【広告】Amazonにて人気の 日替わり商品毎日お得なタイムセール

小説板

ポケモン関係なら何でもありの小説投稿板です。
感想・助言などもお気軽にどうぞ。

名前
メールアドレス
タイトル
本文
URL
削除キー 項目の保存


こちらの関連記事へ返信する場合は上のフォームに書いてください。

[196] ヒカリストーリー STORY08 過去の傷跡
フリッカー - 2008年01月12日 (土) 20時19分

 開始早々修正を加えた新年初のヒカスト、仕切り直して公開です!
 『第61.5話』として書いた今回は、サトシの過去にもスポットライトを当てたエピソードなので、サトシファンも必見!

[197] SECTION01 迷走のヒカリ!
フリッカー - 2008年01月12日 (土) 20時21分

 あたしはヒカリ。トップコーディネーターになるために旅に出たポケモントレーナー。
 初心者用ポケモンをもらいに行った時に打ち解けたポッチャマをパートナーにして、ひょんな事から仲間になった、カントーから来たトレーナー、サトシとタケシと一緒に旅を始めたの。大小いろんな事を経験しながら、あたし達の旅は続く。
 これは、そんなあたしが旅の途中に経験した、ある日のお話。


SECTION01 迷走のヒカリ!


 ここは、どこかの町の小学校。
 校庭にチャイムが鳴り響いて、多くの小学生がカバンを背負って帰り道についていた。その多くが、2、3人ほど固まって帰り道についているけど、その中に、1人ぼっちで帰り道についていた、1人の男の子がいた。みんなが周りに「じゃあね」とか「バイバイ」とか言っている中で、その男の子は誰にも挨拶を交わしていなかった。まるで、それがわずらわしいと思っているかのように。そんな男の子を、もう1人、別の男の子が見ていた。もう1人の男の子は、人気(ひとけ)がなくなったのを見計らってニヤリと笑った後、急に男の子に向けて走り出した。男の子の横を横切る。その瞬間、肩が思い切りぶつかり合った。
「いてっ!」
「よぉっ! サトシ」
 もう1人の男の子は、肩がぶつかった事も全然気にする様子もなく、男の子の前に出て、笑みを浮かべて挨拶した。でも、その笑みは心の底から、というものじゃない。むしろ、何か企んでいるようなものだった。
「・・・な、なんだよ?」
 男の子の顔に焦りが見える。もう1人の男の子を無視して先に行こうとするけど、もう1人の男の子はまだ男の子の前に立ちはだかり続ける。男の子がよけようと動く度に、それをさせまいとするようにもう1人の男の子も動いて、とおせんぼうを続ける。
「おい、じゃまだって! じゃますんじゃねえよ!」
 もう1人の男の子は、自分からとおせんぼうをしておいて、わざとそんな事を口にする。
「じゃ、じゃましてるのはそっちじゃないか!」
「なんだと!?」
 苦し紛れの男の子の反論に、もう1人の男の子は怒って、男の子を思い切り突き飛ばした。背中から地面に倒れる男の子。
「ガキだいしょうのオレにむかって、ちょうしこいたらどうなるか、しらねえとはいわせねえぜっ!!」
 もう1人の男の子はそう言って、不敵な笑みを浮かべながら、立ち上がろうとした男の子のお腹を思い切り蹴飛ばした。
「ぐっ!!」
 立ち上がろうとしてた男の子は、お腹を抱えてしりもちをついた。
「おらよっ!!」
 でも、もう1人の男の子はもう一発蹴りをお見舞いする。今度は顔に当たった。思い切り顔を蹴られて、また倒れる男の子。
「や、やめてくれ・・・!!」
「『やめてくれ』? そういわれると、よけいやりたくなっちゃうんだよな〜っ!!」
 男の子の苦痛の叫びを聞いても、もう1人の男の子は暴力の手を緩めない。むしろそれを楽しんでいるように笑みを浮かべて、男の子を何度も思い切り踏みつけた。踏みつけられる度に、男の子は悲鳴を上げる。そして、涙を流していた。
「く・・・くそぉっ!!」
 やられっぱなしなのは嫌になったのか、男の子は自分を踏みつけるもう1人の男の子の足を両手で押さえた。
「!?」
「ええええいっ!!」
 男の子は、思い切り押さえたもう1人の男の子の足を押し返した。足を押されたもう1人の男の子は、驚きながらもしっかりとバランスを取って体制を戻す。
「このおおおおおおっ!!」
 男の子は、叫び声を上げながらもう1人の男の子に拳を振った。その様子は、怒ったというより、追い込まれてやけくそになったように見える。
「フンッ、くらえ! クロスカウンターッ!!」
 でも、もう1人の男の子はそれにも動じないで、余裕そうに男の子と同じように拳を振った。その拳は、男の子の拳が届くよりも先に男の子の顔を思い切り殴った。
「ぐわあっ!!」
 返り討ちにあった男の子は、弾き飛ばされて、また倒れる。
「ざんねんでした! 『ヒーローきどり』でカッコつけてんじゃねえよっ!!」
 もう1人の男の子はまた、さっきと同じように容赦なく男の子を踏みつけ始めた。悲鳴を上げる男の子を見て、もう1人の男の子はニヤリと笑っていた。しばらくの間それが続くと、気が済んだのか、もう1人の男の子は踏み付けをやめた。
「へへへ、スカッとするぜ! いっとくが、このことをママになんかいうんじゃねえぞ! もしいったら、またおしおきしてやるからな!」
 もう1人の男の子は、そう言って、男の前を去って行った。
「く・・・くそっ・・・!」
 その後ろ姿を見た男の子は、悔し涙を流しながら、ただわなわなと両手を握って、唇を噛むだけだった。

 傷だらけになった男の子は、1人涙目を隠すように顔をうつむけながら、とぼとぼと家に向かって行った。辺りに緑が広がって、建っている家も少ない場所。そこに、男の子の家があった。男の子は、その重いドアを開けた。
「ただいま・・・」
 男の子は、ポツリとそうつぶやいて家に入った。
「お帰り、サトシ・・・あら!? どうしたのその傷!?」
 そこに、男の子のママが現れた。男の子のママは、傷だらけになった男の子を見て、目を丸くした。男の子は、それにどう答えるか、一瞬迷った。
「・・・べ、べつになんでもないよ、ママ。サッカーやっててころんじゃっただけさ」
 男の子は目をそむけながらそう一言言って、2階の自分の部屋へ向けて、逃げるように素早く階段を上った。そして、素早く部屋に入って、バタンとドアを閉めた。カバンを下ろした男の子は、部屋の机の前に座って、顔を伏せた。そして、1人きりの部屋の中で、人知れず泣き始めた・・・

 * * *

 エイパムが進化したエテボースで挑んだ、ズイタウンのポケモンコンテスト。でも、結果はまたしても1次審査敗退。2回連続でこんな結果になっちゃうなんて、思ってもいなかった。自信をなくしちゃって、次のコンテスト出場もやめようかとも考えたけど、そこにノゾミが来てくれて、あたしの悪かった所を教えてくれた。「リボンゲットを焦っちゃいけない」そう教えられたあたしは、何とか不安が和らいだけど・・・

 * * *

 ズイタウンのポケモンコンテストが終わってから数日後の夜。
 他の2人はすっかり寝静まっている。そんな2人を起こさないように、あたしはこっそりと部屋の机に向かった。そして、ペンとメモ用紙を取り出した。

 サトシ、タケシへ
 今まで一緒に旅をしてくれてありがとう。あたしは、コンテストの事を1人になっていろいろ考えてみたい。だから、ここでお別れ。
 こんな形でしか言えなくてゴメン。さようなら。
 ヒカリより

 そう書いて、あたしはペンを置いた。そして、そのメモ用紙を2人がすぐ見つけられるように机の真ん中に置いて、そっと部屋のドアに向かった。部屋のドアノブに手を伸ばした時、何かがあたしの手を止めた。振り向くと、まだベッドで寝ているサトシとタケシが見えた。あたしが突然、いなくなったら2人共驚くよね、やっぱり・・・




 ・・・・・・ごめん!!




 あたしは、そんな思いを振り切って、ドアを開けて、部屋を出て行った。

 * * *

 あたしは、あの日からコンテストの事をいろいろ考えた。
コンテストに出るのは、ずっとあたしが憧れていた事だった。でも、あの時の失敗が頭から離れない。コンテストにまた出場するのかは、まだわからない。そんな事を考えている内に、あたしはこんな事を考えた。
 ママみたいなトップコーディネーターになるのが、この旅の目的だった。でも、もしコンテストに出る事をやめるんだったら、そんな旅の目的もなくなる。あたしがちゃんとした目標のあるみんなと一緒に旅をする意味なんて、もうないんじゃないかな、って。
 だからあたしは、サトシ達と別れる事を決めた。でも、あの2人に直接言う勇気がなかった。だから、こうやって置手紙を書いて、こっそり出て行くしかなかった。

 ごめん、みんな・・・こんな身勝手なあたしで。でも、みんなと一緒に旅をした楽しい時は忘れないよ・・・
 そう思いながら、あたしはポケモンセンターを重い足取りで後にした。恥ずかしいけど、泣いていた。
 何かが、あたしの足を止めた。あたしは、ポケモンセンターに振り向きそうになった。でも、あたしはすぐにそれをこらえて、自分の体に自分でむち打って、体を走らせた。

 行き先は・・・わからない。

 * * *

 ここは、どこかのコンテスト会場。そこでは、いつものように、コンテストが行われていた。
 もちろん、そこにあたしもいた。次は、あたしの番。
「それでは、エントリーナンバー9番、ヒカリさんです!!」
 そんないつものアナウンスを合図に、あたしはステージに出た。もちろん、ちゃんと準備したドレスを着て。
 観客席を見る。観客席はいつものように大にぎわい。でも、そこにあの2人――サトシとタケシの姿はない。
「・・・・・・」
 いつも応援してくれるあの2人がいない事に、あたしは少し戸惑った。でも、やるしかない! あたしは、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
「ダイジョウブ・・・」
 あたしは自分にそう言い聞かせて、モンスターボールを取り出した。
「ポッチャマ、チャームアーップ!!」
 いつもの掛け声をかけて、あたしは、ボールカプセルに入れたモンスターボールをステージに投げた。
 ステージに、ポッチャマが元気よく出てくる。そして、あたしは精一杯の演技を見せた。

 会場の待合室。
 いつものように、あたしは真ん中にある大きな画面を見つめていた。
 1次審査がいつものように終わって、2次審査に出場できる出場者の発表がされる所だった。
「厳正な審査の結果、2次審査に出場するのは・・・」
 そんなアナウンスと一緒に、画面に次々と出場者の顔写真が出てくる。1人、2人、3人、4人・・・
「お願い・・・」
 あたしはただ、祈るしかなかった。
 5人、6人、7人・・・




 8人。
 またしてもそこに、あたしの顔はなかった。
「そんな・・・どうして・・・!?」
 あたしは、その結果を見て愕然とした。こんなにやっても、あたしはできなかった・・・
「どうして・・・なんでなの!? 呪われちゃってるの、あたし・・・!?」
 あたしはガクリと頭を下げて、わなわなと両手を握りながら、そうつぶやくしかなかった。あたしは、1次から一歩も先にいけない人になっちゃっていうの・・・!? どうして・・・どうして・・・! あたしは、神様に見放された気分になった。あたしは何も悪い事はしてないのに、どうしてあたしばかり苦しめるの・・・!? 気が付くと、あたしの手に涙がこぼれていた。
「どうして・・・どうしてえええええっ!!」
 あたしは場所も構わず、顔を上げて思い切り泣き叫んだ・・・

