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[130] ヒカリストーリー STORY07 純白の宿命
フリッカー - 2007年12月17日 (月) 21時57分

 どうも、フリッカーです。
 今作は、今年最後のヒカスト! 年が明ける前に完結させるつもりなので、マッハで書こうと思います!

[131] SECTION01 白いピカチュウ、シナモンの正体!
フリッカー - 2007年12月17日 (月) 22時00分

 あたしはヒカリ。トップコーディネーターになるために旅に出たポケモントレーナー。
 初心者用ポケモンをもらいに行った時に打ち解けたポッチャマをパートナーにして、ひょんな事から仲間になった、カントーから来たトレーナー、サトシとタケシと一緒に旅を始めたの。大小いろんな事を経験しながら、あたし達の旅は続く。
 これは、そんなあたしが旅の途中に経験した、ある日のお話。


SECTION01 白いピカチュウ、シナモンの正体!


 トバリシティへ向けて旅をする途中、あたしは次のコンテストがズイタウンで開かれる事を知った。そんな訳で、あたし達はズイタウンに向かう事になった。万全の準備をしなきゃ! エイパムも新しくチームに加わった事だし、今度こそはリボンをゲットしてやるんだから!

 * * *

「ちょっとパチリスーッ、どこ行くのよーっ!」
「ポチャーッ!」
 あたし達は、森の中で走り出したパチリスを追いかけていた。パチリスはコンテストに向けての練習中、急に何かを感じ取ったように、突然走り出しちゃったの。ただでさえ足の速いパチリスを追いかけるのは大変。どんどん距離が離れていくように見える。そして、パチリスはとうとう、森の茂みの中に飛び込んだ。見失っちゃう! あたしもすぐに、その茂みの中をのぞき込んだけど、そこにはもう、パチリスの姿は影も形もなかった。
「あ〜あ、見失っちゃった・・・」
「ポチャ・・・」
「あいつホント、『にげあし』だけは速いよな・・・」
 あたしは途方に暮れた。追いかけるのでさえ大変なパチリスを、とうとう見失っちゃったんだから・・・ホント、世話が焼ける子なんだから・・・こうなったら、サトシに頼んで、ムクバードに探してもらうしかない・・・そう思った時だった。
「あ、パチリスじゃない! かわいい〜!」
 そんな声が、近くから聞こえてきた。女の子の声。
「今の声・・・もしかしてパチリスが近くに?」
「行ってみよう!」
 間違いない、あたしのパチリスが近くに! あたしはすぐに、声がした方向に向かった。茂みを掻き分けていくと、開けた場所に出た。するとそこにいたのは、水色のショートヘアーの女の子。さっきの声の主みたい。
「せっかくだから、ゲットする前に絵に描いちゃおっか」
 女の子はおもむろにスケッチブックと鉛筆を取り出した。スケッチブックを開いて、鉛筆を動かし始めた。その先にいるのは、やっぱりパチリス! その隣には、何か別のポケモンがいたけど、今は目に入らなかった。
「パチリス! ダメでしょ、勝手にどこかに行っちゃ・・・!」
 あたしは、パチリスの許に駆け寄った。パチリスが、はっとしてあたしを見た。
「ピカ!!」
 すると、パチリスの隣にいた別のポケモンが、パチリスの前に出た。こっちを怪しい人だと思ったのか、こっちをにらみながら電気袋から火花を出して警戒してる。でも、それよりも気になったのは、その見た目だった。
「?」
 その姿は、どこをどう見てもピカチュウ。でも、ただのピカチュウじゃない。ピカチュウにしては色が真っ白。こんなピカチュウなんて見た事がない。
「ちょっと、あんた達誰? いきなりのこのこ出てきて、絵描いてる途中なんだから、邪魔しないでくれる?」
 女の子が、ちょっといらだった様子でこっちに言った。あ、そうだ。まだ何も言ってなかった。
「あ、ごめん。あたし、ヒカリ。別に怪しい人じゃないわ。このパチリスのトレーナーなの」
「俺、サトシ」
「俺はタケシだ」
 あたし達は、それぞれ自己紹介する。
「え、このパチリス、あなたのポケモンだったんだ。てっきり野生のポケモンだと思っちゃって・・・」
 女の子は目を丸くした。
「チパ、チパチッパ」
「ピカ・・・」
 パチリスも事情を説明してる様子。すると話がわかったのか、白いピカチュウは表情を緩めて、電気袋からも、火花を出さなくなった。
「私はレナ! こっちはシナモンよ!」
「ピッカ!」
 女の子も元気よく自己紹介する。白いピカチュウも元気よく挨拶した。
「そのピカチュウ、シナモンって名前なのか。でも・・・」
 サトシが感心して言うけど、やっぱり気になる事があるみたいで、顔をシナモンに近づける。
「白いピカチュウなんて初めて見たな・・・」
「ピカ・・・?」
「この広い世の中、こんなポケモンもいるんだなあ・・・」
 サトシも、肩の上にいるサトシのピカチュウも、タケシも、不思議そうにシナモンを見つめていた。あたしも、その1人だったけどね。一応念のためにと、ポケモン図鑑を取り出した。
「ピカチュウ、ねずみポケモン。森の中で仲間と暮らす。ほっぺたの両側にある電気袋に電気を溜める」
 色は真っ白だけど、ピカチュウである事に間違いはないみたい。
「白い色のピカチュウなんていたんだ・・・」
「そ、そうなのよ! ほ、ほら、『十人十色』って言葉もあるでしょ? アハハ・・・」
 レナが急に、慌てた様子で苦笑いのように笑いながら言った。何か隠しているようにも見えるけど・・・まいっか。
「チッパーッ!」
「ピーカーチューッ!」
 すると、いつの間にかパチリスとシナモンの追いかけっこが始まっていた。その様子はホントに楽しそう。
「あら、パチリス、すっかりシナモンと仲良くなっちゃったみたいね」
 レナが言った。
「そうか! パチリスがここに来たのは、シナモンに引き寄せられたからなんだ!」
 タケシが思いついたように声を上げた。
「引き寄せられた? どういう事?」
 あたしはタケシに顔を向ける。
「ピカチュウのとくせい『せいでんき』は、でんきタイプのポケモンを引き寄せやすい特徴があるんだ。きっとパチリスも、それに反応して、シナモンの所に走っていったんだよ」
「そうだったんだ・・・でんきタイプポケモン同士って、やっぱり気が合うのね」
 そう言って、あたしはパチリスとシナモンの方に、顔を戻した。パチリスの疲れを知らない足の速さに、シナモンもちょっと大変そう。でも、その様子はとても気持ちが和むものだった。
「・・・そうだ!」
 すると、その様子を見ていたレナが突然、そう口に出した。
「あなた、私とバトルしましょ! 相手はあのパチリスで!」
「え?」
 その声を聞いたパチリスとシナモンが、足を止めてこっちを見た。
「あの足の速さ、なかなかいい感じじゃない。あのパチリスがどんな強さなのか、知りたくなっちゃった」
「いいわ。ちょうどこっちもコンテストの練習をしてた所だし、コンテストバトルの練習になるわ」
「コンテストバトルって、ヒカリもしかしてポケモンコーディネーター?」
「うん、そうよ」
「へえ、私コンテストにもちょっと興味あるんだよね〜。じゃ、コンテストバトルってものがどんなものか見せてもらうわよ!」
「ええ!」
 あたし達は気合充分!
「ピッカチュ!」
「チッパ!」
 パチリスとシナモンも、「負けないぞ!」と言い合っているように、言葉を交わしていた。

