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[439] ヒカリストーリー STORY12 強さの代償(第1部)
フリッカー - 2008年04月07日 (月) 00時01分

 どうも、フリッカーです。

 今回のストーリーは何と3部構成! ヒカスト史上最大のバトルが繰り広げられる!

・オリジナルキャラ
アユリ イメージCV:高橋美佳子
 ポケモンバトルで強くなりたいがために、かつての手持ちを捨てデザインポケモンを手にした事がきっかけで悪の秘密結社『クリエイショニスト』に入り、幹部にまでなった経緯を持つ、『デザイントレーナー』の少女。しかしそれが間違っていた事に気づき、嫌になって逃げ出した時、ヒカリ達と出会う。そのため、『デザインポケモンの秘密を知る者』としてクリエイショニストに追われている。
 心優しい性格で、丁寧な言葉遣いで話す。手持ちポケモンも『デザインポケモン』であり、並みのポケモンの追従を許さない戦闘力を持つ。

ヒトミ イメージCV:白鳥由里
 野性ポケモンの乱獲事件を調査する、ポケモンレンジャーの少女。バトナージ・スタイラーを使用する、『トップレンジャー』の1人である。パートナーはフカマル。
 正義感の強い熱血少女で、一度食いついた事には何があっても絶対に離さないタイプ。それ故、世界で12人しかいないといわれるトップレンジャーとなるまで下積みを続けてきた苦労人でもある。どんな困難にぶつかってもビクともせずに立ち向かう打たれ強さから、『鉄壁のヒトミ』の通り名を持つ。
 レンジャーのミッションにはまじめに取り組むが、その途中でも少女らしい明るい一面を見せる。トップレンジャーの名に恥じずその実力は高いが、熱くなりやすい性格故、周りが見えなくなってしまう事もしばしばで、時に大きなミスをしでかしてしまう事もある。それでも、『鉄壁の』精神で幾多のピンチを乗り切っており、その点は大きく評価されているという。自分のバトナージ・スタイラーに愛着を持っており、暇さえあれば磨いている。

ハルナ(STORY09/10にも登場) イメージCV:釘宮理恵
 今回からは『ヒカリさんの一番弟子』を自称するようになる。新たにプリンをゲットし、『エクリプス』と名付けている。

[440] SECTION01 強くなりたい! ヒカリの決意!
フリッカー - 2008年04月07日 (月) 00時03分

 あたしはヒカリ。トップコーディネーターになるために旅に出たポケモントレーナー。
 初心者用ポケモンをもらいに行った時に打ち解けたポッチャマをパートナーにして、ひょんな事から仲間になった、カントーから来たトレーナー、サトシとタケシと一緒に旅を始めたの。大小いろんな事を経験しながら、あたし達の旅は続く。
 これは、そんなあたしが旅の途中に経験した、ある日のお話。


SECTION01 強くなりたい! ヒカリの決意!


 トバリシティを出発したあたし達。あたしは、サトシに「コンテストの事、どうするんだ?」って聞かれたけど、あたしは「新しいコンビネーションを練習してから・・・」って慌てて答えた。なんであんな風に答えちゃったんだろう・・・
 結局、行き先はノモセシティに決定。コンテストの事は先送りになったまま、旅は続く・・・

 * * *

 ポケモンコンテストのステージを上に、あたしは立っていた。客席から響く歓声をあたしは浴びていた。
 そう。あたしはまた、1人のコーディネーターとして、ここに帰ってきたの! 前のコンテストの失敗なんて、頭の中にはない。今のあたしは、不思議と負ける気がしなかった。
「ポッチャマ、チャームアーップ!!」
 あたしは、思い切りボールカプセルに入れたモンスターボールを上に投げた。ステージに、元気よくポッチャマが出て来た。あたしの気持ちが高ぶった。
「行くよポッチャマ!! “バブルこうせん”!!」
「ポッチャマーッ!!」
 あたしの指示に答えて、ポッチャマは高くジャンプして、体を軸に回転しながら上に向かって“バブルこうせん”を発射。“バブルこうせん”はきれいな渦を描きながら上に飛んで行く。そして、“バブルこうせん”は渦の頂点でぶつかり合って、水しぶきとなってポッチャマの周りに降り注いだ。その水しぶきを浴びながら、ポッチャマはきれいに着地して、ポーズを決めた。
「やったあ!!」
 決まった! あたしはそう確信した。これなら絶対・・・
「何だその演技は!! なんてヘタクソな演技なんだ!!」
「え・・・!?」
 そんな時に、水を差すように入ってきたその言葉に、あたしは驚いた。客席の方を見てみても、顔が暗くて誰が言っているのかは全然わからない。その声は、誰か1人の声じゃないような気もした。
「そんな演技が、コンテストで通用すると思ってるのか!! それでも『トップコーディネーターの子』か!!」
「!!」
 その言葉が、あたしの心に深々と突き刺さった。ここまで来たのに、演技が観客の心に響かなかったって言うの!?
「3度目もこんなんだなんて、あんたには失望したよ!! この『親の恥』め!!」
 そんなあたしに追い討ちをかけるように、そんな言葉が、またあたしの心に突き刺さった。すると、客席の観客達が一斉に笑い始めた。あたしをバカにしている笑い声である事に、気づくのに時間はかからなかった。
「どうし、て・・・!?」
 嫌でも耳に入ってくる笑い声のせいで、あたしは完全に体の力が抜けて、その場に膝を付いた。
「こんなの・・・こんなの違う!!」
 あたしはうずくまって、頭を抱えてそう言うしかなかった。それでも、あたしをバカにする笑い声は止まらない。観客の視線が痛く感じる。立ち直ってがんばってきたのに、その努力がこんな形で裏切られるなんて・・・
「ママ・・・助けてよ・・・あたしは・・・あたし・・・は・・・」
 あたしは頭を抱えたまま、完全に泣き出していた。そんな声も、周りの笑い声に掻き消されるだけだった・・・

 * * *

 あたしは、はっと目を開けた。テントの天井が映る。体を起こすと、あたしは寝袋の中にいるのを確かめた。
「また、あんな夢・・・」
 夢でよかったあ・・・でも、またあの夢だった・・・あたしは、たまにこの悪夢にうなされる。トバリシティを出発した後も・・・あたしの傍らを見ると、気持ちよさそうに寝息を立てているポッチャマがいた。そんなポッチャマを見ていると、あたしはこれからの事が不安になってきた。
「ダイジョウブ・・・かな、あたし・・・」
 あたしは、ママからもらったお守りのリボンを手に取って、見た。
 ズイタウンのコンテストの事で、あたしは完全にパニック状態になって、どうしていいかわからなくなった。でも、旅を続けていく中でいろんな事を経験して、少しずつ落ち着いていった。ユモミに励まされた事、ハルナやメイルとの出会い、スモモとのジム戦・・・そして、あんな失敗の事なんて忘れちゃって、がんばらなきゃって決めた。ポッチャマ達もついて来てくれる。ミミロルのおしゃれとか、いろいろな事をやってみた。でも、あの時の失敗が、何かある度に思い出す。さっきも、夢という形で・・・こういうのを、『古傷が痛む』って言うのかな・・・? 何だか、怖い・・・またあの時みたいな失敗しちゃいそうで、怖い・・・
「だ、ダイジョウブダイジョウブ! あの時の事なんて、気にしなくていいんだから! ね! うんうん、忘れちゃえばいいのよ!」
 あたしはそう自分に言い聞かせて、また寝袋に横になって、目を閉じた。でも・・・


 またしても、あの2回のコンテストの失敗がフラッシュバックした。


「ダメよっ!!」
 あたしは思わず声を上げて、頭を抱えて体を横に向けた。
「ダメよ・・・あの事は忘れて、がんばるって決めたんだから・・・! 忘れなきゃ、あの事は・・・!」
 そう自分に言い聞かせるあたし。あたしは、コンテストに出たい・・・! あの時の歓声を、もう1回浴びたい・・・! 思いっ切り楽しんで、リボンをゲットしたい・・・! あの時のように・・・でも、また横槍を入れるようにあの時の嫌な出来事がフラッシュバックした。失敗から来る怖さがよみがえる。
「ダメえっ! 忘れなきゃ・・・忘れなきゃ・・・っ!」
 うつぶせになって、顔を伏せてそう言い聞かせた。でも、恐さが頭から離れない。
「忘れて・・・っ!」
 どんなにそう自分に言い聞かせても、怖さは鎖につながれたように頭から離れなかった。人の頭って、どうしてこんなに不便なの、って一瞬思った。
「ポチャ・・・?」
 そんな声が耳に入って、あたしは現実に引き戻された。見ると、横でポッチャマが眠そうな目でこっちを見ていた。起こしちゃったみたい。
「あ・・・ごめんポッチャマ! 何でもないよ! ダイジョウブダイジョウブ!」
 慌ててあたしはそう言って、ポッチャマに背を向けた。

 それでも、あたしの怖さは消えなかった。どうしたら、こんな怖さとさよならできるの・・・? 前は、そんな事ちっとも怖くなかったのに・・・?
「強く・・・ならなきゃ・・・」
 あたしの口からそんな言葉がこぼれた。もっと、強くなりたい・・・こんな怖さを・・・あの時の失敗を何ともないって思えるくらい・・・!

 * * *

 次の日。
 みんなで休憩を取っていた時に、あたしは4匹のポケモン達を出して、サトシにこう頼んだ。
「ねえサトシ」
「何だ?」
「あたし達のトレーニングに、付き合ってくれない?」
「え?」
 サトシは目を丸くした。あんまりこんな事頼んだ事なかったもんね。
「あたしも、強くならなきゃって思ってるの。コンテストに出る時にためにも・・・!」
「・・・わかった! こっちもジム戦の練習にもなるしな!」
「ピカチュ!」
 理由を話すと、サトシとピカチュウは快く受け入れてくれた。
「ありがと」
 あたしも、笑顔で答えた。

