このような時間に書き込みとは一体何かと思われそうですが、わたくし前々からこちらバーの奇譚の愛読者でありました一人です。
わたくし普段からなにかとチキンでありまして、いくら好きなサイト様であろうがなんであろうがウェブ拍手からのメッセージも送れないような体たらくでありますが、今回は私的に不思議な体験を致しましたのでそれを明かさせて頂こうと思い書き込み致しました次第です。もちろん、前々からお気に入りのバーでしたから一度書き込んでみたかったというのもあるのですが。
不思議はつい昨日に起こりました。わたくしはもともと夜行性の性質で、なかなか夜に眠り朝に目覚めるという当たり前のことができません。毎回昼夜を逆転させては規則正しい生活を旨とせざるをえない学生ですので苦しんでおります。そしてつい昨日も私は夜半堪えがたい腹痛を抱きまして、それを鎮まらせてやっと一息ついてネットに勤しんでおりました。夜中にこそこそと暗い部屋でネットしてしまうのが癖なのです。そして部屋の闇が恐ろしい癖に、そうした闇の中にいると決まって闇の中に何かいるのではないか、そう勘ぐる気を引き寄せるような話を読みたくなってしまうのです。早速、こちらに来させて頂きひとり百物語を何十夜と見ておりました。
そして今書き込んでおりますような時刻を迎える頃、やっとわたくしは眠りにつこうとパソコンの画面を閉じ眠ったのです。眠って早速、夢を見ました。わたくしは夢の中でも変わらずわたくしでありました。自室にひとり座っております。気付くと、眼前には猫がいます。どのような猫かと言いますと、そう百物語に登場した猫でございました。執着を舐め取る猫。黒い猫。わたくしは猫と話し、わたくしがよく覗かせて頂く百物語サイト様の百物語に登場した猫であることを猫に話しました。ややこしくてすみません。夢の中のわたくしは恐れていました。なにをかと申しますと、今目の前にいるのは電子世界で見ました百物語に登場する猫。夢の中のわたくしは夢を夢と気付いていなかったようで、猫に不安げに恐れを話しました。
見てきました百物語には当然、百物語ですから空恐ろしいものもあったのです。今その物語の中に登場した猫が実体化し目の前にいる。そうであるのならば百物語にありました恐ろしい話が今から次々と実現するのではないか、そして主人公は他ならぬ、わたくしなのではないかと。
猫はわたくしに尋ねてきました。お前が見たその百物語にはどのような空恐ろしい話があったのかと。
夢の中のわたくしは少々変でした。その問いに対し、わたくしは必死にワリワリとその兄オリオリの名を思い出そうと、二人の母を思い出そうと頭を回転させました。
なぜここで兄が弟より先に生まれてはいけないことの物語なのかと。「コワイ」マークも付いていないワリワリとオリオリの物語なのかと。恐ろしい話なら他にふさわしいものが山とあったろうに、なぜかわたくしはワリワリ兄弟の物語に脳味噌を占領されておりました。
実を言いますと、夢から覚めた今でもわたくしはワリワリ兄弟の物語に恐れを抱いているのです。不思議なことに。
その後夢の詳しい内容は思い出せず、いつの間にか執着を舐め取る猫は去りわたくしはどこかの国の子供として生きておりました。夏休みを過ごしておりました。見知らぬいとこの姉のような人がおりその人は最後にわたくしの懐中時計やらオパールの指輪を奪っていってフランス語の古道具店を開きました。私の元に残りましたのは、納戸を漁って手に入れました古い黄水晶の首飾りだけ。なんとも悲しい、虚しい、わびしい気持ちになって夢から覚めました。
ちなみに夢の中の彼女がわたくしから奪い去っていった品、そして最後に残りました首飾りはすべて現実にわたくしの手元にあるものたちです。
不思議な話というのはこれだけです。全体なんとも不思議ではありませんが、ただ夢の中に百物語を連れていったそれだけのことなのですが、わたくしは目が覚めてからなんとも不思議な気分になりました。
くだらないことをつらつらと書き込んでしまい、なんとなく申し訳ない気持ちであります。恐らく夢ではない、本当の不思議の話を私は他に数個、持っているのですがわざわざなにゆえこんなことを。
ただ、特に不思議ではないことですのにわたくしは奇妙にそれを不思議であると思い込んでいるのが不思議であります。ご機会がありましたら、わたくしの持っております本当の不思議な話をまたここで告白させていただけましたらと。
以上、夜更かし学生の長々しい書き込み、お目汚しを失礼致しました。