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モモとご主人様の1夜【第5話】

[131]K'SARS


「ただいま〜と」
 夜の町から帰ってきた僕とモモ。
 道中、モモは僕の手を強く握って、今までよりも明るい笑顔だった。
 会話も弾んで、すごく楽しかった。
「おっと、電気をつけないとな」
 ぱち。
「きゃ!」
 玄関の電気がついた途端、モモはいきなり僕にしがみついてきた。
 そういえば、モモが買い物から帰ってくるときは、いつも電気がついていたっけ。
 少しずつトラウマが解消されてきたと思ったけど、やっぱり、モモは電気が苦手なんだな。
「大丈夫だよ。何も心配する事無いから」
「は、はい。ありがとうございます、ご主人様」
「さて、中に入ろうか」
「はい」
 とはいえ、暗い部屋の中をモモに歩かせるわけにはいかないから、まず僕が先に入って、リビングの電気をつける。
 そのあとでモモを入らせた。
 それにしても、随分と久しぶりに誰もいない我が家に帰ってきたな。
 みんなが僕のところに来てからというものの、誰かが家の中にいて、必ず「おかえりなさい」って出迎えてくれた。
 こんなに寂しいものなんだな、誰もいない家って。
「…なんか、寂しいです」
「モモも、そう思うかい?」
「はい。やっぱり、お姉ちゃんたちがいないと、モモは、寂しいです」
「やっぱり、寂しいよな」
「…はっ。で、でも、ご、ご主人様がお側にいてくれるので、も、モモは、ちっとも寂しくないです」
「あははは。ありがとう」
 慌てて弁解するモモの姿も、かわいかったな。
「そういえばさ、お守りに願い事、決まった?」
「まだです。だって、たくさんありすぎて、どれにしたらいいのか、わからなくて…」
「まあ、ゆっくり考えればいいよ。まだ時間はあるんだし」
 そういえば、あの女性、どうして12時間以内って言ったんだろうな。
 叶えるのは僕だから、期限なんてどうでもいいだけどな。
 まあ、深く考えてもどうにもならないから、モモが言ってくれるまで待つことにしよう。
 さてと、お風呂でも沸かそうかな。
 立ちあがって浴室に行くと、誰かが掃除していったのか、綺麗になっていた。
「あっ、モモがやります」
 湯船のお湯を入れようとしたときに、後ろからモモがやってきた。
「いいよ。これぐらいできるから」
「でも、あの…」
「…わかったよ。モモにしてもらうよ」
「は、はい!」
 この場をモモに任せて、僕は台所に向かう。
 何をするかと言えば、ホットミルクを作るのだ。
 モモ専用と僕専用のカップを出して適量に牛乳を入れた後、レンジに入れてセットする。
 火を使うよりも、こっちの方が断然時間がかからない。
「ご主人様、終わりま…した」
「あっ、うん」
 一瞬台所に姿を見せたモモだったが、すぐに引っ込めてしまった。」
 そういえば、モモはレンジが動いているときは、近づけないんだっけ。
 うっかりしたな。
 温め終わったら少々の砂糖を入れて、リビングに戻る。
「はい、モモ」
「ありがとうございます」
 カップを受け取ったモモは、火傷しないように冷ましながら両手で飲んだ。
 僕も合わせるようにカップに口をつけて飲む。
 と同時に、また静寂が包むが、さっきのような重たい空気は流れない。
 むしろ、この静寂が心地よいものになっていた。
 これは、モモと僕との絆が深まったからかもしれないな。
「…あの、ご主人様」
「うん?」
「モモ、1つ目のお願い事、決まりました」
 少し遠慮がちに、モモは言った。
「そっか。それで、どんなの?」
「はい。えっと、ご主人様のお膝の上で寝たい、です」
「僕の膝の上で寝る?」
 ということは、俗に言う『膝枕』か。
「モモ、タマミお姉ちゃんがしているのを見て、羨ましくて、その…」
「ああ、そういうことか」
 そういえば、タマミにしてあげてたところを、モモたちに見られたっけ。
 そのぐらいなら、お安いご用かな。
「じゃあ、モモの1つ目のお願い、叶えてあげるね」
「は、はい!」
 今にも飛びあがりそうなモモの嬉しそうな笑顔を見ながら、僕はタマミにしてあげたように正座になる。
 本当なら僕がモモの膝の上で寝たいのだけど、今はモモのお願いを聞いてあげなければならないので、ぐっと堪える。
「さあ、モモ」
「は、はい。じゃあ…」
 モモはごろんと僕の膝の上に頭を置く。
 桃色の長い髪が、無造作に散らばる。
 そして僕は、そんなモモの顔を上から見上げている。
「どう? 寝心地は」
「はい。とても、とても気持ち良いです」
「そっか」
 満面の笑みを僕に向けるモモ。
 そういえば、タマミにはこれもしてたっけ。
 なでなで。
「ご、ご主人様…」
「これはサービスだよ。モモが、いつも良い子にしているご報美と、それと…」
「それと?」
「…僕からの、気持ちだよ」
 こんなものがお礼になるとは思ってもいないが、少しでも感謝したかった。
 僕を大切に持ってくれる、モモの気持ちに。
「……ふあ〜」
「モモ?」
「す、すみません。あの、その…」
「…そっか、もう遅いもんな」
 時計を見てみると、もう10時を過ぎていた。
 普段だと、もうモモは寝ている時間だ。
「眠いんだろう?」
「…はい」
「そっか。じゃあ…」
「…モモ、2つ目のお願い、言ってもいいですか?」
 僕がモモの体を起こそうとしたとき、急にモモが言ってきた。
 少しだけ戸惑ったものの、僕は少しの嬉しさを持って、
「いいよ。言ってごらん」
 と、笑って言ってあげた。
「モモの、2つ目のお願いは、ご、ご主人様と、い、一緒に、眠りたい、です」
「…そっか。じゃあ、どっちで寝ようか?」
「モモは、ご主人様のお布団で、眠りたいです」
「じゃあ、連れて行ってあげる」
「えっ? …きゃあ!」
 眠っているモモの体を持ち上げて部屋へと向かって、ゆっくりとモモを降ろしてやった。
「…ご主人様の、匂いがします」
「そりゃ、僕がいつも使っているからね。嫌だった」
 ぶんぶん。
 モモは髪を乱すほど、激しく横に振った。
「も、モモは、ご主人様の匂い、好きです。大好きです!」
「あはは、ありがとう。さてと、寝ようか」
「はい」
 僕は家中の電気を消してから、布団の中に入った。
「…なあ、モモ」
「なんですか?」
「まだ1つだけ、お願いが残っているんだけど」
「…まだ、決めてません」
「そっか。まあ、無理に決める事無いからさ、ゆっくり考えなよ」
「はい。ご主人様」
 それからしばらくして、モモは夢の中へと入っていった。
 おやすみ。
 ちゅ。
 モモの頬にキスをして、僕も眠りについた。


