第九章〜力の分散〜
『レイラとバルスに告ぐ。すぐさまデボロ城頂上、王の席前に来ること』
ハイツがテレパシーでレイラとバルスに命令をくだした。
一分もすると、ハイツの前に二人がひざまずいた。
「何のご用でしょうか?」
レイラがひざまずいたまま顔をあげて言った。
「二人で心の森に行き、風の脅威の偵察をしてきてほしい。可能であれば捕縛し、連れてきてくれ」
バルスが顔をあげる。
「その他二つの脅威はいかがいたしましょう?」
「うーん……でも、風の脅威さえ手に入れれば、他の奴らもくるだろうから、風の脅威だけでいい。欲張りすぎて失敗するよりましだから」
「かしこまりました」
二人は再び頭を下げる。そして、すぐさま立ち上がって、部屋から出て行った。それから、ハイツが一人ごちた。
「……レミウスを連れて行ってもよかったかもしれないな……」
「サバイバル、終了! 白く光る木の周辺に集合!」
ナゾナゾ博士が心球樹に垂れ下がっている白い球に向かって叫んだ。
そう、心球樹は、この心の森にいる人間・魔物全てにテレパシーを送ることのできる木だったのだ。
ナゾナゾ博士が気に腰をかけて待っていると、十分もすると、全員集まった。この付近にいたのだろう。
「では、みなの術が何個増えたか聞こう。浩二君は何個増えたかね?」
「四個増えました」
浩二はへなっと地面に腰を下ろした。その膝の上にレインが乗っかった。
「……じゃあ、真奈美君は?」
「私は、四個増えました」
「同じじゃな。で、フォーラ殿は?」
ナゾナゾ博士が少し声を低くしてフォーラに聞いた。
「六」
フォーラはさらに低い声で、そう一言だけ言った。
「……シェイン君は?」
「はっはっは、私たちに新しい呪文など必要なーい!」
「……増えなかったのか」
「必要ないといっているのだよ、今つかえる呪文はなんといっても十一個だからね!」
「そ、それなら必要あるまい」
ナゾナゾ博士は思わず納得してしまった。
そのまま話をすすめていく。
「では、あの白い球に皆、触れてくれ。心の力が回復する」
そういわれると、みんな心球樹に触れて心の力を回復した。
「では、森を出るぞ」
ナゾナゾ博士が言うと、みんな森の外に向かって歩き出した。
「おお、出口が見えてきたぞ」
ナゾナゾ博士が出口を出口を指差した。
「いえーい♪」
シェインが森からやっと開放された、という風に出口に走り出した。
そのとき、上空から何か光るものが飛んできた。それがシェインの足元に当たった途端、爆発を起こした。
「うわぁぁぁ〜!」
シェインが情けない声を出して、浩二たちの下に戻ってくる。
「誰だ!」
浩二が叫ぶと、木のうえから二人誰かが下りてきた。その一人を見て、ナゾナゾ博士が声をあげた。
「レイラ!?」
レイラは首をかしげる。
「何で私の名前を知ってるの?」
「……清麿のいっていたとおり、レイラはわしたちのことを忘れているのか……」
レイラの隣にいた、目つきの悪い男がしゃべり始めた。
「俺の名はバルス。レイラと共に、風の脅威者を連れてくるように命じられた」
「な、なに!?」
浩二が声をあげた。
「じゃあバルス……捕縛開始よ!」
「おう!」
二人がはじけたように動き出した。レイラは生い茂る木の上に、バルスは地上で走り回っている。
「み、皆! 構えるのじゃ!」
パートナーたちは魔本を開いた。レンがバルスに向かって動き出した。
「ラギュウル!」
暗黒がバルスに向かって飛ぶ。
「第一の術、ルゲン!」
バルスが叫んだ。腕から電撃が放たれた。そして暗黒とぶつかり合って、相殺した。