 森の開けた場所が、トレーニングの場所。あたしとサトシは、間を空けて位置に付く。タケシも、そんなあたし達を興味深そうに見ていた。
「みんな、最初はよける練習よ! まずはポッチャマから!」
「ポチャ!」
 ポッチャマが、やる気満々な様子で前に出た。
「サトシ、ポッチャマに遠慮なく攻撃して!」
「ああ、わかった! 行くぞピカチュウ!」
「ピッカ!」
 ピカチュウもやる気満々。ポッチャマにはちょっと危険だけど、この方が実戦的でいいとあたしは考えたの。
「“10まんボルト”!!」
 サトシの指示で、ピカチュウは自慢の電撃を思い切りポッチャマに向けて発射した!
「よけてポッチャマ!!」
「ポチャッ!!」
 ポッチャマは、ピカチュウの電撃をうまくかわしてみせた。でも、これはまだ序の口。
「サトシ、もっとお願い!」
「わかった! じゃ、遠慮なく行くぜ!! ピカチュウ、もう一度“10まんボルト”!!」
 ピカチュウはまたポッチャマに電撃を発射! それをよけるポッチャマ。ピカチュウはあたしの言った通りに、どんどん電撃を発射する! それを1つ、2つと軽やかによけ続けるポッチャマ。
「ポチャアアッ!!」
 でも、とうとうついて行けなくなって、電撃がもろにヒット! 効果は抜群! その場に倒れるポッチャマ。他の3匹も息を呑んだ。
「ダメよポッチャマ! 慌てないで、相手の攻撃をよく見て! ちゃんとよけなきゃバランスを崩しちゃって、減点になっちゃうんだから!」
 あたしは、ちょっと厳しくそう言った。そんな言葉に、サトシもタケシも目を丸くしていた。
「大丈夫なのか?」
「ダイジョウブダイジョウブ! もっとやって!」
「ポチャッ・・・!!」
 心配するサトシに、あたしは強くそう答えた。ポッチャマも負けじと立ち上がった。そして、ピカチュウはまた、電撃を発射し続けた。
「ちゃんときれいに着地しなきゃダメッ!」
「もっと動きをきれいにして!」
「そこはこんな感じでこう!」
 ポッチャマに出す言葉は、自然と厳しくなっていた。どうしても、あたしの納得できる動きが見たかったからかもしれない。気が付くと、ポッチャマもピカチュウもヘトヘトになっていた。
「2人共、そこまで!」
 そんな2匹の間に、タケシが入った。
「2人共、熱が入り過ぎだ。少し休憩を取った方がいい」
「あ・・・」
 いけない、すっかり夢中になっちゃって・・・! それはサトシも同じみたいだった。
「ポッチャマ、お疲れ。ゆっくり休んで」
「ポチャ」
 あたしがポッチャマを抱き上げると、ポッチャマは荒い息をしながら答えた。
「ヒカリ」
 すると、タケシがあたしに声をかけた。
「何?」
「一体どうしたんだ? 何だか、いつもと感じが違うトレーニングだったが・・・」
 そんな疑問をあたしはぶつけられた。
「だって、今のあたしじゃ、コンテストに出るにはまだ足りないって思ったもん」
 そんなあたしの言葉に、タケシの顔が少し曇った。
「だから、もっと強くならなきゃって思って」
「そうだったのか・・・」
 そんなあたしの言葉を聞いて、タケシはほっとした様子だった。
「だが、無理なトレーニングはよくないぞ。ポケモンの体力にあったトレーニングをして、休みはしっかり取らせた方がいい」
「ゴメン・・・わかってたんだけど、つい夢中になっちゃって・・・」
 あたしは苦笑いしながらタケシにそう答えた。反省反省。その時!

「ピカアアッ!!」
 突然、ピカチュウの悲鳴が聞こえた。見ると、ピカチュウが空から伸びるネットに捕まっていた!
「ピカチュウ!?」
 驚いてネットをたどってみると、見慣れたニャースの顔の気球が。
「わーっはっはっは!!」
 聞き慣れた高笑いが聞こえてきた。
「何だかんだの声を聞き!!」
「光の速さでやって来た!!」
「風よ!!」
「大地よ!!」
「大空よ!!」
「天使か悪魔か、その名を呼べば!!」
「誰もが震える魅惑の響き!!」
「ムサシ!!」
「コジロウ!!」
「ニャースでニャース!!」
「時代の主役はあたし達!!」
「我ら無敵の!!」
「ロケット団!!」
「ソーナンス!!」
「マネネ!!」
 いつものように自己紹介するあいつら――間違いなくロケット団だった。
「ロケット団!!」
 あたし達はいつものように声をそろえて叫んだ。
「そんな訳で、今日こそピカチュウをいただいていくのニャ!」
 ニャースの高らかな声が響く。ムサシとコジロウはピカチュウが入ったネットをゴンドラに引き上げた。
「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
「ピ〜カ・・・チャア・・・」
 ピカチュウは電撃で抵抗しようとするけど、さっきまでのトレーニングの疲れのせいか、電撃が出せないままぐったりした。
「無駄無駄ぁ!! ピカチュウがトレーニングで疲れている事は承知の上なのだ!!」
「ま、いつもの電撃対策はバッチリだから、電撃ができても無駄だけどね〜!!」
 コジロウとムサシが自慢気に叫んだ。
「ポチャ・・・ッ!!」
 ポッチャマがピカチュウを助けようとあたしの腕から飛び降りた。でも、疲れのせいですぐに膝を付いた。
「こうなったら!! ミミロル!! パチリス!! エテボース!!」
 ポッチャマじゃ無理そう。あたしは、残った3匹に呼びかけた。
「そうはさせないのニャ!!」
 すると、ニャースがバズーカみたいなものを一丁取り出して、こっちに発射した! ネットが発射されて、あたし達に覆いかぶさった!
「ああっ!!」
「さらにほいニャ!!」
 ニャースがリモコンの別のスイッチを押した。すると、ネットから突然、電気が流れてあたし達の体を走った!
「きゃあああっ!!」
 電気そのものはあまり強くない。でも体がしびれて、体を起こしている事が辛くなってきた。
「どう? このために用意した『“でんじは”ネット』のお味は? 『まひ』してどうする事もできないでしょ?」
 ムサシの自慢気な声が聞こえる。
「今回は人から頼まれてやっているんだ!! 失敗なんてできないからな!!」
 コジロウの声も聞こえる。誰かに頼まれて・・・? 何の事・・・?
「そんな訳で!!」
「帰るっ!!」
 3人の声が合わさった。そして、気球が上昇し始めた! このままじゃ、逃げられちゃう!
「ピ・・・ピカチュウ!!」
 サトシが苦し紛れの声を上げた。
「こ・・・このままじゃ・・・っ!!」
 何とかしないと・・・でも、体がしびれて・・・そんな時だった。
 何かの影が、あたし達の上を素早く通り過ぎた。その影は、ロケット団の気球に真っ直ぐ飛んで行った。そして、ゴンドラのすぐ前で、赤い目をギョロリと向けた!
「!?」
 ロケット団が驚いた隙に、陰は黒いボールをゴンドラに発射!
「うわあああああああっ!!」
 気球が爆発して、ロケット団の悲鳴が響いた。気球のゴンドラが地面に音を立てて落ちた。
「な、何、あれ・・・!?」
 驚くあたし達の前に、影がゆっくりと降り立った。三日月の形をした岩の体、赤い目・・・見覚えのあるポケモンだった。
「ルナ、トーン・・・?」
 そう。間違いなくいんせきポケモン、ルナトーンだった。ルナトーンの目が光ると、あたし達を覆っていた『“でんじは”ネット』が宙に浮いて取れた。やっと電撃から自由になれた。
「あのルナトーン、なんで俺達を助けたんだ?」
 サトシがそんな疑問を口にした。ルナトーンといえば・・・その答えは、すぐに出た。
「ヒカリさああああんっ!!」
 後ろから、聞き覚えのある女の子の声が聞こえてきた。振り向くとそこには、こっちに向かって来るあのハルナの姿が! という事は、あのルナトーンはハルナのルーナ!
「ハルナ・・・!」
「大丈夫ですか? ケガはありませんか?」
 ハルナは真っ先にあたしを心配した。
「ありがとう、ダイジョウブ・・・うっ!」
 あたしは立とうとしたけど、体のしびれがまだ残っていたから、立てなかった。そんなあたしを見て、ハルナは顔色を変えた。
「な、何なのよ、いきなり・・・!?」
 ロケット団がゴンドラの残骸の中から出て来た。
「あんた達・・・ヒカリさんをこんなにした・・・!!」
 ハルナは顔を伏せたまま、ロケット団の前に出た。見ると、手をわなわなと握っていた。
「だ、誰よあんた!! いきなり邪魔なんかして!!」
 ムサシが強気で言い返した。
「『ヒカリさんの一番弟子』、ハルナよ!!」
 ハルナは、顔を上げて堂々と自己紹介した。
「い、『一番弟子』!?」
 勝手に『弟子』って言われた事に、あたしはすっごく驚いた。
「あんた達、ヒカリさんを誰だって思ってるの!! あのトップコーディネーターのアヤコさんの子で、すっごいコーディネーターなんだから!!」
「いや、それはわかるんだけど・・・」
 ハルナの説明に、ムサシは唖然としてそうつぶやいた。
「そんなヒカリさんをいじめる悪い人は、ハルナが許さないっ!! ルーナッ!!」
 ハルナの強い叫びで、ルーナがハルナの前に出た。
「何よ!! 弟子だか何だか知らないけど、邪魔するなら容赦しないわよ!! ハブネークッ!!」
 怒ったムサシがハブネークを繰り出した。
「マスキッパ、お前も行けっ!!」
 続けてコジロウもマスキッパを繰り出した。でも、いつものようにマスキッパはコジロウの頭に食らい付いた。
「いて〜っ!! 違う、違うって!!」
 そして、いつものようにもがき苦しむ(?)コジロウ。
「2匹で来るのね・・・なら・・・!!」
 そうつぶやくと、ハルナはもう1つモンスターボールを左手で取り出した。
「え?」
 あたしは目を疑った。ハルナには、手持ちはルーナしかいなかったはずだけど・・・?
「時の流れは移り行けども、変わらぬその身の美しさ!!」
 ハルナは左手を突き出しながら、いつもの前口上をしゃべり始めた。
「月食の力を借りて!! ポケモン、プリン、その名はエクリプス!! ここに見参っ!!」
 聞き慣れない名前を叫んだハルナは、左手でモンスターボールをルーナの横に投げた。出て来たのは、ピンク色の丸い体に大きな目が特徴のかわいらしいポケモンだった。ハルナ、いつの間に・・・?
「あれは、プリンじゃないか!!」
 タケシが声を上げた。
「ルーナ、“シャドーボール”!! エクリプス、“みずのはどう”!!」
 ルーナとエクリプスは横に並んで、ルーナが黒いボール、エクリプスが青いボールを発射! でも、ハブネークとマスキッパはそれをかわした。2匹の足元が爆発する。
「やってやろうじゃないの!! ハブネーク、“かみつく”攻撃っ!!」
「マスキッパ、“タネマシンガン”だ!!」
 ムサシとコジロウの指示で、ハブネークがエクリプスに踊りかかった! そして、マスキッパがルーナに“タネマシンガン”を発射! 2匹はそんな攻撃をもろに受けちゃった! エクリプスは噛み付かれたままジタバタするだけ。ルーナには効果は抜群!
「ああっ!!」
 ハルナが思わず声を上げた。
「何よ、大した事ないじゃないの!! ハブネーク、今度は・・・」
 ムサシが次の指示を出そうとした時、ハブネークが突然、エクリプスを離した。
「・・・?」
 ムサシは目を疑った。ハブネークはそのまま動かなくなっていた。見ると、エクリプスを見て顔を赤くしてのぼせちゃってる?
「やったあ!! エクリプスの『メロメロボディ』が決まったあ!!」
 ハルナに笑顔が戻った。
「『メロメロボディ』?」
「直接触れた異性の相手を『メロメロ』状態にさせるとくせいだ」
 サトシの疑問にタケシが答えた。でも、サトシは相変わらず首を傾げたまま。
「ちょっとハブネーク!! 何してるのよ!!」
 ムサシが呼びかけても、ハブネークは顔色を変えない。
「よ〜し、次はこっちの番!! ルーナ、“ねんりき”!! エクリプス、“はたく”攻撃!!」
 ハルナが反撃に出る。ルーナがマスキッパに向けて念じ始めると、マスキッパが宙に浮き始めた! そして、エクリプスは短い手に力を込めて思い切りハブネークをはたいた! そのまま弾き飛ばされる2匹。
「ちょっとコジロウ、何とかしなさいよ!!」
「わかってるって!! マスキッパ、“かみつく”だっ!!」
「そうはさせないわ!! エクリプス、“うたう”よ!!」
 ハブネークをフォローしようとしたマスキッパだけど、すぐにエクリプスが目を閉じて文字通り歌い始めた。心地いい歌声だった。それを聞いたマスキッパは、たちまちまぶたが重くなってその場で倒れて寝ちゃった。
「こ、この歌は・・・」
「何だか、急に・・・」
 それを聞いたロケット団も全員その場に倒れて寝ちゃった。
「やったあっ!!」
 ハルナがガッツポーズをした。そんな時、あたしの体をポンと誰かが叩いた。見ると、そこにはパチリスが。
「チパ・・・ッ!!」
 パチリスは『まひ』しているけど、青い火花をほっぺたの電気袋からだして、やる気満々だった。「ここは僕がやるよ!!」って言ってるみたいに。
「パチリス・・・うん、わかった!!」
 あたしがうなずくと、パチリスは『まひ』をものともしないで飛び出した。『まひ』していても、全く動けない訳じゃないからね。でんきタイプだから、あの程度の電撃には耐えられたのかもしれない。
「パチリス、“ほうでん”!!」
「チィィィパ、リイイイイイッ!!」
 パチリスが、ピカチュウにも負けない電撃を発射! 直撃! そして大爆発!
「・・・あれ・・・何だ・・・俺達・・・飛んでるぞ・・・?」
「・・・何だか・・・夢を見てるみたいね・・・」
「・・・って、ホントに飛んでるのニャーッ!!」
「ええ〜っ!! やな感じ〜っ!!」
 いつものように、ロケット団は空の彼方へ消えていった。
「すご〜い!! さすがヒカリさんのポケモンだあっ!!」
 ハルナがパチリスを見て歓声を上げた。そう言われたパチリスも、ちょっぴり照れていた。

