[116] FINAL SECTION Gとの決着! 2人の絆! |
- フリッカー - 2007年11月23日 (金) 20時31分
目の前は真っ暗。あたし・・・死んじゃったのかな・・・? 「・・・ヒカリ!! ヒカリ!!」 暗闇の中で、誰かの声が聞こえてくる。あたしの体がゆすられた。 「しっかりしろ!! ヒカリ!!」 誰・・・? あなたは、誰・・・? 「ヒカリ!! 目を開けるんだ!! ヒカリッ!!」 誰なの・・・? どうして、そんなに必死になってあたしを呼んでるの・・・? 「・・・・・・ヒカリ、見えるか!! 今、木の実をやるからな!! 目を覚ましてくれ!!」 少し間を置いて、また声が聞こえてくる。あたしの体が、仰向けになる。何かをクチャクチャと噛む音。そして、あたしの口が少し開けられて、何かがあたしの口を優しく包み込んだ。 ・・・!? 何だろう・・・やわらかくて、暖かい・・・? あたしの口に、何か甘いものが流れ込んできた。それだけじゃなくて、なんていうか、暖かくて、優しい何かが一緒に流れ込んでるような気がする・・・ あごが持ち上げられて、甘いものがあたしののどを通って行った。あれ・・・? 何だか、少しだけど力が戻ってくる・・・? もう一度、あたしの口が何かに優しく包み込まれて、甘いものがまた流れ込んできた。よくわからないけど、これが、あたしに力をくれる・・・あたしは、それを受け入れる。甘いものがのどを通り過ぎていくと、また、力がみなぎってくる・・・
「う・・・う・・・」 今まで出せなかった声が出た。あたしの目が、ゆっくりと開いた。目の前に、誰かの顔が映った。最初はぼやけていた顔に、ゆっくりとピントが合っていく。 「・・・ヒカリ!!」 嬉しそうな顔を浮かべる、見覚えのあるその顔・・・紛れもなくサトシだった。 「サ、トシ・・・?」 「よかった・・・!!」 助けてくれた・・・サトシが、あたしを助けてくれたの・・・?
FINAL SECTION Gとの決着! 2人の絆!
爆発。それが、あたしを現実に引き戻した。 サトシが、顔を右に向ける。あたしも、そっちに顔を向ける。そこには、倒れたサトシのポケモン達が。その奥にいるのは・・・Gのドククラゲとヌケニン! サトシがあたしを助けていた間に、戦ってくれていたみたい。 「フッ、俺と勝負をした所で、結果は目に見えているぞ、サトシ!」 Gの声が聞こえてきた。そうだ、まだGは倒していない・・・! 「G・・・!!」 あたしは、無理して立ち上がろうとした。体中に、痛みが走る。でも、そんな事にかまってられない! だけど、サトシがそれを止めた。 「ダメだヒカリ! ここで休んでいるんだ! あいつとの決着は、俺がつける!」 サトシにまた寝かされると、サトシはゆっくりと立ち上がった。動きがぎこちない。ちょっと待って・・・! サトシの体力はまだ・・・! でも、体が言う事を聞いてくれない。あたしはその場で、ただ見守るしかなかった。 「負けるもんか・・・ヒカリやみんなのがんばりは・・・無駄にはしない!!」 「ピッカ!!」 そんなサトシの叫びに答えるように、ピカチュウが前に出た。 「ピカチュウ!! “10まんボルト”!!」 サトシの叫びが、ピカチュウの電撃となって飛んで行った! 飛んでいく先は、ドククラゲ! 直撃! 効果は抜群! そして爆発! たちまちドククラゲは戦闘不能。 「やったぜ!! 言っただろ、みんなの思いは無駄にはしないって!!」 ガラガラがいない今、ピカチュウは思い切り電撃が使える。これなら、前のように苦戦する事はないかもしれない。 「ドククラゲがやられてしまったか・・・戻れ!」 Gはドククラゲを戻した。それだけじゃなくて、ヌケニンも戻した。 「なかなかのものだな・・・だが、ドククラゲを攻略した所で、まだ俺を倒せると思うな・・・!」 「何・・・!?」 Gは余裕の表情を浮かべて言った。『俺は物事を始める前に念入りに計画を立てないと気がすまない性質(たち)でな』というGの言葉が頭に浮かぶ。まだ、何かあるって言うの・・・!? あたしは、不安に駆られた。 「そろそろ切らせてもらおう、俺のジョーカーを・・・!!」 Gは別のモンスターボールを取り出して、サトシに見せ付けるように突き出した。突き出されたモンスターボールが開いた。そこから出てきたのは・・・ 「えっ!?」 そのポケモンの意外な姿に、サトシもあたしも驚いた。