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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 208
内容  ソプラノの涼やかな声と、少し高めのアルトの声がキャビンに響いていた。何が面白いのか、その声は互いに弾んでいる。
 あまりの五月蝿さに、キャビンのカウチに寝そべっていた男の眉間に眉が寄った。雑音を嫌がるかの様に、寝返りを打つ。
「あら……」
 その様を見ていたソプラノの声の主が、男の側に近寄って来た。顔を寄せると、男の寝息を確認する。
 スヨスヨと気持良さそうな音が、唇からは漏れていた。どうやらまだ熟睡中のようだ。
「起きそうだったのに、駄目ねえ。どうしようか?」
「えっと、……鼻でもつまんでみる?」
 気乗りしない様子を見せつつも、アルトの声の主がそう提案した。
「面白そうね。じゃあ……えい!」
 容赦なく、寝そべる男の鼻をソプラノの声の主が、細い指で摘む。
 ムニッ。
 哀れな音がした。寝そべる男が、直ぐに苦しそうな声をあげる。うううう、と喉の奥の声帯が意味もなく震えた。
「うう……、……ん?」
 息苦しさを感じたのか、パチリと男の目が開いた。透き通るようなスカイブルーの瞳が、きょとんとした感情を浮かべている。
「何をして……」
 鼻を摘んだ人物に抗議をしようとして、男はそれに気付き、跳ね起きた。細い指はあっさりと、男の鼻から弾かれる。
「何でお前がここにいるんだーーーーー!」
 開口一番に、野太い声が響く。その肩は、ワナワナと震えていた。
[244] 2007/03/24/(Sat) 23:10:19

名前 MUTUMI
題名 207
内容  恐らくこれから先、第9世代型処理システムを持つ宇宙船が続々と登場して来るだろうが、今はまだ、この広い宇宙にたった二隻しか存在していない。ある意味、大変貴重な存在だった。





 クスクスと笑う声がする。和やかな声音はどこか甘く心地良い。

[243] 2007/03/24/(Sat) 00:31:36

名前 MUTUMI
題名 206
内容  ホークアイの居住スペースは驚く程狭い。この船に足を踏み入れたことのある人間は、みんな必ずこう言う。「どこで暮らすんだ?」と。
 居住スペースが少ないのには、それなりの理由がある。ホークアイは、生活上の快適性を求められた船ではないのだ。この船が求められたものはただ一つ。極限迄の情報処理能力と大容量の記憶装置。
 持ち主は居住スペースを削って迄も、ハードを優先させたのだ。おかげで持ち主以外の乗員、約一名は常に持ち主に、「部屋が狭い」と文句を言っている。 
 ホークアイで使用されているハードは、星間連合の各セクトで使用されている物と、ほぼ同型だった。俗に第9世代型処理システムと言われている物だ。
 星間連合外に流出するのも、宇宙船に組み込まれるのも、甚だ珍しい。異例と言って良いだろう。
 現存する宇宙船でホークアイに勝るのは、星間軍の持つ最新型の実験船、重武装戦艦『カトーバ』ぐらいだろう。かの船も、第9世代型の処理システムを搭載している。
[242] 2007/03/22/(Thu) 22:31:59

名前 MUTUMI
題名 205
内容  星間の無法地帯ルネット星域、SSM−1を母星とした小衛星ヒュードラ。その宇宙港の第12番ドックに、巨大な一隻の宇宙船があった。
 船名は『ホークアイ』。艦船規格でいうなら、戦略級の船は、今は静かに港に停泊している。動力は完全に落とされており、物音一つしない。
 巨大な宇宙船の船首には、巨大な赤い目が描かれており、トップサイドには増設したと見られる推進補助のブースターが付いていた。見るからに速そうな船だ。
[241] 2007/03/21/(Wed) 04:35:44

名前 MUTUMI
題名 204
内容  男の背筋は、反射的にのびていた。どうやら桜花部隊の評判を聞き知っていたようだ。
(おいおい。どこまで悪評が広がっているんだ? 最近は、目立った事をしていないはずなんだが……)
 苦笑を唇にのせ、身分証を内ポケットに仕舞う。
「案内を」
 命令口調で告げれば、管理課の男が慌てて動き出す。
「こっちです」
 軽く頷き、ボブは彼の後について行った。この男の上司に、ここで起きていること、その状況を聞く為に……。
 カツコツ、カツコツ。
 規則正しい足音が本館に響く。それは何かを暗示させる様に、暗く冷たい響きを伴っていた。
[240] 2007/03/19/(Mon) 20:47:15

名前 MUTUMI
題名 203
内容 「何と言うか、もう自信喪失……」
 どよんと男の表情が曇る。
「犯人の特定は?」
「全然進んでない。進入経路も迂回しまくりで、いまだに辿れず」
「うはー。プロ中のプロって感じだな」
「そうだな。遊びでやってる愉快犯ではないかも」
 管理課の男はそう言って、厳しい顔をした。そんな管理課の男に、大人しく聞き役に徹していたボブが話しかける。
「失礼。もう少し詳しく聞きたいのだが、よいかな?」
 穏やかに、けれど有無を言わせず、ボブが割り込む。
「え? どなたで?」
 管理課の男は訝し気にボブを見遣った。
「多少の情報を握っている者と言っておきます。あなたの上司に面会したいのですが」
 ニコリともせず、ボブは身分証を提示した。
「え、あ……」
 覗き込んだ男の顔色がさっと青くなる。
「うわっ。ハイ、直ぐに案内します!」
[239] 2007/03/18/(Sun) 21:38:15