 * * *

 タケシから『まひなおし』をもらったあたし達は、ようやく『まひ』から自由になれた。奪われそうになったピカチュウも、無事に戻ってきた。
「ごめんねハルナ、こっちが助けられるなんて・・・」
「いいんです! 困った時はお互い様ですから! ヒカリさんのためなら、ハルナは火の中、水の中、草の中、森の中、どこへでもついて行きますよ!」
 謝ったあたしに、ハルナは笑顔で答えた。
「ねえハルナ、もう敬語なんて使わなくていいよ・・・?」
「そんな事できません! ヒカリさんは、ハルナの尊敬する人ですから!」
 相変わらずの敬語に堅さを感じたあたしがそう言っても、ハルナは敬語をやめない。やっぱダメか・・・ま、いっか。
「おいおい、俺がピカチュウを奪われそうになったのに・・・」
 それを見ていたサトシは、肩を落としてちょっと残念そうだった。
「まあ、いいじゃないか。終わりよければ全てよし、だ」
 そんなサトシを、タケシがフォローした。
「ところでハルナ、そのポケモン・・・」
 あたしは、エクリプスを見てハルナに聞いた。
「あっ、そうだ! ハルナ、あの後新しいポケモンをゲットしたんです! ほらエクリプス、この人がハルナの尊敬するヒカリさんだよ! 挨拶して!」
 ハルナがエクリプスにそう言うと、エクリプスはあたしの前に出て、クルクルとコマのように回った後、片足で立ってかわいくポーズを決めた。
「かわいいポケモンね!」
 改めて見てそう思ったあたしは、ポケモン図鑑を取り出した。確か、プリンって言ってたよね・・・
「プリン、ふうせんポケモン。つぶらな瞳が揺れる時、誰もが眠くなってしまう子守唄を歌い始める」
 図鑑の音声が流れた。
「新しいポケモン、か・・・」
 あたしは何だかハルナがちょっとだけうらやましくなってきた。そういえば、あたしはあれから新しいポケモンをゲットしていない。やっぱり新しいポケモンをゲットする事も、強くなる事に繋がるよね・・・
「どうしたんですか?」
 そんなハルナの言葉が、あたしを現実に引き戻した。
「あ、ごめん。何でもないよ。ところでハルナ、あたし今トレーニング中なんだけど、付き合ってくれる?」
 せっかくだから、ハルナにもトレーニングに協力してもらおう。そう思ったあたしは、ハルナにそう聞いた。
「もちろんです! ヒカリさんのためなら、喜んで協力します!」
 ハルナはルーナやエクリプスと一緒に目を輝かせてそう答えた。
「・・・あ、ありがとうハルナ。ねえサトシ」
 リアクションにちょっと驚いたけど、次にあたしは、サトシに聞いた。
「何だ?」
「ブイゼル出してくれない?」
 トレーニングといったら、ブイゼルが黙っていないはず。トバリジム戦のウォーミングアップの時も協力してくれたしね!

 少し休みを取った後、早速トレーニング開始。内容は、コンテストを想定したブイゼルとの練習試合。
「ブイゼル、準備はいい?」
「ブイ!!」
 ブイゼルはいつでも来いと言ってるように、身構える。
「ブイゼル、しっかりコーチしてやれよー!」
 サトシが横からブイゼルに呼びかける。ブイゼルから直接教えてもらえる事があるかな、って思ったから、サトシは見ているだけ。
「ルーナ、エクリプス、ヒカリさんのポケモンの動き、しっかり見ておこうね!」
 審判役をするハルナは、側に居るルーナとエクリプスに、そう言っていた。
「じゃ、さっきはポッチャマだったから、ミミロル!」
「ミミッ!!」
 あたしが呼びかけると、ミミロルが前に出た。
「よし、じゃあ開始っ!!」
 ハルナが両手を挙げた。
「ブゥゥゥィ、ブゥゥゥゥッ!!」
 真っ先にブイゼルが攻撃! 繰り出したのは、最近覚えたばかりの“みずのはどう”だった!
「行くよミミロル!! “れいとうビーム”で氷の壁を作って!!」
「ミィィィィミ、ロォォォォッ!!」
 あたしの指示で、ミミロルは“みずのはどう”の先に向けて“れいとうビーム”を発射! たちまち氷の壁ができあがって、そこに“みずのはどう”が当たって壊れた! 白い煙の中に、氷の破片がキラキラと光りながら舞った。これなら向こうの減点・・・そう思った時だった!
「ブイイイイイイッ!!」
 白い煙を突き破って、ブイゼルが“アクアジェット”で突っ込んできた! 不意を突かれたミミロルには、よける事ができなかった。あたしの目の前に倒れるミミロル。
「ミミロル!!」
 あたしは思わず声を上げた。
「ブイ! ブイブイ、ブイブイッ!」
 すると、ブイゼルがミミロルに何か言い始めた。すると、ミミロルはコクンとうなずいた。ブイゼル、ちゃんと悪いところを教えてくれてるみたい。ミミロルはまた立ち上がる。そして、練習試合は続く。わざとわざのぶつかり合い。何かある度に、ブイゼルはちゃんとミミロルに教えてくれる。そんな試合を、ハルナは息を呑んで見守っていた。
「ブイゼル、ちゃんとコーチしてるじゃないか」
 そんな様子に、サトシも感心していた。その時だった。
 ドドーンと、何かが爆発するような音が聞こえて、地面が地震のように揺れた。
「な、何!?」
 突然の出来事に、みんな驚いた。鳥ポケモン達が、一斉に森から飛び立ったのが見えた。しばらくすると、揺れが治まった。するとすぐに、あたしの横でバキッという音がして、近くの木が突然倒れた。見ると、そこにはズシンズシンと音を立てながらこっちに迫ってくる茶色い体でツノの生えた大きなポケモンが出て来た!
「ドサイドンだ!」
 タケシが声を上げた。そんなドサイドンは、暴れながら真っ直ぐこっちに向かって思い切り右腕を振り下ろした!
「きゃああっ!!」
 あたしはすぐに逃げ出した。間一髪。ドサイドンの右腕は、地面に思い切り食い込んでいた。そんな右腕を、ドサイドンは思い切り引き抜いた。
「なんて威力の“アームハンマー”だ・・・!」
 タケシが感心する間もなく、ドサイドンは容赦なくミミロルとブイゼルに向けて力を込めて尻尾を振った! “アイアンテール”だ! 慌ててよけるミミロルとブイゼル。
「あのドサイドン、完全に我を忘れているぞ!!」
 タケシが叫んだ。
「とにかく、逃げるぞ!!」
 サトシの言葉で、あたし達はとりあえず逃げる事にした。それでも、ドサイドンは吠えながら追いかけてくる!
「何なのあのドサイドン・・・ああっ!!」
 ハルナが振り返りながらそう言った時、ハルナはつまずいて転んじゃった! そんなハルナに、ドサイドンが迫る!
「ハルナッ!!」
 すぐにあたしはハルナを助けようと引き返した。「ヒカリッ!!」ってサトシの声が聞こえたけど、そんな事は気にも留めなかった。
「ミミロル、“れいとうビーム”!!」
「ミィィィィミ、ロォォォォッ!!」
 ミミロルが、ドサイドンに向かって“れいとうビーム”を発射! 命中! 効果は抜群! たちまちドサイドンの体が凍りついた・・・と思ったら、ドサイドンは体を覆った氷を簡単に破った! 全然ダメージを受けてる様子はない。
「そんな・・・!? 効果は抜群のはずなのに!?」
「ブゥゥゥゥッ!!」
 あたしが驚く間にも、ブイゼルが“みずでっぽう”で攻撃! 命中! 効果は抜群のはずだけど、効いてない。
「こうなったらピカチュウ、“アイアンテール”だ!!」
「ピッカアッ!!」
 すぐにサトシが駆けつけた。ピカチュウが、尻尾に力を込めてドサイドンに振った! 直撃! でも、やっぱり効いてない。
「ポッチャマアアアアッ!!」
 ポッチャマも“バブルこうせん”で応戦! でも、やっぱり効いてない。
「そんな・・・どうして!?」
 あたしは動揺した。
「あのドサイドンのとくせいは、『ハードロック』なんだ! 効果は抜群な攻撃が弱められてしまうんだ!」
「そんな・・・!!」
 あたしが驚いてる間に、ポケモン達の悲鳴が聞こえた。見ると、ポッチャマ達がまとめてドサイドンに弾き飛ばされていた!
「みんな!!」
 あたしが叫んだ時、ドサイドンの手があたしに向かって伸びた!
「きゃあっ!!」
「ヒカリ!!」
「ヒカリさん!!」
 気づいた時にはもう手遅れ。ドサイドンの手があたしをつかんだ! 捕まれたあたしに向けて、ドサイドンが吠えた。
「いやあっ!! 離してっ!!」
 必死でもがいても、ドサイドンは離さない。ルーナとエクリプスが離させようと必死で攻撃するけど、全然効果がない。逆に、尻尾の一振りで返り討ちにされた!
「ルーナ!! エクリプス!!」
 ハルナの声が聞こえる。ドサイドンはそのまま、あたしに向けてツノを向けた! ツノがドリルのように回り始める。ああ、このままあたしはこのツノに・・・! あたしが覚悟を決めた、その時!

