[133] FINAL SECTION シナモンを救え! ヒカリVSハンターJ! |
- フリッカー - 2007年12月25日 (火) 23時45分
「くそっ、あいつめ!!」 サトシが、カッとしてあたしを押しのけて立ち上がって、運転席に走り出した! でも、運転手がそれに気付いたためか、車はまた急発進! 「うわあっ!!」 反動でたちまち後ろに吹っ飛ばされて、床に思い切り叩きつけられるサトシ。起き上がったあたしも、反動で体を押し倒された。 「ぐっ、負けるもんかよっ!!」 それでも、サトシは怯まない。もう1回運転席に飛び込んだ! 今度は成功! 「何!?」 「車を止めろ〜っ!!」 「や、やめろこの!! 放せえっ!!」 たちまち運転手ともみ合いになるサトシ。 「ヒカリ、シナモンを頼む!!」 「あ、うん!!」 そうだ、こうしてる場合じゃない! 早くシナモンをこの機械から出さないと! 「ポッチャマ! エイパム! ミミロル!」 あたしは入れていたポケモンを全部出した。開けられないっていうのなら、壊すしかない! 「みんな!! この機械を開けるのを手伝って!!」 「ポチャッ!!」 「エイッパッ!!」 「ミミッ!!」 「チッパ!!」 みんなやる気満々! さあ、行くわよ!
FINAL SECTION シナモンを救え! ヒカリVSハンターJ!
「鍵に攻撃するわよ!! ポッチャマ、“つつく”!! エイパムは“きあいパンチ”!! ミミロルは“ピヨピヨパンチ”!! パチリスは“スパーク”っ!!」 とにかく、ありったけの攻撃を鍵にぶつければ、壊れるはず・・・! みんなが攻撃態勢に入った、その時! キキーッ、とまたタイヤがこすれる音がしたと思うと、急に車がギュイイインと左にターン! 「きゃあっ!!」 当然、反動であたし達の体は前につんのめる。あたし達は壊そうとしてた機械に思いっ切り頭をぶつけちゃった! いったーい・・・この機械、結構硬いみたい・・・ 「何なのよ・・・こんな時いきなり・・・」 そう思ってたのもつかの間、今度は逆方向に車がターン! 「って、きゃああああっ!!」 今度は後ろに体がつんのめって、床に背中を思いっ切りぶつけちゃった。サトシは一体、何やってるのよ・・・っ! 「ちょっとサトシッ!! 止めるならちゃんと止めてよ〜っ!!」 「やってるって!! この〜っ!!」 サトシと運転手とのもみ合いはまだ続いている。サトシはその対応に精一杯みたい。この状態を改善してくれる事は、あまり期待できなさそう。 「みんな、気を取り直してもう1回!!」 「ポチャッ!!」 「エイッパッ!!」 「ミミッ!!」 「チッパ!!」 体勢を立て直したみんなが、はっきりとうなずいた。 「ポッチャマ、“つつく”!! エイパムは“きあいパンチ”!! ミミロルは“ピヨピヨパンチ”!! パチリスは“スパーク”っ!!」 さっきの指示をもう1回! 「ポッチャマアアアッ!!」 「エイッパアーッ!!」 「ミィミ、ロォーッ!!」 「チッパアアアッ!!」 みんなが、一斉に鍵に向けて攻撃する! ポッチャマ、エイパム、ミミロル、パチリスの順に鍵に攻撃していく! 鍵から火花が出ている。手応えがある! これなら・・・! でもその時、車が蛇行運転になって、ふらふらと横揺れを始めた。当然、あたし達の足場も揺れる。すると、みんなの足もふらつく。 「わああああっ!」 あたしはバランスを取るのに必死だった。こんな状態じゃ、いつまで経っても壊せないよ・・・! 「サトシ〜っ!! 何とかしてよ〜っ!!」 あたしは思わず、その不満をサトシにぶつけた。 「わかってるって!!」 サトシからは、そんな返事しか返ってこない。