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名前 |
MUTUMI
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題名 |
94 |
内容 |
「偶然かあるいは故意か……」 少年は歌う様に囁く。 「どちらにしろ、取り逃がした獲物は大きいな」 「……」 青年は、黙って少年に顔を向けた。 「【02】」 「はい」 「ネロ・ストークの情報を集めろ。チャンネルは問わない」 「了解。至急かかります」 軽く頷き、青年は腰掛けていたベットから立ち上がる。長身の体躯をさっそうと捌き、彼は部屋から出て行った。 一方、ただ一人残った少年はというと、椅子に座ったまま、何故かベットに横たわるメイファーの顔をじっと眺めていた。 (何?) 見つめられてメイファーの心にさざ波が立つ。 (何だろう? ……変な感じ。凄く……あれ? 怖い?) 気恥ずかしくなるのならともかく、視線に対し何故かゾクリとした怖気が走った。言い様のない悪寒が染みの様に広がる。 (……どうして?) 体が微かに震えだして、ようやく少年の視線に反応しているのだと悟った。少年の視線には微かな悪意が込められている。 (初対面よね? どうして……こんな風に見るの?) メイファーの頭は混乱した。つい先程までは優しい感情をたたえていた視線が、いきなり豹変したのだ。幾らにぶいメイファーでも、パニックを起こす。少年はそんなメイファーの心の葛藤ですら観察しているようだった。ややして、 「……ふん。まあいい。信用しよう」 観察者の眼差しを持ったまま、少年はそう嘯く。 「あ……」 擦れた声で喉が震えた。 「あの」 小声での呼び掛けに、ゆっくりと眼差しが返される。 「何?」 「えと、私……」 困惑したまま呟くと、少年が少しばつの悪そうな顔をした。 「ごめん。ちょっと色々あって、今は無条件で星間中央警察が信用出来ないんだ」 「え?」 「いや、こっちの話だから。ああ、心配しないで。メイファさんは信用する事にしたから」 「はあ」 パチクリと瞼が上下する。 |
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[119] 2005/11/29/(Tue) 20:56:18 |
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