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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 243
内容 「そいうことならば……」
 仕方ないと、吐息と共にボブが了承する。
「強面モードでよろしくね」
「……はい」
 ボブは小声で頷いた。
 一矢の台詞は、きっちりはっきりくっきりと誤解を生む余地がないぐらいに、正面から力技で張り倒して脅して来いと、言っている様なものだ。ボブは、クラクラとする頭を軽く振った。
(又、悪い噂が広がるな)
 憂鬱に思うが、それはそれとして胸に仕舞う。
「他に何か出ましたか?」
「驚きのネタが一つ」
 プレスから渡されたカード型の記憶媒体を、一矢は取り出す。
「リンケイジャーがディアーナ星に入った、らしい」
「!」
 驚くボブの手の中に、一矢は記憶媒体を落とした。
「これで繋がるな。誰がセクト端末を攻略したのか? 答えはリンケイジャー」
 ニッと唇を歪め、一矢はボブを仰ぎ見た。
「どうやらギルガッソーは電子戦を御所望のようだ」
[276] 2007/09/11/(Tue) 21:48:04

名前 MUTUMI
題名 242
内容  でなければ、むざむざとそれを放置したりしない。
「ボブ、念のため儀典部長に釘を刺しといて」
「は? 直接ですか? ええっと、その……初対面ですが?」
 組織の枠を超えての直接対話は、何故か緊張する。それはボブも例外ではない。やれと言われればするが、一矢がいるのに自分にお鉢が回って来るのは何故だと、思ってしまう。
 その表情を読んで、一矢が溜め息混じりに弁明を始めた。
「いや、言いたいことはわかる。本来なら僕のすべきことだ。でもなー。ほら、僕の顔こんなだし。迫力ないし、覇気ないし。特殊部隊の指揮官には見えないだろ? 初対面の場合、そもそも名乗っても信じてもらえないんだよな」
 なんだか少しばかり、一矢は物憂気だ。
「……ああ、なる程」
 今でこそ慣れたが、最初はボブもそう思った。それ程この世界が、一矢には似合わないのだ。
「そういう訳で、ボブやって」
[275] 2007/09/09/(Sun) 23:14:26

名前 MUTUMI
題名 241
内容 「生憎と畑違いです」
「そう。【03】(リック)はどう?」
「同じく畑違いかと……」
「むう」
 一矢は唇を尖らせた。誰か儀典部に知り合いがいれば、横の繋がりで色々と工作が出来るのだが、生憎とそれは望めなさそうだ。
「仕方ない、正攻法で報告書を上げるか。桜花部隊の名前がついてれば、少しはまともに取り合うだろうし」
 桜花部隊の悪評はこういう時の為にこそあると、一矢は思っている。
[274] 2007/08/26/(Sun) 21:26:09

名前 MUTUMI
題名 231
内容  一矢はあり得ない!と叫び、脱力する。
「どんな管理をしてるんだよ」
「知りませんよ。まあそんな訳で、セクト端末は落ちるわ、行き掛けの駄賃なんでしょうが、バックドアまで仕掛けられてしまったようです」
「……使えねえ」
 ボソリと辛辣な言葉を一矢は零す。
「その上最悪なことに……」
「ことに?」
「聖誕祭の資料がごっそりと盗まれました」
「うわっ!」
 一矢は仰け反る。
「冗談だろ!?」
「マジです」
 ボブは端的に返し、ほらと机の上に出されたままの書類を示す。それは管理課からの報告書の写しで、そこにははっきりと情報の流出が表示されていた。一矢は慌ててそれを手に取ると、目で文字を追う。
「…………うわ、最悪」
 すべてに目を通した一矢が呟く。
「関係各所への連絡は勿論、タイムスケジュールや警備体制の見直しも具申する必要があると思うのですが」
「取り合うだろうか?」
「わかりません」
「式典の最高責任者って誰だっけ?」
「儀典部長だと思いますが……」
「儀典部長? ああ、官僚か。……残念、儀典部に知り合いはいないや」
 そっちは?と、一矢はボブを見る。ボブは黙って首を左右に振った。
[273] 2007/08/22/(Wed) 21:12:38

名前 MUTUMI
題名 230
内容 「セクト端末が落ちてるらしい」
「おや。存外早耳で」
 昨日の今日でよく知っているなと、ボブは感心して呟く。
「あれ、その反応……。知っていたのか?」
「ええ。一矢と別れた後、機構職員が噂にしているのを耳にしまして、管理課に確認してきました」
「何か言ってた?」
「色々と」
 ボブは仕入れて来た情報を事細かに一矢に語る。
「最初にファイヤーウォールが破られたのは、どうやらDネットのようです。そこから犯人が侵入して来たようです」
「え? Dネットってディアーナ星だけのローカルネットだろ? 星間連合のセクト端末と、どんな関係が?」
 まるっきり所属も管理も違う。戸惑って一矢はそんな風に尋ね返した。
「ネットワークで繋がっていたようです。Dネットとセクト端末が」
「は?」
 一矢はポカンと口を開ける。
「……何を考えてるんだ、管理課は! 独立させておけよ!」
[272] 2007/08/22/(Wed) 16:16:07

名前 MUTUMI
題名 229
内容  ふうと、ボブは大きな溜め息を一つつく。すると、それを見越していたかの様に、
「何を黄昏れているんだ?」
 背後から声がかけられた。ボブにとっては聞き慣れた涼やかな声だった。ボブは背後を振り返り、座ったまま声を返す。
「早かったですね。もう少しかかるかと思ってましたが……」
「ん、プレスをからかって遊ぶの止めたから」
「さようで」
 苦笑を浮かべながらボブは腕を伸ばすと、ガタガタと隣の椅子を引いた。
「サンキュ」
 大人しく一矢はそこに座る。
「面白い情報があったよ」
「へえ、何です?」
[271] 2007/08/21/(Tue) 21:12:20