だって、出て来たポケモンは、世界で一番美しいポケモンといわれてるポケモン、ミロカロスだったんだから! その美しさといったら、Gのような悪者が使うポケモンとは、とても思えないほど。 「・・・相性ならこっちが有利だ!! ピカチュウ、“10まんボルト”!!」 サトシは攻撃に出る。ピカチュウがさっきと同じように、“10まんボルト”をミロカロスに放つ! 直撃! 効果は抜群・・・のはずだけど、ミロカロスはそれに耐え抜いた! 苦しい表情は浮かべるけど、電撃が止むと、平気な顔でピカチュウをにらみ返した! あたしも、目を疑った。 「な、何!?」 「“アクアリング”だ」 動揺したサトシを尻目に、ミロカロスの周りを、水のベールが覆い始めた。すると、ミロカロスはみるみるうちに力を取り戻していってる!? 「そして“ハイドロポンプ”!!」 Gが勢いよく右手を突き出すと、ミロカロスは息を深く吸い込んで、“ハイドロポンプ”を発射した! ピカチュウに直撃! ピカチュウは凄まじい水流に押し流されて、サトシの横を通り過ぎて、木に叩きつけられた! なんてパワーなの!? 「負けるなピカチュウ!! 今度は“かみなり”だ!!」 負けじともう一度攻撃を指示するサトシ。体勢を立て直したピカチュウは、力を込めて、強い電撃をミロカロスにお見舞いした! 直撃! 効果は抜群・・・でも、ミロカロスは耐える。でんきタイプ最強わざの“かみなり”にも屈しなかった! そして、また水のベールが体を覆った。 「そ、そんな・・・!? 効果は抜群のはずなのに!?」 「確かにその通りだ。だが、ミロカロスの防御力を甘く見てもらっては困るな」 動揺するサトシを尻目に、Gは余裕の表情を浮かべた。そして、ミロカロスはせせら笑うようにこっちをにらんでいた。すると、ミロカロスの体に火花が走った。ミロカロスは『まひ』してるみたい! 「・・・でも、『まひ』してるなら!! ピカチュウ、“ボルテッカー”だ!!」 サトシは怯まないで攻撃を指示した。ピカチュウは、ミロカロスに向かって突撃する。そして、その間に、強い電気が体を包んだ! スピードを緩めないまま、ミロカロスに体当たり! 効果は抜群・・・のはずだけど、ミロカロスは大きく立ちはだかる壁のように微動だにしないで、ピカチュウをはじき返した! 「な、何!?」 また動揺するサトシ。ピカチュウ必殺の“ボルテッカー”も通用しないの!? 「ミロカロス、“からげんき”!!」 ミロカロスが反撃に出る。尻尾に力を込めて、ピカチュウを思い切り殴りつけた! ものすごいパワー。ピカチュウは思い切り弾き飛ばされて、また木に叩きつけられた! かなりダメージを受けたみたい! 「そ、そんな!? “ボルテッカー”も通用しないのか!?」 「フフフ、ミロカロスは『ふしぎなウロコ』というとくせいを持っている。状態異常になれば、防御力はさらに高まる。そして、『まひ』している時にパワーが上がるわざ“からげんき”もある。『まひ』した方が、むしろ好都合なのだよ。それに、どんなにダメージを受けようと、“アクアリング”で常にミロカロスの体力は回復する」 余裕綽々に説明するG。サトシの表情に、焦りが見え始めた。 「お前のポケモンに共通する戦術。それは、『常に正面から攻め続ける事』だ。その戦術に対して、もっとも有効な能力を持つポケモン、それがミロカロスなのだ。言っただろう? お前がバトルでどんなポケモンを出してどんな行動をしようが、俺の知らないものはない、と」 Gが勝利を確信したように、ニヤリと笑みを浮かべた。 「そんな・・・」 強い・・・このミロカロス強すぎ! 嫌でもそんな事があたしの頭に浮かぶ。 「ふざけるな・・・俺は、絶対に勝ってやるさ!! いや、勝たなきゃいけないんだ!! ピカチュウ!!」 「無駄なあがきはよせ・・・俺の勝利の方程式に、狂いはない!! ミロカロス、“りゅうのはどう”!!」 サトシの指示で立ち上がろうとするピカチュウに追い討ちをかけるように、ミロカロスは口から衝撃波をピカチュウに狙って発射した! 放たれた衝撃波は、ドラゴンの頭へと姿を変えて、本当に生きてるみたいに吠えながらピカチュウに牙をむいた! 直撃! そして爆発! 「ピカチュウ!!」 「ピ・・・ピカチュウ!!」 あたしも思わず、サトシと一緒に叫んだ。このままじゃ、サトシは負けちゃう! でも、そう思った所で、あたしには何もできない・・・あたしのポケモン達は、みんなやられちゃったんだから・・・ 「次はあいつにお見舞いしてやれ!!」 ミロカロスは、目をサトシの方に向けた。