 * * *

 あたしは、ガバッと寝袋から体を起こした。ここは、暗い木陰。あたし自身が、荒い息をしているのが聞こえる。
「また、あの夢・・・」
 今のは夢だった・・・でも、またあの悪夢・・・サトシ達と別れて以来、あたしは毎晩この悪夢にうなされる。この悪夢のせいで、あたしは毎晩満足に寝られない状態。
「どっかにムウマージでもいるのかな・・・?」
 そう思ったあたしは、辺りを見回してみる。でも、特にそれらしい影は見当たらない。それが逆に、あたしを不安にさせた。もしかしたら、どこか見えない所で・・・あたしは思わず、寝袋に潜り込んだ。旅の中で、こんなに夜が怖いって小さな子供みたいな事を思った事なんてなかった。なんでだろう・・・? 顔を少しだけ出すと、近くでズバットが飛んでいるのが見えた。それを見たあたしは、また怖くなって顔を引っ込めた。
「これって、何か不吉な事の前触れとかじゃ、ないよね・・・」
 あたしは寝袋の中で、そんな事をつぶやいた。結局、この夜も全然眠れなかった。

 次の日。
 あたしは、とある小さな町に立ち寄っていた。といっても、あてもなく歩いた結果、たどり着いた場所なんだけど。
 緑がいっぱいで、いくつか家があるだけの、のどかな町。でも、それを見ても、あたしは何も感じなかった。
 何かが足りない。何だか、心にぽっかりと穴が開いた気分だった。それを紛らわそうと、ポッチャマを出したけど、それでもほとんど変わらない。
 旅って、こんなにつまらないものだったっけ・・・? 旅に出たばかりの頃は、つまらないなんて思った事はなかったのに・・・

 しばらく歩いていくと、ようやく町らしい町並みに入った。そんな町並みを、あたしは重い足取りで歩いていく。
 途中、お腹が空いたから、適当におにぎりを手に入れて、公園で食べる事にした。
 公園のベンチに腰を下ろして、おにぎりを口に運ぶ。でも、なぜかおいしいとは思わなかった。そのせいか、食べるのが進まない。あたしは、誰も座っていないベンチの隣を見た。そこに、一緒におにぎりを食べるサトシとタケシの影が見えて、すぐに消えた。今までだったら、こういうのはみんなで食べていたよね・・・それに、タケシの作るご飯も、おいしかったなあ・・・そう思うと、今の旅が余計につまらなく思えてきた。サトシ達、今どうしてるだろう・・・まさか、あたしの事を探してるのかな・・・?
「ポチャ・・・」
 気が付くと、肩にいるポッチャマがあたしの顔を心配そうに見ていた。
「あ・・・ダイジョウブダイジョウブ! 別に気にしてなんかないから! ね?」
 あたしは、笑顔を作ってそう言い聞かせた。そして、無理におにぎりをほおばった。それでも、ポッチャマの心配そうな表情は緩まなかった。やっぱり、ポッチャマもわかってるんだ。でも、後悔した所で、後戻りなんてできない。サトシ達が今、どこにいるかなんてわからないし、こっちから探す術もない。やっぱり、これからどうするか決めてないあたしが、サトシ達と一緒にいたって・・・
 そう思っていると、右足に何かが当たった。何かと思ってみていると、それは砂ぼこりを被った新聞だった。
「何だろ、これ?」
 風で飛んで来たのかな? あたしは、とりあえずその新聞を拾ってみた。砂ぼこりをはらって、タイトルを読んでみる。
「『ズイタウンポケモン新聞社発行 週刊ポケモンジャーナル』?」
 ポケモンに関する新聞みたい。日付はまだ新しい。そんな表紙に、ちょっと気になる文字が。
『最速リポート! ポケモンコンテストズイ大会!』
 新聞なんてあまり読んだ事ないけど、あたしはその文字にちょっと興味が湧いた。気が付くと、あたしの目は新聞のその記事に向いていた。なるほどその記事には、この間のコンテストのモノクロ写真がでかでかと載っていた。新聞だけあって、字も多い。あたしはそんなわずらわしい字は読まないで、写真ばかり見ていた。そして、またページをめくる。やっぱり同じようなページだった。でも、そのページの記事を見て、あたしは目を疑った。
『トップコーディネーターの子、絶不調!? フタバタウンのヒカリ、眠れるその実力』
 そんなタイトルと一緒に、その記事にはあたしのモノクロの顔写真がしっかりと載っていた。まさか、あたしの事が記事に取り上げられるなんて、思ってもいなかった。あたしは嫌な予感がしたけど、試しにその記事をちょっとだけ目で読んでみた。
『かつてのトップコーディネーター、アヤコの娘として、注目されていたフタバタウンのヒカリ。コトブキ大会でいきなり決勝進出という華々しいデビューを飾り、続くソノオ大会ではリボンを勝ち取っている。しかし、』
 あたしは、その先を読むのがちょっと怖くなって、そこで一旦止めた。でも、やっぱり先が気になるから、その先を読んでみる。
『アラモス大会以降、彼女の成績は芳しくない。前回のヨスガ大会と、今回のズイ大会では1次審査すら突破していないのだ。特に今回のズイ大会では、直前に進化したばかりだというエテボースで挑んだにも関わらず、その能力を活かしきる事ができないまま、1次審査脱落となっている』
 この先は、長そうだからちょっと飛ばした。
『トップコーディネーターの娘として、その才能を期待されていたヒカリであるが、早くもその才能の伸びが行き詰ってしまったというのだろうか? もし、このままで終わってしまうのなら、逸材ではなかったという事になってしまうのだが・・・』
「・・・・・・」
 その記事を読んで、あたしは愕然とした。あたしは、こんなに周りから期待されていたなんて・・・それを、あたしは裏切っていたなんて・・・あたしの心に、強いプレッシャーがかかった。今度もし、失敗なんてしちゃったら・・・嫌でもそんな考えが頭を過ぎった。そして、それが怖くなった。
「ノゾミはいいよね・・・わざの魅せ方もちゃんと知ってるし、それだからコンテストでもいい成績いっぱい出してる。でも、それに比べたら、あたしは・・・」
 あたしは、自分に自信が持てなくなった。こんなあたしで、本当にできるの・・・? そんなあたしの不安を、ポッチャマも感じ取っていた様子だった。時間が、いつもより長く感じた。
 そう思っていた時だった。あたしの肩が急に軽くなった。
「ポチャアアアッ!?」
 すぐに、上からポッチャマの悲鳴が聞こえた。
「ポッチャマ!?」
 あたしはすぐに、上を見上げた。するとそこには、見慣れたニャースの顔を模った気球が! ポッチャマは、そこから伸びたマジックハンドに捕まってる!
「わ〜っはっはっは!!」
 ゴンドラの中から、聞き慣れた高笑いが聞こえてくる。
「何だかんだの声を聞き!!」
「光の速さでやって来た!!」
「風よ!!」
「大地よ!!」
「大空よ!!」
「天使か悪魔か、その名を呼べば!!」
「誰もが震える魅惑の響き!!」
「ムサシ!!」
「コジロウ!!」
「ニャースでニャース!!」
「時代の主役はあたし達!!」
「我ら無敵の!!」
「ロケット団!!」
「ソーナンス!!」
「マネネ!!」
 いつものように自己紹介するあいつら――間違いなくロケット団だった。
「ロケット団!!」
「・・・ってあれ? ジャリボーイがいないぞ?」
「ジャリガール1人だけ・・・? どうしてニャ?」
 コジロウとニャースが、サトシ達がいない事に気付いて、目を丸くした。
「何言ってんのよ! こういう時こそチャンスじゃない! 『鬼の居ぬ間に洗濯』って言うでしょ?」
 すると、ムサシがいつも以上に自信あり気に2人に言い聞かせた。
「・・・そうか! こうなったら、ひょっとしたらジャリボーイもつられて来るかもしれないし!」
「そうと決まれば、作戦は続行ニャ! ポッチャマはいただくのニャ!」
 2人が力強く言った。
「ポッチャマ、今助けるからね!! エテボース!!」
「エイポッ!!」
 すぐにポッチャマを助けなきゃ! あたしはすぐに別のモンスターボールを取り出して、エテボースを出した。
「行くのよ、ハブネークッ!!」
 ムサシも、ハブネークを繰り出してきた! エテボースが身構える。
「“スピードスター”!!」
 あたしの指示で、エテボースは2本の尻尾を使って“スピードスター”を発射! 無数の星が、ハブネークに向けて飛んでいく!
「ハブネーク、“ポイズンテール”で打ち消しちゃいなさい!!」
 負けじとムサシも指示する。ハブネークは紫に光らせた尻尾を、飛んで来る“スピードスター”に向けて振った! “スピードスター”を次々と尻尾で切り裂いていくハブネーク。“スピードスター”は粉々になって、ハブネークの前で散っていく。
「!!」
 あたしはそれを見て、愕然とした。だって、粉々になった“スピードスター”は、砂粒のように輝きながら、ハブネークの前で散っていたんだから! これじゃ、コンテストバトルじゃ減点になっちゃう。あたしはそんな状態に、ショックして指示を出すのも忘れちゃった。
「今よ!! “まきつく”攻撃!!」
 それが、隙を作っちゃった。気が付くと、ハブネークは長い体で、エテボースに巻きついていた!
「エテボース!! ええと・・・」
 あたしはこういう時にはどうするべきか、焦った。
「ホホホ、どうしたの? 本調子じゃないようね、ジャリガール?」
 そんなあたしを挑発するように、ムサシが自信満々に言った。
「そんな調子だから、コンテストも1次から先に進めないのよ!!」
「・・・!!」
 あたしは、ムサシが言った言葉に驚いた。なんでその事を知ってるの!?
「それが、あんたの限界なのよ、ジャリガール!! 前の赤いジャリガールは、そんなものじゃなかったけどねえ、オホホホホ!!」
 あたかもコンテストに出た事があるかのように、胸を張って高笑いするムサシ。
「限界・・・!」
 その言葉が、あたしの心にグサリと突き刺さった。心が動揺する。あたしは、その言葉に反論できなかった。受け入れたくなんてないけど、これが、あたしの限界・・・握っていた手の力が抜けたのがわかった。あたしは完全に放心状態になって、何もできなくなった。エテボースは指示を待っている様子だけど、あたしは何もできなかった。あたしは・・・
「さあ、せっかくだからそのエテボースもいただいちゃうわよ!!」
 そんな声がしたと思うと、ハブネークがエテボースから離れた所を見計らって、別のマジックハンドが伸びてきて、エテボースを捕まえた!
「ああっ!! エテボース!!」
「ハブネーク、“くろいきり”!!」
 あたしが気付いたのも遅かった。すぐにハブネークが、黒い煙を口から吐いた! 辺りが見えなくなって、息が詰まりそうになって咳が止まらなくなった。
「そんな訳で!!」
「帰る!!」
 そんな声が聞こえてきた。
「ポッチャマ・・・!! エテボース・・・!!」
 このままじゃ、逃げられちゃう! でも、あたしには“くろいきり”を払えるわざが使えるポケモンがいない。このままじゃ・・・! そう思った時だった!
 どこからともなく、白い風があたしの上を通り過ぎた! その風が、“くろいきり”を払いのけていく。視界が晴れると、その白い風がロケット団の気球に当たったのが見えた。すると、気球がみるみるうちに凍っていく。あれは、“ふぶき”!?
「うわあああああっ!!」
 凍って飛ぶ力を失った気球は、そのまま地面へと落ちていった。
「だ、誰!?」
 あたしは、“ふぶき”が飛んで来た先に振り向いた。そこには、見慣れた女の人とポケモンの姿があった。
「お久しぶり、ヒカリちゃん!」
「ミライさん・・・!?」
 そう、そこにいたのは、前に会った事のあるサトシのいとこ、ミライさん。その側にはミライさんのポケモン、グレイシアが。でも、なぜか前に一緒にいたカズマの姿はない。
「何があったのかは知らないけど、助太刀してあげるわ!」
 ミライさんがあたしの隣に来て、あたしにウインクした。
「あっ!! お前はいつかの!!」
「そう、あたしはミライ。人呼んで『氷の魔女』。覚えていてくれて光栄よ、なんてね!」
 ミライさんは、いつもの軽いノリでロケット団に自己紹介した。
「この〜っ、カッコつけちゃって!! ハブネーク、やっちゃいなさい!!」
「マスキッパ、お前もだ!!」
 ハブネークが前に出る。コジロウもマスキッパを繰り出した。でも、いつものようにマスキッパはコジロウの頭に喰らい付いた。
「いて〜っ!! 違う違うって!!」
 そんなコジロウの様子を見て、ミライさんは呆れた様子を見せた。
「じゃ、リクエストにお答えして・・・冷や冷やに冷やしてあ・げ・る、なんてね! グレイシアちゃん、“ふぶき”!!」
 ミライさんはいつもの軽いノリで指示を出す。グレイシアはそれに答えて、ロケット団に“ふぶき”を発射!
「うわ〜っ、寒〜っ!!」
 “ふぶき”は容赦なくロケット団を飲み込んだ! 寒さで身震いする間もなく、ロケット団はたちまち氷付けになった!
「一丁上がり、なんてね!」
 ミライさんは、自信満々にポーズを取った。それは、まるでポケモンコーディネーターみたいだった。
「ポチャーッ!」
「エイポーッ!」
「ポッチャマ! エテボース!」
 落ちた気球から、ポッチャマとエテボースが出て来た。2匹とも無事。あたしも、2匹も所に駆け寄った。
「さあ、トドメはゆずるよ、ヒカリちゃん!」
「はい! ポッチャマ、“バブルこうせん”!! エテボース、“スピードスター”!!」
 ミライさんに言われた通り、あたしは攻撃を引き受けた。ポッチャマは“バブルこうせん”を、エテボースは“スピードスター”を凍ったままのロケット団に向けて発射! 命中! そして、大爆発!
「うっそだあああああああっ!!」
 爆発で氷から解放されたロケット団は、そんな悲鳴を上げながら、いつものように空の彼方へ消えていった。
「これにて一件落着、なんてね!」
 ミライさんは、そんなロケット団を見送って、そうつぶやいた。ポッチャマも、得意気に胸を張った。あたしも、ほっとした。でも、何だか勝ったって気分がしない。ムサシのあの言葉が、心に引っかかる。ミライさんが助けに来てくれなかったら、あたしは・・・
「さて、改めましてお久しぶり、ヒカリちゃん!」
 ミライさんが、あたしに体を向きなおして、笑顔を見せた。
「あ、さっきは、ありがとうございました」
 あたしも、慌ててお礼を言った。
「お礼なんていいのよ、なんてね! ところでヒカリちゃん、サトシやタケシ君はどうしたの? なんで1人でいるの?」
「え!? そ、それは・・・」
 ミライさんの質問に、あたしはどう答えようか、戸惑った。一度会ったミライさんにサトシ達と別れたなんて言えなかった。ミライさんの表情が変わった。
「・・・さ、散歩してただけです!」
 あたしは苦笑いをして、思いついた言い訳をすぐに口に出した。
「へえ、散歩ねえ・・・じゃあ、なんでリュックしょってるの?」
「あ・・・!」
 ミライさんの鋭い質問に、あたしは不意を突かれた。
「ヒカリちゃん、ウソをついたわね。何か隠してるでしょ?」
 ミライさんは疑い深い目であたしの顔をまじまじとのぞき込んだ。
「べ、別に、何も・・・」
 あたしは苦笑いを保って、必死で隠そうとした。
「じゃあ、聞くわ。サトシ達はどこにいるの?」
「え!?」
 またしても、ミライさんの鋭い質問。あたしは必死で言い訳を探した。でも、なかなか思いつかない。
「仲間の居場所もすぐに教えられないって、どういう事? やっぱり図星のようね」
 ばれちゃったみたい・・・でも、なんて言えば・・・あたしは、ミライさんから目をそらした。
「ヒカリちゃんは、1人でどこかに行こうとしてるんでしょ? それも、自由行動とかじゃなくて、何かサトシ達と一悶着あって、1人になった・・・違う? あたしのカンだけどね」
 ほとんど当たってる・・・ミライさん、なんて鋭いんだろ・・・
「何があったの? またサトシとケンカでもしたの? 正直に言った方がいいよ?」
 ミライさんが、さらに質問を続ける。あたしは、本当の事を言おうか、迷った。
「そ、それは・・・」
 でも、やっぱり言えない。みんなと旅をする意味がなくなったから別れたなんて、恥ずかしくて言えない・・・!
「ミライさんには、関係ない事ですっ!!」
 あたしはとうとう、そう言って素早くミライさんに背を向けて、走ってその場を逃げ出した。
「あっ、ちょっとヒカリちゃん!」
 ミライさんがそう止めるのも聞かないで、あたしはその場から必死で逃げた。
「ポチャーッ!」
「エイポーッ!」
 ポッチャマとエテボースも、後を必死で追いかけてきた。残ったミライさんは少し追いかけたけど、足で何かを踏んだ事に気付いて、すぐに止まった。ミライさんは、足元に目をやる。踏んでいたのは、あたしが落とした『ポケモンジャーナル』。あたしの事が書いてある記事が開いたままになっていた。ミライさんはそれを拾って、少し目を通した。
「まさか・・・ヒカリちゃん・・・」

