出会いもあれば別れもある。ほらみんな、ミュウが森に帰るから、最後の挨拶をして」
 ヒトミさんが言うと、ミュウがあたし達の前に出て、「ありがとう」って言ってるように笑みを浮かべた。
「治ってよかったな、ミュウ」
「これからも気をつけてね」
「また悪者に狙われないようにしてね!」
「達者でな」
 あたし達がそう挨拶すると、ミュウはあたし達に背中を向けた。振り向いて何度も手を振りながら、ミュウは森の中へ飛んでいった。
「じゃあな〜ミュウ〜ッ!!」
「元気でね〜っ!!」
 あたし達も手を振って見送った。ミュウは森の中に溶け込むように、あたし達の前から見えなくなった。
「・・・じゃ、あたし達も行こうか、アユリ」
「はい」
 すると、ヒトミさんとアユリも、あたし達に背を向けた。
「ちょ、ちょっと待って。ヒトミさん、アユリは・・・」
 あたしは気になった事をヒトミさんに聞いた。
「アユリには、いろいろ今回の事件で聞きたい事があるからね。あたしが身柄を預かる事になったの」
「それじゃ、アユリは・・・!」
 まさか、アユリは逮捕されちゃうの!? あたし達と一緒に戦ったのに・・・
「気にしないでください、ヒカリさん。私だって途中で逃げ出したとはいえ、悪事に手を染めてしまった者です。逃げも隠れもしません。それなりの罰は受ける覚悟でいます」
 アユリは、いたって冷静に答えた。
「そうなんだ・・・」
 あたしは、ちょっぴり悲しくなった。あたし達と一緒にがんばったのに、悪者になっちゃうなんて・・・
「ヒカリさん、あなたにはとても感謝しています。自分の力で強くなる事の大切さを、改めて確かめられたのですから。私はそれから逃げようとしてた事を後悔しています。どうか、私のような人にはならないでください」
「アユリ・・・」
 アユリの言葉から、あたしはアユリのあたしへの願いが読み取れた気がした。
「今回の事はいろいろと助けられちゃったけど、ヒカリはその気になれば結構やれる人だと思ったよ。自分の力を信じて、逃げないで最後までやり通せば、ヒカリにも必ず来るよ。夜明けがね」
「夜明け・・・」
 ヒトミさんの『夜明け』って言葉にも、感じさせられるものがあった。
「じゃ、あたし達は行くわね。ヒカリ、幸運を祈ってるわ」
 ヒトミさんとアユリは、あたし達に背を向けてその場を後にしていった。そんな2人の背中を、あたし達は無言で見送っていた・・・

 * * *

 そして空は赤くなって、日は西に傾き始めた。あたし達も、出発する時が来た。
「ねえ、ヒカリさん。次はいつ、コンテストに出るんですか?」
 ハルナが、そんな事を聞いた。
「えっ!? そ、それは・・・」
 あたしは、どう答えていいのかわからなくなって、一瞬答えに迷った。あたしは気持ちを落ち着かせて、今思っている事を答えた。
「まだ、わからない。でも、いつかは必ず、コンテストには出たいって思ってるの」
「そうですか。ハルナ、いつでも応援しますよ! ハルナ、信じてますから! 次は必ず勝てるって! だから、ハルナもがんばります!」
「ありがとう、ハルナ」
 そう言われると、あたしの心に勇気が湧いてきた。ハルナだけじゃない。あたしには、応援してくれる人がいる。そのためにも、あたしは負けてられないなって思った。
「じゃ、行こうか」
「うん。じゃ、ハルナもがんばってね」
「はい!」
 あたし達は、ハルナに背中を向けて出発した。ハルナは、「さよなら」も言わないで、黙って見送っている。そう思ったら、突然こんな声が聞こえてきた。
「フレーッ!! フレーッ!! ヒー、カー、リー、さんっ!! フレッフレッ!! ヒカリさんっ!! フレッフレッ!! ヒカリさんっ!! フレッフレッ!! ヒカリさんっ!!」
「ハ、ハルナ・・・!?」
 両手を振りながらそう叫ぶハルナを見て、あたしはちょっと恥ずかしくなった。でも、何だかこういうのも悪くないって気がしてきた。

 * * *

 嫌な事をただ忘れようとしても、強くなんてなれない。それをあたしは知った。あたしは、今までの失敗と向き合って、強くなる事ができるのかな? それは、まだわからない。でも、だからってあたしは逃げない。最後に、本当に強くなれるのなら・・・!

 こうしてあたし達の旅は、まだまだ続く。続くったら、続く・・・・・・


STORY14:THE END

[540] 次回予告
フリッカー - 2008年05月15日 (木) 20時08分

 ミクリカップでリボンをゲットできたあたし。

 このリボンは、みんなで力を合わせてゲットできた。あたしは、みんなの事がもっと知りたい。もっと、みんなの魅力を引き立ててあげたいから・・・

 そんなあたしは、ランっていう女の子と出会った。
「ヒカリさんは、どんなことしてるんですか・・・?」
「ポケモンコーディネーターよ」
「ポケモンきれいに見せるって難しいんですよね?」
「ええ。あたしも、最初は難しくなんてないって思ってた。でもね、ポケモン1匹1匹の事をちゃんと知ってなかったら、きれいに見せられないってわかったの」

 その時、ダークポケモンを連れたあいつらが帰ってきた!
「我らは『シャドー』!! このシンオウのポケモン全てを、『ダークポケモン』として我らの支配下に置くのだ!!」
「ああっ!! コロン!! ローズ!!」

「あんた達、またポケモンを奪ってダークポケモンにするつもりなの!!」
「そうだ。人の『道具』であるポケモンには、余計な『感情』は必要ない。『道具』としての機能だけ与えて人が支配すればいい!!」
「そんなの・・・違うっ!!」

 ポケモンの『個性』をわかろうとしないなんて・・・許せない!!

 NEXT STORY:ダークポケモンの逆襲

「あんたなんか・・・ポケモントレーナー失格よ!!」

 COMING SOON・・・



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