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[311] ヒカリストーリー STORY10 夢の続き(後編)
フリッカー - 2008年02月19日 (火) 17時10分

 皆さんの応援のお陰で、ヒカストは10作目を迎えられました! ご愛読ありがとうございます!

 さて、『夢の続き』もいよいよ後編へ! その結末を、目撃せよ!!

 前編はこちら→http://bbs4.sekkaku.net/bbs/?id=watafa&mode=res&log=24

[312] SECTION04 失意のヒカリ! ポッチャマの決意!
フリッカー - 2008年02月19日 (火) 17時12分

 あたしはヒカリ。トップコーディネーターになるために旅に出たポケモントレーナー。
 コンペキタウンにやって来たあたし達は、そこで開かれるコンテストに出る女の子ハルナと、あたしとコンテストを観戦しようと誘うノゾミと出会った。でも、そんなあたしの前に、メイルっていう女の人が現れた! メイルはあたしを仲間に誘ったけど、あたしは当然断った。そうしたら、メイルはサトシに『操りリング』って首輪を付けて操って、あたしと戦わせた! あたしは助けようと努力したけど、本気を出せないまま追い詰められていく。そして、メイルはそんなあたしに失望して、盗んだあたしのコンテストパスを切り裂いて、そのまま去って行っちゃった・・・
 あたしはサトシを助けられなかった・・・それに、もうコンテストにも、出られない・・・!


SECTION04 失意のヒカリ! ポッチャマの決意!


 あたし達が泊まっていたポケモンセンター。
 あたしは1人、部屋の中にこもっていた。外では、タケシ達が警察の取調べに答えていたみたい。でも、そんな事はどうでもよかった。
「うっ・・・うっ・・・うっ・・・」
 あたしは部屋のベッドに倒れて、枕に顔を伏せながらひたすら泣いていた。枕が涙で濡れているのを感じる。
「ポチャ・・・」
 そんなあたしを、ポッチャマがただ1人見つめていた。ミミロル、パチリス、エテボースはバトルでのケガの手当てを受けている最中。だから、バトルでは倒されなかったためにダメージが少なかったポッチャマだけがここにいるって訳。
「・・・ポチャ」
 ポッチャマがあたしの肩を優しくゆすった。あたしを慰めてくれているように。
「ありがとう・・・ポッチャマは、慰めてくれるんだね・・・」
 あたしは涙目の顔をそっと横に向けて、ポッチャマを見た。ポッチャマが心配しているのがわかる。
「だけど・・・だけど・・・!」
 あたしの心の中に、止められない悔しさが湧き上がってくる。操られたサトシを助けられなかった事。そして、もうコンテストに出られなくなっちゃった事・・・あたしは、右手に握ったママからもらったお守りのリボンを見た。ママがコンテストで初めて優勝した時にもらったリボン。こんなものをお守りとしてくれたママに、なんて言って謝ればいいの・・・? それに、今まで一緒にがんばってくれたみんなにも・・・あたしは、自分の力のなさを思い知った。
『それほどの実力しかないのならば、コンテストで失敗したのも当然です。所詮は親の七光だけでコンテストに出ているようなものですか・・・残念です』
 あの時のメイルの言葉が、深々と胸に突き刺さって、じんじんと痛む。
「ごめんね、ポッチャマ・・・もう、コンテストには出られない・・・全部、あたしが悪いの・・・!!」
 そう言って、あたしはまた顔を枕に伏せた。そして、止めようのない涙をまた思い切り流した。
「ポチャ・・・」
 ポッチャマのそんな声が聞こえた。その時、コンコンとドアを叩く音が聞こえた。そして、ドアが開いた。
「ヒカリさん」
 入って来たのはルーナを連れたハルナだった。手には小さなお皿を持っていた。それには、いくつかのサンドイッチが盛り付けられていた。
「サンドイッチ、持ってきましたよ! これ食べて元気出してください!」
 ハルナは笑顔でそう言って、あたしにお皿を差し出した。でも、あたしはそのお皿を取る気になれなかった。
「・・・どうしたんですか? 食べないんですか?」
「・・・別にいい」
 あたしはそう言って、体ごとハルナから背けた。
「そんなに落ち込まないでくださいよ! ハルナ、ヒカリさんはあんなものじゃないって信じてますから!」
 信じる、か・・・でも、あたしはそんな事言われるほど、強くなんてない・・・
「あの時は本気を出せなかっただけなんですよね! 本当は強いんですよね! だからヒカリさん・・・!」
 そんな事を言われると、あたしは何だかムカツイてきた。
「おだてないで・・・!」
 あたしは思わず、体を起こしてそんな事を言っちゃった。
「え!?」
「ポチャ!?」
 ハルナとポッチャマは目を丸くした。
「あたしはそんな、ハルナが思ってるほど、凄い人なんかじゃないよ・・・!」
「そ、そんな事ありません!! ヒカリさんは凄いですよ!!」
「凄いとか・・・信じるとか・・・そんな事言われるような人じゃないよ!!」
「!!」
 あたしの言葉に、ハルナは少し下がった。
「ハルナは、あたしのママに憧れてるんでしょ・・・? だったら、そっちを尊敬して・・・あたしは、尊敬されるような人じゃないよ・・・」
「そんな事ありま・・・」
「リボン1つしか取ってないあたしに、敬語なんて使わないで!!」
 あたしはとうとう、そうハルナに怒鳴っちゃった。
「いい加減にしてよ・・・もうほっといて・・・!!」
 あたしはそう言って、またベッドに横になって毛布を被った。
「ヒカリさん・・・」
 ハルナはどうしていいかわからなくなったのか、しばらくその場にいた後、ゆっくりと部屋を出て行った。
「・・・! やっちゃった・・・!」
 バタンとドアが閉まった時、あたしはようやく自分が言った事に気付いた。せっかくあたしを応援してくれる人だったのに、逆にあんなひどい事言っちゃった・・・あんな事言われて、ハルナは傷ついたかもしれない・・・
「バカ・・・あたしのバカッ!!」
 あたしはそんな自分が嫌になった。あたしは毛布の中で、頭を抱えてそう自分に言った。そして、また涙がこぼれた。




 教えて、ママ・・・あたしって、やっぱりコンテストには向いていないの・・・?




 どれくらいの時間が経ったのかな。またドアをノックする音が。
「ヒカリ、いいかい?」
 この声は、ノゾミ? あたしは、体を起こした。すると、ドアが開いた。そこには、ノゾミだけじゃなくて、タケシとハルナ、ルーナやピカチュウ、手当てが終わったのか、ミミロル、パチリス、エテボースもいる。
「ヒカリさん・・・さっきは、ごめんなさい・・・ヒカリさんみたいな人も、落ち込む事があるなんて思ってなくて・・・」
 ハルナが、真っ先にルーナと一緒にあたしに頭を下げた。
「あ・・・こっちこそ、ごめん・・・あんな事言っちゃって・・・みんなが励ましてくれるのは嬉しいけど・・・」
 とりあえず、あたしも謝った。
「ヒカリ、落ち込む事はもうないよ。警察が今、メイルを全力で捜してるんだ。コンテストパスもサトシも、きっと見つけてくれるさ」
 ノゾミがあたしにそう言った。
「え・・・でも・・・コンテストパスって、作り直す事って・・・」
「それは『なくした』時の話。『壊れた』時なら、壊れたコンテストパスを持っていけば、データを復旧してもらえるんだ」
 あっ、そういえばそうだったっけ・・・でも、それはそれで不安になる。
「ポチャ・・・!」
 そんなノゾミの言葉に、ポッチャマが反応した。
「・・・でも、それって、コンテストパスが戻ってこなかったら、どうにもならないんでしょ? もし見つからなかったら・・・」
 あたしの不安が、自然と言葉に出た。壊れたコンテストパスを持っていけば、データを復旧してもらえるって事は、コンテストパスが戻ってこなかったら、何もできない。これじゃ、なくしたのと同じ・・・
「きっと見つかりますよ! そう信じましょうよ!」
 ハルナが前に出た。
「それに、もし見つからなくたって、コンテストに二度と出られなくなる訳じゃありませんよ! もう一度作って、最初からやり直せばいいんですよ! どっちにしても、まだ続けられますよ! だから・・・」
 確かにそうだけど・・・せっかくゲットした1つ目のリボンが、無駄になっちゃう・・・それだけは・・・それだけは・・・!
「でも・・・必ずコンテストパスが戻ってくるって保証はあるの?」
「・・・!」
 あたしのそんな質問には、誰も答えなかった。
「戻ってこなかったら、あたしが初めてゲットしたリボンはどうなるの・・・!? 1からやり直したら、無駄になっちゃうじゃない・・・がんばってゲットした、初めてのリボンが・・・そんなの・・・そんなの嫌・・・!!」
 悔しさで、涙がまたこぼれる。
「それに、こんなあたしじゃ・・・サトシも助けられなかったあたしじゃ、コンテストになんて出られないよ・・・!! 出たとしても・・・みんなに笑われるだけよ・・・やっぱりあたし、コンテストに向いてないのかもしれない・・・うっ・・・!!」
 あたしは両手で顔を覆って、みんなに背を向けた。
「ヒカリさん・・・」
「やっぱり、初めて手にしたリボンには、思い入れがあるんだな・・・無駄になるのが嫌なのもわかる・・・」
 ハルナとタケシが、そんな事をつぶやいた。あたしのポケモン達が、不安な表情になった。
「・・・まさかヒカリ、メイルの言った事を本気で信じてるの・・・!?」
 ノゾミが声を上げて、前に出た。
「うっ・・・うっ・・・」
 あたしは、背を向けたまま何も答えないで泣き続けた。
「あの言葉を信じちゃダメだ!! あんな人の言葉に惑わされちゃダメだ!!」
「・・・言ってるのは全部本当なんだもん・・・嫌でも信じちゃうよ・・・」
 あたしは泣きながらそう答えた。
「ノゾミはいいよ・・・あたしより凄い所がいっぱいあるし、あたしにもいろんな事を教えてくれる。それに比べたら、あたしなんて・・・」
 あたしのふと出た思いが、自然と言葉に出た。
「・・・ヒカリ!! こっち向いて!!」
 すると、ノゾミがあたしにそう言った。その声は強い。
「何よ・・・っ!?」
 あたしが振り向いた瞬間、あたしはほっぺたを思い切りぶたれた。見ると、ノゾミの顔は少し怒り気味。一瞬、何のつもりかと思った。
「いくらうまく行かなかったからって、自分をマイナスに考えちゃダメだ!! そんな事したら、余計にうまく行かなくなっちゃうよ!!」
 ノゾミが、はっきりとあたしに言い放った。
「ノゾミ・・・」
「そうですよ!! 100回やってダメでも、101回目は何か変わるかもしれないじゃないですか!!」
 ハルナも、続けてあたしに言い放った。
「ハルナ、コンテストには出始めたばかりですけど、まだリボンは取れていません。でも、くじけそうになった時はヒカリさんの事を思い出して、またがんばれたんです。ヒカリさんがいたから、ハルナはがんばれるんです!! ヒカリさんだって、アヤコさんに憧れているなら同じなんじゃないんですか!!」
 ハルナも、強い眼差しであたしに言った。
「ハルナ・・・」
「完璧な人間なんて、どこにもいないさ。どんな人だって失敗はするし、届かない思いだってある・・・でも、ヒカリのママさんも、そんな経験をして名を残す人になれたと俺は思うんだ・・・」
 今度はタケシが前に出た。
「俺とサトシが前にホウエンで一緒に旅をしていた『ある人』はな、元々ジムリーダーの家出身なんだが、最初は何がしたいかって事がわからないまま、旅をしてたんだ。そんな時に、そいつはポケモンコンテストに出会ったんだ。それから、そいつはポケモンコンテストに居場所を見つけて、いろんな事を経験しながら、ホウエンとカントーのグランドフェスティバルに出場したんだ。今はジョウトでがんばっているはずだ」
「それってもしかして、トウカシティのハル・・・」
「とにかく、そいつがそこまでがんばれたのは、ポケモンコンテストって『夢』を見つける事ができたからこそだと思うんだ。だから、『夢』は大事にするべきだ。あきらめたら、後悔すると思うぞ」
 ハルナが途中で何か言い掛けたけど、そんな事はどうでもよかった。
「タケシ・・・」
 3人の言葉を聞いて、あたしの心の中で、もう1つの思いがどんどん大きくなっていく。本当は、またコンテストに出たい・・・
「でも・・・」
「そうやって悔しがるのは、コンテストに出たいからなんじゃないんですか?」
「!!」
 あたしが思っていた事を、ハルナはズバリと当てた。
「だったら、またがんばってくださいよ!! ハルナ、応援しますから!!」
 ハルナはあたしの両手を取って、そうはっきりと言った。
「そうだ。最初からあきらめていたら、何も始まらないさ」
「ピカチュ!」
 タケシも、続けて言う。そして、ピカチュウもタケシの肩に乗ってあたしにそう声をかけた。
「ミミ!」
「チパ!」
「エイポ!」
 ミミロル達も、あたしを応援してくれるように笑みを浮かべて声をかけた。
「だからヒカリ、今は気持ちを前向きにするんだ!! 今は信じるしかないんだ、コンテストパスと、サトシが無事に戻ってくる事を・・・!!」
 ノゾミがあたしの顔を見て、はっきりと言い放った。あたしの心の中で、2つの思いがぶつかり合った。みんなが励ましてくれるのは嬉しい。でも、それでも不安が晴れない。もしコンテストパスとサトシが戻ってこなかったら・・・と嫌でも考えちゃう。みんなに返す言葉が出ない。
「・・・ポチャ!!」
 すると、ポッチャマが何か思い立ったように動き出した。ポッチャマは突然、開いていた部屋の窓からベッドを伝って外に飛び出した!
「ピカ!? ピカチューッ!!」
 それに一番先に気付いたのはピカチュウだった。すぐにポッチャマの後を追いかける。
「あっ、ポッチャマ!?」
「!?」
 そうハルナが声を上げて、あたしもすぐに気付いた。振り向いた時には、ポッチャマの姿はもうなかった。
「ポッチャマ!?」
 あたしが慌てて窓から顔を出して見ると、もうポッチャマは道路に出ていた。
「すぐ追いかけなきゃ!!」
 ハルナが、真っ先に部屋を出て行った。
「俺達も、追いかけよう!!」
「うん!!」
 あたし達はすぐに部屋を出て行った。
「みんなはここで待ってて!!」
 あたしはミミロル達にそう言って、部屋を後にした。残った3匹は、ポッチャマが出て行った窓を、何かを感じたように見つめていた・・・
 それにしてもポッチャマ、こんな時にどうしたっていうの!?