ルルは手を上に向けて構える。
「ビシルド!」
真奈美はいつもより力を入れて呪文を唱えた。
上空に大きな焔の盾が現れた。
「これであの女の子からの攻撃は食らわないわ!」
そのことより、浩二はあることが気にかかっていた。いや、全員が考えたはずだ。浩二が口を開いた。
「おい、なんでほんの使い手がいないのに、術が使えるんだ?」
バルドが返事をする。
「教えるわけ無いだろ! ルゲン!」
再び稲妻が走る。
「ウィス!」
風の衝撃波が現れ、素早く飛んでいく。それは稲妻とぶつかり合い、相殺した。真奈美の思ったとおり、上からも攻撃が跳んできた。青白く光る鞭が何度も何度も飛んでくる。
「くっ……盾も、もうもたないわ! 誰か防御呪文を!」
レンがうなずいて、右手を上に向ける。
「ラギュシルド!」
焔の盾が消えた瞬間、暗黒の盾が現れた。バルスの攻撃もやまない。
「フルン!」
バルスの腕から水が放たれた。それは物凄いスピードで飛んできて、ルルに命中した。
「きゃぁぁぁ!」
二重人格が登場しなかったのが、不幸中の幸いだった。ルルはうめきながらも、何とか立ち上がった。
次は上から月の形をしたブーメランが飛んできた。
「防御呪文があることを、忘れたか!」
レンが叫んだ。だが、その月は途中で横に回転して、盾をかわし、再び四人に襲いかかってきた。
「ラージア・ゼルセン!」
キッドの腕が巨大化し、放たれた。それは月を粉々に破壊し、再び戻った。
「上から小手先の攻撃なぞしようと、無駄じゃ! 降りて来い!」
ナゾナゾ博士が叫ぶと、レイラがバルスの横に飛び降りてきた。
「ふーん……統制の取れたパーティーってわけね。でも、私が地面に下りてきたからには、余計大変かもよ?」
レイラは月の杖を四人に向ける。すると、巨大化した月のブーメランが飛び出した。全員が目を疑った。
「び……ビシルド!」
盾を張るが、やはりそれはかわされて、全員が吹き飛ばされた。立ち上がりながら浩二が聞く。
「な……何故呪文を唱えなくても、術が出るんだ!」
「だから、教えるわけ無いじゃない」
「オルダ・フルン!」
レイラはさらに巨大な月を放ち、バルスはその横で水の鞭を放ってきた。
真奈美が術を唱える。
「ギガ・ラ・ビシルド!」
レイラとバルスの周りに焔の膜が現れた。レイラの月は焔にはじかれ、水は高熱で蒸発した。
「フル・バカラ!」
中でバルスの叫ぶ声が聞こえた。さらにバルスが叫ぶ。
「オルダ・フルン!」
爆発音がして、白い煙が立ち昇った。爆発の衝撃で、全員が顔をそむける。
真奈美再びがそちらを見てみると、
「盾が消えてる!」
気づいたときには遅かった。巨大な月が再び四人の目の前まで迫っていた。全員は再び吹き飛ばされ、体じゅうに傷ができて、血が滴り落ちる。ウェンが真っ先に立ち上がって、フォーラに合図を送った。
「グ・リアルク!」
ウェンの姿が消えた。
その後、続々と立ち上がり、立て続けに呪文を唱えていく。
「オルダ・ウィガル!」
レインの杖から竜巻が複数現れた。
「ラージア・ゼルセン!」
キッドの両腕が巨大化する。
「ドムルド!」
ルルの腕が赤く光る。
「オルガ・ラギュガル!」
レンの腕が黒く輝いていく。
次の瞬間、複数の竜巻と、キッドの両腕と、爆発の波動と、超回転する暗黒全てが同時に、ものすごい勢いでレイラとバルスに飛んでいく。
「ふん、そんなもの……」
バルスとレイラが呪文を使おうとしたとき、フォーラが叫んだ。
「ゴウ・エドルク!」
