モダンロマンスリクエストシリーズ。『緑の瞳』 キャサリーン・ウッディウィス作 株式会社サンリオ
■あらすじ■
時は、1830年。舞台はアメリカ・ミシシッピー河付近。
一隻の船がミシシッピー河を**航海していた。船主のアシュトンとリアリンは新婚旅行を終え、自宅に帰る途中だった。ところがそこに海賊が襲ってきて。アシュトンは剣で刺され、リアリンは傾いた船からミシシッピー河に落ちてしまう。水に沈んでいく彼女が見た光景は海賊に刺されて絶体絶命の夫の姿だった。彼女の意識はそこで途切れた。
しかし、あの修羅場をなんとかしのぎアシュトンは生きてた。彼は妻を失った悲しみを仕事にぶつけ、**航海で沈みかかった船も復活し仕事は機動にのっていた。彼の仕事は船で積荷を積んでミシシッピー河を下るという内容だった。仕事に区切りがつき家に向かう途中で彼の馬車の前に馬が飛び出してきた。突然の出来事で馬上の人を馬車ではねてしまい意識不明の重態にしてしまった。馬車にはねとばさせたその人物は死んだ妻に瓜二つの女性だった。
『こんな偶然があっていいのだろうか?』
目を覚ました女性に歩み寄るが、彼女は落馬の時に頭を強打したショックで記憶喪失になっていた。自分の髪の色さえも忘れているというひどい状態だったが時間とともに体は回復していった。彼は妻に記憶を取り戻してほしい一心で働きかけるが、記憶喪失の妻から見た自分はただの見知らぬ人なので、彼は彼女の恐怖心を大きくしないように「合意のもとでなければベットをともにしない」と約束する。
強い自制心で彼女を我慢するアシュトン。そんな彼の姿に打たれリアリンは少しずつ心を開いていく。そして彼女の中では自分がリアリンであればいいという願望が生まれる。もし自分が別人なら記憶を取り戻した時に彼を失ってしまう。彼が愛しているのは自分がリアリンだからだ。とリアリンも彼へと向かう気持ちを自制していた。しかし、惹かれあうふたりにとうとうは「リアリンじゃなくてもいい」と一線を越えてしまう。新婚旅行に出かけたふたりの前にひとりの男が現われた。
数日後、そのマルコムという男が彼らの結婚披露宴に現われ「その女はリアリンの双子の姉、レノーラで、自分はレノーラの夫だ」と告げる。記憶のないリアリンはふたりの男性から「あなたは私の妻だ」と言い寄られ困惑する。答えは自分の中にある。彼女は父親とともに自分探しの旅に出た。
徐々に戻る記憶の断片。しかし繋ぎ合わせるものがみつからない。そんな時、彼女は半ば幽閉状態の屋敷の中から一枚の絵を発見した。初めてみるその初老の紳士の絵に心動かされて気になってしかたがない。
彼女を追いかけてやってきたアシュトンとマルコムは事あるごとに対立を繰り返した。どんな状況になっても彼女はアシュトンを愛していた。自分の記憶が戻りリアリンと別人だったとしてもアシュトンの元に戻ろうと決意していた。
しかし、マルコムは執拗に彼女を追い詰める。昔屋敷にいた召使は皆入れ替えられ、彼女の過去を知るものはいない。ふらりと町へ出たリアリンは自分がマルコムと結婚する前は未亡人だったことを知った。
なにかにつけてリアリンにサインを迫るマルコムと自分の父親。
取り戻しかけた記憶の断片と、矛盾する出来事。
それらはすべて2年前の海賊襲撃に繋がっていた。
■感想■
『鳩と狼』が活劇風の恋愛小説ならば、『緑の瞳』はサスペンス恋愛小説でした。後半の活劇風の部分はスピード感があっておおいに盛り上がりました。話のテンポも良く後半に向かって絡まった糸がほぐれていくような爽快感も味わえました。
廃盤になっているなんて非常に惜しい。
作者の作品の中ではかなり完成度が高いです。どこで読み手の気をひきつけるか?を充分に計算されつくした作品です。
ああ、この作者の小説。出版社で復活しないかしら!