 * * *

 ポッチャマは何かに駆られたように、必死で真っ直ぐ道を走っていた。
「ピカーッ!!」
 そんなポッチャマを、ピカチュウが呼び止める。足を止めるポッチャマ。
「ピカ、ピカピカチュ!!」
「ポチャ!! ポチャポチャ、ポチャマ!! ポチャッ!!」
 ピカチュウが話し始めると、ポッチャマは反論し始めた。
「ピカ・・・」
 ポッチャマの言い分を聞いて、ピカチュウは目を丸くした。
「ポッチャマーッ、ピカチュウーッ!!」
 そこに、ルーナを連れたハルナがやって来た。
「どうしたのよ!? 勝手に出て行っちゃったら、ヒカリさんに怒られちゃうよ!」
「ポチャッ!! ポチャポチャポチャッ!!」
 ハルナが言うと、ポッチャマは首を強く振って答えた後、ある場所を指差した。
「ポッチャマ・・・もしかして・・・?」
 指差す先を見て、ハルナは何かわかったようにそうつぶやいた。何か強い意志があるような、強い眼差しでハルナを見つめるポッチャマ。
「そうだったのね・・・」
「ポチャ?」
 ハルナのつぶやきに、ポッチャマは目を丸くした。
「ハルナも付き合うわ!! ハルナも同じ事考えてたし、1人で行くより、みんなで行った方が心強いでしょ!!」
 ハルナはそう言って、ポッチャマにウインクした。
「・・・ポチャ!!」
 ポッチャマは、はっきりとうなずいた。
「じゃ、決まりね!! 行くよルーナ!! ピカチュウもおいで!!」
「ピカチュ!!」
 ハルナの言葉に、ピカチュウもはっきりとうなずいた。そして1人と3匹は、一緒にある場所へと向かって走り出した。
 その先には、コンテスト会場があった・・・

 * * *

 ポッチャマの後を追いかけて外に出たあたし達だけど、完全にポッチャマもピカチュウも、ハルナまでも見失っちゃった。
「もう、ポッチャマどこに行っちゃったのよ・・・」
 あたしは、途方に暮れるしかなかった。
「こんな時に一体どうしたっていうんだ?」
 タケシが、そんな疑問を口にする。ポッチャマ、なんで急に出て行っちゃったのかな・・・まさか、こんなあたしが嫌いになって・・・!? そ、そんな訳ないよね・・・ポッチャマに限ってそんな事は・・・あたしはそう自分に言い聞かせた。
「それにしても、何だか変じゃないか?」
 ノゾミが、別の疑問を口に出した。
「何がだ?」
「だって、まだ昼だっていうのに、全然人気がないじゃないか・・・」
 そうだ、言われて見ればそうだ。ポッチャマを探している間、一度も人を見ていない。曇り空の町並みは、不気味に静まり返っている。明らかに普通じゃない。こういうのが、『ゴーストタウン』ってヤツ?
「ホント、どうなっちゃってるの・・・?」
 あたしの口から、そんな言葉がこぼれた。何だか嫌な予感がして、胸騒ぎが治まらない。
「とにかく、次はあっちを探してみよう」
「うん」
 でも、そんな事を考えていても、ポッチャマは見つからない。あたし達は、別の道を探し始めた。

 なかなか見つからないまま、あたし達はコンテスト会場の近くにたどり着いた。
「弱ったな・・・手掛かりは全くなしだ・・・」
 タケシがつぶやいた。
「もう、どこ探せばいいの・・・?」
 あたしがため息をついた、その時だった。
 ドーン、とすぐ近くで爆発の音が聞こえた。
「何だ、今の音は?」
「コンテスト会場の方だ、行ってみよう!」
 タケシとノゾミが、すぐに音がした方向に向かって行った。あたしも、後から追いかける。誰かが近くでポケモンバトルでもしているのかな?
 コンテスト会場前の広場に来た時、あたし達は信じられない光景を見た。そこには、探していたポッチャマ、ピカチュウ、ハルナがいた。でも、その前にいたのは、たくさんの人とポケモン達! その数は10人、20人、30人・・・・数えられない。みんな様子が変。すると、そんな人達の指示で、ポケモン達が一斉にポチャマ達を攻撃し始めた!
「きゃあああああっ!!」
 飛んで来るたくさんの攻撃を前に、悲鳴を上げるハルナ。
「ピィィィィィィカ、チュウウウウウウウッ!!」
「ポッチャマァァァァッ!!」
 ピカチュウが“かみなり”で、ポッチャマが“バブルこうせん”で攻撃してくるポケモン達を攻撃する! 直撃! 倒れるポケモン達。でも、また別のポケモン達が、ピカチュウとポッチャマに攻撃してくる! それを慌ててよけるピカチュウとポッチャマ。
「数が多すぎるよーっ!! どうしたらいいのーっ!!」
 ハルナは、完全にパニック状態だった。
「ポッチャマ!!」
「ハルナ!!」
 あたし達は、すぐにポッチャマ達の所に行った。
「ヒカリさん!! 助けてください!! ここにポッチャマと来たら、突然こんなにたくさんのポケモントレーナーが・・・!!」
「ええっ!?」
 慌てた様子で駆け寄ってきたハルナは、目の前にいるたくさんの人達を指差して言った。よく見ると、その人達の首には全部銀色の首輪が付いていた。
「あれって・・・『操りリング』!?」
 という事は・・・もしかしてメイルが!?
「フフフ・・・待っていましたよ、フタバタウンのヒカリ・・・」
 すると、たくさんの操られたポケモントレーナー達の前に、メイルが“テレポート”で現れた!
「メイル!!」
 あたし達の声が揃った。
「このポケモントレーナー達は、全部あんたが操ってるのか!!」
「その通りですよ。町中に操りリングをばら撒きましてね、全員私の手駒にしてもらいました。ポケモンコンテストが近い事が好都合でしたよ・・・」
 ノゾミの質問に、メイルは笑みを浮かべて答えた。
「このコンテストパスを取り返したいのなら、これが最後のチャンスですよ。私はもうすぐ、予告通りこの会場に火を放つつもりですので・・・フフフ・・・」
 メイルの余裕の笑みに、あたしは怒りを覚えた。
「コンテストパスを返して!!」
「返して欲しいのならば、会場に来る事ですね。ただし、このポケモントレーナー達を突破できれば、の話ですけどね・・・では、せいぜいがんばる事ですね・・・会場で待っていますよ・・・」
 そう言うと、メイルの姿はまたサーナイトの“テレポート”で姿を消した。
「メイル・・・!!」
 あたしの心の中で、メイルへの怒りの炎が燃え上がった。あたしの今までの悲しみが、怒りに変わっていく。手に自然と力が入って、拳になったのがわかった。許せない・・・絶対に!!
「来たあっ!!」
 ハルナが声を上げた。見ると、操られたポケモントレーナー達のポケモン達が、一斉にこっちに飛び掛ってきた!
「ポッチャマ・・・お願いっ!! ここを突破するわよ!!」
「ポチャッ!!」
 あたしの一声で、ポッチャマが力強く前に出た。
「ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」
「ポッチャマァァァァッ!!」
 あたしの指示で、ポッチャマは力強く“バブルこうせん”を発射! “バブルこうせん”は、たくさんのポケモンを一気になぎ払った!
「俺達も行こう!!」
「ああ!!」
 タケシとノゾミもモンスターボールを取り出した。
「頼むぞ、ウソッキー!! グレッグル!!」
「ニャルマー!! ムウマ!!」
 2人が一斉にモンスターボールを投げた。タケシが投げたものからはウソッキーとグレッグルが、ノゾミが投げたものからはニャルマーとムウマが出て来た。
「なるべく倒さないで、動きを止めよう!!」
「ああ!!」
 ノゾミとタケシがそう確認し合うと、2人にも操られたトレーナーのポケモン達が襲い掛かってきた!
「ムウマ、“あやしいひかり”だ!!」
「ウソッキー、ニャルマーの“ものまね”をするんだ!!」
 ムウマが襲い掛かってくるポケモン達に、目から光を発射した! ウソッキーも、“ものまね”で“あやしいひかり”を発射した! “あやしいひかり”を浴びたポケモン達は、たちまち『こんらん』して、千鳥足になった。それでも、“あやしいひかり”に当たらなかったポケモン達が、また襲い掛かってくる!
「グレッグル、“かわらわり”だ!!」
「ニャルマー、“アイアンテール”!!」
 すぐにグレッグルとニャルマーが飛び出した! グレッグルは両手の拳で、ニャルマーは尻尾で次々と襲い掛かってきたポケモン達を弾き飛ばしていく!
「ヒカリさんがいれば勇気百倍!! 行くよルーナ!! “スピードスター”!!」
 あたしの動きに刺激されたのか、ハルナもルーナもやる気になった。ルーナは“スピードスター”を発射して、襲いかかろうとするポケモン達をかく乱した!
「ピィィィィィィカ、チュウウウウウウウッ!!」
 そこに、ピカチュウの“10まんボルト”! 直撃をもろに受けたポケモン達は、次々と倒れた。
「ナイス、ピカチュウ!!」
「ピッカ!!」
 ハルナの声に、ピカチュウは力強く答えた。
「ヒカリさん、ハルナもついて行きますよ!!」
 ハルナが、あたしの隣に来た。
「ありがとう」
「ところでヒカリさん、ポッチャマは今・・・」
「え?」
 ハルナが、何か言い掛けた。その時、また別のポケモン達がポッチャマ達に攻撃してきた!
「あっ、いけない!! ルーナ、“めいそう”!!」
「ポッチャマ、“がまん”!!」
 それ気付いたハルナは、慌てて指示を出した。ルーナは、すぐに“めいそう”で攻撃を防いだ! ポッチャマも、我慢する体制になって、攻撃をこらえる! それでも、ポケモン達は容赦なく2匹を攻撃し続ける。ポッチャマとルーナの周りで、たくさんの爆発が起きる。
「ポッチャマァァァァッ!!」
 ポッチャマが、受けた攻撃を思い切りはじき返した! たくさんのポケモン達が吹き飛ばされる。でも、また別のポケモン達が出てきて、攻撃を続ける!
「数が多すぎる・・・!」
 これじゃ、いくらなんでも突破なんてできっこない・・・あたしがそう思った時だった。
 ドン、と音が響いたと思うと、こっちに向かって来ていたポケモン達が、突然弾き飛ばされた!
「!?」
 あたしとハルナは、目を疑った。そこには、見慣れた大きな影が立っていたんだから。そう、紛れもなくエテボース!
「ポチャ!!」
 ポッチャマが、嬉しそうに声を上げた。
「エテボース!?」
 エテボースは、今ポケモンセンターで留守番してるはずなのに・・・? そんな事を考えてる間に、エテボースにポケモン達が飛び掛ってくる!
「エイポォォォォッ!!」
 エテボースは、“ダブルアタック”で向かって来たポケモン達を弾き飛ばした! エテボースは余裕の表情。
「見てください、ヒカリさん!! エテボースだけじゃないですよ!!」
「え?」
 ハルナが声を上げた。驚いてハルナが指差した方向を見てみると、そこにはまた見慣れた影が2つ。それは、ミミロルとパチリス!
「ミィィィィミ、ロォォォォッ!!」
 ミミロルが、“れいとうビーム”をなぎ払うように発射! 命中したポケモン達は、次々と凍っていく。
「チィィィィパ、リィィィィッ!!」
 パチリスが、力を込めて思い切り“ほうでん”! 電撃はパチリスの周りにいるポケモン達に次々と命中! しびれたポケモン達は、次々と倒れていく。
「ミミロル!? パチリス!?」
 ミミロルとパチリスまでいた事に、あたしは驚いた。みんな、どうしちゃったの?
「ポチャ!!」
 3匹がポッチャマと合流した。3匹がポッチャマと何やらやり取りをすると、ポッチャマは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「・・・そうか! みんな、ポッチャマを見て協力しようって思ってるんだ!」
 ハルナが声を上げた。
「どういう事?」
「ヒカリさん、さっきも言いかけましたけど、ポッチャマは・・・」
 ハルナがそう言いかけた時、突然4匹の前に衝撃波が飛んで来た!
「!!」
 4匹はばらけてかわした。地面に当たって、爆発する衝撃波。もし当たってたら、かなりのダメージなってそう。
「何!?」
「今のは・・・“ソニックブーム”!?」
 パワーのある“ソニックブーム”・・・見覚えのある、というより見慣れたものだった。
「見つけた、ぞ・・・!」
 聞き慣れた声。まさかと思って声のした方向を見ると、そこにはサトシとブイゼルの姿が!
「サトシ!! ブイゼル!!」
「ピカピ!!」
 あたし達の声が合わさった。サトシの首には、やっぱり『操りリング』が。
「今度は・・・ちゃんと勝負、しろ、よ・・・!」
 サトシの鋭い視線が、あたしに向けられた。ブイゼルがいつでも来いと言うように身構えた。
「サトシ・・・」
 あたしは戸惑った。また、操られたサトシとバトルしなきゃならないの・・・? でも、『操りリング』を何とかすれば、サトシは元通りになる・・・!
「ヒカリさん・・・」
 ハルナが、不安そうにあたしを見た。
「サトシを・・・助けなきゃ・・・!」
 あたしの決意が、自然と言葉に出た。