その瞬間、二人は後ろから何かに殴られて、前方に吹っ飛ばされた。前から飛んできていた呪文全てに激突した。
「きゃぁぁぁ!!!」
「ぐわぁぁぁ!!!」
二人は悲鳴を上げて地面に倒れた。それを見下ろして浩二がもう一度聞いた。
「なんで呪文を唱えなくても術が出る!? なんでパートナーがいないのに術が出る! 何故だ! 答えろ!」
二人は浩二の怒った顔をみると、にやりと笑った。
「教えない」
レイラが言うと、浩二に向けて杖を向けて、青白い鞭を放った。突然のことに、誰も対応しきれず、浩二に鞭が直撃した。
後ろに吹き飛んだが、全員で受け止めた。
「大丈夫かね、浩二君」
「えぇ……」
「そうだ!」
シェインが叫んだ。
「耳元で叫ばないでよ……」
真奈美に注意されると、シェインは小声でしゃべる。
「二手に分かれて森に入れば、相手の力が分散できるではないか!」
「こちらも分散するでしょうが」
真奈美はあきれるが、ナゾナゾ博士はこの意見に賛同する。
「……レイラが少しうっとうしいが、今はそれが最善の手じゃろう。ここで戦ってても、負けるのは時間の問題だ」
全員がこれにうなずくと、『浩二・真奈美・シェイン』と『ナゾナゾ博士・フォーラ』に分かれた。
「何故わしがフォーラ殿と……」
ナゾナゾ博士が心底いやそうに言った。真奈美が言い返す。
「じゃんけんが一発で終わっただけでも、幸運だと思いなさい! 分かれましょう!」
フォーラがウェンを呼び戻すと、五人は二手に分かれた。
「に、逃げていくぞ!」
「バルスはそっちの老人たちを追って!」
レイラは浩二たち、バルスはフォーラを追っていく。レイラの方が、呪文を唱えるとき声がしない、というところで、森ではバルスより厄介だ。運が良かった。あの二人をレイラが追っていったら、少し危険だった。ナゾナゾ博士が浩二達に叫ぶ。
「あの木の前で合流じゃ! 分かったな!」
「えぇ!」
会話が終わると、二組は森に入りきって、お互いに見えなくなった。
(年寄り二人で、大丈夫かな……?)
浩二はそんなことを考えながら、森を駆け抜けていった。
第十章〜トレンタ〜
老人二人は、息をぜえぜえ荒げながら、森を疾走していた。後ろからは、バルスが追いかけてきている。
「ミスター・ナゾナゾ、そろそろ……」
「えぇ」
二人は立ち止まって、バルスのほうを向いた。魔物たちも立ち止まった。バルスも木につかまって、立ち止まった。にやりと笑って、バルスが言う。
「もう息があがったか、年寄りどもが」
その言葉を無視して、二人は魔本を開く。ナゾナゾ博士がバルスに言う。
「……どうやってわしらがここにいることが分かった、答えろ」
「教えない♪」
またいやらしくバルスが笑うと、腕を前に構える。
「オルダ・ルゲン!」
バルスの手のひらから、雷の鞭が現れ、キッドに飛ぶ。
「ゼルセン!」
キッドの腕が雷の鞭に飛ぶ。
「そうはさせるか!」
バルスが右腕を軽く曲げると、雷の鞭も軌道を変えて、腕を交わし、再びキッドに襲い掛かる。キッドの目の前まで雷が迫る。そのとき、フォーラが叫ぶ。
「ゴウ・エドルク!」
ウェンが現した棍で、すかさず雷を弾き飛ばそうとする。だが、またもバルスは軌道を変えた。今度はウェンの腹部を狙ってきた。それはみごとに命中して、ウェンは後ろに吹き飛んだ。
「だ、大丈夫か!?」
フォーラが叫ぶと、ウェンは顔をしかめて立ち上がった。
「フォーラ……もっと呪文を……」
ウェンがいき絶え絶えに言った。
「あぁ……ライツ・ソドルク!」
ウェンがレイピアを装備する。