 黒いボールと青いボールが、ドサイドンに飛んで来た。命中! そして爆発! その衝撃でドサイドンはあたしを離して、背中から倒れた。
「ありがとう、ハルナ」
「いいえ・・・今のハルナじゃありません!」
 あたしはハルナが助けてくれたと思ったけど、違った。すると、あたし達の目の前に、2体のポケモンが降り立った。1匹は、かんじょうポケモン、キルリア。もう1匹は、はどうポケモン、ルカリオだった。
「キルリアに、ルカリオ・・・?」
「大丈夫ですか?」
 そんな時、サトシ達の後ろに1つの人影が姿を現した。黒いシンプルドレスを着た、女の子・・・?


TO BE CONTINUED・・・

[480] SECTION02 不思議な少女アユリと鉄壁のヒトミ!
フリッカー - 2008年04月18日 (金) 17時52分

 あたし達の前に現れた、キルリアとルカリオ。
「キルリアに、ルカリオ・・・?」
「大丈夫ですか?」
 その時、サトシ達の後ろに1つの人影が姿を現した。黒いシンプルドレスを着た、女の子・・・?
「あなたは・・・?」
 あたしが女の子に誰なのか聞こうとした時、ドサイドンが起き上がって、こっちに向かって吠えた。
「まだ来る・・・っ!!」
 ハルナが、怯えてあたしの背中に隠れた。
「ここは任せてください」
 女の子が前に出た。あたしは言われた通りにしようと、女の子の後ろに下がった。
「キルリア!! ルカリオ!!」
 女の子の指示で、キルリアとルカリオがドサイドンに踊りかかった!
「“サイコキネシス”!! “あくのはどう”!!」
 キルリアが念じ始めると、ドサイドンの体が宙に浮かんだ! 驚いて手足をジタバタさせたまま動けないドサイドンに、ルカリオが“あくのはどう”を発射! 命中! そして爆発! あたし達のポケモンの攻撃を寄せ付けなかったのがウソのように、ドサイドンは弾き飛ばされた。ズシンと地響きを起こして、ドサイドンが倒れた。
「凄い・・・なんてパワーなの・・・!?」
 あたしは、そんな2匹の強さにあっけに取られていた。それは他のみんなも同じだったみたい。倒れたドサイドンは、さすがに懲りたのか、起き上がった後一目散に森の奥へ逃げていった。


SECTION02 不思議な少女アユリと鉄壁のヒトミ!


「ふう・・・」
 女の子はほっと一息ついて、キルリアとルカリオをモンスターボールに戻した。
「これもやっぱり、クリエイショニストの・・・」
 女の子は、何だかよくわからない事をポツリとつぶやいた。
「ありがとう」
 あたしがお礼を言うと、女の子がこっちを向いた。
「いいえ、私は人として当然の事をしたまでです。お礼なんて・・・」
 女の子は、少し照れた表情を見せた。
「あたし、ヒカリ」
「ポチャマ!」
「俺、サトシ」
「ピカ、ピカチュウ!」
「俺はタケシだ」
「ヒカリさんの一番弟子、ハルナよ!」
「ちょ、ちょっとハルナ・・・」
 あたし達は女の子に自己紹介した。ハルナの自慢気な自己紹介には驚いたけど。
「こちらこそ初めまして、アユリと申します」
 女の子も丁寧にお辞儀して自己紹介した。
「それにしても凄かったな、アユリのキルリアとルカリオ」
「・・・!」
 サトシの言葉に、アユリはなぜかギクッとしたような表情を見せた。
「ねえ、アユリのポケモンって、どうしてあんなに強いの?」
 あたしも、アユリがどうして強いのか気になっていた。あたしだって、強くなりたいもん! できるものなら、強さの秘訣を教えてもらいたい!
「い、いえ・・・それは・・・」
 アユリは、なぜか答えないで戸惑っていた。どうして? 簡単に答えられるものなんじゃないの?
「なあ、俺とバトルしようぜ!」
「・・・いいえ」
 サトシがそう言うと、アユリはすぐに首を横に振った。
「どうしてだよ? 俺はあんなに強いポケモンと1回バトルしてみたいんだ! いいだろ?」
「・・・・・・」
 サトシがそう言っても、アユリは顔を伏せて、黙っているだけだった。
「・・・アユリ?」
 何だか普通じゃない、アユリは。どうして質問に答えようとしないの? あたしはそう感じていた。その時、遠くでドドーンと、何かが爆発する音が聞こえた。
「何、今の音?」
「どこかで、ポケモンバトルでもしているのか?」
 ハルナとタケシが、音がした方を見ながら言った。その音に、アユリが反応した。
「ごめんなさい。私、用事を思い出しました。さようなら!」
 アユリはすぐに、駆け足であたし達の側を離れていった。
「あっ! ちょっとアユリ!」
 あたしが呼び止めても、アユリは止まらなかった。とうとう、アユリの姿は森の中に消えた。まるで、その場から逃げているようにも見えた。
「行っちゃった・・・」
 ハルナがつぶやいた。あ〜あ、あの強さの秘訣、聞きたかったのに・・・
「・・・ピ?」
 その時、ピカチュウが耳を立てた。
「どうしたんだ、ピカチュウ?」
 それに気づいたサトシが聞くと。ピカチュウは森の中へと一目散に飛び込んだ。
「あっ、待てよピカチュウ!」
 サトシが、すぐにピカチュウの後を追いかける。
「ピカチュウ、どこ行くの〜!」
「ポチャーッ!」
 あたしも、ポッチャマ達と一緒に後を追いかけた。ピカチュウ、一体どうしたの?

 * * *

 ピカチュウを追いかけて、森の中を進んでいくあたし達。そしてたどり着いた場所は、森の中の開けた場所。
「ピカピ!」
 ピカチュウはそこで立ち止まって、ある場所を指差した。
「どうしたんだ・・・あっ!!」
 それを見たサトシが突然、驚いた表情を見せた。
「どうしたのサトシ?」
「見ろよ!!」
 サトシが指差した先。そこには、1匹のポケモンが倒れていた。ピンク色の体に、長い尻尾が特徴のポケモン。
「あれは・・・ミュウじゃないか!!」
 タケシが声を上げた。
「ミュウって・・・『幻のポケモン』っていわれてる、あの!?」
 ハルナが目を丸くした。
「『幻のポケモン』・・・!?」
 あたしもその事に驚いて、ポケモン図鑑を取り出した。
「ミュウ、しんしゅポケモン。あらゆるわざを使うため、ポケモンの先祖と考える学者がたくさんいる」
 図鑑の音声が流れた。
「ポケモンの先祖!?」
 そんな図鑑の言葉に、あたしはもっと驚いた。そんなポケモンが、今目の前にいるなんて・・・
「見て! 傷だらけじゃない!」
 ハルナが声を上げた。ミュウの体は傷だらけで、かなり弱ってる様子。
「よし、助けてやらないと!」
 サトシが、真っ先にミュウの側に行った。すると、ミュウはこっちに気づいた。
「ミュウ、しっかりしろ、今助けてやるからな・・・」
「!!」
 すると、ミュウがサトシに向けて左手を突き出したと思うと、体を起こして青いボールを作り出して、サトシに向けて発射した!
「ぐわっ!!」
 その一撃をもろに受けて、弾き飛ばされるサトシ。あたし達は息を飲んだ。ミュウの顔はひきつっていた。
「今のわざって、“はどうだん”!?」
「ああ・・・間違いない」
 あたしのつぶやきに、タケシが答えた。
「ミュウ、俺はお前を助けたいだけなんだ・・・!」
「ピカチュ!」
 ピカチュウも、サトシと一緒にミュウを説得する。それでも、ミュウは表情を緩めない。今度は口からサトシに向けて火を吹いた! “かえんほうしゃ”だ!
「わわっ!!」
 サトシは慌てて逃げる。何とかよけられた。わかった。きっと、ミュウはサトシを恐がってるんだ。
「ダメよサトシ、いきなり近づいたから恐がってるのよ」
 そう言って、あたしはサトシと入れ替わった。
「ミュウ、恐がらないで。あたし達、あなたの敵じゃないのよ」
 そう言いながら、あたしはミュウにゆっくり近づいていく。ミュウは顔を緩めないまま、動かない。
「ダイジョウブ。あたし達は、あなたを助けたいだけだから・・・」
 あたしがそう言った時、ミュウが苦しそうな表情を浮かべて崩れ落ちた。
「あっ!」
 あたしは思わず、ミュウの所に駆け寄ろうとした。すると、すぐにミュウが顔を上げた。目が青く光ったのが見えた。
「きゃあっ!!」
 あたしは突然、後ろに突き飛ばされた。今のは、“サイコキネシス”・・・!
「ヒカリさんっ!」
 すぐにハルナが側に来た。
「ダメだ、かなり警戒心が強いようだ・・・」
「でも、このまま放っておけないよ!」
 タケシとサトシが、そんな事を言っていた。どうしたら・・・
「君達、ここは任せてくれる?」
 すると、あたし達の後ろから声が聞こえた。アユリとは違う声。振り向くと、そこには見覚えのある服装の人が。赤いジャケットに黒いズボン姿の女の人・・・
「あなたは・・・ポケモンレンジャー!?」
 あたしは思わず声を上げた。そう、最近も会ったばかりのポケモンレンジャーに間違いない! でも、前にあった人とは違う人。女の人だし、年はタケシと同じくらいに見える。側には、大きな口が特徴の青いポケモンが。
「え!? ポケモンレンジャー!? ハルナ、見るの初めてです・・・!」
 ハルナが、そんな事をつぶやいた。ポケモンレンジャーの女の人は、ミュウの前にゆっくりと近づいて、少し離れた所で止まった。そして、右腕を突き出した。右腕には、赤い機械が付いている。あれって確か・・・バトナージ・スタイラー?
「まさか、あの人トップレンジャー!?」
 サトシが驚いた。
「キャプチャ、オンッ!!」
 ポケモンレンジャーの女の人がそう叫ぶと、スタイラーからコマが飛び出した。ミュウに向かって飛んでいく。
「精神集中・・・バトナージッ!!」
 ポケモンレンジャーの女の人は一旦“めいそう”するように目を閉じた後カッと目を開けて、人差し指と中指を立てて思い切り右腕を振った。コマのスピードが一気に上がって、ミュウの周りを回り始めた。それは1つの光の輪を描き出す。ミュウは、それでも警戒している様子で、身構えている。
「恐がらないで、さあ・・・」
 ポケモンレンジャーの女の人がそう優しく言った。回り続けるコマ。すると、ミュウの表情が次第に緩んでいった。ちゃんと気持ちが伝わってるんだ・・・! そして、輪がミュウの体に吸い込まれていった。
「キャプチャ完了」
 ポケモンレンジャーの女の人は、そうつぶやいた。そして、傷だらけのミュウを抱き上げた。ミュウは、抵抗しようとしていない。
「凄い・・・これが、ポケモンレンジャーなんだ・・・」
 ハルナは、そんなキャプチャの様子を見て感心していた。
「さて、手当てをしてあげないと。君達、悪いけど手を貸してもらえないかな?」
 ポケモンレンジャーの女の人が、あたし達にそう呼びかけた。