 * * *

 バトルの準備が整った。審判の位置にはいつものようにタケシが。サトシやポッチャマは横で応援に。
「バトルは1対1で行くわよ! あたしはシナモンで行くわ!」
「ピッカ!」
 レナの元気のいい声に答えるように、シナモンも声を上げた。やる気満々。
「こっちだって負けないわよ、パチリス!」
「チッパ!」
 パチリスも負けじと元気よく答えた。パチリスもやる気満々。
「では、試合開始!!」
「行くわよシナモン!! “チャージビーム”!!」
「パチリス、“ほうでん”!!」
 試合開始の合図と同時に、あたし達は一斉に指示した。
「ピィィィカ、チュウウウウウッ!!」
「チィィィパ、リイイイイイッ!!」
 2匹が電撃を一斉に発射! 2つの電撃は、正面でぶつかり合って、爆発! フィールドが、黒い煙で包まれた。ここで、闇雲に動く訳にはいかない。それはレナも同じみたい。煙が晴れるのを待つあたしとレナ。煙が、ゆっくりと晴れていく。パチリスとシナモン、お互いの姿が煙の間から見えた!
「今よパチリス!! “スパーク”!!」
 パチリスが、青い電気を体にまとって、シナモン目掛けて突撃していく!
「シナモン!! “ボルテッカー”!!」
「!?」
 シナモン、サトシのピカチュウと同じで“ボルテッカー”が使えるの!? 驚いてる暇はない。シナモンの体を、強い電気が包んで、突撃するパチリスを迎え撃つ! 2匹は正面からぶつかり合った! 少しの間押し合いが続いたけど、弾き飛ばされたのは、やっぱりパチリスの方だった。“ボルテッカー”の威力は、サトシのピカチュウを見てるから、よく知ってるもん。効果が今ひとつなのが、何よりの救いだった。
「ああっ!!」
「今よ!! 続けて“アイアンテール”!!」
 さらに攻撃を続けるシナモン。尻尾に力を込めて、飛ばされたパチリスを追撃する!
「ピッカアッ!!」
 直撃! 地面に叩きつけられるパチリス。コンテストバトルだったら減点になっちゃう・・・この“アイアンテール”、サトシのピカチュウのそれよりも、結構威力があるみたい!
「凄いな、シナモン・・・」
「あのスピードとパワー、サトシのピカチュウといい勝負だな・・・」
 サトシとタケシは、そんな事をつぶやいていた。
「パチリス!!」
「チ・・・チパッ!!」
 こっちがちょっと不利な状態だけど、パチリスは負けじと立ち上がる。
「シナモンの“アイアンテール”は、一味違うんだから!! よ〜し、もういっちょ!!」
 普通の“アイアンテール”とは何が違うのかはわからないけど、またシナモンが“アイアンテール”の構えを取って、パチリスに向かって来る!
「こうなったらパチリス、“てんしのキッス”よ!!」
 あたしも反撃に出る。パチリスは、シナモンに向けて投げキッスをする。飛んで行ったハートマークは、こっちに向かって来ていたシナモンに見事命中! シナモンは『こんらん』して、体勢を崩した!
「シナモン!!」
「今よ!! “ほうでん”!!」
「チィィィパ、リイイイイイッ!!」
 その隙に、パチリスの“ほうでん”! 直撃! のけぞるシナモン。あれ、でんきタイプ相手にしては、以外に効いてるような・・・? あたしは、その事がちょっと気になった。
「ま、まだまだよ!! シナモンはまだ、全然余裕なんだからねっ!!」
 レナが負けじとそう言うと、シナモンは振り払うように首を強く振って、正気を取り戻した。にらみ合うパチリスとシナモン。勝負はまだこれから! そんな時だった。
「もしもし、そこのお嬢さん」
 どこからか、やけに作ったようなしわがれた声が聞こえた。見るとそこには、いつの間にかメガネをかけた1人の和服姿の易者さんがいた。なんでこんな所に易者さんが?
「う〜む・・・これは・・・!」
 そんな事も無視して、易者さんはルーペ越しにこっちをまじまじと見つめる。
「・・・何?」
「そこのお嬢さん! あなたは恐ろしい『疫病神』に取り付かれていますぞ!」
 易者さんはいきなり、レナを指差して作ったようなしわがれた声で叫んだ。
「や、『疫病神』!?」
 レナはその言葉に、強く反応した。心当たりがあるみたいに。
「それはズバリ、その白いピカチュウ!」
 そして、易者さんは、シナモンをビシッと指差した。メガネがキラリと光る。
「ええっ!?」
 その言葉に、みんな目を丸くした。
「シ・・・シナモンが・・・『疫病神』・・・!?」
「そうです! 一刻も早くそのピカチュウを手放さなければ、あなたはいずれ大きな災いに巻き込まれて、命を落とすかもしれませんぞ!」
「そ、そんな・・・!」
 レナは今までとは全然違う、怯えた表情を見せた。易者さんの言う事を本気で信じてるみたい。でも、いきなり出て来てそんな事言う易者なんて、信じていいのかな?
「ねえ、それインチキじゃないでしょうね?」
「ギクッ! い、いや、私はれっきとした易者でございます・・・」
「でも、シナモンは私の大事なポケモンなんです! どうすればいいんですか!」
 あたしが質問してる事を無視して、レナが真剣な目で易者さんに聞いた。
「オ、オホン! 心配は無用です。ちゃんとおはらいをすれば、問題はありませんよ」
「そういう訳で、その白いピカチュウをお預かりしますわ〜」
 すると、後ろからいきなり、和服姿の別の人が2人出て来た。1人は女の人だけど、もう1人は、やけに小さいような・・・?
「はい! お願いします!」
 レナは易者さんの言う通り、シナモンを両手で持って差し出した。
「では、この箱に・・・」
 女の人がそう言ってシナモンを受け取ると、やけに小さい人がその前に1つの小さな箱を置いた。でも、それは・・・!
「あっ!!」
「え? 檻?」
 あたし達は、思わず声を上げた。それは紛れもなく、どこから見ても易者さんが持ってる訳ない檻だったんだから!
「あ!! ちょっとニャース!! なんでカモフラージュしなかったのよっ!!」
「せっかくの作戦が台無しだろ!!」
 女の人と易者さんがやけに小さい人に怒鳴る。ニャース・・・? それに、易者さんの声も、しわがれた声じゃなくなってる・・・?
「ちょっとあんた達!! 一体何なのよ!!」
「む・・・! ばれてしまっては仕方がない・・・!」
 あたしがそう叫ぶと、3人は素早くシナモンを檻に入れた。
「『一体何なのよ!!』の声を聞き!!」
「光の速さで教えます!!」
「風よ!!」
「大地よ!!」
「大空よ!!」
「吉か凶か、その名を呼べば!!」
「誰もが震える自分の運勢!!」
「ムサシ!!」
「コジロウ!!」
「ニャースでニャース!!」
「未来を占うあたし達!!」
「我ら易者の!!」
「ロケット団!!」
「ソーナンス!!」
「マネネ!!」
 いつものように自己紹介して、和服を脱ぎ捨てて見せた真の姿は、間違いなくロケット団だった。
「ロケット団!」
 易者っていうのは、こいつらの変装だったのね!
「まさかあんた達、シナモンを・・・!」
「そうさ! こいつが世にも珍しい『δ種』ってポケモンだと聞いて、いただきに来たのだ!」
「『δ種』?」
 何それ? 今まで聞いた事もない名前・・・?
「そんな訳で!!」
「帰る!!」
 最後の言葉は3人で声を合わせて叫ぶと、2人と1匹は素早く茂みに逃げた。すると、すぐに森の中からニャース気球が姿を現した! ゴンドラの下には、シナモンが入れられた折がぶら下がっている。
「ロケット団!! シナモンを返せ!!」
「や〜なこった!!」
 サトシの叫びにも、ロケット団はいつものようにそう答えるだけ。
「ピィィィカ、チュウウウウウッ!!」
 檻に入れられたシナモンは、“チャージビーム”で抵抗しようとする。でも、それはサトシのピカチュウの時と同じように、檻にはびくともしない。
「ニャーッハッハッハ! いつものように電撃対策はバッチリなのニャ!」
「ピカチュウの電撃なんて、あたし達はジャリボーイのピカチュウで慣れてるもんねーだ!」
 ニャースとムサシの言葉を聞いても、シナモンは抵抗するのをやめない、今度は“アイアンテール”で檻の鉄格子を叩く!
「まだ抵抗する気か? なら、奥の手だニャース!」
「ラジャー!!」
 コジロウが言うと、ニャースはどこからかスイッチを取り出して、それを力強く押した。すると、檻の鉄格子が熱を帯びたように赤く光り始めた!
「ピ・・・ピカアアッ!」
 すると、シナモンはそれに苦しみ始めた。
「ニャーッハッハッハ! この檻には高熱を発生させるヒーターが付いているのニャ!」
「はがねタイプのあんたには相性抜群なのだ!」
 高らかに叫ぶニャースとコジロウ。
「はがねタイプ? ピカチュウはでんきタイプのはずだぞ?」
 サトシがそんな疑問を投げかける。その通りよ、はがねタイプのピカチュウなんている訳・・・
「甘い甘い! 『δ種』ってポケモンは、普通とは違うタイプを持ってるポケモンだなんて、知らない訳ぇ?」
 ムサシが、立てた人差し指を振って自慢げに言った。言ってる事がよくわからない・・・
「ピカアアアッ!」
 そんな事をしている間にも、シナモンは体力を奪われていく。
「何だかよくわからないけど、シナモンを助けるぞ!!」
「ええ!! レナ!!」
 あたしはそう相槌をして、レナに顔を向けた。でも、レナの様子がおかしい。
「・・・レナ?」
「ば・・・ばれちゃった・・・シナモンが・・・『δ種』なんだって・・・ばれちゃった・・・!」
 うつむきながらそうつぶやくレナの様子は、シナモンを助ける場合じゃない様子だった。
「どうしたのよ? 早くしないとシナモンが・・・!」
「もうばらさないって決めたのに・・・シナモンはまだ、こんな目に遭い続けなきゃいけないって言うの・・・!? あんまりよ・・・! どうしてみんな、シナモンばっかり・・・っ! ううっ・・・!」
 レナはさっきまでの元気の良さがウソのように、頭を抱えて、その場にかがみ込んで泣き出しちゃった。普通なら助けようとするはずなのに、なんで泣いてるの? 泣いてる場合じゃないでしょって言いたいけど、この様子じゃ、とてもそうは言えない。何か事情でもあるのかな・・・?
「今日は何だかいい感じ〜っ!!」
「ソーナンス!!」
「マネネ!!」
 そんな高らかな声を上げるロケット団。気球がどんどん遠くなって行くのがわかった。
「まずい、このままだと逃げられるぞ!!」
「ヒカリ!! こうなったら俺達でシナモンを助けるぞ!!」
「え、ええ!!」
 サトシの言う通りだ。こうなったらレナの代わりにあたし達だけでやるしかない!
「ポッチャマ!!」
「ムクバード、君に決めた!!」
「頼むぞ、グレッグル!!」
 モンスターボールから出てくるムクバードとグレッグル。そして、ポッチャマはムクバードの背中に素早く飛び乗った。ポッチャマを乗せたムクバードは、気球に向けて一直線に飛んで行った!


