【広告】楽天市場にて 母の日向けギフト値引きクーポン配布中

小説板

ポケモン関係なら何でもありの小説投稿板です。
感想・助言などもお気軽にどうぞ。

名前
メールアドレス
タイトル
本文
URL
削除キー 項目の保存


こちらの関連記事へ返信する場合は上のフォームに書いてください。

[121] ヒカリストーリー STORY06 誓いの交換
フリッカー - 2007年11月29日 (木) 23時42分

 どうも、フリッカーです。
 ついにSTORY06始動です! 今回のテーマは『第55.5話』。アニメの55話と56話の間の話として書きました。今回もおもしろい話になりますよ!

[122] SECTION01 交換の疑問とラティオス襲来!
フリッカー - 2007年11月29日 (木) 23時44分

 あたしはヒカリ。トップコーディネーターになるために旅に出たポケモントレーナー。
 初心者用ポケモンをもらいに行った時に打ち解けたポッチャマをパートナーにして、ひょんな事から仲間になった、カントーから来たトレーナー、サトシとタケシと一緒に旅を始めたの。大小いろんな事を経験しながら、あたし達の旅は続く。
 これは、そんなあたしが旅の途中に経験した、ある日のお話。


SECTION01 交換の疑問とラティオス襲来!


 バトルが好きなブイゼルと、コンテストの演技が好きなエイパム。あたしとサトシは、ノゾミの勧めでそんな2匹を交換する事になった。実際、エイパムとも息は合うし、ブイゼルもサトシと息は合ってるみたい。これで、2匹はのびのびと自分の力を活かせるようになって、一件落着・・・と言いたい所だけど・・・

 あたし達が今来ている場所は、『ポケモンとの絆を大事にする町』という肩書きの町、オーブタウン。小さな町だけど、その肩書き通り、この町にいる人達は、みんなポケモンを連れて、楽しそうにしている。ポケモンを大事にしている事が、すぐにわかる。
 そんなオーブタウンの公園で、あたし達は休憩を取る事になった。当然、ポケモン達も外に出してあげる事にした。
「さあ、みんな出ておいで!!」
 あたしは、持ってるモンスターボールを4個全部投げ上げた。4個のモンスターボール全部が一斉に開く。
「ポチャ!」
「ミミ!」
「チパ!」
「エイッパ!」
 ポッチャマ、ミミロル、パチリス、そしてエイパム。エイパムは尻尾で器用に立って、ポーズを決める。今までならブイゼルがいたポジションにサトシのポケモンだったエイパムが代わりに出てきて、ミミロルとパチリスは目を丸くした。
「みんな、エイパムはあたし達のチームに入ったのよ」
「エイッパ!」
 エイパムはミミロルとパチリスの方に顔を向けて、笑顔で挨拶した。ミミロルとパチリスは、辺りをキョロキョロと見回した。ブイゼルの事を探しているのかな? 2匹の目に、あたしと同じようにポケモン達を出そうとしてるサトシが映った。
「よ〜し、みんな出てこい!!」
 サトシが、持ってるモンスターボールを4個全部投げ上げた。4個のモンスターボール全部が一斉に開く。
「ナウ!」
「ムックバーッ!」
「ヒッコ!」
「ブイ!」
 ナエトル、ムクバード、ヒコザル、そしてブイゼル。今までならエイパムがいたポジションにあたしのポケモンだったブイゼルが代わりに出てきて、他の3匹は目を丸くした。
「みんな、ブイゼルは今日から俺達のチームだ。よろしく頼むぜ!」
「ブイ!」
 ブイゼルはクールに、3匹に挨拶した。3匹は、辺りをキョロキョロと見回した。エイパムの事を探してる? その3匹の視線が、ミミロルとパチリスの視線と合った。
「・・・!?」
 5匹は目を丸くした。2匹のポジションが入れ替わっている事に気付いて、驚いたみたい。当然か、まだ教えていなかったんだもの。ポッチャマとピカチュウが、みんなに何か話し始めた。事情を説明してるみたい。そんな時、エイパムが動いた。サトシの背中に素早く昇って、隙を突いて尻尾で素早くサトシの帽子を取った。
「あっ! エイパム!」
 驚くサトシを見て、クスクスと笑うエイパム。そして、サトシの帽子を頭に被ると、そのまますぐにサトシの背中を降りて走り出した。
「エイッパ〜ッ!!」
「こら、待て〜っ!」
 サトシが追いかける。たちまち鬼ごっこの始まり。その光景は、エイパムを交換する前にはごく普通の出来事だった。
「エイパム・・・」
 やっぱりエイパムはサトシが大好きなんだね。でもそう思うと、やっぱりエイパムはあたしより、サトシの側にいた方がいいんじゃないのかな、とふと思えてきた。あたしは、ブイゼルに目をやった。すると、ブイゼルがこっちを向いた。
「・・・ブイ?」
 目が偶然合った。「どうしたんだ?」とでも言っているかのように、不思議そうにこっちを見つめるブイゼル。時間が、普段よりもちょっと長く感じた。
 ブイゼル・・・確かにあなたはバトル好きだから、サトシの所にいる方がいいのかもしれない。でも、エイパムはジム戦で結構活躍してたけど、あたしはブイゼルと何も成し遂げていない。デビューになるはずだったヨスガのコンテストには出られないまま終わっちゃったし・・・初めて出会ったあの時、ブイゼルは、あたしだけじゃなくてサトシやノゾミともバトルしたけど、最終的にあたしを選んでバトルを挑んで、ゲットされた。あたしの事を認めて、あたしについて行く事を決めたのは事実。ゴヨウさんとバトルした時だって、「もっと強くなれる」って言われた。それを信じて、あたしはブイゼルを一生懸命育ててきた。ブイゼルだって、そんなあたしにしっかりついて来てくれた。でもノゾミは、ブイゼルはサトシが育てた方がいいと言った。実際、エイパムとも息はピッタリ合ったし、ブイゼルも同じだったから、交換する事にしたけど、あの時ノゾミが言った事は、本当に正しかったのかな・・・? よく考えたら、交換しちゃったら、これまでの努力が全部無駄になっちゃうよね・・・もしかしたら、ブイゼルはあたしの事を恋しく思ってるんじゃないかな・・・?
「これで・・・ホントによかったのかな・・・?」
 あたしの口から、そんな言葉がこぼれた。
「・・・どうしたんだヒカリ?」
 あたしの耳に不意に入ってきたタケシの言葉で、あたしは現実に戻された。振り向くと、そこにはタケシの姿が。
「ちょっと、ブイゼルの事が気になって・・・」
「ブイゼルの事が?」
「うん・・・あの時交換したのはブイゼルにとっても、エイパムにとってもよかったのかもしれない。でも、やっぱり今まで通りでもよかったんじゃないかなって思って・・・」
 あたしは、まだサトシと鬼ごっこをしてるエイパムに目をやった。
「う〜ん、難しい話だな・・・その気持ちはわかるさ。俺だって、自分のポケモンを弟に譲った事があるんだ。他人に渡したポケモンの事が心配になるのもわかる。でも、ブイゼルは確かにサトシとの息は合ってるし、エイパムだって、ヒカリの息はピッタリじゃないか。心配する必要はないと思うぞ」
「でも・・・」
 タケシの言葉を聞いても、あたしのモヤモヤは消える事はなかった。これが、『後悔』って言うのかな?
「エイッパ!」
 すると、あたしの背中に何かが乗った。サトシの帽子を被ったエイパムだった。
「エイパム?」
 エイパムは、まるでさっきの話に対して、「自分は平気だよ」とでも言っているように、あたしの顔の前で逆さまの笑顔を見せた。
「エイパム!! 帽子返せよ〜!!」
 そこへ、エイパムを追いかけてきたサトシが走って来る。そんな時だった。
「なかなか元気のいいエイパムじゃないか」
 聞き慣れない声が、耳に入ってきた。見ると、そこには1人の男の人がいた。背の高い大人の男の人だった。
「そのエイパムは、君のポケモンかい?」
 男の人は、あたしに聞いてきた。
「え、そうですけど・・・?」
「そうだったのか。ならちょうどいい。今ポケモンバトルに手頃な相手を探していたんだ。バトルをするなら、そのエイパムのような元気のいいポケモンとバトルしたかったからね」
 男の人は、笑みを浮かべてあたしに言った。この人、ポケモントレーナーみたい。
「俺はゲキ。ここオーブタウンのポケモントレーナーだ」
「あたし、ヒカリです」
「俺、サトシです」
「自分はタケシです」
 あたし達は、それぞれ自己紹介をした。
「ヒカリ、といったね。そっちの都合がよければ、そのエイパムとお手合わせ願いたいのだが、いいかい?」
 ゲキさんの提案に、あたしはちょっと戸惑った。だって、エイパムとちゃんとしたバトルなんて、まだした事がなかったんだから。その言葉に、ブイゼルが反応した。
「・・・はい!」
「エイッパ!」
 でも、コンテストバトルのいい練習になる。そう思ったあたしは、ゲキさんにそう答えた。エイパムも、元気に答えた。

