[364] SECTION01 ポリゴン三兄弟! |
- フリッカー - 2008年03月12日 (水) 08時19分
あたしはヒカリ。トップコーディネーターになるために旅に出たポケモントレーナー。 初心者用ポケモンをもらいに行った時に打ち解けたポッチャマをパートナーにして、ひょんな事から仲間になった、カントーから来たトレーナー、サトシとタケシと一緒に旅を始めたの。大小いろんな事を経験しながら、あたし達の旅は続く。 これは、そんなあたしが旅の途中に経験した、ある日のお話。
SECTION01 ポリゴン三兄弟!
トバリシティに着いたあたしは、ジムリーダーのスモモと出会った。ジムリーダーとしての自信をなくしていたスモモを見て、あたしは放っておけなくなった。そして、あたしはスモモを励ましてあげようと、ジム戦をする事にした。負けちゃったけど、スモモは元気を取り戻してくれて、サトシとのジム戦を引き受けてくれた。あたしは2人のいいバトルが観たいと思って、2人のジム戦を精一杯応援した。そして、サトシは見事3つ目のバッジをゲットした。 そんな事があったトバリシティを、あたし達は出発した。向かう先は、次のジムがある町、ノモセシティ・・・
* * *
いつものように、あたし達はみんなで道を歩いていた。あたしはポッチャマを抱きながら。 そんないつもと変わらない時間を過ごしていた時、あたし達の左側の草むらで、がさがさと音がした。 「何だ?」 「ポケモンかな?」 あたし達は、思わず足を止めて、草むらの方を見てみた。この時、みんなの左側にいたあたしは、一番草むらの近くにいた。 「クエエエエエエエッ!!」 その時、何か『赤いもの』が突然、草むらの中から声を上げながらあたしの目の前に猛スピードで飛び出して来た! 「っ!!」 その『赤いもの』は、あたしの顔面に思い切りぶつかった! 一瞬、星が見えた。反動で倒れるあたし。 「ヒカリ!!」 「ポチャ!!」 みんなのそんな声が聞こえた。 「いたた・・・何なのいきなり・・・」 そうつぶやきながら、あたしは体を起こしてぶつかった『赤いもの』に目をやった。そこには、地面に落ちて目を回していた『赤いもの』があった。赤と青のツートン模様、丸っこい体の鳥のような体のポケモンだった。その形は、何だか自然のものとは思えないものだった。 「ポ、ポケモン!?」 今まで見た事がない外観のポケモンに、あたし達は目を丸くした。赤いポケモンは、ようやく目を覚まして、顔を横に少し振った。その時、また別の影が草むらから出て来た。それもたくさん。見ると、それはスピアーの群れだった! 「スピアーの群れだ!」 タケシが声を上げた。なんでこんな所に? そんな事を考えてる間に、スピアーの群れに気付いた赤いポケモンは、慌ててその場を浮遊して逃げ出した。スピアーの群れはあたし達には目もくれないで、一斉に赤いポケモンを追いかける。そして、一斉に“ミサイルばり”を赤いポケモンに向けて発射した! 赤いポケモンは“ミサイルばり”の雨を必死でよけながら逃げる。 「あのポケモン、スピアーに襲われてるじゃない!」 あたしは、ようやく状況がわかった。この赤いポケモン、理由はわからないけどスピアーに襲われて、ここまで逃げて来たんだ! ポケモントレーナーとして、あたしはそんな赤いポケモンを放っておけなかった。 「助けなきゃ!!」 「ああ!!」 サトシも、同じ考えだったみたい。あたしとサトシは、すぐに赤いポケモンの後を追いかけた。そんな時、スピアーの群れが撃っていた“ミサイルばり”に、とうとう赤いポケモンが当たって、地面に落ちた! そこにさらに追い討ちをかけようと、スピアーの群れが一斉に赤いポケモンに踊りかかった! 危ない! 「ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」 「ポッチャマーッ!!」 