TO BE CONTINUED・・・

[132] SECTION02 シナモンの宿命! ハンターJの影!
フリッカー - 2007年12月21日 (金) 18時21分

 ポッチャマを乗せたムクバードは、気球に向けて一直線に飛んで行った!
「来たわね!! 行くのよドクケイル!!」
 もちろん、ロケット団も手をこまねいて見ているだけじゃない。ドクケイルが出てきて、ムクバードに向かっていく!
「“どくばり”攻撃っ!!」
 ドクケイルは、口から“どくばり”をムクバードに向けて発射した!
「かわすんだムクバード!!」
「よけてポッチャマ!!」
 あたし達の指示で、ポッチャマはムクバードの背中からジャンプ! ムクバードも急降下して、2匹は“どくばり”をかわす事ができた。
「ポッチャマ、気球に“バブルこうせん”!!」
「ポッチャマーッ!!」
 今だ! 飛び上がったポッチャマは、気球を狙って“バブルこうせん”を発射! 命中! たちまち気球に大穴が開く。
「うわああああああっ!!」
 空気が抜けた気球は、地面へとどんどん吸い込まれていく。
「ムクバード、“つばさでうつ”で檻のロープを切るんだ!!」
 気球が落ちていく中、ムクバードは下から気球の下の回りこんだ。そして、すれ違いざまに羽でシナモンの入った檻をぶら下げていたロープを切り裂いた! 檻は、まっ逆さまに地面に落ちていく。
「ポチャアアアアッ!」
 体が落ちていく事に慌てふためくポッチャマだけど、戻ってきたムクバードが、ちゃんと背中で受け止めてくれた。
「檻を受け止めるんだ、グレッグル!」
 落ちていく檻に、真っ直ぐ走っていくグレッグル。檻を確認すると、力強くジャンプ! そして檻を見事受け止めて着地! ナイスキャッチ! あたし達もすぐに、そこに向かった。そして、ズズンと気球が落ちた音が聞こえた。
「いいぞグレッグル! “かわらわり”で鍵を壊してくれ!」
 タケシの指示で、グレッグルは檻の鍵に力強いチョップをした。鍵は見事壊れて、戸が開いた。シナモンが、ぐったりとした様子で出てきたと思うと、そのままバタリと倒れた。
「チパッ! チパーッ!」
 すぐに、心配してパチリスが駆けつけた。シナモンの体を精一杯ゆするけど、シナモンは立ち上がらなかった。


SECTION02 シナモンの宿命! ハンターJの影!


「おのれ〜っ!! こうなったら力ずくでゲットするのみよ!!」
「おう!!」
 そんな所に、墜落した気球からロケット団がやってきた。ホントに、しぶといんだから・・・!
「行け、マスキッパ!!」
 コジロウが、マスキッパを繰り出した。でも、やっぱり最初はコジロウの頭に噛み付く。
「違う違う!! あっちだって!!」
 もがきながらも、何とかマスキッパの口をはずすコジロウ。
「ドクケイル、“たいあたり”!!」
「マスキッパ、“かみつく”だ!!」
 それにドクケイルが加わって、2匹がこっちに攻撃してくる!
「ポッチャマ、“つつく”!!」
「グレッグル、“どくばり”だ!!」
 こっちも応戦しなきゃ! ポッチャマは、クチバシで突撃してくるドクケイルを迎え撃つ! 見事に返り討ち! 効果は抜群! そして、グレッグルも“どくばり”をマスキッパに発射! 直撃! 効果は抜群! 2匹はムサシとコジロウの前に弾き飛ばされた。
「今よポッチャマ!! “うずしお”よ!!」
「ポッチャマアアアアッ!!」
 ポッチャマが、大きな水の渦を作り出して、それをロケット団にお見舞いする!
「うわああああああっ!!」
 たちまち渦に飲み込まれるロケット団。
「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
「ピィィィカ、チュウウウウウッ!!」
 最後はやっぱり、ピカチュウの“10まんボルト”でキメ! 電撃は、“うずしお”ごとロケット団を飲み込んだ! そして大爆発!
「やな感じぃぃぃぃぃっ!!」
 いつものように、そう叫び声を上げながら、ロケット団は空の彼方へ消えていった。
「やったぜ!!」
 サトシが声を上げた。
「さあ、早くシナモンを手当てしないと!」
 喜んでる間もなく、タケシがぐったりとしたシナモンを抱えて、素早く運び出した。シナモンを心配してるパチリスも、その後について行く。すると、そんなタケシの前に、レナの姿がとぼとぼと現れた。
「レナ」
「みんな、シナモンを助けてくれたのね・・・ごめん、私がこんなんで・・・」
 レナは、さっきの事を謝ってるみたいだった。
「なあに、困った時はお互い様さ」
 タケシが笑みを浮かべて答える。
「シナモン・・・」
 レナは、タケシの腕に抱かれたシナモンの頭をそっとなでた。でも、その顔はシナモンが助かったっていうのに、まだ落ち込んでいた。声も元気がない。
「レナ・・・?」
 やっぱり、レナは普通じゃない。何か事情があるんじゃないかな・・・?

