[198] 今から,散る間に。 |
- ちるまに(あかさor爆弾ポピー) - 2004年12月29日 (水) 21時59分
〜1〜 その日,雪が降っていた。 そしてアイツは窓を眺めて僕にこういった。 「今年は・・・雪が降ったね。」
3年前,僕は近くのコンビニへ行った。 この地を平和にしてからというもの,かなり暇である。
手に雑誌を取り,立ち読みをしてみた。 変わった事は特になさそうだが やけに気になる記事が一つだけあった。 「過去10年間雪が降らない・・・か。」 雪が降ると寒くて外に出られなくなるので個人的には 嬉しい記事ではあったが, 雪に関係する観光地は困っているだろう。
友達の所へ行ってみた。 病状が悪化して今は入院中で,時々こうやって 病院へお見舞いに行っている。 その友達に何を持っていくかいつも悩んでしまうが 結局は定番の花束にした。 ピンク色の,俺と同じような色をしたその花は 俺よりも輝いて見えた。 「昔はこうだった」 と考えてしまう自分が凄く悲しい。
「いつもアリガトウ,カービィ。」 「いやいや,うん。」 「外雪降ってた?」 「全く。過去10年間降っていないんだってね。 雑誌に載ってた」 「お得意の立ち読みか? 昔っからカービィ,変わってないんだもんな」 「よくわかったな;」 「そりゃそうさ。長い付き合いだしね。 ところで本当に雪が降らないね。 生きているあいだに見たいよ,雪。」 俺は言葉を失った。 というか悲しくなった。 「生きているあいだにー・・・」
病院を出て少し考えてみた。 「もし,アイツが死んだら...」 とか 「もし,このまま20年降らなかったら…」 歩いているうちに自分がしている事に気が付いた。 図書館という場所で本を探している自分。 【死後の世界】などの本を抱えている自分。
ひとつ,ホコリまみれの本を見つけた。 なんだか妙に気になり,そっと広げてみる。 最初の部分には訳分からない文字が50行くらい 書かれてあるだけで,そのほかは真っ白だった。 ウイルスに侵されているみたいで気味悪いものだったが 不思議と悲しい感じがでてくる本だ。
家へ帰り,夕食をを食べ,普段と同じように済ませてから あの本をもう一度広げてみる。 別に変わりは無い。けれど悲しい感じが無くなっていた。
月が部屋の一部だけを照らす。 満月のその月は少しずつ動いていた。
本に光がきた。 本が金色に光っているように見える。
・・・いや,本当にその本が光っているのだ。 文字がじわじわと浮き出てきた。 カービィはその文字を解読する。
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