あたしの指示で、ポッチャマはスピアーの群れ目掛けて“バブルこうせん”を発射! 当たりはしなかったけど、それに気付いたスピアーの群れの動きが、一斉に止まった。ポッチャマが、赤いポケモンの側に駆け寄る。そんなポッチャマの姿に、赤いポケモンは目を丸くしていた。スピアーの群れが、赤いポケモンとポッチャマを取り囲んだ! 「気をつけろヒカリ!!」 「ダイジョウブ!!」 そう言ったサトシに、あたしはそう答えた。 「ポッチャマ、もう1回!!」 「ポッチャマアアアアアアッ!!」 ポッチャマは勢いよくジャンプして、体を軸に縦回転しながら“バブルこうせん”を発射! そう、いつか練習したあのパフォーマンス! “バブルこうせん”は、周りを囲むスピアー達を一気になぎ払った! 「ピカチュウ、“10まんボルト”だ!!」 「ピィィィィィィカ、チュウウウウウウウッ!!」 さらにピカチュウが思い切り自慢の電撃をお見舞いした! 直撃! ポッチャマとピカチュウの攻撃で懲りたのか、スピアーの群れは一目散に逃げ出して行った。 「やったぜ!!」 サトシがガッツポーズを取った。あたしはすぐに、赤いポケモンに目をやった。 「ダイジョウブ?」 あたしは赤いポケモンの側に駆け寄った。しゃがんで見てみると、たいしたケガはないみたい。あたしはほっとした。すると、赤いポケモンは不思議そうな目であたしの顔に近づいて、あたしの顔をまじまじと見つめた。 「?」 その行動に、あたしは一瞬、何をしようとしてるのかわからなかった。赤いポケモンは、同じようにサトシやタケシの顔も見て回る。そして最後にポッチャマとピカチュウ。 「ポチャ?」 「ピカ?」 ポッチャマとピカチュウも首を傾げる。 「なあ、タケシ。これって・・・ポリゴンじゃないか?」 「ああ、確かに似ているな・・・でも、体はこんなにツルツルじゃなかったぞ?」 サトシとタケシが思い出したようにそう話していた。『ポリゴン』? このポケモンの名前? 「『ポリゴン』って?」 「世界で初めて人工的に作られたポケモンさ」 あたしの質問に、タケシがそう答えた。人工的に作られたって言われても、あたしはピンと来なかった。 「ドライ〜? どこ行ったの〜?」 その時、どこからか女の人の声がした。その声に、赤いポケモンが反応した。見ると、そこに1人の女の人が現れた。見た所はどこにでもいそうな、ごく普通の女の人。 「あっ! ここにいたんだ。もう、すぐどこか行っちゃうんだから」 女の人は赤いポケモンを見つけて、ほっと笑みを浮かべた。赤いポケモンも、女の人の側に寄って行った。この女の人、赤いポケモンのトレーナーかな? 「ごめんね、君達。ドライが迷惑かけちゃったかな?」 女の人はあたし達にそう言って微笑んだ。 「いいえっ!!」 すると、真っ先にタケシが目の色を変えて前に出て、女の人の両手を取った。女の人は目を丸くした。やれやれ、またいつものアレが始まった・・・ 「そんな事はありません!! 自分達はこのポケモンが野生ポケモンに襲われていたのを助けただけです!!」 何だか、タケシが赤いポケモンを助けたような事言っちゃってる・・・ホントはあたしなのに・・・ 「自分は、タケシと言います!! あなたのお名前は・・・」 「ゲイル、だけど・・・」 女の人は苦笑いしながら答えた。 「なんと、お美しい名前でしょう!! ゲイルさん、是非自分と・・・ぐっ!?」 すると、いつものようにタケシの背筋に強烈な一撃が走った。 「シ・・・ビ・・・レ・・・ビ・・・レ・・・」 グレッグルの“どくづき”。タケシの顔はたちまち青ざめて、その場にバタリと倒れた。そんなタケシを、グレッグルがズルズルと引っ張ってその場から離れていった。唖然とする女の人。一瞬、場が気まずい空気に包まれた。 「・・・今の人、何者?」 