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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 114
内容  星間中央警察の特別対応班は、総合庁舎の会議室を借り受け活動していた。通常ならデォアーナ警察に場所の提供を受けるのだが、今回は情報漏洩を用心して止めたらしい。桜花部隊の忠告が、ジワジワと効いているようだ。
 怪我をした足を庇い、片足でぴょんぴょんと跳ねながらメイファーはコンクリートの上を進んでいた。
 負傷した足は真っ白な包帯に覆われている。レーザーが貫通した方の足は、体重をかける事も出来ないので、無事な方の1本で歩くしかないのだ。その為ケンケン状態で、歩行速度は亀よりもノロイ。
「あの、メイファさん……」
「え? あ、そこで待ってて。もうすぐ追いつくから」
 四苦八苦しながらも、メイファーは先を行く二人にそう声を掛けた。メイファー本人は物凄く一生懸命急いでいるのだが、なにしろ歩き方がケンケンなので、一矢達からはそうは見えない。
 失笑こそしないが、そこ迄頑張って歩かなくてもいいのではないかと、二人は思った。メイファーが自分は軽症だと頑固に言い張った為、車椅子や杖を軍病院で借りて来なかったのだ。どう考えても今なら借りるべきだったと思う。
「必要だったな、あれ」
「ええ、そうですね」
 互いに呟く。その合間にも、ぴょこぴょことメイファーは前へ少し前進した。
「なあ」
「はい?」
 一矢が目線でボブに訴える。ボブは一矢を見返し、二人の視線が一瞬だけ交わる。
「提案があるんだけど」
「何です?」
「してあげたら? だっこ」
「嫌がりませんかね?」
「歩けてないんだから、平気だろ。それに僕がしたら潰れる」
[142] 2006/03/14/(Tue) 20:19:16

名前 MUTUMI
題名 113
内容 「今年は死守したけど、来年ぐらいに削られそうな気がするよ」
「そうなんですか?」
「うん。だから頑張って実績をあげておかないと」
 両手に握り拳をつくって、一矢は力説する。
「目指せ、任務完遂100%アンド犯罪者撲滅!」
 即興でつくられた標語を聞きながら、ボソリとボブが呟く。
「……最後のそれ、警察の分野では……」
「何か言った?」
「いえいえ」
 フルフルと首を振って、ボブはエアカーを降下させた。何時の間にやら総合庁舎の前まで来ていた。指定の駐車場にエアカーは進入して行く。銀灰色のビルは、静かに三人を迎え入れた。
[141] 2006/03/13/(Mon) 18:19:47

名前 MUTUMI
題名 112
内容 「予算審議会なんて、チクチクチクチク……ず〜っと嫌味のオンパレードだぞ」
 ふて腐れつつ一矢がぼやく。
「余りにも酷いから、2、3発腹にぶち込んで、その辺に転がしてやろうかと思うし」
「それはちょっと…………止めて下さい」
 毎度のことながら頭がクラクラした。
「たかが予算で、委員会にいちいち楯突かないで下さい」
「だってさー」
 むうと、一矢が剥れる。
「あいつら危険手当てを削るとか言い出しやがるし……。こっちは増額して欲しいぐらいなのにさ」
「ハハ……。そういえば雀の涙でしたね」
 『危険手当て=ジュース2本』なのを思い出し、ボブが失笑した。
「せこいだろ? 会議とはいえ面と向かって言われてみろよ。本当に腹が立つんだから!」
 そのやり取りを思い出したのか、一矢の眉間に深々と皺が寄る。
[140] 2006/03/08/(Wed) 18:40:08

名前 MUTUMI
題名 111
内容  パチンと一矢が指を鳴らす。
「意外と郊外にありましたね」
「土地代が安かったんじゃない?」
 ディアーナにおける星間連合の総合庁舎を眺めつつ、一矢はそんな感想を漏らした。
「機構って、予算少なそうだし」
「軍が取り過ぎているという批判も、出ていましたが」
「そう? 適度だと思うけど。星間軍の場合は、人件費がべらぼうに高いんだよ」
 軽く一矢は肩を竦める。
[139] 2006/03/07/(Tue) 23:18:10

名前 MUTUMI
題名 110
内容  ボブの良心の葛藤を知ってか知らずか、一矢は呑気にナビゲートを再開する。
「あ、そこ左」
「はいはい」
 指示を受け、ボブはエアカーのハンドルをきった。緩やかに弧を描きエアカーは左へと曲がる。
「そろそろビルが見えて来るはずだけど……。あれかな?」
 じっと目を凝らせば、シルバーに輝く建物が見えた。その外壁には見知った意匠が描かれている。中央には円、そしてその円を囲むように配置された複雑な植物の葉。いわずと知れた星間連合の意匠だ。
「ビンゴ! あれだ」
[138] 2006/03/05/(Sun) 23:05:08

