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名前 |
MUTUMI
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題名 |
208 |
内容 |
ソプラノの涼やかな声と、少し高めのアルトの声がキャビンに響いていた。何が面白いのか、その声は互いに弾んでいる。 あまりの五月蝿さに、キャビンのカウチに寝そべっていた男の眉間に眉が寄った。雑音を嫌がるかの様に、寝返りを打つ。 「あら……」 その様を見ていたソプラノの声の主が、男の側に近寄って来た。顔を寄せると、男の寝息を確認する。 スヨスヨと気持良さそうな音が、唇からは漏れていた。どうやらまだ熟睡中のようだ。 「起きそうだったのに、駄目ねえ。どうしようか?」 「えっと、……鼻でもつまんでみる?」 気乗りしない様子を見せつつも、アルトの声の主がそう提案した。 「面白そうね。じゃあ……えい!」 容赦なく、寝そべる男の鼻をソプラノの声の主が、細い指で摘む。 ムニッ。 哀れな音がした。寝そべる男が、直ぐに苦しそうな声をあげる。うううう、と喉の奥の声帯が意味もなく震えた。 「うう……、……ん?」 息苦しさを感じたのか、パチリと男の目が開いた。透き通るようなスカイブルーの瞳が、きょとんとした感情を浮かべている。 「何をして……」 鼻を摘んだ人物に抗議をしようとして、男はそれに気付き、跳ね起きた。細い指はあっさりと、男の鼻から弾かれる。 「何でお前がここにいるんだーーーーー!」 開口一番に、野太い声が響く。その肩は、ワナワナと震えていた。 |
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[244] 2007/03/24/(Sat) 23:10:19 |
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