投稿日:2015年03月12日 (木) 04時31分
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鳥取県御国言葉ノ酒 中部
御国言葉ノ酒とは何か? ノ格の名詞と名詞との組み合わせは多義で、理解が難しい。御国言葉は方言のことだから、方言の酒? 鳥取県酒造組合が企画した、鳥取県の旧国名、因幡・伯耆の言葉を名前に付けた地酒である。地酒を愛する鳥取県民応援団を「鳥取飯酒」(藩主に掛けている)と称し、第3金曜日を地酒で乾杯する「三金交代」(参勤交代に掛けている)としゃれている。ポスターに「がいに旨い『鳥取の酒』を、まんぐるじゅうで飲んでごしないな。」と書いてある。「とっても美味しい『純米酒』を周りの人みんなで飲みませんか。」という意味だ。 鳥取県を東部(因幡国)の千代(せんだい)藩、中部(伯耆国の東部)の天神藩、西部(伯耆国の西部)の日野藩に分け、それぞれの藩で造られる地酒にお国言葉で名前を付けた。「がいに」は西部、「まんぐるじゅう」は東部、「ごしないな」は中部の言葉としてある。 選りすぐりの鳥取県方言が銘柄の名前になっていると思われる。(以上、既出) 中部の天神藩は7銘柄ある。「すいたやに」「たばこしょいな」「きょーてー」「なんだいや」「よからぁで」「かっさま」「ごしないな」。これらの名称の語をすべて筆者は知っている。やはり生まれてから19年間過ごした土地だけのことはある。 「すいたやに」(高低低高低)(好いたように、好きなように)は「おまいのすいたやにせいや」(お前の好きなようにしろ)と使う。「や」は「やう(様)」の開音の短呼形である。「やあ」と伸ばすこともある。 「たばこしょいな」(低低低高低低)(一休みしようよ)。「な」は「や」にもなる。「なんだいや」(低低高低低)は主に男性が使用し、年配女性も使うことがあると思うが、若い女性は使わないのではないか。少し乱暴な響きがある。相手を咎めたり、出来した事態について驚きの気持ちを表す。女性なら「なんだいな」と丁寧に表現する。あるいは「なにい」(低高低)と言うか。助詞の「な」と「や」はじっくり考察してみる必要がある。 「きょーてー」(高高高低)これは古語の「気疎(けうと)し」に由来すると聞いている。「きょーとい」とも言う。 「よからぁで」(低低高低低)は「よいだろう」という意味で「良からう」(=良かろう)に助詞の「で」が付いたもの。(この「で」を説明するのはなかなか難しい) 「かっさま」(低低低高)は「いかさま」が語源ではないかと考えているが断言はできない。驚いたりあきれたりしたときに発する感動詞である。 「ごしないな」(低低高低低)は授受動詞(他者が自分にくれる動作を表す)「ごす」の敬語形「ごしなる」の命令形に働きかけの助詞「な」が付いたもの。「ないな」は動詞の連用形に付いて、勧誘、催促、命令、依頼などを表す。「食べないな」は口調によって勧誘になったり催促になったりする。 以上は母方言だが日常的な使用から半世紀近く離れているので実感が薄れている。実感を取り戻せるだろうか。 (2015年3月12日) |
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