パワーを蓄え始める。狙いは、間違いなくサトシ! このままじゃ・・・! 「やめてえっ!! サトシを殺さないでえっ!!」 あたしは、気が付くとそんな叫び声を上げていた。Gが、あたしに顔を向けた。完全にいらだってる。 「・・・またお前か・・・敗者の分際で水を刺すな!!」 Gの叫びに答えるように、ミロカロスの顔がこっちを向いた。そして、あたしを狙って“りゅうのはどう”を撃ってきた! ドラゴンの頭が、あたしに牙をむく! よけられる訳ない! 「ヒカリッ!!」 その時、サトシの影があたしを覆った。“りゅうのはどう”はサトシの体に遮られた! 「ぐわあっ!!」 爆発! 悲鳴を上げるサトシ。サトシは、あたしのすぐ側で、ばたりと倒れた。 「サトシ・・・!?」 あたしは、目を疑った。サトシが、盾になってあたしをかばった・・・? あの時、ヒコザルをザングースの爪からかばったように・・・ 「だ・・・大丈夫か・・・ヒカリ・・・」 サトシは、あたしの肩に手を伸ばして、「俺は平気だ」と言ってるかのように、笑顔を作ってあたしの顔を確かめる。でも、明らかに無理をしているのがすぐにわかった。そして、顔をGの方に向ける。 「ひ・・・卑怯だぞ!! ヒカリは、戦ってなんかないじゃないか!! 関係ない人を巻き込むな!!」 「・・・ハハハ、それだから身を挺してそいつをかばったのか。何とまあ、すばらしい事だ・・・!」 Gの笑みは、明らかにサトシを皮肉っている。 「だが言ったはずだ、他人の心配をしていると、自分がひどい目に遭うだけだとな! この機会を逃すなミロカロス、攻めつくせ!!」 Gの指示で、もう1回“りゅうのはどう”が来る! それでも、サトシはあたしをかばい続ける。連続で飛んで来る“りゅうのはどう”を受けては爆発。そして、悲鳴を上げるサトシ。サトシが、どんどんボロボロになっていく。そんな姿に、あたしは助けられる喜びよりも、また自分のせいで、サトシを傷つけてしまう事への恐れがどんどん募っていった。もうやめて・・・そんな事したら、また・・・ 「ぐっ・・・」 あたしのすぐ側で、倒れるサトシ。 「サトシ!!」 「心配ないさ・・・これくらい、どうって事ないって・・・」 あたしの不安をよそに、サトシはさっきと同じように、笑顔を作ってあたしに答えた。 「サトシ、もうやめて・・・これ以上、あたしの事で・・・」 あたしの目には、いつの間にか涙が溜まっていた。 「何言ってるんだ、ヒカリ・・・俺達は、『仲間』じゃないか・・・!」 「・・・!」 あたしは、そんなサトシの言葉を聞いて、ミライさんの言葉を思い出した。 『サトシはね、ああ見えて寂しがり屋なのよ。その思いは、ポケモンに対してだけじゃなくて、人に対しても同じだと思うなあ』 そういえばあたしも、こんなにボロボロになるまで、Gと戦い続けた・・・それは、大事な『仲間』のサトシを守るため・・・今のサトシも、きっと同じ思いなんだ。 「・・・そんな荷物、捨ててしまったらどうだ? そいつをかばい続ければ続けるほど、お前は自らの首を絞めるだけだ」 Gの言葉が聞こえた。 「黙れ・・・! 大事な仲間を見捨てる事なんて、できるもんか・・・!」 サトシはあたしに背を向けて、ぎこちなく立ち上がる。でも、すぐに体の痛みを感じて、膝を突いた。 「その志はほめてやろう。そんなに言うなら、2人仲良く消し去ってやろうか!! ミロカロス、“りゅうのはどう”!!」 またミロカロスが“りゅうのはどう”を撃ってくる! でも、すぐに電撃が飛んできて、“りゅうのはどう”を相殺した! ピカチュウだ! ピカチュウはもうボロボロ。それでも、よろよろとだけどあたし達の前に出て、仁王立ちした。そして、ミロカロスに“でんこうせっか”で突撃していく! 「む、まだ来るか!! “ハイドロポンプ”で迎え撃て!!」 でも、その突撃は、“ハイドロポンプ”で空しく退けられた。あたし達の前に弾き飛ばされるピカチュウ。ピカチュウは、もうかなりやばい状態。そんなピカチュウの様子を、1匹のポケモンが見ていた事には、気付かなかったけど。 「ピカチュウ!!」 「さて、そろそろ止めを刺してやる・・・“りゅうのはどう”!!」 ミロカロスが、ピカチュウに狙いを定めて“りゅうのはどう”を発射した! 動けないピカチュウにドラゴンの頭が容赦なく襲い掛かる! もう、ダメなの・・・? あたしのポケモン達が、まだ戦えたなら・・・! あたしがあきらめかけた、その時だった!
