【広告】楽天市場にて 母の日向けギフト値引きクーポン配布中

連載小説『ディアーナの罠』

ホームページへ戻る

名前
Eメール
題名
内容
URL
削除キー 項目の保存


名前 MUTUMI
題名 94
内容 「偶然かあるいは故意か……」
 少年は歌う様に囁く。
「どちらにしろ、取り逃がした獲物は大きいな」
「……」
 青年は、黙って少年に顔を向けた。
「【02】」
「はい」
「ネロ・ストークの情報を集めろ。チャンネルは問わない」
「了解。至急かかります」
 軽く頷き、青年は腰掛けていたベットから立ち上がる。長身の体躯をさっそうと捌き、彼は部屋から出て行った。
 一方、ただ一人残った少年はというと、椅子に座ったまま、何故かベットに横たわるメイファーの顔をじっと眺めていた。
(何?)
 見つめられてメイファーの心にさざ波が立つ。
(何だろう? ……変な感じ。凄く……あれ? 怖い?)
 気恥ずかしくなるのならともかく、視線に対し何故かゾクリとした怖気が走った。言い様のない悪寒が染みの様に広がる。
(……どうして?)
 体が微かに震えだして、ようやく少年の視線に反応しているのだと悟った。少年の視線には微かな悪意が込められている。
(初対面よね? どうして……こんな風に見るの?)
 メイファーの頭は混乱した。つい先程までは優しい感情をたたえていた視線が、いきなり豹変したのだ。幾らにぶいメイファーでも、パニックを起こす。少年はそんなメイファーの心の葛藤ですら観察しているようだった。ややして、
「……ふん。まあいい。信用しよう」
 観察者の眼差しを持ったまま、少年はそう嘯く。
「あ……」
 擦れた声で喉が震えた。
「あの」
 小声での呼び掛けに、ゆっくりと眼差しが返される。
「何?」
「えと、私……」
 困惑したまま呟くと、少年が少しばつの悪そうな顔をした。
「ごめん。ちょっと色々あって、今は無条件で星間中央警察が信用出来ないんだ」
「え?」
「いや、こっちの話だから。ああ、心配しないで。メイファさんは信用する事にしたから」
「はあ」
 パチクリと瞼が上下する。
[119] 2005/11/29/(Tue) 20:56:18

名前 MUTUMI
題名 訂正
内容 93ちょっと追加
[118] 2005/11/28/(Mon) 21:21:32

名前 MUTUMI
題名 93
内容  不思議そうに少年が首を傾げる。
「どうして嫌味なんだ?」
「自分より年下の綺麗な男から『綺麗』と言われて、喜ぶ女はいませんよ」
 青年は、微妙な女心を理解しろという眼差しを少年に向けた。
「そんなものなのか?」
「そんなものなんです。桜花が大人の男なら、逆に喜ばれるんですが。まあ今は、子供の姿ですし……止めた方が無難ですね」
「ふうん」
 納得したのかしていないのか、少年は曖昧に頷いた。なんだか物凄く憂鬱そうだ。
「……何時になったら、僕の姿は成長するんだか」
 囁き声には、どっぷりと溜め息が詰まっていた。青年はやや呆れた表情を浮かべる。
「人間諦めが肝心だと思いますが」
「……」
 青年の容赦ない言葉に、少年は途端に項垂れる。
「最近のお前って物凄くきついかも……」
「そうですか? まあそれはさておき、時間もない事ですし、仕事の話に入りましょう」
 言いおいて、青年はメイファーを見つめる。
「星間中央警察は、ネロ・ストークを一時的にせよ追い詰めたのか?」
「……いえ」
 言葉を濁しつつ、メイファーは自分の身に起こった事を全て説明した。潜伏先と思われる場所への捜査から始まり、まんまと逃げられた所まで、求められるままにこと細かく語った。喋り過ぎで喉がカラカラに渇いた程だ。
 全ての話を聞き終わるや否、桜花部隊の二人は互いに短く息を吐いた。メイファーが話していた頃にはあった緊張感が、綺麗に霧散している。
「レミが力不足だって言ってた訳が、ようやく理解出来たよ」
「人手不足がたたりましたか」
 青年も呟き、虚空を睨む。
「だから、こちらからも人を出すと言っていたのに……」
 何やらブツブツと、誰かに文句を言っているようだ。
[117] 2005/11/27/(Sun) 13:56:23

