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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 104
内容  ナビゲートしながら、一矢は膝の上に広げている携帯端末のキーを叩く。二つ折りのB5サイズの画面に、文字や数字が浮かんでは消えた。
「動きはありましたか?」
「いや。今の所平穏無事だ」
 ディアーナのマスコミや公官庁、果ては警察の緊急情報を閲覧していた一矢は、そう言って溜め息をついた。
「目標を完全にロストしたな。どこに隠れたんだか」
「ディアーナにまだいるのでしょうか? 惑星外に出た可能性もありますが」
「出国情報にそれらしい人物はなかったよ」
「データは幾らでも誤魔化せますが」
「そうだな。でも」
 考え込みつつ、一矢は虚空を睨む。
「この星にいるような気がする」
「その根拠は?」
「……ディアーナの世相が静か過ぎる。嵐の前の静けさ、何だかそんな気がするんだ。それに、記念式典まではまだ余裕がある。例え昨日の段階で、星間中央警察にアジトを摘発されたのだとしても、ギルガッソーが逃げ帰るとは思えない」
「なるほど」
[132] 2006/02/21/(Tue) 18:52:23

名前 MUTUMI
題名 103
内容  別れ際の様子では、命に別状はなかったと思うのだが、ほんの少し自信がない。
(大丈夫だよね?)
 テリーの事を考えれば考える程、なんだかムクムクと不安が募る。
(ロンの到着が遅れて失血死なんて間抜けな事、あり得ないよね?)
 そんな可能性はないと思いつつも、テリーの運の無さを実感しているだけに油断は出来ない。
(うわーん。物凄く不安になって来たわ!)
 唇に片手を当て、メイファーは妄想する。
(本部に着いたら、いきなり「残念です、惜しい人を」とか言われちゃったりして……。が、がーん。そんなオチ……)
 ストンと血の気が引いた。
(絶対嫌だからね! テリー!)
 一人で青くなったり赤くなったりと忙しいメイファーを尻目に、運転席のボブが助手席の一矢にこそりと声をかけた。
「彼女、どうかしたんですか?」
「ん?」
 小首を傾げて一矢は首を捻る。
「さあ? 色々と考える事があるんじゃない? あ、そこ右だ」
[131] 2006/02/20/(Mon) 19:20:23

名前 MUTUMI
題名 102
内容  昨日の土砂降りが嘘の様に、翌日は快晴だった。朝から太陽がカンカンに照っている。
(良い天気だなあ)
 快調に走るエアカーの窓から、上空をぽけらと見上げてメイファーは呑気な感想を漏らした。
 ジンジンとした痛みも体がだるいと感じる程の熱もあったが、それでもメイファーは無駄に元気だ。投与された薬が良かったのか、もともと頑丈だったのか、とりあえず動ける程には回復していた。足に巻かれた純白の包帯だけが、怪我人である事をアピールしている。
(昨日連絡しなかったから、皆怒ってるかな? でもでも、昨日は本当に疲れていたし、熱があったし、無理だったし。……仕方ないよね)
 報告義務を怠った事をそんな風に自己弁護し、メイファーは相棒の方へと思考を振り向けた。
(テリーは大丈夫かな? ちゃんとロンに拾って貰えたかなあ?)
[129] 2006/02/19/(Sun) 16:07:48

