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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 124
内容  メイファーの頬を抓っていた男が、ジロジロと二人を観察する。頭の先から爪先迄余す所なく観察し、男は不意にボブの左脇を指差した。
「なあ、あんたのそれ、安全装置入ってるんだろうな?」
「気になるか?」
「当たり前だ」
 男は不機嫌そうに漏らす。ボブと一矢は互いに肩を竦めて顔を見合わせた。
(気付いたか……)
(そこまで愚かではなかったと言う事ですか)
 互いに視線だけで、二人は意思を伝え合った。
「……だそうですが。どうします、桜花?」
「外せ」
 一矢は短く命じる。指示されて、素直にボブは脇のホルスターから、安全装置を外していたレーザー銃を取り出した。
「あ!」
 側で見ていたメイファーが驚きの声をあげる。どうやらボブに抱き上げられていた癖に、全然気付いていなかったようだ。
「銃を持っていたんですか?」
「任務中ですから」
 ニッコリ笑って、安全装置をかける。そしてメイファーの手の中に落とした。ズシリと重い銃を、メイファーは慌てて受け取る。普段メイファーが使っているものよりも遥かに重く、大きかった。
(うわぁ。凄く重いんだけど、これ)
 目を丸くしてボブを見ると、横合いから一矢の声が降って来る。
「預かっててくれるかな?」
「ハイ」
 反射的に頷き、早まったかなと思ってソロソロと様子を伺うと、無精髭の男も構わないという風に頷いた。
「室内では、そんな物騒な物は遠慮してくれ」
「持ち歩くなと?」
「……ここでは不要だ」
 男は呟き二人に背を向ける。
「ついて来い。メイファ、お前はそこにいろ」 
[152] 2006/04/04/(Tue) 21:42:04

名前 MUTUMI
題名 123
内容 「あ、この二人は……」
 抓られた頬を擦りつつ、メイファーが紹介しようとするのを制して、ボブが一歩前に出た。胸ポケットからカード型の身分証を取り出し、男に提示する。
「星間軍特殊戦略諜報部隊の者だ。ロン・セイファード捜査官にお会いしたい」
「!!」
 告げられたその名称に、男を含めて、その場にいた全員が息をのんだ。マジマジと幾つもの目が二人を凝視する。
「……桜花部隊」
「あれが……」
 ざわめきと共にそんな声があちこちから上がる。先程迄喧噪に包まれていた部屋は、別な意味の喧噪に包まれた。ザワザワとした空気には、どこかチクチクとした棘が刺さっている。星間中央警察と桜花部隊の最初の接触は、少なからず争乱を含んだものとなった。
[151] 2006/04/04/(Tue) 16:26:46

名前 MUTUMI
題名 122
内容 「勝手にって……。おい、そんな事言うけどな! あの状況なら、そう思われても仕方がないんだぞ!」
 捜査官は大声で叫ぶと、ズンズンと近寄って来た。かなり大柄な男だった。体格的にはボブと同じぐらいだろう。規定の制服を着用しているにも関わらず、どこか着崩れている風に感じた。長い髪を背中で束ね、プツプツと顎に無精髭を生やしたまま、男はメイファーの真正面に立つ。
「無事なら、ちゃんと連絡を入れろ!」
「や、だって……」
 昨日のあの状況では無理だったと、弁解めいた言葉を口にしようとして、周囲の注目を浴びている事に気付いた。失敗するのも、怪我をするのも何時もの事なのに、何故か今回は皆が呆然とメイファーを見ている。
(あれ? 私って、そんなに皆を心配させてたの?)
「てっきり俺達は、もう駄目だとばかり……」
 膨らんでいた風船が萎む様に、男は体躯を縮こませる。
「どこを捜しても見つからないし。連絡は、何時まで待っても一向にないし」
 大きな両手をメイファーの肩に置き、男は悪態をつく。
「子供じゃないんだ。少しは気をまわせ」
「え、えと」
「チームで捜査をしている自覚はあるのか?」
(う……)
 言葉に詰まり、男の真摯な姿勢にも戸惑う。
(なんだからしくないんだけど……。何時ものふざけた態度は一体どこへ?)
 眼前の男に戸惑いつつ、メイファーは反省の言葉を口にする。
「ごめんなさい。……次は気をつけるから」
 その途端に、ムニッと頬を抓られた。
「ほ〜。『次は』ってか? 次もあるのか? ああん? あるのか」
 男の片頬が邪悪に歪む。
「メイファ。失敗ばかりしていると、デスクワーク専門になるぞ?」
(ひいいいっ。やっぱり何時もの性格の悪いヒューズだぁぁぁ!)
 ムニムニと頬を抓られつつ、メイファーが硬直する。あうあうと情けない表情になって、助けてくれそうな人を求めて、メイファーの視線が彷徨った。
 いつもなら、メイファーが弄られていれば、相方のテリーが割って入ってくれるのだが、今ここにはいない。そんな訳で、ムニムニと彼女はやられっぱなしだった。
(うううっ。どうして私がこんな目に?)
「ほれほれ、反省しろ。馬鹿女」
 漏れ出る言葉は汚いが、どこか口調は優しい。
「ロンなんてなぁ。心配し過ぎて、昨日は一睡もしてないんだぞ」
「え?」
「テリーは病院に担ぎ込まれるし、お前は行方不明だし。奴からすれば最悪の夜だぞ」
 ムニムニと頬を摘む手は緩めずに、男は諭す。
「俺達はチームだ。それを覚えておけ。お嬢」
 言いたいだけ言うと、男は手を離した。赤くなった頬をメイファーが涙目になって擦る。膨らんだ口元は少しばかり不服そうだ。男はそんなメイファーに背を向けると、傍らに立つ一矢とボブへと視線を転じた。
「それで、あんた達はどちらさん?」
 かける言葉も態度と同じく、どこか不遜だった。
[150] 2006/04/02/(Sun) 19:33:23