名前 MUTUMI
題名 92
内容  項垂れるメイファーをあやす様に宥め、少年は言葉を続ける。
「失敗は気にしなくてもいいよ。無理な捜査を押し付けたという自覚はあるし、……捜査能力を見誤った僕が悪い」
「?」
 横たわったままメイファーは少年を凝視する。責められこそすれ、そんな風に庇われるとは思わなかった。
「レミが無理だって言ったのを、僕が押し通したんだ。色々制約もそっちにはついたみたいだし……ごめんね」
「……っ」
 謝られてメイファーは増々混乱した。
「僕らがもっと介入していれば良かったね。……そうすれば、撃たれる事はなかっただろうに」
 少年の視線が、毛布越しにメイファーの足へと向けられる。
「怪我の治療はしたけど、ドクターが言うには痕は残るだろうって。綺麗な足だったのに残念だよ」
 真顔でそう言われて、メイファーは微かに身じろいだ。本気で心配されている事はわかったが、綺麗な足だのどうのと……、聞き慣れていない言葉が気恥ずかしかった。
「あ、あの。気にしないで下さい。痕ぐらい平気だし」
「でも、勿体無いよ。細くて色白な足なのに」
 心底残念そうな言葉が漏れる。恐ろしく美しい顔の少年に、綺麗な足だと言われても、メイファーにすれば困ってしまう。自分の足よりも、少年の顔の方が遥かに美麗で貴重だと自覚してしまっているからだ。
(もしかしてこの人……天然?)
 自分の顔の秀麗さを自覚していなのだろうかと訝しみつつ、助けを求めてベットの端に座っていた青年の方を見ると、彼は肩を揺らして笑っていた。御丁寧な事に笑い声は噛み殺されている。
(爆笑されてる……)
 色々な意味で気恥ずかしくて、メイファーは切実に逃走したくなった。
「桜花、また脱線してますよ。それから一つ忠告しておきますが、あなたのその秀麗な顔で『綺麗だ』と告げられても、嫌味にしか聞こえませんから」
 メイファー困惑の原因を、青年は言葉にして代弁してくれた。
[116] 2005/11/23/(Wed) 20:45:14

名前 MUTUMI
題名 91
内容 「それはさておき……仕事の話になるのだが、いいかな?」
 メイファーが横たわるベットの端に腰掛け、青年が労る眼差しを向けた。
「体調が思わしくないのは理解しているが、こちらも急いでいる。何があったのか詳しく話してもらいたい」
「え?」
「我々にも関係する事であるし、何より……」
「どうやら合同捜査になりそうなんだ。さっきロン・セイファード捜査官から正式に連絡を貰った。だから僕らも色々知りたくてね」
 椅子に座ったまま、少年が青年の言葉を補足する。
「合同捜査ですか?」
「そうなんだ。メイファさん達がネロを取り逃がしたからね」
「っ!!」
 桜色の唇がきつく噛み締められた。
[115] 2005/11/22/(Tue) 19:52:03

名前 MUTUMI
題名 90
内容  青年はそんなメイファーに軽く視線を落とすと、
「【02】です」
 名前なのだか記号なのだかわからない自己紹介をした。
「は、あ」
 パチクリとメイファーが瞬きをする。
「コードネームと思って下さい。桜花部隊の副官をしています」
「副官……ですか」
 小声で呟き、頭に手を置かれたままの少年を見る。
「桜花の部下?」
 そっと尋ねると、少年は微妙な顔をしていた。
「一応ね。でもこいつは、上司を上司とも思ってないみたいだけど」
 頭に乗せられた手を弾き、少年がそう悪態を付く。
「ちょうど良いからって、一々手を乗せるなよ」
「高さが程良くて」
「……」
 返された言葉に少年はズドンと落ち込んだ。
「…………みてろよ。今にきっと大きく育ってやる」
 ボソリと漏らされた言葉は、何故か切実な口調だった。メイファーはそんな漫才のような二人のやり取りを、呆気に取られて見ている。
[114] 2005/11/21/(Mon) 23:06:12

名前 MUTUMI
題名 89
内容  モデルや芸能人に負けていない。否、どちらかというとそれらにも勝てる程の容貌だった。
 少年の肌はツヤツヤでニキビはおろか染み一つなく、肌理も細かい。指先でそっと触れてみたくなる絹の肌だ。やや伏せられている瞳の色は焦げ茶で、長い睫に彩られた目には魅惑的な光が宿っている。真正面から視線を合わせたら、相手はきっとトロトロにとろけてしまうだろうと思われた。
 一つ一つの顔のパーツが黄金比率で配置され、その結果出来上がった容貌はこの世の者とは思えないぐらい美しい。少年期特有の大人になりきらない曖昧さも加わり、少年は独特の輝きを放っていた。女のメイファーが溜め息をつきたくなる程の美貌だ。
 動きを止めて息を殺して少年に見入っていると、少年の背後から面白がるような声があがった。低い重低音の背筋がゾクゾクする良い声だった。
「彼女の反応は極一般的なものだと思いますが」
「…………むう」
 少年が背後を向き、一声唸る。
「何を唸ってるんですか、まったく。話が進まない上に脱線しかかっているじゃないですか」
 椅子に座る少年の頭に大きな手を置き、一人の青年がその横に並んだ。こちらは漆黒の髪に鋭い眼差しの、獣に例えるなら黒豹のような男だった。程よく付いた筋肉や厚い胸板が男らしさに彩りを与えている。しなやかな、けれど鋼のような肉体をしていた。少年と並ぶと大人と子供で、その体格差は余りにも大きい。
 新たな人物の登場にメイファーは内心身構える。
[113] 2005/11/20/(Sun) 21:35:53