 * * *

 一体どれくらい走ったかな・・・もう追いかけてきてないみたい・・・あたしは足を止めた。ポッチャマとエテボースも、すぐに追いついてきた。
「はあ、はあ、はあ・・・」
 息が切れる。あたしは、思わずかがみ込んだ。ポッチャマとエテボースも、荒い息をしている。
「もう、この辺りまで来れば、ダイジョウブ・・・」
 あたしがそう自分に言い聞かせた。でも、何だかすっきりしない。やっぱり、正直に言った方がよかったかな・・・? あたしは、そんな事をしなかった自分に、もどかしさを覚えた。そう考えていた時だった。
「うわああっ!!」
 突然、誰かの叫び声が遠くから響いた。この声は、聞き慣れた懐かしい声。
「この声・・・サトシ!?」
 この近くに、サトシがいる!? しかも、何かあったみたい! サトシに、何かあったの!? あたしは反射的に、声が聞こえた方へと走り出した。

 声がしたのは、小さな公園の前。そこに着くと、そこには信じられない光景が映っていた。
 そこに、確かにサトシはいた。でも、そのサトシは何かに弾き飛ばされて、木に思い切り背中からぶつかった。そのまま、力なく倒れるサトシ。そんなサトシは、なぜか上着を開けた状態で、そして傷だらけだった。
「!?」
 あたしは、そんなサトシの姿に目を疑った。な、何が起こってるの!?


TO BE CONTINUED・・・

[212] SECTION02 サトシとヒカリの癒えない傷跡!
フリッカー - 2008年01月17日 (木) 19時51分

 あたしは、近くにあった木の陰に隠れながら、様子を覗った。エテボースがサトシの所に行こうとしたけど、あたしはそれを止めた。
「へへへ、スカッとするぜ! まだ楽しませてくれるよなあ、『ヒーロー気取り』さんよぉ!」
 すると、今度は別の声がした。明らかに嫌味な声。見ると、そこにはズボンのポケットに両手を入れた、髪はボサボサの明らかに嫌な雰囲気の男の子が立っていた。
「ママに助けて欲しいのか? ま、そんなママもここにはいないけどな! オコリザル、やっちまいな!!」
 その男の子はそう言うと、側にいた1匹の怒り顔をしたポケモンが勢いよくサトシに向かって飛び出した!
「や、やめろ・・・!! やめてくれえええええっ!!」
 そんな怒り顔のポケモンを前に、サトシはいつものサトシとは思えないほどのおびえた様子で悲鳴を上げた。それでも、怒り顔のポケモンは、容赦なくサトシに向かって勢いよく右の拳を振った!
「がはっ!!」
 その拳は、サトシのお腹に直撃! 急所に拳を受けたサトシは、その場にうずくまった。そんな有様は、完全に『いじめ』にしか見えなかった。そもそも、サトシがいじめられてるって状態そのものが、あたしには信じられなかった。
「ピカッ!!」
 すると、そんなサトシを怒り顔のポケモンから守とうと、ピカチュウが前に出た。そんなピカチュウも、なぜか傷だらけだった。ピカチュウは、“でんこうせっか”で怒り顔のポケモンに向けて突撃する! 直撃! 怒り顔のポケモンはのけぞった。
「邪魔すんじゃねえよっ!! “しっぺがえし”だあっ!!」
 でも、怒り顔のポケモンと男の子は怯まない。怒り顔のポケモンがさらに怒った顔をして、ピカチュウに拳をお見舞いした! かなりのパワー。一撃でサトシの側に弾き飛ばされた!
「へっ、たいした事ねえじゃねえか、その電気ネズミも。もっとマシな奴はいねえのかよ!」
 男の子は、ぐちをこぼすようにそんな事をつぶやいた。あたしは怒り顔のポケモンが何なのか調べるために、ポケモン図鑑を取り出した。
「オコリザル、ぶたざるポケモン。いつもなぜか猛烈に怒っており、逃げても逃げてもどこまでも追いかけてくる性格」
 図鑑の音声が流れた。何だか嫌そうなポケモン・・・
「サトシ!!」
 そこに、タケシが駆けつけた。
「タ、タケシ・・・」
「どうしたんだ!? 一体何の騒ぎなんだ!?」
 タケシがそう言いながら、サトシの体を起こしていた時、男の子は目を丸くした。
「何だあ、お前? どこのどいつだ? ま、誰にせよオレは邪魔されるのが一番嫌いなんでな。ただで済む訳ねえよなあっ!!」
 男の子の声にあわせて、オコリザルがサトシ達の前に出た。そんな男の子の気迫に、あたしは嫌なものを感じた。
 この男の子は、一体何者なの? なんでサトシをいじめてるの?


SECTION02 サトシとヒカリの癒えない傷跡!


 男の子はまた少しいらだった様子だった。
「貴様・・・オレを誰だと思ってる!? オレはマサラタウンのマサシ、ポケモンバトルでも負け知らずな『ガキ大将』だよ!!」
 男の子は自信満々にタケシに向かって言った。
「『マサラタウン』って、サトシと同じ・・・」
 『マサラタウン』って言葉に、あたしは驚いた。
「えぇ!? おいっ!!」
 そんなマサシっていうらしい男の子はいらだってそう言うと、オコリザルがものすごい気迫でサトシ達の前に躍り出た!
「くっ、頼むぞ、ウソッキー!」
 タケシがそう言って、モンスターボールを取り出して、ウソッキーを出した時だった。
「ダメだ、タケシ! あいつと戦っちゃ・・・ダメだ!」
 サトシが突然、ぎこちなくそう言った。
「!?」
 タケシはその言葉に驚いて、サトシに顔を向けちゃった。
「“インファイト”ォ!!」
 その隙に、マサシのそんな声が響いた。顔を戻すと、オコリザルは両手の拳に力を込めて、ウソッキーに飛び掛って殴りつけた! 完全に不意を突かれた。効果は抜群! それでも容赦なく、オコリザルは連続でウソッキーを殴り続ける! その中にはキックも混じっていた。そして、最後に腕を思い切り引いて、アッパーの一撃! ウソッキーがタケシの前に弾き飛ばされた。かなりダメージを受けたみたい!
「ウソッキー!!」
「そして“ダメおし”ぃ!!」
 それでも、なお攻撃の手を緩めないマサシ。オコリザルが、倒れたウソッキーにさらに拳の一撃を加えた! この一撃で、ウソッキーは完全にノックアウト。いつも以上に傷だらけになって倒れるウソッキー。そのパワーに、タケシも驚いた。
「ひどい・・・」
 それを見ていたあたしは、そんな戦法に卑劣さを覚えた。
「どうだ? このオレに歯向かおうなんて、10年早いんだよ!! 貴様ら全員、ぶっとばしてやるっ!!」」
 マサシがそう言うと、またオコリザルがものすごい気迫で向かってきた! サトシ達を狙ってる事に気付くのには、そんなに時間はかからなかった。オコリザルが、拳を振った。あたしは、思わず目をつぶった。