名前 MUTUMI
題名 121
内容  汗臭さと潤いの無さでは、どちらも同等だと言いたいらしい。
「僕はうちの方がましだと思うけど。だって【04】(ミン)や【05】(アン)や【06】(シズカ)もいるし……」
 指折り数えて、女性兵士の名前を挙げようとした一矢の声は、突然上がった叫び声に掻き消された。
「ああああああああっ! メイファ!!」
 地図を覗き込んでいた捜査官の一人が、一矢達の方を振り向き、椅子に座ったメイファーに気付いたようだ。メイファーがその叫びに応える様に、右手をヒラヒラと振る。
「はあい」
 何気ない感じで応えたが、相手の捜査官は目を剥かんばかりの対応だった。
「はあい、じゃねえ! お前生きてたのか!?」
 びっくり眼のまま、捜査官は暴言を吐いた。途端にメイファーの眦があがる。
「ちょっと、人を勝手に殺さないでよ」
[149] 2006/03/29/(Wed) 23:26:22

名前 MUTUMI
題名 120
内容 「むう……」
 一矢が口を尖らせる。だがそれ以上は、敢えて何も言わなかった。
 だだっ広いフロアを横切り、三人は目的の部屋へと向かった。



 総合庁舎の会議室は、さながら戦場の様だった。大勢の男達が会議室に集まっており、中央の立体ディスプレイに投影された物を見ながら、ケンケンガクガクと言い合っている。
 立体ディスプレイに投影されているのは、どうやらディアーナ星の地図らしく、あちこちに×印が付いていた。扉を開けて三人が室内に入っても、誰も振り向きもしなかった。モワモワとした熱気と汗臭さが伝わって来る。
「……うわぁ。なんだか久しぶりに、男臭い職場を見たかも」
 鼻をヒクヒクさせつつ、一矢がひとりごちる。
「演習中のうちよりましだと思いますけど」
 メイファーを近くにあった椅子に座らせながら、ボブが苦笑混じりに告げる。
「そうか?」
「ええ」
[148] 2006/03/27/(Mon) 19:37:36

名前 MUTUMI
題名 119
内容  その言葉に、腕の中のメイファーが溜まらずに吹き出した。
「あ。ごめんなさい」
 慌てて口を閉じるが、頬はひくひくと動いている。物凄く受けているようだ。
「…………」
 クルリと踵を返し、一矢は足早に歩き出した。
「桜花」
 ボブが呼び掛けると、不機嫌丸出しの声が返って来る。
「ぼーっとしてないで、さっさと来る! ほら、仕事しに行くぞ」
 御機嫌斜めというよりは、いじけていると言った方がよさそうだ。メイファーを抱きかかえて隣を歩きながら、ボブは一矢の旋毛を見下ろした。
「桜花」
「何だよ」
「知ってます?」
「何をさ?」
「俺が17歳の時の身長」
「知るかよ」
 不機嫌な声が会話を拒否するように返って来る。
「165センチです」
「え?」
「成長期が遅かったんですよ。20歳まで、にょきにょきと伸び続けました。ま、そういう事例もあるって事です」
 現在の一矢の身長は160センチちょっとだ。17の時のボブとそうたいして変わらない。
「……慰めてるのかよ」
「さあ?」
 ボブは曖昧にはぐらかす。
[147] 2006/03/25/(Sat) 17:05:36

