[323] だから君に、好きといえない 〜1〜 |
- 弥栄 - 2006年03月20日 (月) 03時18分
好きな人がいます。
たった一人、ずっと思い続けてる…
好きな人がいます。
いつから好きだったのかなんて、 もう思い出せないけど… この世でただ一人だけ、彼女だけ愛してます…
たとへ…この気持ちを、伝えられないとしても…
だから君に、好きといえない
「亀ちゃん、半音音はずしたよ!や・り・な・お・し!」 「っ…うわぁ、マジっすか…?」 「あったりまえでしょ?コンサートは来週なんだよ?失敗なんて許されないんだよ、メインボーカル君?」 「う…はぃ…」
俺、亀梨和也。 来月デビューを控えたアイドルです。
ちなみに、今俺に駄目だししてくれちゃったのは、 ボーカルの先生ではありません。
彼女の名前は、サヤ。 神楽サヤ。 俺たちKAT-TUNの、マネージャーの一人。 と、いっても正規のマネじゃなくて、マネの補佐をやってくれている。
年は俺より三つお姉さんになる。 元々は、俺たちみたいにアーティストになりたくて、この道に入った彼女。 歌もダンスも、俺たちなんか目じゃないくらいできるって、知ってる。 本当は、一人の歌手としてデビューするはずだった…だったんだ。
彼女は、俺たちと同じボーカルの先生に師事していたから、 たまにレッスンとかで一緒になって、俺たち六人とも仲良くなった。 普通の友達みたいにメール交わしたり、 普通の友達みたいにみんなでご飯食べに言ったり、 普通の友達みたいにカラオケに唄いに行ったり、 本当、俺たち芸能人なんだって事忘れるくらい、いつも一緒にいたから…
気づかなかったんだ…
いつの間にか芽生えてた
このすきって気持ちが、 恋愛の好きなのか、 友情の好きなのか…
自分の気持ちが…恋だって気付いた時には遅かったんだ…
彼女は、俺の大事な仲間に恋をしてしまっていた…
そう、彼女は…
俺の親友、赤西仁に恋をしていた…
仁も、彼女をすごく気に入ってた。 周りも、きっと二人は付き合いだすのも時間の問題だと思ってた。
あの時までは…
『…仁、何?どしたの…』 『赤西、何そんな真っ青な顔して…』 『…仁?』 『…サヤ…が、事故った…』 『『『『『…え…』』』』』 『…あいつ、デビューが決まったって…』
震える声音。 わなわなと小刻みに揺れる指先。
『…一番に、そのこと俺たちに伝えたいって電話…きてさ…』
自嘲気味の乾いた笑い。 虚ろな眼差し。
『…今、こっちのスタジオ向かってるって…そ、いっ……っ…!』 『…っ、仁!?』 『赤西っ?!』
崩れた膝。 零れ落ちる無数の雫。
『…っ、すっげー…嬉しそうに話してた声が…何かがぶつかるみたいな轟音にかき消されて…っ、そこで…電話、切れ…っ…』 『いいよ、赤西っ…それ以上、言わなくていいから!』 『…それで、サヤちゃんどうしたの…?!』 『…、サヤっ…無事なのかよ?!』
途切れ途切れに紡がれた言葉。
車同士の衝突事故。 意識不明の重体。
その時の仁から聞き出せたのは、それだけだった…
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