 でも、その拳がサトシ達にぶつかる音はしなかった。
「・・・?」
 あたしが目を開けて見てみると、そこには、拳を突き出した状態のまま、サトシ達のすぐ前で凍りついたオコリザルの姿が。
「だ、誰だ!?」
 サトシ達が、後ろを振り向いた。その姿を見て、2人は目を丸くした。
「『坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い』って言うけど、相変わらず弱い者いじめが好きなのね・・・マサシ君?」
 見るとそこには、ミライさんとグレイシアが。ミライさん、マサシの事を知っている?
「お・・・お前は『ヒーロー気取り』の姉貴・・・!? なんでここにいるんだ!?」
「たまたま通りかかっただけよ。通りすがりの『氷の魔女』、なんてね」
 驚くマサシを前にしても、ミライさんはいつもの軽い調子を崩さない。
「くそ〜っ、こんな時に!! ヘルガーッ!!」
 マサシはオコリザルを戻して、別のポケモンを出した。出ていたのは、黒い悪魔のような体をした、いぬポケモン。あたしは、ポケモン図鑑をもう一度取り出した。
「ヘルガー、ダークポケモン。ヘルガーの不気味な遠吠えは、地獄から死神が呼ぶ声と昔の人は想像していた」
 図鑑の音声が流れた。
「何が『氷の魔女』だ!! 奴に一発熱いの、お見舞いしてやれっ!! “かえんほうしゃ”っ!!」
 マサシの指示で、ヘルガーはグレイシアに向けて口から火を噴いた!
「ミライ・・・!」
「残念、そう来ると思ってたのよね! “ミラーコート”!!」
 サトシの心配をよそに、ミライさんは軽いノリのまま指示した。グレイシアは炎を受ける直前に、“ミラーコート”で炎をヘルガーに跳ね返した! ヘルガーは、それをよけようがない。でも、ヘルガーは跳ね返された炎に包まれても、平気で立っていた。
「どうしたぁ? あくタイプのヘルガーに、エスパーわざは効かねえんだぜ?」
 余裕そうにしゃべるマサシ。そうだ、エスパータイプのわざは、あくタイプには全く効かないんだ!
「いけない! すっかり忘れちゃってた〜・・・・・・な〜んてね!」
 ミライさんは最初、焦ったような素振りを見せたけど、すぐにいつもの軽いノリに戻って、余裕そうに笑顔でポーズした。
「何!?」
「そんな事は百も承知! 『お楽しみ』はここからよ!!」
 ミライさんの表情が、自信満々の表情になった。
「調子こきやがってえっ!! カイロスッ!! アリアドスッ!!」
 怒ったマサシは、別のポケモンを繰り出した。1匹は、あたしがポッチャマと出会ったばかりの頃にも見た、アリアドス。もう1匹は、茶色で頭の大きなハサミが特徴の、大きなむしポケモンだった。あたしは、ポケモン図鑑をまた出す。
「カイロス、はさみポケモン。2本の角で獲物を挟んでちぎれるまで離さない。ちぎれない時は彼方まで投げ飛ばす」
 図鑑の音声が流れた。
「ヤキが回ったみたいね。ニューラちゃん!! グレイシアちゃん!!」
 ミライさんはそれでもいつものペースを崩さない。別のモンスターボールを投げて、ニューラを出して、同時にグレイシアも前に出る。
「カイロス、“かわらわり”ぃ!! アリアドス、“シグナルビーム”ぅ!!」
 カイロスは腕を振り上げてニューラに襲い掛かる! そして、アリアドスは目から七色に光る光線を発射! でも、ニューラとグレイシアはその攻撃を軽やかによけた。
「冷静さを失ったら負け、なんてね! ニューラちゃん、“れいとうパンチ”!! グレイシアちゃん、“れいとうビーム”!!」
 ミライさんが反撃に出る。ニューラは一旦カイロスと間合いを取った後、一気に間合いを詰めて“れいとうパンチ”をお見舞いした! そしてグレイシアも、アリアドスに向けて“れいとうビーム”を撃つ! 直撃! 2匹は、たちまち氷付けになった。
「チッ!! ヘルガー、“オーバーヒート”ぉ!!」
 マサシの怒りが頂点に達したのがわかった。その怒りを表すように、ヘルガーが凄まじい火炎を口から発射した! これをまともに受けたら、グレイシアもニューラもただじゃ済まない。でもその一撃を、グレイシアとニューラは軽やかによけた。
「当たらなければどうという事はない、なんてね! グレイシアちゃん、ニューラちゃん、“ふぶき”!!」
 ミライさんがニヤリと笑った。そして、グレイシアとニューラが一斉に“ふぶき”を発射! 2匹の放つ“ふぶき”に、たちまち飲み込まれるヘルガー。効果は今ひとつだけど、2匹の“ふぶき”集中攻撃は、次第にヘルガーを追い詰めていく。そして、ヘルガーの体がゆっくりと凍り始めた! そして、とうとうヘルガーの体は氷に包まれた。
「な、何ぃ!?」
 動揺するマサシ。凍ったマサシのポケモン達は、動く気配を見せない。完全にミライさんの勝ち。
「さあ、あなたの負けよ、マサシ君」
「く・・・」
 マサシが唇を噛んで、4匹のポケモンを戻した。すると何を思ったのか、懐から何か別のものを取り出した。四角くて、平べったい何かのケース。あれって・・・?
「なら、これをどうしてもいいんだな!!」
 マサシはそれを堂々と前に突き出して、ケースを開けた。そこには、サトシがゲットした2つのジムバッジが! やっぱりあれは、サトシのバッジケース!
「そ、それは・・・俺のジムバッジ・・・!!」
「お前らがヘマしたら、オレはこいつをぶっ壊してもいいんだぜ? こんなもの、お前に相応しくないからな」
 これは、完全に脅し。ミライさんもさすがに手が出せない。
「そ、それは・・・やめてくれ・・・!!」
「返して欲しいか? なら、力ずくで奪い返してみるんだな、『ヒーロー気取り』さんよぉ!!」
 マサシはそう言って、バッジケースを懐にしまうと、そのまま一目散に逃げ出した。3人は、それを追いかける事はしなかった。
「そんな・・・俺のバッジが・・・!!」
 サトシは力が抜けたように前にかがみ込んで、両手で思い切り地面を叩いた。
「ちくしょおおおおっ!!」
 サトシの声が響く。その声は、あたしが聞いた事もない、嘆きの叫びだった。
「サトシ・・・」
 影で見ていたあたし達はただ、それを見守る事しかできなかった。こんなサトシの姿は、一度も見た事がない。
「・・・どうするの、サトシ? 取り返しに行かないの?」
 ミライさんが、しゃがんでサトシの顔をのぞき込んで、優しくそう聞いた。ピカチュウも、心配してサトシの顔をのぞき込む。
「うっ・・・こんな・・・こんな事になるなんて・・・あんまりだ・・・!」
 サトシ・・・もしかして、泣いてる?
「・・・ダメね。完全に落ち込んじゃってるわ・・・」
 ミライさんはまた立ち上がって、そうつぶやいた。
「ミライ、さっきのは一体何者なんだ?」
 タケシがミライさんに聞いた。
「あの子はマサシって言って、小さい頃サトシをいじめていた子なのよ」
「何だって!?」
「ええっ!?」
 タケシが驚きの声を上げた。それを影から聞いていたあたしも驚いた。サトシを、いじめていた子がいたなんて・・・!
「話せば長くなるわ。サトシもこんな状態だし、まずは一旦ここから移動しましょうよ」
「・・・そうだな」
 2人はそんな事を話すと、タケシが嘆き続けるサトシの肩を叩いた。
「サトシ、いつまでも泣いててもしょうがないじゃないか。お前らしくないぞ」
「畜生・・・畜生・・・!」
 そんなタケシの言葉も、サトシの耳には入っていなかった。
「・・・行くぞ」
 無駄だとわかったのか、タケシはそう一言言ってサトシの左肩を担いだ。そして、ミライさんと一緒に公園を出て行く。3人が、あたしの隠れてる木の側を通り過ぎる。あたしは見つからないように、木に沿って体を移動させる。
「こんなサトシを、ヒカリが見たらなんて言うだろうか・・・」
 通り過ぎる瞬間、そんなタケシのつぶやく声が聞こえた。あたしは、その言葉にドキッとした。そのまま、3人は通り過ぎていく。
「・・・行きましょ」
 3人が公園から離れて行ったのを見計らって、あたしはポッチャマとエテボースにそう言って、胸に湧き上がる思いを振り切って素早く公園を出て、3人とは逆の方向に向かった。エテボースはサトシの様子が気になったのか、少し振り向いたけど、すぐにあたしについて来た。

「ねえ、タケシ君」
「何だ?」
 その頃、ミライさんはタケシに呼びかけた。
「ヒカリちゃん、ここにいないみたいだけど・・・どうしたの?」

 * * *

 あたしは、町の広場の片隅で休憩タイムを取った。みんなをモンスターボールから出して、気持ちを和ませようとポフィンをあげた。でも、みんなは食べるのが進まない。もちろん、みんなには別れた事情は話してるけど、やっぱりそれが頭に引っかかってるみたい。
「チパ・・・」
 パチリスの表情には、いつもの元気さは見当たらない。やっぱり、みんながいなくなって寂しいのかな・・・?
「ミミ・・・」
 ミミロルは、別れてから涙目を浮かべてばかり。当然か、大好きだったピカチュウともお別れになっちゃったんだから・・・
「エイポ・・・」
 エテボースも、不安な表情を浮かべたまま、ポフィンを食べない。やっぱり、あの時のサトシの事が・・・
「ポチャ・・・」
 ポッチャマは、そんなみんなの様子を見て、あたしに目線を向けた。その目線は、あたしに何かを訴えてる。それが何なのかに気付くのには、そう時間はかからなかった。今なら、まだみんなは近くにいる。戻るなら、今の内・・・
「・・・っ!!」
 ダ、ダメよ! こんな事しておいて、今更戻るなんて・・・! あたしは自分にそう言い聞かせて、顔を思い切り横に振った。
「・・・・・・」
 すると、そんなあたしを不安そうにじっと見つめる、みんなの顔が映った。
「あ・・・ダイジョウブダイジョウブ! 別にもう二度と会えなくなった訳じゃないし、サトシ達ともまた会えるよ。だからみんな、落ち込まないでよ!」
 あたしは慌てて笑顔を作って、みんなにそう言い聞かせた。でも、みんなの不安な目線は変わらなかった。やっぱり、あたしがこんなんじゃ説得力ないか・・・そんな自分が情けなく思えてきた。気が付くと、あたしは涙を流していた。それに、みんなも気付いていた。
「・・・ダ、ダメだよね、あたしがこんなんじゃ・・・」
 あたしは、そんな自分を見られるのが嫌だった。すぐに、あたしはみんなに背を向けた。みんなの不安な目線は、まだあたしに向いているのがわかる。
「・・・エイポッ!!」
 すると、エテボースはがまんができなくなったのか、ポフィンを投げ捨ててどこかへと走っていった。
「あっ、エテボース!」
 あたしはすぐに後を追いかけようとしたけど、エテボースはすぐに見えなくなっちゃった。サトシの所に行こうとした事がわかるのには、そう時間はかからなかった。そう思うと、あたしはエテボースを止める事ができなくなった。結局、エテボースはそのままどこかへ行ったまま、戻らなかった。
 こんなんで、本当にダイジョウブなの、あたし・・・?

