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名前 |
田中洌
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題名 |
「ああ、またいくさか」(ゲーテ『ファウスト』) |
内容 |
テポドン2、ロドン、スカットミサイルとたてつづけに打ち上げられるたびに、まるで蜂の巣をつついたような騒ぎだ。経済制裁では物足りない。軍事制裁で根こそぎ震えあがらせちまえ。やっちまえ。自由の、民主主義の、権利の、平和の、糞のと口ばっかり達者な弱虫どもは、すっこんでろ。女たちは、突然勇ましくなった男たちに「まあ、かっこいい」と子宮をわなわなさせる。勇壮な、大言壮語は、不満にくすぶる人びとのあいだに、次々へと拡散し、腕によりを入れた勇猛果敢の競いあいだ。 新聞もTVも商売繁盛、笑いがとまらない仕掛けだ。そうなれば、政府は、なにもまやかしを考え出して、人びとをあおり立てる必要はない。冷静な顔をして火消し役を買って出ればすむ。 生活保護を取りあげようと、年金生活者を姥捨て山に放り込もうと、文無しから人頭税をむしり取ろうと、いまわしい法律を何百つくろうとも、もう、文句のでるけはいはどこにもないのだ。 ああ。またいくさか。 ゲーテのごとき知識人は、だまりとおすか、だんまりを決め込むか、亡命することしかできない。 ぼくは、知識人ではないから、人びとの直感力を頼りに、「戦争なんか、よせ。いいことなんか、これっぽっちもありゃしない」といいつづける。
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[227] 2006/07/07/(Fri) 18:40:10 |
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