どこからか、白い光線が飛んで来て、“りゅうのはどう”を相殺した! 「・・・ピカ!?」 「何だ!?」 「誰!?」 あたし達は、驚いて光線が飛んで来た方向を見た。そこにいたのは・・・
「・・・ミミ!!」 紛れもなくあたしのミミロル! 「ミ・・・ミミロル!?」 ボロボロだけど、確かにミミロルは立っている。まだ戦えたみたい! あたしの心で、驚きと喜びが混ざり合った。 「ミミッ!!」 ミミロルは、素早くピカチュウの前に立って、両手を横に広げた。まるで、「ピカチュウはやらせない!」とでも言ってるみたいに。そんなミミロルの姿に、ピカチュウは目を丸くしていた。 「こいつ・・・あの少女のポケモンの生き残りか!?」 「ミミーッ!!」 Gの言葉をよそに、ミミロルはミロカロスに向けて“とびはねる”! ミロカロスの上を取る。 「だが、そんなものが出て来た所で・・・!! “からげんき”!!」 ミロカロスが尻尾で迎え撃つ! 簡単に弾き飛ばされて、地面に倒れるミミロル。でも、ミミロルは怯まない。今度は“ピヨピヨパンチ”でミロカロスに飛び込む! また尻尾で弾き飛ばされる。それでも、また立ち上がってミロカロスに向かっていくミミロル! 「ミミロル・・・?」 あたしは、こんなに必死なミミロルを初めて見た。一体何が、ミミロルを奮い立たせているの? それは、すぐにわかった。ミミロルは、ピカチュウの事が大好き。そのピカチュウのピンチを見て、ミミロルはピカチュウを助けようとしてるんだ・・・! 今のサトシやあたしと同じように・・・! 「“りゅうのはどう”!!」 ミロカロスが、“りゅうのはどう”を発射する! それをかわすミミロル。でも、かわした“りゅうのはどう”はこっちに飛んで来る! 「ヒカリ・・・!!」 サトシは、またあたしをかばおうとする。でも、ミミロルの行動に勇気付けられたあたしは、こっちからサトシを助けようとした。あたしの思いに答えるように、今まで言う事を聞いてくれなかった体が、動いてくれた! あたしはすぐにサトシの体を力いっぱい押し倒した。間一髪、“りゅうのはどう”はあたし達の上を通り過ぎて行った。 「ヒカリ・・・!?」 逆に助けられたサトシは、目を丸くしていた。体中が痛い。やっぱり、無理しちゃったみたい。でも、そんな事はもうどうでもよかった。 「サトシ・・・無理しないで・・・!」 あたしの思っていた言葉が、自然と出た。 「・・・え?」 「サトシが、仲間を大事にしたいって気持ちはわかるよ・・・でも、1人だけで無理しちゃダメよ・・・もしこのままサトシが死んじゃったら、あたしや・・・みんなは・・・どうすればいいのよ・・・! サトシが大事な『仲間』なのは、あたし達だって、同じなんだから・・・!」 あたしは、痛みをこらえてゆっくりと立ち上がろうとした。 「だから・・・1人だけでがんばろうとしないで・・・あたしが、ここにいるんだから・・・うっ!」 すぐに体中に痛みが走った。あたしは膝を付く。サトシはとっさにあたしの体を支えた。 「ダメだヒカリ! 無理してるのはヒカリの方じゃないか! ここは俺が・・・」 「『俺が』じゃないよ・・・『俺達が』よ!」 「え・・・!?」 「一緒に戦おう、サトシ・・・! あたしには、ミミロルがいるわ!」 あたしは、自分の意志をはっきりと伝えた。あたしは、『仲間』を大事にするサトシの『仲間』の1人として、その思いに答えたい・・・! そんなカッコイイ言葉は、さすがに恥ずかしくて言えなかった。ミミロルに顔を向けると、こっちを見たミミロルは、コクンとゆっくりうなずいた。 「ヒカリ・・・わかった!」 サトシは、ゆっくりとうなずいた。あたしの思いをわかってくれたみたい。サトシはあたしの右手を背負って左手をあたしの背中に回して、あたしを支えながら一緒に立ち上がった。それに気付いたミミロルも、ピカチュウを支えながら一緒に立ち上がった。そして、Gと正面から向かい合う。 「フン、2人で挑むか・・・だが、相手は2体だが手負いの状態だ、いつまで持ちこたえられるかな? ヌケニン!!」 Gは一度戻したヌケニンをまた出した。完全に2対2のダブルバトル。 「いいか、ヒカリ。あのミロカロスは、ピカチュウの電撃も効かないほど防御力が高い。あいつを倒すには、あいつの防御力以上の攻撃を当てるしかない。ピカチュウ1匹だけじゃ無理だ。力を貸してくれるよな?」 「ダイジョウブ。タッグバトルの事は、あの時色々勉強したんだから!」 1人だと負けちゃったGが相手でも、今は不思議と怖くなかった。やっぱり2人でいた方が心強いからかな? 「行け!!」 Gが右手を横に振る。ミロカロスとヌケニンが、一斉に向かってきた! 「行くぞヒカリ!!」 「ええ!!」 「ピカチュウ!!」 「ミミロル!!」 あたし達も、力いっぱい声を上げた。ミミロルとピカチュウも、一斉にミロカロスとヌケニンに向かっていく! 「ミミロル、“とびはねる”!!」 4匹の距離が縮まった時を見計らって、あたしは指示した。ミミロルは、ミロカロスの目の前でジャンプ! ミロカロスが、思わずミミロルを追って上を向いた! 「今よサトシ!!」 「ああ!! ピカチュウ、“でんこうせっか”!!」 その隙を突いて、ピカチュウは“でんこうせっか”でミミロルに飛び込んだ! 直撃! 体勢を崩すミロカロス。