 * * *

 公園の広場が、バトルの舞台。いつものように、タケシが審判をやる。横ではサトシや、他のポケモン達が観戦する。でも、いつもと違ったのは、他にもたくさんの人達があたし達のバトルを見に来ていた事。
「おい、あれゲキさんじゃないか?」
「あのカリスマトレーナーのゲキさんだよ!」
 そんな声がいろいろと聞こえてくる。みんなは、ゲキさんの事を注目してるみたい。カリスマって言うからには、ゲキさんってそんなに有名な人なの?
「また人がいっぱい来ちゃったな・・・ま、俺もここじゃ有名な人だが、そんな事はいい。とにかく、そんな事は気にしないで、正々堂々と勝負しようじゃないか!」
 何だかあたし、凄い人とバトルする事になっちゃったみたい・・・
「ヒカリとエイパム、交換して初めてのバトルだな。がんばれよ、エイパム!」
 そんなサトシの声が聞こえる。エイパムが、手を振って答えた。
「ん? そのエイパム、誰かから交換してもらったのかい?」
「はい、ブイゼルと交換したんです」
「そうだったのか・・・道理であの時、サトシともかけっこをしていた訳だな。ますます楽しみになってきたよ」
 ゲキさんとそんなやり取りをしていると、あたしはブイゼルの事が気になった。観戦しているブイゼルの方を見ると、ブイゼルはうらやましそうな目でこっちを見ていたのが見えた。交換してなかったら、ブイゼルがここに立ったのかもしれないんだよね・・・やっぱりブイゼルは、まだあたしと一緒にバトルがしたかったのかな・・・
「これより、ヒカリ対ゲキのポケモンバトルを開始する。使用ポケモンは1体。どちらかのポケモンが戦闘不能になった時点で、試合終了とする」
 タケシが、ルールを説明し始めた。バトルに集中しなきゃ。ごめんね、ブイゼル・・・
「エイパム、お願いね!」
「エイッパ!」
 エイパムはいつでも準備OK。ゲキさんが、1個のモンスターボールを取り出した。
「ちょっと君のような女の子には気に食わない奴かもしれないが、よろしく頼む。行け、俺の相棒!!」
 え? 気に食わない奴かもしれない? あたしは首を傾げた。でも、その答えはすぐに出た。ゲキさんが投げ上げたモンスターボールから出てきたのは、今まで見た事もないほどドロドロで、気色悪い色をした変なポケモンだった。おまけに、鼻が曲がるほど嫌な臭いが立ち込めてくる。
「な、何このポケモン・・・!?」
 その臭さに、あたしもエイパムも思わず鼻をつまんだ。あたしはポケモン図鑑を取り出して、このポケモンに向けた。
「ベトベトン、ヘドロポケモン。体から猛毒の体液が染み出ていて、その液に触れた草木はあっという間に枯れてしまう」
 図鑑の音声が流れた。ヘドロポケモン!? そんなポケモンいたの!? ゲキさんは、平然とした顔を保っている。「相棒」とは言っても、臭いとか気にならないのかな? 思わずそんな事を考えちゃった。
「ベトベトンかあ・・・俺のベトベトンも元気にしてるかな?」
 サトシの、そんな声が聞こえた。
「えっ!? サトシも持ってたの!? こんなポケモン!?」
 あたしの口から、そんな言葉がこぼれた。サトシは今いる手持ち以外にもいろいろポケモンをゲットしているって事は知ってるけど、こんなポケモンをサトシがゲットしていたなんて、ちょっと想像できない。
「まあ、世の中にはこんなポケモンもいるって訳さ。さあ、先攻は君に譲るよ」
「あ、はい!」
 そうだ、相手はこんなポケモンだけど、やるしかない! あたしは、気を取り直してバトルを始める事にした。臭いは・・・我慢するしかない。
「では、試合開始!!」
「行くわよエイパム!! “きあいパンチ”!!」
 試合開始の合図と同時に、あたしは指示を出した。エイパムはベトベトンと間合いを詰めて、尻尾の拳に力を込めて振る!
「来たな・・・行くぞ相棒!! “とける”!!」
 すると、ベトベトンのドロドロした体が突然、その名の通り溶け始めた! 雨の後にできる水溜りみたいな、ぺちゃんこな姿になったベトベトンに、エイパムの“きあいパンチ”が当たったけど、全然手応えがない。まさに『ぬかにくぎ』。
「!?」
「今だ!! “かわらわり”だ!!」
 こんな事もできるの!? そう驚いてる間に、ゲキさんの指示で、ぺちゃんこのベトベトンはぬるりとエイパムの後ろに回った。そして、元通りの姿になったと思うと、不意を付いてその手でエイパムを思い切り殴りつけた! 効果は抜群!
「エイパム!!」
 エイパムは尻尾の手を使って、辛うじて受け身を取った。
「続けて“ダストシュート”!!」
 その隙をゲキさんは逃さない。ベトベトンは、口からゴミみたいなものをエイパムにたくさん吐いてくる!
「よけて!!」
 あたしは慌てて指示した。エイパムは受け身を取ったお陰で、素早く動く事ができた。
「ベトベトンって、使うわざまで変わってるじゃない・・・」
 あたしの口から、そんな言葉がこぼれた。さて、問題はこれからどうするか・・・ゲキさんはカリスマって言われるだけあって、結構強い相手なのはわかった。これがもし、ブイゼルだったら・・・あたしは、ブイゼルの方をちらりと見た。その目は、明らかにあたしに向けられている。その視線からは、どこか寂しそうな雰囲気を感じた。
「ブイゼル・・・」
 あたしの口から思わずそんな言葉がこぼれた時、ドン、と鈍い音がした。見ると、エイパムがベトベトンの“かわらわり”を受けていた! いけない! こんな事考えてる場合じゃなかった!
「どうした? 何よそ見をしてるんだ?」
 ゲキさんが、あたしを心配して言う。
「・・・何でもありません! 反撃するわよエイパム!!」
 とにかく、バトルに集中しないと! 倒れていたエイパムが立ち上がった。
「“スピードスター”!!」
 エイパムは、尻尾を振ってたくさんの星型の弾をベトベトンに向けて発射した! ベトベトンの周りを、たくさんの星が飛び交う。ベトベトンが戸惑ってる間に、それを足場にして飛び移りながら、エイパムはベトベトンとの間合いを詰める!
「動きが読みにくいな・・・とにかく応戦だ相棒!! “ダストシュート”!!」
 ベトベトンも応戦する。“ダストシュート”をエイパムに向けて撃ってくる!
「回転しながら“きあいパンチ”!!」
 あたしはそれを待っていた。エイパムは“きあいパンチ”の体勢をとってそのままコマのように回り始めた。振り回される拳が、“ダストシュート”を跳ね返していく!
「まずい!!」
「そのまま行っちゃってっ!!」
 そのままベトベトンに近づいたエイパムは、回転で勢いをつけた強烈なパンチをベトベトンにお見舞いした! 今度は手応えがある! 弾き飛ばされるベトベトン。かなりのダメージを与えられたみたい!
「なかなかやるじゃないか。やはり俺が見込んだ通りだ。君の力量もなかなかのものと見たよ」
 ゲキさんは、笑みを浮かべた。
「そんな、それならサトシに言ってください。あたしはまだ、エイパムに何もしてないし・・・」
「いや、そんな事はないさ。人から託されたポケモンと上手く息が合っている事は、いいポケモントレーナーの証だよ。ポケモンとの絆は、ポケモンそのもの、いや、ポケモントレーナーそのものの強さのバロメーターさ」
 そんなゲキさんの言葉を聞いて、あたしはちょっと照れた。
「ポケモンと絆を深める事で、ポケモントレーナーはもっと強くなれるんだ。さあ、バトルの続きだ!!」
「はい!!」
 ゲキさんのそんな呼びかけに、あたしははっきりと返事をした。こんな事を言われると、何だか燃えてくる・・・! エイパムとベトベトンが身構える。
「エイパム、“きあいパンチ”!!」
「“かわらわり”!!」
 あたしとゲキさんが指示すると、エイパムとベトベトンがお互いの拳を構えて、互いに間合いを詰めていく! 2匹の拳が今まさにぶつかり合おうとした、その時だった!

 どこからともなく、ぶつかり合おうとした2匹の間に一筋の青い光線が飛んで来た!
「!!」
 光線は、2匹の間に当たって、爆発した! 2匹は、直撃は免れたけど、爆風のせいで弾き飛ばされた。
「な、何だ!?」
 突然の事態に、驚くサトシ。
「な、何!?」
「誰だ、このバトルに水を刺すのは!?」
 あたしとゲキさんも当然、驚いた。ロケット団? あたしは一瞬思った。でも、さっきの光線は明らかにロケット団のものじゃない。あたしとゲキさんも含めて、そこにいた誰もが、光線が飛んで来た先を見た。そこには、見物していた人の正面に立つ、1人の男の人がいた。手には、何か水晶みたいなものを持って、こっちに突き出している。でも、ポケモンの姿はない。
(何がポケモンとの絆だ、そんなきれい事など・・・!)
 男の人の声が聞こえる。でも、目の前の水晶を持った男の人は、明らかに口を動かしていない。それに、この声自体も、直接耳で聞こえるものじゃない。何だか、ヘッドホンで聞く声のような、頭の中で響くような声。
「な、何? この声・・・?」
(人間め、あれだけ警告したと言うのに、お前達はまだポケモンを貴様らの奴隷としてこき使っているのか!)
 誰のものかわからない声が頭の中で響く中、水晶を持った男の人がこっちに歩いてきた。
「誰だお前は!」
 サトシが男の人に叫んだ。でも、男の人は何も答えないまま、水晶を突き出した。すると、その水晶が光って、青い光線がサトシ目掛けて発射された!
「!!」
 光線はサトシを狙って飛んで行く! サトシは慌てて逃げる。
「サトシ!!」
 あたし達がサトシを心配する間もなく、男の人は水晶をこっちにも向けた! 光線がこっちに飛んで来る! 気付くのが遅れちゃったけど、エイパムが“スピードスター”でリリーフしてくれたお陰で、光線が相殺されて、当たらずに済んだ。水晶から放たれる光線は、周りの人達にも襲い掛かる! 周りの人達は、一目散に逃げて行く。あの水晶、一体何なの!? それにあの人、一体どんな人なの!?
「お前は何者だ・・・? 正体を現せ!! 相棒、“シャドーパンチ”!!」
 ゲキさんが男の人を強くにらんで、叫んだ。ベトベトンの拳を覆うように、黒い拳が作り出される。そして、それを突き出すと、黒い拳だけが飛び出して、男の人に目掛けて飛んで行った! 黒い拳は男の人に当たった! すると、男の人の姿が、ノイズがかかったテレビの映像ように歪んで、別の姿に変わった!
「えっ!?」
 あたしは、それを見て目を疑った。その姿は、どう見てもポケモンだったんだもの! スマートな白と青のツートン模様の体に、横に突き出た羽。短い手は水晶を持ってる。足は生えていなくて、宙に浮いてる。ポケモンが、人に変身してたっていうの!? その場に出ていたあたしのポケモン達が、一斉に身構えた。
「あれは・・・まさか、ラティオス!?」
 サトシが叫んだ。
「ラティオスだって!? 『南の孤島』にしかいないっていう、あの『幻のポケモン』か!?」
 ゲキさんが疑うようにサトシの方を向いて言った。幻のポケモン!? あたしはそれを確かめるために、ポケモン図鑑を取り出した。
「ラティオス、むげんポケモン。高い知能を持つポケモン。腕を折りたたんで飛べばジェット機を追い越すスピードを出せる」
 図鑑の音声が流れた。やっぱり、ラティオスに間違いない。
「・・・そうか! あの水晶、どこかで見た事があると思ったら、『こころのしずく』じゃないか!」
 またサトシが声を上げた。
「『こころのしずく』?」
「噂で聞いた話では、ラティオスのパワーを底上げするアイテムらしい。とにかく、まさかあんなポケモンを目の前で見られるとは、俺も思ってもいなかったな・・・」
「感心してる場合じゃありませんよ!」
 あたしがツッコミを入れた時、ラティオスが水晶から撃っていた光線を、口からこっちに撃ってきた! 慌てて逃げるあたしとゲキさん。
「ラティオス、どうしてこんな事をするんだ!!」
(僕は人間を『成敗』しに来たんだ)
 サトシの問いにあの声が答えた。そうか、この声はラティオスのテレパシーだったんだ!
「成敗?」
(そうだ。お前達人間はポケモンを奴隷として、こうやってこき使っていたじゃないか!)
「こき使ってる!?」
 その言葉に、あたしは苛立ちを覚えた。それはみんなも同じだったみたい。
「そんなの誤解よ!! あたし達は、ポケモンと仲良く・・・」
(嘘をつけ!!)
 そんなラティオスの声がしたと思うと、周りの景色が急に歪んだ。
「え!? 何!? 何なのこれ!?」
 周りが一旦暗くなったと思うと、また風景が映った。でも、それは全く違うものだった。どこかの場所で、2人の人がポケモンバトルをやっている様子だった。しかも、あたし達は宙に浮いてる? バトルの様子は、上から見下ろすように映ってる。でも、地面の感触はちゃんとあるし・・・?
「これは・・・『ゆめうつし』だ!!」
 サトシが叫んだ。
「『ゆめうつし』?」
「見た物や考えたイメージを相手に映像として見せる能力なんだ!」
 首を傾げるあたしに、サトシが説明した。
「サトシ、どうしてそんなにラティオスの事に詳しいの?」
「そんな話は後だ!」
 あたしの質問に、タケシがツッコミを入れた。
(せっかくだから教えよう。僕は、最初は興味半分に人間に変身して近づいたんだ。だが、そこで僕は見たんだ。人間は、ポケモンをポケモンバトルとか、ポケモンコンテストとか言いながら、ポケモンをこき使ってばかりだ! しかも、人間達は後ろで命令してばかりで、何もしていない!)
 周りの風景が、また変わった。今度は、ポケモンコンテストのコンテストバトルの様子。
(ポケモンばかりがこき使われて、人間達は涼しい顔をして何もしていない。これは、明らかにポケモンを『奴隷』としか見ていないじゃないか!)
「そんなの違う!!」
 あたしは、思わず声を上げた。
「あたし達は、ポケモンをそんな風に思ってなんかないわ!! ポケモンは、あたし達の大事なパートナーよ!!」
「そうだ! 俺達は、ポケモン達と一緒に力を合わせてがんばっているんだ!!」
(問答無用だ!!)
 目の前の風景が元に戻った。すると、ラティオスがまた、あの光線を口からこっちに発射した! 慌てて逃げるあたし達。
「くっ、今のが“ラスターパージ”か・・・かなり威力がありそうだ・・・!」
 ゲキさんが唇を噛んだ。
(そんな言い訳など聞きたくはない!! すぐにポケモン達を解放しろ! さもなくば、僕がこの手で成敗してやる!!)
 すると、ラティオスの目が光った。
「!!」
 すると、あたしの体が急に宙に浮いた!? それに、体も何かに締め付けられてる!? どんなにもがいても、全然体がいう事を聞かない!?
「まずい、“サイコキネシス”だ!!」
 サ、“サイコキネシス”!? じゃあ、このままじゃあたしは・・・! そう思った時、ポッチャマが前に出た。
「ポッチャマーッ!!」
 ポッチャマは“バブルこうせん”をラティオスに向けて発射! 命中! ラティオスは気がそれたせいが、“サイコキネシス”が緩んだ。お陰であたしは、何とか着地する事ができた。
「ありがと、ポッチャマ」
「ポッチャマ!!」
 あたしのお礼に、ポッチャマが笑顔で答えた。
(どうしてだ・・・何故人間の味方をするんだお前は? そいつはお前を利用しているだけなんだぞ!)
「ポチャ!! ポチャポチャポチャ!!」
 ポッチャマは首を横に振って、何か主張してる。
(『ヒカリはそんな人じゃない』だと? そう言うなら、その心意気を僕に見せてもらおうか!)
 ラティオスとポッチャマがにらみ合った。