名前 MUTUMI
題名 228
内容  惑星ディアーナ、星間中央警察捜査本部。
 最奥の防諜対策の施された会議室で、ボブは難しい顔をして考え込んでいた。テーブルの上には広げられた書類が数枚ある。
「どうしたものか……」
 そう呟き、顎に手を当てる。
 あの後、管理課に案内されたボブは洗いざらい事情を彼らから聞き出した。Dネット経由で攻撃されサーバが落ちたこと、バックドアが仕掛けられ容易に復旧が出来ないこと、生誕祭の書類がごっそりと抜かれていたことも、そこで初めて知った。
 どれもこれも、ニュースになっていても可笑しくはない事柄だ。それ程の失態、スキャンダルだった。いまはまだ星間連合内部の問題でかたずけられているが、いずれ表面化し、誰かが責任を取る羽目になるだろう。
「取り敢えず、生誕祭のタイムスケジュールと警備体制を見直すように具申するか……」
 その声には少しも覇気がない。自分で言っておきながら、その難しさを知っているからだ。式典の準備に関する事柄は、ボブの、いや桜花部隊の管轄ではない。桜花部隊には何も権限がないのだ。
(普通に具申しても、取り合ってもらえないかも知れんな)
 そんな嫌な予感さえ抱いた。
[270] 2007/08/21/(Tue) 18:15:20

名前 MUTUMI
題名 227
内容  あの二人ならば何をやっていても可笑しくない、そんな気がしたのだ。
(うわあ。恐ろしい可能性に気付いてしまった……)
 プレスはガックリと項垂れる。自分の祖母と一矢が繋がっているなどと、恐ろし過ぎて頭が反応しない。そこのところを追求しようとすればする程、思考が麻痺して来る。
(駄目だ。……考えるの止めよう)
 ブンブンと頭を振ると、プレスは嫌な考えを追い払った。それでも、
「……なんか凹む」
 呟き、憂鬱そうな表情をする。
「プレス? どうかしました?」
 怪訝そうなカレンの声に、
「何でもない」
 と応え返し、プレスはだらけていた机から半身を起こし、立ち上がった。
「……ハア。朝っぱらから疲れる」
 ガシガシと頭を掻き、ヨレヨレの服の胸元を摘む。パジャマがわりの服は、何時の間にかしわくちゃだ。
「着替えて来る」
 ポテポテと歩きながら告げると、
「はい。ではコーヒーを入れておきますね」
 カレンの笑い混じりの声が聞こえて来た。一矢襲来で疲れ果ててしまったプレスが面白いらしい。最早言い返す気力もなく、プレスは黙って部屋を出て行った。
[269] 2007/08/16/(Thu) 10:47:15

名前 MUTUMI
題名 226
内容  その態度を見て、ちょっとむかついたカレンは、とっておきの爆弾を投下する。
「いま思ったんですけど、若林様もミドルネームを知ってるんじゃないでしょうか」
「え?」
 プレスの体が、瞬時に凍り付いた。
「あり得なくはないでしょう? というか、あれは絶対知ってますよ」
 確信を込め、カレンはプレスに告げる。
「だから、子犬なんですよ」
「うぎゃあ!」
 プレスは唇を引き攣らせ、その場で勢い良く頭を抱え込んだ。
(嘘だろ? 知ってるのか? 俺言ったか? 言ってないよな?)
 過去の己の態度を思い返し、自分からは告げていないことを確信する。
(誰だ犯人は!? いやそんなことよりも……)
 カレンが告げたことよりも遥かに恐ろしいことに、プレスはふと気付いた。
(グランマと一矢の呼び方が全く同じって、本当に偶然か!? ひょっとするとひょっとして、あの二人……実は繋がってたりして……)
 もっとも恐ろしい可能性に気付き、仮にも情報屋の自分がその関係に気付かないなんてあり得るだろうかと反芻し、いやあり得るとシンプルに結論が出た。
[268] 2007/08/14/(Tue) 14:00:25

名前 MUTUMI
題名 225
内容 「俺は断固として認めないぞ! テリアなんていうミドルネームは! 俺は小型犬じゃねえつうの!」
「あら。可愛いのに」
 プロトタイプリュカーン『KAREN型15番』、なんて名前じゃない正式名称を持つカレンとしては、どんなものでも羨ましかったりする。
「いいじゃないテリアでも。名前は名前なんだし。私なんて型番で呼ばれていたのよ。まあ今も、その略称みたいなものだけど……」
「う……」
 初対面の時に、『KAREN型』だからカレンと単純に名付けたプレスは、天井へと視線を彷徨わせた。
「あら気にしなくていいわよ。あなたの単純さは、十分わかっているから。もっと凝ったのが良かったなとか、綺麗な名前が良かったなとか、全然思ってないから」
 にっこり笑って、どこか凄みのある笑顔でカレンはプレスを見た。ダラダラとプレスの額に冷や汗が浮く。
(うへ。薮蛇だったか)
 首を竦めそう考えると、プレスは愛想笑いを返した。
「カレンも良い名前だと思うぞ、俺は」
「フフ。そういうことにしておきましょうか」
 プレスの慌てぶりに、カレンがクスリと笑う。
「おう、しておけ」
 何故か横柄にプレスが応じた。

[267] 2007/08/14/(Tue) 13:35:50






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