[118]K'SARS
「落ち着いた?」 「は、はい…」 みんなが去ってから少し時間が過ぎた。 最初はあたふたしていたモモも、ずいぶんと落ち着きを取り戻し、僕の差し出したミルクココアを黙って飲んでいた。 「そういえば、どうしてモモだけ買い物に行っていたの?」 「お姉ちゃんたちに頼まれたんです。今は手が離せないから、モモ1人で買い物に行ってちょうだいって」 「それだけ?」 「はい。それだけです」 う〜ん、謎だ。 みんながモモを仲間外れにするわけがないから、絶対に何か理由があるんだろうけど。 でもまあ、僕もモモとは1度じっくりと過ごしてみたいと思っていたから、ちょうどいいかもな。 よし、みんながモモを置いて行ったことは、もう考えないことにしようっと。 そうと決まれば。 「なあ、モモ」 「は、はい。なんですか?」 「…いや、なんでもないよ」 「そ、そうですか…」 い、いかん。 どうして、こんなときに僕は緊張なんてしているんだーー!! そりゃ、みんなよりも一緒にいた時間は少ないかもしれないけどさ。 だからって、何故にこんなに緊張しているんだ、僕は。 そうだ、こういうときこそ、深呼吸を。 すーはー、すーはー。 うん、落ち着いてきたぞ。 よし、今度こそ。 「…モモ」 「はい、ご主人様」 「…ご飯、何食べたい?」 だぁぁぁぁぁ、何を言っているんだ、僕はぁぁぁ!! クルミにさえ、そんなこと言わないのによぉぉぉぉぉ。 (クルミは、ご主人様にそんなこと言われたら、ものすごく嬉しいの〜) …今、何か聞こえたような。 しかも、思いっきりリアルに。 って、それは置いといて。 「えっと、その…」 あかん、いきなりそんなこと言ったものだから、モモが困っているじゃないか。 そういうときこそ。 ちらっ。 僕はこっそりと、財布の中身を見る。 残金は…、うん、なんとかある。 それと確か、大家さんからもらった食事券もあったな。 よし。 「なあ、モモ」 「…えっ、は、はい」 「外食でもしようか」 「えっ? で、でも、タマミお姉ちゃんが、『今月も赤字ですから、無駄なお金は使わないように』って」 「大丈夫。僕のお小遣いから出すから、家の食費に影響しないよ」 「で、でも…」 う〜ん、やっぱり遠慮しちゃうな。 この辺りは、ペットの頃とちっとも変わっていないかも。 「…じゃあさ、散歩がてらに出かけようよ」 「お散歩、ですか?」 「うん。モモと2人っきりで、歩きたいんだよ。ダメかな?」 「だ、ダメじゃないです。も、モモは、すごく、すごく嬉しいです」 本当に嬉しかったのか、モモは顔を真っ赤にしていた。 そうと決まれば膳は急げって感じで、早速外服に着替えて、僕たちは家を出た。 ちょうど太陽が沈む頃で、僕たちの体が赤く染まる。 「それじゃ、行こうか。モモ」 「はい!」 僕はモモの手を取って、夕焼けに染まる町へと繰り出した。
<続>
後書き♪
短いな。 「前の話に比べると少ないですよね」 まあ、こういうこともあるわな。 だから、この後書きも短く終わらせようか。 「手抜きはいけませんよ、ご主人様」 だって、書くこと無いんだもん。 「…手抜きです」 あはは、そう堅い事を言わないの。 ということで、今回はこの辺で。 次回をお楽しみに〜。 K'SARSと、 「ハトのサキミでした〜」
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2003年09月01日 (月) 10時51分
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