TO BE CONTINUED・・・

[124]
★ディオ★ - 2007年12月09日 (日) 12時17分

わーい!ついに出てきたぞ〜!
すごく感激です!よく見ると高橋涼介さんの性格と一致していますよ!
こんな性格でお願いします!

ちなみに何度も言いますが・・・ゲキのモデルはこのサイトに飛んで『高橋涼介』というのをモデルにしてください。
http://initiald.sega.jp/ind_ac4/chara04.html

はい、コスチュームの色はお好みでよろしくお願いします。

[126] SECTION02 VSラティオス! ブイゼルの怒り!
フリッカー - 2007年12月09日 (日) 22時24分

 あたし達がラティオスとやり取りをしていた頃。
 その空の上には、あの気球が飛んでいた。そう、いつものあいつら、ロケット団。
「ちょっと、あの見慣れないポケモン、何?」
「あれは・・・ラティオス。『南の孤島』にしかいないっていう幻のポケモン・・・!!」
 ムサシの質問に、コジロウが小さなカードを見ながら答えた。
「幻のポケモン!? それなら、ゲットするっきゃないじゃないの!!」
 それを聞いたムサシが、思わず声を上げた。
「理由はわからニャいけど、ラティオスはジャリンコ達と一食触発状態ニャ。バトルしてる時に隙を突いてゲットすればいけるニャ!」
「ラティオスをボスにプレゼントしたら、大喜び間違い無しだ!」
「よ〜し、作戦変更!! こうなったら早速ピカチュウと一緒にラティオスもゲットよ!!」
「おう!!」
 2人と1匹は相槌をして、気球の下へと顔を向けた。


SECTION02 VSラティオス! ブイゼルの怒り!


 あたしとポッチャマの絆を、見せてやらなきゃ! 自然と力が入った。
「ポッチャマ、“バブルこうせん”!!」
 あたしの指示で、ポッチャマは“バブルこうせん”をラティオスに向けて発射! でも、ラティオスはそれを軽やかによけた。
「速い!?」
 あたしが驚いてる間に、ラティオスは羽に力を込めて、ポッチャマにものすごいスピードで突っ込んできた! 直撃! すれ違いざまの翼の一撃は強烈だった。ポッチャマはたちまち弾き飛ばされた。
「今のは“はがねのつばさ”か! なんてパワーなんだ!」
「それに、あのスピードもかなりのものだ! ヒカリ、気をつけろ!! あのスピードに翻弄されるな!!」
 ゲキさんとタケシの叫び声が聞こえた。後ろにいるポケモン達も、固唾を呑んで見守っていた。特にブイゼルは、ラティオスを強くにらんでいた。
「うん!! ポッチャマ、もう1回!!」
 もう一度“バブルこうせん”を発射するポッチャマ。でも、当たらない! 縦横無尽に飛び回るラティオスのスピードに、ポッチャマが追いかけられないでいる!
「がんばって、ポッチャマ!!」
 あたしの応援に答えるように、ポッチャマは“バブルこうせん”を止めないまま、必死にラティオスに狙いを定める。なかなか当たらないけど、ポッチャマはあきらめない。それが実って、“バブルこうせん”が遂に当たった!
「やった!!」
 あたしはそう思ったのもつかの間、ラティオスはそれを容易く押しのけて、また“はがねのつばさ”でポッチャマに突撃して行った! 直撃! 弾き飛ばされるポッチャマ。
「ポッチャマ!」
 あたしがそう叫んだ時、ラティオスがポッチャマの前で動きを止めた。
(見ろ。君の主は、君がここまで追い詰められても、助けてはくれない。所詮は『奴隷』としか思っていないんだよ)
 ラティオスのテレパシーが響く。
「そんなの違う!」
(そう言うのなら、なぜ自ら助けようとしない?)
 あたしは、その質問の答えを一瞬、迷った。
「・・・だって、ポケモンバトルはポケモン同士でするものじゃない!!」
(本音を出したな。そういう考えがポケモンを『奴隷』としか考えていない事を現している!)
「う・・・」
 いけない! 逆効果になっちゃった! あたしはどう言い直せばいいのかわからなくなって、言葉が詰まった。
(これでわかっただろう。今からでも遅くはないさ。僕と一緒に・・・)
 ラティオスは、ポッチャマに近づく。でも、ポッチャマはよろりとだけど立ち上がって、身構えた。その時!