 * * *

 日が、もう暮れてきた。
 あたしは、とりあえず泊まる場所を探すために、また町を歩いていた。エテボースの心配と、自分への空しさが晴れないまま。
 重い足取りでたどり着いた場所は、1つのポケモンセンター。そこに、あたしはゆっくりと足を運んだ。そのままロビーを通り過ぎようとした時、そこから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「・・・マサシって言うのはどういう人なんだ?」
「サトシと同じ、マサラタウンの子。簡単に言えば、典型的な不良タイプの子なのよ」
 この声は、タケシとミライさん? あたしはロビーの柱の影に隠れて、声が聞こえてくる方をのぞいた。見るとそこには、ロビーの机の前に向かい合って座っているタケシとミライさんの姿が。こんな所にいたなんて・・・って言う事はサトシも・・・そう思ってる間に、ミライさんが長い話を始めた。
「幼稚園や小学校の頃、理由はどうだか知らないけどサトシをいじめていたそうよ。それを聞く度にサトシのママが文句を言いに行ってたそうだけど、それでもマサシ君はサトシをいじめつづけてたの。しかも、向こうから『ママに言うな』って脅されてたらしくて、いじめられてる事は、たまに遊びに来るあたしにしか言わなかったわ。いじめなんて経験した事のないあたしは、ただ『やり返してやりなさいよ!』ってしか言わなかったけどね。あたしが旅に出た頃になったら、マサシ君とも別のクラスになって、いじめられる事もなくなったらしいわ。サトシ本人もそれを克服したようだったけど、友達は作ろうとはしなかったらしいのよ。まるで、マサシ君に怯えていたようにね・・・」
「その事が、心の中で大きなトラウマになっていた、って訳か・・・」
「そうよ、あたしも今のサトシの状態を見て確信したわ。サトシのパパは、生まれる前にどこか行っちゃって、それっきり。ママのパパ、つまりおじいちゃんもトレーナーになってそれっきり。ママのママ、つまりおばあちゃんもサトシが生まれる前に病気で死んじゃったの。いとこのあたしだって、たまにしか会えなかったし・・・だから、サトシはいつも1人ぼっち。多分、その事を1人で悩んでいたんでしょうね。こんな事になるのなら、あたしがちゃんとしてあげればよかったわ・・・」
 ミライさんが、顔をうつむけた。その時、サトシがロビーに重い足取りで出て来た。顔をうつむけている。そばにいるピカチュウは、そんなサトシを心配そうに見上げていた。
「あ、サトシ」
「気が済んだのか?」
 2人が、そんなサトシが来た事に気付いた。サトシはしばらく黙り続ける。
「・・・もういいんだ、みんな・・・また、やり直すからさ・・・」
 サトシは、顔をうつむけたままポツリと言った。その顔には、やり直すって意気込みが感じられない。いつものサトシとは別人みたい――何だか、今のあたし自信を見ているような気分になった。サトシはそのまま、2人の前をゆっくりと通り過ぎていく。
「どこ行くの?」
「・・・ちょっと風に当たってくる」
 ミライさんの質問にサトシはそうポツリと答えると、何かを振り切るように、突然入り口に向かって走り出した。ピカチュウも、後を追いかける。サトシがあたしの前を通り過ぎる。その一瞬、サトシの頬を涙が流れていたのがはっきりと見えた。
「サトシ・・・」
 あたしは、入り口を出て行くサトシの背中を影から見送る事しかできなかった。できるなら、サトシを励ましてあげたい。でも、今のあたしにはそれができる自信がなかった。空しさだけが、あたしの心を通り過ぎていく。そして、そんな自分が情けなくてしょうがなかった。
「あの・・・そこで何をしているんですか?」
 そんな女の人の声が耳に入ってきて、あたしは現実に引き戻された。振り向くと、そこにはあたしを不思議そうに見ているジョーイさんの顔があった。
「あっ・・・な、何でもありません!」
 こんな所で影から見ていたから、怪しまれちゃってるんだ! あたしは気まずくなって、慌てて入り口に向かって一目散に走り出した。
「・・・ごめん、用事を思い出したわ。ちょっと失礼するわね」
 すると、ミライさんもタケシにそう言って、ロビーを後にしたのには気付かなかった・・・

 慌てて入り口を出て、道に出たあたし。外はもう暗くなり始めている。あんな事してたのがばれちゃったから、気まずくて戻る事もできなかった。サトシの事は気になるけど・・・あたしはそう自分に言い聞かせて、ポケモンセンターの前を後にしようとした。
「・・・ちょっとそこまで行って来るだけよ」
 すると、入り口の自動ドアが開いて、そこから聞き慣れた声が聞こえてきた。ミライさん? あたしは反射的に歩道に生えていた木に隠れた。距離は近い。様子を直接見たら見つかりそうだったから、耳だけで様子をうかがった。ミライさんは入り口の前を何歩か歩いた後、何を思ったのか急に足を止めた。どうしたんだろ? 胸がドキドキするのがわかった。しばしの沈黙。
「・・・盗み聞きはよくないわよ」
「!!」
 そんなミライさんの言葉に、あたしはギクッとした。隠れてる事がばれちゃってる!? それに、さっきまでこっそり話を聞いてた事も・・・!?
「そこにいるんでしょ? 隠れてないで出てきたらどう・・・ヒカリちゃん?」
「!?」
 その言葉を聞いて、あたしはもっと驚いた。あたしだって事も見破ってるの!? なんて鋭いんだろ・・・あたしは仕方なく、木の陰からゆっくりと出た。ミライさんの姿が視界に入る。
「あたしのカン通りね」
「ち・・・違うんです! たまたま・・・側を通り過ぎただけで・・・盗み聞きなんて全然・・・」
 あたしは苦笑いをして、必死で言い訳を言った。
「ウソをついてもわかるわよ。ヒカリちゃんは、確かにこのポケモンセンターに入った。そして、あたし達の話をこっそり聞いていた。違う?」
 ミライさんの言う事に、間違いはなかった。もう言い訳してもダメみたい・・・
「それに、昼間サトシ達が公園で事件に巻き込まれていた時も、こっそり影から見てたでしょ?」
「え!?」
 そんな事もわかってたの!? あたしは、ミライさんの鋭さに一瞬、怖さを感じた。
「・・・どうしてわかったんですか?」
「実際に見たから。ヒカリちゃんを追いかけて行ったら、公園の影から何かを見てるヒカリちゃんの姿を見かけたから、何があったんだろと思って見てみれば、サトシ達が事件に巻き込まれてた。あたしがあの騒動に関わったのは、ヒカリちゃんを追いかけてた結果だったって訳。それで、あたしが2人にヒカリちゃんが近くにいる事を『わざと』教えないで、様子を見ようって思ったの。そうすればきっと、ヒカリちゃんは心配になって必ず近くに来るって思ってね」
「そうだったんですか・・・」
 そうか、サトシ達の前にやって来たのも、あたしを追いかけていたからだったんだ・・・
「それに、聞いたわよ」
「何を、ですか?」
「『コンテストの事を1人になっていろいろ考えてみたい』って置手紙残して、別れたんだって?」
「!!」
 あたしは、突然その話題を持ち出されて、ちょっと動揺した。
「あたしもテレビで見てたけど、2回連続で1次審査脱落になっちゃったのが悔しいのはわかるよ。でも、だからってそれを気にして、何も家出みたいな別れ方しなくても・・・」
 あたしは、その話題を持ち出されるのが嫌になってきた。
「もう、いいんです・・・ミライさん」
「え?」
「みんなに、もう迷惑かけたくないんです・・・みんなには、ちゃんとした目標があるし・・・そんなみんなと一緒にいたって・・・」
 あたしはその話から逃げようとそんな事を言って、ミライさんに背を向けた。そして、そのまま逃げようとした。
「・・・それで本当によかったって思ってるの?」
「え?」
 ミライさんのそんな言葉が、あたしの足を止めた。
「・・・悩んでるんでしょ? 『1人になっていろいろ考えてみたい』っていうのは、その事だったんでしょ? 顔に書いてあるわ」
 そんなミライさんの言葉に、あたしは背中を向けたまま、何も言わないでゆっくりとうなずいた。
「どんな事を考えてるのか知らないけど、『仲間』って荷物を捨てれば速く飛べるとでも思ったの? それって、自分から暗闇の中に飛び込んで、手探りで答えを探すようなものよ。そんな事したって、答えは見つからないわ。『ガーディも歩けば棒に当たる』って言うけど、それじゃ棒にかすりもしないわ。それでもいいの?」
「・・・・・・」
 あたしは黙り続けた。
「カズマ君がどうしてここにいないか、教えてあげよっか? カズマ君はね、『1人で修行するッス!』って言ってあたしと別れたのよ。つまり、武者修行するために1人で出て行ったのよ。そして、あたしは『旅をする』って事自体が目的。広い世界を、いろいろ回ってみたいから、1人でも旅を続けてる。でも、今のヒカリちゃんにそういうのがある? 『1人になっていろいろ考えてみたい』なんて、漠然とし過ぎてるじゃない。どうしていいかわからないまま、あてもなく1人で旅をするなんて、1人旅とは言わないわ。人はそれを、『放浪』って呼ぶのよ。そんな事したって、何も面白くないじゃない。1人旅っていうのは、ちゃんとした目的がある人がするものよ。故郷に帰るなら話は別だけどね」
「・・・・・・」
 あたしは黙り続けた。故郷に帰るって言っても、こんな状態でママに合わせる顔なんてないよ・・・
「それよりも、みんなについて行って、いい刺激をもらう方が今のヒカリちゃんにはいいと思うけどなあ?」
「!!」
 その言葉に、あたしははっとした。
「それにさっき見たでしょ、今のサトシは昔いじめられていた人とばったり会っちゃっていじめられて、自身をなくしてる状態よ。そんなかつての仲間を、ヒカリちゃんは見捨てるつもりなの?」
「・・・・・・」
 あたしは黙り続けた。というより、何を言えばいいのか、わからなくなった。
「・・・黙ってないで、何とか言ったらどう?」
 ミライさんの真剣な眼差しを感じた。
「あたしは・・・あたしは・・・」
 あたしは、言葉に迷った。あたしの頭の中で、2つの思いがぶつかり合う。
「・・・っ!!」
 我慢できなくなったあたしは、とうとうその場から走って逃げ出した。
「あっ、ちょっとヒカリちゃんっ! こんな夜中に1人じゃ危ないわよ!」
 ミライさんが止めるのも聞かずに、あたしは暗い道を1人走っていった。

 * * *

 走った末にたどり着いた場所は、昼間に休憩タイムを取った広場。こんな夜中、誰1人動く影はなかった。
 そこにあった木に、思わずすがり付くあたし。
「ママ・・・あたし・・・あたし・・・どうしたらいいの・・・!」
 思わず、誰にもぶつけられないそんな思いをつぶやいた。頬を涙が通ったのがわかった。そのまま、あたしは気が済むまで思い切り泣いた。



 ――――――――――!!



 どれくらい泣いたのかな。思い切り泣いてとりあえず気持ちが落ち着いたあたしは、目に溜まった涙を拭いて、また走り出した。サトシ達から早く離れなきゃ・・・! そんな事を思ったから。胸に湧き上がる思いを抑えながら、顔をうつむけて走っていると、何かに思い切りぶつかった。
「きゃっ!!」
 その反動で、あたしは思わずしりもちを付いた。
「いてて・・・誰だよこのオレにぶつかってくる奴は・・・!!」
 その声を聞いて、あたしは耳を疑った。この声、まさか・・・

「女か・・・だが、このオレにぶつかっておいて、ただで済む訳ねえよなあっ!!」
 顔を見上げるとそこには、昼間サトシをいじめていた、あのマサシの姿があった!


