投稿日:2015年01月22日 (木) 04時50分
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孫育
知育、徳育、体育、美育、愛育、生育、成育、共育、教育、療育、養育、食育、飼育、慈育、発育、肥育、扶育、傅育、覆育、撫育、保育、訓育、薫育。後項要素が「育」となる熟語はほとんど音読みである。 そこへ、新たに「孫育」という語が加わった。音読みで「そんいく」とはならない。「まごいく」と読む。孫を育てることである。漢字を使った熟語の構成の観点からすると、目的語と他動詞が一語になるとき、「読書」(書を読む)のように他動詞+目的語名詞という形式をとるものが多い。漢語が基になっているのである。しかし、「孫育」は訓読みと音読みが合わさった湯桶読みとなっており、かつ、目的語が前に来て動詞があとに来るという、漢語の決まりには合わない、日本語の構文の語順を反映している。 「育児」にならって「育孫」として「いくそん」なる語を新しく作ることも、理屈の上では可能である。しかし、「いくそん」と耳で聞いて孫を育てるという意味を連想するのはかなり難しい。「まごいく」なら、「まご」をどうにかするのだろうという当たりをつけることができる。 ところで、わざわざ「孫育」という語を作らなくても、「孫育て」という語がある。公益社団法人日本助産師会が主催する「楽しい子育て・孫育て講座」というものがあり、NPO 法人孫育て・ニッポンという団体もある。従来の子育ての主体(親)と対象(子)が変わり、祖父母が孫を育てるという事態が顕著になってきているようだ。 個人的には「孫育」より「孫育て」のほうが、用語の上では素直でいいと思っている。しかし、どちらの用語もまだ頻繁に口をついて出てくるようにはなっていないと感じられる。どちらが定着するのだろうか。 (2015年1月22日) |
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