名前 MUTUMI
題名 本日から
内容 連載再開です。
ただ〜しのんびり。(笑)
[130] 2006/02/19/(Sun) 16:22:02

名前 MUTUMI
題名 101
内容 「邪魔者は排除するのみだ」
 決意を込めた言葉が響く。ルキアノは黙って両目を閉じた。遠く、遠く、何かを思い出すかの様に。
『……何故なのだろうな?』
「ああ?」
『マイを殺されて、最も憎悪を抱いたのは奴のはずなのに、何故奴は愛する者を殺した側に味方をする?』
 両目を閉じたまま、ルキアノはエイドリンに問いかけた。
「知るかよ」
『……』
「奴の考えてる事なんざ、俺にはわからん。ただ奴は昔っから義理堅かった。あいつの中では、全部納得尽くの事なんだろうさ」
『マイの仇すら討たない事がか?』
「ふん」
 エイドリンは二度三度と鼻を擦る。
「その辺は、奴なりの理屈があるんだろうよ」
『理屈か……。聞けば教えてくれるだろうか?』
「はあ? 何を言って……!」
 エイドリンは笑い飛ばそうとして気付いた。ルキアノの声がいつになく真剣な事を。
「おい、ルキアノ」
 呼びかけた声に、呟きが重なる。
『知りたいと思うのは可笑しい事なのか』
「……」
 何も言い返せず、エイドリンが押し黙る。その前で閉ざされていたルキアノの目が開いた。
『友として問いたい』
 ルキアノの目が輝く。その虹彩に複雑な紋様を滲ませて。
『奴の心情を』
 瞳の中の紋様が複雑に明滅した。文字のような絵のような物が、輝きを放つ。それを前にして、エイドリンは押し黙るしかなかった。止めろとも言えず、深く長い息をつく。
「わかったよ、勝手にしろ。ネロには黙っておいてやる。奴に聞くならさっさとしろよ。作戦は継続しているんだからな」
『ああ』
 短い言葉を残し、ルキアノの側から通信は切られた。エイドリンは濡れた髪を乱雑に掻き回す。
「畜生。どいつもこいつも……」
 罵り、ソファーにどかっと背中を預ける。だらしなく尊大な姿勢のまま、彼は吐息を漏らした。
「知ってどうするんだよ……。何が変わるっていうんだ」
 言葉は空虚で、虚ろだ。
「一矢は敵だぜ、ルキアノ」
 のそのそとポケットの煙草を捜し、エイドリンは箱の中の1本を引き出した。クルクルと指に挟んだ煙草を回転させて、彼は瞼を降ろす。
 どこかで懐かしい声がした。エイドリンが記憶している唯一の少年の声が、耳朶の奥に響く。空耳だと知ってはいても、エイドリンは声の主を捜してしまった。
 左右を見回し苦笑を唇に浮かべると、持っていた煙草に火をつける。紫煙がゆっくりと狭い室内に立ち昇った。口に煙草をくわえたまま、エイドリンはだらしない姿勢のまま、天井を見上げ続ける。ユラユラと煙りだけが空調の流れに揺れ続けた。
[126] 2005/12/17/(Sat) 14:05:36

名前 MUTUMI
題名 100
内容  暗く淀んだ、全てを破壊したいと願う者の衝動的な感情が。
『あの誓いは忘れん』
 その声には怨嗟の念が混じっていた。対するエイドリンにも、同じような感情がこもる。
「俺も同感だ、忘れるものか。あの絶望と屈辱……そして何より怨念を」
 吐き捨て、エイドリンはルキアノを凝視した。
「イクサー・ランダムが星間連合の表看板ならば、奴は間違いなく裏看板だ。奴を殺さなければ星間連合を潰す事は出来ん」
『ああ、そうだな。神殺しは排除しなければならない。例え、それが友であったのだとしても』
「そうさ。それが誰であろうとも……恩人だろうと関係ねえ」
 エイドリンの言葉は恐ろしい程明確だった。そこには一遍の情もない。
[125] 2005/12/13/(Tue) 23:23:50