 上から大きな網がラティオスの上に降って来た! その網は容赦なくラティオスを包み込んで、ラティオスを引き上げた!
「!?」
 予想もしない事態に、そこにいたみんなが驚いた。
「わ〜っはっはっは!!」
 そんな聞き慣れた高らかな笑い声が聞こえてくる。見ると、そこにはニャースを模った気球が!
「な、何だあれは!?」
 ゲキさんがそう叫んだ時、やっぱりあのフレーズが聞こえてきた。
「『な、何だあれは!!』の声を聞き!!」
「光の速さでやって来た!!」
「風よ!!」
「大地よ!!」
「大空よ!!」
「天使か悪魔か、その名を呼べば!!」
「誰もが震える魅惑の響き!!」
「ムサシ!!」
「コジロウ!!」
「ニャースでニャース!!」
「時代の主役はあたし達!!」
「我ら無敵の!!」
「ロケット団!!」
「ソーナンス!!」
「マネネ!!」
 間違いなくロケット団だった。
「ロケット団!!」
 いつものように叫ぶあたし達。
「あいつらは何者なんだ?」
「ポケモンを盗もうとする、悪い奴らなんです!!」
 ゲキの疑問に、サトシが答えた。
「というわけで、ラティオスは我らロケット団がいただいていくのニャ〜ッ!!」
 ニャースが高らかに叫んだ。
(いただく、だと・・・!?)
 その言葉に、ラティオスは怒った様子だった。
「さあ、ついでにピカチュウも・・・!」
 ムサシがそう言いかけたその時、ラティオスは“ラスターパージ”で網を簡単に焼き切った!
「ええ〜っ!?」
 それを見たロケット団は、驚きの声を上げた。
「ちょっとニャース!! どうなってんのよ!?」
「予算不足で頑丈な素材を使えなかったのニャ・・・」
 そんなやり取りをしている間に、ラティオスが気球の前に躍り出た!
(僕を怒らせたな、人間め・・・!!)
 そうテレパシーで言いながら、ラティオスは“ラスターパージ”を気球に向けて発射した! 気球にたちまち大穴が開いて、爆発!
「うっそだああああああっ!!」
 ロケット団がそんな叫び声を上げながら、気球は地面に吸い込まれていった。そしてすぐに、ズシンという地響きが響いた。それを見届けたラティオスの視線が、こっちを向いた。その目付きは、とても鋭くて、思わず背筋に寒気が走った。
(貴様ら・・・僕をはめたな・・・!! 許さないぞ!!)
 ラティオスは、完全に堪忍袋の緒が切れていた。ロケット団があたしに味方したと勘違いしてるみたい。でも、そんな事はもうどうでもよかった。ラティオスは、こっちに急降下しながら“ラスターパージ”を撃ってきた!
「わあああっ!!」
 あたし達は、慌てて逃げる。
「ポッチャマアアアアッ!!」
 そんなあたしを助けようと、ポッチャマが“うずしお”をラティオス目掛けて発射した!
「クオオオオオオッ!!」
 でもラティオスは、ものすごい気迫のうなり声を上げながら、“うずしお”に飛び込んだ! 当たった、と思ったら、ラティオスは“うずしお”を強引に打ち破ってポッチャマに“はがねのつばさ”をお見舞いした! 直撃! 弾き飛ばされるポッチャマ。
「ポッチャマ!!」
「ポ、チャ・・・」
 あたしの呼びかけで、ポッチャマは立ち上がろうとするけど、もう危ない状態。だめだ、ポッチャマじゃ歯が立たない! こんな時、頼りになるのは・・・
「ブイゼ・・・!」
 あたしはそう言い掛けて、後ろを振り向いた。でも、そこにブイゼルはいない。いるのはミミロルとパチリス、そしてさっきまでバトルしてたエイパムがいるだけ。はっ、ブイゼルは交換したんだった・・・忘れてた!
 そう思ってる間に、ラティオスはこっちに向かってくる!
「ヒカリ、ここは俺に任せろ!!」
 とっさにサトシがピカチュウと一緒に前に出た。あたしは言われた通り、ポッチャマを戻して、一歩下がった。
「ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
 ピカチュウが、自慢の電撃をラティオスに発射した! でも、ラティオスは全速後退してそれを軽やかにかわす。そして、ラティオスの目が光ると、ピカチュウが突然、宙に浮いた! “サイコキネシス”だ! ピカチュウは慌てて体をじたばたさせるけど、どうしようもない。そこに、ラティオスの“はがねのつばさ”が迫る! 直撃! 弾き飛ばされたピカチュウは、木に思い切り叩きつけられた。でも、ラティオスの動きも止まった。見ると、体に火花が走っている。
「やった!! 『せいでんき』で『まひ』したんだ!!」
 あたしは声を上げた。これなら、少しは有利になれる! とあたしは思った。でも、ラティオスの目が光ると、その火花はたちまち消え去った。
「ピ・・・!!」
 すると、急にピカチュウが苦しい表情を浮かべた。見ると、ピカチュウの体に火花が走っている。えっ!? ピカチュウも『まひ』している!?
「どうしたんだ、ピカチュウ!?」
 サトシも、動揺してる。
「まずい、“サイコシフト”だ!!」
 ゲキさんが叫んだ。
「“サイコシフト”?」
「自分の状態異常を相手と入れ替えるわざだ。これだとピカチュウが不利だ!!」
 ゲキさんが説明してる間に、ラティオスは“ラスターパージ”をピカチュウに向けて発射! 『まひ』して動けないピカチュウに、よけられる訳ない! 爆発!
「ピカチュウ!! くそっ、こうなったら・・・」
 サトシは唇を噛んだ。そして、後ろを向いて、そこにいるサトシのポケモン達を見つめた。入れ替えるつもりみたい。4匹全員が、強い眼差しでサトシを見つめていた。それからサトシが選んだのは・・・
「ブイゼル!! 君に決めた!!」
「ブイ!!」
 そんなサトシの声に、ブイゼルは待ってましたとばかりに、サトシの前に出た。ラティオスも、それに気付いた。
「“アクアジェット”だ!!」
 サトシの指示で、ブイゼルは“アクアジェット”でラティオスに正面から突っ込んでいく! さすがのラティオスも、これはよけられなかった。少しのけぞるラティオス。でも、まだ致命傷にはなっていない。ラティオスの後ろに着地するブイゼル。でも、その隙を突いてラティオスは“ラスターパージ”を発射! ブイゼルの足元に当たって、ブイゼルは体勢を崩した。
「ああっ!!」
 あたしは、思わず声を上げた。そして、ラティオスは羽に力を込める。“はがねのつばさ”が来る! こんなの当たっちゃったら、ブイゼルだってひとたまりもない! そう心配になったあたしは、いてもたってもいられなくなって・・・
「ブイゼル、もう1回アクア・・・!!」
「ブイゼルよけて!!」
 あたしはサトシが指示しているのも忘れて、思わず叫んじゃった。
「ブイ!?」
 2つの違う指示を聞いて、ブイゼルは戸惑った。
「ヒカリ!?」
 そんなサトシの言葉を聞いて、あたしは我に帰った。いけない、またブイゼルがあたしのポケモンだと思って・・・! そう思ってる間に、ラティオスは力を込めた羽をすれ違いざまにブイゼルにぶつけた! 弾き飛ばされるブイゼル。
「何やってるんだよ! ブイゼルはエイパムと交換したじゃないか!」
「ご、ごめん。つい・・・」
 さすがのあたしも、ここは謝るしかなかった。
(交換、だと・・・?)
 『交換』という言葉に、ラティオスが反応した。ブイゼルは、また立ち上がってラティオスの正面で身構えた。
(お前、主に交換されたのか?)
「・・・ブイ?」
 首を傾げるブイゼル。いきなり何を話すつもりなの?
(やはりお前も主に利用されたのだな。交換されたという事は、お前は主に『見捨てられた』という事だ)
「ブ・・・!?」
 ブイゼルは、その話に動揺した。
(お前は騙されているんだ。お前が交換されたのは、そいつがお前を相応しくない存在だと思ったからだ!!)
 ラティオスがあたしに視線を向けた。ブイゼルの疑う視線もこっちを向いた。そんな・・・あたしはブイゼルを見捨てた訳じゃ・・・!
「違うわよラティオス!! あたしはブイゼルが嫌いになったから交換した訳じゃ・・・!!」
(さっき『ポケモンは大事なパートナー』と言ったな。だが、パートナーだと言うのならば、そう簡単に手放せる訳がないだろう!!)
「う・・・!!」
 裏をかいたその言葉に、あたしは言葉が詰まった。こんな事を言われちゃったら、何を言っても『言い訳』にしかならないに決まってる。だから、どう言い返せばいいのかわからない。
「違う・・・そんなんじゃなくて・・・」
 でも、何か言わないと、こっちの負けになっちゃう。あたしは必死で、その答えを探した。
「ブイゼル!! ラティオスの話に乗っちゃダメだ!! “アクアジェット”!!」
 サトシは、そんな状況を払いのけようとしたのか、バトルを続けようとブイゼルに呼びかけた。でも、ブイゼルは何も答えないまま、こっちに背中を向けたまま、ピクリとも動かない。
「・・・おい、どうしたんだブイゼル!! 聞こえてないのか!!」
 何度サトシが呼びかけても、ブイゼルは不気味とも思えるくらいに沈黙を続けた。何だか様子がおかしい。
「ブイゼル?」
 あたしも、気になって声をかけた。すると、ブイゼルがゆっくりとこっちを向いた。けど・・・
「・・・・・・ブイ!!」
「!!」
 その顔を見て、あたしは背筋が凍りついた。だってその顔は、いつものブイゼルと違って、まさに『鬼の形相』って言葉が相応しい怒った表情だったんだから! その怒りの視線は明らかにあたしに向けられていた!
「ブゥゥゥゥイ!!」
 ブイゼルが突然、“みずでっぽう”をあたしに向けて撃ってきた! 顔に水がかかる。その力はとても強くて、不意を突かれたあたしは、押し倒されそうになった。
「!?」
 そこにいた誰もが、ブイゼルの行動に驚いた。
「ちょ、ちょっとブイゼル!? 何するの!?」
 あたしは一瞬、何が起こったのかわからなかった。ブイゼルはさらに、尻尾に力を込める。まさか、“ソニックブーム”を撃つつもり!?
「ブゥゥゥゥイ!!」
 ブイゼルは、尻尾を思い切り振った。衝撃波が、こっちに飛んで来る! あたしはよける事ができなかった。
「きゃあっ!!」
 ものすごい衝撃で、あたしはしりもちをついた。ブイゼルの顔を見ると、明らかに怒っている。まさか、ラティオスの言葉を本気で・・・!?
「どうしたんだブイゼル!? やめろ!!」
 サトシの言葉も無視して、ブイゼルはあたしに向けて走っていく!
「ピカ〜ッ!!」
 すると、傷だらけのピカチュウがブイゼルを止めようと前に出た。
「ブイッ!!」
 でも、ブイゼルは「邪魔だ!!」とでも言ってるかのように、ピカチュウに容赦なく“ソニックブーム”を撃った!
「ピカアアッ!!」
 不意を突かれたピカチュウは、もろに直撃を受けて、弾き飛ばされた。ラティオスとのバトルでダメージを負っていたピカチュウに、もうブイゼルを止める事はできなかった。やっぱり、ブイゼルは怒ってる・・・!
「やめろブイゼル!!」
 サトシは、とっさにモンスターボールを出して、ブイゼルを戻した。でも、それを拒否するかのように、入ったと思ったら勝手にモンスターボールが開いて、ブイゼルが飛び出してくる!
「ブイ・・・ッ!!」
 ブイゼルの視線は、やっぱりあたしの方を向く。その気迫に、極端な言い方かもしれないけど、あたしは『殺意』を感じ取った。やっぱり、ブイゼルはあたしに見捨てられたと思って、怒ってるんだ・・・!!
「ち、違うのよブイゼル!! あたしは、あなたの事を・・・」
「ブゥゥゥゥイ!!」
 でも、ブイゼルは聞こうとしていない。ブイゼルは、“アクアジェット”の構えを取った!
「・・・!!」
 それを見たあたしは、どうしていいかわからなくなって、何もできなくなった。
「ブイイイイイイッ!!」
 そして、ブイゼルはそのまま勢いに任せてこっちに飛び込んできた! あたしとの距離が、どんどん詰まっていく! そして・・・!