 * * *

 タケシは慣れた手付きで、シナモンの手当てをしていく。そんな様子を、レナは横から遠い目で眺めていた。
「タケシって、もしかしてブリーダーなの?」
 元気のない声でレナが聞いた。
「プロって訳じゃないが、ブリーダーを目指しているんだ。でも、どうしてわかったんだ?」
「手付きが、ママと同じだったから。私のママも、一流のブリーダーなのよ」
 タケシの質問にレナは、ポツリとそう答えた。そしてまた、遠い目でシナモンを見つめた。その目は、心配しているようにも、哀れんでいるようにも見えた。そんな様子を見たあたしは、思い切ってシナモンの事を聞いてみようって思った。
「ねえ、レナ」
「・・・何?」
「シナモンって、どんなピカチュウなの? ロケット団が『δ種』とかって言ってたけど・・・」
「!!」
 その言葉に、レナは敏感に反応した。特に『δ種』って言葉に。
「・・・聞かないで・・・」
 レナはそう言って、顔を背けた。やっぱり、聞いちゃいけない事だったかな?
「『δ種』といえば、聞いた事がある。どうしてそうなったのかは不明だそうだが、普通のポケモンとは全く違うタイプを持つ珍しいポケモンだそうだな」
 タケシが口を開いた。
「どういう事なんだ?」
「要するに、見た目は普通のポケモンでも、中身は全く違うポケモンって訳さ。シナモンも、ピカチュウだがでんきタイプじゃなくてはがねタイプを持つ『δ種』って事になるが・・・」
 タケシは、レナに顔を向けた。
「レナ、どうしてシナモンが『δ種』だって事を俺達に隠していたんだ?」
「えっ、そ、それは・・・」
 レナは、答えに悩んでいた。やっぱり何かありそう。
「ロケット団にシナモンが連れ去られそうになった時、『シナモンはまだ、こんな目に遭い続けなきゃいけない』とか、『どうしてみんな、シナモンばっかり』とか言ってたじゃないか。何か『δ種』だとばれたら、嫌な事でもあるのか?」
「・・・・・・」
 レナは顔をうつむけたまま、黙り続ける。
「教えてよレナ! あたし達は、別に何も悪い事はしないから!」
 あたしも、レナにそう呼びかけた。レナが嫌なのもわかるけど、あたしはシナモンの本当の事が知りたい。しばしの沈黙。
「・・・わかった、教えるわ」
 レナが、重い口をようやく開けた。
「シナモンは・・・『δ種』のせいで、今までたくさんの悪者に狙われてきたのよ」
「ええっ!?」
 あたし達は、その言葉に驚いた。
「ゲットしてからずっとよ。来る日も来る日も、いろんな悪者が、シナモンを狙ってくるの。私がどこへいこうと、お構いなしよ。『δ種』って、とても珍しいポケモンだからね。そのせいで、シナモンはいつも悪者にひどい目にあってきたのよ。よく言うでしょ、『出るくいは打たれる』って」
「レナ・・・」
 レナの悩んでいる事が、あたしにもひしひしと伝わってきた。あたしはただ、それしか言葉が出なかった。
「『δ種』に生まれたせいで、いつも悪者に狙われなきゃならない。これが、シナモンの宿命なのよ・・・」
 そう言うと、レナは急に立ち上がって、あたし達に背を向けた。
「おい、どこ行くんだよ?」
「『疫病神』っていうのは、本当なのかもね・・・」
 レナはポツリとそう言い残して、その場を後にしていった。まさか、レナはそれを気にして・・・?
「レナ!」
「やめておけ。今は1人にさせておいた方がよさそうだ」
 あたしは後を追いかけようとしたけど、タケシに止められた。手当てを受けているシナモンの傍らにいたパチリスは、シナモンの過去を哀れむように、シナモンを見つめていた・・・

 * * *

 しばらくすると、体を休めていたシナモンの体力も無事に回復した。レナはその間、どこかに行ったきり戻って来なかったけど。
「チッパ!」
「ピカチュ!」
 無事を知って喜ぶパチリスに、シナモンは笑顔で答えた。
「これでもう大丈夫だ」
 タケシも太鼓判を押す。
「よかったわねシナモン」
 あたしが言うと、シナモンは「ピッカ!」と答えてくれた。そんな時、レナが戻ってきた。
「あ、レナ!」
「シナモンは、もう元気になったぞ」
「そう・・・」
 レナは、どこか寂しそうな目で、シナモンを見つめた。シナモンが首を傾げる。すると、レナはシナモンを優しく抱きかかえた。そして、なぜか少し離れた所にある木の所にシナモンを置いた。
「シナモン・・・・・・ここでお別れよ」
 レナは間を置いて、そんな事を突然口に出した。
「!?」
 あたし達は、突然のその言葉に驚いた。
「・・・あなたが私の所にいたら、また悪者に狙われちゃうわ。こうしている間も、誰かがあなたを狙ってるかもしれない・・・どこか、人の届かない所に行けば、そんな目にもう遭わなくても済むのよ。だから・・・」
 レナは、顔をうつむけながらそう言った。
「ちょっとレナ、どうして・・・!?」
「私なんかといるより、そうした方がシナモンだって幸せなはずよ。このまま私と一緒にいて、悪者に狙われ続けるより、そっちの方がずっといいでしょ・・・? さあ、行ってシナモン。人の手の届かない、森の奥深くにでも・・・」
 あたしの言葉を無視して、レナはシナモンに話し続ける。その顔は、悲しさをこらえてるようにも見えた。突然の別れ話に動揺してるシナモンは、首をはっきりと横に振った。
「行って!! お願いだから・・・シナモンのためを思っての事なんだから・・・!!」
 レナは何かを振り払うように、うつむいたまま思い切り叫んだ。シナモンは仕方がないと思ったのか、悲しい表情を浮かべながら、ゆっくりと後ずさりしていく。
「チパ・・・!」
 パチリスが、シナモンを追うように足を一歩踏み出した。でも、場の空気を読んだのか、それ以上は進まなかった。
 あたしはそんな様子を見て、あの事を思い出した。そう、パチリスをゲットした、あの時。あの時のパチリスもやんちゃすぎて、ホントにあたしの手に負えないポケモンだった。だから、あたしは育てる自信をなくして、パチリスを一度は逃がした。それでも、あたしはパチリスの事が忘れられなかった。そして、ロケット団と一悶着あった後に、ちゃんとゲットした。今は、そうしてよかったと思ってる。今、レナはシナモンがたくさんの悪者に狙われてるって理由で、シナモンを逃がそうとしてる。でも、シナモンはどうなの・・・? それでホントにシナモンは幸せになれるの? そんな疑問が、心の中に浮かんできた。
「ダメよ!」
 あたしは、声を上げた。レナが、こっちを向いた。
「確かに、悪者に狙われて欲しくないのはわかるよ。でも、それで本当にいいの・・・? それで、本当に解決した事になるの?」
「な・・・何言ってるのよ!! そうしなきゃ、解決できないじゃない!!」
 レナが反論する。
「でも、だからって勝手に逃がしちゃうなんて・・・何か違うわよ・・・! シナモンはきっと、そんな事望んでないわよ!」
「うっ・・・で、でも・・・!」
 レナは、少し戸惑った様子を見せた。
「それだったら、俺だってピカチュウを逃がさなきゃならなくなるじゃないか」
 そこに、サトシが前に出てきた。
「え・・・?」
「さっきのロケット団は、ずっとピカチュウを追いかけてるんだ。でも、俺はそのせいでピカチュウを不幸にしてるなんて、思った事ないぜ」
 サトシは、肩の上にいるピカチュウの頭をなでながら言った。いい事言うじゃない、サトシ!
「シナモンはきっと、レナの側にいたいはずだよ。悪者に狙われてるんなら、追い払えばいいだけじゃないか!」
「そうよ、それって、悪者に狙われるよりも大事な事なんじゃないかな? 悪者に狙われてるんなら、それから守ってあげようとかって、思わない?」
 サトシの言葉に続けて、あたしもそう言った。
「ヒカリ・・・サトシ・・・でも・・・」
 レナは、まだ迷ってるみたいだった。そんな時だった。
「ピカアアアアッ!!」
 突然、森の置くからピカチュウの悲鳴が聞こえてきた。
「何、今の!?」
「この声、まさか・・・シナモン!?」
「チッパーッ!!」
 すると、声を聞いたパチリスが、突然森の奥へと走り出した。
「あっ、パチリス!!」
 あたしはすぐに、パチリスの後を追いかけた。パチリスが反応してるって事は、やっぱり、シナモン・・・!?