その時だった! キキーッ、とまたタイヤがこすれる音がしたと思うと、車が急に左にスピンした! 「きゃああっ!!」 あたし達の体が、思いっきり右に引っ張られた! そして、車の右の部分が、ガシャンと大きな音を出してぶつかった! それと同時にあたしの体は一瞬、ふわりと宙に浮いたかと思ったら、思いっきり体を機械にぶつけちゃった! な、何が起こったの・・・? 車は、そのまま動かなくなった。何かにぶつかったみたいだった。 「いたたたた・・・みんな、ダイジョウブ?」 あたしは、みんなを確認する。みんな転んでいたけど、無事だった。 「ヒカリ、大丈夫か?」 サトシが運転席から戻ってくる。 「な、何とかダイジョウブ・・・」 あたしはそう言って、その場を立ち上がった。すると、あたしの後ろでキィィと何かが動く音がした。振り向くと、機械の扉が少し開いていたのが見えた! 「あっ、開いてる!」 きっと、さっきの衝撃で壊れたんだ! あたしはすぐに、シナモンが閉じ込められた入れ物を取り出した。それを見たパチリスが、すぐに駆け寄ってきて、変わり果てたシナモンの姿を見て愕然としていた。 「さあ、早くここから出よう!」 「ええ!」 車も止まった事だし、あたし達はすぐに車から出る事にした。あたしはシナモンが閉じ込められた入れ物をしっかりと抱えて、素早く車から降りた。でも、その直後! 突然、あたし達の行方を遮るように、一筋の閃光があたし達の前を通り過ぎた! 通り過ぎた後が、すぐに爆発を起こした! 「っ!!」 思わず足を止めるあたし達。 「逃がしはしないぞ」 すると、空からボーマンダに乗ったJが、あたし達の前に降りてきた! さっきのは、ボーマンダの“はかいこうせん”・・・! ボーマンダから降りて、黒いグラス越しにこっちを見つめるJ。 「ポケモンハンターJ!! 俺はお前みたいな奴が許せない・・・!!」 サトシが真っ先にそう叫んで前に出た。 「前に言ったはずだぞ、『二度と邪魔をするな』と」 「そんな事知るか!! 俺は絶対、お前を止めてやる!!」 「ピッカ!!」 サトシのJに対する敵意は強い。その燃えたぎる闘志に答えるように、ピカチュウが声を上げて構えを取った。 「それでも邪魔するというのならば、遠慮はしない・・・!! ボーマンダ、“ドラゴンクロー”!!」 先に仕掛けたのはJだった。ボーマンダが、ツメに力を込めて、ピカチュウに踊りかかる! 「かわして“10まんボルト”!!」 ピカチュウが、そのツメの一撃を自慢のスピードでよけた。そして、ボーマンダに向けて電撃を放つ! でも、ボーマンダは飛び上がってかわした。 「ヒカリ、シナモンを頼む!! ここは、俺が任せておけ!!」 サトシが、こっちに振り向いて言う。 「ええ!!」 ここはサトシに任せよう。あたしは、シナモンが閉じ込められた入れ物をしっかりと抱えて、その場から逃げ出そうとした。 「・・・む!! 逃がすものか!! ドラピオン!!」 すると、あたしの目の前に、Jのモンスターボールから出てきたドラピオンが立ちはだかった! 「!!」 あたしは思わず足を止めて、別の方向に向き直って逃げようとした。 「“はたきおとす”!!」 それでもドラピオンはあたしを狙ってくる。ドラピオンは腕を振り上げて、あたしに向かって思い切り振った! 「きゃあっ!!」 思い切りはたかれたあたしは、シナモンが閉じ込められた入れ物を落としちゃった! 入れ物は、そのまま地面を転がっていく。そしてそれに、ドラピオンが手を伸ばす! いけない! せっかく取り返したのに、取り戻されちゃう! 「チッパーッ!!」 すると、誰よりも先にパチリスが“スパーク”でドラピオンに突撃していった! 