そして、ジャンプしたミミロルは、ヌケニンに向けて落ちていく! ヌケニンはそれに気付くのが遅かった。ミミロルがヌケニンに直撃! 効果は抜群! ヌケニンはミミロルの下敷きになって、地面に落ちた。ヌケニンは動く気配を見せない。もう戦闘不能。 「何・・・!!」 「やった!!」 あたしは声を上げた。効果抜群の攻撃を受けたら一発でやられちゃうなんて、ヌケニンって意外ともろいじゃない。 「ちっ・・・!!」 Gは舌打ちをして、ヌケニンを戻す。でも、まだ安心はできない。残るは、強敵ミロカロス! 「これで、残りはミロカロス、2対1か・・・だが、それだけ手負いの状態ならば、1匹で充分だ!」 Gは少し焦るけど、まだ余裕の表情を見せる。あたしは、ミロカロスにとにかく強い攻撃を当てなきゃと思って、サトシにこう言った。 「サトシ、こっちが“ピヨピヨパンチ”を出すから、ミミロルの耳に電撃を撃って!」 「え・・・そうか、わかった!!」 サトシは、最初はよくわからなかったみたいだけど、すぐにわかってくれた。 「ミミロル、“ピヨピヨパンチ”!!」 「ミミ〜ッ・・・!!」 あたしが指示すると、ミミロルは耳に力を込めて、ミロカロスに向かって行く! 「今だピカチュウ!! ミミロルの耳に“10まんボルト”!!」 「ピ〜カ、チュゥゥゥゥゥ!!」 サトシはあたしが言った通りにピカチュウに指示してくれた。ピカチュウは、力の限りの電撃をミミロルに耳に発射する! そして、見事命中! ミミロルの“ピヨピヨパンチ”は、ピカチュウからもらった電気エネルギーを受けて、電気を纏ったパンチになった! 「ロォォォォッ!!」 そして、ミミロルは電気を纏った“ピヨピヨパンチ”を思い切りミロカロスに叩き込んだ! ミロカロスに、ピカチュウから電撃がパンチを通じて流れた! 確実に効いてる! そう、これは、前にノゾミがコンテストの練習の時にニャルマーとカラナクシで見せていた事を真似しただけ。 「ピカチュウ、もう一度“10まんボルト”だ!!」 そして、ピカチュウが“10まんボルト”で追い討ちをかける! ミミロルが、巻き込まれないように素早くミロカロスから離れた。直撃! 効果は抜群! 「くっ・・・“ピヨピヨパンチ”に“10まんボルト”を合わせて擬似“かみなりパンチ”を作るとは・・・! なんて変則的な・・・!」 Gはコンテストでの『魅せるバトル』の事はあまり知らない・・・? 「だが、まだ負けた訳ではない!! “ハイドロポンプ”!!」 ミロカロスが“ハイドロポンプ”で反撃! 水流はミミロルに直撃! 押し流されるミミロルは、ピカチュウにぶつかって、一緒にあたし達の前に弾き飛ばされた! でも、まだいける! 「“アクアリング”!!」 ミロカロスの周りを、水のベールが覆う。いけない! 体力が回復されちゃう! もっと攻撃しなきゃ! 「まだまだ!! もっと行くぞ!!」 「ええ!!」 あたし達の声に答えるように、ミミロルとピカチュウが飛び出していく!
「う・・・う〜ん・・・」 そんな時、今まで気を失っていたミライさん達が目を覚ました。 「くそっ、あいつめ・・・よくもやりやがって・・・ん!?」 カズマがそうつぶやいた時、みんなが必死に戦ってるあたし達の様子に気付いた。 「・・・! あれは!!」 「ヒカリとサトシが、戦ってるわ!」 「・・・よし!! ならオレ達も加勢するっきゃないな!!」 カズマが、すぐに立ち上がった。 「・・・その必要はなさそうよ」 「え?」 そんなカズマを、ミライさんが止めた。 「何だか、あの2人だけで勝てそうな勢いじゃない。あたしのカンだけどね」 ミライさんはそう言って、あたし達の方に顔を戻した。
あたし達は、ミロカロスへとにかく攻撃を加え続けた。その効果は、少しずつ出てきている。“アクアリング”は回復わざだけど、完全に回復できる訳じゃない。猛攻撃を加えていけば、少しずつダメージは溜まっていく。 「ミロカロス、“ハイドロポンプ”!!」 今度はGが攻撃に出る。強い水流が、こっちに来る! 「ミミロル、“れいとうビーム”で氷の壁を作って!!」 あたしの指示通りに、ミミロルは“れいとうビーム”を地面に発射した。たちまち、氷の壁ができあがって、“ハイドロポンプ”を受け止めた! 氷が砕け散る。その氷の粒が、きらきらと光りながら宙を舞った。これがコンテストバトルなら、向こうの減点になってるはず。 「何!? 奴の行動は先が読めん・・・!!」 Gは明らかに動揺している。やっぱりGはコンテストバトルの戦法は知らないんだ! そこに勝ち目があるかも! 「ねえ、サトシ。コンテストバトルの戦法でやったら勝てるかもしれないわ」 あたしはすぐに、この事をサトシに教えた。 「コンテストバトルの戦法?」 「Gは、サトシの戦術は知らないものはないって言ってたけど、コンテストバトルの事は知らないみたいよ。やれる?」 「・・・自信はないけど、やってみる!!」 サトシは、はっきりとうなずいた。あたしは、そんなサトシを信じた。 「ミロカロス、“からげんき”!!」 ミロカロスの尻尾が、2匹に迫る! 「ミミロル、コンテストバトルのつもりでやるわよ!!」 「ピカチュウ、クロガネジムのジム戦の事を思い出すんだ!!」 ミミロルとピカチュウは、ミロカロスをギリギリまで引き寄せる。まだまだ、慌てないで・・・!