 * * *

 あたし達は、ミュウの手当ての手伝いをしてあげた。タケシは慣れた手付きで、ミュウの傷にきずぐすりを吹きかける。ミュウが痛そうな表情を浮かべたけど、じっと我慢していた。
「よーし、いい子だ」
 タケシが優しくそう言った。
「さすがね」
「こういうのはいつもの事だからな」
 感心するポケモンレンジャーの女の人に、タケシがそう答えた。
「そうだ。言い忘れてたけど、あたしはヒトミ。こっちはパートナーのフカマル」
 ポケモンレンジャーの女の人はあたし達に自己紹介した。
「あたしはヒカリです」
「ポチャマ!」
「俺、サトシです」
「ピカ、ピカチュウ!」
「俺はタケシだ」
「ヒカリさんの一番弟子、ハルナです!」
「ちょっとハルナ・・・」
 あたし達も自己紹介する。ハルナの自己紹介には相変わらず驚いたけど。
「ねえねえ、その機械でポケモンをキャプチャするんでしょ?」
 ハルナが、バトナージ・スタイラーを指差してヒトミさんに聞いた。
「そうだけど・・・?」
「ハルナもそれ使ったら、ポケモンをキャプチャできるかなあ?」
「それは無理ね」
 ハルナの子供っぽい質問に、ヒトミさんはあっさりそう答えた。
「えぇ!?」
「キャプチャ・スタイラーは、ポケモンに気持ちを伝えるための道具。軽い気持ちでやろうとしても、ポケモンに意思は伝わらないわ。ポケモンをキャプチャするには、訓練で身に付けたそれなりの心意気が必要って事。それに、このバトナージ・スタイラーはあたし達トップレンジャーのためにチューンナップされたタイプだから、普通の人にはまず扱えないと思うわ」
「あぁ、そうかぁ・・・」
 ヒトミさんの説明を聞いたハルナは、ガクリと肩を落とした。
「ところで、この森で何か変わった事はなかった?」
 ヒトミさんが、あたし達に聞いた。
「変わった事?」
「最近ここで、野性ポケモンが何者かに乱獲されているって事件が起きているの」
「ええっ!?」
 ヒトミさんの言葉に、あたし達は驚いた。
「それなら、さっきドサイドンが我を忘れてこっちに襲い掛かって来た事があったんだ。何とか助かったが・・・」
 タケシが、すぐにさっきの出来事をヒトミさんに言った。まさか、それが乱獲に関係してるって言うの?
「そのドサイドンの事といい、このミュウの事といい、乱獲している奴らに攻撃されたために起きたのだとしたら・・・」
 タケシがミュウを見ながらそう言った。
「ええ、その可能性は高いと思うわ」
 ヒトミさんはうなずいた。
「確かな証拠はないけど、乱獲をしているのは1つの集団だという情報があるのよ。その正体を突き止めるのが、今のあたしのミッションなの」
 ヒトミさんの目が鋭くなった。その時だった。ブルルルルと車が走ってくる音が聞こえてきた。見ると、こっちにジープが走ってくる。ジープは、あたし達の目の前で止まった。そして、見るからに怪しげなサングラスに黒ずくめの服装の人達が下りて来た。
「そのポケモンを渡してもらおうか」
 リーダー格みたいな人が、ミュウを指差してあたし達にそう言った。ミュウの顔がひきつった。警戒してる!?
「誰だ、お前達は!!」
 サトシが叫ぶと、黒ずくめの集団は一斉にモンスターボールを投げ上げた! 出て来たのは、たくさんのグラエナ! みんなこっちを見て、唸ってる!
「なあに、心配は要らないさ。そのミュウを差し出せば、何もしないからよ」
 リーダー格の口元がニヤリと笑った。やっぱりこいつら、怪しい・・・! あたし達は立ち上がって、一歩後ろに下がった。
「・・・まさか、あんた達なの! この辺りでポケモンを乱獲しているっていうのは!」
 ヒトミさんとフカマルが、真っ先に前に出た。
「お、お前はポケモンレンジャー!?」
 黒ずくめの集団がヒトミさんの姿を見て驚いた。
「図星のようね。手間が省けたわ。そっちからわざわざ出向いてくれるなんてね!!」
 そう笑みを浮かべながら言って、ヒトミさんは右腕を突き出してバトナージ・スタイラーを構えた。
「ま、まさか、お前は・・・『鉄壁のヒトミ』!?」
 バトナージ・スタイラーを見たリーダーが、そんな言葉を口に出した。『鉄壁のヒトミ』?
「その通りっ!!」
 ヒトミさんがそう答えると、バトナージ・スタイラーからコマが飛び出した! コマが飛んで行く先は、木の上にいた1匹のケムッソ。
「悪者退治に手を貸して!! バトナージッ!!」
 そう叫んで、ヒトミさんは人差し指と中指を立てた右手を一振り。たちまちコマは、ケムッソの周りを囲む。そして、コマが描いた輪が、ケムッソの体に吸い込まれた。すると、ケムッソがこっちを向いて、木から飛び降りた。
「犯人相手に容赦はしないわよ!! “いとをはく”!!」
 ヒトミさんが指示を出すと、ケムッソは黒ずくめの集団に向けて白い糸を発射! たちまち何人かが糸に縛られて、動けなくなった。
「さて、捕まえたらあんた達の正体を洗いざらい調べてもらうからね!!」
 ヒトミさんが自信満々に言い放った。
「くそっ、応戦しろ!!」
 リーダー格の指示で、グラエナ達が動いた! あたし達もとっさに身構える。ポッチャマ達がすぐに前に出た。
「ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」
「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
「ポッチャマアアアッ!!」
「ピィィィカ、チュウウウウウッ!!」
 ポッチャマとピカチュウが攻撃開始。でも、グラエナの群れは散り散りになってかわした。
「グレッグル、“どくばり”だ!!」
 タケシもグレッグルを出す。出てきたグレッグルは、口から針をばらまくように発射! でも、これも全部よけられた。
「ヒカリさん、ハルナも行きます!! エクリプス、“ころがる”よっ!!」
 ハルナも加勢する。ハルナが左手で投げたモンスターボールから飛び出したエクリプスは、勢いをつけてボールのように転がり始める! 散り散りになったグラエナ達に向かっていくけど、グラエナ達は飛び越えるようにジャンプしてかわす。
「もういっちょ!!」
 それでも、エクリプスは動きを止めない。Uターンして、もう一度グラエナ達に襲い掛かる! でも、それもよけられた。
「速い!?」
 ハルナが目を丸くした。
「くそっ!! ピカチュウ、よく狙うんだ!! “ボルテッカー”!!」
「ピィィィカ・・・!!」
 ピカチュウが電撃をお見舞いしようとパワーを蓄える。すると、1匹のグラエナの目がぼうっと光った。すると、そのグラエナが吠えると、体に強い電気が帯び始めた! そして、そのままポッチャマに向かっていく!
「ええっ!?」
 あたし達は驚いた。グラエナが“ボルテッカー”!? そんな事、できる訳・・・
「ポチャアアアッ!!」
 驚いてる間に、グラエナの“ボルテッカー”がポッチャマに直撃! 効果は抜群! あたしの前にはじき飛ばされるポッチャマ。
「ポッチャマ!!」
 思わず叫ぶあたし。ポッチャマは、何とか立ち上がった。でも、かなりダメージを受けてるみたい!
「どうなってるんだ!?」
 サトシも、何が起きたのかわからない様子。
「あのグラエナは、“さきどり”を使ったんだ!!」
「“さきどり”?」
「相手が使おうとするわざを、パワーを上げて先に出すわざだ。あんなわざを使えるなんて・・・」
 タケシが説明した。さっきのグラエナは、ピカチュウの“ボルテッカー”を“さきどり”して、ポッチャマに当てたんだ! すると、今度はグラエナの群れが一斉にポッチャマ達に“とっしん”してきた! 慌ててよけるポッチャマ達。でも、グラエナ達の息はピッタリ。どんどんポッチャマ達を追いつめていく。
「くそっ、グラエナは群れで獲物を追いつめるというが・・・ここまで連携して攻撃するとは・・・!」
 タケシが唇を噛んだ。
「強い・・・!!」
 そんな言葉が、自然とあたしの口から出ていた。
「こっちも忘れちゃダメよ!! “いとをはく”!!」
 ヒトミさんの指示で、ケムッソが黒ずくめの集団を糸でまた捕まえた時、あたし達に何やら左手で合図した。「今の内に逃げて」って事?
「よし、ミュウを連れて逃げよう!!」
「うん!!」
 みんなもそれに気づいてたみたい。タケシがすぐにミュウを抱き抱えて、あたし達はヒトミさんに背を向けた。
「くそっ、逃がすな!! 追え!!」
 黒ずくめの集団の指示で、グラエナがあたし達を追いかけようとする!
「フカマル!!」
 でも、ヒトミさんはそれを見逃さない。フカマルに呼びかけると、バトナージ・スタイラーに戻ったコマについている小さなふたが開いて、中にフカマルが吸い込まれた。すると、コマの色が青くなった。
「ポケアシスト、お願いね!!」
 そして、もう一度発射! 青くなったコマはグラエナ達に向けて飛んで行く! そして、尾を引きながら真上からグラエナの群れに向けて落ちた。すると、突然空から流星が降ってきて、グラエナ達を襲った! 凄いインパクト。これをもろに受けたグラエナ達は身動きがとれない。
「す、凄い・・・!」
 ふとそんな様子を見たあたしは、ちょっと感心しちゃった。ポケモンレンジャーって、あんな事もできるんだ・・・
「ヒカリさん、早く!!」
「あ、ごめん」
 すぐにハルナに呼びかけられたあたしは、みんなの後を追いかけてその場を離れようとした。その時!

