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ゲド戦記「アースシーの風」 |
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From:つかもと
ともともさん、
お久しぶりです。
ゲド戦記「アースシーの風」を5回は読んだでしょうか。でも、ル=グウィンが伝えたかったことを読み取ろうとすると、読んでも読んでもまた新しい発見があり、それに、私の中でまとめようとすると、それも大変で、もう一回読んだらわかるかな?と、思って何度も読み返していました。一巻から思っていましたが、たぶん原文も、そして翻訳も、読んだ先から情景が浮かんでくるようにイメージがはっきりしていると思いました。原文も翻訳もよくできたかなりいい文なのだろうと思います。
それはそれとして・・・ 「アースシーの風」は、オジオン老師の末期の言葉「何もかも変わった!変わったんだよ、テナー!」これにまとめられるでしょう。
ル=グウィンが3巻まででいったん打ち切ったと思われた「ゲド戦記」が、再び「帰還」が書かれ、それも「最後の書」とされるはずだったのにまた「外伝」「アースシーの風」と続いたのには、それなりの理由があると思います。ル=グウィンが書き終えた時点では完成したと本人は感じていたのであろうけれど、数年たってみると、実は未完成でいろいろな限界を含んだものであると思い、改めて話を続けたのではないでしょうか。また「外伝」その他のお話を加えたのではないでしょうか。
未完成であり限界をもっていたと私が感じる点はいくつかあります。 ロークはなぜ独身男性だけにしか門戸を開いていないのか?真の魔法を使うことを許されているのはなぜ男性だけなのか? 2巻「こわれた腕輪」でテナーが真の名前と自由を獲得するところは、同じ女性としてとても心をゆさぶられました。しかし、振り返ってみるならゲドという王子様に救い出される白雪姫のようです。
世の中は、男だけでもなく女だけでもなく男女両方また自然の動植物・いろいろな国などすべての存在から成り立っています。それを考えるなら魔法自体がアーキペラゴを支配する道具となっていて、支配被支配の関係をつくる元となっています。3巻「さいはての島へ」でクモのしたこと、また「外伝」で呼び出しの長トリオンが生き返ったことなどは、そのよい例でしょう。
また、ル=グウィンは4巻「帰還」を中心に目をそむけたくなるような人間社会の現実もあえて描きました。4巻のお話の中でテハヌー・テナー・ゲドが受けた暴力、5巻のお話の中で力を失った元大賢人ゲドに対する村人の冷たい態度、ハンノキの妻ユリがまじないの力を持っていることで親子の縁を切られたこと、セセラクとレバンネンの間の互いの外国人に対する偏見など、数え上げればきりがありません。 一番は、「西の果てのそのまた西」の石垣の存在でしょう。 3巻の黄泉の国が、死んだ人間の魂だけが真っ暗な廃墟のような町のなかに存在する国が、実は魔法の力で作り上げられたものであり、それも、同じ竜に生まれながら竜と人間にヴェル・ナダンという協定を結んで分かれたはずの協定を破って魔法の力によって築かれた場所なのだということには、びっくりしました。
5巻「アースシーの風」は、そのような、男と女の関係また支配被支配の関係を、いったんぶち壊し、また、作り直す、そのためのお話だと言えましょう。
ハンノキは、壊れたものを直す修繕専門のまじない師で、黄泉の国で全き死を求めるたくさんの人たちの心を生きている側に伝える役割を果たして、そして、使命を全うして愛しい妻のもとに行ってしまいました。
テハヌーも、ついに自分が何者かをその身で確かめることができました。そして行ってしまいました。
このお話のテーマは実にたくさんの要素があると思いますが、オジオンのいう『変化」そしてその変化は「和解」に向かっていると思いました。最終的には、竜と人間との和解、男と女の和解、カルガド帝国とレバンネンの治める国との間の和解、死んだ者と生きている者との和解・・・いろいろありました。
そして、ゲドとテナーの老いてさらに深まる人間としてのつながり、生活の実感。
もっといろいろ思ったことはたくさんあるのですが、まだ、まとまりません。
2007年05月05日 (土) 21時00分
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変化と和解 |
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From:ともとも
つかもとさん、毎度ながら素晴らしい投稿をありがとうございます。 「変化」と「和解」 本当にそうですね。第5巻を表現するのに、まさにふさわしい言葉だと思います。
自分の感じていた言葉にできない「想い」を、こうやって端的に表現してくださると、胸の中のモヤモヤした感じがすっきりと形になってくる感じがいたします。 ありがとうございました。
第5巻は、新しい時代のアースシーを描いたものだと思いますが、私は、まさにこの5巻を読み終えた時、「ああ、ゲド戦記は本当に完結したんだな」と感じました。 このシリーズは本当に一生手元に置いて読み返す本になると思います。 そういう本って、大切ですよね。
2007年05月07日 (月) 16時11分
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From:つかもと
ゲド戦記は、外伝も読んだのですけど、一巻の「影との戦い」がやっぱり一番好きです。(二番目に好きなのは、外伝の「かわうそ」です。) 10代それもティーンエイジャーの時期を生きるのはだれにとってもつらい厳しいときなのですね。ゲド少年の10代の軌跡は、まさに疾風怒濤、いったい何度半死半生になったことでしょう。 「傲慢な少年だったゲドは、ライバル視しあっているヒスイの挑発にのり・・・」なんていう文章は本当のことだとしても、ゲドがどれだけ努力して生きてるのかわかって言ってるの!?なんて、怒りたくなるほどです。 でも、怒りのあまり、絶対してはいけないことをしてしまったり、後始末をしてくれた人が結果死んでしまったり、言い訳はきかないことをしてしまった以上、それを背負って生きていかなければなりません。 オジオンは、オジオン老師とお呼びしたいくらい好きです。ともともさんが語録に載せていらっしゃるように、心に響くことばがたくさんあります。 ゲドは、苦しい時期をよく最後までがんばりました。 オジオン老師に背中を押され、カラスノエンドウという親友に伴ってもらい、考えてみれば、彼は必要なときに必要な人に恵まれました。人間は、真剣に物事に取り組んでいれば、きっと必要な援助者が与えられるのかもしれません。 さて、次は何を読もうかな・・・と、考えています。 ともともさんの図書室を参考にさせていただこうと思っています♪
ともともさんといっしょに大好きな本を楽しめて、とてもうれしいです。これからも、またごいっしょに、本を楽しませてください。
2007年05月10日 (木) 08時01分
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影との戦い |
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From:ともとも
オジオンの言葉は、含蓄にとんだものが多いと思います。「師匠」ですよね、本当に! 私もどれが一番好きかと言われれば「影とのたたかい」でしょうか・・。「こわれた腕環」も捨てがたいですが・・。
最近は少しずつですが、読書タイムもとれるようになってきました。 良書を少しずつ楽しんでいきたいです。 感想を聞かせていただくのは大好きですので、またお気に入りの本の感想など、教えていただけると嬉しいです♪
2007年05月12日 (土) 20時57分
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