|
名前 |
田中洌
|
題名 |
雪 |
内容 |
今年は例年より寒い。 正月三日に、川原を散歩していて、細かい雪をかぶったが、昨日は、初雪にふさわしい、大雪となった。 早朝の粉雪は、牡丹雪となって降りしきり、午後遅く葉っぱが舞い落ちるようにふわふわと舞う。 深々として音もない。 崖下のちいさな公園に大きな雪だるまが二つ並んでいた。ちいさな子供たちが雪合戦をして走りまわっている。ふりしきる雪がすべてを夢のように呑みこみ、ひとの姿をかすませる。 大人の姿はどこにもない。 犬は鼻先を雪に埋めて進んでいく。駆けまわって転がり、はしゃぐ。 ちいさな子供たちも、犬のようだ。 こけつまろぴつ、雪と遊ぶ。 見ているだけで、気持ちが弾む。 テント生活者は、焚き火ができなくなった。橋のたもとで美容院をしているひとが警察に通報するからだ。 雪の日は、温度はあがる。 だれかが石油ストーブや寝袋を差し入れして、毛布も揃った。 それでも、凍死が心配される。 だから、数日前、池田という読者から贈られてきた金のうち、灯油18リッター分、1500円を持って声を掛けた。 「灯油代です」 「前借り、ほんとうに、ありがとうございます」 そう、彼はいった。 「これは前借りじゃない。読者からの差し入れです」 と、私はいった。
誤字訂正
飲食もつ→飲食物 違い→たがい
|
|
[157] 2006/01/22/(Sun) 09:39:49 |
|