直撃! 不意を突かれたドラピオンは、入れ物を取り損ねた。その隙に、ポッチャマ、ミミロル、エイパムの3匹が入れ物を取りに向かった。 「ありがとう、パチリス!!」 あたしがそう言っても、パチリスは答えなかった。 「・・・パチリス?」 「チパ・・・・・・ッ!!」 別に無視してる訳じゃない。パチリスは、いつになく怒った目つきで、電気袋から火花を出しながら、ドラピオンをにらんでいた。パチリスが、珍しく怒ってる・・・? あたしは、その理由がすぐにわかった。 「パチリス・・・友達がさらわれて、怒ってるのね・・・」 そうよね、仲良くなったばかりのシナモンがさらわれて、許せないと思うのは当然だよね・・・ドラピオンは、あたし達を通してくれるつもりはなさそう。こうなったら、あたしも・・・! そうしている間に、ドラピオンは入れ物を運ぼうとするポッチャマ達に狙いをつける! ポッチャマ達が危ない! 「行くよ、パチリス!! “ほうでん”!!」 「チィィィパ、リイイイイイッ!!」 パチリスのいつも以上に力の入った“ほうでん”攻撃! 命中! 思わず後ずさりするドラピオン。 「やったあ!!」 これで、ポッチャマ達はこっちに入れ物を持ってきてくれるはず・・・! そう思って見てみたら、入れ物を持ち出そうとしていたポッチャマ達までもしびれちゃっていた! いけない! “ほうでん”って範囲が広いって事忘れてた! これじゃこっちが不利になっちゃう! あたしは、慌ててポッチャマ達を戻した。 すると当然、いなくなった所をドラピオンが狙ってくる。ドラピオンがもう一度、入れ物に手を伸ばす! 「パチリス、“スパーク”!!」 「チッパァァァァァァッ!!」 とっさに指示するあたし。パチリスは、“スパーク”でドラピオンに突撃していく! その隙にあたしは思い切って、ポッチャマ達が取り損ねた入れ物に向かって走り出した。“スパーク”はドラピオンの腕の一振りで簡単にはじかれちゃったけど、あたしが入れ物を拾う事には成功! と思ったら、ドラピオンの顔がこっちを向く。そして、“どくばり”をこっちに発射した! 「わああっ!!」 行こうとしてた先に飛んで来る“どくばり”に、あたしは慌てて足を止めた。でも、それがまずかった。その隙を突いて、ドラピオン手があたしに伸びてくる! 気付いた時にはもう手遅れ。たちまちあたしはドラピオンの両手に捕まっちゃった! 「ああっ!! 放してっ!! 放してええええっ!!」 あたしは必死で体をじたばたさせて抵抗するけど、ドラピオンは放してくれない。パチリスも、電撃をしたらあたしまでしびれちゃうから、うかつに攻撃できない! 「ヒカリ!! ピカチュウ、ヒカリを助けるんだ!!」 それに気付いたサトシが、すぐにフォローしてくれた。ピカチュウが“でんこうせっか”でドラピオンに飛び込んだ! 狙う先は、ドラピオンの頭! 直撃! 頭に攻撃を受けたドラピオンは、たまらずあたしを放した。あたしはうまく着地して、すぐにドラピオンから離れる。 「よそ見をしていていいのか! ボーマンダ!!」 でも、その隙をJは見逃さなかった。ピカチュウをボーマンダの“ドラゴンクロー”が襲い掛かった! 完全な不意討ち。たちまち弾き飛ばされるピカチュウ。 「どうしようサトシ・・・これじゃ逃げられそうにないよ・・・」 「くそっ、こうなったら・・・!」 合流したサトシと背中を向け合うあたし。あたしの前にはドラピオン、サトシの前にはボーマンダ。完全な挟み撃ち状態。逃げる事なんてできる訳ない。 「サトシーッ! ヒカリーッ! ああっ・・・!」 すると、遠くからタケシの声がした。見ると、タケシとレナがこっちに向かってくるのが見えた。