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[1231]『岡田啓介回顧録』書評を拝読して。 投稿者:JerryFish

投稿日:2015年08月19日 (水) 21時26分

鐵太郎様

今晩は(^^)。度々の書き込みをして恐縮ですm(__)m。

件名の通り、『岡田啓介回顧録』書評を読ませていただきました。感想と意見をちょっとずつ綴らせて頂きます。

以下、抜粋。

「ロンドン会議のまとめ役として奔走するのに、わたしは出来るだけはげしい衝突を避けながら、ふうわりまとめてやろうと考えたものだ。反対派に対しては、あるときは賛成しているかのように、なるほどとうなずきながら、まあうまくやってゆく。軍縮派に対して、強硬めいた意見をいったりする。」

成る程。そういう硬軟と虚実を織り交ぜた処世術に長けた人柄でないと、そういう大役はこなせないですよね。
私は40何年生きてきて、現在(いま)までの人生経験から納得行くような境地(まだまだ低いですが)に立ちました。
若い頃(大学時代)は「清濁併せ呑む」という言葉の「濁」にすら嫌悪感を感じてましたから。

で、ある映画評論サイトでの記述を読んでいます。その中で上記抜粋文と底辺で共通する文章があると思ったので以下の通り、引用させて頂きます。

「この「日米の対立構図」とは、つきつめていけば戦争になると言うことは歴史が証明している。
だからこそ、本来日本の総理大臣は(沖縄の)基地反対派にしぶしぶ折れることで、米国の妥協を引き出すくらいの寝業師でないとダメなのである。
現在の総理大臣にはその資質が決定的に欠けている。それが人々を不安にさせる。」

・・・。以上ですね。上記文章から分かる通り、現在の在日米軍沖縄基地群を取り扱っている映画の評論です。その政治信条だとかは微妙なので私見は言及しません。言いたい事は腹芸をしてまで「寝業師」になる器の人で無いと国政のトップレベルの人間でないといけないと言う点で、共通してると思います。

さて、同書を私も購入しました。ついでに補足資料になればと思い、『明治・大正・昭和政界秘史』(若槻禮次郎、講談社学術文庫)も購入済です。

只今、「世界の帆船模型展」にむけて帆船の学習に追われているので、思うように時間が割けず、両書籍の共通部分だけ読ませて頂いてます。

ポイントは何故、この御2人が東条内閣を倒すのに必死だったのか?

東条英機の登用は陸軍を押さえられ、かつ、平和を願う昭和天皇に心底忠誠を持っていたが故に、戦争回避を方策してくれるという触れ込み故だったのでは?と。

でこの2冊で岡田氏、若槻氏が異口同音に共通した理由からだったようですね。要は「戦争を始めた奴に戦争を終わらせられる訳無い。しかも開戦後は戦争一本やり。」という事のようですね。成る程。今まで、東条英機は開戦前は少なくとも内心、戦争回避を願っていたという認識でいたので新鮮でした。

しかもこのお二方、共に共通の戦争・政治認識を持って親交があったようですね。両者の著書にそれぞれ相手方の名前と行動が読んだ部分だけでも頻繁に記述されてます。若槻氏の方がどうやら先輩格らしいですが。

でも読んでると両者の性格・信条・言行に個性が出てますね。面白いです。

まず、若槻氏。

御前会議にて、彼が意見の陳述を述べてると東條総理が合間に入って「若槻をして、これを了解せしむるためには、三、四時間も時間が要ります。」と陳情を妨害しようとすると、彼は、そこで陳述を辞めたそうです。

そこから汲み取れるのは求められたら饒舌に意見を述べ、分を越えたとみると控える人柄のようです。

でも岡田氏曰く「みんなそれぞれ(東條総理に)ものを言ったが、若槻さんが一番強烈だった。若槻さんの東條に対する追求は理路整然たるもので(以降略)」まあ、そんな御方だったんでしょうね(苦笑)。

また、戦況の情報収集力が岡田氏に比べると劣ってますね。
岡田氏は息子が軍令部一部一課で逐一戦況が伝わってるのに対し、若槻氏はそういうコネがなく月例の戦況報告を聞く他無く、そのレベルは新聞に載せられるものと大差なかったそうです。東京裁判の審理段階で初めて戦況の真相を知ったようです。あくまで、彼は政治・戦力・国力の日米の差を知っている程の聡明さ故に岡田氏と親交を結び、東条内閣倒閣を共通目的に行動を共に出来たのでしょう。