・・・・・・今だ!! 「よけて!!」 その声が、サトシと合わさった。ミミロルとピカチュウは、ミロカロスの横に飛び込むようにミロカロスの尻尾をよけた! 空を切るミロカロスの尻尾。きれいに着地したミミロルとピカチュウに対して、体制を崩したミロカロス。 「何!?」 「今よサトシ!! タイミングを合わせて!!」 「ああ!!」 その隙は逃さない! ミミロルとピカチュウが攻撃態勢になる。2匹は互いに顔を合わせてうなずいた。 「ミミロル、回りながら“れいとうビーム”!!」 「ピカチュウ、こっちも回りながら“ボルテッカー”!!」 2匹はすぐにジャンプする。ピカチュウが前に出る。そして、ミミロルが体をミロカロスに向けて、体を軸に回転しながら“れいとうビーム”を発射! “れいとうビーム”が渦を描きながら飛んで行く! それに合わせて、ピカチュウも体を軸に回転させながら、“ボルテッカー”でミロカロスに飛び込む! そして、渦を描きながら飛んで来た“れいとうビーム”が“ボルテッカー”を包む! “れいとうビーム”と回転の力、2つの力を借りたピカチュウは、勢いよくミロカロスに体当たりした! 「ピカアアアアアアッ!!」 「ミミイイイイイイッ!!」 2匹の叫びに答えるように、凄まじいパワーがミロカロスに流れ込む! さすがのミロカロスも悲鳴を上げる。ミロカロスの周りを、“アクアリング”の水のベールが覆うけど、それは前より弱まっている! 「何だこの威力は!? “アクアリング”の回復が間に合わないのか!?」 Gの動揺が大きくなってる。これなら、勝てる! 「行けええええっ!!」 「ピカアアアアアアッ!!」 「ミミイイイイイイッ!!」 あたし達の叫びに答えるように、ミミロルとピカチュウはさらにパワーを強める。ミロカロスのダメージがどんどん増えていく。ミミロルが、どんどんミロカロスへ落ちていく。ミミロルがピカチュウにぶつかろうとした時、2匹は攻撃をやめて、お互いの体を押し合ってミロカロスの横へ離れた! 着地するミミロルとピカチュウ。それと同時に、ミロカロスが大爆発! 「決まっちゃったわね、2人の『ラブラブアタック』」 それを見ていたミライさんが、そんな事をつぶやいた。 「やった・・・の・・・?」 あたしは、固唾を呑んで見守る。煙の中から、ミロカロスがゆっくりと立ち上がったのが見えた。まだやられてない・・・!? 「まだか・・・!!」 サトシは唇を噛んだ。 「フン、やはりこんな事で倒れるミロカロスでは・・・」 Gがそう言いかけた時だった。やられてないと思ったミロカロスは、ゆっくりとその場に倒れた! 勝った! 「やった・・・ミロカロスを倒した・・・!!」 「やったぜ!!」 サトシは、思わずジム戦で勝った時のように声を上げた。 「こ、こんな事が・・・!!」 Gは自分の負けが認められないのか、ショックでしばらくの間その場に立ち尽くしていた。少しすると、何か思い立ったように、ミロカロスを戻した。 「くそっ!! こうなったら出直すしかない!!」 Gは突然、身を翻してその場から逃げようとする! 「そうはさせないわ!!」 すると、あたし達が行動するよりも早く、ミライさんの声が聞こえてきた。見ると、ミライさんだけじゃなくて、カズマやタケシも起きてる。 「さっきのお礼はきっちりさせてもらうわよ!! グレイシアちゃん、“ふぶき”!!」 ミライさんの指示で、グレイシアは“ふぶき”をGに向けて発射する! 「バ、バカな・・・俺は、どこで計算を間違えたというのだ・・・!?」 Gが抵抗する間もなく、Gは“ふぶき”に飲み込まれた。そして、たちまちその体は氷付けになった! 「やったぜ!!」 ガッツポーズを取るカズマ。氷付けになって動かなくなったGに、ミライさんが歩いて近づいた。 「どこで計算を間違えたのかって? あなたが1つだけ計算し忘れていた事・・・それは、サトシは1人じゃないって事よ」 ミライさんは、さっきのGの言葉に答えるように、凍ったGに言った。 「・・・ま、とにかくこれにて一件落着〜、なんてね!」 ミライさんはGに背を向けて、いつもの軽いノリに戻ってそう言った。