2人は、あたし達の状況を見て、思わず足を止めた。 「お前達はもう逃げられないぞ。素直に白いピカチュウを渡せ」 Jがそうあたし達に迫る。 「ふざけるな!! シナモンをお前みたいな奴なんかに渡すもんか!!」 サトシが、力強く言い返した。 「・・・そうか。ならば、消えてもらうしかないな・・・!!」 Jの答えと同時に、ドラピオンとボーマンダが身構えた。 「そんな・・・シナモンのせいで、2人が・・・!」 レナは、また頭を抱え込んだ。 「ダイジョウブ!!」 そんなレナの声が耳に入ったあたしは、レナに顔を向けてはっきりとそう言った。 「ヒカリ・・・?」 「シナモンは、必ずあたし達が守ってみせるから!!」 「そうさ!! ここは俺達に任せておけって!!」 サトシも、あたしに続けてレナを励ます。 「ヒカリ・・・サトシ・・・私のために・・・」 レナは、あたし達の言葉に何かを感じていたようだった。 「・・・行くぞヒカリ!!」 「ええ!!」 あたし達は、Jの方に顔を向き直した。 「ピカチュウ!!」 「パチリス!!」 「ピッカ!!」 「チッパ!!」 あたし達の声で、ピカチュウがボーマンダと、パチリスがドラピオンと対峙する。 「パチリス、“スパーク”!!」 「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」 パチリスとピカチュウが、一斉に攻撃を仕掛ける。パチリスは“スパーク”でドラピオンに向かっていく! そしてピカチュウはお得意の“10まんボルト”をボーマンダに向けて発射! 「ドラピオン、“クロスポイズン”!! ボーマンダ、“はかいこうせん”!!」 Jは冷静にそれに対応した。ドラピオンは“クロスポイズン”でパチリスを簡単に弾き返した! そして、ボーマンダはピカチュウの電撃をかわして、素早く“はかいこうせん”を発射! 直撃! 「チパアアッ!!」 「ピカアアッ!!」 悲鳴を上げて、あたし達の前に弾き飛ばされるパチリスとピカチュウ。かなりダメージを受けたみたい! 「そんな・・・!!」 あたしは改めて、Jの強さを思い知った。サトシが苦戦していたのもわかる。 「白いピカチュウを奪い取れ! “はたきおとす”!!」 そんな事を考えていると、ドラピオンがあたしの前に躍り出た! そして気が付くと、あたしはまた思い切りはたかれた! 「きゃあっ!!」 シナモンが閉じ込められた入れ物があたしの横に飛んで行った。そして、地面をごろごろと転がっていく。いけない! 「シナモンッ!!」 でも、それに動いたのはレナだった。レナは入れ物に向かって飛び込んで、スライディングする形で入れ物を受け止めた。レナは入れ物を開けるスイッチを見つけると、すぐにそれを押した。入れ物の透明な部分が消えて、銅像のようになっていたシナモンが元に戻った。 「・・・ピカ?」 「シナモン・・・ッ!」 シナモンの無事な姿に、レナは嬉しそうな表情を浮かべた。でも、その時! 「おのれ・・・!! ドラピオン、あの少女に“クロスポイズン”!!」 ドラピオンがツメを紫に光らせて、レナに向かって行った! いけない! このままじゃ! 「パチリス!! ドラピオンを止めて!!」 「チッパーッ!!」 パチリスはあたしの指示に答えて、ドラピオンに“スパーク”で突撃していく! でも、それに気付いたドラピオンは、パチリスを腕の一振りで簡単に弾き飛ばした! 「ああっ!!」 レナがやられちゃう! ドラピオンは、顔を向き直してレナに向けてツメを振った! 「いやあああああっ!!」 レナは腰が抜けたまま悲鳴を上げて、目をつぶった。 「ピッカアッ!!」 でも、そんなレナの前にシナモンが飛び出した!