「い、いえ、タケシはきれいな女の人には目がないんです・・・」 女の人の質問に、サトシが苦笑いしながら答えた。 「オホン! 君達、もしかしてポケモントレーナーなの?」 女の人は咳払いをして、改めてそう言った。 「はい。俺、サトシです」 「ピカ、ピカチュウ!」 「あたし、ヒカリです」 「ポチャマ!」 あたし達はそれぞれ自己紹介した。 「そんな、敬語なんて使わなくていいよ。あたし、堅苦しいのは好きじゃないだからね」 「え、でも・・・」 「いいのいいの。あたしがそう言ってるんだから」 あたしは女の人の言葉に戸惑ったけど、女の人はそう言ってウインクした。 「う、うん」 そう言うなら、とあたしは心をほぐしてうなずいた。 「あたしはゲイル。こっちはドライ」 「クエッ!」 女の人が自己紹介すると、赤いポケモンも笑みを浮かべて答えた。 「じゃあゲイルは、このドライのトレーナーなの?」 「いいや、あたしはポケモントレーナーじゃないよ。あたしは『SE』なの」 「『SE』?」 聞き慣れない言葉に、あたしは首を傾げた。 「『システムエンジニア』の略だよ」 すると、後ろからタケシが何事もなかったかのようにぬっと出て来てそう説明した。 「復活早っ!!」 あたしは思わず、そう言っちゃった。 「あたしはね、コンピューターのプログラムとかソフトウェアとかを作ってるの。それを活かして、世界初の人工ポケモン、ポリゴンのプログラムの研究をしてるって訳! グッジョブだね!!」 ゲイルは胸を張ってそう言った。そんな自慢気なゲイルを見て、あたしは少し呆れた。それはサトシも同じようだった。 「じゃあドライって、やっぱりポリゴンなの?」 サトシが、すぐにそんな疑問をゲイルさん・・・もとい、ゲイルにぶつけた。 「ポリゴン・・・正確に言うとウソになるね」 ゲイルの表情が変わった。 「ウソ?」 「これはポリゴン2。ポリゴンをアップグレードしたバージョン。まあ、『進化』って言った方が、ポケモントレーナーにはわかりやすいかな?」 「ポリゴン2?」 初めて聞く名前に、あたし達は首を傾げた。 「ポケモン図鑑にも、そのデータは載ってるはずだよ。見てごらん」 ゲイルに言われた通り、あたしはポケモン図鑑を取り出した。 「ポリゴン2、バーチャルポケモン。ポリゴンの進化系。惑星開発用のプログラムがインストールされている。真空の宇宙でも活動できる」 図鑑の音声が流れた。やっぱり、データは入ってた。 「ドライはね、AIを積んだから好奇心旺盛で、外に出たらいつも何かしらトラブっちゃうの。さっきの話聞いたら、君達にも迷惑かけちゃったみたいだね。旅するポケモントレーナーなんて、めったに会わないからね」 そうか、だからあの時ドライはあたし達を不思議そうに見てたんだ。 「こんな感情豊かなポケモンになったのも、あたしの努力のお陰! さすがあたし!! グッジョブだね!!」 ゲイルはまた胸を張ってそう言った。 「アハハ・・・」 自慢気なゲイルの姿を見て、呆れたあたしは苦笑いしてごまかした。こんな陽気な人が、ポケモンの研究をしているの・・・? 馴染みやすいのはいいけど、研究者がこんなんでいいのかな・・・? 「ええ、グッジョブです!! 今度はぜひとも、2人で愛のプログラムを・・・!!」 タケシがまた、目の色を変えてゲイルの手を取って、そうアピールした。でも、そうしてるとまた・・・ 「ぐっ!? シ・・・ビ・・・レ・・・ビ・・・レ・・・」 グレッグルの“どくづき”が来た。またタケシの顔が青ざめて、タケシはバタリと倒れた。そんなタケシを、グレッグルはまたズルズルと引っ張ってその場から離れていった。また場が気まずい空気に包まれた。 「・・・ねえ。まさかあのグレッグル、嫉妬してるの?」 「え?」 「オホン! そんな事はどうでもいいんだ。ところで、あたしの研究室に来てみない? 最先端の凄いものを見せてあげるから!」 ゲイルはあたし達にそんな提案をした。 「本当?」 サトシが目の色を変えた。 「見てみたい!」 最先端の凄いものって言われると、あたしもそれが何なのか見てみたくなった。 「じゃ、ついておいで」 ゲイルはそう言って、あたし達を案内した。