「終わったんだね・・・」 あたしは、ほっとしてつぶやいた。 「ああ・・・俺達は、勝ったんだ。ヒカリのお陰だよ。あのままだったら、俺は勝てなかったよ」 サトシが、あたしに顔を向けた。 「ううん、こっちだって、サトシに助けられちゃったもの。お礼を言わなきゃいけないのは、こっちの方よ」 サトシの言葉に、あたしはちょっと照れた。 「ホントに、ありがとな」 「こっちこそ、ありがとう・・・」 お互いにお礼を言い合う。無事でいてくれて、ホントによかった・・・あたしは何だか、暖かい気分になった。すると、急に頭がふらついてきた。 「う・・・」 体の力が抜けて、倒れそうになる。でも、すぐにサトシの両手が止めた。 「しっかり立てよヒカリ、こんな所で倒れちゃったら、何にもならないじゃないか」 サトシが、笑みを浮かべてあたしに言った。そんなサトシの姿が、ちょっとだけカッコよく見えた。 「・・・ダイジョウブ!」 あたしも、精一杯の笑顔で答えた。 「さ、みんなの所へ行こうぜ」 「うん!」 あたしは、サトシに支えられながら、みんなの所へ歩いて行った。 ミミロルも、ボロボロになって膝をついていたピカチュウに笑みを浮かべながら手を差し伸べた。ピカチュウは笑みを返しながらその手を取って、ミミロルに支えられながらあたし達の後をついて行った・・・
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ポケモンハンターGは、ジュンサーさんの所に届けられて、見事御用となった。そして、あたし達はしばらくの間、ケガの手当てのために、充分な休みを取った。
そして今。あたしとサトシは、バトルの真っ最中。相手は、ミライさんとカズマ。そう、あの時できなかったバトルの決着をつけていたの。もちろん、あの時と同じポケモンで。白熱するバトルが続く。 「グレイシアちゃん、“こごえるかぜ”!!」 ミライさんのグレイシアが、“こごえるかぜ”を発射! ミミロルとピカチュウに飛んで来る! 「よけて!!」 あたしとサトシの声が合わさった。ミミロルとピカチュウは、“こごえるかぜ”をうまくよけてくれた! 「そこだ!! ナエトル、ミミロルに“タネマシンガン”だ!!」 よけた隙を狙って、カズマのナエトルが“タネマシンガン”を撃つ! いけない、よけられない! 「ピカチュウ、“10まんボルト”で“タネマシンガン”を打ち消すんだ!!」 とっさにサトシが指示した。ピカチュウが“10まんボルト”でリリーフ! たちまち“タネマシンガン”は“10まんボルト”に打ち消されて、さらに電撃はナエトルに命中! 効果は今ひとつだけど、結構ダメージを与えられたみたい! 「ありがと、サトシ」 「どういたしまして! じゃ、次はこっちから行くぜ!!」 「ええ!!」 そんなやり取りをした後、あたし達は反撃に出る! 「ミミロル、ナエトルに“れいとうビーム”!!」 「ミミ〜・・・!!」 ミミロルが、“れいとうビーム”の発射体勢になる。ナエトルに当たれば、効果は抜群! 「グレイシアちゃん、ガードの用意をして!! “ミラーコート”!!」 とっさにミライさんがリリーフに入る。グレイシアが前に出て、“ミラーコート”の構えを取った! 「ロォォォォッ!!」 ミミロルは、それでも構わずに“れいとうビーム”を発射! このまま当たっちゃったら、跳ね返されちゃうけど・・・ 「今だピカチュウ!! グレイシアに“アイアンテール”!!」 すぐに、サトシが指示を出した。ピカチュウが、グレイシアに向かって一気に飛び出す! 「!?」 「ピッカア!!」 グレイシアの不意を付いて、“アイアンテール”を叩き込む! “ミラーコート”じゃ、物理わざは防ぐ事はできない! 効果は抜群! 弾き飛ばされるグレイシア。その横を、ミミロルの“れいとうビーム”が通り過ぎる。そして、ナエトルに見事命中! 効果は抜群! そう、これがあたし達の作戦。グレイシアがガードをしようとした所を狙って、ピカチュウの“アイアンテール”。そして、ガードがなくなった所に“れいとうビーム”が飛んで行くって寸法。 「グレイシアちゃん!!」 「ナエトル!!」 2人が声を上げた。グレイシアが倒れる。そして、ナエトルも、凍りついたまま動かない。 「グレイシア、ナエトル、両者戦闘不能! よって勝者、サトシとヒカリ!」 タケシが左手を上げて、試合終了を知らせた。こっちの勝ち! 「やったあ!!」 あたしは、思わず声を上げた。だって、最初の時と違って、ちゃんとしたタッグバトルができたんだから! 「くそっ、負けちまったか・・・」 「なかなかのチームワークだったじゃない。敵ながら見事、なんてね。『ケンカするほど仲がいい』ってのは、まさしくこの事ね」 唇を噛むカズマと、あたし達の戦い方に感心するミライさん。 「ピッカチュウ!!・・・ピカ!?」 「ロ〜ルロ〜ル!!」 ミミロルは、嬉しさのあまりガッツポーズを取るピカチュウの手を取って、踊り出しちゃってる。ピカチュウは、それに振り回されてるっぽいけどね。ピカチュウと組めてバトルに勝てたのがよっぽど嬉しかったんだね。 「やったな、ヒカリ!!」 「ええ!!」 あたしとサトシは、そう言ってハイタッチをした。