「ふんっ、そんなもの……ルゲン・ザ・フルン!」
バルスの両腕から水と雷が現れた。水はナゾナゾ博士、雷はフォーラの魔本を狙っていた。
「アムゼガル!」
キッドの片腕が巨大化する。
「クロン・シルドルク!」
ウェンに迷彩柄の盾が装備された。
キッドはナゾナゾ博士に飛んでいく水を腕ではじき落とし、ウェンは盾を構えたまま横移動して、雷を防いだ。
「ウェン!」
フォーラがウェンに合図を送った。ウェンはうなずくと、剣と棍を投げ捨て、盾をもったままバルスに突っ込んでいった。
「キッド、わしらも応戦じゃ!」
「うんっ!」
強化した片腕をぶら下げて、キッドがバルスに突っ込んでいく。
「雑魚が……うっとうしい!」
バルスの周りの空気が変わる。なにか、危険な感じのする……それを察知して、ウェンとキッドが立ち止まるが、
「もう遅い! ドトン・ザ・ファイナル!」
ウェンとキッドの四方の地面が盛り上がって、土の箱を形どった。ナゾナゾ博士が叫ぶ。
「なんじゃ、あの術は!?」
その箱は、大きさが十メートルはあった。土は微小な光を帯びている。
「ラージア・ゼルセン!」
キッドの腕が巨大化し、土の壁に飛ぶ。ウェンは棍で土の壁を叩きまくる。
だが、どちらの攻撃でも、土の壁はびくともしなかった。
「はっはっは! その術は、どんなことをしても中からは壊れないのだ! これで終わりだ……ラウオン!」
バルスが叫んだ途端、土の箱のふたが物凄いスピードで落ちてくる。キッドが悲鳴をあげる。ウェンは少し汗を流しながらも、盾を上に向けて、呪文を唱える。
「オン・クロセン!」
唱えた途端、なんと盾の面から刺が突き出した。それは、土の天井を受け止めた。だが、あまりの重さにウェンは耐え切れず、天井は徐々に下がっていく。
「な、ナゾナゾ博士!」
キッドはウェンを助けようと、ナゾナゾ博士に叫ぶ。
「あ……あぁ……ゼシルド!」
女神の腕が現れて、それがでっぱりとなって、ウェンとキッドはつぶれなかった。
「あぁ……ありがとう、キッド」
「おうっ!」
キッドは威張って胸をはった。外では、ナゾナゾ博士が考え事をしていた。
(まずはあの魔物を倒すことよりも、土の箱から脱出することを考えなければ……ゼシルドもあまりもたない……どうする、どうする! このままでは、本が焼かれてしまう……!)
そんなことを考えていたら、前方の方にバルスが現れた。
「さあ人間共、たっぷり苦しむがいい! オルダ・フルン!」
バルスが水の鞭を取り出した。その鞭を振り回して、二人を地面に叩きつける。それから、何度も何度も、鞭で二人を殴る。
『ぐわぁぁ!!!』
二人の悲鳴が聞こえる。その悲鳴が耳に入った途端、ウェンはあることを思い出した。
「きゃぁぁぁ!!!」
お母さんがベッドの上で悲鳴をあげる。僕は泣きながら耳をふさいだ。お母さんは、いつもこれだ。朝起きた途端、悲鳴をあげ出す。
何でお母さんは叫ぶの、とお父さんに聞いたら、
「お母さんは、病気なんだよ。心の病気さ。呪文の力が強い代わりに、頭がおかしくなってしまっているんだ」
五歳の僕は少し戸惑った。
それから少しして、またお父さんに聞いてみた。じゃあなんでお母さんと結婚したの、と。するとお父さんは少し困ったような顔で、
「昔は穏やかで、やさしくて、美しかった……今は一つも当てはまらない、その上狂気だ……結婚を後悔しているよ」
僕は絶句した。
そして最後に聞いた。お父さん、僕が生まれてきたことに後悔してる? と。するとお父さんは顔をしかめて、