TO BE CONTINUED・・・

[318] SECTION05 コンテスト会場の戦い! サトシを救え!
フリッカー - 2008年02月22日 (金) 21時04分

 タケシとノゾミは、襲い掛かってくるたくさんのポケモントレーナーのポケモン達に悪戦苦闘していた。
 ムウマが“あやしいひかり”でポケモン達を次々と『こんらん』させていく。でも、ムウマはかなり疲れている。そして、向かってくるポケモン達に、ニャルマーとウソッキー、グレッグルが応戦している状態。でも、3匹は結構ダメージを受けている。数で攻めてくるポケモン達の集中攻撃をよけようとしても、どうしても何発かには当たっちゃう。
 そんな時、ムウマが疲れ果ててとうとう地面に落ちた。その時、ポケモン達が一斉に攻撃を放ってきた!
「まずい!! 戻るんだムウマ!!」
 それに気付いたノゾミは、すぐにムウマを戻した。ポケモン達の攻撃は空を切った。
「カラナクシ、“ふぶき”だ!!」
 すぐに別のモンスターボールを取り出して、ムウマがいた場所に投げる。出て来たのはカラナクシ。カラナクシは、“ふぶき”の一撃で向かって来たポケモン達を吹き飛ばした!
「ウソッキー、“すてみタックル”!! グレッグル、“かわらわり”!!」
 タケシの指示で、ウソッキーとグレッグルは一斉にポケモン達に突撃する! でも、ウソッキーに攻撃が飛んで来る。それを受けたウソッキーは、ひるんで足を止めちゃった! それを狙ってグラエナのごとくポケモン達が飛び掛ってきた!
「まずい!! ウソッキー、“じたばた”だ!!」
 慌てて指示を変えるタケシ。ウソッキーは飛び掛ってきたポケモン達を闇雲に払いのける。それを援護するグレッグル。それでも、ポケモン達の攻撃は止む事がない。
「数が多すぎる・・・!」
「このままじゃ、こっちがもたなくなる・・・!」
 そんな状況に、ノゾミとタケシは唇を噛むしかなかった。


SECTION05 コンテスト会場の戦い! サトシを救え!


「サトシを・・・助けなきゃ・・・!」
 あたしの決意が、自然と言葉に出た。
「ヒカリさん! 助けるって、どうやって助けるんですか?」
「あの『操りリング』を何とかして外すのよ! そうすれば、サトシもポケモン達も元に戻る・・・!」
 ハルナの質問に、あたしはそう答えた。
「ブイゼル、“ソニックブーム”・・・!!」
 その時、操られたサトシが急に指示を出した。操られたブイゼルは、こっちに“ソニックブーム”を発射!
「きゃあっ!!」
 あたしの目の前に、それは当たった。爆風をもろに受けた。ハルナと一緒に突き飛ばされて、転ぶあたし。操られたサトシは、あたしも狙ってる!?
「ヒカリさん!!」
「ダイジョウブ・・・」
 心配するハルナに、あたしはそう答えて立ち上がった。驚いてる暇はない。改めてサトシと正面から向かい合う。
「パチリス!!」
「チパ!!」
 あたしの一言で、ポッチャマが一旦下がって、パチリスが前に出た。
「やるんですね・・・なら、ハルナも助太刀します! ルーナ!」
 そんなあたしの姿を見たハルナも、ルーナにそう指示を出した。ルーナが前に出る。
「ダブル、か・・・まあいいや・・・ナエトル、君に決めた・・・!」
 操られたサトシは、ナエトルを繰り出した。そして、ブイゼルも身構えた。サトシ・・・必ず助けてあげるからね・・・!
「ブイゼル、“みずでっぽう”・・・!! ナエトル、“はっぱカッター”・・・!!」
 先に指示を出したのは操られたサトシだった。ブイゼルの“みずでっぽう”がルーナに、ナエトルの“はっぱカッター”がパチリスに飛んで来る!
「かわして!!」
 あたし達の声が合わさった。パチリスとルーナは攻撃をかわす。
「ハルナ!! ブイゼルとナエトルを足止めして!!」
「了解です!! 時の流れは移り行けども、変わらぬその身の美しさ!! 月光の力を借りて!! ポケモン、ルナトーン、その名はルーナ!! ハルナスペシャルその3、『流星乱舞スターダストセレナーデ』!!」
 あたしのお願いに、ハルナはしっかりと答えてくれた。何だか別の『ハルナスペシャル』を使うみたい。
「まずは“スピードスター”!!」
 ハルナの指示で、ルーナは“スピードスター”を発射!
「そして“ねんりき”!!」
 そして、ある程度飛んだ所を見計らって、ルーナは念じ始めた。すると、“スピードスター”は“ねんりき”の力で自在にコントロールされながら、操られたブイゼルとナエトルの周りを飛び回った! その動きは、エテボースの“スピードスター”に似ている。
「どうです? ヒカリさんのエテボースのアピールを参考にしたんですよ!!」
 ハルナが得意気に言った。
「上出来よ!」
 “ねんりき”でコントロールされた“スピードスター”のせいで、操られたブイゼルとナエトルは動きが取れない。今がチャンス!
「パチリス、サトシに向かって“スパーク”よ!!」
「チパ!?」
 あたしの指示に、パチリスは一瞬驚いた。
「お願い!! やって!!」
「・・・チパ!!」
 あたしの思いが通じたのか、パチリスははっきりとうなずいた。そして、電気を纏ってサトシに突撃して行った!
「・・・!!」
 操られたサトシは、気付くのが少し遅れた。そこに、パチリスが飛び込んだ! 命中!
「ぐあああああああっ!!」
 体に電気が流れて、操られたサトシが悲鳴を上げる。ごめん、サトシ・・・でも、少しだけの辛抱だから・・・! これなら、『操りリング』も壊せるかもしれないから・・・! でも、結局『操りリング』そのものには何も起こらなかった。
「そんな・・・!? 壊れない!?」
 あたしの予想は外れた。
「お前・・・何する気、だ・・・!!」
 操られたサトシの表情が変わった。完全に怒ってる。あたしの背筋に寒気が走った。
「ブイゼル、“ソニックブーム”・・・!!」
 操られたサトシの指示に、怒りがこもっていた。操られたブイゼルが、“ソニックブーム”を発射する! その飛んでいく先は・・・あたし!?
「ああっ!!」
 とっさの出来事に、あたしはよける事ができなかった。強い衝撃をもろに受けちゃった。また弾き飛ばされて、転ぶあたし。
「ヒカリさん!!」
「ダイジョウブ・・・平気よ」
 心配するハルナに、あたしはそう答えた。
「ナエトル、“はっぱカッター”・・・!!」
 今度は操られたナエトルが“はっぱカッター”を発射! まっすぐこっちに飛んで来る!
「チパリィィィィッ!!」
 でも、すぐにパチリスが“ほうでん”! “はっぱカッター”を相殺した! そして、放たれた電撃はまたサトシに当たった!
「ぐあああああああっ!!」
 悲鳴を上げるサトシ。“スパーク”よりは威力のある“ほうでん”だけど、それでも『操りリング』は壊れない。
「くっ、やるか、よ・・・っ!!」
 操られたサトシがまた怒った。
「ピカピ!!」
 すると、見ていられなくなったのか、ピカチュウが前に出て来た。
「お前は・・・あの時、のピカチュウ・・・」
「ピィィィィィィカ、チュウウウウウウウッ!!」
 すると、ピカチュウは目を覚ませとでも言っているように、思い切り“10まんボルト”をサトシに向けて発射した! 直撃!
「ぐああああああああっ!!」
 悲鳴を上げるサトシ。それでも、『操りリング』はまだ壊れない。
「そんな・・・!? ピカチュウの電撃でも!?」
 パチリスのよりも明らかに強いはずのピカチュウの電撃でも壊れなかった事に、あたしは驚いた。
「ゆ・・・許さな、い・・・! ブイゼル、“アクアジェット”・・・!!」
 操られたサトシは怒って指示を出した。操られたブイゼルが、“アクアジェット”でピカチュウに突撃する!
「ピカアアアアッ!!」
 直撃! 思い切り弾き飛ばされるピカチュウ。
「ナエトル、“はっぱカッター”・・・!!」
 そして、ナエトルも“はっぱカッター”で攻撃してくる! それは、パチリスやルーナだけじゃなくて、あたし達も巻き込んだ!
「きゃああああっ!!」
 思わず悲鳴を上げるあたし達。体のあちこちに葉っぱがかすったのがわかった。
「・・・ハルナ!!」
「平気です・・・心配しないでください・・・!」
 ハルナの様子を確かめる。ハルナは無事だった。電撃が効かないんじゃ、サトシをいたずらに傷つけるだけ。それに、こんな状況じゃこっちも何されるかわからない・・・作戦を変えないと!
「ポッチャマ!!」
「ポチャ!!」
 あたしはポッチャマに呼びかけた。それに答えて、ポッチャマが前に出る。電撃がダメなら、『操りリング』を壊せるのはポッチャマしかいない!
「いつから・・・4対4に、なったんだ、よ・・・!! こうなったらヤケ、だ・・・!! ヒコザル!! ムクバード!!」
 すると、操られたサトシは完全に怒って、ヒコザルとムクバードも繰り出した。
「みんな!! ピカチュウもお願い!!」
 あたしの一声で、エテボースとミミロルも前に出た。そして、ピカチュウも身構えた。
「ポッチャマ、下がって!! ルーナも!!」
「え? どうしてですか?」
 あたしの指示に、驚くハルナ。
「いい方法があるの。まずは・・・」
 あたしはそんなハルナに新しい作戦を話した。
「・・・なるほど!! グッドアイデアですね!!」
 それを聞いたハルナは納得してくれた。
「何やってん、だ・・・!」
「これで4匹対4匹よ、フェアになるでしょ!!」
 いらだった様子の操られたサトシに、あたしはそう答えを返した。8匹のポケモン達がにらみ合う。
「なら・・・こっちから行く、ぜ・・・! 行け、みんな・・・!!」
 操られたサトシの一言で、ブイゼル、ナエトル、ヒコザル、ムクバードが一気に飛び出した!
「みんな!! 受け止めて!!」
 あたしの指示で、ミミロル、エテボース、パチリス、ピカチュウも飛び出した! 8匹は正面からぶつかり合った! ブイゼルはエテボースと、ナエトルはピカチュウと、ムクバードはミミロルと、ヒコザルはパチリスと! 8匹の押し合いが続く。
「全力で、押し出して、やれ・・・!!」
 操られたサトシの指示で、操られたサトシのポケモン達はさらに力を込める。すると、あたしのポケモン達がどんどん押し出されていく。さすがはサトシのポケモン・・・!
「行くよルーナ!! サトシに“ねんりき”!!」
 すると、ハルナがルーナにそう指示を出した。ルーナが念じると、操られたサトシの体が、ゆっくりと宙に浮いた!
「うっ・・・!? 何、だ・・・!?」
 これには操られたサトシも驚きを隠せない。操られたサトシのポケモン達は押し合いに必死で気付いていない! これがあたしの作戦!
「サトシ!! 今助けてあげるからね!! ポッチャマ、“つつく”で『操りリング』を壊して!!」
「ポチャマーッ!!」
 あたしの声に答えて、ポッチャマはクチバシに力を込めて、操られたサトシに飛び込む! 込めた力で、ポッチャマのクチバシが伸びる! そして、それをサトシの首に突き立てた・・・!