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そして、日も暮れてきて、あたし達が出発する時が来た。 「・・・そう、トバリシティに行くのね」 「ああ、そこでジム戦に挑戦するんだ!」 「フフ、がんばるのよ。吉報を待ってるわ」 サトシとミライさんが、そんな話をしていた。あたしとタケシは、そんな様子を後ろから見ていた。 「・・・さて、最後に1つ、言わせていい?」 ミライさんが、右手の人差し指を立てた。 「何?」 「サトシは昔っから何でも1人で解決しようとするよね」 「・・・?」 ミライさんが、サトシの両肩に両手を置いた。 「でも、いつもそういくとは限らない。1人じゃうまくいかない時だってあるわ。どんなに力が強くたって、1人きりじゃ戦う事はできないわ。そういう時は、無理しないで誰かに頼ってもいいのよ」 「誰かに、頼る・・・?」 「ほら、サトシにはこんないい仲間達がいるんだから」 ミライさんは、あたし達の方を指差した。サトシが、こっちを向く。あたしは、そんなサトシに自然と笑顔を見せていた。それを見たカズマは、ちょっと動揺した様子だった。 「・・・そうだな。わかったよ」 サトシがそう答えた時、何かを我慢できなくなったように、カズマがあたしの前に出た。なぜか目は伏せている。 「ヒカリ・・・」 「何?」 「・・・ケンゴにあったら、よろしく言っとくからな。コンテストも、応援してるからな。じゃあな!!」 「あっ、ちょっと・・・!!」 カズマはそう言った後、何かを振り払うように突然あたしを通り過ぎて走り去って行っちゃった。その時見たカズマの顔は、何かをこらえている様子だった。 「あらあら・・・とにかくサトシ、仲間を大事にするのよ! じゃあね!」 ミライさんは、そう手早く言った後、カズマの後を追いかけるようにその場を走り去って行った。 「じゃあな〜、ミライ! また会ったら色々話しような〜!」 「さようなら〜!」 サトシが、手を振ってミライさんを見送った。あたし達も手を振る。ミライさんが、手を振って答えたのが見えた。
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「ちょっと待って〜!」 ミライさんがやっとカズマに追いついた。カズマはまだ、目を伏せている。 「どうしたのよ、急に・・・まさか、ヒカリちゃんの事?」 「・・・・・・」 カズマは黙り続ける。 「図星のようね。男らしくないわよ。『ヒカリちゃんをあいつから奪い取ってやる!』とかって思ってないの?」 「・・・いや、もういいッスよ。ヒカリは、あいつの方に気があるっぽいし・・・やっぱ初恋って、実らないものなんだな・・・」 いつもの軽いノリで聞くミライさんに、カズマは顔を上げてそう答えた。その顔は、すっきりした様子だった。 「・・・あら、あっさりあきらめちゃうのね。まあいいわ、ヒカリちゃんとサトシはきっといい仲になるわ。当の2人はまだ気付いていないみたいだけどね。その内気付く時は来るわ」 ミライさんは、空を見上げながらそうつぶやいた。 「かくして、事件は無事解決し、2人はさらに強い絆で結ばれたのでした、めでたしめでたし、なんてね!」
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あたし達も、トバリシティに向けて出発した。 あたしは、サトシに目を向けた。サトシの横顔が見える。やっぱり、サトシに会えてよかった。これからも、今までのように一緒に旅をしていきたいな。そんな事を思った。 「・・・ねえ、サトシ」 「何?」 あたしはちょっとサトシに聞いてみたい事があった。 「サトシって、今までいろんな所旅してきたんでしょ? だったら、その時の話、いろいろ聞かせてくれない?」 「え?」 サトシは、目を丸くした。当然か、こんな事自分から聞こうとなんてしなかったからね。何だかあたし、サトシの事がもっと知りたくなったの。サトシが、今までどんな所を旅してきて、どんな事を経験したのかを・・・できる事なら、全部聞きたい。 「そんな事言われてもなあ・・・」 サトシはしばらく考え込む。 「だったら、俺が話してやろうか?」 「タケシには聞いてないの!」 タケシが首を突っ込んできたけど、あたしは断った。あたしは、サトシの口から聞きたかったんだから。 「・・・そうだ! いい話があった!」 「聞かせて聞かせて!」 サトシが、何か思いついたみたい。どんな話なのか、わくわくしてきた・・・!
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こうしてあたし達の旅は、まだまだ続く。続くったら、続く・・・・・・
STORY05:THE END
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