ドラピオンのツメが、容赦なく十字にシナモンを切り裂いた。シナモンは、それでもレナの前で仁王立ちしている。“クロスポイズン”の破壊力はかなりのもの。もろに受けちゃったら、ただじゃ済まないはず・・・と思ったあたしだけど、その予想は大きく外れた。 「・・・ピカ!!」 シナモンは、ダメージを受けた様子がない。その表情は「それでおしまい?」とでも言ってるようにニヤリとした余裕なものだった。 「ピッカアーッ!!」 そして、尻尾に力を込めて、ドラピオンに飛び込んだ! “アイアンテール”だ! 頭を思いっ切り殴られたドラピオンは、思わず後ずさりした。 「シナモン・・・助けてくれたのね!!」 「ピカチュ!!」 レナの喜びの声に、シナモンも笑顔で答えた。 「どうして!? “クロスポイズン”は確かに当たってたのに!?」 あたしはむしろ、“クロスポイズン”を受けてもビクともしなかったシナモンの方が不思議だった。 「・・・そうか! シナモンははがねタイプの『δ種』だ、はがねタイプにはどくタイプのわざは全く効かないんだ!」 その答えは、タケシが出した。 「あ、そうだった!」 そうだ、今までそんな事すっかり忘れてたよ・・・そんな中、ドラピオンが“どくばり”でシナモンに反撃する。でも、シナモンは避ける様子もなく、両手を腰に当てて胸を張って“どくばり”を受けた。当然、“どくばり”はシナモンの体に簡単に弾かれた。 「くっ、よりによって白いピカチュウを敵に回してしまうとは・・・!」 Jが唇を噛んだ。すると、レナがスクッと立ち上がった。 「シナモン・・・ごめんね。私、どうかしてたよ。あなたは、どんな時も私の側にいつもいてくれた大事なポケモン。悪者に狙われてるからって、逃がそうとした私がバカだったわ。シナモンが『δ種』のせいで悪者に狙われるのが宿命だって言うなら、私はそれを背負ってやるわ!! それでも私は、あなたとこれからも一緒にいたい!! 行く手を阻む悪者は、追い払えばいいだけ!! だからシナモン・・・私に力を貸して!!」 その姿は、バトルの時に見た元気なレナそのものだった。 「ピッカ!!」 シナモンは、はっきりと答えた。 「レナ・・・!」 あたしも、そんなレナの志を見て、嬉しくなった。 「シナモン!! “ボルテッカー”!!」 「ピカピカピカアアアアアアッ!!」 レナの力強い指示に答えて、シナモンの“ボルテッカー”も力が強まったように見えた。電撃を纏ったシナモンは、勢いよくドラピオンに飛び込んだ! 直撃! ドラピオンに電撃を与えながら、シナモンはロケットのようにドラピオンを押していく! 「やっちゃえええええっ!!」 「ピッカアッ!!」 レナの指示に答えて、シナモンは勢いを弱めないまま、ドラピオンを突き飛ばした! 電気でしびれた状態で、木に強く叩きつけられるドラピオン。手ごたえはある! 「ちっ!! ボーマンダ、白いピカチュウを止めろ!! “かえんほうしゃ”!!」 そんなドラピオンをフォローしようと、ボーマンダがシナモンの方を向いた。口から火を吹こうとしてる! 「させるか!! ピカチュウ、“でんこうせっか”!!」 とっさにサトシがリリーフ。サトシのピカチュウが“でんこうせっか”でボーマンダの腹に飛び込んだ! 直撃! そのせいで、ボーマンダの“かえんほうしゃ”は全然違う方向に飛んで行った。でも、ピカチュウは無理しちゃったみたい。着地した後、少しだけどよろけたのが見えたから。 「ピカチュウ、まだいけるか?」 「ピカ・・・」 サトシのピカチュウは苦しい表情を浮かべながらも、ゆっくりと立ち上がった。