それが本能というならば 僕は必死に偽善のメッキをはっている 僕にもついているかもしれない 飛ばない羽 本能によって忘れ去られた僕だけの可能性 そう 僕は蝉だ
暗い土の中 そこには安息があり まだ見ぬ未来を想像できた 光が近くなるにつれて 自分がだんだん見えてくる できること できないこと 残った時間が見えてくる
土の中にいたかった 自分など知らなくてよかった 時間は勝手に体を成長させ 僕を空へと引きずり出す だから僕らは唯泣いた まだ死にたくないと
迫りくる現実から逃げたくて みんなが集まる木に寄り添って 互いの傷を舐めあって 気づけば共に鎮魂歌を奏でてる なんで どうして もうだめだ ぼくだけが ぼくなんか きみはいいよ
蝉は蝉 僕は僕 蝉は外へ出て七日で死ぬが 僕は100年生きるかもしれない 何が違う? 与えられた時間の中で できないことを他人と嘆きあう 寄り添う場所は居心地良く 嘆きながら死んでいく 蝉が鳴いて死んでいくのが本能のように 僕もそれなりに人としての本能を全うして死んでゆくのか
背中には羽があるはずだ この大空を自由に飛べる羽が 知るべきだ 木から木へと移ることにしか使われないその羽は まだ見ぬ世界へと導く羽だということを
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