* * *
ゲイルについて行って、たどり着いた場所は、どこにでもありそうなごく普通の家だった。 「さあ、着いた。ここだよ」 ゲイルは足を止めて、家を見てそう言った。 「え? ここ?」 あたしは思わずそう聞いちゃった。研究室って言うからには、もっと大きい立派な建物なんじゃないの? 「そうだよ。さ、入って入って!」 ゲイルはそれを全然気にしないで、あたし達を案内する。ドアを開けて中に入ると、そこにはやっぱりごく普通の玄関。人気はなさそう。そんな玄関を通り過ぎるあたし達。廊下を見ても、どこにでもありそうなただの家にしか見えない。 「ホントにここなの?」 あたしは念のため、もう一度ゲイルに聞いてみた。 「さっきからなんでそんなに疑ってるの? 当たり前じゃない!」 ゲイルは普通にそう答えた。やっぱり、ここが研究室である事に間違いはないみたい。秘密の地下室があって、そこに大きな施設とかあったりするのかな? 「さあ、見てごらん」 ゲイルは、部屋のドアを開けた。その光景が、あたしの疑問を晴らした。 「わあ〜っ!」 その広い部屋には、いくつかの大きな機械が置いてあった。外が普通の家みたいに見えるとは思えないほど。 「ここで研究しているの?」 「そうだよ。ここがあたしの研究室。凄いでしょ!!」 サトシの言葉に、ゲイルがまた胸を張って答えた。すると、部屋の奥から何かが出て来た。見ると、それは2匹のポケモンだった。1匹は、ドライと同じポリゴン2。色は少し薄い。もう1匹は、ポリゴン2に似てるけれど大きくてカクカクした体の、見るからに人が作ったようなポケモンだった。 「あれ、あれって・・・」 そんな事をあたしは思わずそんな声を出した。ここにもポケモンがいたんだ、と思って。 「あっ! ポリゴンじゃないか!」 サトシが真っ先に声を上げた。そしてカクカクしたポケモンの側に行った。 「ご名答! これが君の言ってたポリゴンだよ」 ゲイルはすぐに答えた。 「これがポリゴンね!」 あたしも、側に行って見てみた。そして、ポケモン図鑑を取り出した。 「ポリゴン、バーチャルポケモン。世界で初めて人工的に作り出されたポケモン。電子空間を移動できる」 図鑑の音声が流れた。 「ドライの兄弟達よ」 「兄弟?」 ゲイルの言葉を聞いて、あたしは驚いた。するとドライは、すぐに2匹の元へ向かって行った。そして、2匹の真ん中に入って嬉しそうに何かやり取りしてる。 「そう。この子達が、あたしが研究している『ポリゴン三兄弟』、ツバイ、ドライ、フィーアよ」 ゲイルはポリゴンから順に指差しながら、3匹を紹介した。 「ポチャ!」 ポッチャマがポリゴン、ツバイの前に出て、右手を上げて声をかけた。でも、ツバイはポッチャマをじっと見つめたまま動かない。 「・・・ポチャ?」 その反応に、ポッチャマは目を疑った。目の前で手を振ってみても、ツバイはまばたき1つしない。 「アハハ、ごめん。ツバイはプログラムが初期型なんだ。言われた事しか実行できないから、挨拶くらいじゃ何も反応しないよ」 それを見たゲイルは、苦笑いを浮かべながらそう説明した。それでも、ポッチャマにはピンと来なかったみたいで、ポッチャマは首を傾げていた。 「そうなんだ・・・」 ポケモンとは言うけど、何だかロボットみたい。あたしはそう思った。こんなポケモンもいるんだ・・・ 「う〜ん、そうだ! 君達、ポケモントレーナーなら持ってるポケモン達とポリゴン三兄弟をご対面させてみない? 三兄弟は『本物の』ポケモンとあまり会った事がないからね。