綾人達の住む街を山の頂上から見下ろす2人の男がいた。
「――ここか、お前と同じ“力”を秘める者が居る町は・・・」
「・・・そうだ。そいつと俺が出会う時、力は第1の解放へと歩む。
行くぞッ!!――」
―綾人家―
「ねぇ〜綾人〜」
「ん〜?」
綾人とアルトは真夏の残暑には耐えられず、ここ数日家に
ずっと篭っていた。
扇風機が首を回し、冷ややかな風を交互にあおっている。
「カブト虫・・・欲しいなぁ」
「じゃあ、外行けば?」
「一人じゃイヤだよ」
「僕、暑いのダメなんだ」
「昨日、僕がずっと楽しみにおいておいたケーキ
食べたじゃん・・・」
「・・・子供のクセに。人を強請る気?」
「あのケーキ・・・人気でなかなか手に入らない
んだよなぁ〜・・・食べたかったなぁ〜・・・
アルティメットイチゴエボリューションX・・・」
「・・・・・・」
――公園:裏山――
「うぅ・・・暑い。いや、熱い・・・」
「ホラッ!だらしないなぁ、もう!」
アルトが綾人のズボンを引っ張り無理やり山へと
上らせた。
綾人は異常なまでに暑い日の光に既に滅入っている。
「むむぅ・・・見つかんない!」
「やっぱ。居ないんだよ〜帰ろうよ〜」
カブト虫捜索から2時間半。
セミしか見つからない現状に、ダルさを感じ
いい加減諦めて帰宅を考え出した。
木の陰で陽が直接当たらないにしても、体中が
汗まみれだ。
「――見つけたぜ」
突如、目の前に現れたのは紺色のマントを羽織った
黒髪の子供と銀髪のボウズ頭の少年だった。
「えっ・・・?」
「ガルシア、本は?」
「・・・光っている。新しい術も出ている」
綾人はガルシアという少年が本を持っていることにも
驚いたが、カバンの中が強く光っていることの方が驚きだった。
あの2人が出てきた瞬間、突然だったからだ。
綾人はカバンから本を取り出し、ページを捲った。
「あ、新しい・・・術だ・・・けど――」
そこには確かに術が書かれていた。
しかし、今までならば“第Xの術”という番号の文書
のようなものが前に書かれていた。今回はそれが無い。
「・・・今までの術とは違うのか?」
「フン、お前だったんだな・・・一族の――」
黒髪の少年はいきなり、飛び掛りアルトを
力いっぱい殴り飛ばした。
「さぁ、お前の実力!試させてもらうッ」