名前 MUTUMI
題名 99
内容 『どうした?』
 通信画面の向こうから、低く澄んだ訝し気な声が返って来る。いきなり顔を合わせたにしてはおかしな返答だ。
「あん?」
 男は横柄に聞き返す。それをとがめるでもなく、画面上の男性は自分の頭を指差した。
『濡れているぞ』
「ああ、こっちは雨だからな」
 雑に返答し、煙草の煙りを口から吐き出す。画面の中の人物は
短く『そうか』と呟いた。
 男がルキアノと呼んだ人物は意外にも若かった。恐らく30代前半であろう、肌にも張りがあり、がっしりとした体からは躍動感が感じられる。
 短い髪は無造作に流され、両耳には赤い色のピアスが光っていた。黒のスーツに白のワイシャツという出で立ちは、まるでどこかのビジネスマンのようだ。だが、まかり間違ってもビジネスマンには見えない。その瞳の怜悧さによって。
 ルキアノはふてぶてしい態度を取り続ける男へと、楽しそうな視線を向けた。
『宴の準備は順調か?』
「まあな。ネロが頑張ってるぜ」
『お前は?』
「俺はいわゆるサポーターって奴だ。只今休憩中」
 ニヤリと唇を歪め、男は煙草をふかす。ルキアノはそんな男へとやや呆れた目を向けた。
『やる気があるのかないのか、わからん奴だな』
「ひっでーな。俺はやる気マンマンだぜ」
 短くなった煙草を足下へ落とし、靴先でグリグリと捻って火を消す。赤い輝きは消え、足下の絨毯に小さな焦げ痕が残った。男は足を組み直し、ふてぶてしい態度のままルキアノを見返す。
「やる事はやった。後は奴等次第だ」
『そうか……』
「星間中央警察の後ろに桜花部隊が控えている事は、内通者の情報から確認出来ている。上手く隠れているつもりだろうが、所詮権力の犬だ。プンプン臭ってるぜ」
 男はそう言って、鼻を摘む仕草をした。
「警察が桜花部隊に泣きつくのは時間の問題だ。そうなれば当然奴が出て来る。総代暗殺という推測が成り立つ以上、出て来ざるお得ないからな」
『……』
「引き摺り出せればこっちの勝ちだ」
 男は自信たっぷりにそう断言した。
『エイドリン……』
 ルキアノは男に呼びかけ、何かを言いかけ押し黙る。男はそんなルキアノを見て、苦笑を浮かべた。
「どうした? 今更躊躇うか?」
『……』
「敵だろう? あれは?」
『そうだな。奴は敵だ。だが……』
 情がない訳でもないと、ルキアノは小声で呟いた。エイドリンは、そんな様を見て鼻を啜る。
「ルキアノお前は忘れたのか? 奴が……いや、星間連合が俺達にした事を。お前や、俺や、アイリスやマイにした事を!」
『……』
「奴は星間連合の肩を持った! あれは敵だ! 一矢は敵なんだ! 取り込もうなんて甘い考えは捨てろ。あれは二度とこっち側には来ない!」
 エイドリンの罵倒に、ルキアノは視線を伏せた。
「だから殺すんだろうが!」
『……ああ、わかっている』
「ならば躊躇うな」
 吐き捨てる声はきつい。
「俺達はもう始めてしまってるんだよ。一矢と俺達の理念が交わる事はもうない。……二度とないんだ」
『そうだな』
 ルキアノは呟き、顔を上げた。
『わかっている。良く分かっているさ』
 その瞳には怜悧な意思が戻っていた。世界に対して復讐を誓った者の感情が宿っている。
[124] 2005/12/11/(Sun) 20:49:54

名前 MUTUMI
題名 98
内容  降りしきる雨は様々な思惑を飲み込み、全てを覆い隠す。チャプチャプと落ちる水滴に、敵意も困惑も決意も洗い流される。窓を叩く水滴が幾つもの線となって階下へと消えた。
 ザバリ。
 たっぷりと水を吸い込んだ合羽が床に投げ出される。しけた煙草を口にくわえ、男は着込んでいた服の胸元を緩める。がっしりとした筋肉質の胸板が微かに露になった。古い傷なのだろう、引き攣った皮膚の残滓が見える。
「ふう。やれやれだ」
 濡れた髪を掻き揚げ後ろに撫で付けると、男は煙草に火をつけた。じわじわと煙草がくゆりだす。たっぷりと存分にニコチンを取ると、男は側のソファーにどかっと座り込んだ。
 広いソファーをこれでもかという程占領し、泰然と煙りを吐き出す。ホワンと円状の煙りが大気へと拡散した。
 右手に煙草を挟んだまま、男は左手でリモコンを取ると、壁に埋め込まれた恒星間通信装置を稼動させ、自分の雇い主を呼び出した。遠く隔てられているはずの人物が、男の前に映像となって姿を現す。男はにこやかにそれに向かって声をかけた。
「よう、ルキアノ。気分はどうだ?」
 ヘラヘラと笑いながら、男は煙草を口元へと運んだ。
[123] 2005/12/08/(Thu) 22:51:37