いい刺激になると思うんだ」 ゲイルがふと、そんな事を提案した。 「いいな、それ!!」 サトシがすぐに嬉しそうな声を上げた。 「よし!! そうと決まったらみんな、出て来い!!」 サトシは早速、持ってるモンスターボールを全部その場に投げ上げた。5個のモンスターボールから、ナエトル、ムクバード、ヒコザル、ブイゼルが元気よく飛び出した。そして・・・ 「っ!!」 最後の1匹が、サトシの頭にふらふらと落ちてきた。そう、それはサトシの手持ちの中で一番新しいグライガー。たちまちサトシは、グライガーの下敷きになった。グライガーのドジっぷりは相変わらずみたい。 「よ〜し、あたしも!! みんな、出ておいで!!」 あたしも3個のモンスターボールを取り出して、その場に投げ上げた。ミミロル、パチリス、エテボースが元気よく飛び出した。 「ウソッキー、グレッグル、ピンプク!!」 タケシも持ってる3個のモンスターボールを投げ上げる。飛び出してきたのはウソッキー、グレッグル、ピンプク。モンスターボールから出て来たみんなを見て、ドライとフィーアは目を丸くした。 「さ、みんな、庭に出て! 広い場所の方がいいでしょ」 ゲイルがそう言って、部屋の人が出入りできる大きな窓を開けると、みんなは喜んで庭へと出て行った。 「ほら、3匹とも行った行った!」 ポリゴン三兄弟もゲイルに言われて嬉しそうに庭に出て行った。ツバイは相変わらず無表情のままだったけど。ドライとフィーアはみんなと楽しそうにやり取りした後、すぐにみんなと遊び始めた。相変わらず動きを見せないツバイは、ゆっくりと側に来たグレッグルと正面からにらめっこ(?)状態。何もない庭だけど、みんなはとても楽しそうだった。そんなみんなを、あたし達も庭に出て眺めていた。そうしているだけで、心が和やかになる。 「結構なじんでるじゃない、ポリゴン三兄弟」 ゲイルはそんなみんなの様子を見て感心していた。 「ポケモン同士だから、みんな仲良くなれるさ」 「そういうものなのね。さすがポケモントレーナー、ポケモンの事はよくわかるんだね」 「いやいや、それほどでも・・・」 サトシの言葉にもゲイルは感心していた。サトシはちょっと照れた表情を見せた。 「ポリゴン2には、さっきも言ったようにAIが搭載されているから、学習能力もあるの。つまり、新しいしぐさや感情を1人で覚えられるって訳。今ああやって触れ合ってる間にも、ドライとフィーアはいろんな事を学んでるはず」 「今やってる事が、ドライ達の成長にも繋がっている、って事か」 「そういう事。それもあたしの努力の賜物(たまもの)! さすがあたし!! グッジョブだね!!」 タケシの言葉を聞いて、ゲイルさんがまた胸を張って、自慢気に言った。それを見たあたしは、また呆れた。 「でも、どうして人工的にポケモンを作ったの?」 あたしはちょっと気になる事があったから、苦笑いを抑えながらそう聞いた。 「ポリゴンを作った理由? それは単純明快。人の役に立てるため。ポリゴンは息をしていないから、活躍する場所を選ばない。だから、使い道はたくさん。そして最終的には、宇宙開発に対応できるようにするのが目標なの!」 「へぇ、凄〜い!」 そんな言葉を聞いて、あたしは心が躍った。宇宙開発なんて言葉を聞いて、ロマンを感じちゃった。 「宇宙でポケモンが活躍する日も近いって訳か!」 それはサトシも同じみたい。 「そういう事! そんな未来のために、あたしはプログラム開発に日々努力してるって訳!! う〜ん、グッジョブだね!!」 「アハハ・・・」 ゲイルはまた胸を張った。そんなゲイルを見たあたしは、また呆れて苦笑いした。 「クエッ!」 すると、あたしのすぐ側で声がした。見ると、目の前にはドライがいた。 「ドライ?」 一瞬、どうしたのかと思った。すると、ドライはその場で足踏みするように、体を揺らした。まるで、誘ってるみたい。 