「きゃあああっ!!」
 お腹に強い痛みが走った。そして一瞬、体が宙に浮いたのがわかった。すぐに、あたしの体は地面に思い切り叩きつけられた。痛みが体中に広がった。全てが一瞬の出来事だった。
「ああっ・・・!!」
 みんなの息を呑んだ声が聞こえた。
「ブイ・・・!!」
 今にも遠くなりそうな意識の中、怒ったブイゼルのこっちをにらむ顔が見えた。
「ブイゼル・・・どう、して・・・・・・?」
 そう言った直後、あたしの意識はとうとう遠くなっていって、あたしは気絶した・・・

 * * *

「う・・・う〜ん・・・」
 気が付くと、見慣れない建物の天井が映った。あたしはベッドの上で寝ていたみたい。
「あれ・・・? ここは・・・」
「ポチャ!」
 体を起こすと、嬉しそうな顔を浮かべるポッチャマの顔が視界に入った。ミミロルやパチリス、エイパムの顔も。
「ヒカリ!」
「気が付いたか」
 そこに、サトシやタケシ、ゲキさんの姿も映った。
「みんな・・・」
 よく見れば、ここはポケモンセンターの部屋の中。そうか、あたし、あの時気絶しちゃって、それで・・・はっ、そういえばブイゼルは?
「そうだ、ブイゼルはどうしたの?」
「・・・・・・」
 あたしの質問に、みんなが顔をうつむけた。
「・・・ねえ、どうしたのよ?」
「ブイゼルは・・・あのラティオスと一緒にどこかへ行ってしまったんだ・・・」
 タケシが、重い口を開いた。
「えっ!?」
 あたしは、その言葉に耳を疑った。
「俺達も追いかけようとしたんだけど、結局見つけられなかったんだ・・・」
 サトシも重い口を開いた。
「そ、それじゃあ・・・!」
「残念だが、今は『行方不明』って訳さ・・・」
 ゲキさんのその答えを、あたしは信じられなかった。そして、あの時の後悔が心の中によみがえってきた。サトシのエイパムと交換した事が、ブイゼルを傷つけちゃったんだ・・・!
「ところで、あのラティオスについてなんだが・・・」
 ゲキさんがサトシとタケシに顔を向けた。
「どうかしたんですか?」
「あのラティオス、ひょっとしたら最近ニュースで聞いた『正体不明の青いポケモン』なのかもしれない」
「『正体不明の青いポケモン』?」
「ああ。『最近、ポケモントレーナーばかり狙って現れる正体不明の青いポケモンがいる』ってニュースさ。あのニュースで言ってた特徴と合わせれば、あのラティオスである事に間違いない」
「それにしても、なんであのラティオスは人がポケモンを『奴隷』としか見てないなんて思ってるんだ・・・どんなポケモントレーナーだって、ポケモンを大事にしてるのに・・・」
 そんなみんなのやり取りも、あたしの耳に入っても、そのまま筒抜けしていった。もっとそれ以上の事が、あたしの心の中で大きくなっていたんだから・・・
「ブイゼル・・・」

 * * *

 その後も、みんなはブイゼルを探しに行った。でも、あたしは行かなかった。というか、行く気になれなかった。だって、ブイゼルに会わせる顔がないんだもん・・・
 外はもう夜。空には月が出てる。あたしはまだ、部屋にこもっていた。ベッドに座りながら、空の月をただ眺めていた。ブイゼルの事が、頭から離れない。やっぱり、ブイゼルはあたしと一緒に・・・
『パートナーだと言うのならば、そう簡単に手放せる訳がないだろう!!』
 そんなラティオスの言葉を思い出す。確かに、ラティオスの言う通りなら、パートナーを簡単に手放しちゃうあたしなんて、トレーナー失格・・・
「エイッパ!」
 そんな声が聞こえたと思うと、あたしの背中に何かが乗った。見ると、ブイゼルと交換したエイパムだった。その笑顔は、あたしの事を心配して、励まそうとしてくれてるみたい。あたしの足元でも、ポッチャマが心配そうな顔を浮かべている。
「エイパム・・・これでホントにいいの?」
「?」
 あたしは、思わずそんな疑問を口に出した。エイパムが首を傾げる。
「確かに、あたしといればコンテストの事は思いっきりやれるけど、エイパムはサトシが大好きなんでしょ・・・? だったら、あたしといるより、サトシといた方がいいんじゃないの・・・?」
「!?」
 その言葉に、エイパムもポッチャマも眼を丸くした。エイパムは、戸惑う表情を見せた。それを見て、あたしは決意を固めた。やっぱり、エイパムは・・・
「ヒカリ」
 そんな時、ドアが開いた音がして、サトシの声が聞こえてきた。みると、サトシだけじゃなくて、タケシやゲキさんの姿もある。
「サトシ・・・」
「ヒカリ、ちょっと頼みたい事があるって・・・」
 あの様子だと見つかってないみたい。今まで、ブイゼルを一所懸命探してたんだよね・・・ポケモンを大事にするならここまでするのは当然だよね・・・
「ねえサトシ」
 あたしは、サトシの言葉を無視して話を持ちかけた。
「何だ?」
「エイパム・・・返すよ」
 あたしはエイパムを抱えて、サトシの前に突き出した。
「えっ!?」
 それを聞いたみんなは、目を丸くした。エイパムも、あたしの突然の言葉に驚いてこっちを見た。
「どうしていきなり!? エイパムはヒカリとの息はピッタリじゃないか!」
「・・・そうじゃないの。確かに、エイパムと息は合うよ。でも、エイパムはやっぱりサトシの所にいた方がいいって思って・・・」
 動揺するサトシに、あたしは訳を説明した。エイパムは、サトシに顔を向けた。
「でも・・・」
「ブイゼルだって、同じはずよ。あの時交換したせいできっと、ブイゼルは傷ついちゃったのよ・・・だから・・・」
「ヒカリ・・・まさか、それを気にして・・・?」
 タケシがそう言った時、あたしとサトシの間にゲキさんが入ってきた。
「君達、それは一体どういう事なんだ? 詳しく聞かせてもらえないか?」

 あたしはベッドに座って、ゲキさんにエイパムとブイゼルの交換の事情を説明した。サトシのポケモンだったエイパムは、コンテストの演技が好きで、あたしのポケモンだったブイゼルはバトルが好きだった事。それを知った友達から、交換してみたら、と提案された事。試しに使ってみたらお互いに自分の力を思う存分発揮できたから、交換する事を決めて、交換成立した事。
「そうだったのか・・・お互いの得意な分野に合わせて、交換したって訳か・・・」
「でも、それだけの理由で交換しちゃうなんて、やっぱり間違ってるんじゃないかなって・・・今までの努力も無駄になっちゃうし、2匹とも、一緒にバトルとかできなくなって寂しく思ってるんじゃないかなって思って・・・あのラティオスだって、『パートナーだと言うなら、そう簡単に手放せる訳がない』って言ってたし・・・」
 あたしはうつむきながら、自分の思いを打ち明けた。しばしの沈黙。
「・・・ヒカリ。君は1つ、勘違いをしてないか?」
 ゲキさんが口を開いた。
「え?」
「交換したからって、前の『親』がいきなり『赤の他人』になるとでも思っているのか?」
「・・・!」
 その言葉を聞いて、あたしははっとした。
「1つ質問しよう。君とその友達が、学校で同じクラスにいたとする。ある日、クラス換えになった時、君はその友達とは違うクラスに行ってしまった。そうなったら、別のクラスになった友達はもう『赤の他人』になるかい?」
「・・・違う」
 あたしは、首を横に振った。
「そうだろ? ポケモンとその『親』でも同じさ。交換した事は、絆が途切れた事を意味する訳じゃない。オーブタウンの人なら、誰でも知っている事さ」
「絆が途切れた事を意味する訳じゃない・・・」
 あたしは、ゲキさんの言った言葉をもう一度、口に出してみる。
「エイッパ!」
 すると、エイパムがまた、あたしの肩に飛び乗った。その顔は、やっぱり笑みを浮かべていた。
「エイパム・・・?」
「そのエイパムもきっと、その事を知っているのさ。だから、俺が話しかける直前まで、前の『親』と追いかけっこしてたんだろ?」
 ゲキさんが、エイパムに話しかけた。すると、エイパムはうなずいた。
「ましてや、今まで一緒に旅をしてきた仲間のポケモンなんだろう? 前の『親』とも離れ離れになる事はないし、環境も変わる事はない。今までの努力も、決して無駄にはならないと思うぞ」
「ゲキさん・・・」
 そうか・・・たとえ『親』が変わっても、前の『親』は『仲間』である事に変わりはないんだ・・・! あたしは確信した。こんな単純な事、どうして今まで気付かなかったんだろ・・・心の中の迷いが消えていくのがわかった。
「あのブイゼルも、ヒカリと同じ事を考え過ぎてしまって、ラティオスの言葉を本気で受け止めてしまったのかもしれない。だが、彼を呼び戻す事だってできるさ。君がその気になればね」
「そうさ! だから、一緒にブイゼルを探そうぜ!」
「今ならまだ間に合うさ!」
「みんな・・・」
 そうだ、ブイゼルを探さなきゃ・・・会わせる顔がないとか思ってる場合じゃない。みんなの暖かい視線が、あたしを奮い立たせた。
「そこで、本題だ。ブイゼルを探すために、君のポケッチを活用したい」
「ポケッチを?」
 一瞬、あたしはゲキさんが言いたい事がわからなかった。ポケッチがブイゼルを探す事に何か役に立つの?
「ポケッチのアプリに、『マーキングマップ』というのがあるだろう」
「『マーキングマップ』?」
「それを使えば、出会ったポケモンの足取りを掴む事ができる。見てごらん」
 百聞は一見にしかず。あたしは、言われた通りポケッチのスイッチを入れて『マーキングマップ』ってアプリを探してみる。あった。起動してみると、画面にはこの辺りの地図が映って、その中で1つだけ点滅している点があるのを見つけた。
「その点は、あのラティオスの居場所を示している。恐らく、ブイゼルもその近くにいるはずだ」
 ゲキさんの説明を聞いて、あたしはゲキさんの言いたい事がようやくわかった。
「・・・そっか! これを使えば、ブイゼルがどこに行ったか簡単にわかっちゃうって事ね!」
「そういう事だ。もちろん、協力してくれるね?」
「はい!!」
 あたしは、答えに迷わなかった。
「その意気だぜヒカリ! こういう時こそ『ダイジョウブ!』って言わなきゃ!」
「うん!」
 あたしは、肩に乗ったエイパムに顔を向けた。エイパムも行く気満々の様子。
「行こう、エイパム! ブイゼルを探しに!」
「エイッパ!」
 エイパムははっきりと返事をして、うなずいた。
「ダイジョウブ!!」
「ポチャポ〜チャ!!」
 あたしのいつもの言葉に、ポッチャマも答えた。
「さあ、決まった所で出発するぞ。今ならまだ間に合う!」
「はい!!」
 ゲキさんの言葉にはっきりと返事をして、あたし達は出発した。

 待ってて、ブイゼル・・・今行くからね!