 まいどおなじみ、一方その頃。
「きゃぁぁぁぁぁぁ! ご、ご主人様の甘い唇が、も、モモのほっぺにーーーーーー!!」
「ご、ご主人様…」
「ああー、ランちゃんがおよよよ〜って感じでしゃがみこんじゃったの〜」
「まあ、しょうがないよ。アタシだって、結構ショックなんだから」
「うう、モモちゃん、ずるいです」
「いいな〜、モモ」
「モモ姉たんだけ、ずるいお〜」
「ミドリさんも、してもらいれすね」
「ご主人様が悪いわけじゃないけど、なんか、こう、狩猟本能が…」
「あらら、みなさん、個々のリアクションをとっていますね」
「しょうがないですわよ。わたくしたち全員は、ご主人様のキスに憧れているのですから」
「もう我慢できない。ミカは、ご主人様の元に帰るーー」
「ミカちゃん、そんなに急がなくても帰れますわ」
「へ?」
「うふふ、どうせなら、みなさんで帰りましょう。そして、種明かしをしてあげないと、読者の人たちもわかりませんでしょうし」
「というわけで、明日の朝一に帰りますわよ」
「「「「「「「「「は〜い(なの〜)」」」」」」」」」
 ということを話していましたとさ。

<続>



 



  後書き♪

 なんか、ものすごくあま〜ったる仕上げしまったような…。
「これ、あま〜ったる度、どのぐらいなんですか?」
 …4ぐらいだな。
「これで、4、なんですか?」
 まあ、そうだな。
 頑張ればもっとあま〜ったい展開を作れたんだけど、今回は4ぐらいにしないと収集がつかなくなってしまうからな。
「とはいえ、出来はそんなに悪いような感じはしませんけどね」
 …ありがとうな。
「うう、信じていませんね〜」
 信じているともさ。
 なんといっても、サキミは俺の守護天使だからな。
「えへへ、ご主人様〜」
 ということで、次回もお楽しみに〜
「バイバイですぅ〜」

メール 2003年10月21日 (火) 16時02分




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