 悲鳴のした方向に走って行くと、森の開けた場所で、あたし達は驚きの光景を見た。そこにいたシナモンは、銅像のように茶色くなって、ピクリとも動いていない。
「シナモン!?」
 そして、それだけじゃない。その側に、ボーマンダを連れた、見慣れた黒ずくめの格好をした女の人の姿があったんだから!
「お前は・・・ポケモンハンターJ!!」
 サトシが前に出て声を上げた。そう、間違いなくポケモンハンターJ! 前にサトシとも、二度戦った事がある、ポケモンを盗んで売りさばく悪人・・・!
「む・・・!? お前は・・・!?」
 Jがこっちに気付いた。向こうから見れば、驚いて当然か。
「シナモンをどうするつもりなんだ!!」
「その白いピカチュウか・・・いただきに来たに決まっている。だが、お前と遊んでいる暇はない!」
 Jは冷静にそう言うと、モンスターボールを懐から取り出して、手前に投げた。出てきたのは、ドラピオン!
「ドラピオン、“どくばり”!!」
 ドラピオンが、口から“どくばり”を発射! こっちに飛んで来る! 
「うわっ!!」
 慌てて下がるあたし達。
「くそっ!! ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
 すぐにサトシは応戦する。ピカチュウが前に出て、電撃をお見舞いする! でも、ドラピオンはそれを両腕で受け止めて、簡単に払いのけた!
「“クロスポイズン”!!」
 ドラピオンが、両手のツメを紫に光らせて、ピカチュウを十の字に切り裂いた! ものすごいパワー。たちまちサトシの前に弾き飛ばされるピカチュウ。やっぱりJは強い・・・!
「そんな・・・やっぱりシナモンは悪者に・・・!」
 レナはまた、ロケット団が来た時と同じように頭を抱えてそうつぶやいた。
「チパッ!」
 すると、突然パチリスが声を上げた。
「どうしたの?」
 あたしは、パチリスが見ている方向を見た。すると、動けなくなったシナモンがどこからか飛んで来たあの透明な入れ物に閉じ込められて、そのままどこかに運ばれていくのが見えた!
「白いピカチュウはいただいていく。撤収だ」
 Jはボーマンダの上に素早く乗って、言った。Jが振り向いた先には、あの灰色の車が! シナモンを閉じ込めた入れ物は、間違いなくそこに向かっている!
「チパーッ!!」
 パチリスはそれを追いかけて、突然走り出した!
「あっ、パチリス!!」
 その勝手な行動に、あたしも反射的にその後を追いかけた。パチリスの行く先にはあの灰色の車。その近くで見張りをしてたっぽいJの手下の1人が、パチリスに気付いた。
「チィィィパ、リイイイイイッ!!」
 パチリスはそいつらに対して“ほうでん”攻撃! たちまちしびれて、倒れる手下達。そして、パチリスは開きっぱなしだった運転席のドアから、車の中に乗り込んだ!
「パチリス・・・もしかして・・・?」
 パチリスは、友達になったシナモンを助けようとしてる? そう思ったあたしは、自分も車に乗り込む事を決めた。パチリスがそう思ってるなら、あたしもできる事をしなきゃ!
「俺達も行くぞ、ピカチュウ!!」
「ピッカ!!」
 サトシとピカチュウも、あたし達に続く。
「ヒカリ!! サトシ!!」
 レナの声が聞こえる。
「ダイジョウブ!! シナモンは絶対に取り返してあげるから!!」
 あたしはレナにそう答えて、パチリスの後を追いかけて車に素早く乗り込んだ。

「パチリスッ!!」
 運転席からは、貨物室に繋がっていた。ちょっと暗くて奥がよく見えない。貨物室に入って、あたしはパチリスを探した。
「チパ!!」
 いた! 何か大きな機械の前にいて、それを指差してる。それは、天井と繋がってる窓のある金庫のような大きな機械だった。窓をのぞくと、その中にシナモンが閉じ込められた入れ物を見つけた!
「チパッ!! チパッ!!」
 パチリスは、タックルをして必死で壊そうとしてる。でも、全然ビクともしない。
「そこを開ければいいのね! ええと・・・」
 あたしは、この機械を開けるスイッチみたいなのがないかと調べてみる。ええと、スイッチ、スイッチ、スイッチ・・・
「ヒカリ!!」
 すると、後ろからサトシの声がした。振り向くと、サトシもピカチュウと一緒にここに来ていた。
「ダイジョウブ! この中に、シナモンがいるわ!」
 あたしはそう答えて、スイッチを探す。すると、電卓みたいな機械が扉にくっついてるのを見つけた。
「ええっ!? これってもしかして、番号入れなきゃ開かないってヤツ!?」
 あたしは途方に暮れた。開ける番号なんて、わかる訳ないよ・・・
「そんなの、適当に入れてみたらいいじゃないか!」
 サトシがあたしを押しのけて、入力装置とにらめっこした。そんなんでダイジョウブかな? と思ったけど、とりあえず任せてみる事にする。
「う〜ん・・・これかな?」
 にらめっこした途端、考え込むサトシ。そして、適当に数字のキーを押す。ビーとブザーが鳴った、違うみたい。
「じゃあ、これかな?」
 サトシがまた、別のパターンで適当にキーを押す。またブザーが鳴った。
「なら、これか?」
 そんなのが、何回も続いた。サトシがどんなパターンでキーを押しても、ブザーが鳴るばかりで全然開かない。サトシもいらだってきて、「いい加減にしろよ〜っ!」とか叫びながらキーを押し続ける。でも、やっぱり開かない。
「ねえ、ホントにダイジョウブなの?」
 あたしは少しいらだってサトシに聞いた。
「・・・全然ダイジョバない・・・」
 サトシは、さすがにあきらめが付いたのか、ガクリと肩を落として、そう答えた。やっぱりこういうのって、当てにならないか・・・その時だった。
 キキーッ、とタイヤが地面を擦る音がしたと思うと、あたし達の体が急に貨物室の後ろに吹っ飛ばされた!
「きゃあっ!!」
 床に思い切り叩きつけられるあたし達。それだけじゃない。サトシやピカチュウ、パチリスが近くにいる所でこうなっちゃったんだから、全員があたしを下敷きにして折り重なった状態で床に叩きつけられちゃった。
「いたたたた・・・お、重い・・・!」
 そう思ったら、またキキーッ、と音がして、今度は逆方向にあたし達の体が吹っ飛ばされた!
「きゃあっ!!」
 また、床に思い切り叩きつけられた。今度は、さっきとは逆にサトシが下敷きになっちゃった。
「ガキ共め、お前達の好きにはさせないぞ!」
 運転席の方から、そんな声が聞こえてきた。そうか、知らない内に手下が乗り込んじゃったんだ! よく考えたら、さっきのは急発進と急ブレーキであたし達を・・・!
 何だか、大変な事になっちゃったみたい!


NEXT:FINAL SECTION

[133] FINAL SECTION シナモンを救え! ヒカリVSハンターJ!
フリッカー - 2007年12月25日 (火) 23時45分

「くそっ、あいつめ!!」
 サトシが、カッとしてあたしを押しのけて立ち上がって、運転席に走り出した! でも、運転手がそれに気付いたためか、車はまた急発進!
「うわあっ!!」
 反動でたちまち後ろに吹っ飛ばされて、床に思い切り叩きつけられるサトシ。起き上がったあたしも、反動で体を押し倒された。
「ぐっ、負けるもんかよっ!!」
 それでも、サトシは怯まない。もう1回運転席に飛び込んだ! 今度は成功!
「何!?」
「車を止めろ〜っ!!」
「や、やめろこの!! 放せえっ!!」
 たちまち運転手ともみ合いになるサトシ。
「ヒカリ、シナモンを頼む!!」
「あ、うん!!」
 そうだ、こうしてる場合じゃない! 早くシナモンをこの機械から出さないと!
「ポッチャマ! エイパム! ミミロル!」
 あたしは入れていたポケモンを全部出した。開けられないっていうのなら、壊すしかない!
「みんな!! この機械を開けるのを手伝って!!」
「ポチャッ!!」
「エイッパッ!!」
「ミミッ!!」
「チッパ!!」
 みんなやる気満々! さあ、行くわよ!


FINAL SECTION シナモンを救え! ヒカリVSハンターJ!