NEXT:FINAL SECTION

[128] FINAL SECTION ブイゼルとエイパムの誓い!
フリッカー - 2007年12月14日 (金) 18時05分

 あたし達は、ポケッチの『マーキングマップ』を頼りに、ラティオスを探した。その近くに、ブイゼルもいるはず! あたしは、先頭に立ってポケッチを見ながら歩いていく。
 画面の点滅してる点を追って行くと、どんどん町から離れていって、暗い森の中へと入っていった。途中でズバットの影を何度か見たけど、あたしは気にしないで『マーキングマップ』の示す通りに進んでいく。
「なあ、これでホントに合ってるのか? 圏外とかになってないよな?」
 不安になったのか、サトシがそんな事を言った。
「ダイジョウブ! 圏外なんてある訳ないでしょ!」
「まあ、そうだけどさ・・・」
 そんなやり取りをしながら歩いて行くと、目の前の視界が開けた。そこには、月光に照らされた大きな池が広がっていた。とてもきれいな風景だったけど、今はそんな事はどうでもよかった。
「池か・・・」
 タケシがつぶやいた。あたしは、ポケッチの画面に目をやる。点滅している点は、あたし達のいる所からそう離れていない所にある。ラティオスは近くにいる!
「近いわ! この辺りにいるはずよ!」
 あたしは、辺りを見回した。すると、遠くからドン、ドンと何かを叩くような音が聞こえてきた。
「ねえ、何か聞こえない?」
「・・・ああ、確かに聞こえる!」
「行ってみよう!」
 あたし達は、音がする方向に歩いていった。進む度に、音はどんどん大きくなっていく。ラティオスかどうかはわからないけど、何かが近くにいる事は確実。
「ブイッ!! ブイッ!!」
 すると、叩く音に混じって、そんな聞き慣れた声も聞こえてくる。
「この声・・・ブイゼル?」
 結構近くまで来た。あたし達は、岩陰から音がする場所の様子をそっと除いた。そこには、やっぱりブイゼルの姿があった!


FINAL SECTION ブイゼルとエイパムの誓い!


「ブイッ!! ブイッ!! ブイッ!!」
 ブイゼルは、ひたすら近くに生えている木を殴り続けていた。その拳には、いつも以上に力が入ってる。そのまま木を倒しちゃうんじゃないかと思うくらいの勢い。そして、唇を噛んでいるその表情は、怒ってるようにも悔しがってるようにも見えた。
「ブイゼル・・・」
 やっぱり、ブイゼルはあんなに怒ってたけど、ホントはあたしと一緒にいられない事が寂しいんだ・・・あたしには、すぐにわかった。
「ブイィィィィィィッ!!」
 そんな思いを振り払うように叫び声を上げながら、ブイゼルは拳を思い切り木に叩き込んだ。ブイゼルの拳は、木に深々と突き刺さった。
「ブイ・・・・・・ッ!!」
 ブイゼルは突き刺さった手を抜かないまま、わなわなと腕を震わせていた。「ヒカリのバカヤロウ!」とかって思ってるのかな・・・? 言わなきゃ、あたしはブイゼルを見捨ててなんかいないって・・・! あたしは決意を固めた。
「・・・行こう!」
「ポチャ!」
「エイッパ!」
 あたしの言葉に、ポッチャマとエイパムが答えた。
「俺も行く」
「あたしに行かせて。ブイゼルには、やっぱりあたしから話さなきゃいけないから・・・!」
 あたしと一緒に行こうとしたサトシを、あたしは止めた。
「・・・ああ、わかった。気をつけろよ」
 サトシはそう言って身を引いた。そして、あたしは2匹と一緒に岩陰を出た。
「ブイゼル!」
「・・ブイ!?」
 あたしが呼びかけると、ブイゼルは驚いた様子でこっちを向いた。
「探したのよ、ブイゼル。あたしは・・・」
「ブイッ!!」
 すると、言い終わらない内にブイゼルはすぐに正面を向いて、身構えた。毛が逆立っている。完全にあたしを警戒してるみたい。
「怒らないでブイゼル。あたしはあなたを迎えに来たのよ・・・」
 あたしは、足を踏み出す。
「ブゥーッ!!」
 でも、ブイゼルはあたしの言葉も聞こうとしないで、あたしに向かって“みずでっぽう”を撃ってきた!
「うっ!!」
 顔に水がかかる。相変わらずの強い力。何とか押し倒されないように足をふんばった。
「まだ、怒ってるのね・・・でも、違うのよ! あたしはブイゼルを見捨ててなんか・・・」
「ブイーッ!!」
 すると、今度は尻尾を振って“ソニックブーム”を撃ってきた! 衝撃波がこっちに飛んで来る!
「ポッチャマーッ!!」
 すると、すかさずポッチャマが“バブルこうせん”を発射。“ソニックブーム”と正面からぶつかって、相殺した。
「ポチャ! ポチャポチャッ!」
「ブイ・・・ッ!!」
 ポッチャマが説得しようとしてるみたいだけど、ブイゼルは全然聞こうとしない。
(また、あの時の人間か・・・!)
 そんな声が突然、頭の中で響いたと思うと、あたしの体が、急に何かの強い力に押さえつけられた。間違いない、この声は・・・!
「ラ・・・ラティオス・・・!!」
 あたしが言うと、初めて見た時と同じ、男の人の姿であのラティオスが現れた。光る『こころのしずく』を持つ右手を突き出している。これは、ラティオスの“サイコキネシス”なんだ!
(逃げた『奴隷』を捕まえに来たという訳か。そんな事はさせん!!)
 人の姿をしたラティオスは、『こころのしずく』を持つ右手を横に振った。すると、あたしの体が思いっきり投げ飛ばされた!
「きゃあっ!!」
 地面に思いっきり叩きつけられるあたしの体。
「ヒカリ!!」
 そんなみんなの声が聞こえた。そんなあたしをかばおうと、ポッチャマが前に出た。
「ポッチャマーッ!!」
 ポッチャマが“バブルこうせん”をラティオスに向けて撃つ! 命中! でも、ラティオスは元の姿に戻っただけで手応えがない。そして、ラティオスは“ラスターパージ”で反撃! 直撃! たちまち弾き飛ばされるポッチャマ。ポッチャマのダメージはかなり大きい。なんて威力なの!?
「くそっ!! ピカチュウ、“10まんボルト”!!」
 とっさにサトシが出てきて、あたしのリリーフに入った。ピカチュウが、自慢の電撃をラティオスにお見舞いした! でも、ラティオスはそれを軽やかによける。そして、すかさずもう一度“ラスターパージ”を撃つ! ピカチュウも、自慢のスピードでよけた。
「ちっ!! なんてスピードなんだ!!」
 唇を噛むサトシ。
「相棒、“シャドーパンチ”!!」
 そんなサトシに加勢するゲキさん。モンスターボールから出て来たベトベトンは、“シャドーパンチ”をラティオスにお見舞いする! 当たった! 効果は抜群みたい! どんなに素早いラティオスでも、必ず当たるわざはよけられない。
「ヒカリ!! ここは俺達に任せろ!!」
「う、うん!!」
 いけない、本来の目的を忘れるところだった。あたしは、ブイゼルの方に体を向き直した。
「ブイ・・・・・・ッ!!」
 ブイゼルはまだ、こっちを鋭い目付きでにらんでいる。まずは何とかして、ブイゼルを落ち着かせなきゃ・・・こうなったら奥の手! あたしは、懐からある物を取り出した。

