小説『アルジャーノンに花束を』について
アメリカ小説。作者 ダニエル・キイス
訳 小尾芙佐
ストーリー
32歳の男性、チャリィー・ゴードンはIQ68の精薄者。幼児の
頭脳しか持たないチャーリィだが、性格は明るく、向上心溢れる
青年。昼間はパン屋でゴミ出しや便所掃除などの雑用でこき使
われ夜は、精薄者の学校で読み書きを習う。
そんな彼に崇拝する精薄者クラスの担任のアリス・キニアン先
生が『知能が高くなる外科手術』の話を持ってきた。すでにネズミ
(名をアルジャーノン)で手術が成功しているので、今度は人間で
試したいという申しいれをチャーリィは受け入れる。
「ぼくは、皆が言っていることを理解できるようになりたい。そして、
政治や学問や神様の話がしたい。ぼくは、丈夫なので、痛い手術
もガマンできます」
手術は成功し、数ヶ月で彼はIQが急速に上がり、いつのまにか自分
を手術した外科医達の知能をはるかに追い抜いてしまった。
知能の低かった時には世界は未知の光に溢れていたのに、知りすぎ
しまったことで、彼はとまどう。もともと7歳くらいの情緒しか持たなかった
自分が急に高いIQを持ってしまったため、高い知能、低い精神年齢という
アンバランスな人間になってしまった。高い知能は冷静に状況を判断して
環境に適応しようとするが、幼い情緒がおいついていかない。そのギャップ
に悩むチャーリィ。
そして、失踪。彼は自分と向き合うことで手術前の人格が自分のなかに息
づいていることを確信した。
彼は自分のいた場所に戻る決意をする。時間がない・・・・。
これ以上は書けませ〜ン。
日記形式です。
感 想
ヒトが何十年もかかって身に付ける知能をたった数ヶ月で会得してしまった
という夢のような話。
これも時間を凝縮したという意味ではSFの部類に入る物語だと思う。
初版は、1989年。最近、テレビドラマでこの物語をベースにしたのを放映
しているので、興味が出て、本を買い求めた。人の幸せってなにかな?と
考えさせられる1冊だった。
僕には友達がいると思っていた手術前のチャーリィ。
手術後、皆が笑っていたのは自分のことを友達だと思っていたのではなく
ただ、自分たちよりも劣る存在としてあざ笑っていただけだと気づいて失望
するチャーリィ。そんな彼を理解してくれるのは、同じような境遇のネズミの
アルジャーノンだけ。アルジャーノンの死。そして自分の未来を知能が高いが
ゆえに予測してしまう彼。すでに恋人同志となったアリスは必死で彼を励ま
すが・・・・。
ひとつ、不満があるとしたら、IQ68の人はもっといろんなことが理解できる
という事実を自分が知っていること。なので、もし、世間の人がこの小説を
読んで「IQ68の人ってこの程度か」なんてことを思ったら、こわいです。
だって、主人公になって文章を書いているのは健常者ですもん。なりきって
書いているだけで、真実とは違う部分もあります。
最後の『追記』に思わずホロリ・・・・。(しんみり)