名前 MUTUMI
題名 109
内容  もっとも表向きは統治と名乗っているだけで、それはかなりいい加減で大雑把な物だ。殺人や強盗が起きても、犯人は逮捕されないし、起訴もされない。そもそも警察機構すらヒュードラには無い。紫紺のギルドが果たすのは、衛星内での利害関係の調整だ。
 臑に傷を持つアウトローにとっては住み易く、一般人にとっては近付くのも躊躇う、ヒュードラはそんな場所に成り果てていた。
「彼、裏の業界から出て来ないつもりですかね?」
「さあ、どうかな。まだ覚悟半分って感じだけど……。当分は裏側に潜伏するつもりじゃないかな」
 推論をさらしつつ、一矢は不敵に笑む。
「おかげで僕にとっては、便利さ倍増だったりして」
「……時々、彼が哀れに見えてなりませんよ」
 ヤレヤレとボブは首を左右に振る。
「心配しなくても、たまにはエサもあげてるし、やばい時は速攻で庇ってやってるぞ」
 一矢が剥れて主張すると、ボブは微妙に遠い目をした。
「裏家業の人間に、取り締まる側が手を貸してどうするんですか……」
「ばれなきゃ大丈夫だって」
 胸を張って堂々と主張する一矢の横で、ボブは盛大な溜め息を吐き出す。
「……今の台詞は、聞かなかった事にさせて頂きます」
 かろうじてそんな言葉が口をついて出る。儚くも虚しい抵抗であった。
[137] 2006/03/02/(Thu) 13:08:08

名前 MUTUMI
題名 108
内容 「? あの、そんなに躊躇う方法なんですか?」
 一体なんだろうと、ボブが首を傾げる。
「いや、躊躇うっていうか……。物凄く嫌がられる自覚があるから、あまりやりたくないっていうか。絶対いい顔しないだろうし……」
 ごにょごにょと一矢は言葉を濁し、嘆息する。
「厄病神呼ばわりされるのも、いい加減嫌だしさ」
 厄病神の辺りで、なんとばくボブはピンと来た。
「彼、ですか?」
 かまをかけて聞いてみると、実にあっさりと答えが返って来る。
「最近は、ヒュードラにいるらしいよ」
「それはまた、どっぷり裏に浸かってますな」
「ハハ、もう浸かり過ぎって感じ?」
 決して笑い事ではないのだが、一矢はその状況をあっさりと笑い飛ばした。
 ヒュードラというのは、ルネット星域に存在するSSM−1を母星とした小衛星の事だ。元は資源採掘衛星であったが、最近はアウトローの巣窟、星間唯一の無法地帯として有名だ。
 ヒュードラには確固とした政府は存在しない。代わりに商業組合、通称紫紺のギルドが衛星を統治統括していた。
[136] 2006/02/27/(Mon) 21:56:29

名前 MUTUMI
題名 107
内容 「社会的に抹殺された人間、初めから戸籍のない者、死者に成りすましている者。ざっと思いつくのは、こんなところですが……」
「ああ、なるほど」
 ようやく意味が解かり、一矢は納得したように頷く。
「つまり、裏社会で産まれ、裏社会で育ち、現在も裏社会にいる人間なら、生活ベースの情報もない、と」
「ええ。そういうコミュニティにいる人間は、表の社会には何も残しませんから」
 ボブの発言を受けて、一矢は暫し考え込む。
「裏……か」
「調べる方法でも思いつきましたか?」
 少なくともボブには、それを調査する手札がない。だが一矢ならば、何かあるかもと思って尋ねると、
「なくはないけど……」
 妙に渋い顔を返される。
「実行したくない方法なんですか?」
「う……。あー、んー、まあ」
 渋面が面白いようにコロコロと変化し、最後には諦めた顔へと変わった。
「わかったよ。一応やってみる」
[135] 2006/02/26/(Sun) 14:13:37

名前 MUTUMI
題名 106
内容  「ありえないよ」と呟き、一矢は携帯端末を閉じる。
「たとえ犯罪者情報にデータがなかったとしても、この宇宙で生きている以上、生活ベースで何らかのデータがあるはずなんだ。宇宙船の免許でもいいし、パスポートでもいい。写真を使った証明書は無数にある。そのどれかに、該当する物があっていいはずだ。なのに……何も出て来ない」
「辺境惑星の独立型のデータベースが、幾つか手付かずで残っています。その中にあるかも知れませんよ」
 エアカーを操縦しながら、ボブはそう付け足した。
「辺境か。でもなあ」
 溜息混じりに呟いて、一矢は頭の後ろで両手を組む。ぽてんとシートにもたれ掛かり、顔だけをボブへと向けた。
「可能性は薄そうだぞ」
「否定はしませんが……」
 苦笑交じりにそうこぼし、ボブは他の可能性も示唆する。
「インスタント整形で顔を変えているのかも知れませんし、そもそも生存情報がない人間かも知れませんよ」
「え? それどういう意味?」
 ボブの言葉に一矢が首を傾げる。
[134] 2006/02/25/(Sat) 17:44:27

名前 MUTUMI
題名 105
内容  ボブは一矢の言葉にあっさりと同意した。内心ではボブ自身も同じように考えていたのだろう。
「そういえば、ネロ・ストークの方はどうなった? 正体に繋がる何か新しい発見でもあったか?」
「調査に当たらせている【04】(ミン)からはまだ何も……」
「お手上げ?」
「ええ。もう少し時間がかかりそうです」
「そうか。……それにしても、顔写真があるのに、どうして何も引っかからないんだろう?」
 一矢は顎に指を当て首を傾げる。普通に考えれば、ネロ・ストークと呼ばれる男を割り出すのは、そう難しいこととは思えない。
 鮮明とは言いがたいが、きちんとした顔写真が証拠として残っているのだ。データーベースと照合すれば、似たような人物の一人や二人、浮かんでくるのが常だ。だが今回ばかりはそれが通用しなかった。
「腑に落ちないよなぁ」
 一矢は何か釈然としないままに呟く。
「犯罪を犯したことのない、クリーンな人間かも知れませんよ」
「テロ屋が、か?」
[133] 2006/02/24/(Fri) 23:46:05






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