名前 MUTUMI
題名 202
内容 「まさかとは思うけど、犯人はそれを盗み出す為だけに、サーバをクラッシュせたのか?」
「んー、どうだろ。それは判らないけど、犯人が物凄く腕の良いハッカー、いやこの場合クラッカーって言った方がいいのかな、である事は確かだよ。ファイアーウォールも正面から突破されたみたいだし」
「……おいおい」
 呆れた声が漏れた。
「セクト端末にかけられたファイアーウォールって、そんなにちゃっちいのか?」
「そんな訳ないだろ」
 管理課の男はそう言って、ネクタイをグネグネと弄る。
「うちのはガードが硬くて強固で、取っ付き難くて、融通が聞かなくて、最悪に弄り難いって評判の代物だったんだぞ」
「ふうん。だけど、崩された訳だ」
「……ああ」
 若干ふて腐れて、男は応じる。
[238] 2007/03/14/(Wed) 01:10:20

名前 MUTUMI
題名 201
内容  あり得ない事態に、あってはならない事態にまいっているようだ。
「なんというか……大変だな」
 同情心を込めて、ボブが彼らを見遣る。
「……まあな」
 肩を落としたまま、年輩の男は更に続けた。
「その上、データが一部流失したらしくてな。何が流出したのか、まだ特定も出来ていないようだが……」
「ほう」
 何気なく相槌を打ち、ん?と目を細める。
(ちょっと待てよ)
 頭の片隅で、警告音が鳴った気がした。
(ギルガッソーのメンバーを取り逃がした状況で、うちのサーバがダウンだと?)
 ビクリと背筋に震えが走る。
(まさか、そうなのか?)
 あり得ない、これは偶然だと囁く理性と、そうに違いないと反論する理性がせめぎあう。
(偶然なのか? それとも……)
 ボブの思考が混乱する。そんな最中、別の男が紺のネクタイを緩めながら合流した。
 胸に下げられたプレートを見ると、管理課となっている。どうやらこの事態の、当事者の登場のようだ。
「はあー、まいった。まいった」
「よう。どうなんだ?」
「全然駄目。物凄く駄目」
 手を激しく左右に振り、男は駄目っぷりをアピールする。
「手が付けられない感じ」
「へえ」
「まあ、サーバ本体の予備はあるし、データのバックアップもあるから、復旧事態はなんとかなるんだけど……」
「どうした?」
 知り合いなのか、親し気に中年の男が尋ねる。
「どうもバックドアを作られた気がするんだ。ああ、これ俺だけの意見じゃないから。管理課のほとんど全員がそう思ってる」
「わお! やばそー」
「うん、物凄くやばい状態だよ。復旧した途端に、何か仕掛けられそう……。そういう訳で、いま全プログラムを精査中」
 再度溜め息をつき、男はネクタイをグリグリと引っ張った。
「ほんと最悪だよ」
「流失したデータも特定出来たのか?」
「出来たよ。生誕式典の物だけ、ごっそりコピーされてた」
 反射的にボブの顔が強張る。
「犯人は何を狙ったんだろうなー」
 管理課の男はそう言って肩を竦めた。
[237] 2007/03/13/(Tue) 19:08:58

名前 MUTUMI
題名 200
内容 「は? ……サーバというと、ディアーナ星のセクト端末か? うち(星間連合)の?」
「そうだ」
 年輩の男は頷く。
「この辺りの、セクトの集中業務を行っていたサーバ本体が、何者かの攻撃を受けダウンしたようなんだ。おかげでこっちは、さっぱり仕事にならん」
 そう言って嘆く声に、他の職員達も同様の声を漏らす。
「本体がダウンしてちゃ、データの更新も出来ないし」
「……というか、回線すら開かんよ」
 嘆き節はまだまだ続く。
「補助金の審査の締めが、今日だったんだが……。こういう事態の場合は、時間オーバーも許されるのだろうか?」
「さあ? 俺も、急いで上にあげなければならない書類があったんだが……」
「右に同じ」
 ハアと、沈み込むように溜め息が合唱した。誰も彼も顔色が悪い。
[236] 2007/03/12/(Mon) 11:08:38

名前 MUTUMI
題名 199
内容  強面を緩め、親し気に尋ねると、彼らは互いに顔を見合わせた。誰も彼もが困った顔をしている。
「……ええっと、軍の方ですか?」
「そうだが」
 肯定すれば、ヒソヒソと相談しあう声が聞こえてきた。
「話しても大丈夫なのでは?」
「情報漏洩に……」
「当たらないだろう」
「星間軍だから」
「内部?」
「みたいなものか?」
 小声での相談は徐々に纏まってゆく。暫く待っていると、纏まったらしく、一番年輩の男が概要を話してくれた。
「理由は判らないが、ディアーナに置いてあったサーバがクラッシュしたようなんだ」
「え……」
「どうも外部から攻撃を受けたようで、ファイアーウォールも突破された」

[235] 2007/03/11/(Sun) 19:54:55






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