 チリン、というきれいな音色が響き渡った。
「ブイ・・・?」
 それを聞いたブイゼルは一瞬、顔を緩めた。
「落ち着いて、ブイゼル・・・あたしの話を聞いて!」
「エイッパ!」
 そう、あたしが出したのは、前のタッグバトル大会での優勝商品、『やすらぎのすず』。準優勝だったあたしは直接もらえなかったものだけど、シンジが「必要ない」って言ってサトシに渡したものだから、サトシからあたしがもらっちゃったもの。この音色なら、ブイゼルは落ち着いてくれるはず。そう思って持って来た。
 あたしは『やすらぎのすず』を右手に持って前に突き出しながら、ブイゼルにゆっくり近づいていく。
「ブイゼル、あたしはあなたを見捨ててなんかいないよ。ただ、あなたのためを思って交換しただけよ。ブイゼルはあたしには合わないなんて、思ってないわ」
「・・・・・・」
 ブイゼルはまだ疑い深い眼をしてるけど、ちゃんと話は聞いている。
「だって・・・」
 話を続けようとした時、後ろに突然、何かの気配を感じ取った。振り向くと、そこにはこっちに飛んで来るラティオスの姿が! その瞬間、あたしの背中は何かに思い切り殴られた!
「しまった!!」
「きゃあっ!!」
 そんなサトシの声と、あたしの体が弾き飛ばされたのはほとんど同時だった。地面に倒れるあたし。衝撃で体中に痛みが走った。今のは・・・“はがねのつばさ”!? サトシ達が時間を稼いでくれてたんじゃないの!?
(奴の言葉に惑わされるな! また奴に利用されるだけだぞ!)
 そんなラティオスの声が響く。そして、あたしが体を起こすと、ラティオスがもう一度こっちに来るのが見えた。またやられる!
「エイッパァーッ!!」
 すると、エイパムが“きあいパンチ”でラティオスにアッパーをお見舞いした! と思ったら、ラティオスは突然、“テレポート”でもしたみたいにスッと姿を消した! エイパムのパンチが空を切る。
「!?」
 あたしが驚いてる間に、またあたしの体に衝撃が走った。
「ああっ!!」
 今度は横からだった。倒れるあたし。衝撃でまた、体中に痛みが走る。今、確かに姿が消えたよね・・・!? ラティオスって、どんなポケモンなの!?
「くそっ!! 逃がすなピカチュウ、“10まんボルト”!! ヒカリに近づけるな!!」
「ピ〜カ、チュウウウ!!」
「ポッチャマーッ!!」
 あたしの体の上を、ピカチュウの電撃とポッチャマの“バブルこうせん”が通り過ぎていく。そうだ、こんな事考えてる場合じゃない。早くブイゼルに、話を続けないと・・・ラティオスに妨害される前に・・・! あたしは、落としていた『やすらぎのすず』を拾って、もう一度立ち上がった。すずのきれいな音色がまた鳴った。
「だって・・・今まで、ここぞって時にブイゼルはいつも頼りになったわ・・・そんなあなたを、あたしが見捨てると思う?」
 あたしはやさしく話しかけながら、ゆっくりとブイゼルに近づいていく。ブイゼルの側まであと少し。
「ブ・・・・・・ブイッ!! ブイーッ!!」
 ブイゼルは一瞬、あたしの言葉を聞き入れてくれたように表情を緩めた。でも、それをやっぱり受け入れられないのか、まだ怒った顔に戻って、こっちに“ソニックブーム”を撃ってきた!
「ああっ!!」
 もろに体に直撃。体中に痛みが走った。のけぞって、思わず膝を突くあたし。まだ、怒ってる。けど、話は確実に伝わってる。意地張ってるだけなのかも。
「っ・・・意地張らないでブイゼル・・・」
 あたしは、痛む体をこらえてまた立ち上がって、ゆっくりと歩き出す。そして、ブイゼルのすぐ側まで歩み寄った。
「交換したって、あなたはあたしの大事な『仲間』なんだから・・・」
 そう言って、あたしはブイゼルの前でしゃがんで、ブイゼルを優しく抱きしめた。
「ブ・・・・・・!」
 そんなあたしの行動に、ブイゼルは何かを感じ取った様子だった。
「ブイイイイイッ!!」
 でも、まだ意地を張ってるのか、あたしの腕をほどこうと、あたしの腕の中で暴れ始めた。
「ブイゼル・・・! もう気が済んだでしょ・・・!」
「ブイッ!!」
 あたしのそんな声も聞かないで、ブイゼルは左の二の腕に思い切り噛み付いた。
「・・・っ!」
 左腕に痛みが走る。やっぱり強い力。普通だったら、思わず腕を放しちゃう所。それでも、あたしはブイゼルを放さなかった。
「ブイゼル・・・サトシのポケモンになったからって、あたしはあなたを見捨てたりなんかしないから・・・だから、一緒に帰ろう・・・ダイジョウブ・・・」
「ブ・・・・・・!」
 ギュッと腕に力を込めると、チリンと、すずが鳴った。あたしがそう言うと、ブイゼルは、はっとした様子をして、放心状態になったようにしばらく動かなくなった。この気持ちが、ブイゼルに届きますように・・・! あたしはただ、そう祈った。すると、ブイゼルの噛む力が緩んだのがわかった。そして、ブイゼルはゆっくりと口を二の腕から離した。そして、噛んだ事を謝るように、噛んだ所を優しく舐め始めた。
「ブイゼル・・・!」
 わかってくれたんだ・・・! 気持ちが伝わった! あたしは嬉しくなった。
「ヒカリ!! 危ない!!」
 そんなサトシの叫び声で、あたしは現実に引き戻された。えっ、と思ったその時、あたしの体はまた強い力に押さえつけられた! 見ると、やっぱりラティオスの“サイコキネシス”だった!
(そいつから離れろ!!)
 そんな声がしたと思うと、あたしはまた、思いっきり投げ飛ばされた!
「きゃあっ!!」
 あたしが倒れた場所は、池の岸のすぐ近くだった。もう少し倒れるのが遠くだったら、池に落ちていた所だった。
(これ以上、こいつを惑わせるな・・・!!)
 ラティオスの気迫の表情に、あたしは背筋に寒気が走った。
「させるか!! 相棒、“ダストシュート”!!」
 ゲキさんのベトベトンが、ラティオスに向けて“ダストシュート”を発射! でも、ラティオスはそれを素早くよけた。
(邪魔をするな!!)
 その声と同時に、ラティオスは“ラスターパージ”をベトベトンに向けて発射した! 直撃! そして爆発! 効果は抜群みたい! その一撃で、ベトベトンは完全にノックアウト。
「ちっ、さすがは幻のポケモン、ここまでよく持った方か・・・!」
 唇を噛むゲキさん。
(かくなる上は・・・!!)
 ラティオスは、また視線をあたしに向けた。あたしはポッチャマを呼ぼうとしてたけど、ラティオスの動きの方が早かった。ラティオスの目が光ったのが見えた。
「ああっ・・・!!」
 あたしの体が、また強い力に押さえつけられて、宙に浮いた。そして、思い切り池に向かって投げつけられた!
「きゃあああああっ!!」
「ヒカリ!!」
 みんなの声が聞こえてすぐ、あたしの体は池に落ちた。夜の水の中は暗い。あたしは反射的に、息をこらえていた。すぐに浮かぼうとしたけど、まだ“サイコキネシス”が効いていて、体が動かない! 体がどんどん沈んでいく。すると、暗い水の中に、ラティオスの姿が見えた。暗い水の中で、目が不気味に光っていた。
「!!」
(ここで動けなくして、もがき苦しませてやる!!)
 そんなテレパシーの声が聞こえる。ラティオス、あたしを溺れさせるつもりなの!? そんな事・・・! あたしは体を動かそうとするけど、やっぱり“サイコキネシス”で押さえつけられてるせいで、動かない! 体がどんどん沈んでいく! 息が苦しい・・・!
 そんな時、ラティオスの側を“バブルこうせん”が通り過ぎたのが見えた。姿はかすかにしか見えないけど、あたしはすぐにわかった。ポッチャマだ! ポッチャマは、あたしの方に真っ直ぐ泳いで来る。そうよ、早くこっちに来て! と、あたしが思ったのもつかの間、ラティオスは“サイコキネシス”を緩めないまま、ポッチャマに向けて“ラスターパージ”を発射した! 直撃! 爆発の衝撃がこっちにも伝わってきて、あたしを押し出していく。ポッチャマはあたしからどんどん遠ざかっていった。そんな・・・!
 あたしの体が、とうとう池の底に仰向けで付いた。息が前よりどんどん苦しくなってきた・・・! もうそろそろやばい・・・! ポッチャマ、早く来てよ! そんな願いも空しく、ラティオスはポッチャマに攻撃を続ける。攻撃のせいで、ポッチャマはあたしに近づけない!
 う・・・ぐ・・・もうダメ・・・早く・・・誰でもいいから・・・助けてよ・・・! 水の中だから、そんな事も声に出して叫べない。もうあきらめるしか、ないの・・・? 神様・・・っ! そう思った、その時だった。

 何か、水流みたいなものが、ラティオスに直撃した! そのせいで、あたしを押さえつけていた“サイコキネシス”が緩んで、あたしの体がやっと自由になった。誰なの? 暗くてよく見えない・・・
 うっ! いけない! もう息が・・・! そう思った時にはもう遅かった。とうとうあたしは息を我慢できなくなって、口を開けちゃった。そして、そのまま気を失っちゃった・・・