 突然、あたし達の足下が一気に崩れ始めた!
「わああああっ!!」
 たちまち、あたし達はしりもちをついた。落ちたのは、とても深い穴。
「みんな!?」
 ヒトミさんの驚いた声が聞こえた。
「な、何なの、いきなり・・・?」
「わ〜っはっはっは!!」
 ハルナがつぶやくと、穴の上から聞き慣れた笑い声が高らかに聞こえてきた。まさか・・・!
「まんまと引っかかったな!!」
「『逃げ道を塞ぐ落とし穴作戦』、大成功なのニャ!!」
 穴の上から顔を出したのは、やっぱりロケット団! なんでこんな時に・・・!
「ロケット団!! なんでお前達まで!!」
「よくやった。そのままミュウを捕らえろ!!」
 サトシが叫んだ時、遠くからリーダー格の声が聞こえてきた。すると、穴の上から1匹のグラエナが飛び込んできた!
「っ!?」
 そのままタケシを突き飛ばしたグラエナは、反動でタケシが離しちゃったミュウをくわえた! 悲鳴を上げるミュウ。そしてそのままジャンプして逃げる! あっという間の出来事だった。
「あっ!! ミュウが!!」
 あたしは、思わず声を上げた。
「逃がすもんか! ルーナ、“ねんりき”でつかまえて!!」
 すぐにハルナが動いた。左手で投げ上げたモンスターボールから、ルーナが飛び出す。ルーナは、念じてグラエナを止めようとしたけど、グラエナは動きを1つも止めなかった。
「あれ!? どうして!?」
「ハルナ、あくタイプにエスパータイプのわざは全く効かないんだぞ!!」
「あっ、いけない!! そうだった!!」
 タケシのフォローで、ようやくハルナが気付いた時にはもう手遅れ。結局、グラエナに穴から逃げられちゃった!
「すぐ追いかけなきゃ!!」
「はい!! ルーナ、“ねんりき”でハルナ達をここから出して!!」
 ルーナが念じ始めると、あたし達の体が宙に浮いた。お陰で、あたし達は落とし穴から出る事ができた。
「ヒトミさん!!」
「ええ、わかってる!!」
 あたし達はヒトミさんと合流した。見ると、ミュウをくわえたグラエナはリーダー格の前にいる!
「これで目的は果たした。撤収するぞ!!」
 リーダー格の一声で、黒ずくめの集団がジープに集合した。見ると、ケムッソの糸で縛られた人達も、いつの間にか縛った糸をほどいていた。
「そうはさせない!! ケムッソ・・・」
「“ほえる”!!」
 ヒトミさんがケムッソに指示を出そうとした時、先にグラエナがケムッソに向けて強く吠えた! それを聞いたケムッソは恐くなったのか、その場から一目散に森の中へ逃げちゃった!
「ああっ、逃げちゃった!!」
 ハルナが声を上げた。
「ちっ・・・!! なら!!」
 唇を噛むヒトミさん。でも、すぐに右腕を突き出してバトナージ・スタイラーを構えた。見つめる先には、1匹のムックルが。
「キャプチャ、オンッ!!」
 バトナージ・スタイラーからコマが飛び出して、ムックル目掛けて飛んでいく!
「そんな事をさせると思うか!! グラエナ!!」
 その時、グラエナが飛び出した! キャプチャしようとしてるヒトミさんに向けて一直線に向かっていく!
「危ない、ヒトミさんっ!! ポッチャマッ!!」
 とっさにあたしはポッチャマを呼んだ。ポッチャマがグラエナに向かっていくけど、間に合わない!
「うあっ!!」
 グラエナはヒトミさんに“とっしん”! 倒れ込むヒトミさん。そのせいで、コマがバランスを崩して地面に落ちちゃった! グラエナが着地した隙に、ポッチャマが“つつく”攻撃! 命中! 攻撃を受けたグラエナは、すぐにその場から離れた。
「くっ、やってくれるじゃない・・・!!」
 立ち上がったヒトミさんが唇を噛んだ。
「行くぞ!!」
 すると、リーダー格がグラエナと一緒に素早くジープに乗り込んだ。ロケット団まで乗る。
「ハブネーク、“くろいきり”よっ!!」
 ムサシが、ハブネークを繰り出した。出て来たハブネークは、口から黒い煙を吐いた! たちまち辺りが煙に包まれて、視界が遮られた。
「ミュウゲットでいい感じ〜っ!!」
 そんなロケット団の声が聞こえたと思うと、ジープのエンジンの唸る音が聞こえた。そして、キキィッとタイヤの音を立てながら、素早くその場を走り去っていったのがわかった。
「くっ、ここまで来て逃がすなんて・・・しかもミュウまで・・・!!」
 ヒトミさんは唇を噛んで見送るしかなかった。

 * * *

 煙が晴れた後、サトシのムクバードや、ヒトミさんがキャプチャしたムックルで辺りを探したけど、結局見つからなかった。
「ダメか・・・」
 サトシがつぶやいた。
「ごめんなさいヒトミさん、あたし達がしっかりしてなくて・・・」
 あたしは、ヒトミさんにそう謝った。だって、相手はトップレンジャー。あたし達がしっかりしてなかったから、ヒトミさんに迷惑をかけちゃった。そう思っていた。
「いいえ、みんなのせいじゃないよ。さっきのは、あたしにだっていけなかった所はあるし、こんな事はしょっちゅうだから」
 でも、ヒトミさんは笑顔でそう答えた。
「でも、だからってあたしはあきらめないわ。ここで止まったら、『鉄壁のヒトミ』の名が泣くからね!」
 そして、拳を作って自信満々な表情を浮かべてそう言った。『鉄壁のヒトミ』って、ヒトミさんのあだ名なのかな?
「みんな、巻き込んじゃってごめんね。あいつらは必ずあたしが捕まえてみせるから、安心して旅を続けてて! じゃあね!」
 ヒトミさんはそう言って手を振りながら、フカマルと一緒にその場を素早く立ち去って行った。そんなヒトミさんの背中を見送ったあたしの心は、何だかやりきれない思いでモヤモヤしていた。ミュウを助けられなかったのは、やっぱりあたしが弱かったから・・・もっと、強くなれたら・・・! あたしの手に自然と力が入った。
「ヒカリさん、どうしたんですか?」
 そんな時、ハルナが横からあたしの顔を覗いた。
「あ、ごめん。何でもないよ! ハルナ、少ししたらトレーニング続けようよ!」
「あ、はい!」
 あたしはとりあえずトレーニングを続けなきゃと思って、ハルナにそう言って元いた場所に戻ろうとその場を後にした。
「それにしても、なんでロケット団があんな連中と・・・?」
「さあ・・・」
 あたし達について来るサトシとタケシが、そんな疑問を口にしていた。

 * * *

「私だ」
「リーダー、報告します。ミュウの確保に成功しました」
「そうか。これでようやく、あれを完成させられる・・・それにテストもな・・・」
「ところでリーダー、今どこにいるんです?」
「外だ。少し興味のある人を見つけたのだ。おいしい客になってくれそうだからな・・・」
「客?」
「フタバタウンのヒカリ・・・ポケモンコンテストに2回連続で敗退している、トップコーディネーターの子だ・・・」
 電話みたいなもので話しながら、変な女の人があたしを影からひっそりと見つめていた事には、あたしは気付かなかった・・・


TO BE CONTINUED・・・

[499] SECTION03 闇からの誘惑!
フリッカー - 2008年04月29日 (火) 11時42分

 小さな頃のあたしは、暇さえあればポケモンコンテストのビデオやテレビの中継を見ていた。
 そう、その頃のあたしにとって、ポケモンコンテストは遠い場所の出来事でしかなかった。
 そんな事にママが参加して、トップコーディネーターになれたって話を聞いて、あたしはそんなポケモンコンテストに憧れるようになっていた。部屋に飾ってあるママが活躍していた頃の写真を見て、胸を躍らせたっけ。
 ずっと前、こんな事をあったのを覚えてる。
「ママ! あたし、ママみたいなトップコーディネーターになるってきめたの!」
 あたしがそう言うと、ママはこう答えた。
「そう。でも、トップコーディネーターになる事は簡単じゃないのよ? 誰でもなれるって訳じゃないのよ?」
「ダイジョウブ、ダイジョウブ!」
 そんなママの言葉を聞き流して、あたしは何も考えないでそう答えたっけ・・・


SECTION03 闇からの誘惑!


「ママ・・・」
 あたしはお守りのリボンを見ながら、そんな事を思い出していた。旅に出る時まで全然考えた事がなかったママのあの言葉の意味が、最近になってやっとわかった。トップコーディネーターには簡単にはなれない。誰でもなれる訳じゃない。その言葉の意味の重さに、あたしは今まで気付いていなかった。あたしはトップコーディネーターになんて、普通にがんばればなれるものだって思ってた。でも、あたしは本当に『がんばる』って事の意味をちゃんとわかっていなかった。単純にがんばるって軽く考えてるだけじゃ、トップコーディネーターなんて大きな夢は成し遂げられない。世界は自分を中心に回ってるんじゃないってよく言うけど、やっぱりその通りなんだとつくづく感じた。なら、今度こそ本当にがんばって、強くなって・・・! でも、そんな時に限って、またあの時の失敗が頭を過ぎった。まるで、「お前には無理だ」「あきらめろ」っていう悪魔のささやきみたいに。
「っ!!」
 あたしは思わず、顔を思い切り横に振った。
「ヒカリさん、続けましょうよ!」
 そんなハルナの声が、あたしを現実に引き戻した。
「あ、ごめんごめん」
 そうだ、今はハルナと一緒にトレーニングの最中なんだ。こんな事してたら、ハルナに心配かけちゃう。

 空はもう真っ暗。月が光っている。こんな時間になっても、あたし達はトレーニングの真っ最中。ポッチャマ達は、ランニングしている。体力をつけるのは基本って聞いた事があるし。ルーナとエクリプスも、一緒になってランニングしていた。
 あたしは、ポケモン達を応援するハルナに目を向けた。あたしは、ハルナにとっていい先輩になれてるのかな・・・ちゃんと鏡になれてるのかな・・・?
「・・・何ですか?」
 ハルナが、あたしの視線に気付いてそう聞いた。
「あっ、ごめん、何でもないよ。もう夜も遅いし、そろそろ終わりにしようよ」
 いくらなんでも、こんな時間になるまでトレーニングを続ける訳には行かない。そう思ったあたしは、ハルナにそう言った。ポケモン達も、足を止めた。
「わかりました。終わりにするよ、ルーナ、エクリプス」
 ハルナが呼ぶと、ルーナとエクリプスがハルナの側に来た。
「じゃ、先に失礼します」
 ハルナはペコッとお辞儀をした後、ルーナとエクリプスを連れて先にその場を後にした。あたしも、ほっと一息ついてポッチャマ以外の3匹をモンスターボールに戻した。
「もしもし、そこのかわいいお嬢ちゃん」
 その時、どこからか女の人の声が聞こえてきた。誰だろうと思って振り向くと、そこには黒い服を着た怪しげな女の人が。
「誰、ですか?」
 あたしはちょっと恐くなった。こんな時に、何の用なの?
「私はこういう者です」
 そう言って、女の人は1枚の紙を差し出した。これって、名刺? あたしは、それを手に取って読んでみた。
「『あなたの夢をサポートします 株式会社クリエイショニスト 社長 ライラ』?」
 名刺にはそんな事が書いてあった。このライラって女の人は社長なの?
「あなたはポケモンコンテストで失敗したそうだね。強くなりたいそうだね・・・」
「え?」
 あたしは、ライラさんの言葉に驚いた。なんであたしの事知ってるの?
「ならば、私が簡単に強くなれる方法を教えてあげましょうか・・・?」
「強くなれる、方法・・・?」
 その言葉に、あたしはちょっと興味を持った。半分怪しいって感じもあるんだけど。
「興味を持っていただけたのなら、ついて来て下さい」
 ライラさんはそう言うと、あたしに背を向けて、そのまま去って行こうとした。あたしは、一瞬迷った。何だか怪しそう・・・でも、簡単に強くなれる方法って、ちょっと見てみたいかも・・・気が付くと、あたしはライラさんの後をついて行っていた。ライラさんがニヤリと笑っていた事には気付かないまま・・・

 * * *

「あっ、さっきの・・・!」
「ハルナじゃない。偶然ね、こんな所で」
 そんな時、ハルナは偶然、ヒトミさんの姿を見つけていた。
「あの悪い奴らは見つかったの?」
「いいや、それが全然。こんな夜中までやってもね。ほら、もうこんな時間だし、早く寝た方がいいよ」
「そんな事わかって・・・あれ?」
 そんなやり取りをしている途中で、ハルナは何かを見つけた。
「あれって、ヒカリさん? それに、あの人誰だろう・・・?」
「・・・あの人、何だか怪しい匂いがするわね・・・!」
 それを見たヒトミさんは、すぐに動き出した。
「あっ! ちょっと!」
 ハルナも、ヒトミさんの後を追いかけていった。