「もしかして、『一緒に遊ぼう』って言ってるんじゃないか?」 「え? あたしに?」 サトシの言葉を聞いて、あたしはちょっと驚いた。その隙に、ドライはあたしの帽子を素早く取った! 「あっ、ちょっと!」 「クエーッ!!」 あたしがそう言うとすぐに、ドライは笑みを浮かべながら逃げ出した! 「待って〜っ!! 帽子を返して〜っ!!」 あたしはすぐにドライを捕まえようと追いかけた。でも、なかなかすばしっこい。パチリスほどじゃないけど、チョコマカと動き回ってなかなか捕まえられない。あたしの周りをグルグルと回ったりして、目が回りそう。そして、ドライの動きが止まった。にらみ合うあたしとドライ。今がチャンス! 「この〜っ!!」 あたしはドライに飛び付いて捕まえようとした。でも、ドライはそれをかわした。 「!?」 あたしは思い切り、頭から転んじゃった。一瞬、星が見えた。顔を起こすと、そんなあたしをドライは「ケケケケケケッ!!」と笑っていた。すると、みんなの笑い声も聞こえてきた。気がついたら、あたしとドライの追いかけっこはみんなが見ていた。 「ドライ、ヒカリが気に入っちゃったみたいだな」 タケシが、そんな事を言った。あたしは、立ち上がってドライと目を合わせた。すると、あたしも何だかおかしくなってきた。 「フフフ・・・アハハハハハハッ!!」 あたしも笑うのが止められなくなって、ドライと一緒に笑った。 「あんなしぐさ、プログラムにはなかった・・・あそこまでドライのAIが成長してたなんて・・・!」 ゲイルは、そんなドライの動きに目を丸くしていた。その時!
どこからともなく、大きなネットが落ちてきて、ツバイとフィーアに覆いかぶさった! 「!?」 あたし達は現実に引き戻された。ツバイとフィーアが閉じ込められたネットは、空に持ち上げられる。ネットをぶら下げているロープをたどってみると、ニャースの頭を象った、見慣れた気球が。 「ツバイ!? フィーア!?」 「わーっはっはっは!!」 ゲイルの驚きの声をあげるとすぐ、聞き慣れた高らかな笑い声が聞こえて来た。 「あんた達、何者なの!!」 「『あんた達、何者なの!!』の声を聞き!!」 「光の速さでやって来た!!」 「風よ!!」 「大地よ!!」 「大空よ!!」 「天使か悪魔か、その名を呼べば!!」 「誰もが震える魅惑の響き!!」 「ムサシ!!」 「コジロウ!!」 「ニャースでニャース!!」 「時代の主役はあたし達!!」 「我ら無敵の!!」 「ロケット団!!」 「ソーナンス!!」 「マネネ!!」 いつものように自己紹介するあいつら――間違いなくロケット団だった。 「ロケット団!!」 あたし達はいつものように声をそろえて叫んだ。 「ロケット団って何者?」 「ポケモンを盗んで、悪い事をしようとしてる奴らなんだ!!」 「ええっ!?」 サトシの説明に、ゲイルは驚いた。 「そんな訳で、このポリゴンとポリゴン2はいただいていくのニャ!!」 ニャースが自信満々に叫んだ。 「ちょっとコジロウ、もう1匹ポリゴン2がいるじゃない!」 ムサシがドライに気づいて、ドライを指差した。 「あっ、ホントだ! なら、あいつもゲットするしかないぜ!」 コジロウはそう言って、何やらバズーカみたいなのを取り出して、構えた。 「コジロウ、目標を狙い撃つ!!」 そんな訳のわからない事を言って、コジロウは引き金を引いた。すると、バズーカからネットが発射されて、ドライに向けて飛んで行く! ドライは驚いてあたしの帽子を落とした。 「危ない!!」 今ドライを助けられるのは、側にいるあたししかいない! あたしはとっさにドライの前に出た。 「ああっ!?」 すると、ネットは容赦なくあたしに覆いかぶさった。そして、あたしはネットごと空に持ち上げられた。 「ヒカリ!!」 「クエーッ!!」 みんなのそんな声が聞こえた。 