 サトシの首についていた『操りリング』が、欠けた状態で宙を舞った。ポッチャマが、反転して着地した。すると、『操りリング』が地面にカチャンと音を立てて落ちた。
「やった・・・!!」
 あたしとハルナは、声を揃えた。
「う・・・」
 サトシは、穴の開いた風船のように、力を失ってその場に倒れた。それは、サトシのポケモン達も同じだった。
「サトシ!!」
「ピカピ!!」
 あたし達はすぐに、サトシの側に駆け寄った。
「う・・・う〜ん・・・」
 するとサトシが、寝ている所を起こされた時のような声を出して、ゆっくりと目を開けながら体を起こした。
「サトシ・・・! よかった・・・!」
「ヒカリ・・・? あ、あれ・・・? 俺、今まで何してたんだ?」
 とぼけたようにつぶやくサトシの表情は、いつものサトシそのものだった。サトシのポケモン達も、目を覚ましてサトシと同じように体を起こした。その表情は、みんないつものもの。そんなサトシを見て、あたしはほっとした。みんな元に戻ってよかった・・・
「ピカピ!!」
 すると、真っ先にピカチュウがサトシの胸に飛び込んだ。
「ピカチュウ!」
 サトシはいつものように、ピカチュウを優しく受け止めた。
「サトシ、今までの事、全然覚えてないの?」
「今までの事って・・・何の話だよ?」
 サトシはホントに何も覚えてないみたい。
「今までこの『操りリング』を付けられて、操られてあたし達の敵になっちゃってたのよ」
 あたしは落ちていた『操りリング』を拾ってサトシに見せた。
「え・・・!? 今まで操られていたのか・・・!? じゃあ、俺今までヒカリと・・・!?」
 サトシは目を丸くした。
「うん。でも、サトシは別に悪くないよ。悪いのは、サトシを操ったメイルなんだから・・・!」
 あたしの心の中に、メイルへの怒りがまた湧き上がってきた。
「メイル!? あのメイルが俺を・・・!?」
「とにかく、戻ってよかったですね!」
 ハルナが笑みを浮かべた。
「ええ」
 あたしが相槌を打った、その時!
 ドドーンと爆発音が響いた。それが、あたし達を現実に引き戻した。見ると、操られたポケモントレーナー達のポケモン達が、サトシのポケモン達とにらみ合いになっている!
「な、何なんだこいつら!?」
「メイルがサトシみたいに『操りリング』で操ってるのよ!!」
「何だって!?」
 あたしの説明で、サトシはようやく周りの状況を理解した。
「・・・行かなきゃ!!」
 あたしの口から、そんな言葉がこぼれた。
「行くって、どこに?」
「あそこよ」
 あたしは、コンテスト会場の方を見た。その前には、操られたポケモンはいない。今なら、あそこに入れる!
「あそこに、メイルがいるの!! メイルを止めなきゃ、それに、コンテストパスも・・・!!」
「なら、俺も・・・!」
「サトシはここで時間稼ぎをしてて! 行くよみんな!!」
 あたしはそう言って、すぐにコンテスト会場へと走り出した。ポッチャマ達もついて来る。
「ハルナも行きます!!」
 ハルナとルーナも、あたしについて来た。
「あっ、ちょっと待てよ!」
 サトシが、すぐに追いかけようとしたけど、直後に起こった爆発音に足を止められた。サトシのポケモン達が、操られたポケモン達と戦ってる!
「サトシ!!」
「元に戻ったんだね!!」
 そこに、タケシとノゾミ、そのポケモン達がサトシの所に来た。2人共サトシが戻った事に気付いてたみたい。2人のポケモン達は、もうすっかり疲れきっていた。
「ああ、ヒカリのおかげさ! それより、俺達もヒカリと・・・」
「それは無理だ・・・こいつらがしつこすぎるんだ」
「それに、メイルとはあたし達じゃなくて、ヒカリが決着をつけるべきだと思うしね」
 サトシの催促を、2人は止めた。
「どういう事なんだ?」
「説明は後だ! 今は、こいつらを止める事が先だ・・・!」
 そんな話をしている間にも、操られたポケモン達はジリジリと迫ってくる。
「・・・わかった! こいつらみんなまとめて相手してやるぜ!! 行くぞみんな!!」
 サトシは、タケシとノゾミと一緒に、操られたポケモン達へと向き直った。

 * * *

 コンテスト会場に入ったあたし達。
 そこには、誰もいない。電気も点いていない。見慣れたコンテスト会場とは違う、不気味な雰囲気が漂う。
「メイル!! どこにいるの!!」
 ロビーに、あたしの声が響く。でも、答えは帰って来ない。
「ヒカリさん! ステージのドアが開いてる! あそこに行ってみましょうよ!」
 そう言ってハルナが指差す方向を見ると、普通は閉まっているステージの客席への入り口が1つだけ開いていた。まるで、こっちへ来いとでも言ってるように。
「ええ!!」
 あたし達は、ためらう事なくそのドアの向こうに向かった。