「鍵に攻撃するわよ!! ポッチャマ、“つつく”!! エイパムは“きあいパンチ”!! ミミロルは“ピヨピヨパンチ”!! パチリスは“スパーク”っ!!」
 とにかく、ありったけの攻撃を鍵にぶつければ、壊れるはず・・・! みんなが攻撃態勢に入った、その時!
 キキーッ、とまたタイヤがこすれる音がしたと思うと、急に車がギュイイインと左にターン!
「きゃあっ!!」
 当然、反動であたし達の体は前につんのめる。あたし達は壊そうとしてた機械に思いっ切り頭をぶつけちゃった! いったーい・・・この機械、結構硬いみたい・・・
「何なのよ・・・こんな時いきなり・・・」
 そう思ってたのもつかの間、今度は逆方向に車がターン!
「って、きゃああああっ!!」
 今度は後ろに体がつんのめって、床に背中を思いっ切りぶつけちゃった。サトシは一体、何やってるのよ・・・っ!
「ちょっとサトシッ!! 止めるならちゃんと止めてよ〜っ!!」
「やってるって!! この〜っ!!」
 サトシと運転手とのもみ合いはまだ続いている。サトシはその対応に精一杯みたい。この状態を改善してくれる事は、あまり期待できなさそう。
「みんな、気を取り直してもう1回!!」
「ポチャッ!!」
「エイッパッ!!」
「ミミッ!!」
「チッパ!!」
 体勢を立て直したみんなが、はっきりとうなずいた。
「ポッチャマ、“つつく”!! エイパムは“きあいパンチ”!! ミミロルは“ピヨピヨパンチ”!! パチリスは“スパーク”っ!!」
 さっきの指示をもう1回!
「ポッチャマアアアッ!!」
「エイッパアーッ!!」
「ミィミ、ロォーッ!!」
「チッパアアアッ!!」
 みんなが、一斉に鍵に向けて攻撃する! ポッチャマ、エイパム、ミミロル、パチリスの順に鍵に攻撃していく! 鍵から火花が出ている。手応えがある! これなら・・・! でもその時、車が蛇行運転になって、ふらふらと横揺れを始めた。当然、あたし達の足場も揺れる。すると、みんなの足もふらつく。
「わああああっ!」
 あたしはバランスを取るのに必死だった。こんな状態じゃ、いつまで経っても壊せないよ・・・!
「サトシ〜っ!! 何とかしてよ〜っ!!」
 あたしは思わず、その不満をサトシにぶつけた。
「わかってるって!!」
 サトシからは、そんな返事しか返ってこない。その時だった!
 キキーッ、とまたタイヤがこすれる音がしたと思うと、車が急に左にスピンした!
「きゃああっ!!」
 あたし達の体が、思いっきり右に引っ張られた! そして、車の右の部分が、ガシャンと大きな音を出してぶつかった! それと同時にあたしの体は一瞬、ふわりと宙に浮いたかと思ったら、思いっきり体を機械にぶつけちゃった! な、何が起こったの・・・? 車は、そのまま動かなくなった。何かにぶつかったみたいだった。
「いたたたた・・・みんな、ダイジョウブ?」
 あたしは、みんなを確認する。みんな転んでいたけど、無事だった。
「ヒカリ、大丈夫か?」
 サトシが運転席から戻ってくる。
「な、何とかダイジョウブ・・・」
 あたしはそう言って、その場を立ち上がった。すると、あたしの後ろでキィィと何かが動く音がした。振り向くと、機械の扉が少し開いていたのが見えた!
「あっ、開いてる!」
 きっと、さっきの衝撃で壊れたんだ! あたしはすぐに、シナモンが閉じ込められた入れ物を取り出した。それを見たパチリスが、すぐに駆け寄ってきて、変わり果てたシナモンの姿を見て愕然としていた。
「さあ、早くここから出よう!」
「ええ!」
 車も止まった事だし、あたし達はすぐに車から出る事にした。あたしはシナモンが閉じ込められた入れ物をしっかりと抱えて、素早く車から降りた。でも、その直後!
 突然、あたし達の行方を遮るように、一筋の閃光があたし達の前を通り過ぎた! 通り過ぎた後が、すぐに爆発を起こした!
「っ!!」
 思わず足を止めるあたし達。
「逃がしはしないぞ」
 すると、空からボーマンダに乗ったJが、あたし達の前に降りてきた! さっきのは、ボーマンダの“はかいこうせん”・・・! ボーマンダから降りて、黒いグラス越しにこっちを見つめるJ。
「ポケモンハンターJ!! 俺はお前みたいな奴が許せない・・・!!」
 サトシが真っ先にそう叫んで前に出た。
「前に言ったはずだぞ、『二度と邪魔をするな』と」
「そんな事知るか!! 俺は絶対、お前を止めてやる!!」
「ピッカ!!」
 サトシのJに対する敵意は強い。その燃えたぎる闘志に答えるように、ピカチュウが声を上げて構えを取った。
「それでも邪魔するというのならば、遠慮はしない・・・!! ボーマンダ、“ドラゴンクロー”!!」
 先に仕掛けたのはJだった。ボーマンダが、ツメに力を込めて、ピカチュウに踊りかかる!
「かわして“10まんボルト”!!」
 ピカチュウが、そのツメの一撃を自慢のスピードでよけた。そして、ボーマンダに向けて電撃を放つ! でも、ボーマンダは飛び上がってかわした。
「ヒカリ、シナモンを頼む!! ここは、俺が任せておけ!!」
 サトシが、こっちに振り向いて言う。
「ええ!!」
 ここはサトシに任せよう。あたしは、シナモンが閉じ込められた入れ物をしっかりと抱えて、その場から逃げ出そうとした。
「・・・む!! 逃がすものか!! ドラピオン!!」
 すると、あたしの目の前に、Jのモンスターボールから出てきたドラピオンが立ちはだかった!
「!!」
 あたしは思わず足を止めて、別の方向に向き直って逃げようとした。
「“はたきおとす”!!」
 それでもドラピオンはあたしを狙ってくる。ドラピオンは腕を振り上げて、あたしに向かって思い切り振った!
「きゃあっ!!」
 思い切りはたかれたあたしは、シナモンが閉じ込められた入れ物を落としちゃった! 入れ物は、そのまま地面を転がっていく。そしてそれに、ドラピオンが手を伸ばす! いけない! せっかく取り返したのに、取り戻されちゃう!
「チッパーッ!!」
 すると、誰よりも先にパチリスが“スパーク”でドラピオンに突撃していった! 直撃! 不意を突かれたドラピオンは、入れ物を取り損ねた。その隙に、ポッチャマ、ミミロル、エイパムの3匹が入れ物を取りに向かった。
「ありがとう、パチリス!!」
 あたしがそう言っても、パチリスは答えなかった。
「・・・パチリス?」
「チパ・・・・・・ッ!!」
 別に無視してる訳じゃない。パチリスは、いつになく怒った目つきで、電気袋から火花を出しながら、ドラピオンをにらんでいた。パチリスが、珍しく怒ってる・・・? あたしは、その理由がすぐにわかった。
「パチリス・・・友達がさらわれて、怒ってるのね・・・」
 そうよね、仲良くなったばかりのシナモンがさらわれて、許せないと思うのは当然だよね・・・ドラピオンは、あたし達を通してくれるつもりはなさそう。こうなったら、あたしも・・・!
 そうしている間に、ドラピオンは入れ物を運ぼうとするポッチャマ達に狙いをつける! ポッチャマ達が危ない!
「行くよ、パチリス!! “ほうでん”!!」
「チィィィパ、リイイイイイッ!!」
 パチリスのいつも以上に力の入った“ほうでん”攻撃! 命中! 思わず後ずさりするドラピオン。
「やったあ!!」
 これで、ポッチャマ達はこっちに入れ物を持ってきてくれるはず・・・! そう思って見てみたら、入れ物を持ち出そうとしていたポッチャマ達までもしびれちゃっていた! いけない! “ほうでん”って範囲が広いって事忘れてた! これじゃこっちが不利になっちゃう! あたしは、慌ててポッチャマ達を戻した。
 すると当然、いなくなった所をドラピオンが狙ってくる。ドラピオンがもう一度、入れ物に手を伸ばす!
「パチリス、“スパーク”!!」
「チッパァァァァァァッ!!」
 とっさに指示するあたし。パチリスは、“スパーク”でドラピオンに突撃していく! その隙にあたしは思い切って、ポッチャマ達が取り損ねた入れ物に向かって走り出した。“スパーク”はドラピオンの腕の一振りで簡単にはじかれちゃったけど、あたしが入れ物を拾う事には成功! と思ったら、ドラピオンの顔がこっちを向く。そして、“どくばり”をこっちに発射した!
「わああっ!!」
 行こうとしてた先に飛んで来る“どくばり”に、あたしは慌てて足を止めた。でも、それがまずかった。その隙を突いて、ドラピオン手があたしに伸びてくる! 気付いた時にはもう手遅れ。たちまちあたしはドラピオンの両手に捕まっちゃった!
「ああっ!! 放してっ!! 放してええええっ!!」
 あたしは必死で体をじたばたさせて抵抗するけど、ドラピオンは放してくれない。パチリスも、電撃をしたらあたしまでしびれちゃうから、うかつに攻撃できない!
「ヒカリ!! ピカチュウ、ヒカリを助けるんだ!!」
 それに気付いたサトシが、すぐにフォローしてくれた。ピカチュウが“でんこうせっか”でドラピオンに飛び込んだ! 狙う先は、ドラピオンの頭! 直撃! 頭に攻撃を受けたドラピオンは、たまらずあたしを放した。あたしはうまく着地して、すぐにドラピオンから離れる。
「よそ見をしていていいのか! ボーマンダ!!」
 でも、その隙をJは見逃さなかった。ピカチュウをボーマンダの“ドラゴンクロー”が襲い掛かった! 完全な不意討ち。たちまち弾き飛ばされるピカチュウ。
「どうしようサトシ・・・これじゃ逃げられそうにないよ・・・」
「くそっ、こうなったら・・・!」
 合流したサトシと背中を向け合うあたし。あたしの前にはドラピオン、サトシの前にはボーマンダ。完全な挟み撃ち状態。逃げる事なんてできる訳ない。
「サトシーッ! ヒカリーッ! ああっ・・・!」
 すると、遠くからタケシの声がした。見ると、タケシとレナがこっちに向かってくるのが見えた。2人は、あたし達の状況を見て、思わず足を止めた。
「お前達はもう逃げられないぞ。素直に白いピカチュウを渡せ」
 Jがそうあたし達に迫る。
「ふざけるな!! シナモンをお前みたいな奴なんかに渡すもんか!!」
 サトシが、力強く言い返した。
「・・・そうか。ならば、消えてもらうしかないな・・・!!」
 Jの答えと同時に、ドラピオンとボーマンダが身構えた。
「そんな・・・シナモンのせいで、2人が・・・!」
 レナは、また頭を抱え込んだ。
「ダイジョウブ!!」
 そんなレナの声が耳に入ったあたしは、レナに顔を向けてはっきりとそう言った。
「ヒカリ・・・?」
「シナモンは、必ずあたし達が守ってみせるから!!」
「そうさ!! ここは俺達に任せておけって!!」
 サトシも、あたしに続けてレナを励ます。
「ヒカリ・・・サトシ・・・私のために・・・」
 レナは、あたし達の言葉に何かを感じていたようだった。
「・・・行くぞヒカリ!!」
「ええ!!」
 あたし達は、Jの方に顔を向き直した。
「ピカチュウ!!」
「パチリス!!」
「ピッカ!!」
「チッパ!!」
 あたし達の声で、ピカチュウがボーマンダと、パチリスがドラピオンと対峙する。
「パチリス、“スパーク”!!」
「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
 パチリスとピカチュウが、一斉に攻撃を仕掛ける。パチリスは“スパーク”でドラピオンに向かっていく! そしてピカチュウはお得意の“10まんボルト”をボーマンダに向けて発射!
「ドラピオン、“クロスポイズン”!! ボーマンダ、“はかいこうせん”!!」
 Jは冷静にそれに対応した。ドラピオンは“クロスポイズン”でパチリスを簡単に弾き返した! そして、ボーマンダはピカチュウの電撃をかわして、素早く“はかいこうせん”を発射! 直撃!
「チパアアッ!!」
「ピカアアッ!!」
 悲鳴を上げて、あたし達の前に弾き飛ばされるパチリスとピカチュウ。かなりダメージを受けたみたい!
「そんな・・・!!」
 あたしは改めて、Jの強さを思い知った。サトシが苦戦していたのもわかる。
「白いピカチュウを奪い取れ! “はたきおとす”!!」
 そんな事を考えていると、ドラピオンがあたしの前に躍り出た! そして気が付くと、あたしはまた思い切りはたかれた!
「きゃあっ!!」
 シナモンが閉じ込められた入れ物があたしの横に飛んで行った。そして、地面をごろごろと転がっていく。いけない!
「シナモンッ!!」
 でも、それに動いたのはレナだった。レナは入れ物に向かって飛び込んで、スライディングする形で入れ物を受け止めた。レナは入れ物を開けるスイッチを見つけると、すぐにそれを押した。入れ物の透明な部分が消えて、銅像のようになっていたシナモンが元に戻った。
「・・・ピカ?」
「シナモン・・・ッ!」
 シナモンの無事な姿に、レナは嬉しそうな表情を浮かべた。でも、その時!
「おのれ・・・!! ドラピオン、あの少女に“クロスポイズン”!!」
 ドラピオンがツメを紫に光らせて、レナに向かって行った! いけない! このままじゃ!
「パチリス!! ドラピオンを止めて!!」
「チッパーッ!!」
 パチリスはあたしの指示に答えて、ドラピオンに“スパーク”で突撃していく! でも、それに気付いたドラピオンは、パチリスを腕の一振りで簡単に弾き飛ばした!
「ああっ!!」
 レナがやられちゃう! ドラピオンは、顔を向き直してレナに向けてツメを振った!
「いやあああああっ!!」
 レナは腰が抜けたまま悲鳴を上げて、目をつぶった。
「ピッカアッ!!」
 でも、そんなレナの前にシナモンが飛び出した!