でも、このままじゃサトシのピカチュウはもたない。そうだ! あたしはいい事を思いついた。 「パチリス、思いっ切り“ほうでん”しちゃって!!」 「チィィィパ、リイイイイイッ!!」 あたしの指示通り、パチリスは回りに思いっきり電撃を放った。ドラピオンやボーマンダはもちろん、シナモンやサトシのピカチュウも巻き込んだ。ドラピオンとボーマンダはダメージを受けるけど、サトシのピカチュウは、電気エネルギーを蓄えて力を取り戻した! シナモンも、電気エネルギーを蓄えてくれたみたい。そう、“ほうでん”をしたのは、シナモンとサトシのピカチュウにパワーを分けるため! 「サンキュ、ヒカリ! 助かったぜ」 「どういたしまして! あたし達も、レナに負けてられないからね!」 「そうだな!! よし、俺も負けてられないぜ!!」 「ヒカリ、サトシ、みんなでお礼をきっちりしないとね!!」 レナがそう言って、あたし達の横に並んだ。シナモンも、パチリスとサトシのピカチュウの横に並んだ。 「そうだな!! みんなで反撃開始だ!!」 「ええ!!」 「しっかえっしタ〜イム!!」 あたし達3人は、そう言ってJと向き合った。 「おのれ・・・!! ドラピオン!! ボーマンダ!!」 Jは少し怒った様子で、そう指示を出した。ドラピオンとボーマンダが、こっちに向かってくる! 「シナモン、“チャージビーム”!!」 シナモンは“チャージビーム”で応戦! 正面から向かって行くだけだったドラピオンに、簡単に命中! それでもドラピオンは怯まない。“どくばり”を発射するけど、当然、効く訳がない。 「どうしたのポケモンハンターさん、その程度なの? “アイアンテール”!!」 さっきまで悩んでいたのがウソみたいな口調で、レナは攻撃を続ける。シナモンは飛んで来る“どくばり”をものともしないで、ドラピオンに“アイアンテール”の一撃を与えた! その一撃で、また弾き飛ばされるドラピオン。 「パチリス、“てんしのキッス”!!」 まともにやりあったら勝ち目がない。そう思ったあたしは、パチリスにそう指示した。パチリスの“てんしのキッス”はボーマンダに簡単に命中! たちまちボーマンダは『こんらん』して、千鳥足になった。 「今よサトシ!!」 「ああ!! ピカチュウ、“10まんボルト”!!」 その隙を突いて、ピカチュウが自慢の“10まんボルト”をボーマンダにお見舞い! 直撃! 悲鳴を上げるボーマンダ。 「さあ、シナモンの奥の手を見せてあげるわ!!」 「ピッカアアアアアア・・・・・・!!」 レナがそう言うと、シナモンが体に力を込める。すると、シナモンの周りをいくつかの小さな光る玉が現れて、やがて1つの輪を描きながら、シナモンの両手の間にどんどん集まっていく。シナモンが両手を引いた。 「必殺!! はがねの“めざめるパワー”っ!!」 「チュウウウウウウウッ!!」 レナの指示で、シナモンは引いた両手を一気に突き出して、集めたエネルギーを光線にしてドラピオンに発射した! どんどん伸びていく銀色の光線。それは容赦なくドラピオンに襲い掛かった! ドラピオンに突き刺さる光線。そして、爆発! 「ヒカリ!! タイミングを合わせるぞ!!」 「ええ!!」 ボーマンダに大ダメージを与えるために、あたし達は息を合わせる。パチリスとサトシのピカチュウが、互いに顔をあわせてうなずいた。 「ピカチュウ、“ボルテッカー”!!」 「パチリス、“スパーク”!!」 あたし達の指示で、パチリスとサトシのピカチュウが横に並んで、体に電気を纏う。青と黄色の電気が、1つになった。 