 やっぱり真っ暗の客席。あたし達が足を踏み入れた瞬間、入ったドアが勝手にバタンと閉まった!
「!!」
 あたし達はドキッとした。すぐにハルナはドアを開けようとする。
「開かない・・・! もしかして、閉じ込められちゃった!?」
 でも、ロックが掛かってるみたいで、ドアノブはビクともしなかった。
「待っていましたよ、フタバタウンのヒカリ・・・」
 すると、ステージから声がした。まさかと思って振り向くと、ステージのライトが急に点いた。そのステージの真ん中には、メイルが立っている!
「メイル!!」
「ポチャ・・・!!」
 あたし達の声が合わさった。
「よくぞここまでたどり着けましたね・・・」
 メイルがゆっくりと顔を上げた。
「コンテストパスを返して!!」
 あたし達はすぐに、ステージに昇った。すると、メイルはあたしと距離を取った。
「・・・ならば、私とポケモンバトルをして勝つ事ですね・・・! 今回はフェアに勝負してあげましょう・・・!」
 メイルがそう言うと、ジバコイルとサーナイトが前に出て来た。あたしは、今いる位置がちょうどコンテストでステージに立つ場所と同じ事に気付いた。
「ハルナも出るコンテストを、台無しにさせない!! ルーナ、“スピードスター”!!」
 真っ先にハルナが指示を出した。ルーナは、“スピードスター”を発射! すると、すぐにサーナイトが“シャドーボール”で応戦! “シャドーボール”は“スピードスター”を簡単に弾き飛ばして、ルーナに飛んで行った! 直撃! 効果は抜群! ハルナの目の前に弾き飛ばされるルーナ。
「ルーナ!!」
 ルーナは浮き上がらない。完全に戦闘不能だった。
「おやおや、おまけがついてきたようですね・・・?」
 メイルがハルナにそう言うと、メイルは何やらリモコンのようなものを取り出して、スイッチを押した。すると、ステージの周りが透明な赤い壁で覆われた!
「これでもう、邪魔者は入れません・・・」
「ヒカリさん!!」
 壁の外にいるハルナが、あたしの側に行こうとして、透明な赤い壁に手を触れた。すると、ハルナの手に赤い火花が走った。
「うっ!!」
 その痛さで、ハルナは反射的に手を引っ込めた。
「これはただのバリアーではありませんよ。外部からの物体を防ぐだけでなく、触れたものにはダメージを与えるようにしてあります。『ダメージバリアー』と言った方がよろしいでしょうか? 念のために用意しておきましたが、用意しておいて正解でした」
「そんな・・・!」
 ハルナは何もできないままその場に立ち尽くすしかなかった。これも、やっぱりメイルの発明だっていうの? なおさら、あたしの怒りは大きくなっていく。
「ポチャ!! ポチャポチャポチャ!! ポチャマ!!」
 ポッチャマが前に出て、メイルに何かを主張してる。
「おやおや、何を言っているかは知りませんが、そのポッチャマはやる気のようですね・・・」
 そんなポッチャマを見て、メイルの口元が笑った。
「ポチャーッ!!」
 すると、ポッチャマは怒ってメイルの前に飛び出した!
「来ましたか・・・! “マグネットボム”!!」
 すると、メイルはゴーグルのようなものを着けて、ジバコイルに指示を出した、ジバコイルは、指示通り“マグネットボム”を発射! 命中! 弾き飛ばされるポッチャマ。それでも、ポッチャマは怯まない。
「ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」
「ポッチャマーッ!!」
 あたしも我慢できなくなって、ポッチャマに指示を出した。ポッチャマは、“バブルこうせん”をジバコイルに向けて発射! でも、ジバコイルはそれを勝手によけた。
「よけた!?」
 あたしは目を疑った。トレーナーのメイルが指示をしていないのにかわした・・・!? そんな事はほとんどないはず・・・
「“10まんボルト”です!!」
 続けてメイルが攻撃に出る。ジバコイルは、電撃をポッチャマに向けて発射する!
「よけて!!」
 あたしの指示で、ポッチャマはよけようとした。でも、ジバコイルはそれを見計らって斜線をずらした! それは、まるでこっちの動きを読んでいるかのようだった。
「ポチャアアアアッ!!」
 よけようと動いたポッチャマに直撃! 効果は抜群! 倒れ込むポッチャマ。
「そんな・・・!? よけたと思ったのに・・・!?」
「フフフ・・・無駄ですよ。あなたのポケモンの動きは、私にもジバコイルにもお見通しなのですから・・・」
 メイルが余裕そうに笑みを浮かべた。
「どういう事なの!!」
「私が着けているこのゴーグル・・・私の発明したポケモンバトルサポート用の学習型コンピューターが内蔵されているのですよ。このコンピューターは、ゴーグルで映したポケモンの動きを読み取ってそのポケモンの行動を計算し、ゴーグルに表示するだけでなく、あらかじめジバコイルにも付けておいたデバイスで情報を直接伝える事ができるのですよ・・・」
 よく見てみると、ジバコイルの右の磁石に、何かリングのようなものが付いている。つまり、コンピューターがポッチャマの動きを『予測』して、ジバコイルに直接伝えてるって事!?
「そんな・・・何がフェアよ!! 卑怯じゃない!!」
「悪く思わないでください・・・これも『戦術』の1つなのですから。本当の戦いに、卑怯も何もないのですよ・・・!」
 笑みを浮かべるメイルに、あたしの怒りが爆発した。
「許さない・・・!! みんなっ!!」
 あたしの一声で、ミミロルとパチリス、エテボースも前に出た。
「構いませんよ、相手が4匹でも・・・!」
 メイルは挑発するようにあたしに言った。
「ヒカリさん!! 落ち着いてくださいっ!!」
 そんなハルナの声も、あたしには聞こえなかった。
「ポッチャマ、“バブルこうせん”!! ミミロル、“れいとうビーム”!! パチリス、“ほうでん”!! エテボース、“スピードスター”!!」
 あたしの叫びが、4匹の攻撃となってジバコイルに飛んで行った! でも、ジバコイルはそれを簡単にかわした。
「フフフ、動きが見えますよ・・・! “ほうでん”!!」
 ジバコイルは、パチリスと同じようにステージの全体に電撃を発射した!
「ポチャアアアアッ!!」
「ミミィィィィッ!!」
「チパアアアアッ!!」
「エイポォォォォッ!!」
 直撃! 悲鳴を上げるあたしのポケモン達。あたしのすぐ側にも、電撃が飛んで来た!
「きゃあっ!!」
 あたしは慌てて後ろに下がってよけた。その時、背中がバリアーに当たった。こんな背中のすぐ近くにまでバリアーがあるなんて気付かなかった。
「あああああああああっ!!」
 途端に、赤い火花があたしの体を走った。かなり痛い。そんな状態が何秒か続いて、あたしは前に倒れこんだ。それでも、まだ体に刺すような痛みがじんじん響く。体に、まだ赤い火花が走っているのが見えた。
「な、何なの・・・!?」
 あたしは一瞬、何が起こったのかわからなかった。
「どうしました? このダメージバリアーの事は説明済みですよ? 誰も『中にいる人は触れてもダメージを受けない』なんて一言も言ってませんよ?」
 メイルは笑みを浮かべて言う。そんなメイルが、なおさら卑怯に見えた。
「ところで、フタバタウンのヒカリ。どうして私がここに火を放つと言ったか、わかりますか?」
「・・・?」
 突然のメイルの質問。なんでこんな時にそんな事を?
「フフフ・・・『コンテスト会場に火を放つ』などというのは、真っ赤な嘘なのですよ」
「!?」
 あたしは驚いた。嘘だって言うなら、なんでここに?
「じゃあ、どうして・・・?」
「まだわからないのですか? ここに来た時点で、あなたは私の手中にはまった・・・」
 メイルの口元が笑う。まさか・・・! あたしは嫌な予感がした。
「そうです!! すべてはあなたをここにおびき寄せるための『罠』だったのですよ!!」
「!!」
 あたしの予感は的中した。
「“サイコキネシス”!!」
 すかさず指示を出すメイル。サーナイトが念じ始めると、あたしのポケモン達は宙に浮き出した! みんなは足をじたばたさせるけど、何も変わらない。
「そのままダメージバリアーへ!!」
 メイルの指示で、4匹は一気に弾き飛ばされた! そして、バリアーへと思い切り叩きつけられた!
「ポチャアアアアッ!!」
「ミミィィィィッ!!」
「チパアアアアッ!!」
「エイポォォォォッ!!」
 赤い火花を受けて、悲鳴を上げる4匹。サーナイトが“サイコキネシス”を緩めると、4匹は力なく倒れこんだ。
「みんな!!」
 あたしが呼びかけると、4匹は何とか立ち上がった。体には、まだ赤い火花が走っている。ダメージはかなり大きいみたい!
「皮肉な事ですね・・・コンテストで失敗したあなたの終止符打ちが、このステージの上で行われるとは・・・」
「・・・!」
 その言葉に、あたしの背筋が凍りついた。
「そうです・・・私がここにおびき寄せたのは、あなたが朽ち果てるのに相応しい場所だからです!!」
 メイルの声に合わせるように、サーナイトが念じ始めた! “サイコキネシス”だ!
「ああっ!?」
 すると、あたしの体が宙に浮き始めた!
「あなたはもう、このステージに二度と立つ事はできません・・・!!」
 メイルはそう言うと、右手をスッと横に振った。すると、あたしの体が思い切り後ろに弾き飛ばされた! その先にはダメージバリアーが!
「あああああああああっ!!」
 あたしの体がダメージバリアーに押し付けられた! 赤い火花があたしを襲う! しかも、押さえつけられてるせいで、抜け出す事ができない! その激しい痛みに、あたしは耐えるしかなかった。ようやく“サイコキネシス”が緩んだ。あたしの体が、力なく倒れた。
「これがあなたの、ラストステージとなるのですからね・・・!」
 ニヤリと笑みを浮かべるメイルに、あたしは唇を噛むしかなかった・・・


NEXT:FINAL SECTION

[328] FINAL SECTION 決戦! 夢の続きへ!
フリッカー - 2008年02月27日 (水) 19時23分

「う・・・っ!」
 あたしは、何とかして立ち上がろうとした。でも、体がなかなか言う事を聞いてくれない。何とか立ち上がったけど、体は痛いし、頭もふらふらする。またあんな攻撃を受けちゃったら、もう立てなくなりそう。
「ヒカリさん!! 負けないでください!!」
 ハルナの、そんな焦った声が聞こえてくる。
「ヒカリ!!」
 すると、遠くから聞きなれた声が聞こえてきた。見ると、客席には今まで操られたポケモントレーナー達と戦っていたサトシ達の姿が。結構疲れてる様子。
「今行くからな!! ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
 サトシの指示で、ピカチュウはステージに向けて“10まんボルト”を発射! でも、それはステージを覆っているダメージバリアーに簡単に止められた。
「そんな!?」
「おや、どうやら味方が来たようですね・・・でも、手出しは無用ですよ」
 驚くサトシを尻目に、メイルは横目でサトシ達に言った。
「ヒカリをああしておいて、そんな訳にはいかない!! ニャルマー、“シャドークロー”!!」
 ノゾミがそう言い返して、ニャルマーに指示した。ニャルマーは、“シャドークロー”をダメージバリアーに突き立てようとする!
「グレッグル、“かわらわり”だ!!」
 続けてグレッグルも、右手に力を込めてダメージバリアーに向けて振る! でも、ダメージバリアーに触れた瞬間、2匹の体に赤い火花が走った! 弾き飛ばれる2匹。
「くそっ、ダメか・・・!!」
「無駄ですよ。このダメージバリアーは、ポケモンの攻撃で簡単に壊す事はできません。それよりも、あなた達には別に戦うべき相手がいるのではないですか?」
 メイルがニヤリと笑った時、ドアから操られたポケモントレーナー達が、ポケモン達を引き連れてなだれ込んできた!
「くそっ、こんな時に!!」
 サトシが唇を噛んだ。3人は操られたポケモントレーナー達の方に振り返る。
「みんな・・・」
 みんなからの援護は期待できない。もう、あたしはどうしたらいいの・・・?


FINAL SECTION 決戦! 夢の続きへ!