また、昭和天皇に和平を直言しないのかと問われると、国政について意見を奏上するのは輔弼の責任のある国務大臣でなければならない。故に自分が直言するということは、立憲政治の常道に背くものである。と。話が飛んじゃいますがヤン・ウェンリー提督と考え方が似てるなと。

さて、次に岡田氏。

やはり、岡田氏も意見は積極的に述べられる方ですね。若槻氏が開戦前の食事会席上「岡田啓介君からも、軍の準備について種種質問があった。」と記述してます。

そして畏れながら鐵太郎様の以下の書評文とは違うように読める文面もあります。

「終戦に至る中で岡田氏がどのような役割を負ったのか、それは書いてありません。自分はこう終戦に貢献した、と言わないのはこの人の矜持なのか、人柄なのか。」この箇所には、私は首を傾げます。

何故なら以下のような文章がありますから。

「どうすれば適当な方法で戦争を終結させるか、ということを私は真剣に考えた。(中略)まるで策を立てようとせず、戦争一本やりで、つっ走っているばかりだ。戦争をやめる方向へもっていいくには、まずこの東條内閣を倒すのが第一歩だ、ということに思い当たって、わたしは決心を固めた。」(218ページ)

少なくとも明確な思考過程と決心が記されてます。

「重臣の意見をまとめることが一つの世論をつくることになるとすれば、東條を退かせる道は今の場合これがもっとも有力で、かつ手近なことだ。」(220ページ)

ここで方策を練ってると私は観ます。

で、222、223ページの文面のように事は彼の思案どおりに進み、「この会合は、相当の効果があった。」(223ページ)ようです。

で「第二段の策を立てた。それは島田海軍大臣をやめさせることだ。」(224、225ページ)

で、とうとう「ついに東條と対決」228ページからの第二策で対決するわけですね。東條から脅しもかけられながら。
ちょっと・・・この後からは未読なので何とも言えませんが、これまでの私の抜粋した文章から浮かび上がる彼の人柄からは退く事は無かったと想像してます。

少なくとも鐵太郎様の記述されてる通り、「自分はこう終戦に貢献した、と言わないのはこの人の矜持なのか」というで彼が貢献したとか、自画自賛してる様子は読んだ限り、感じません。

でも、彼なりの終戦(への第一歩)に思考を凝らし、行動し、全力を挙げたのは読み取れると思います。

岡田氏への私の評価は上記の私の抜粋文で、僭越ながら鐵太郎様流の「他人(人)は、そう考えてるのね。」というご理解をして頂ければと思います。

嗚呼、またしても、長文になってしまいました(泣)。
非常に失礼しましたm(__)m。

JerryFish

追伸
世界の帆船模型展に向けて、ローマ帝国の交易船について調べていたら、ローマ帝国のトリビア知識書籍を発見し、購読しました。でも(紹介ページで観ると)内容はとても面白そうです。読んでみて、実際に面白かったら、その内、鐵太郎様にご紹介させていただくかもしれません。その節はよろしくお願いします。無駄な知識ほど面白いと感じるのは、いけないとは思えませんね。私的には。(((((( ;゚Д゚)))))) !!追伸まで長文になってしまいました。失礼しますm(__)m。


[1232]JerryFish様。どうも。投稿者:鐵太郎
投稿日:2015年08月20日 (木) 23時14分
 すみませんが体調不安なので手短に。
 御指摘の、
「終戦に至る中で岡田氏がどのような役割を負ったのか、それは書いてありません。自分はこう終戦に貢献した、と言わないのはこの人の矜持なのか、人柄なのか。」
 と記した件につきましては、この方がなにも貢献しなかった、貢献を書かなかった、という意図ではなく、この方が行ったことが、のちの歴史の中で大きく取りあげられなかったことが、この方の奥ゆかしさの故ではないのか、と思ったからです。
 そういう事実がなかったと言うことではなく。
 むしろ徹頭徹尾裏方に回ったように見えたことを、この方の矜持であろうかと思い、ああいう書き方で表現したつもりです。

 まァ事実と、あるいは岡田氏の筆と異なるではないかという御指摘に関しては、まことにごもっともなのですが。



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