「そうだな……もう少し強い子がほしかったな。お前みたいな弱虫には生まれてきてほしくなかった」
僕はそれを聞いた途端に、泣きながら家を飛び出した。後ろから、またお母さんの叫ぶ声が聞こえただけで、お父さんが追いかけてくる様子は無かった。
「お母さん……お父さん……」
僕は魔界学校の裏の草むらに立って、周りの風景を眺めた。風車、森、川、空……僕の家。
死ぬ前に、めいいっぱい見ておきたかった。
でも、その風景たちに思い出など無かった。僕の家にしか……
後ろを振り返る……魔界学校。ガッシュ、レイン、ルル、レン……今まで楽しかった。いつも、遊んだよね。
……でも、僕はもういくよ。待ってるから。
……みんなには、長生きしてほしいな、僕と違ってみんなには未来があるから……
「さようなら……」
一歩前に踏み出すと、道は無かった。思い出とともに、僕は落ちていった……
……ガッシュ……
「やめるのだ、ティオ! 弱いものいじめはいけないのだ!」
こうやって、ティオから守ってくれたよね。たまに君までいじめられたね。でも、ありがとう。
……レイン……レン……
「ウェンは僕たちの最高の友達だよ!」
「そうさ! 俺たちはいつも一緒だぜ」
いつも遊んでくれてたよね。楽しかったよ。友達のいない僕の、狂気の息子だといわれていた僕の、友達になってくれて、ありがとう。
そして……ルル……
「ウェン……鉄棒の逆上がりが出来るようになったって、本当?」
僕は、君の前ではできないことも、何故だかできたんだよね。それは、僕がルルのことが好きだったからなんだ……
「さようなら……さようなら……」
僕はそのまま落下していって、地面に衝突した。うつぶせに倒れる。なぜだか、痛みは感じなかった。目の前が赤く染まっていって、それでもなんだか気持ちがいい……あぁ、赤色が、黒色に変わっていく……何故か、最期にお母さんの顔が浮かんできた……全てを包み込むような優しさで、微笑んでいるお母さん。
もっと一緒に笑いたかったな、お母さん――
「ウェン!」
キッドが横から叫んだ。ウェンははっと気がついた。まだ、二人の叫び声が聞こえる。それを聞いて、ウェンは拳を硬く握った。
「傷つくのは……僕だけでいい……」
ウェンの本から光が溢れ出す。
「これ以上、僕の為に誰も死なせしない……必ずだ!」
ほんの光が最高潮に達した。
「な、何!?」
バルスが思わず攻撃の手を緩めた。すかさず、フォーラは文字が輝いているページを開いて、叫んだ。
「レベルオ・リアブルク!」
だが、なぜか何もおこらない。
「……ふん、スカ呪文だったな!」
バルスはにやりと笑うと、そのまま水の鞭を振るって、二人を殴ろうとする。すると、なんと空中で水の鞭が受け止められた。
「何!?」
水の鞭は、弾けて消え去った。途端、水をかぶって空中に何かが浮かび上がった。
それをみて、フォーラが思わず声を上げた。
「こ、これは……ウェンの分身!? ……そうか、ウェンの第一の術、ウェン自体を見えなくするものだった。それを強化した呪文だ!」
足音でフォーラには分かる。……二十五体以上いる!
ウェンの心に、呪文の名前が流れ込んできた。
『第一の術 バル・ソドルク』
あの杖のときと同じだ。これで、ウェンは呪文の名を知ったのだ。ウェンが叫ぶ。
「第一の術……バル・ソドルク!」
見えない分身全てに、小ぶりの剣が装備された。
「な、何ぃ!?」
バルスが驚いた。フォーラが剣の数を数えていった。
(ウーノ、ドゥーエ、トレ、クァットロ……トレンタ!)
なんと、三十もの剣が空中に浮いていた。