「よそ見をしていていいのですか?」
 そんなメイルの声が聞こえた。見ると、ジバコイルが4匹の前に飛び込んで来る!
「エテボース、“きあいパンチ”!!」
 慌ててあたしは指示を出した。エテボースが、尻尾の拳でジバコイルを迎え撃つ! 当たれば効果は抜群! でも、ジバコイルはスラリと流れるようにかわした。やっぱりコンピューターの仕業・・・!
「ミミロル、“ピヨピヨパンチ”!! パチリス、“スパーク”!! ポッチャマ、“つつく”!!」
 でも、連続で攻撃すれば1回くらい! そう思ったあたしは、残った3匹にも指示を出した。まずはミミロルがジバコイルに踊りかかる!
「無駄な事を・・・」
 メイルが余裕そうにつぶやいた。ミミロルの拳を、ジバコイルはかわした。そこに、パチリスが飛び込む! でも、それもかわされた。 最後はポッチャマ! でも、それもまた簡単によけられた。
「そんな・・・!!」
 連続攻撃も通用しないなんて・・・
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、とでも思ったのですか? 本当に下手な鉄砲は、どんなに撃っても当たらないのですよ。“マグネットボム”!!」
 メイルの口元が笑った。ジバコイルが“マグネットボム”を連射!
「みんな、よけて!!」
 あたしは反射的にそう声を出していた。4匹は、体にスピンをかけてかわそうとする。でも、“マグネットボム”は4匹の動きを追いかけるように動いた。
「ミミィッ!!」
「チパァッ!!」
「エイポォッ!!」
「ポチャアッ!!」
 命中! 悲鳴を上げる4匹。そして、あたしのすぐ横に弾き飛ばされた。そのまま、4匹はダメージバリアーにぶつかった!
「ミミィィィィッ!!」
「チパアアアアッ!!」
「エイポォォォォッ!!」
「ポチャアアアアアアッ!!」
 4匹の体に赤い火花が走った。そして、4匹は力なくダメージバリアーから離れて、倒れた。
「みんな・・・!!」
 あたしは思わず叫んだ。みんなのダメージはかなりのもの。このままじゃ・・・! あたしの心が焦った。
「いつまでもそんな戦法では通用しませんよ。何かいい方法がひらめいたりしないものですか・・・?」
 挑発するようにメイルが言う。確かに、このままじゃこっちが負けちゃう。でも、何も思い浮かばない・・・! なおさら心が焦る。
「まあ、あなたなら当然でしょうね。広大な川の流れを生身でせき止めようとする者は、やがて自らの愚かさに気付くのです。その流れを変える事などできません。人はそれを、『運命』というのですよ・・・」
「!!」
 運命。その言葉が、あたしの心に深々と突き刺さった。
「ポチャーッ!!」
「ミミーッ!!」
「チパーッ!!」
「エイポーッ!!」
 それでも4匹が、負けじと一気にジバコイルに飛び掛った!
「“ほうでん”!!」
 でもそれも、ジバコイルの“ほうでん”の一撃で簡単に弾き飛ばされた!
「ミミィィィィッ!!」
「チパアアアアッ!!」
「エイポォォォォッ!!」
「ポチャアアアアアアッ!!」
 悲鳴を上げて倒れる4匹。みんなの体力は、もうやばい・・・!
「あなたは所詮、そこまでなのですよ。それが、あなたの限界なのです・・・!」
 あたしは完全に動揺していた。メイルに何も言い返せない。すると、ジバコイルが黄色のボールを作り始めた。あれって・・・!
「さあ、絶望しなさい・・・あなたの力に・・・!! “でんじほう”!!」
 メイルが右手を横に振った。ジバコイルは、黄色のボールを発射した! そのボールは、どんどんあたしに近づいて来る!
「あ・・・ああ・・・!!」
 あたしはもう、体が動かなくなっていた。どんどんボールが近づいてくる・・・!
「ポ・・・ポチャマーッ!!」
 ポッチャマのそんな叫び声が聞こえた。そして!
「きゃあああああああっ!!」
 “でんじほう”は容赦なくあたしに襲い掛かった! 体に強い電流が走った。パチリスのものとは、比べ物にならない。そして、よろけたあたしの背中は、ダメージバリアーにも触れた!
「ああああああああっ!!」
 赤い火花があたしの体に走った。“でんじほう”と合わせて、今までに経験した事もない痛みがあたしの体を襲う!
「ヒカリさん!!」
「ヒカリ!!」
 みんなの絶望した声が聞こえた。
「ああ・・・あ・・・・・・」
 体が、ダメージバリアーから離れる。体の力が、完全に抜けた。もう声を上げる事もできなくなった。あたしの体は、力なく前に倒れた。もう立ち上がる気力もない。
「もうあきらめたらどうですか? あなたに、もはや勝ち目はありません。降参するならそれもかまいませんが?」
 メイルの声が聞こえる。降参・・・もう、あたし達に勝ち目はない・・・なら、ここで降参しちゃえば、あたし達は助かるかも・・・
「わ、かった、わ・・・あ、たし・・・こう・・・」
 完全にあきらめたあたしは、「降参する」って言おうとした。
「ポチャッ!!」
 そんな声が、あたしの声を掻き消した。見ると、ポッチャマがあたしの前にぎこちない足取りで出ている。まさか、こんなになってもまだ戦うつもり・・・!?
「ポッチャ、マ・・・?」
「ポ・・・チャマーッ!!」
 ポッチャマは、苦しそうだけど思い切り息を吸い込んで、“バブルこうせん”を発射! でも、パワーがない。“バブルこうせん”はジバコイルの目の前まで来て、消えちゃった。
「おやおや、まだやる気がある事は認めますが、そんなものでは“わるあがき”も当然ですよ? “10まんボルト”!!」
 ジバコイルは、そんなポッチャマに容赦なく“10まんボルト”で攻撃!
「ポチャアアアアアアッ!!」
 効果は抜群! 悲鳴を上げて、あたしの目の前に倒れるポッチャマ。それでも、ポッチャマは立ち上がろうとする。このままじゃ、ポッチャマが・・・!
「ポッチャマ・・・もう・・・やめ、て・・・」
 あたしは、ポッチャマに力の限り手を伸ばした。
「ポ・・・チャ・・・?」
 ポッチャマが、こっちを向いた。
「もう・・・あたし達、に・・・勝ち目、なんて・・・」
 あたしがそう言い掛けた時だった。
「ポチャッ!!」
 すると、ポッチャマは首を思い切り横に振った。まるで、それはダメって言ってるみたいに。
「ポッチャマ・・・?」
「ヒカリさん!! ダメです!!」
 すると、ハルナの声が聞こえてきた。
「さっきから言おうとしてた事ですけど、ポッチャマはコンテストパスを取り返して、ヒカリさんに元気になって欲しいんです!! また、一緒にコンテストに出たいんです!! だから、それに答えてあげてください!!」
「え・・・?」
 あたしは、その言葉に耳を疑った。あたしが視線を戻すと、そこにはボロボロのポッチャマがいた。すると、ポッチャマはあたしが伸ばした手に手を置いた。
「・・・!」
 その手に、あたしは暖かいものを感じた。
「ポチャ、ポチャマ・・・!」
 ポッチャマは強い眼差しで、首をはっきりと横に振った。
「あきらめちゃ・・・ダメ・・・?」
 あたしには、そう言っているような気がした。そのポッチャマの瞳の向こうに、あたしはポッチャマとの思い出がフラッシュバックした。




 あたしとポッチャマが出会った、あの日。たまたま機嫌を崩したポッチャマを探しに行っただけだけど、その時に起こったハプニングで、あたし達は意気投合した。そして、あたしは最初のポケモンにポッチャマを選んだ・・・

 ポッチャマと練習した、最初の演技。最初はなかなか決まらなかったけど、ロケット団にピンチに追い込まれた時、あたしの思いにポッチャマは答えてくれた。そして、あたし達は一緒に喜んだっけ・・・

 ミミロルやパチリス、ブイゼルとの出会い。みんなを仲間に加えられたのも、ポッチャマのお陰。そして、ポッチャマはみんなの中心として、いつもがんばっていたっけ・・・

 コトブキシティでの、初めてのコンテスト。ここでも、ポッチャマはあたしの力になってくれた。この時は優勝できなかったけど、次のソノオ大会の時は、“うずしお”を覚えて、あたし達は優勝できた・・・

 そう・・・どんな時にも、どんな場所でも、ポッチャマはあたしの力になってくれた・・・優勝できなかったヨスガ大会でも、タッグバトル大会でも・・・あたしを、いつも信じてくれた・・・