「ちょっとコジロウ! ジャリガール捕まえてどうすんのよ!」 「向こうが動いたんだよ! こうなったらもう1回だ!!」 言い合いをしながら、コジロウはもう一度バズーカを構えた。 「二度目はないぜ!!」 そう言って、またドライを狙ってネットを発射した! 「ドライ、逃げて!!」 あたしは思わず、そう叫んでいた。 「させるか!! ピカチュウ・・・」 サトシは、それを止めようとピカチュウに指示を出そうとしていた。でも、先に動いたのはドライだった。ドライは、飛んで来るネットを目にも止まらない動きでかわした! 「な!?」 これにはコジロウも目を丸くした。 「あれは、“こうそくいどう”だ!!」 タケシが叫んだ。 「グッジョブよ、ドライ!! 今度はみんなを助けてあげて!!」 ゲイルが叫ぶと、ドライはうなずいてまっすぐこっちに向かって行った! 「“シグナルビーム”!!」 ゲイルの指示で、ドライはこっちの方に向けて七色に輝く光線を発射! ネットをぶら下げているロープに当たって、ロープを切り裂いた! 「!?」 突然の事態に、ロケット団も驚く。でも・・・ロープを切られたネットは当然、あたし達ごと地面に吸い込まれていく。 「きゃああああああっ!!」 このままじゃ、地面にぶつかる! あたしは、悲鳴を上げるしかなかった。 「ポッチャマーッ!!」 すると、落ちていく先に“バブルこうせん”が飛んで来た。それがクッションになって、あたし達はふわりと着地できた。ポッチャマがやってくれたみたい。あたしはほっとした。あたしはネットをほどいて、すぐにネットから出た。ツバイとフィーアも、ネットをほどいて出て来た。 「ヒカリ、大丈夫か?」 「うん、ダイジョウブ」 サトシ、タケシと合流したあたしは、そう答えた。そして、ドライが落としたあたしの帽子をかぶる。 「ツバイ、フィーア、大丈夫だった?」 ツバイとフィーアがゲイルの側に駆け寄った。ケガもないツバイとフィーアを見て、ゲイルはほっとした。 「く〜っ!! こうなったら力ずくでもゲットしてやるんだから!! 行くのよ、ハブネーク!!」 カッとなったムサシは、すぐにモンスターボールを投げて、ハブネークを繰り出した。 「行け、マスキッパ!!」 コジロウもマスキッパを繰り出す。でも、マスキッパはいつものようにコジロウに喰らい付いた。 「いて〜っ!! 違う違う!! あっちだって!!」 相変わらずもがき苦しむ(?)コジロウ。 「ピカチュウ・・・」 「サトシ、ここはあたしにやらせて」 ピカチュウに指示を出そうとしたサトシを、ゲイルが止めた。 「えっ?」 「あの悪党どもにポリゴン三兄弟の力を見せてやるから!」 ゲイルの言葉に答えるように、ポリゴン三兄弟は横1列に並んで身構えた。 「やってやろうじゃないの!! ハブネーク、“ポイズンテール”!!」 「マスキッパ、“タネマシンガン”!!」 真っ先にロケット団が攻撃を仕掛けてきた! ハブネークが“ポイズンテール”で踊りかかって、マスキッパが“タネマシンガン”を発射! 「ドライ、フィーア、“テクスチャー2”!!」 ゲイルが指示すると、ドライとフィーアが前に出た。すると、ドライとフィーアの色が変わり始めた! ドライは土色に、フィーアは真っ赤になった! 「色が変わった!?」 それを見て、あたしは驚いた。色が変わるポケモンなんて、初めて見た。ハブネークが、尻尾をドライに振り下ろした! 直撃! でも、ドライは平気で立っている。そして、“タネマシンガン”をもろに受けたフィーアも、涼しい顔をしている。あまり効いてない? 「ぜ、全然効いてないぞ!?」 コジロウは驚きを隠せない。 「“テクスチャー2”は、受けるわざの効果が今ひとつになるように自分のタイプを変えるわざ。今、ドライはじめんタイプ、フィーアはほのおタイプ。あんた達の攻撃が効かないのは当たり前!!」 ゲイルは自慢気に言い放った。 