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名前 |
MUTUMI
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題名 |
224 |
内容 |
遥か遠く……実際は宇宙船の天井付近に視線を当て、カレンはボウと吐息をついた。 「あの頃は本当に楽しかったです」 「……あ、そ」 渋い顔をしながらも、プレスは曖昧に返事を返す。 「グランマお元気かしら? もう随分お年ですよね?」 「大丈夫だろ。ありゃ当分死なないよ」 何だか少し投げ遺りにプレスは応えた。 「身内の俺が言うのもなんだが、いい加減引退してても良いはずなのに、まだ現役の海賊なんてやってるばばあが、そう簡単にくたばるもんか」 子犬なんて呼ばれたことが相当悔しいのか、何時になく言葉使いが荒い。 「プレス、ばああなんて言っては駄目ですよ。グランマに知れたら百叩きですよ」 「……いやこの年でそれはない、……はず」 否定しようとして、いやあり得るかもと思ったので、曖昧に語尾を濁した。 「そもそもこんなごつい男捕まえて子犬って、どんな感性してるんだ? あいつら目が可笑しいだろ?」 プレスは間違っても優し気な外見ではないし、庇護欲を抱く程小柄でもない。スリムマッチョと言われることはあるが、ガリガリと言われることはないのだ。誰がどう見ても、ちょっとくたびれた感じの目付きの悪い男である。普通は子犬なんて連想しない。 「グランマは子供の頃のあなたを知っていますし。あ、そもそもミドルネームが」 「うわあああ。言うな」 ガバッと両手で耳を塞ぎ、プレスはカレンを睨む。 「その名前は忘れろって!」 「でもテリア……」 「うがああ! 言うなって!」 耳を塞いでいた手を離すと髪を掻き回し、プレスは唇を引き攣らせた。 |
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[266] 2007/08/12/(Sun) 11:13:17 |
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