【広告】楽天市場にて 母の日向けギフト値引きクーポン配布中

連載小説『ディアーナの罠』

ホームページへ戻る

名前
Eメール
題名
内容
URL
削除キー 項目の保存


名前 MUTUMI
題名 218
内容 (何でよりによって今ここで貧乏なのがばれるんだ? ……ははは、終わった……)
 健気なプレスの反抗は、この瞬間についえたのであった。
「さあて、じゃあ札束で頬を叩くとして、どんな情報を売ってくれるんだ?」
「うう……」
 唸りつつ、恨めし気に睨むが、あっさりと無視される。
「プレス」
 再度促され、プレスは諦めた様に天井を仰いだ。
「ああ、くそ。わかったよ。出すよ、出せばいいんだろう?」
[254] 2007/04/16/(Mon) 21:45:53

名前 MUTUMI
題名 217
内容  慌ててプレスはそう叫んだ。一矢の殺気が静まった為、声が復活したようだ。
「誤解……ねえ」
 胡乱な目で見つめ、一矢は更に吐息を零す。
「まあ、お前に経済能力を求める方がどうかしてるんだろうけど。それにしても今月も赤字って、毎月の収支はどうなってるんだ? まさか、借金とかつくってないだろうな?」
 その言葉に、ピクピクとプレスは頬をひくつかせた。一矢はその動きだけで、総てを理解してしまう。
「え!? 本当につくってるのか!? うわ、……マジかよ」
 本来の目的も忘れ、一矢はこの経済能力ゼロの人間に、真剣に説教をしたくなった。
 一矢が説教を始める前に、慌ててプレスが叫ぶ。
「先々月に船の補修をしたんだよ! 一時的に金庫が空になってるだけだ! 直ぐに借金もなくなる!」
「……ふうん、へー。でも今は貧乏なんだ」
 ニタリと、目が笑った。
(ぎゃあ!? こいつまさか!)
 何とも嫌な予感がした。
「札束で頬を叩けば、何でもゲロりそうだな」
 一矢はいともあっさりと、血も涙もない事を言い放つ。
(……やっぱりそうくるか)
 ガクリとプレスは項垂れた。空の金庫が恨めしく思える。 
 
[253] 2007/04/15/(Sun) 22:06:22

名前 MUTUMI
題名 216
内容 (……!)
 ぎょっとした目で、プレスはカレンを見た。
「今月も赤字だったんです。ありがとうございます、これでご飯が食べれます!」
 カレンの頬は、感激でピンク色に染まった。
(カレン! この裏切り者め!)
 罵るプレスの視線と、呆れた一矢の視線がかち合った。
(うっ)
 プレスが何か言われると、慌てて身構える。一矢は溜め息をつくと殺気を鎮め、
「……なあプレス。幾らカレンがリュカーンでもさ、お腹は空くんだぞ。ちゃんとご飯をあげないと可哀想じゃないか」
 と、プレスを諌めた。
「ちょ……、待て! 誤解だ!」
[252] 2007/04/15/(Sun) 21:38:14

名前 MUTUMI
題名 215
内容  プレスは唇を噛み締めた。
「……どうした? 随分強情だな」
 若干殺気を緩め、一矢が呆れた目をしてプレスを見る。プレスは震えながらも、精一杯一矢を睨み返した。
 こんな時でもなければ、それなりに眼力もあるし強面なので、そこそこ恐く見えるのだが、今は大型の成犬が尻尾を股の間に入れ、震えながら唸っている様にしか見えない。完全に腰が引けているのだ。
「ああそうか、報酬の心配をしているのか? 大丈夫、今回はちゃんと払うぞ」
「!」
 その台詞に敏感に反応したのは、プレスではなくカレンの方だった。キラリンと瞳を輝かせ、両手を胸の前で組む。
「本当ですか? 助かります!」
 
[251] 2007/04/15/(Sun) 00:34:31

名前 MUTUMI
題名 214
内容 「……ディアーナだって?」
「そうディアーナ。何か知ってるんじゃないの?」
 正直に答えろとばかりに、一矢はプレスを見つめる。その眼差しは真剣で、どこまでも静謐だった。
「……」
 プレスは一矢に気押され黙り込む。けれど、ここで流されてはなるものかと考え直し、気力を振り絞って儚い抵抗を繰り広げた。
(そうそう何時もお前の思い通りになると思うなよ! 今回こそ縁を切ってやる!)
 無言で睨み合うこと数分、プレスは額に玉のような汗を幾つも浮かべ始めた。明らかに眼力負けだ。一矢の突き刺さるような視線と、悲鳴を上げて逃げたくなるような殺気に、膝がガクガクと震え始める。
(げえ。膝が笑い始めた)
 冗談ではない、負けたくないと思うものの、その身は心をあっさりと裏切る。貧乏揺すりの様な、ガタガタと鳴る音は止まらなかった。
(……くそが!)
 殺気を向けたまま一矢は唇を持ち上げ、ニヤリと笑う。プレスの陥落が近いことを知った上での嘲笑だろう。それと知って、プレスの頬に赤味が増す。
(このヤロウ!)
 罵倒の言葉を思い浮かべるものの、実際には発言出来なかった。当の昔に舌は凍り付いている。
(くそ、くそ、くそ!)
[250] 2007/04/10/(Tue) 21:33:48