「タイプを変えられるなんて・・・」 あたしはタネ明かしにまた驚いた。タイプを変えられるポケモンがいるなんて、初めて知った。 「今度はこっちから!! ツバイ、“テクスチャー”!!」 『2』があるならただの“テクスチャー”もあると思ったけど、やっぱりあった。今度はツバイが前に出た。すると、ツバイの体も色が変わり始めた! 変わった色は赤紫。 「続けて“サイケこうせん”!!」 そして、ツバイは目から“サイケこうせん”を発射! それは、いつも見るよりもパワーがありそうに見えた。ハブネークに命中! 効果は抜群! たちまち気球に弾き飛ばされるハブネーク。 「ハブネーク!! な、なんてパワーなの!?」 そんなハブネークを見て、動揺するムサシ。 「当然だよ、“テクスチャー”は、自分が持ってるどれかわざのタイプに自分のタイプを変えるわざなんだから! ツバイはエスパータイプになったから、“サイケこうせん”のパワーが上がったって事!! グッジョブだよ、ツバイ!!」 ゲイルはまた胸を張って言い放った。そんな言葉を聞いても、ツバイは反応1つしない。 「こうなったらマスキッパ!! 茶色のポリゴン2に“タネマシンガン”だ!!」 ロケット団が反撃に出る。マスキッパが、ドライに向けて“タネマシンガン”を発射! ドライはそれをもろに受けちゃった! 効果は抜群! 「ああっ!!」 あたしは思わず、そんな声を上げちゃった。タイプを変えた裏を突かれた。ドライはかなりダメージを受けてる! 「心配ご無用! ドライ、“じこさいせい”!!」 すると、ドライの体が光り始めた。すると、ドライはたちまち体力を回復して、元気を取り戻した。 「そんな・・・回復までするのかよ・・・!?」 コジロウは完全に動揺してる。 「お返しよ!! ドライ、“シグナルビーム”!!」 ドライが“シグナルビーム”で反撃! 命中! 効果は抜群! マスキッパも、気球に弾き飛ばされた。 「これでトドメよ!! ツバイ、ドライ、フィーア、“トライアタック”!!」 ゲイルの指示で、ポリゴン三兄弟は横1列に並んだ。そして、それぞれ三角の板を作り出して、気球に向けて発射した! 3枚の三角の板は、気球に直撃! 大爆発が起きた! 「く〜っ!! 前は1匹ゲットするのにはうまく行ったのに〜っ!!」 「でも、今回は3匹だったからなあ・・・」 「3人寄ればナントカの知恵、だニャ・・・」 「やな感じぃぃぃぃぃっ!!」 いつものように、そう叫び声を上げながら、ロケット団は空の彼方へ消えていった。そんなロケット団を見送ったポリゴン三兄弟の色が元に戻った。 「やったぜ!!」 サトシがガッツポーズを取った。 「凄かったじゃない、みんな!!」 あたしも、ポリゴン三兄弟の強さに感心しちゃった。すると、ドライがあたしの方を見て答えてくれた。 「・・・思えば、『ポケモンバトル』ってものをしたのは、今が初めてだったなあ・・・さすがポリゴン三兄弟!! そしてあたし!! グッジョブだね!!」 ゲイルはまた胸を張って、自慢気に言った。すると、ドライとフィーアも飛び上がって喜んだ。ツバイは相変わらず無表情だったけど。 「アハハ・・・」 あたしはそんなゲイルにまた呆れて、苦笑いした。 「そうだ! これからもっと凄いものを見たくない?」 ふと、ゲイルはそんな事を提案した。 「もっと凄いもの?」 あたしは首を傾げた。 「ちょうどこれからやろうとしてた所だったから、一休みしたら見せてあげる! いいよね、フィーア?」 ゲイルがフィーアに聞くと、フィーアははっきりとうなずいた。あたしは、『もっと凄いもの』が何なのか、全然予想がつかなかった。それって、フィーアと関係あるのかな?
TO BE CONTINUED・・・
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