[117]K'SARS
「突然ですが、今日はご主人様にお別れをいわなければなりません」 「……はあ?」 午後のうららかな休日の日。 のほほんと過ごしていた僕の目の前で、みんなが勢ぞろいした。 それも、めいどの世界の服を着て。 なんだろうと思って僕がみんなの方を向くと、いきなりランが本当に突然、そんなことを言った。 あっけにとられた僕は、しばらく反応できなかった。 「ど、どどどど、どうしてなんだい?」 「そ、それは…」 「ユキさん、いえ、メガミ様の言いつけなのですわ」 ランがどもったのを引きついたのは、アユミ。 「めいどの世界では、メガミ様の言いつけは絶対なのです。そのメガミ様が、わたくしたちに帰還命令を出したのなら、私たちはそれに従うまでなのです」 さらっと、アユミは言った。 「ですから、ランたちはめいどの世界に戻らなきゃなりません」 「…やっぱり、こんなのヤダ!」 「ミカちゃん!」 周りの包み込んでいる雰囲気に耐えきれなくなったのか、ミカが僕に抱き着いてきた。 「ミカ…」 「だって、こんなの納得できない! 大体、ユキが…がは!」 何かを言おうとしたミカに、どこからか飛んできたフライパンが顔面に直撃した。 「み、ミカ!?」 「全く、我侭なんだから」 完全に気を失っているミカをアユミが強引に僕から引き離し、みんなの輪に放り投げる。 「えっと…」 「あっ、気にしないでね、ご主人様」 「そうなの。気にしないの〜」 ツバサとクルミがフォローするかのように、混乱している僕に促す。 おかしい。 絶対に、何かがおかしい。 いくら僕でも、こうも露骨にされたんじゃ何かあると思う。 とはいえ、どうせみんなに何か言ってもごまかされるしな。 とにかく、ここは流れにまかせてみよう。 「…それで、いつからなんだい?」 「それが、今すぐなのです」 「そ、そうか…」 「あっ、そろそろ時間です、ご主人様」 ランが言ったのと同時に、僕の携帯が鳴る。 着信音とは違う、みんなが現れたときになったあの音楽。 「では、ご主人様。しばらくのお別れです」 「…帰ってくるよね?」 「もちろんですわ」 「私たちは、ご主人様とずっと一緒にいる、運命なんだから」 「そうなのれす。ミドリさん、絶対に帰ってくるのれす」 「ご主人様、家計のやりくりはちゃんとしてくださいね」 「ナナが帰ってくるまで、待っててね」 「ルルたんもだお」 「ご主人様〜〜〜〜〜」 1人だけ悲痛な声を出して、みんなは帰っていった。 ……。 ……。 ……。 ……。 ん? 僕はここで気がつく。 1人だけ、あの輪にいない子がいた。 ユキさんは、メガミ様としてめいどの世界にいるから、当然としてだ。 アユミ、ミカ、ラン、ツバサ、クルミ、アカネ、ミドリ、タマミ、ナナ、ルルがあの場にいた。 ということは、消去法で消していくと……。 「…モモがいなかったよな」 そう、モモだけがいなかったのだ。 これが何を意味するのかがよく分からなかったが、少なくともモモだけは僕のそばにいてくれるのだけは理解した。 んで、そのモモなのだが…。 「ただいまです」 まるでタイミングを見計らったように、モモが帰ってきた。 「おかえり、モモ」 「あっ、ご主人様。た、ただいまです…」 手にいっぱいの買い物袋を持っていたから、僕はその半分を受け取り、冷蔵庫の中へと入れる。 「あれ? お姉ちゃんたちは…」 リビングに戻ったモモは、みんながいなくなっていたことに気づいた。 僕はさっきまでのいきさつをモモに話した。 「も、モモは聞いていません」 「やっぱりか…」 案の定、そうだった。 しかし、もし聞いていたとしても、モモだけがここに残る事になるだろうと思う。 根拠はないけど、みんなの様子だと、多分そうかなと。 一方、モモは。 「ど、どうしよう…」 すごくあたふたしていた。 まあ、いきなり1人っきりにされたら、そりゃ動揺するだろうな。 う〜ん、ここは一旦、モモを落ち着かせるほうがいいな。 「モモ。落ち着いて、落ち着いて」 「は、はい!」 「ほら、す〜は〜、す〜は〜って」 「す〜は〜、す〜は〜」 深呼吸させると、幾分かは落ち着いてくれた。 でも、それも表面化だけで、内心はまだ動揺しているのだろう。 さて、これからどうしようものかな。
一方、その頃。 「やっぱり、あたふたしていますね、モモちゃん」 「まあ、これも試練と言う事で、慣れてもらう他にないですね」 「でも、どうしてモモだけなの?」 「そうよ。ご主人様だって、立派な男性なのよ。本能を剥き出しにして、モモに…。やっぱり、帰る!」 「無駄ですわ。あなた1人の力じゃ、現世の門は開きません事よ」 「でも、私もそれが引っかかるな」 「ほえ、何が引っかかるのれすか?」 「つまり、どうしてモモちゃんだけがご主人様の元にいるのかということです」 「まあ、それはおいおい話しますよ」 「ナナ姉たん、何のお話しか、わかるお?」 「ぜ〜んぜん、わかんない」 「むしゃむしゃ、クルミも全くさっぱりなの〜」 めいどの世界で、現世の様子をウォッチングしていたとさ。 (↑の会話は人物は、みなさんで判断してください)
<続>
後書き♪
おし、わが人生初の連載投稿SSの初話しが出来たぜよ。 「よかったですね、ご主人様」 うん? きみは誰? 「あっ、お久しぶりです。私、かつてあなた様にお世話になった、ハトのサキミです」 …サキミ? ハトの、サキミ…。 「はい。サキミです、ご主人様」 そっか。帰ってきてくれたんだ。 「ただいまです。ご主人様」 じゃあ、今からサキミは俺のアシスタントをしてくれな。 「はい!!」 さてと、今回はこの辺にしようか。 ではでは、次回でまた会いましょう。 K'SARSと。 「ハトのサキミでした〜」
P.S. 感想などなど随時受け付けていますよ
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2003年09月01日 (月) 10時47分
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