 ドラピオンのツメが、容赦なく十字にシナモンを切り裂いた。シナモンは、それでもレナの前で仁王立ちしている。“クロスポイズン”の破壊力はかなりのもの。もろに受けちゃったら、ただじゃ済まないはず・・・と思ったあたしだけど、その予想は大きく外れた。
「・・・ピカ!!」
 シナモンは、ダメージを受けた様子がない。その表情は「それでおしまい?」とでも言ってるようにニヤリとした余裕なものだった。
「ピッカアーッ!!」
 そして、尻尾に力を込めて、ドラピオンに飛び込んだ! “アイアンテール”だ! 頭を思いっ切り殴られたドラピオンは、思わず後ずさりした。
「シナモン・・・助けてくれたのね!!」
「ピカチュ!!」
 レナの喜びの声に、シナモンも笑顔で答えた。
「どうして!? “クロスポイズン”は確かに当たってたのに!?」
 あたしはむしろ、“クロスポイズン”を受けてもビクともしなかったシナモンの方が不思議だった。
「・・・そうか! シナモンははがねタイプの『δ種』だ、はがねタイプにはどくタイプのわざは全く効かないんだ!」
 その答えは、タケシが出した。
「あ、そうだった!」
 そうだ、今までそんな事すっかり忘れてたよ・・・そんな中、ドラピオンが“どくばり”でシナモンに反撃する。でも、シナモンは避ける様子もなく、両手を腰に当てて胸を張って“どくばり”を受けた。当然、“どくばり”はシナモンの体に簡単に弾かれた。
「くっ、よりによって白いピカチュウを敵に回してしまうとは・・・!」
 Jが唇を噛んだ。すると、レナがスクッと立ち上がった。
「シナモン・・・ごめんね。私、どうかしてたよ。あなたは、どんな時も私の側にいつもいてくれた大事なポケモン。悪者に狙われてるからって、逃がそうとした私がバカだったわ。シナモンが『δ種』のせいで悪者に狙われるのが宿命だって言うなら、私はそれを背負ってやるわ!! それでも私は、あなたとこれからも一緒にいたい!! 行く手を阻む悪者は、追い払えばいいだけ!! だからシナモン・・・私に力を貸して!!」
 その姿は、バトルの時に見た元気なレナそのものだった。
「ピッカ!!」
 シナモンは、はっきりと答えた。
「レナ・・・!」
 あたしも、そんなレナの志を見て、嬉しくなった。
「シナモン!! “ボルテッカー”!!」
「ピカピカピカアアアアアアッ!!」
 レナの力強い指示に答えて、シナモンの“ボルテッカー”も力が強まったように見えた。電撃を纏ったシナモンは、勢いよくドラピオンに飛び込んだ! 直撃! ドラピオンに電撃を与えながら、シナモンはロケットのようにドラピオンを押していく!
「やっちゃえええええっ!!」
「ピッカアッ!!」
 レナの指示に答えて、シナモンは勢いを弱めないまま、ドラピオンを突き飛ばした! 電気でしびれた状態で、木に強く叩きつけられるドラピオン。手ごたえはある!
「ちっ!! ボーマンダ、白いピカチュウを止めろ!! “かえんほうしゃ”!!」
 そんなドラピオンをフォローしようと、ボーマンダがシナモンの方を向いた。口から火を吹こうとしてる!
「させるか!! ピカチュウ、“でんこうせっか”!!」
 とっさにサトシがリリーフ。サトシのピカチュウが“でんこうせっか”でボーマンダの腹に飛び込んだ! 直撃! そのせいで、ボーマンダの“かえんほうしゃ”は全然違う方向に飛んで行った。でも、ピカチュウは無理しちゃったみたい。着地した後、少しだけどよろけたのが見えたから。
「ピカチュウ、まだいけるか?」
「ピカ・・・」
 サトシのピカチュウは苦しい表情を浮かべながらも、ゆっくりと立ち上がった。でも、このままじゃサトシのピカチュウはもたない。そうだ! あたしはいい事を思いついた。
「パチリス、思いっ切り“ほうでん”しちゃって!!」
「チィィィパ、リイイイイイッ!!」
 あたしの指示通り、パチリスは回りに思いっきり電撃を放った。ドラピオンやボーマンダはもちろん、シナモンやサトシのピカチュウも巻き込んだ。ドラピオンとボーマンダはダメージを受けるけど、サトシのピカチュウは、電気エネルギーを蓄えて力を取り戻した! シナモンも、電気エネルギーを蓄えてくれたみたい。そう、“ほうでん”をしたのは、シナモンとサトシのピカチュウにパワーを分けるため!
「サンキュ、ヒカリ! 助かったぜ」
「どういたしまして! あたし達も、レナに負けてられないからね!」
「そうだな!! よし、俺も負けてられないぜ!!」
「ヒカリ、サトシ、みんなでお礼をきっちりしないとね!!」
 レナがそう言って、あたし達の横に並んだ。シナモンも、パチリスとサトシのピカチュウの横に並んだ。
「そうだな!! みんなで反撃開始だ!!」
「ええ!!」
「しっかえっしタ〜イム!!」
 あたし達3人は、そう言ってJと向き合った。
「おのれ・・・!! ドラピオン!! ボーマンダ!!」
 Jは少し怒った様子で、そう指示を出した。ドラピオンとボーマンダが、こっちに向かってくる!
「シナモン、“チャージビーム”!!」
 シナモンは“チャージビーム”で応戦! 正面から向かって行くだけだったドラピオンに、簡単に命中! それでもドラピオンは怯まない。“どくばり”を発射するけど、当然、効く訳がない。
「どうしたのポケモンハンターさん、その程度なの? “アイアンテール”!!」
 さっきまで悩んでいたのがウソみたいな口調で、レナは攻撃を続ける。シナモンは飛んで来る“どくばり”をものともしないで、ドラピオンに“アイアンテール”の一撃を与えた! その一撃で、また弾き飛ばされるドラピオン。
「パチリス、“てんしのキッス”!!」
 まともにやりあったら勝ち目がない。そう思ったあたしは、パチリスにそう指示した。パチリスの“てんしのキッス”はボーマンダに簡単に命中! たちまちボーマンダは『こんらん』して、千鳥足になった。
「今よサトシ!!」
「ああ!! ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
 その隙を突いて、ピカチュウが自慢の“10まんボルト”をボーマンダにお見舞い! 直撃! 悲鳴を上げるボーマンダ。
「さあ、シナモンの奥の手を見せてあげるわ!!」
「ピッカアアアアアア・・・・・・!!」
 レナがそう言うと、シナモンが体に力を込める。すると、シナモンの周りをいくつかの小さな光る玉が現れて、やがて1つの輪を描きながら、シナモンの両手の間にどんどん集まっていく。シナモンが両手を引いた。
「必殺!! はがねの“めざめるパワー”っ!!」
「チュウウウウウウウッ!!」
 レナの指示で、シナモンは引いた両手を一気に突き出して、集めたエネルギーを光線にしてドラピオンに発射した! どんどん伸びていく銀色の光線。それは容赦なくドラピオンに襲い掛かった! ドラピオンに突き刺さる光線。そして、爆発!
「ヒカリ!! タイミングを合わせるぞ!!」
「ええ!!」
 ボーマンダに大ダメージを与えるために、あたし達は息を合わせる。パチリスとサトシのピカチュウが、互いに顔をあわせてうなずいた。
「ピカチュウ、“ボルテッカー”!!」
「パチリス、“スパーク”!!」
 あたし達の指示で、パチリスとサトシのピカチュウが横に並んで、体に電気を纏う。青と黄色の電気が、1つになった。
「行けええっ!! ダブル“ボルテッカー”ッ!!」
 サトシと一緒に、あたしもそう叫んでいた。パチリスとサトシのピカチュウは、一体となってボーマンダに向けて突撃していった! 直撃! 青と黄色の電撃がボーマンダの体に流れていく。
「チパアアアアア・・・・・・!!」
「ピカアアアアア・・・・・・!!」
 パチリスとサトシのピカチュウは、叫び声を上げながら、ボーマンダをロケットのように押していく!
「リイッ!!」
「チュウッ!!」
 2匹で同時にボーマンダを突き飛ばした! 電気でしびれた状態で、Jの前に弾き飛ばされるボーマンダ。かなりのダメージを与えられた!
「やったぜ!!」
 サトシがガッツポーズを取る。
「さあ、どうするのポケモンハンターさん? 逃げるなら今の内よ?」
 レナが胸を張って自信満々にJに言い放った。シナモンもまだまだやる気。
「ちっ、ここは分が悪い・・・撤収するしかないか・・・!! 退くぞ!!」
 Jは唇を噛んだ。ドラピオンを戻すと、ボーマンダがゆっくりと立ち上がった。そして、Jが乗ると、ボーマンダは空へと飛び立っていった。Jを乗せて飛ぶだけの体力は残っていたみたい。そして、動かなくなっていた車も、動き出してボーマンダと一緒に去って行った。
「シナモンッ!!」
「ピカーッ!!」
 レナとシナモンが互いに駆け寄っていく。胸に飛び込んできたシナモンを、レナはしっかりと受け止めた。
「ごめんね、シナモン・・・やっぱりあなたはずっと、私と一緒よ!!」
「ピカチュ!!」
 嬉し泣きしながら言うレナに、シナモンは嬉しそうに答えた。
「よかったね、シナモン」
 これで一件落着。あたしは、ほっとした。パチリスも、そんなシナモンを祝福していた。