NEXT:FINAL SECTION

[239] FINAL SECTION 仲間達の思いと小さな希望!
フリッカー - 2008年01月25日 (金) 19時57分

「畜生・・・畜生っ・・・!!」
 町のどこかの公園で、サトシは人知れず泣いていた。そんなサトシを、ピカチュウはただ見ている事しかできなかった。そんなサトシに、近づく影が。
「・・・?」
 サトシがその気配に気が付いて振り向くと、そこにはあのエテボースが立っていた。
「エテボース?」
「エイポーッ!!」
 エテボースはやっと見つけて嬉しそうに、すぐサトシの足に抱きついた。
「どうしたんだ・・・あっ! まさか、ヒカリが近くにいるのか!?」
 サトシはすぐにその事に気付いた。エテボースは、はっきりとうなずいた。
「どこにいるんだ? 教えてくれ!」
 サトシは泣く事も忘れてエテボースにそう聞くと、エテボースははっきりとうなずいて、サトシとピカチュウを案内した。


FINAL SECTION 仲間達の思いと小さな希望!


「えぇ!? おいっ!!」
 マサシが怒り顔であたしに迫ってくる。その剣幕に、あたしは思わずしりもちを付いたまま後ずさりする。
「あ、ご、ごめんなさい・・・」
「あいにく、オレは昼間の事でご機嫌斜めでなあ・・・このまま黙って返さねえぜえっ!!」
 あたしが謝るのも聞かないで、マサシはモンスターボールを取り出して、スイッチを押した。
「!!」
 嫌な予感がしたあたしは、慌てて立ち上がって逃げようとした。でも、振り向くとそこには、いつの間にか白い糸の大きな網が張られていて、行く手を阻んでいた! これは、ポケモンのわざ“クモのす”!?
「逃げるなよ・・・!」
 振り向くと、ニヤリと笑うマサシと、その側にいるアリアドスの姿が。どうしよう、これじゃ逃げたくても逃げられない・・・やるしかないみたい! 心を決めたあたしは、懐からモンスターボールを取り出そうとした。その時だった!
「“いとをはく”だあっ!!」
 そんなマサシの声に合わせて、アリアドスがこっちに白い糸を発射! それは、あたしにも予想外の事だった。
「ああっ!?」
 あたしの体は、たちまち糸でがんじがらめに縛り付けられて、身動きができなくなった! 逃げようにも、後ろには“クモのす”。何とかモンスターボールを手にとって開けようと手を伸ばそうとしても、手はちっとも動かない。これじゃ、どうする事もできないじゃない・・・! あたしの嫌な予感は、完全に的中しちゃったみたい・・・!
「な、何するつもりなの!?」
「サンドバッグになってもらうぜ、オレのポケモンのなぁ!!」
 マサシはニヤリと笑ったまま、別のモンスターボールを取り出して、スイッチを押す。すると、ボールからヘルガーが出てくる。ヘルガーは、鋭い眼差しであたしをにらむ。あたしの背筋に、寒気が走った。
「や、やめて・・・!」
「女の子なんだから、いい悲鳴を聞かせろよぉ!! “ふくろだたき”ぃ!!」
 あたしの声も聞かないで、マサシはそうヘルガーに指示した。すると、ヘルガーの声に合わせて、マサシの懐から勝手にオコリザルとカイロスが出てきた! そして、一斉にあたしに向かって突撃していく!
「嫌・・・いやあああああああっ!!」
 足まですくんで、身動きできないあたしは、ただ悲鳴を上げる事しかなかった。

 具体的にどうされたのか、よくわからない。ただ、ひたすら4匹のポケモンにぼこぼこにされた。それだけしか覚えていなかった。まさに“ふくろだたき”。
「ああっ!!」
 あたしの身動きできない体が、力なく地面に倒れる。体中が痛い。反射的に体が逃げようともがくけど、無駄なあがきにしかならなかった。
「オコリザル、“いやなおと”ぉ!!」
 マサシはまるで楽しい遊びをしている時のように、テンションが上がっている様子だった。オコリザルが、こっちにものすごくうるさい音を出した。
「ううっ!!」
 耳を塞ぐ事ができないあたしに、その音は容赦なく襲い掛かる。耳を突き破りそうなその音を、あたしはただ耐えるしかなかった。
「そうだぁ・・・もっとやっちまいなあっ!! カイロス、“しめつける”ぅ!!」
 そんなあたしを見て、マサシのテンションはさらに上がった様子だった。今度はカイロスがあたしの目の前に来る。カイロスのツノが、あたしの体を挟んだ。そのまま持ち上げられるあたしの体。ツノに力が入り始めた。あたしの体が、容赦なく文字通り締め付けられ始める。
「うああああああっ!!」
 体に強い痛みが走る。これにも、あたしは耐えるしかなかった。でも、体は悲鳴を上げ続ける。これじゃ、完全に『拷問』。サトシでさえ、あんなに怖がるのもわかる。それに耐えられなくなったのか、あたしは思わず、こんな事を口に出していた。
「助、けて・・・!」
「『助けて』ぇ?」
 その言葉を聞いても、マサシは表情を変えなかった。
「オレの周りには、今誰もいないんだぜ? そんな事言ったって、誰も助けには来ないぜ?」
「!!」
 そうだ、今のあたしは1人なんだ・・・「助けて」って言っても、誰も助けに来てくれない・・・! あたしは絶望した。
「それに、そんな風に言われると、余計やりたくなっちゃうんだよな〜!!」
 マサシがまたニヤリと笑った。そして、カイロスがツノを思い切り振って、あたしを思い切り投げ飛ばした。
「きゃあっ!!」
 あたしの体が、思い切り地面に叩きつけられた。土ぼこりがもろに顔にかかった。顔を上げると、まだジリジリと迫ってくる4匹のポケモンの姿が映った。
「へへへ、スカッとするぜ!! こうやって抵抗できなくして、一方的にいじめ続けるなんて、これほど爽快な事はないよなあ・・・っ!!」
 笑みを浮かべながら、マサシはそうつぶやいた。こんなひどい事が『爽快』だなんて・・・あたしは、そんなマサシに残酷さを覚えた。
「さあ、サンドバッグがぶっ壊れるまで付き合ってもらうぜえっ!! ヘルガー、“ほのおのキバ”ぁ!!」
 サンドバッグがぶっ壊れるまでって・・・あたしをどこまで『拷問』させるつもりなの!? そんな事を思ってる間に、ヘルガーが熱で赤くなったキバを向いて、あたしに飛び掛ってくる!
「きゃああああああっ!!」
 もしこれで噛まれたら、ただじゃ済まない。あたしはもう、目をつぶって悲鳴を上げるしかなかった。お願い、誰でもいいから、助けて・・・!


 ドン、と鈍い音がした。すると、こっちに向かって来ていたヘルガーが突然、何かに弾き飛ばされた。
「・・・!?」
 驚いて目を開けて見てみると、そこには、見慣れた大きな影が。
「エイポッ!!」
 そう、あの時どこかに行っちゃったはずのエテボース! どうしてここに!?
「エテボース!?」
「やめろ!!」
 すると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。この声、もしかして・・・? それは、すぐにわかった。あたしの体が、駆け寄って来た誰かに起こされる。そんなあたしの視界に映ったのは・・・
「サトシ・・・!」
 そう、紛れもなくサトシだった! サトシが、助けに来てくれた・・・あたしは嬉しくなった。
「何だあ、てめえ? またヒーロー気取って登場かあ?」
 マサシが、いらだった表情でサトシに言った。すると、サトシの表情が変わった。
「う・・・ヒ、ヒカリを、ヒカリをいじめるのはやめろ!!」
 そう言ったサトシの表情は、明らかに怯えていた。
「ヒカリって言うのか、そいつ・・・ああそうか、そいつはお前の『彼女』なんだな? だから助けに来たんだろ?」
「う・・・うるさい!! とにかく、ヒカリをいじめるのはやめろ!!」
「ピッカ!!」
 強気で前に出るピカチュウとは逆に、サトシは明らかに弱腰に見えた。
「ガキ大将のオレに向かって、いつからそんな口利くようになったんだあ? あぁ? こっちには、これだってあるんだぜ?」
 すると、マサシはあの時奪っていったサトシのバッジケースを取り出して、堂々と前に突き出した。
「それは・・・俺のジムバッジ!!」
「このジムバッジと、そこにいる『彼女』、どっちか1つ選ぶとしたらどっちだあ? 2つに1つだぜ、両方取るなんてなしだぜぇ?」
「う・・・」
 マサシのそんな挑発に、サトシは言葉に迷った。なんで迷うの? いつものサトシなら、堂々と「両方取ってやる!」って言うと思うんだけど・・・
「どっちか選べば、選んだ方を返してやるよ。選ばなかった方は、オレがぶっ壊すだけだがなあ」
「そ、それだけは・・・やめてくれ!!」
「オイオイ、ヒーロー気取って出て来ておいて、そんな事言うのかあ? 『彼女』に嫌われても知らねえぞぉ?」
「・・・・・・」
 マサシの挑発は続く。それにサトシは完全にどうしていいかわからなくなってる。いつものサトシらしくない。
「・・・わかった。ヒカリを・・・選ぶよ」
 サトシは顔をうつむけて、唇を噛んでそう言った。
「おうおう、話がわかるじゃないか。オコリザル、“ひっかく”で糸を切ってやれ」
 すると、マサシは勝ち誇ったようにそう言って、オコリザルにそう指示した。すぐに、オコリザルがあたしの側に来て、ツメであたしを縛っていた糸を切った後、素早くマサシの側に戻った。
「じゃ、このジムバッジにはもうサヨナラって訳だ」
「ま・・・待ってくれ!!」
 マサシがまた、バッジケースを前に突き出した。それを見たサトシが、思わず声を出した。
「何だあ、『彼女』を選んでおいて、今更これも返せなんて言うのかあ? 男に二言はないんだよおっ!!」
「う・・・」
 サトシの思いは、空しく弾き返された。そのまま、サトシは何も反論しなくなった。そんなサトシを見て、自由の身になったあたしの心の中に、『何か』が湧き上がってきた。
「サトシ・・・」
「もういいんだ・・・あいつとバトルしたって、勝つのは無理なんだよ・・・バッジなんて、またゲットすりゃいいんだからさ・・・」
 サトシは、力なくあたしにそう言った。サトシが『無理』なんて言葉を発したのは、信じられなかった。がんばってゲットしたジムバッジが壊される事への悔しさが、顔にははっきりと書かれていた。あたしの心の中の『何か』が、どんどん強くなっていく。
「アリアドス、“ナイトヘッド”でこいつを壊しちまいなあ!!」
 マサシはそう言って、サトシのバッジケースをアリアドスの前に突き出した。アリアドスの目が黒く光った、その時だった!
「エイポーッ!!」
 エテボースが動いた。真っ直ぐアリアドスに向かって行って、2本の尻尾を思い切り振った! “ダブルアタック”だ! 直撃! 弾き飛ばされるアリアドス。エテボースは、鋭い眼差しでマサシをにらんだ。
「てめえ・・・一件落着って時なのに、やるかよっ!! カイロスッ!!」
 マサシはそれに完全に怒った。その怒りを表すように、カイロスがエテボースの前に出た。2本のツノが開いて、エテボースに襲い掛かる!
「エイッポォォォォッ!!」
 エテボースが応戦する。片方の尻尾の拳に力を込めて、カイロスの体に下から振った! 今度は“きあいパンチ”! 直撃! 返り討ちされたカイロスは、思わず後ずさりした。
「エテボース・・・」
 そんなエテボースを見て、エテボースはバッジを取り返そうとしてる事が、すぐにわかった。あのバッジは、エテボースも力を合わせてゲットしたもの。そんなバッジを取り返そうと思うのは当然だよね・・・あたしの心の中でも、『何か』がメラメラと燃え上がるようにますます強くなっていった。もう、いてもたってもいられない・・・! あたしは、ゆっくりと立ち上がった。
「みんな!!」
 あたしはそう思い切り叫んで、懐から3つのモンスターボールを全部出して、思い切り投げ上げた。ポッチャマ、ミミロル、パチリスが一斉に出てくる。エテボースは、カイロス以外のマサシのポケモンに囲まれてる!
「ポッチャマ、“つつく”!! ミミロル、“ピヨピヨパンチ”!! パチリス、“スパーク”!!」
「ポチャマーッ!!」
「ミミーッ!!」
「チッパーッ!!」
 あたしの指示で、3匹は一斉に飛び出して行った。ポッチャマがオコリザルに向けてクチバシを、ミミロルがアリアドスに向けて耳の拳を、パチリスが電気を纏った体をヘルガーに、思い切りぶつけた! 突然の攻撃を受けて、弾き飛ばされるオコリザル、アリアドス、ヘルガー。
「な、何だあ、てめえ?」
 マサシの鋭い目線がこっちに向いた。それでも、不思議とあたしは怯まなかった。
「サトシのバッジを、返して!!」
 あたしは、マサシにはっきりと顔を向けて、力強くそう言い放った。あたしのポケモン達が身構える。
「あぁ? 貴様・・・オレを誰だと思ってる!? オレはマサラタウンのマサシ、ポケモンバトルでも負け知らずな『ガキ大将』だ!! そんなオレに歯向かおうってんのかあ?」
 マサシがいらだった表情を見せる。さっきと同じ剣幕がかかる。でも、あたしの中で燃え上がる『何か』が、それを押し返していた。
「オレが嫌だと言ったら、どうする?」
 マサシがあたしを挑発してくる。
「・・・バトルしてでも、取り返すわ!!」
 あたしは、そう力強く叫んだ。
「やめろヒカリ!! あいつはめちゃくちゃ強いんだ!! バトルしたって、お前に勝ち目はないぞ!!」
 それを聞いたサトシが、慌ててそう聞いた。
「・・・サトシ、どうしちゃったの? いつものサトシだったら、絶対取り返そうとするじゃない・・・なのに、今日はなんでそんなに弱気なの? いつものサトシは、どこ行っちゃったの?」
 あたしは、思ってた事をそのまま口に出した。そんなあたしの言葉に、はっとするサトシ。
「でも、あいつは・・・」
「やってみなきゃ、わからないよ・・・! サトシはいつも、そんな事言ってたじゃない! サトシがやらないなら、あたしが代わりにやる!!」
 今のあたしは、正直言ってダイジョバない。でも、せめてサトシはいつものサトシでいて欲しい。そんな思いが、あたしの心の中にあった。
「てめえ・・・調子こくんじゃねえっ!! お前ら、やっちまいなあっ!!」
 マサシは完全にキレた。マサシの4匹のポケモンが、一斉に飛び出した。
「みんな、お願い!!」
 あたしのポケモン達も、迎え撃つ。たちまち、4匹対4匹の、凄まじいバトルが始まった。
「ヒカリ・・・」
 サトシは横で、ただそうつぶやきながら、バトルの行方を見守っていた。