名前 MUTUMI
題名 118
内容 「おや、夢という認識がおありなようで」
 慇懃無礼を地でいくような言葉が返される。一矢は更にぶすくれた。可愛い顔を歪ませ、眉間に縦皺を刻んで、ボブを睨む。
「十年後を楽しみにしてろよ。お前よりでっかくなって、ごっつくなって、ぎゃふんて言わせてやるからな!」
 今はもう本当に、全然相手にもならないほど、一矢は小柄で華奢だ。ボブと比べると大人と子供ほどの体格差がある。骨格も筋肉もまだまだ未発達で、細く脆い。どこからどう見ても、頑丈そうなボブとは大違いだ。乱暴に扱うと壊れてしまいそうな雰囲気が、一矢にはあった。
「……10年後が想像出来ないのは、俺だけでしょうか?」
 なんだか遠い目をしてボブがぼやく。
[146] 2006/03/23/(Thu) 23:09:34

名前 MUTUMI
題名 117
内容 「……やりたいんですか?」
 ボソリとボブが突っ込む。
「やれないより、やれる方がいいだろう? 見てろよ、絶対大きくなってやる!」
 決意を新たにする一矢に向かって、呆れた視線が投げかけられる。
「神と呼ばれた男にかけれれた呪いを解かない限り、成長しないような気がするんですが」
「……ぐっ」
 一矢は口籠り、恨めし気な顔を向けた。
「人の些細な夢を一々否定するなよ」
[145] 2006/03/18/(Sat) 23:30:15

名前 MUTUMI
題名 116
内容 「う……」
 言葉に詰まりメイファーは俯く。幾ら脳天気なメイファーでも、流石に迷惑を掛けている自覚はある。自分のせいで、駐車場からほとんど進めていないのだ。
「でも……」
 それでもこの体勢は物凄く恥ずかしいと、メイファーは思う。
(お姫さまだっこなんて、されたことないし、恥ずかしいし、キャラじゃないし……。あうあう……、こんなの困るよ!)
「少しの間だけですから」
 微笑を浮かべ、けれど有無を言わさず問答無用で、ボブは一矢の側に戻った。まるで姫と騎士、どこかの物語りに出てきそうな光景を見て、一矢が心底羨まし気に呟く。
「いいなぁ。僕もやれる程大きくなりたい」
 縦も横も全然足りていない故の、羨望だった。
[144] 2006/03/16/(Thu) 19:24:51

名前 MUTUMI
題名 115
内容  どう考えてもメイファーと一矢では、一矢の方が体格が小さい。抱き上げた途端にぺしゃんと潰れるのは、明らかだ。
「その台詞、男としてちょっと情けなくないですか?」
「五月蝿いな、仕方ないだろう。この身体がちっとも成長しないんだから。そんなことより、ほら! 早く」
 一矢に急かされる様にボブが追われる。軽く肩を竦め、ボブはメイファーへと近寄って行った。ぴょこぴょこと跳ぶメイファーの背後に回り込み、
「失礼」
 声をかけると、背中を支え両足を掬いあげた。
「え?」
 メイファーの両足が空中に浮き、ぷらんと揺れる。細い身体はボブの腕の中に、軽々と納まった。
「出来れば手は俺の首に回して貰えますか? 安定しますから」
「あ、はい」
 その指示に素直に頷き、メイファーがボブの首に手を回す。しっかりと抱きつき、漸くそこで、メイファーは今の状況を自覚した。
「あ、あの!」
 狼狽するメイファーを尻目に、ボブは彼女を抱えてゆっくりと歩き出す。
「あまり動かないで下さい。落としてしまうかも知れません」
 焦るメイファーが可愛くて、ボブが笑いながらそんな冗談を口にする。
「え!?」
「冗談です、軽いから大丈夫ですよ」
「そうですか? ……って、そうじゃなくて!」
 和やかな会話を打ち切って、真っ赤な顔をしてボブを見上げる。
「降ろして下さい。自分で歩けます……」
「その足で?」
[143] 2006/03/15/(Wed) 19:18:54






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