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拝啓 はじめまして。 拙著『シャーロック・ホームズ大人の楽しみ方』を、こちら様の書評欄でご紹介くださいまして、どうもありがとうございました。拙著は必ずしも通説にはこだわらず、各自でいろいろな読み方を模索してみると面白いですよ、という考えで執筆しました。 でも、『未婚の貴族』が発表された頃、血友病の遺伝やら、王太子エドワードによる数々のスキャンダル(特に売春婦との関係は深刻)などで、イギリス王室は難しい立場にあったはず。ヴィクトリア女王が貴族を激増させたのにも、貴族院を完全に王室の与党化させる目的があったかと思われます。そうかといって、王太子エドワード以外の王子は、いずれも血友病の可能性がありましたし、王位継承権を有していたベルギー国王レオポルド二世や、ドイツ皇帝ヴィルヘルム二世は、イギリスとしては絶対に迎えたくない君主でした。ホームズが王制廃止論者だったという解釈も、まったく根拠がないものではないような気がします。まあ、なにごとも通説というものを疑ってかかるのが、法学部出身者の習性だとお考えくださいませ。 敬具 |
[501] これはこれは、ご本人においでいただくとは光栄です。投稿者:鐵太郎(てつたろ)@管理人
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投稿日:2007年10月30日 (火) 22時04分 |
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鐵太郎を名乗ります管理人です。お見知りおきを。
小生こと、ホームジアンというか、シャーロッキアンというか、ホームズをはじめて読んで以来数十年、ホームズオタクというには浅いですが、長い間お世話になっております。 いろいろな見方があり、いろいろな解釈があり、それなりに正しく、それなりに面白いのがホームズですね。
そういう意味で、新しい切り口としての諸兄さんの本も、逆に突っ込みたくなるような面白さがありました。ですから、身勝手な反論もありますが、新しい視点にはこういう反論もあるよ、という方針で書いたつもりです。
うーん、ホームズが王政廃止論者であったか、と言う点についてはいろいろ論があるネタかも知れません。とりあえずぼくは、ホームズはそういう方向に考える人ではない、と主張したい。 ホームズは矛盾を抱えたヴィクトリア時代の大英帝国の人ですが、国家の政体自体に批判の目を向けるほど憂国論者ではなかった、と思うのです。ある種の反逆心みたいなものはありましたが、むしろそれは愚かさへの軽蔑ではなかったのか。迂遠な書類仕事に時間を潰されて依頼者を殺してしまった事もあるホームズは、国家の法を無視することはありましたが、国家へのゆるぎない忠誠心と正義への希求は持っていたと思うのです。
ですから、ご指摘の『未婚の貴族』の中でアメリカからの客に愚かな王(ジョージ二世か、三世か?)への批判を言いましたが、むしろこれは遠来の客への、ホームズの不器用な接待の言葉ではなかったのか、と考えているのですよ。 むろんこれは、事実に証明されない個人的解釈ですので、結論は出ませんね。
そして、シャーロッキアンの解釈に関する議論には結論はありません、むろん。(笑)
ヴィクトリア時代の、毅然とした女王とそれに対比される王室の退廃とについては、悲しむべき事ですが歴史マニアにはおいしいネタですね。皇太子バーティの放埒と、あきらかに痴呆の症状が見られた孫プリンス・エディなど、どこまでが根拠のない風聞でどこからが事実なのか、調べれば調べるほど面白い。
本を読むことを楽しみたい、と思っています。これからも。 |