 * * *

「ヒカリとハルナの奴、遅いなあ・・・」
「こんな時間になっても、まだトレーニングを続けているのか?」
 テントの前の焚き火を挟んで、サトシとタケシがそんな事をつぶやいていた。そんな時、どこからかザッザッと足音が聞こえてきた。
「サトシさん、タケシさん」
 そんな言葉と同時に、1人の人が姿を表した。
「アユリじゃないか」
「こんな時にどうしたんだ?」
 その姿は、間違いなくアユリだった。どうしてこんな時間に出てきたのかわからなくて、首を傾げる2人。
「ヒカリさんの身に、危険が迫っています」
「危険?」
 そんなアユリの言葉に、2人は目を丸くした。

 * * *

 ライラさんについて行って、あたしが着いた場所は、小さな建物だった。ドアを開けて中に入ると、机が1つあって、そこに暗い明かりが1つ付いていた。やっぱり何だか怪しそう・・・でも、簡単に強くなれる方法を聞いてから・・・
「では、ここにお掛けください」
 そう言われて、あたしは机にあった椅子に座った。ライラさんも向かい側の椅子に座った。
「で、何なんですか? 簡単に強くなれる方法って?」
「よくぞ聞いてくれました。それは、我々の提供している商品、『デザインポケモン』です」
「デザイン・・・ポケモン?」
 今まで聞いた事もない名前に、あたしは首を傾げた。
「遺伝子操作によって、ポケモンの能力を思うがままに『デザイン』できるのです」
 能力をデザイン・・・だからデザインポケモンなのか。あたしの目の前に、パンフレットが差し出された。そこにも、『あなたの夢を叶える力 デザインポケモン』の文字が。
「これを手にすれば、誰でも簡単に強いポケモンを手に入れられます。もちろん、ポケモンコーディネーターのあなたなら、誰にも負けぬ美しさを持つポケモンを用意する事もできるのですよ・・・」
 そうだったんだ・・・確かに、それならポケモンコンテストでも間違いなく優勝できる! でも・・・
「でも、それって・・・悪い事じゃ、ないですよね・・・」
 あたしはちょっと恐くなって、そう聞いた。よく聞く『ドーピング』とか言うものじゃないよね・・・
「悪い事・・・確かにそうかもしれませんが、その心配はいりません」
「え?」
「ドーピングというものは、外部から処置を施します。しかしデザインポケモンは、遺伝子を操作して生み出されるポケモンです。その能力は生まれた時から持っているものですし、ポケモンの体にも変化は現れません。こちらをご覧ください」
 すると、ライラさんはモンスターボールを取り出して、スイッチを押した。出て来たのは1匹のダイノーズ。
「このダイノーズもデザインポケモンですが、見た所でデザインポケモンだとわかりますか?」
「いいえ・・・」
 あたしはそう答えるしかなかった。だって、どこから見ても普通のダイノーズ。変だと思う所はどこにもないんだもん。
「あなた、ポケモンバトルにせよポケモンコンテストにせよ、自分の能力で戦っているものと思っていませんか? 両者とも、人間は指示こそ出しますが、実際に戦うのはポケモンそのもの。要は、そのポケモンの力が強ければいいのではないのですか?」
「え・・・」
 その言葉に、あたしはどこか納得がいくものを感じた。
「これでわかっていただけたでしょう。しかし、このデザインポケモンの存在は極秘事項です。実際に購入するには、パンフレットの裏にある契約を結ぶ必要があります。よく読んで下さい」
「極秘、事項・・・」
 何だかヤバそうな空気が漂い始めた。パンフレットの裏を見てみると、確かに『契約事項』って項目が書いてある。『デザインポケモンの秘密を漏らしてはならない』『上記の事を話す時は、必ずその人を勧誘する義務がある』・・・
「言い忘れていましたが、代金は『あなたの手持ちポケモン全て』です」
「えっ!?」
「ポチャ!?」
 ライラさんの言葉に、あたしは耳を疑った。
「今まで所有していた手持ちポケモン以上の活躍は保証しますよ・・・」
 ライラさんの言葉を聞いて、あたしはやっぱり怪しいんじゃないかなって思ってきた。ライラさんはペンを差し出した。
「あなたは悪さを何もしていない、善良な人でしょう・・・! なら、あなたにはこのデザインポケモンを手にして、リボンを取る権利があります・・・! さあ、もちろん契約しますよね・・・?」
「ポチャッ!! ポチャッ!!」
 ポッチャマは必死にあたしの足元で首を横に振ってる。まさかこれって、悪徳商法って奴・・・? でも、これがもし本当だったら・・・だからって、今まで一緒にがんばってきたみんなを手放したくなんてない・・・でも・・・あたしの心の中で、2つの思いがぶつかり合う。結局答えを出せないまま、ペンを取るべきか決められないまま、どんどん時間が過ぎていく。その時!
 ドン、と後ろでものすごい音が響いた。振り向くと、ドアが蹴破られていた。そこにいたのは・・・
「ヒカリさん、それを受け取ってはダメです!!」
 紛れもなくアユリとそのルカリオだった! その一言で、あたしの良心が目覚めた。
「アユリ!?」
 あたしは、当然驚いて、思わず立ち上がった。
「ヒカリ!! 大丈夫か!!」
 その後ろにはサトシとタケシの姿も。
「サトシ!? タケシ!?」
 またまた驚く間に、アユリのルカリオが動いた。
「“はどうだん”!!」
 アユリの指示で、ルカリオは両手を構えて“はどうだん”を発射! あたしはすぐに離れる。そして、“はどうだん”がライラさんの目の前に命中! そして爆発!
「今の内に!!」
 アユリはあたしの手を勝手に取って、素早く建物から出た。外に出て、あたし達は立ち止まった。
「アユリ・・・どうして?」
「デザインポケモンは、確かに高い能力を持つポケモンです。インチキではありません。ですが、その力に酔いしれてはいけません! あなたの夢をサポートしますという言葉は、ウソなのです!」
 アユリの眼差しは真剣だった。やっぱり、デザインポケモンって、やばいものだったんだ。ライラさんも、悪い人だったんだ。だから、秘密にしろって・・・でも、なんでアユリがそんな事知ってるの?
「どうしてそれを知ってるの?」
 あたしがそう聞いた時、建物の外側から2人の人影がこっちに来た。
「ヒカリさ〜んっ! ハルナもいま〜す!!」
「ちょっと先を越されちゃったけどね!」
 それは、間違いなくヒトミさんとハルナ!
「ヒトミさん!? それに、ハルナ!?」
 ヒトミさんとハルナまで出て来て、あたしにとっては驚きの連続。
「どうしてここがわかったの?」
 あたしはとりあえず、ここに来た理由を改めて聞いた。
「ハルナ、見たんです! ヒカリさんが怪しい人について行く所を! それで近くにいたヒトミさんとついて行ったら・・・」
「いや、たまたまアユリが来て、『ヒカリに危険が迫ってる』って言うから・・・」
 ハルナは納得できたけど、ついでに説明したサトシとタケシのは意味がわからなかった。
「待てっ!!」
 すると、建物からライラさん・・・いいや、ライラが出て来た!
「あんた・・・よくもヒカリさんをハメようとしたわね・・・!!」
 ハルナが前に出ようとした時、アユリの手がそれを阻んだ。そして、アユリが代わりにライラの前に出た。
「・・・なぜここがわかった?」
「ルカリオの波導が、あなたの邪気を察知したのです。リーダー・・・いいえ、ライラ!!」
 ライラの質問に、アユリは、ライラを強い眼差しでにらみながらそう言った。
「ええっ!?」
 あたしは驚いた。アユリも、ライラを知っている!? それにリーダーって・・・!?
「くっ、この裏切り者め・・・」
 ライラがアユリをにらみながら唇を噛んだ。裏切り者!? 何の話なの!?
「もうあなたの思うようにはさせません、ライラ!!」
 アユリのライラへの叫びに合わせて、ルカリオが身構えた。
「アユリ・・・あなたは、何者なの!?」
「・・・私は、クリエイショニスト元幹部の、デザインポケモンを使うデザイントレーナーです!」
「ええっ!?」
 あたしは驚いた。元幹部って、じゃあ、アユリもライラの仲間・・・!?
「そういう事だったのね。ウソをついているようじゃないようだし、その言葉、信じてあげるわ」
 ヒトミさんが、アユリを見て笑みを浮かべた。
「・・・だが、デザインポケモンの名を知った者を、黙って返す訳にはいかん・・・!! ダイノーズ!!」
 ライラの指示で、ダイノーズが前に出た!
「やってやるぜ!! 行け、ピカチュウ!!」
「ピッカ!!」
 真っ先にサトシとピカチュウが前に出た。
「あっ、ダメです!!」
「心配すんな! こんな奴、俺が相手になってやるぜ!!」
 なぜかアユリはサトシを止めようとした。でも、サトシはそう言い返すだけ。なんで止めるの?
「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
「ピィィィカ、チュウウウウウッ!!」
 ピカチュウが、思い切り自慢の電撃を発射! ダイノーズは、それをひらりとかわす。
「未知の敵にいきなり攻撃を仕掛けるのは、勇敢とは呼ばないのだぞ・・・」
 すると、ライラがニヤリと笑みを浮かべた。何かあるって言うの?
「行け、チビノーズ!!」
 ライラさんは、そんな事を叫んだ。あれ、チビノーズって確か、ダイノーズの体に付いてるあの小さな奴だよね・・・? そう思っていた時、ダイノーズの体に付いていた3つのチビノーズが外れて、一気に飛び出した! そして、一気にピカチュウへ向かっていく! まさか、あれを直接ぶつけて・・・!
「サトシ!! 気をつけて!!」
 あたしは、思わずそう叫んでいた。
「わかってるさ!! よけろピカチュウ!!」
 サトシは、すぐにピカチュウに指示を出した。よける体制に入るピカチュウ。
「“ラスターカノン”!!」
 ライラが突然、そんな指示を出した。すると、チビノーズが信じられない動きをした。ピカチュウの周りを複雑に飛び回りながら、光弾をピカチュウの周りから発射し始めた!
「!?」
 そんなチビノーズの動きに、あたし達は目を疑った。ピカチュウは慌ててよける。前からと思ったら、今度は後ろから、上から、また前から。チビノーズが、ピカチュウの周りを動きながら“ラスターカノン”を発射しているんだ! そして、遂にピカチュウはよけきれなくなって、“ラスターカノン”をもろに受けちゃった!
「ピカアアッ!!」
「ピカチュウ!!」
 声を上げるサトシ。弾き飛ばされたピカチュウは、かなりダメージを受けたみたい!
「何あれ!? もしかして『オールレンジ攻撃』って奴!?」
 ハルナが、そんな事を叫んだ。そして、“ラスターカノン”はこっちにも飛んできた!
「きゃあああっ!!」
 あたし達は、慌てて逃げる。ピカチュウを攻撃してるだけじゃない。チビノーズは飛び回りながらあたし達も狙ってきてる!
「ポッチャマアアアッ!!」
 ポッチャマも応戦する。ダイノーズに向けて“バブルこうせん”を発射! それに気づいたダイノーズは、素早く空中に浮いてかわした! すると、チビノーズがダイノーズの側に戻ってきた。そして、今度はポッチャマに3つのチビノーズが飛んで来た!
「気をつけてポッチャマ!! チビノーズの動きをよく見て!!」
「無駄な事を・・・“ほうでん”!!」
 チビノーズが一斉にポッチャマに向けて、今度は電撃を発射! やっぱり複雑な動き。ポッチャマはあちこちから飛んで来る電撃を見切ってかわそうとするけど、チビノーズの動きが速すぎてできない!
「ポチャアアアアッ!!」
 直撃! 効果は抜群! その場に倒れるポッチャマ。ダメージは大きそう・・・!
「負けないでポッチャマ!! 回りながら“バブルこうせん”!!」
 あたしは、とっさに思いついた戦法を指示した。これなら、周りを飛び回るチビノーズを追い払えるかもって思ったから。
「ポチャッ・・・ポッチャマアアアアッ!!」
 ポッチャマは立ち上がって、その場で回りながら“バブルこうせん”を発射! これで・・・と思ったら、チビノーズはそれを上に飛んでかわして、またポッチャマに電撃を浴びせた!
「ポチャアアアアッ!!」
 直撃! 効果は抜群! その場に倒れたポッチャマのダメージは、もう立てるか立てないかの瀬戸際。
「ピカチュウ、“アイアンテール”だ!!」
「ピッカアッ!!」
 その時、隙を突いてピカチュウが突っ立っているだけのダイノーズに踊りかかった! 力を込めた尻尾を、ダイノーズに叩きつける! 直撃! 不意を突かれて、後ずさりするダイノーズ。
「ハルナだって!! ルーナ、“シャドーボール”!!」
 ハルナがルーナを出して、それに続く。ルーナは、“シャドーボール”をダイノーズに発射! 命中! 爆発がダイノーズを包み込む。すると、煙の中から3つのチビノーズが飛び出した!
「“ストーンエッジ”!!」
 ライラが指示を出すと、チビノーズが一斉にピカチュウとルーナに飛び掛ってきた! ピカチュウとルーナは必死でかわそうとするけど、あちこちから飛んで来るチビノーズの動きを捉える事ができないまま、遂には2匹共チビノーズの体当たり攻撃をもろに受けた!
「ピカチュウ!!」
「ルーナ!!」
 サトシとハルナが叫ぶ。2匹のダメージは大きい。
「フフフ、並大抵のポケモンではこのチビノーズの攻撃をよける事など不可能だ・・・これがデザインポケモンの力なのだ!!」
 ライラの口元が笑った。
「これが、デザインポケモンの力・・・」
 あたしは、その強さを見て背筋が凍った。その時、アユリが前に出た。
「ここは、私が相手をします!」
 アユリの言葉と同時に、ルカリオが身構えた。
「デザインポケモンを倒せるのは、デザインポケモンしかいません! ルカリオ!!」
 アユリの指示で、ルカリオがダイノーズに向けて飛び出した!
「いいだろう・・・ダイノーズ、“ラスターカノン”!!」
 チビノーズが一旦ダイノーズの側に退いて、一気にルカリオへと飛び出した!
「“ボーンラッシュ”!!」
 それを見たアユリが指示を出すと、ルカリオは両手を突き出して拳を合わせてから、横に広げて青いにょい棒を作り出した。その時、チビノーズが複雑な軌跡を描きながらルカリオに襲い掛かった! 四方八方から飛んで来る“ラスターカノン”。でも、ルカリオはそれをまるで後ろに目が付いてるかのように、“ラスターカノン”を流れるような動きでよけていく! そして、近くを通ったチビノーズににょい棒を振って、地面に叩き落した! 最終的には3つのチビノーズ全てが地面に落とされた。
「す、凄ぇ・・・」
 サトシが、そんな事をつぶやいた。それは、あたしも同じだった。
「そのまま本体へ!!」
 アユリの指示で、ルカリオはにょい棒を振り回して、猛スピードでダイノーズに踊りかかった!
「ちっ、行けっ!!」
 ライラの指示で、ダイノーズもルカリオに突撃していく! ルカリオはそのままダイノーズににょい棒を振り下ろす・・・と思ったら、それを地面に突き立てて、高跳びの選手のようにジャンプした! ダイノーズはルカリオを見失ったのか、一瞬動きを止めた。その隙に、ルカリオは空中で1回転してダイノーズの後ろを取った!
「な!?」
「“はっけい”!!」
 ルカリオはにょい棒をしまって、右手の平を思い切りダイノーズに突き出した! 手の平がダイノーズに触れようとした瞬間、手の平が光って爆発! 効果は抜群! ルカリオが着地した瞬間、顔から倒れるダイノーズ。
「くっ、さすがは私の下で働いていた事はあるな・・・」
 ライラがアユリを見て言った。でも、その口元は不自然に笑っていた。
「・・・だが!」
 そう言って、ライラが右手を上げた。すると、森の中からたくさんのグラエナが一斉に飛び出して、あたし達を取り囲んだ! それだけじゃない。たくさんの人影も一斉に出てきた! 黒ずくめの服装。見覚えのあるものだった。
「こいつら・・・昼間のミュウを奪った奴ら!?」
 サトシが声を上げた。そう、間違いなく昼間にミュウを奪ったあの連中と同じ服装だった!
「あんた達だったのね! ここでポケモンを乱獲しているっていうのは・・・!!」
 ヒトミさんがライラをにらみつけた。
「いかにも」
 ライラは笑みを浮かべてうなずいた。
「なら、こっちも黙っていられないわね・・・!!」
 ヒトミさんは、右腕を突き出してバトナージ・スタイラーを構えた。ヒトミさんの視線の先には、夜空を飛ぶズバットが。
「キャプチャ、オンッ!!」
 バトナージ・スタイラーからコマが飛び出した。真っ直ぐズバットに向けて飛んで行く!
「力を貸して!! バトナージッ!!」
 そう叫んで、ヒトミさんは人差し指と中指を立てた右手を一振り。たちまちコマは、ズバットの周りを囲む。でもその時、何匹かのグラエナが一斉に“あくのはどう”を発射! コマが描いた輪に命中して、輪が壊れちゃった! そのせいで、キャプチャは失敗。
「そんな事をさせる隙を与えるほど、我々は甘くはない!!」
「ちっ、やってくれるわね・・・!! バトナージッ!!」
 ライラさんの言葉にも、ヒトミさんは屈しなかった。ヒトミさんはもう一度、右手を一振り。でも、コマは飛ばないで、急に地面に落ちちゃった!? 同時に、バトナージ・スタイラーからピーという音が鳴った。
「エネルギー切れ!? こんな時にっ!!」
 ヒトミさんが唇を噛んだ。
「降伏しろ。お前達はもう抵抗する事はできない!!」
 ライラさんが言うと、チビノーズが浮き上がって、あたし達の周りを回り始める。ジリジリと黒ずくめの集団が迫ってくる。
「そんな事できるか!!」
 サトシは強気に叫ぶ。でも、立ち上がろうとするピカチュウはダイノーズとのバトルでボロボロ。ポッチャマも立ち上がろうとするけど、立てるか立てないかの瀬戸際のポッチャマは、体が安定しない。
「そうか、なら残念だが・・・」
 ライラがそんなサトシを見て言うと、グラエナ達が一斉にうなり声を上げて身構えた!
「ヒカリさんっ・・・!!」
 ハルナが怯えて、あたしの背中に隠れた。どうしよう・・・これじゃ逃げられそうにない・・・あたしのせいで・・・でも、せめてハルナだけでも・・・! そう思ったあたしは、こっそりモンスターボールを取り出した。
「エテボース、“スピードスター”!!」
 そう叫んで、あたしはモンスターボールを投げ上げた。エテボースがあたし達の真上に現れた。
「エイポオオオオッ!!」
 エテボースが回りに“スピードスター”をばら撒いた! 周りに降り注ぐ“スピードスター”に、驚くグラエナ達。チビノーズも下がった。
「抵抗する気か!! 捕らえろ!!」
 ライラがすかさずそう言うと、グラエナ達が一斉に飛び掛ってきた! あたし達を一斉に押さえ込もうとする! グラエナがあたしに迫ろうとした時、あたしはハルナを思い切り突き飛ばした。
「ああっ!!」
 たちまちあたし達は、倒れてグラエナ達に押さえ込まれた。でも、突き飛ばされたハルナは、そうならずに済んでいる。
「ヒカリさん!!」
 ハルナが、あたしの状態に気づいた。あたしは呼びかけた。
「ハルナッ!! 今の内に、逃げてっ!!」
「ええっ!? でも・・・!」
 ハルナが突然の事態に驚いてる間にも、何匹かのグラエナがハルナに飛び掛ってくる!
「エテボースッ!! ハルナをお願いっ!!」
「エイポッ!!」
 あたしの指示で、すかさずエテボースが飛び出した! そしてハルナに迫るグラエナに“ダブルアタック”! グラエナを弾き飛ばした!
「あたしの事はいいからっ!! 早くっ!!」
「・・・っ!!」
 あたしの呼びかけにようやく答えてくれたのか、ハルナはルーナをモンスターボールに戻して、素早くその場を走り去って行った。グラエナが追いかけようとするけど、エテボースが止める。でも、とうとうあたし達と同じようにエテボースも押さえ込まれた。ドサクサに紛れて、ヒトミさんのフカマルも逃げていた事には気づかなかったけど・・・
「決着は付いたようだな。連行しろ」
 ライラが指示すると、あたしは黒ずくめの奴らに両手首を捕まれて、太い手錠を掛けられた。みんなも、同じように太い手錠を掛けられる。そして、立たされた後、抵抗も空しくみんなと一緒にジープへと連れて行かれた・・・

