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名前 |
MUTUMI
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題名 |
85 |
内容 |
だからこそ許した。特殊部隊の介入を……。
そこはぽかぽかとした心地よい空間だった。何時の間にか外の天気は、雨を通り越し雷雨となっている。だがこの部屋には、雷の音も滝のように地面を叩く雨の音も響かない。穏やかで静かな時が流れていた。 「ん」 部屋の隅に置かれたベットの上で眠っていた女性が、微かに身じろぐ。柔らかな毛布がもぞりと動いた。シーツの上を流れていた髪が、しんなりと揺れる。 「んん……」 半覚醒状態の女性の耳に、微かな声が聞こえて来る。若い二人の男の声だった。ボソボソと話しているが、口調は何やら深刻そうだ。 「先程正式に連絡がありました。ネロの確保に失敗したと」 「……あー、やっぱし」 「それから本格的な合同捜査の提案も」 「……とうとう腹を括ったのか?」 「でしょうね。流石に尻に火がついたんでしょう。まあ、俺は最初から無理だと思ってましたが」 「うわ。酷いなあ」 「的確な評価と言って下さい」 「悪かったな、過大な評価で」 声が微かにぶすくれた。 「……まあともかく、こうなったからには急いで合流しましょう」 「わかった」 その返事を最後に静かな沈黙が落ちた。毛布にくるまった女性の瞼がピクリと動く。 |
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[109] 2005/11/16/(Wed) 12:54:30 |
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