「ポッチャマ・・・あたしの、ために・・・?」
 今、ポッチャマはそんなあたしのために、がんばろうとしてる・・・あたしを信じてきたから・・・これからもあたしと一緒に、がんばっていきたいから・・・
 すると、あたしの手に、また別の手が3つ重なった。見ると、ポッチャマの周りには、ミミロルとパチリス、エテボースがいた。
「みんな・・・?」
 6つの瞳に、ポッチャマと同じで何か強いものを感じた。
「ポチャ、ポッチャマ・・・ポチャマ・・・!」
 そう言って、ポッチャマが胸をポンと叩いた。
「僕達は、まだやれる・・・僕達を、信じて・・・?」
 あたしは、何だかそう言っているような気がした。それは他の3匹も同じようだった。そして、ポッチャマは言った。
「ポチャ、ポ〜チャ・・・!!」
 ダイジョウブ。最近忘れかけていたその言葉を、ポッチャマはあたしに言った。その言葉に、今まで誰に励まされても動かなかったもう1人のあたしが動いた。まだ、全部終わった訳じゃない・・・こんな結末でいい訳ない・・・! 旅に出たばかりの頃の自分が、あたしにそう言った。
「・・・ありがとう」
 あたしは左手を伸ばして、みんなの手の上に重ねた。すると、みんなの顔に笑みが浮かんだ。
「最後の挨拶は済みましたか?」
 そんなメイルの声が、あたし達を現実に引き戻した。でも、あたし達は迷わなかった。あたしは、みんなの上に重ねた左手をグッと握った。
「確かに、あたしはまだダメかもしれない・・・でも、そんなままじゃあたしは嫌・・・!!」
 みんなからもらった勇気が、あたしに力をくれた。あたしの体に、力が入ってくる。
「あたしはまだ、コンテストをやりたい・・・コンテストをあきらめたくない・・・だから、負けられない・・・!!」
 あたしのボロボロの体が、ゆっくりと自然に立ち上がる。
「・・・!!」
 その様子に、メイルは驚いていた。
「ポッチャマ・・・みんな・・・まだついて来てくれるなら、あたしに力を貸して!!」
 あたしの体に、熱いものがよみがえってきた。あの時の、初めてコンテストに出場した時のように・・・!
「ダイジョウブッ!!」
 あたしは、久しぶりにその言葉をお腹の底から大きく叫んだ。
「ポチャポ〜チャアアアアアアアアッ!!」
 そんなあたしの思いに答えるように、ポッチャマが大きく叫び声を上げて、体から青いオーラが噴出したように浮かび上がった。『げきりゅう』が発動したんだ! 他のみんなも、それに答えるように体に力を入れて身構えた! みんなが、あたしの方に顔を向けた。
「・・・うん!!」
 あたしはうなずいて、メイルに顔を向けた。
「まだ・・・あたしは負けない・・・!!」
 あたしは、メイルにはっきりそう言い放った。
「ポチャ!!」
「ミミ!!」
「チパ!!」
「エイポ!!」
 みんなも、気合の入った声を出した。
「ヒカリさん・・・!!」
 ハルナの顔に、笑顔が戻った。
「そうだヒカリ!! お前の力をメイルに見せてやれ!!」
 操られたポケモン達と戦いながら叫ぶサトシの声が聞こえる。その言葉が、あたしの心を加速させた。
「・・・さ、最後のあがき、ですか・・・追い詰められれば誰もが必死になるものです。ですが・・・!!」
 メイルの言葉で、ジバコイルが前に出る。
「もう勝敗はついています!! ジバコイル!!」
 メイルの指示で、ジバコイルが飛び出した!
「ポッチャマ!!」
 あたしも、負けじと指示を出した。それに答えて、ポッチャマが飛び出した!
「“つつく”!!」
「ポチャマーッ!!」
 ポッチャマはクチバシに力を込めて、ジバコイルに突撃していく!
「フフフ、そんな動きなど見え見えですよ・・・」
 メイルが笑みを浮かべた。ポッチャマがジバコイルのすぐ側まで来た!
「・・・と見せかけてストップ!!」
「!?」
 あたしの指示に、メイルは驚いた。ポッチャマはあたしの指示通り“つつく”をやめて、ジバコイルの目の前でストップ。ジバコイルのかわす動きが空振りした。今だ!
「“バブルこうせん”!!」
「ポッチャマアアアアッ!!」
 その隙を突いて、ポッチャマが“バブルこうせん”を発射! それは、いつもよりも力強いものだった。直撃! ジバコイルの右の磁石に当たって、付いていたリングが壊れた! うまく行った! そう、これがあたしの思いつきでやった戦法。フェイントをかければ、コンピューターの予想した動きの裏をかけるんじゃないかって思った。その予想は的中!
「フェイントをかけるとは・・・!」
「これでもう、コンピューターのサポートは受けられないわ!!」
 これなら、勝てるかもしれない! あたしは確信した。
「くっ・・・ですが、そちらのダメージはかなりのものです! もはやそちらに勝ち目など! サーナイト!」
 ゴーグルを外したメイルの指示で、サーナイトが前に出た。
「ジバコイル、“マグネットボム”!! サーナイト、“シャドーボール”!!」
 メイルの指示で、ジバコイルは“マグネットボム”を、サーナイトは“シャドーボール”をポッチャマに発射! 2つの弾がポッチャマに飛んで行く!
「エテボース!!」
「エイポ!!」
 すかさずあたしは指示を出す。エテボースがポッチャマの前に飛び出す!
「“ダブルアタック”!!」
「エイポーッ!!」
 エテボースは、2本の尻尾に力を込めて、飛んで来る“マグネットボム”と“シャドーボール”に振った! “マグネットボム”と“シャドーボール”が、エテボースの拳に受け止められた!
「!?」
「そのままはね返しちゃえ!!」
「エイッポーッ!!」
 メイルが驚いてる間に、エテボースは“マグネットボム”と“シャドーボール”を受け止めた尻尾を思い切り突き出した! “マグネットボム”と“シャドーボール”が、発射したジバコイルとサーナイトに飛んで行く! 直撃! 爆発が起きた。
「今よ!! ミミロル、“ピヨピヨパンチ”!! パチリス、“てんしのキッス”!!」
「ミミィィィィッ!!」
 ミミロルが、サーナイトに耳の拳をお見舞いした! 命中! サーナイトはたちまち、『こんらん』して頭がふらついてその場で立ち往生。
「チッパ・・・」
 パチリスは、ジバコイルに投げキッスをした。飛んで行ったハートマークを受けたジバコイルも、『こんらん』して体のバランスを崩す。
「そんな・・・!?」
 メイルは、さっきとは逆の状態になって動揺していた。
「ヒカリさん、凄い・・・!! やっぱりヒカリさんは凄い人なんだ・・・!!」
 そんな様子を見ていたハルナは、少し興奮した様子だった。
「ですが・・・いくら逆らおうとしても、『運命』からは逃れられないのですよ・・・!! それが『現実』なのです・・・!!」
 メイルが、負け惜しみみたいな事を言った。でも、その言葉にはあたしはもうひるまなかった。
「そんなの、『現実』じゃない!!」
「!!」
 あたしが言い返した言葉に、メイルは驚いた。
「エイポォォォォッ!!」
 エテボースが、ジバコイルに“ダブルアタック”をお見舞いする! クリーンヒット!
「あんたは夢を途中であきらめて、逆ギレしてるだけよ!!」
「チパアアアアッ!!」
 あたしの言葉に合わせるように、パチリスが“スパーク”でジバコイルに突撃する! 直撃!
「そんな事したって、誰も認めてなんかくれないじゃない!!」
「ミミィィィィッ!!」
 ミミロルもあたしの言葉に合わせるように、“とびはねる”でジバコイルの上に飛び上がって、キックをお見舞いした! 直撃!
「あきらめないでがんばり続けていたら、夢は叶ったかもしれないのに!!」
「ポッチャマアアアアッ!!」
 そして、最後にポッチャマもパワーアップした“バブルこうせん”をジバコイルに発射! 直撃! 4匹の攻撃を受けたジバコイルは、ステージにドスンと落ちた。
「・・・・・・」
 メイルはなぜか指示を出さないまま、立ち尽くしていた。
「ポッチャマ、“うずしお”!!」
「ポッチャマアアアアッ・・・!!」
 ポッチャマが水の渦を作り出した! それは、いつもよりも大きく大きくなっていく!
「ポチャアアアアッ!!」
 そして、ポッチャマはそれを思い切り投げつけた!
「“うずしお”に飛び込んで!!」
「ポチャッ!!」
 あたしの指示で、ポッチャマは水の渦の真ん中に自分から飛び込んだ! そして、ポッチャマの体に水の渦が纏わり付いた! まるで、“アクアジェット”のように!
「みんな、力を貸してあげて!!」
「ミィィィィミ、ロォォォォッ!!」
「チィィィィパ、リィィィィッ!!」
「エイポォォォォッ!!」
 ミミロルは“れいとうビーム”、パチリスは“ほうでん”、エテボースが“スピードスター”をポッチャマに向けて発射! 3匹の攻撃が1つになって、ポッチャマに届いた! “アクアジェット”にみんなのパワーが加わって、まるで流星のようになってジバコイルに向かって行く!
「お、応戦するのです!! “でんじほう”!!」
 メイルも慌てて指示を出した。ジバコイルは、すぐに“でんじほう”の発射体制に入る!
「行けえええええっ!!」
「ポッチャマアアアアッ!!」
 それでも、あたし達は怯まない。あたしは、お腹の底から思い切り叫んだ! それに答えるように、みんなの力を借りたポッチャマは加速していく! そして、ジバコイルとぶつかった瞬間、大爆発が起きた! まぶしい閃光と凄まじい爆風で、あたしは思わず腕で目を遮った。
「!!」
 その爆発に、操られたポケモン達と戦っていたサトシ達も、思わず手を止めて目を向けていた。
「ポッチャマ・・・」
 あたしは、少し不安になった。でも、ポッチャマはすぐに煙の中から飛び出して、空中回転しながらカッコよく着地した。そして、その前には地面に落ちて動かなくなったジバコイルの姿が。戦闘不能・・・!
「ジバコイル・・・」
 メイルが、そうポツリと一言声を出した。そして、顔をうつむけてこう言った。
「見事です・・・まだ勝負は終わっていないと言いたいですが、私の負けです・・・」
「・・・え!?」
 あたしは、メイルの突然の一言に驚いた。すると、ステージの周りに張られていたダメージバリアーが消えていった。サトシ達と戦っていたポケモンやポケモン達が、力を失ったように次々と倒れていった。
「その志、恐れ入りました・・・どうやら、私は誤った方向に進んでしまったようです・・・夢を抱きしめれば、未来は変えられる・・・私はそれを、忘れてしまっていたようです・・・」
 メイルはそんな事を、淡々と話した。その緩んだ表情は、ウソをついているとは思えなかった。それを聞いていたサーナイトも、何かを感じていたようだった。
「・・・どうして最初からそう認めなかったの! 今からでも遅くないよ! まだやり直せるよ! だから・・・!」
「残念ですが、私はもう、歯止めの利かない所まで進んでしまいました・・・もうやり直す事など・・・それよりも、自分の事を心配したらどうですか?」
「!?」
 その言葉に、あたしはまた驚いた。すると、ステージに真っ二つになったあたしのコンテストパスが投げ込まれた。
「若いあなたなら、まだ何度でもやり直しができます・・・あなたはあなた自身の夢を信じて、道を切り開いて行くのです・・・その夢を、どうか忘れないでください・・・決して、私のようになってはいけませんよ・・・サーナイト・・・」
 すると、サーナイトが念じ始めた。メイルやジバコイル、サーナイトの姿が消え始めた。“テレポート”だ。
「メイル!?」
「フタバタウンのヒカリ・・・会えてよかったです・・・あなたと、もう少し早く知り合えていたら、私の人生は変わっていたかもしれません・・・」
 メイルは笑みを浮かべてそう言い残すと、ジバコイルとサーナイトと一緒に、その場から完全に姿を消した。

「メイル・・・」
 終わった・・・あたしは、メイルが立っていた場所をしばらく見つめていた。メイルって、ホントはいい人だったんだ・・・あたしも、もし一歩間違えていたら、メイルみたいになっていたのかな・・・? そんな事を考えずにはいられなかった。
「ヒカリ!!」
「ヒカリさん!!」
 すると、みんながあたしの側に駆け寄ってきた。
「うん、ダイジョウブ・・・」
 そう言おうとした時、あたしの体が急に重くなってきた。そして、あたしの膝が床について、そのまま倒れそうになった。でも、あたしの体は何かに支えられた。見ると、それはエテボースの尻尾だった。あたしの正面にはエテボース。それに、ミミロルとパチリスも、あたしの体を支えようと手を伸ばしていた。
「みんな・・・」
 そんな3匹のぬくもりを感じて、あたしは暖かい気持ちになった。その時、ポッチャマがあたしの前によろよろと歩いてきた。
「ポチャ」
 ポッチャマは、真っ直ぐな瞳であたしに真っ二つになったコンテストパスを差し出した。
「・・・ありがとう」
 あたしは、それをゆっくりと手を伸ばして受け取った。間近で眺めてみる。
「これで、またコンテストに出られる・・・」
 あたしは嬉しくなった、これも、みんなのお陰・・・あたしは、4匹の顔を見た。みんな笑ってる。それを見て、あたしは嬉しくて涙が止まらなくなった。
「みんなあああっ!!」
 あたしは、我慢しないで泣きながら4匹を思い切り抱きしめた。突然の事に、4匹は少し驚いた。
「ありがとう・・・ホントにありがとう・・・こんなみんなと一緒なら・・・あたし、ダイジョウブ!!」
 あたしは泣きながら、みんなにそう言った。
「よかったな、ヒカリ」
「これで一件落着だな」
「ポケモンが人を励ますって事、あるなんてハルナ知らなかった・・・」
「ああ、全くだね・・・」
 みんなも、そんなあたし達を見て、笑みを浮かべていた。その時、あたしの上がまぶしく光った。見ると、後光のようなものがスポットライトのようにあたしに降り注いでる。
「あ、あれ・・・?」
 すると、あたしの体の痛みが、不思議とどんどん消えていく。体もどんどん軽くなっていった。
「体が・・・治ってる?」
 あたしは抱きしめた手をほどいて、両手のひらを見ながら立ってみる。立つ事にも、全然違和感がない。
「これは・・・“ねがいごと”だ・・・!」
 タケシが言った。
「“ねがいごと”って、自分とは違う相手を回復させるわざ、だったよね・・・」
「ああ。そして、“ねがいごと”を覚えられるポケモンといえば・・・」
 ハルナの質問に、タケシがそう答えた。
「・・・サーナイト?」
「え? じゃあ、これって・・・」
 ノゾミの言葉で、あたしは確信した。あたしは、さっきまでメイルが立っていた場所を見た。間違いない、これはメイルのサーナイトがやったんだ・・・あたしは、メイルがこのわざであたしに謝って、そして応援しているような気がした。

 * * *

 昼間と打って変わって、星がよく見えるその日の夜。
 ポケモンセンターの部屋で寝ようとしていたあたしは、寝る前にポッチャマを出した。
「ポッチャマ、一緒に寝ようよ」
「ポチャ?」
 ポッチャマはその言葉に驚いた。当然か、こんな事ってあまりした事なかったからね。でも、今日はポッチャマと一緒に寝たい。いろいろ、言いたい事があるから・・・
 あたしはポッチャマを抱きしめて、ベッドに入った。ポッチャマが、あたしの顔のすぐ横に顔を出した。
「ねえ、ポッチャマ」
「ポチャ?」
「あの時、コンテストに出たいって言ったのも・・・ハルナの前で、アドリブで演技を見せたのも・・・全部、あたしを励ましたかったからなんでしょ? それも全部、あの時あたしの悩みを聞いてくれたからなんでしょ? ごめんね、ホントはこっちがリードしなきゃいけないのに・・・」
「ポチャ!」
 ポッチャマは、「そんな事ないよ」って言ってるように、笑みを見せた。
「あたしね、みんなには『充電』してるって言ってたけど、ホントは休んでたの。あの時も言ったけど、どうしていいかわからなくて、自分ってコンテストに向いてないかな、って思っちゃって・・・だからって、みんなに心配かけたくなかったし・・・」
 あたしは、しばらく間を置いてから、次の事を話した。
「でもね、まさかポッチャマが励ましてくれるなんて思ってなかったわ。そんなポッチャマがいたら、あたしもがんばれるんじゃないかな、って気がしたの」
「ポチャ・・・」
 そう言うと、ポッチャマはちょっと照れた表情を見せた。
「こんなあたしだけど、またコンテストに出るって言ったら、力になってくれるよね?」
「・・・ポチャ!」
 ポッチャマは、「もちろんだよ!」って言ってるみたいに、はっきりとうなずいた。
「ありがとう・・・あたし、ポッチャマを最初のポケモンにしてよかった・・・」
 あたしは、ポッチャマをギュッと抱きしめた。
「ポッチャマ、大好き・・・!」
 あたしは目を閉じながらポッチャマとおでこを合わせて、そう言った。
 こんなポッチャマと一緒に、またコンテストのステージに立ちたい。そんな思いが、あたしの中で強くなっていった・・・