名前 MUTUMI
題名 213
内容  どれ程嫌がろうが、一矢がプレスを手放すことはなく、それどころかより深い繋がりを持たされ、交友は途切れる事なく今も続いている。
(マジ、勘弁してくれよ)
 一矢を前にして抱く感想は、どれもこれも繰り言ばかりだ。
(この縁はどうやったら切れるんだろうか?)
 太く長い鎖で首を繋がれているような気がして、プレスはブルリと身を震わせた。
(うわ、嫌な想像をした。……縁起でもねえ)
 最悪の想像を一瞬で打ち消し、何故か船内で異様に寛いでいる一矢に視線を向ける。
「……で、何の用なんだ?」
 前置きや世間話をする気のないプレスは、単刀直入に一矢に問うた。一矢はニッコリ笑って、極上の笑みをプレスに向ける。
「ディアーナ関係の情報を頂戴。知ってる事を洗いざらいね」
[249] 2007/04/08/(Sun) 21:04:10

名前 MUTUMI
題名 212
内容  プレスの想いは切実だ。
 真面目な話、非合法な情報屋のプレスにとって、一矢はかなり厄介な相手だった。一矢は星間軍の中枢に位置する提督であり、統合本部長の一人でもある。
 そんな彼と交友があるとばれた日には、誰に何を言われるやら。少なくともヒュードラでは、生きていけない。ヒュードラに住む者は後ろ暗い過去を持つ者が多く、秩序の維持者である警察や星間軍を何より嫌うのだ。
(ああ。何で俺は、よりにもよってこいつと知り合いなんだろう?)
 遠い昔に思いを馳せ、プレスは虚ろな目をする。
 一矢とプレスが知り合った切っ掛けは、かなり昔に遡る。プレスがまだ駆け出しの頃、ちょっとした事件で命の危機に陥り、一矢に助けられたのだ。
 当時の一矢は病気療養中で、プレスの目を曇らせるには十分な弱さがあった。弱者だと思っていた一矢が、高位の能力者だと気付いた時には既に遅く、プレスは一矢の派閥に取り込まれていた。
[248] 2007/04/04/(Wed) 20:33:01

名前 MUTUMI
題名 211
内容  唸りながら睨んでいると、
「食べたいの?」
 思ってもいない事を、カレンが尋ねて来た。
「いらねえ」
 顔を背けてプレスは応じる。
「そう。じゃあ仕舞っておくわね」
 勝手知ったる何とやら、カレンは所定の位置に箱を仕舞った。どうやらその一角、ボックスはおやつ入れらしい。飴やらチョコやらが沢山入っている。
 黙ってそれを見守っていたプレスは、次の瞬間、何故自分がこんなにも怒っていたのかを思い出し、我に返って少年を問いつめた。
「そんなことより、てめえ一矢! こんな所で一体何をしている!? ここがどこかわかっているのか!」
 暗にお前がいるべき場所じゃないと、プレスは臭わせる。非難すら込めた眼差しを、しれっと流して一矢は肩を竦めた。
「どこって、ルネット星域、衛星ヒュードラの宇宙港、第12番ドックに停泊している情報屋プレスの所有する宇宙船、ホークアイの中」
 舌を噛むこともなく、長々とわざとらしく懇切丁寧に告げる。その顔には何やら含むものがあり、何故か楽しそうだ。
「ふふ。無法地帯って楽しいよな」
 どうやらここが気に入ったらしい。プレスは一矢の言葉を聞き、絶望的な気分で顔色を蒼くした。 
(この船に来る迄に一体何があった!? いや、そもそもここは、ルネット星域だぞ。衛星ヒュードラだぞ。星間連合に属する者にとっては、鬼門の場所だろ!? 何時命を取られても、可笑しくない所なんだぞ!? なのにお前は……。なんで平然として、ここにいるんだーーーーー!)
[247] 2007/04/01/(Sun) 16:12:24

名前 MUTUMI
題名 210
内容  底冷えのする男の声に、
「さあ、どうしてかしら?」
 カレンは小首を傾げてみせた。男はギリッとカレンをねめつける。途端に、
「こらこら、喧嘩をするなよ」
 なぜか二人の間に少年が割って入った。どう見ても、そもそもの原因は少年なのだが、少年は自分が原因であると自覚があるのかないのか、全く気にしていない。
「プレス、低血圧で寝起きが悪いのもわかるけど、カレンにいちいち当たるなよ」
「なっ!」
 当たってないと叫ぼうとしたが、それは少年によって黙殺されてしまう。
「まあ、それはおいといて」
 置くなと再び叫ぼうとして、ベシリと頭を叩かれる。プレスの脳裏に白い星が飛んだ。
「ーーーーーってぇ」
「五月蝿いよプレス。あ、カレン。これお土産」
 プレスの頭を叩いた長方形の箱を差し出し、少年が笑う。
「カメ屋のお煎餅」
 差し出された箱を、カレンがお礼を言って受け取る。涙目になりながら、プレスは想定外の凶器が接収されるのを見守った。
(痛いぞ、煎餅め)
 
[246] 2007/03/29/(Thu) 20:13:41

名前 MUTUMI
題名 209
内容  男が凝視するその先には、ニッコリ微笑む悪魔が一匹。もとい、天使の様に美しい少年がいた。華奢な体躯を野暮ったい軍服で包み、備え付けの椅子に座っている。
「おはよう、プレス」
 ふわんと微笑んで、少年は男に挨拶をする。
「……っ」
 男の口がへの字に曲がり、目に激しい怒りの色が浮かんだ。男は少年を睨みながら、傍らに立つ女性、男の相棒であるカレンに尋ねた。
「どうして、この厄病神がここにいる?」
[245] 2007/03/27/(Tue) 01:20:23






Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】楽天市場にて 母の日向けギフト値引きクーポン配布中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板