 * * *

 時間はもう夕方。日はすっかり西に傾いていた。
「ありがとう、みんな。今日の事、ホントになんてお礼言ったらいいんだろ・・・」
 レナはそうお礼を言った。
「いいのよ、お礼なんて別に」
「これからもシナモンを狙って悪者が来るかもしれない。でも、私は強くなって、そいつらを追い払ってやるんだから!」
 レナは、肩にいるシナモンの頭をなでながら、そう元気よく言った。
「ピカ・・・」
 その言葉を聞いたシナモンは、ちょっと照れた様子だった。
「シナモンもよかったな。いいトレーナーに出会えて」
「そんな、それほどでも・・・」
 タケシの言葉に、レナもちょっと照れる。
「そういえばヒカリ、ズイタウンのコンテストに出るんでしょ? テレビで応援するわ!」
「ありがとう、レナ。あたしもがんばらなきゃ! 次こそは、リボンをゲットしてやるんだから!」
「チッパ!」
「ピカチュ!」
 パチリスも、シナモンと笑顔でそんなやり取りをしていた。

「さようなら〜! ホントにありがとね〜!」
「レナも元気でね〜!」
「シナモンを大事にするんだぞ〜!」
「元気でな〜!」
 あたし達はレナの前を後にしていった。
「チッパーッ!」
「ピーカーチューッ!」
 あたしの肩の上にいるパチリスも、シナモンに手を振っていた。そんなパチリスの姿を見たあたしは、やっぱりあの時パチリスをゲットしてよかったな、と思った。
「パチリス、これからもよろしくね」
「チパ・・・チッパ!」
 パチリスは突然の言葉にちょっと戸惑ったけど、すぐに笑顔で答えを返してくれた。

 こうして、あたし達の旅は、まだまだ続く。続くったら、続く・・・・・・


STORY07:THE END

[134] 次回予告
フリッカー - 2007年12月25日 (火) 23時46分

 ズイタウンのポケモンコンテストから数日後。
 コンテストへの不安が募るあたしは、あのミライさんと再会した。

「過去に囚われちゃいけない。過去のロープに縛られて、未来を見失っちゃダメ!」
「過去に囚われない・・・」
「後ろばかり向いてたら、前が見えなくなるのは当たり前。そのまま前に歩こうとしたら、何かにぶつかったり、つまずいたりするのは当然。だから、ちゃんと前を向いて歩きなさいって事!」

 でもその後、サトシの前にとんでもない人が現れた!

「ママに助けて欲しいのか? ま、そんなママもここにはいないけどな!」
「や、やめろ・・・!! やめてくれえええええっ!!」

 サトシが・・・いじめられてる!?

「うっ・・・こんな・・・こんな事になるなんて・・・あんまりだ・・・!」
「教えてよサトシ! 1人で悩んでないで・・・」
「・・・・・・」

 サトシの知られたくない過去って、何?

NEXT STORY:過去の傷跡

「女の子なんだから、いい悲鳴を聞かせろよ!」
「きゃあああああああっ!!」

COMING SOON・・・

[143] 感想
ひこ - 2007年12月31日 (月) 19時05分

フリッカーさんの文章力と継続力(?)に脱帽です

レナの成長が見ていてとても気持ちが良かったです
その気持ちに応えるシナモンもかっこいいですね!


ストーリー7までお疲れ様でした!
来年のヒカストも楽しみにしていますね!



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