名前 MUTUMI
題名 97
内容  投与された薬の為か、夢を見ているような感覚があまりにも強い。
(足……少し痛くなって来たかも)
 ジリジリとした熱を、怪我をした部分から感じた。
(痛いと言うより熱いよ……)
 この調子では、今夜は相当に熱が出るだろうなと覚悟をし、メイファーは大きく息を吐き出した。
(ロンに連絡をしたかったけど……明日でもいいかな)
 最早手元にない通信端末を捜す気力もない。ぼんやりと天井を見ていたメイファーは、やがてうとうととしだす。薄情にも相棒テリーの負傷の事すらすっかり忘れ果て、彼女は深い眠りの中へと落ちて行った。
 薬臭さの残る部屋で、疲れ、負傷した体を横たえ、彼女は眠る。同僚の捜査官達が必死に行方を追っているとも知らずに、ただひとり惰眠を貪るのだった。
[122] 2005/12/05/(Mon) 20:37:52

名前 MUTUMI
題名 96
内容  少年はそう言うと、パイプ椅子から立ち上がった。
「お休み」
 とろけるような極上の微笑みを一つ残し、静かに部屋から出て行く。室内の照明がゆっくりと光源を落とし出した。立ち去る背に向かって、メイファーが慌てて叫ぶ。
「おやすみなさい桜花。色々気遣ってくれてありがとう」
「……いえ」
 小声が返り、その小さな背は扉の向こうへと完全に消えた。暗く落とされた照明の中、メイファーは目まぐるしく変わった事態を整理しようと、精一杯頭を捻った。ビルから落ちた所までは覚えているが、何が何やら、何時の間にか桜花部隊の保護下の身だ。
(助けてもらっておいて、あれだけど。……頭グルグルするよ〜)
 傷の痛みと発熱と。考えたい事は沢山あるのに、全く思考が働かない。どこか朦朧として夢の中のようだ。
[121] 2005/12/04/(Sun) 16:06:24

名前 MUTUMI
題名 95
内容 「身内の組織を疑うような事態って久しぶりでさ。やっぱり色々やり難いね」
「は……い?」
「いや、こっちの話。ええと、それでメイファさんの怪我は大人しくしていればちゃんと治るんだけど、……どうする?」
 少年はメイファーの意思を確認すべくそう問いかけた。
「え?」
 メイファーは意図が飲み込めず、戸惑いの表情を浮かべる。
「捜査の方だよ。このまま軍病院に入院する? それとも僕らと来る? 現場に出るのは無理だろうけど、僕に引っ付いて捜査本部にいるぐらいなら構わないと思うけど」
 怪我をして、捜査からリタイアしそうなメイファーを気遣っての発言だと、直ぐにわかった。
「メイファさんは捜査の鬼みたいだし。変に除け者にするよりも、僕と一緒の方がいいかなって思うんだけど。どうする?」
「勿論行くわ!」
(退院していいのなら、石に噛り付いてでも行かせて頂きますとも!)
 俄然メイファーの目が輝いて来た。軍病院のベットで捜査を気にしながら入院しているよりも、多少の無理はしても、捜査に関わっている方が気分は良い。刑事魂ここにありだ。
「そう、じゃあ明日迎えに来るよ。今日はもう遅いし、殺風景な部屋だけどゆっくり眠って」
[120] 2005/12/04/(Sun) 15:43:30






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