「行けええっ!! ダブル“ボルテッカー”ッ!!」 サトシと一緒に、あたしもそう叫んでいた。パチリスとサトシのピカチュウは、一体となってボーマンダに向けて突撃していった! 直撃! 青と黄色の電撃がボーマンダの体に流れていく。 「チパアアアアア・・・・・・!!」 「ピカアアアアア・・・・・・!!」 パチリスとサトシのピカチュウは、叫び声を上げながら、ボーマンダをロケットのように押していく! 「リイッ!!」 「チュウッ!!」 2匹で同時にボーマンダを突き飛ばした! 電気でしびれた状態で、Jの前に弾き飛ばされるボーマンダ。かなりのダメージを与えられた! 「やったぜ!!」 サトシがガッツポーズを取る。 「さあ、どうするのポケモンハンターさん? 逃げるなら今の内よ?」 レナが胸を張って自信満々にJに言い放った。シナモンもまだまだやる気。 「ちっ、ここは分が悪い・・・撤収するしかないか・・・!! 退くぞ!!」 Jは唇を噛んだ。ドラピオンを戻すと、ボーマンダがゆっくりと立ち上がった。そして、Jが乗ると、ボーマンダは空へと飛び立っていった。Jを乗せて飛ぶだけの体力は残っていたみたい。そして、動かなくなっていた車も、動き出してボーマンダと一緒に去って行った。 「シナモンッ!!」 「ピカーッ!!」 レナとシナモンが互いに駆け寄っていく。胸に飛び込んできたシナモンを、レナはしっかりと受け止めた。 「ごめんね、シナモン・・・やっぱりあなたはずっと、私と一緒よ!!」 「ピカチュ!!」 嬉し泣きしながら言うレナに、シナモンは嬉しそうに答えた。 「よかったね、シナモン」 これで一件落着。あたしは、ほっとした。パチリスも、そんなシナモンを祝福していた。
* * *
時間はもう夕方。日はすっかり西に傾いていた。 「ありがとう、みんな。今日の事、ホントになんてお礼言ったらいいんだろ・・・」 レナはそうお礼を言った。 「いいのよ、お礼なんて別に」 「これからもシナモンを狙って悪者が来るかもしれない。でも、私は強くなって、そいつらを追い払ってやるんだから!」 レナは、肩にいるシナモンの頭をなでながら、そう元気よく言った。 「ピカ・・・」 その言葉を聞いたシナモンは、ちょっと照れた様子だった。 「シナモンもよかったな。いいトレーナーに出会えて」 「そんな、それほどでも・・・」 タケシの言葉に、レナもちょっと照れる。 「そういえばヒカリ、ズイタウンのコンテストに出るんでしょ? テレビで応援するわ!」 「ありがとう、レナ。あたしもがんばらなきゃ! 次こそは、リボンをゲットしてやるんだから!」 「チッパ!」 「ピカチュ!」 パチリスも、シナモンと笑顔でそんなやり取りをしていた。
「さようなら〜! ホントにありがとね〜!」 「レナも元気でね〜!」 「シナモンを大事にするんだぞ〜!」 「元気でな〜!」 あたし達はレナの前を後にしていった。 「チッパーッ!」 「ピーカーチューッ!」 あたしの肩の上にいるパチリスも、シナモンに手を振っていた。そんなパチリスの姿を見たあたしは、やっぱりあの時パチリスをゲットしてよかったな、と思った。 「パチリス、これからもよろしくね」 「チパ・・・チッパ!」 パチリスは突然の言葉にちょっと戸惑ったけど、すぐに笑顔で答えを返してくれた。
こうして、あたし達の旅は、まだまだ続く。続くったら、続く・・・・・・
STORY07:THE END
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