[94]ワンダバ・ダン
いつもと変わらない夕食時。ジュンの作ってくれた料理を 味わいながら過ごす、小さな至福のひと時。 「最近、みそ汁がおいしくなったなぁ。ジュン、 料理の腕また上がったな。」 ジュン「そう?どうもありがとう。 ご主人様にそう言ってもらえて幸せだよ。ところで、 ご主人様にちょっとお願いがあるんだけど・・・。」 「ん!?お願いって何?」 ジュン「今夜ね、ご主人様と一緒に寝させて。」 ブ ハ ッ ! ジュンの大胆なお願いに、口に含んでいたみそ汁を 思わず豪快に吐き出す僕。 ジュン「ご、ご主人様、大丈夫?」 「ゲホ、オホッ、一体どういう風の吹き回しなんだ!?」 ジュン「いや、今日ね、あたしの布団だけを干してたん だけど、ほら、今日突然の夕立ちがあったでしょ? それで布団がびしょびしょになっちゃって・・・。」 「それで今夜は一緒に寝させて欲しい、と。」 ジュン「うん。あ、でももしご主人様が嫌だったら、あたし 今夜は徹夜して過ごそうかと思ってるんだけど・・・。」 「そっか。まあそういう事なら今日は一緒に寝る?」 ジュン「ホントに!? やったぁ!! (ご主人様と一緒に寝れる!)」 僕がジュンのお願いを引き受けると、 彼女はすごく嬉しそうに振る舞う。 「ん!?なんでそんなに嬉しそうなの?」 ジュン「え!?いや、徹夜するにもやる事に困るから、 寝れるようになって良かったなぁ・・・と。」 嬉しそうにしてる理由がごまかしてるように見えたのは 気のせいかな?
やがて時間が流れ、人も街も一時の眠りにつく夜。 僕は寝るための準備を終え、寝床へと向かう。 すると僕の布団はすでに敷かれていて、 その中にはジュンが布団をかぶってもう横たわっていた。 ジュン「あ、布団の中ばっちし暖めておいたから。 さ、寝よ、ご主人様。」 僕はジュンのめくり上げた布団の中に入り、 彼女の隣に横たわる。シングルの布団に2人で寝てるので さすがにせまく感じるが、すぐ隣で寝てるジュンの感触が 全身で感じられて、なんだか心地よい気分だった。 ジュン「すごくあったかいなぁ・・・。 ご主人様の感触や体温が体の芯まで伝わってきて・・・。 ねぇ、もっと寄り添ってもいい?」 そう言って体を僕の方に近づけてくるジュン。 ガラにもなく甘えてくるようにも見える。 「え?あ、ああ・・・。そういえば、 昔も今夜と同じような事があったなぁ。」 ジュン「えっ!?なになに。前もこんなことがあったの? 相手は誰?教えてよ〜。」 妙に気がかりそうに問い詰めてくるジュン。 「昔、ジュンがいた乗馬クラブをやってた親戚の所に お泊まりした事があってね。夜寝る時、そこのお姉さんに 添い寝してもらった事があったんだ。」 ジュン「それって、あたしのオリジナルの人じゃない!」 「そうか、ジュンのその姿って、あのお姉さんが モデルになってたんだね。そう、この辺は夜は結構冷える から一緒に寝ましょ、って言われて。それで布団から はみ出ないように、って僕を抱きしめてくれてた。 あの時のお姉さんの感触が柔らかくて、暖かくて、 風呂上がりの石鹸の匂いがしてね・・・。 すごく気持ち良く眠れたな。」 ジュン「そうか・・・。そういう事なら あたしも負けてられないな。」 「えっ!?」 ジュンはそうつぶやくと、突然僕の方に体をぴったりと 寄り添い、僕の体をギュッと抱きしめてきた。 「ちょ、ちょっと、ジュン!?」 ジュン「ご主人様が布団からはみ出たりしないように、 あたしがばっちし抱きしめててあげる。」 「な、なんか照れるな・・・。でもこうしてると、 ジュンのぬくもりが体いっぱいに伝わってくる。 気持ち良く眠れそうだな。あの時みたいに・・・。」 ジュン「もう、照れないでよ。あの人の時みたいに、 いや、それ以上のぬくもりを感じて欲しいな。 (あたしのご主人様への想いも・・・ね。) じゃご主人様、おやすみなさい・・・。」 こうして僕とジュンは、お互いの感触、 そしてお互いのぬくもりを全身で感じ合いながら、 しばしの眠りについていった・・・。
そしてまた時間が流れ、朝日が昇り、 辺りがすっかり明るくなった朝。 ジュン「ん、んん・・・。すっごく良く眠れたなぁ。って、 もうこんな時間!?しまった、寝過ごしちゃったぁ。」 枕元にある時計を見てビックリするジュン。 ジュン「ごめんなさい、ご主人様。大急ぎで朝ご飯の 準備を・・・て、あれ?」 ジュンは慌てて朝食の準備をしようと飛び起きるが、 テーブルの上にはすでにトーストやベーコンエッグ、 サラダ、牛乳などが並べられていた。 「よっ!おはよう、ジュン。よく眠れたかい? あ、ちょうど朝飯の準備が終わった所だから。」 ジュン「うん、おかげさまでとっても。 でもホントごめんなさい!朝ご飯の準備しなきゃ いけないのに、寝過ごしちゃって・・・。」 「気にしない気にしない。昨夜は僕もグッスリ眠れたからね。 おかげで目覚めが良くって。それにジュンがとても気持ち 良さそうに寝てたから、なんか起こすの悪くって。」 ジュン「そんな気兼ねしなくても・・・。でもホントに 気持ち良かったなぁ。ご主人様があたしを全身で 包み込んで、心も体も癒してくれるような感じがして。 それで・・・ね。」 「そうか、それはよかったなぁ。僕も昨夜はなんか 心が休まるっていうか、安心感があったなぁ。 あ、もし良かったら、」 僕・ジュン「これからも一緒に寝ない?」 ジュン「えっ!?」 「あれ?」 僕とジュンとで、全く同じタイミングで全く同じ言葉が 出てしまった。 「お互い考えてる事が一緒とはね・・・。」 ジュン「ホント。うふふ・・・。でもご主人様も 同じ事を思ってたなんて、あたし嬉しいよ。 昨日思い切ってお願いして良かった♪」 僕とジュンはお互い微笑み合いながら朝食をとる。
ジュン(あたしとご主人様、お互いのぬくもりを 間近で感じ合いたい。末永く、ずっと・・・!) 終
メール
2003年06月29日 (日) 23時46分
|