海晴(かいせい)
室の八島 】 《 いと遊に 結びつきたる 煙哉 》 「室の八島」は「大神神社」のことで、境内に往時の姿がミニチュア模造されている。 「大神神社」は栃木市惣社町にあり、下野国の総社である。 この辺は、足尾山地の扇状地の末端にあたるため地下水が豊富であちこちに清水が噴出し、立ち上る水蒸気が「烟(煙)」のようであった、と云われている。 池の中に小さな島が八つあって古来歌枕として知られており、ここで吟ずるときは「烟」を詠い込むのが慣いになっている。境内には芭蕉の句碑とともに「浅間神社」「熊野神社」「香取神社」等の祠が設けられている。この地区では、古来魚の「このしろ」を食べない。昔、美人の娘に目をつけた国守から差し出すように命じられた親が、「娘は死にました」と偽り、焼けば人を焼いたときと同じ匂いのする魚の「このしろ」を棺桶に詰めて焼いて国主を欺いた、という伝説に則っている。 「このしろ」は「子の代」を捩って作られた話であろう。
《 烟絶え 朱門侘しき 歌枕 》乱志
[923]2008年11月27日 (木) 00時02分
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