 バシッ、と誰かに背中を思い切り叩かれた。あたしは、思わず咳き込んだ。目を開けて周りを見るとそこは、いつの間にか池の水面だった。あたしはそこに上を向いて浮いていた。
「ブイ!」
 横から聞き慣れた声が聞こえてきたと思って見ると、そこには首の浮き袋を膨らませて、頭を水面から顔を出してるブイゼルの姿が。
「ブイゼル・・・! あなたが、あたしを助けてくれたの?」
「ブイ!」
 あたしの質問に、ブイゼルははっきりと答えた。その表情は、さっきまでの出来事が嘘のような、いつも見慣れたブイゼルの表情だった。そんなブイゼルの手引きで、あたしは岸に上がる事ができた。
「ヒカリ! 大丈夫か!?」
 みんなが集まって来る。ポッチャマやエイパムの姿も。
「ダイジョウブ。ブイゼルが助けてくれたから。ありがと、ブイゼル」
「ブイ!」
 ブイゼルは、いつものように腕を組んで答えた。そんな喜びもつかの間、ラティオスが池の中から勢いよく飛び出してきた!
(おのれ・・・!! 何故だ!? 何故裏切られた主の許に戻ったのだ!?)
 ラティオスの視線がブイゼルに向いた。
「ブイブイ! ブイブイッ、ブイッ!」
 ブイゼルが、ラティオスに何か言い返した。
(『俺は勘違いしてた。ヒカリは俺を見捨ててなんか、ない!』だと・・・? 奴隷としての立場にまた戻るとでも言うのか!?)
「それは違うぞ、ラティオス!」
 ラティオスの言葉に、ゲキさんが反論する。
「ポケモンバトルというのは、トレーナーとポケモンとの信頼関係があってこそ成り立つものだ。トレーナーを信頼していないポケモンは、トレーナーの言う事は聞いてくれない。ポケモンがトレーナーの指示通りに動いてくれるのも、そのポケモンがトレーナーを信頼しているからだ!」
「そうだ! 確かに、ポケモンを利用しようとする悪い奴らもいるけど、みんなそんな人ばかりじゃない! ポケモントレーナーはみんな、ポケモンを大事にしているんだ!」
 ゲキさんの言葉に、サトシも続いた。
(だが、自らのポケモンを交換した事は、その事と矛盾しているぞ!)
「違うわ!」
 あたしも、みんなに負けてられない。あたしは、ラティオスに向けて主張した。
「あたし達は、ブイゼルやエイパムの事を思って交換したのよ! それに、交換したって、ブイゼルは『パートナー』に変わりはないわ!」
(『パートナー』に変わりはない、だと・・・)
「そうよ! 確かに、もう一緒にバトルができなくなるけど、あたしはようやくわかった、あたし達は離れ離れになる訳じゃない、だから交換したって、ブイゼルとの思い出は無駄になんかならないって! ブイゼルもエイパムも、ずっとあたしやサトシの『パートナー』なんだから!」
「トレーナーが入れ替わったって、俺達は1つなんだ!」
「エイッパ!」
「ブイ!」
 あたし達の声に合わせるように、エイパムがあたしの前に、ブイゼルがサトシの前に出た。エイパムが横目で、あたしを見た。あたしは、もう迷わない。エイパムはサトシとの、ブイゼルはあたしとの絆は、途切れないってわかったから・・・!
「そうよ、エイパムは、あたしだけのポケモンじゃない・・・!」
「そうさ、ブイゼルは、俺だけのポケモンじゃない・・・!」
「だから!!」
 最後の言葉が、サトシと合わさった。
(そんな理屈などっ!!)
 ラティオスが、水しぶきを上げながら、水面をものすごいスピードで飛んで来た! エイパムとブイゼルが身構えた。
「エイパム、“スピードスター”!!」
「エイッパァーッ!!」
 あたしは、思い切り声を出した。エイパムは、向かってくるラティオスに向けて“スピードスター”を発射! 飛んで行く星は、集まって1つの大きな星を作り出して、ラティオスの前に立ちはだかった!
「!?」
 ラティオスはそれを強引に突き破った。でも、大きな星はまた小さな星にばらけて、ラティオスの周りを飛び散った。それに、ラティオスは目がくらんだのがわかった。あたしの思った通り!
「今よサトシ!!」
「ああ!! ブイゼル、“アクアジェット”だ!!」
「ブゥゥゥゥイッ!!」
 その隙は逃さない! ブイゼルが、“アクアジェット”でラティオス目掛けて突撃して行った! 直撃! ラティオスは体勢を崩した。そしてブイゼルはそのまま、池の中に飛び込んだ。体勢を立て直したラティオスは、すかさずブイゼルを追撃する! たちまち、水上バトルが始まった。でも、岸からは遠い。このままじゃエイパムは何もできないけど・・・
「まずいぞ! あの距離じゃエイパムが攻撃できないぞ!」
「ダイジョウブ!!」
 そんなタケシの声に、あたしは自身を持ってそう答えた。あたしには1ついい考えがあったから!
「エイパム、もう1回“スピードスター”!!」
 あたしの指示通り、エイパムはもう一度“スピードスター”を発射した! ラティオスに向かって飛んで行く“スピードスター”。でも、それで直接攻撃しようって訳じゃない。
「それを使って、ラティオスに近づくのよ!!」
 そう、ゲキさんとのバトルで使ったのと同じ、“スピードスター”を足場にする事を利用してラティオスに近づくって戦法! エイパムの身のこなしなら、これができる! その期待通り、エイパムは“スピードスター”をうまく使って、飛び石のようにラティオスに近づいていく! ブイゼルを追いかけるラティオスの横を取った!
「そこよ!! “きあいパンチ”!!」
 もらった! エイパムは尻尾の拳に力を込めて、ラティオスに向かって振った! 不意討ちになると思ったけど、気付かれた! ラティオスは、素早くよけた。
「!?」
 当然、落ちる先には池。いけない! 池に落ちちゃったら・・・!
「ブイゼル、“みずでっぽう”でエイパムを助けるんだ!!」
 とっさにサトシがリリーフ。ブイゼルがエイパムに向けて“みずでっぽう”を発射! 池に落ちそうになったエイパムの体を打ち上げた! ナイス! よし、もう1回! ラティオスがエイパムをマークしている。これじゃ、さっきのようには行かない。だったら!
「エイパム、“かげぶんしん”!!」
 エイパムの体が、いくつにも分裂する。ラティオスを取り囲んだたくさんのエイパムの姿に、ラティオスは戸惑ってる。今だ!
「今よ!! “きあいパンチ”!!」
 エイパムがもう1回“きあいパンチ”! たくさんのエイパムの影がする“きあいパンチ”を、ラティオスは見切れない! 影が消えた瞬間、直撃! 弾き飛ばされたラティオスは、池に落ちそうになったけど、何とか体勢を立て直した。エイパムは、ブイゼルの背中にうまく着地した。
「やるじゃないか、エイパムで『空中戦』をするとは・・・」
 ゲキさんが、そんな事をつぶやいた。
 そんな時、体勢を立て直したラティオスの姿が急に溶け込むように消えた。
「消えた!?」
 やっぱり、ラティオスは姿を消せるんだ! こうなったら、どこから来るかわからない。居場所を見つけられたらいいんだけど・・・!
「ブイゼル、水面に向かって“ソニックブーム”だ!!」
 その答えを出したのはサトシだった。ブイゼルはエイパムを乗せたまま水面を飛び上がった。そして、“ソニックブーム”を真下に発射! 水面に当たって、水しぶきが飛ぶ。その影に、ラティオスの姿が映った!
「ヒカリ!!」
「今ね!!」
 そんなサトシの指示を待っていたように、エイパムは前に飛び出した。あたしは、サトシのしたい事がすぐにわかった。2匹で同時攻撃をかけるんだ!
「ブイゼル、“アクアジェット”!!」
「エイパム、“きあいパンチ”!!」
「ブィィィィィッ!!」
「エイッパァーッ!!」
 ブイゼルは“アクアジェット”、エイパムは“きあいパンチ”で影に飛び込む! 直撃! 姿を隠していたラティオスが姿を見せた。弾き飛ばされたのが見えた。2匹の同時攻撃は手応え充分! あたしが喜んでいた時、エイパムはまたブイゼルの背中に着地した。
「やった!!」
(おのれ・・・この程度で・・・!!)
 でも、ラティオスにはまだ決定打は与えられていない。ラティオスはブイゼルとエイパムに向けて“ラスターパージ”を発射した! 直撃は免れたけど、ブイゼルは体勢を崩しちゃって、エイパムもろとも池に投げ飛ばされた!
「エイパム!!」
「ブイゼル!!」
 あたし達は、思わず声を上げた。ブイゼルは池に落ちたエイパムを助けて、何とか岸に戻ってきた。ラティオスはまだ来いと言ってるかのように、こっちをにらんでいる。そして、こっちに勢いよく飛んで来る! こうなったら・・・!
「エイパム!! ブイゼル!!」
 あたしは、2匹に呼びかけた。エイパムも、ブイゼルも、あたしに顔を向けてコクンとうなずいた。
「エイパム、“きあいパンチ”でブイゼルを思いっ切りラティオスに向けて吹っ飛ばしちゃって!!」
「ヒカリ!?」
 その指示に、みんなが驚いた。みんなは、あたしが何をしようとしているのかわからなかったみたい。確かに、ちょっと無茶かもしれないけど、やるしかない!
「ブイ!!」
 ブイゼルは、いつでも来いって言ってるように、身構えた。
「ヒカリ、どうするつもりなんだ?」
 サトシが、あたしに聞いた。
「エイパムがブイゼルを吹っ飛ばしたら、“アクアジェット”の指示して!」
 あたしは、考えた作戦をサトシに話した。
「・・・そうか! わかった!」
「エイエイエイエイエイ・・・!!」
 その間、エイパムは、尻尾を振り回して拳に勢いをつける。そして・・・!
「パアアアアアアッ!!」
 エイパムは思い切りブイゼルに“きあいパンチ”でブイゼルを思いっ切り殴って吹っ飛ばした! こっちに向かってくるラティオスに向けて、勢いよく飛んで行くブイゼル。
「行け、ブイゼル!! “アクアジェット”!!」
 サトシの声に答えて、ブイゼルは体に水を纏った! でも、それだけじゃない。
「ブゥゥゥゥイッ!!」
 ブイゼルは、自分から体にスピンをかけた! その姿は、水でつくられたドリルのようだった。
「ブイゼル・・・!?」
 あたしは、それに驚いた。これで、パワーが上がるだけじゃない。見ただけで、あたしがブイゼルで見せたかった『力強さ』が伝わってきたんだから! 確かに、ブイゼルは自分からバトルの戦術を考える事はあったけど、これは明らかにコンテストの『魅せ方』から考えてる・・・やっぱり、今までのコンテストの練習は無駄にならなかったんだ!
 ラティオスが気付いた時にはもう手遅れ。水のドリルとなったブイゼルが、ラティオスに正面からぶつかった! 吹っ飛ばされた勢いも加わって、ラティオスを押し返していく! 水のドリルは、その勢いを緩めないままラティオスを斜め上へ打ち上げた! ラティオスが悲鳴を上げる。そして、池へドボンと水しぶきを上げて落ちた!
「やったあ!!」
 勝った! あたしは、思わず声を上げた。ブイゼルが、こっちに戻って来た。
「よくやったぞブイゼル!! エイパムもよくやったぞ!!」
「ブイ!!」
「エイッパ!!」
 サトシも、2匹を喜びの顔で褒めた。
「・・・やったのか?」
 ゲキさんとタケシは、まだ顔から緊張が取れていなかった。すると、ラティオスが落ちた場所から、少しだけ泡が出たと思うと、いきなりザバンとものすごい水しぶきが上がった!
「!!」
 見ると、そこにはまだピンピンしてるラティオスが! こっちをにらんでる!
「そんな・・・!? まだやられてなかったの!?」
「くそっ、まだやる気か!!」
 あたし達の背筋に、また緊張が走る。エイパムとブイゼルも、身構えてラティオスをにらむ。そんな一触即発のにらみ合いが続いて、少し経った時だった。
(・・・フッ、見事だ)
 ラティオスが、目を閉じて少し顔を下げた。その言葉に、みんなは少し驚いた。
(君達の絆は、確かに本物のようだ。完全に僕の負けだよ)
「ラティオス・・・!」
 ラティオスもわかってくれたんだ・・・ちょっと嬉しくなった。
(僕は少し勘違いをしていたよ。人間はポケモンを『奴隷』としてこき使ってるなんて、バカな話だと確信したよ。人間というのは、いい生き物なんだな)
「そりゃ、どうも・・・」
 サトシが、ちょっと照れた表情をして、頭をかいた。
(これからも、そのポケモン達を大事にしていくんだ。だが、もしポケモンをひどい目にあわせるような事があったら、その時はただじゃ済まないぞ・・・!)
「ダイジョウブ!」
 あたしは、自身を持ってそう答えた。
(その答え、本物と受け取った。さらばだ、人間達よ!)
 ラティオスはそう言って、あたし達に背を向けて、飛び去って行った。途中で、姿が夜空に溶け込むように消えて、完全に姿が見えなくなった。
「よかったな、ラティオスもわかってくれて・・・」
 サトシが、そんな事をつぶやいた。
「ええ」
 あたしも、その言葉に相槌をした。
「それにしてもよかったじゃないか、あのバトル。ヒカリもサトシも、エイパムとブイゼルの能力を上手く引き出してたじゃないか」
 タケシが、間に入ってきた。
「ああ。俺もお似合いだと思うぞ、このコンビは」
 ゲキさんも笑みを見せた。
「そうね・・・」
 あたしは、改めてブイゼルに顔を向けた。ブイゼルに一言言っておこうと思って、あたしはブイゼルの前でしゃがんだ。
「ブイゼル、とてもよかったよ、さっきのバトル。これなら、サトシと一緒でもがんばれるはずよ。あたしとは何も成し遂げられなかったけど、他のみんなと一緒に、サトシをシンオウリーグに連れてってあげて。あたしも応援してるから!」
「ブイ!」
 ブイゼルは、はっきりとうなずいた。
「エイパム、改めてヒカリをよろしくな!」
「エイッパ!」
 サトシもエイパムにそう一言言って、エイパムははっきりとうなずいた。そして、エイパムは立ち上がったあたしの背中に昇ってきた。あたしは、サトシの方に体を向き直した。サトシも、こっちに体を向き直す。
「サトシ、改めて言うけど、ブイゼルをお願いね!」
「ああ、そっちもエイパムを頼むぜ!」
 あたし達は、はっきりとそう言葉を交換し合った。これで、ようやくエイパムがあたしのちゃんとしたポケモンになれたと、確信した。
「これで、今度こそ交換成立って訳だな」
 タケシが笑みを浮かべてつぶやいた。
「さあ、交換成立した所で、俺達も戻ろう。交換した2匹の歓迎会と行こうじゃないか!」
 ゲキさんが、そんな提案をした。
「いいわねそれ!」
「そういえば、まだ飯食ってなかったよな〜!」
 あたし達は、思わず笑みを浮かべた。そして、早速あたし達は元来た道を戻って行った。

 * * *

 交換して『親』が変わっても、交換したポケモンとはずっと『パートナー』。『ポケモンとの絆を大事にする町』オーブタウンで、あたしはそれを確かめる事ができた。
 そして、あたし達の旅は、まだまだ続く。続くったら、続く・・・・・・


STORY06:THE END

[129] 次回予告
フリッカー - 2007年12月14日 (金) 18時07分

 あたし達が出会ったのは、レナっていう女の子と、そのポケモンの『シナモン』って名前のピカチュウ。
 このピカチュウは、ちょっと変わったピカチュウだった。

「白い色のピカチュウなんていたんだ・・・」
「そ、そうなのよ! 『十人十色』って言葉もあるでしょ? アハハ・・・」
 レナ、何だか何か隠してるような気が・・・?

 でも、シナモンはただの白いピカチュウじゃなかった!

「こいつが世にも珍しいポケモンだと聞いて、いただきに来たのだ!」
「ば・・・ばれちゃった・・・!」

 シナモンの正体って一体何なの!?

NEXT STORY:純白の宿命

「その白いピカチュウは、この私がいただく・・・」

 COMING SOON・・・



Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】楽天市場にて 母の日向けギフト値引きクーポン配布中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板