 * * *

 数日後。
 ポケモンコンテストコンペキ大会の当日がやって来た。前の騒ぎで、コンテスト会場はごちゃごちゃになったみたいだけど、ちゃんと元通りになって、予定通り開かれる事になった。
 客席に、みんなと座るあたし。膝の上にはポッチャマ。隣の席には他の3匹がいる。みんなでいろんな人の演技を目に焼き付けておこうって思って、ポケモン達と一緒に見る事にしたの。あたしの手には、復旧してもらったコンテストパス。
「お待たせいたしました! 数日前に大きな事件こそありましたが、この通り予定通り無事に開催する事ができました、ポケモンコンテストコンペキ大会! 司会は私・・・」
 そんないつものアナウンスが始まった。客席で見ているだけで、しかもまだ演技が始まってないのに、なぜだか心が躍った。
「ヒカリ、今ここにいて、コンテストに出たくなったんじゃない?」
 隣の席に座っているノゾミが、あたしに言った。
「うん! やっぱりあたし、コンテストに出たい! また前みたいになっちゃうかもしれないけど、コンテストを思いっきり楽しみたい!」
 あたしは、そんな気持ちをこの場所で確かめた。
「そうさ。神様はきっと、ヒカリに試練を与えて、強くなれって言ってるんだよ。夢はいつか叶うものなのかもしれない。でも待ってるだけじゃダメさ。自分で掴んでいくものだからね!」
 ノゾミがいつものように、カッコイイ事を言った。
「うん! みんな、次に出る時のためにも、しっかり演技を見ておこうね!」
「ポチャ!」
「ミミ!」
「チパ!」
「エイポ!」
 あたしが言うと、ポッチャマ達は元気よく答えてくれた。
「よかったな、ヒカリ」
「サトシに泣いてた事もあったって聞いた時はどうなるかと思ったけど、これで一安心だね。それにしてもサトシ、『目にゴミが入ったって思った』はないんじゃないの?」
「い、いや・・・まさか、あの時ヒカリがあんなに落ち込んでるなんて思ってなくてさ・・・」
 ノゾミとサトシは、そんなやり取りをしていた。
「では早速、エントリーナンバー1番の方から、どうぞ!!」
 司会の高らかな声が響いた。

 早速1次審査が始まった。ステージでたくさんのポケモン達が舞った。演技1つが終わる度に、会場に拍手が鳴り響く。あたしはそんな様子を自分の経験と重ね合わせながら、演技の1つ1つを目に焼き付けた。
「さあ、1時審査も最後になりました! エントリーナンバー35番、コトブキシティのハルナさんです!!」
 いよいよハルナの番が来た。会場が拍手に包まれる。ハルナは、やっぱり三日月が描いてある緑色のドレスを着て、ステージに出て来た。そして、客席に向けてスカートのひらを持って、「えへっ」と言ってるみたいに笑顔でかわいらしくポーズを決めた。
「ハルナーッ!! がんばってねー!!」
 あたしがそう叫ぶと、ハルナはこっちを見つけて、左手を振って答えてくれた。そして、左手にボールカプセルをつけたモンスターボールを持った。顔は緊張してるのかと思ったら、結構張り切ってる様子。「ヒカリさんの前だから、いい所見せなくちゃ!」とでも思ってるのかな?
「時の流れは移り行けども、変わらぬその身の美しさ!! 月光の力を借りて!! ポケモン、ルナトーン、その名はルーナ!! ここに見参っ!!」
 そんな前向上を言って、ハルナはモンスターボールを投げ上げた。モンスターボールから、紙吹雪のように光る星くずがパアッと飛び出して、その中からルーナが現れた。
「行くよ、ルーナ!! ハルナスペシャルその3、『流星乱舞スターダストセレナーデ』!! “スピードスター”から“ねんりき”!!」
 ハルナの張り切った指示で、ルーナは“スピードスター”を発射。そして、“ねんりき”で念じ始める。すると、“スピードスター”は“ねんりき”でうまくコントロールされて、まるで流れ星のようにルーナの周りを飛ぶ!
「“スピードスター”と“ねんりき”、そしてルナトーンそのものとの絶妙なコンビネーション!! その姿は、まるで夜空の月と流れ星のようです!!」
 司会のアナウンスで、会場はヒートアップ。あたし達も、心が躍った。ハルナ、結構やるじゃない!
「凄いなあ、ハルナ!」
「ああ、ヒカリにコーチしてもらった甲斐があったな」
 サトシとタケシが、そんな言葉をこぼした。
「さあ、驚くのはまだ早い!! ハルナスペシャルその5、『爆裂花火メガファイアーワークス』!!」
「ハルナスペシャルその5?」
 あたしは、聞いた事もない『ハルナスペシャル』に耳を疑った。こんな演技、ハルナは練習なんてしてなかった。
「“シャドーボール”追加っ!!」
 ハルナの指示で、ルーナは“シャドーボール”を飛び回る“スピードスター”に向けて発射した。そして、それは“ねんりき”の力で『ハルナスペシャルその2』と同じように分裂した!
「まさか、『その2』と『その3』を合わせるのか!?」
 ノゾミが、思わずそんな事をつぶやいた。その予想は的中していた。
「行っけえっ!!」
 ハルナが、左手を突き出した。すると、分裂した“シャドーボール”は“スピードスター”の中にぶつかって、次々と炸裂! 黒と白の粒が、ステージに降り注いだ!
「“シャドーボール”も“ねんりき”で操り、分裂させて“スピードスター”にぶつけました!! これはかなり高度なわざです!!」
 司会のアナウンスが響く。でも、“シャドーボール”の黒の割合が多くて、何だかイマイチな気がした。
「う〜ん、何だか“シャドーボール”と“スピードスター”のコントラストが合ってないな・・・」
 ノゾミも、同じ事を考えてたみたい。そうこうしている内に、ハルナの演技は終わった。ハルナは、ルーナと一緒に丁寧にお辞儀をした。
「ハルナさん、ありがとうございました! 以上を持ちまして、1次審査は終了! これから、次の2次審査への審査に入りますので、皆さん、しばらくお待ちください!」
 司会のアナウンスが響いた。

 * * *

 ハルナに会うために、あたしは待合室に行った。入るとそこに、ハルナとルーナの姿があった。
「あっ、ヒカリさん!!」
 こっちから声をかけようと思ったら、ハルナはすぐにあたし達に気付いて、駆け寄ってきた。
「お疲れ!」
「どうでしたヒカリさん!! ハルナ、精一杯練習したんですよ!! ねえ、ルーナ!!」
 ハルナは自信満々に言った。ルーナも笑顔でうなずいた。
「ねえ、あの『ハルナスペシャルその5』って・・・」
 あたしは、見た事がなかった『その5』について、ハルナに聞いてみた。
「ああ、あれですか? ヒカリさんをビックリさせようって思って、内緒で練習してたんです!!」
 ハルナは笑顔でそう答えた。
「でも、なんで『その5』なんだ? 『その4』じゃないのか?」
「フフ、見てわからなかった? 1つ飛ばすくらい凄い演技なんだから!!」
 そんな疑問を聞いたサトシに、ハルナは胸を張って答えた。
「それについてなんだけどハルナ」
「何?」
 ノゾミが、『ハルナスペシャルその5』について、何か言おうとした。
「さあ、お待たせしました! 1次審査の結果発表です!」
 そんな司会の声が、奥にある画面から聞こえてきた。
「あっ、結果発表だ!!」
 ハルナは、すぐに画面に食いついた。
「厳正な審査の結果、2次審査に出場するのは・・・!」
 そんなアナウンスと一緒に、画面に次々と出場者の顔写真が出てくる。1人、2人、3人、4人・・・ハルナの顔はまだ出て来ない。
「ダイジョウブ! きっと出てる・・・!」
 ハルナは、自分に言い聞かせるようにそうつぶやいていた。5人、6人、7人・・・まだ出て来ない。張り詰めた空気が漂う。そして・・・8人目。その顔はハルナじゃなかった。
「あれ!? どうしてなの!? いけると思ってたのに!?」
 ハルナは、その事実に唖然としていた。
「ハルナ、さっき言おうとしてたけど・・・」
 そんなハルナに、ノゾミが声をかけた。
「あの『ハルナスペシャルその5』、ぱっと見ただけじゃ確かに凄い演技だった。でも、“シャドーボール”と“スピードスター”のバランスが取れていなかったよ」
「え!?」
 ノゾミの指摘に、ハルナは驚いた。
「“スピードスター”の白の方が目立てばよかったと思うんだけど、“シャドーボール”の黒の方が目立ってたよ。あたしは、その色合いに、違和感を覚えたね。多分、審査員もそうなんじゃないかな?」
「そう、だったんだ・・・」
 あたしの時と同じように説明するノゾミのコメントを聞いて、ハルナは肩を落とした。
「ごめんなさい、ヒカリさん・・・せっかく来てくれたのに、いい所を見せてあげられなくて・・・」
 ハルナは弱った声で、あたしにそう言った。
「違うでしょ。ヒカリにも言った事があるけど、コンテストは人のためじゃなくて、自分のためにするんでしょ」
 ノゾミは、いつかあたしに言った事をハルナに言った。
「あ・・・ごめんなさい・・・」
 ハルナは、また弱った声でノゾミに謝った。見ると、ハルナの目から悔し涙がこぼれていた。ハルナは、あたしの前で失敗して落ち込んでる。言ってあげなきゃ・・・!
「ダイジョウブ!」
 あたしは、ハルナの肩に手を置いて、そう言った。
「・・・え?」
「リボンゲットを焦っちゃダメ! また、次がんばればいいでしょ?」
 あたしはハルナの目を見て、はっきりとそう言った。
「ポチャポ〜チャ!」
 ポッチャマも、胸を張ってそう言った。
「・・・はい!!」
 ハルナは顔を上げて、はっきりと元気よく返事をした。元気になってくれたみたい。よかった・・・
「真似されちゃったね・・・」
 それを聞いたノゾミは、笑みを浮かべてそうつぶやいていた。
「コンテストはまだ終わってないよ。次に出る時のためにも、しっかり見ておかなきゃ!」
「ポチャマ!」
「はい!! そうします!!」
 あたしとポッチャマがそう言うと、ハルナは元気よく返事をして、流れた涙を手で拭いた。

 そんなあたしの様子を、あのメイルが影から静かに見守っていた事には、気が付かなかった・・・

 * * *

 そう、これはあたしも同じ。あたしも、ハルナみたいにがんばらなきゃ。いつかまた、あのコンテストのステージに立つ日のために・・・!
 また、あの時の時のように失敗しちゃうかもしれない。でも、あたしには、同じ夢を追いかけてついて来てくれるポッチャマ達がいる。途切れた迷路に立ち尽くす時だって、信じる仲間がいれば、乗り越えていける! どんな痛みも、どんな辛さも、ダイジョウブ!
 そう、あたしの夢は、まだ終わっていない。夢の続きは、これから始まるんだ・・・!

 こうしてあたし達の旅は、まだまだ続く。続くったら、続く・・・・・・


STORY10:THE END

[329] 次回予告
フリッカー - 2008年02月27日 (水) 19時24分

 旅の途中、あたし達は1匹のポケモンと出会った。

「これって・・・ポリゴンじゃないか」
「でも、体はこんなにツルツルじゃなかったぞ?」
「これはポリゴン2。ポリゴンをアップグレードしたバージョン。まあ、『進化』って言った方が、ポケモントレーナーにはわかりやすいかな?」

 それは、世界で初めて人工的に作られたポケモン、ポリゴンだった。

「あたしはゲイル。ポリゴンのプログラムを作ってるSEよ。そして、この子達が、あたしが研究している『ポリゴン三兄弟』、ツバイ、ドライ、フィーアよ」

 そして、ゲイルはあたし達にポリゴンの新しい姿を見せてくれた。

「これが、ポリゴン2をさらにアップグレードさせるパッチ。これで、ポリゴン2は新しい能力と姿を手にするんだ。その名も『ポリゴンZ』! 凄いでしょ!」
「『2』の次だから『3』なんじゃないの?」
「ちっちっ、『3』じゃおもしろくないでしょ」

 NEXT STORY:プログラムの命

「いやあっ!! あたしのポリゴンがあっ!!」

 COMING SOON・・・



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