名前 MUTUMI
題名 88
内容 「メイファさん?」
 少年が確認を込めて呟くと、女性がコクリと同意を返す。
「危ない所を助けてくれてありがとう」
 ベットに横になったまま枕許にいる少年を見上げて、メイファーは精一杯の感謝の気持ちをあらわした。
「どういたしまして」
 はにかみを浮かべて少年が応じる。
「君って呼ぶのもなんだし、差しつかえがなければそっちも名前を教えてくれる?」
「構いませんよ。僕は【桜花】。あなたにとっては馴染みのないコードネームかも知れないけれど、僕の属する部隊については少しぐらい噂を聞いているんじゃないかな?」
「え?」
 メイファーは間抜けな声を発した。
「な……に?」
「宇宙軍特殊戦略諜報部隊、通称桜花部隊。僕はそこの指揮官をしています」
「……は?」
 ぽかんと口が開いた。……開いたまま塞がらなかった。
「桜花部隊ってあれのこと? 星間軍の特殊部隊の? え? え……っ、指揮官!?」
 メイファーの目が見開かれる。
「なっ……」
 言葉が言葉にならず、短い息がヒューヒューと漏れた。
「そこまで驚かなくても……」
 肩を落とし少年が黄昏れる。視線が微妙に遠くを見つめていた。落胆しているとはいえ、その横顔は驚く程端正で綺麗だ。
[112] 2005/11/20/(Sun) 20:51:27

名前 MUTUMI
題名 87
内容 「ここは? それに君は……?」
 説明を求めて、擦れた声が紡ぎ出される。
「僕? ああ、僕は敵ではないよ。あなたを保護した者だ」
「え」
 きょとんとした表情が、女性の顔に浮かんだ。
「保護?」
「うん、そうだよ。覚えてない? ビルから落下したのを」
「あ!」
「思い出した? 落下していたあなたを僕達が助けたんだよ」
 少年はにっこり微笑んで女性を見つめる。焦げ茶の瞳にほのかな優しさがこもった。
「君が? 私を助けてくれたの?」
「正確には僕ともう一人でね。あなたを落下地点で抱えたのは、そのもう一人の方だけど。僕はスピードを殺しただけだ」
「えっと」
 いまいち状況が把握出来ずに女性が戸惑う。
「あはは、気にしないで。そんな事よりあなたの名前を聞いても良いかな?」
 ほわんとした優しい空気を纏ったまま少年が女性に尋ねる。女性は微かに頷き答えた。
「メイファー・リンよ。メイファって呼んで」
[111] 2005/11/18/(Fri) 19:41:19

名前 MUTUMI
題名 86
内容 「ん……」
 桜色の唇から微かな吐息が漏れる。むずがる様に女性の指先が動いた。
「あ、起きそうかも」
 それに気付いた若い方の声の主が、女性の寝ている簡易ベットに近付いて行く。側にあった椅子を引き寄せ、女性を見守る様に座った。
 それとほぼ同時に、女性の瞼がゆっくりと開かれる。朦朧と彷徨っていた視線が少しづつ定まり始め、とろんとしていた表情も徐々に凛としたものへと変わって来る。女性は急速に覚醒しようとしていた。
 天井を彷徨っていた視線が、ゆっくりと左右に動く。見た事のない壁や天井の光景に、不思議そうな顔をしていた。
「おはよう」
 椅子に座ったまま側に控えていた少年が囁く。途端にビクッと女性の肩が震えた。
「え?」
 綺麗な声が唇から漏れ、女性は勢い良く毛布をはね除けて飛び起きた。
「……!?」
 状況把握が出来ないでいる女性に柔らかい笑みを返しつつ、少年がそっと女性の半身をベットへと押し戻す。
「まだ寝ていていいよ。熱が下がってないんだから、無理はしないで」
 導かれるままに、女性は再びベットに横になった。けれど顔だけは、しっかりと少年の方を向いている。戸惑いの色も濃く、女性は少年を見上げた。
[110] 2005/11/17/(Thu) 22:26:16






Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】楽天市場にて 母の日向けギフト値引きクーポン配布中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板