 ヘルガーが、“ほのおのキバ”でパチリスに飛び掛ってくる! でも、パチリスは自慢の足で素早く逃げる。ヘルガーのキバが空を切った。その隙に、パチリスは回り込んで“スパーク”でヘルガーに飛び込んだ! でも、ヘルガーはそれをかわした。地面にぶつかって、転ぶパチリス。そこに、ヘルガーの“かえんほうしゃ”! パチリスが気付いた時にはもう手遅れ。炎は容赦なくパチリスを飲み込んだ。そのまま押し返されるパチリス。

 アリアドスが、“ナイトヘッド”をミミロルに発射! 命中! でも、ノーマルタイプのミミロルには全く効かない。その隙を突いて、ミミロルは“とびはねる”で力強くジャンプ、アリアドスの上を取った! でも、今度はアリアドスの“いとをはく”! 糸で足を絡め取られたミミロルは、そのまま糸で逆にアリアドスに振り回された! そのまま地面に叩きつけられるミミロル。アリアドスは糸を切って、すかさず口からミサイルのようなものを発射して追い討ちをかける! “ミサイルばり”だ! 直撃! 次々と襲い掛かる“ミサイルばり”に、ミミロルは弾き飛ばされた。

 軽い身のこなしでカイロスのツノをかわしていくエテボースだけど、とうとうツノに捕まった! そのまま、エテボースを“しめつけ”始めるカイロス。でも、エテボースも黙っていない。2本の尻尾を振って、カイロスの顔に“ダブルアタック”! 顔面に直撃! さすがにこれには参ったのか、ツノでエテボースを挟んだまま、でんぐり返しをした! “じごくぐるま”だ! その勢いで、カイロスはエテボースを思い切り投げ飛ばした! 地面に思い切り叩きつけられるエテボース。効果は抜群! 大ダメージを受けたみたいだけど、それでもエテボースは怯まないで立ち上がった。

 ポッチャマは、“バブルこうせん”で近づいてくるオコリザルを迎え撃つ! 命中! それでも、オコリザルは怯まない。その怒り顔をさらに強くして、オコリザルは強引にポッチャマに飛び込んだ! そして、ポッチャマに“しっぺがえし”の拳を振った! 直撃! ポッチャマは一撃で弾き飛ばされた。それでも、オコリザルは攻撃の手を緩めない。“ダメおし”でポッチャマに追い討ちをかける! それに気付いたポッチャマは、何とか立ち上がってすぐによけた! 間一髪。オコリザルの拳はポッチャマのすぐ横をかすめた。ポッチャマは一旦間合いを取って、仕切り直す。