「ヒカリさん・・・ヒカリさんっ・・・!!」
 森の中をひたすら走っていたハルナは、涙を流しながら、そうつぶやいていた・・・


STORY12:THE END
THE STORY IS CONTINUED ON STORY13・・・

[500] 次回予告
フリッカー - 2008年04月29日 (火) 11時43分

 謎の組織『クリエイショニスト』に捕まっちゃったあたし達・・・

「ごめん、みんな・・・あたしがあんな話に乗っちゃったから・・・みんなを巻き込んじゃって・・・」
「いいえ、ヒカリさんは何も悪くはありません。悪いのは、そんな心に漬け込もうとするクリエイショニストなのですから・・・」

 明かされるアユリの過去・・・

「私も、あなたと同じように、強さを追い求めていました。そして、私はクリエイショニストの誘いに乗って、デザインポケモンを手にしました」
「アユリ・・・」
「戦う事しか知らない彼ら・・・戦う事でしか、存在を見出せない彼ら・・・」

 そして、あたし達は脱出を決意した!

「こんな言葉もあるのよ。『奇跡は待ってても起きない。自分達で起こすものだ』ってね!」
「行こうぜ、ヒカリ!!」
「・・・うん!!」

 そんなあたし達を待っているものは・・・

 NEXT STORY:強さの代償(第2部)

「さあ、目覚めろ・・・『セカンド』!!」

 COMNIG SOON・・・



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