「へへへ、どんどんやっちまいなあっ!!」
 こっちの方が、明らかに劣勢。それを見たマサシは、余裕の笑みを浮かべた。
「・・・っ!!」
 やっぱりサトシの言う通り、強い・・・! あたしは唇を噛んだ。このままじゃ、押し返されちゃう! どうしたら・・・!
「オコリザル、“インファイト”ォ!! ヘルガー、“オーバーヒート”ォ!! アリアドス、“ミサイルばり”ぃ!! カイロス、“かわらわり”ぃ!!」
 マサシの指示で、オコリザル、ヘルガー、アリアドス、カイロスの4匹は一斉に攻撃した!
「ポチャアアアッ!!」
「ミミィィィッ!!」
「チパアアアッ!!」
「エイポオオオッ」
 直撃を受けたあたしのポケモン達は、一斉にあたしの前に弾き飛ばされた。みんなかなりのダメージを受けてる。
「みんな!!」
「アリアドス、あいつに“ナイトヘッド”だあっ!!」
 アリアドスが、目から黒い光線を発射! その先にいるのは・・・あたし!?
「きゃあああっ!!」
 直撃だった。体中に痛みが走る。あたしの体は左肩から倒れた。
「へっ、女のくせに生意気な事するからだ! あぁ!?」
 マサシの余裕の声が聞こえてくる。あたしは、立ち上がる気力がなくなった。あたしじゃ、ダメなの・・・? そうあきらめかけた時だった。
「やめろ・・・」
 誰かが、ボソッとつぶやくのが聞こえた。見ると、そこにはわなわなと両手を握るサトシがいた。
「あぁ?」
「やめろ・・・!」
 マサシがサトシに顔を向けた。確かに、サトシはその言葉を出していた。さっきよりも強く。
「やめろおおおおおおっ!!」
 すると、サトシはわなわなと握っていた拳を力強く握って、力強い叫び声を上げながらマサシに一直線に向かって行った!
「!?」
 突然の事にマサシも動けなかった。そのまま、サトシは右の拳を思い切りマサシの頬にぶつけた!
「ぐうっ!!」
 直撃! 反動で後ずさりするマサシ。
「て、てめえ・・・オレを殴ったな・・・!!」
 そう言って、マサシはサトシの顔を見た。そして、その表情の違いに驚いた。それは、あたしも同じだった。
「サトシ・・・?」
「マサシ・・・俺はもう、あの時の俺じゃない・・・!!」
 そのマサシをしっかりと視界に捕らえる横顔は、疑いなくいつもの強気なサトシそのものだった。
「何だとぉ? お前ら!!」
 怒ったマサシがそう言うと、オコリザル達が、一斉にサトシに踊りかかった! 危ない! あたしは思わず、そう叫びそうになった。でも、サトシの両手が一瞬光ったと思うと、マサシのポケモン達は、全員何かに動きを止められていた。ナエトル、ムクバード、ヒコザル、ブイゼルだ! ナエトルはオコリザルを、ムクバードはカイロスを、ヒコザルはアリアドスを、ブイセルはヘルガーを押さえ込んでいる!
「な!?」
 その状態に、驚きを隠せないマサシ。
「昔の俺は、確かに1人ぼっちだったさ・・・でも、今は違う!! 今の俺には、心強い『仲間』がいるんだ!! もう俺は1人じゃないんだ!!」
 サトシは、強い眼差しでマサシにそう言い放った。その姿は、さっきまでとは正反対。
「サトシ・・・!」
 いつものサトシに、完全に戻ってる・・・! あたしは嬉しくなった。そしてその言葉に、あたしの心の中の『何か』が動いた。
「ヒカリ!!」
「ヒカリちゃん!!」
 すると、後ろから声が聞こえてきた。振り向くと、そこにはこっちに走ってくるタケシとミライさんが。よくわからないけど、こっちの事態に気付いたみたい。
「大丈夫か?」
「うん、何とかね・・・」
「もう、だから『こんな夜中に1人じゃ危ない』って言ったのに・・・」
 タケシが、あたしの体を起こした。そして、タケシとミライさんは、サトシに目を向けた。そして、すぐにマサシの存在にも気付いた。
「あいつは・・・!」
 タケシが、前に出ようとした。でも、すぐにサトシは右手をタケシの前にかざした。
「タケシ・・・ここは俺1人にやらせてくれ・・・あいつとは、俺が決着を付ける!」
 サトシは振り向かないまま、そう言った。
「でも・・・」
「わかったわ」
 すぐに、ミライさんが相槌をした。
「ここは、サトシ自身にやらせましょ。サトシ自身の過去を振り払うためにもね」
 ミライさんはタケシの肩に手を置いて、そう言った。
「・・・わかった」
 タケシは、その事を理解して後ずさりした。
「くそおっ、ヒーロー気取りやがってえっ!! ヘルガーッ!!」
 その様子にマサシは完全にキレた。ヘルガーが、サトシに向かって飛び出した!
「ブイゼル!!」
「ブイッ!!」
 サトシの力強い指示でブイゼルが前に出た。
「“オーバーヒート”ォ!!」
 ヘルガーは、“オーバーヒート”でブイゼルを攻撃! でも、さっきより炎の勢いは弱くなっている。一度使ってるから、パワーが落ちてるんだ!
「ブイゼル、“アクアジェット”!!」
「ブゥゥゥゥイッ!!」
 ブイゼルは、自慢の“アクアジェット”で飛んで来る炎の中に飛び込んだ! パワーが落ちた炎の中を、簡単に突き破っていくブイゼル!
「な!?」
「行っけええええええっ!!」
 サトシの叫びが、水の槍となってヘルガーに飛んでいく! 直撃! 効果は抜群! “アクアジェット”の勢いで強く押し出されて、とうとう弾き飛ばされて、近くの木に思い切り叩きつけられた。ヘルガーは完全にノックアウト!
「ちいっ!! 調子こくんじゃねえっ!! アリアドスッ!!」
 今度はアリアドスが前に出る。
「ヒコザル!!」
「ヒッコ!!」
 サトシの指示で前に出たのは、ヒコザル。
「“ナイトヘッド”ォ!!」
 アリアドスが、“ナイトヘッド”をヒコザルに向けて撃つ!
「“あなをほる”だ!!」
「ヒコッ!!」
 サトシの力強い指示に答えて、ヒコザルは素早く地面に穴を掘ってそこに飛び込んだ! 穴の上を素通りする“ナイトヘッド”。そして、すぐにアリアドスの足元が崩れて、ヒコザルが勢いよく飛び出した! 上に吹き飛ばされるアリアドス。
「今だヒコザル!! “かえんほうしゃ”!!」
「ヒッコオオオオオッ!!」
 サトシの叫びが、炎となってアリアドスに放たれた! 炎は容赦なくアリアドスを飲み込んだ! 効果は抜群! 黒焦げになったアリアドスは、ヘルガーの上に弾き飛ばされた。アリアドスもノックアウト!
「ええいっ!! カイロスッ!!」
 マサシの顔に焦りが見え始めた。カイロスが前に出る。
「ムクバード!!」
「ムックバーッ!!」
 今度はムクバードがサトシの前に出た。
「“はさむ”攻撃だあっ!!」
「ムクバード、“つばめがえし”だ!!」
 マサシとサトシの指示はほぼ同時だった。カイロスが低空を飛ぶムクバードを捕まえようとツノを開いてジャンプした! でも、カイロスがムクバードを挟もうとしたその瞬間、ムクバードは突然、カイロスの視界から姿を消した!
「!?」
「今だ!!」
「ムックバアアアアアッ!!」
 サトシの叫びを現すように、ムクバードは勢いをつけてカイロスに飛び込んだ! 完全な不意討ち。カイロスはよけられる訳ない。効果は抜群! カイロスはそのまま、アリアドスの上に落ちていった。カイロスもノックアウト!
「な、何だと・・・!? オコリザルッ!!」
 マサシは完全に動揺してる。そんなマサシは、残ったオコリザルを呼び出す。
「ナエトル!!」
「エル!!」
 サトシの前にナエトルが出た。
「“たいあたり”だ!!」
「エ〜ル・・・ッ!!」
 ナエトルは、勢いをつけてオコリザルに飛び込んでいく!
「調子こくんじゃねえっ!! “インファイト”ォ!!」
 オコリザルも応戦する。オコリザルも、勢いをつけてナエトルを正面から迎え撃つ! オコリザルが拳を振る!
「よけろ!!」
 その拳がまさにナエトルに迫ろうとした時、ナエトルは自慢のスピードで方向転換、拳をかわした! オコリザルの拳が空を切る。そして、地面に食い込んだ。
「何だと!?」
「今だ!! 行けええええっ!!」
「トオオオッ!!」
 サトシの叫びに答えるように、スピードを上げて横からオコリザルに突撃していく! 直撃! そのまま弾き飛ばされるオコリザル。かなりダメージを与えられたみたい!
「凄い・・・!」
 あたしは、そんなサトシの姿に目を丸くした。『バトルしたって勝ち目はない』とか言ってたのがウソみたいだった。
「どうだ!! 俺達はこうやって力を合わせて、今までジム戦をがんばってきたんだ!! さあ、バッジを返せ!!」
「ふざけるな・・・オレはまだ負けた訳じゃねえっ!!」
 サトシの力強い言葉に、マサシも負けじとそう叫んだ。すると、オコリザルが立ち上がって完全にキレ出したと思うと、体から赤いオーラが突然出て来た!
「オコリザルの『いかりのつぼ』に触れたみたいだな・・・ただで済むとは思うなよっ!!」
 マサシの表情に、余裕さが戻った。
「『いかりのつぼ』?」
「攻撃が急所に当たると、攻撃が極限まで上がるとくせいだ!」
 あたしの疑問に、タケシが答えた。これって、ヤバイって事!?
「サトシ、気をつけて!!」
「『ダイジョウブ』さ!!」
「!」
 サトシが、あたしがよく言う事を口にして、あたしはちょっと驚いた。そして、心の中で『何か』が動いた。
「最大パワーで“しっぺがえし”だあっ!!」
 マサシの指示で、オコリザルはものすごい剣幕でサトシに向かって行く!
「頼むぞ、ピカチュウ!!」
「ピッカ!!」
 その前に、ピカチュウが出た。ピカチュウは気合充分。電気袋から火花が出ていた。
「“ボルテッカー”だ!!」
「ピカピカピカピカ・・・ッ!!」
 ピカチュウは電撃を体に纏って、向かって来るオコリザルに正面から突撃して行った!
「サトシ!!」
 タケシが声を上げた。
「サトシ!!」
 今度はミライさんが声を上げた。
「サトシ・・・がんばって!!」
 あたしも、思い切りそう叫んだ。ピカチュウとオコリザルの距離が、どんどん詰まっていく!
「これが・・・俺達の力だあああああっ!!」
「ピッカアアアアアアッ!!」
 そんなサトシのお腹からの叫び声に答えるように、ピカチュウの電撃も強さを増していく! そして、2匹が正面からぶつかった! 爆発! あたし達は息を呑んだ。爆風の中から、オコリザルが吹っ飛ばされてきた。
「ぐあっ!!」
 オコリザルはマサシに正面からぶつかった。オコリザルの下敷きになるマサシ。そして、そのマサシの手元に、サトシのバッジケースが転がり落ちた。オコリザルは、完全に戦闘不能になっていた。勝った!
「勝った・・・!」
 あたしの口から、そんな言葉がこぼれた。
「バッジは返してもらうぞ!!」
 サトシは堂々とマサシの前に出て、落ちていたバッジケースを拾った。
「お・・・オレが・・・『ヒーロー気取り』に負けるだと・・・あ、ありえねえっ!!」
 マサシは倒れたオコリザルの体をよけて悔しそうにそう言いながら立ち上がると、4匹のポケモンをモンスターボールに戻した。
「つ、次はこうは行かないからな!! 覚えてろよっ!!」
 そうサトシに言い放った後、マサシは一目散にその場から逃げ出した。そんなマサシの背中を、サトシはしばらく見届けていた。
「ピカーッ!」
 そんなサトシに、ピカチュウ達が集まってきた。
「みんな! ありがとう、みんなのお陰だよ!」
 5匹のポケモンに囲まれたサトシは、笑顔でそう言った。5匹も、そんなサトシに笑顔で答えていた。
「これで、サトシは完全に過去の自分から決別したんだな・・・」
「逃げしなに覚えていろは負けた奴、なんてね!」
 タケシとミライさんの顔にも笑顔が戻った。あたしもほっとした。そんなサトシを見ていると、サトシがあたしの前に来た。
「ヒカリ、ありがとう」
「え? お礼を言わなきゃいけないのはこっち! サトシが来てくれなかったら、ずっとあいつに・・・」
「いや、俺だって言わなきゃいけないさ。ヒカリがあいつとバトルしなかったら、俺は『みんながいる事』に気付けなかったよ」
「みんなが、いる事・・・」
 あたしは、そんなサトシの言葉が気になった。ふと見ると、あたしのポケモン達は、サトシのポケモン達と久しぶりの挨拶を交わしていた。特にミミロルは、ピカチュウに泣きながら抱きついていた。
「さて、一件落着した所でヒカリちゃん」
 ミライさんが、あたしに声をかけた。
「みんなに言わなきゃいけない事、あるんじゃないかな?」
「え?」
 ミライさんにそう言われて、あたしは思い出した。みんなと勝手に別れちゃった事を。サトシとタケシが、あたしに顔を向ける。
「あ・・・えっと・・・あたしは・・・」
 あたしは正面から2人と向かい合うけど、なんて言ったらいいのか言葉に迷った。
「ヒカリ、探したんだぜ、俺達」
 そうこうしている内に、サトシが先に口を開いた。
「コンテストで失敗した事が気になるのはわかるさ。でも、だからって勝手に出て行くなよ」
 怒られるかと思ったけど、2人の表情は穏やかだった。
「でも・・・あたし・・・」
 あたしの中の不安が、よみがえってきた。
「あの時のあたしの話、聞いてなかったの? 『みんなについて行って、いい刺激をもらう方がいい』って」
 ミライさんの言葉に、あたしははっとした。
「そうさ、こんな時に1人で悩むのはよくないさ。悩んでるなら、正直に話せばいいじゃないか」
 タケシが、ミライさんの言葉に続けた。
「一緒に行こうぜ、ヒカリ! 俺達と行けば、そんな悩みなんて吹っ飛んじゃうさ!」
「ピカチュ!」
 そう言って手を差し伸べるサトシの肩に、ピカチュウが飛び乗った。ピカチュウもサトシ達と気持ちは同じみたい。
「みんな・・・」
 みんなの暖かさを感じたあたしの心の中に、あの時の本音がよみがえってきた。やっぱりあたしは、こんなみんなと一緒に旅をしたい・・・! そんな思いが、あたしの不安を消していく。
「・・・ごめん。勝手にあんな事しちゃって。やっぱり、みんなと行くよ」
 あたしはサトシの手を取ってゆっくりと立ち上がりながら、そう言った。その言葉には迷わなかった。それを聞いたみんなが、笑みを浮かべた。
「そうだよ、そういう時こそ言わなきゃ、『ダイジョウブ!』ってさ」
 サトシが微笑んだ。
「うん、ダイジョウブ」
 あたしも、今作れる精一杯の笑みを浮かべて、自分にそう言い聞かせた。

 その日の夜は、あの悪夢にうなされる事はなかった。

 * * *

 次の日。
 あたし達が、この町を出発する時が来た。
「サトシ、次はトバリシティに行くんでしょ?」
「ああ。次のジム戦に向けて、がんばらなくちゃな!」
 サトシはミライさんに、張り切ってそう答えた。ミライさんは笑みを浮かべた。そして、今度は顔をあたしに向けた。
「ヒカリちゃん」
「何ですか?」
「最後に言っておくわ。旅の中でよく考えるのよ、『自分が本当は、何がしたいのか』って」
「何がしたいのか・・・」
 あたしは、ミライさんの言った事をもう一度、口にしてみる。
「それは、ヒカリちゃん自身が一番よく知ってるはずだからね! ポッチャマも、ヒカリちゃんを頼むね!」
「ポチャ!」
 あたしの肩の上にいるポッチャマが、元気よく答えた。
「じゃ、行こうか」
「うん」
 そろそろ出発するみたい。あたし達は、ミライさんに背を向けた。
「3人共気をつけてね〜!」
「さようなら〜!」
 お互いに手を振りながらそんな挨拶を交わして、あたし達は道を進み始めた。ミライさんは、そんなあたし達の背中をしばらく見送っていた。
「ヒカリちゃん、これからが正念場ね。『喉元過ぎれば熱さを忘れる』って言うけど、ヒカリちゃんのはそう簡単に忘れられる熱さじゃなさそうね・・・ちょっと心配だわ・・・カズマ君はこの事をどう思うかしら」
 ミライさんは手を下ろして、そんな事をつぶやいていた。

 * * *

 これから先、どんな事が起こるのかはわからない。あたしがコンテスト出場を続けるのかどうかも、わからない。正直言って、不安な事だらけ。でも、あたしは信じる。みんなと一緒に旅をしていけば、きっとその答えをつかめるって。もしつかめなくても、みんなと一緒に楽しく旅ができるなら、それでもいい。
 そんな小さな希望が、あたしの胸の中にあった。

 こうしてあたし達の旅は、まだまだ続く。続くったら、続く・・・・・・


STORY08:THE END

[240] 次回予告
フリッカー - 2008年01月25日 (金) 19時59分

 ユモミに励まされたのはいいけど、まだ完全に不安が取れないあたし。

「あたし・・・ホントにダイジョウブなのかな?」
「・・・ポチャ!!」
「ポッチャマ・・・?」

 そんなあたしの前に現れた謎の女の人、メイル。

「あなたが負けたのはあなたのせいではありません。周りがあなたの力を認めていないのですよ」
「あたしの力を、認めてない・・・?」
「どうです、私と手を組みませんか? 共に自らを認めなかった世界をアッと言わせてみませんか?」

 そんな、そんな事で悪い事をしようとするなんて・・・!

「・・・嫌です!」
「私を怒らせましたね・・・! フタバタウンのヒカリ・・・!!」

 それから、メイルはしつこくあたしを狙い始めた!

「絶望の淵に落としてあげましょう・・・フタバタウンのヒカリ!!」

 NEXT STORY:夢の続き(前編)

「自らの限界に気付きなさい。それでも、『ダイジョウブ』という楽観論を言えますか・・・フタバタウンのヒカリ?」

 COMING SOON・・・



Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】Amazonにて人気の 日替わり商品毎日お得なタイムセール
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板