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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 132
内容 「今日は体調も良いしな」
 嘯いて、残ったコードの先端を摘む。
「まあ見てろ。綺麗に潰してやるからよ」
 手に持ったコードを首の後ろにまわし、男はそこに開いた小さな金属の穴に、端子を挿した。音もなくコードが数センチ沈み込む。痛みも苦痛も感じないのであろう、車椅子の男は平気な顔をしていた。ユラユラと手から離れたコードが、前後に振れる。
「俺はなネロ、嬉しいんだぜ。漸くあいつに復讐ができる。これ以上の喜びはない」
 ぞっとする程低い声で、言葉が放たれる。歪んだ顔面の傷を一撫でし、男は口元を歪ませた。
「俺の目と足はあいつが奪って行った。今度はこっちが奪う番だ。なあよ、そう思うだろネロ?」
[162] 2006/04/22/(Sat) 23:54:11

名前 MUTUMI
題名 訂正のお知らせ
内容 131訂正しました。
致命的なミスが…。
[161] 2006/04/22/(Sat) 23:33:47

名前 MUTUMI
題名 132
内容  部屋の中に入った二人は適当な場所に腰掛けて、残りの捜査官達がやって来るのを待つ。
 異例の合同捜査は、こうして始まりを告げた。




 シュル、シュル。
 格納していたコードが音をたてて引き伸ばされる。引き攣った顔面を隠すようにサングラスをかけた車椅子の男が、単調な作業を繰り返していた。
 元は屈強であっただろう体は、どこか病的なほど白い。筋肉の塊であった腕も足も、いまはもう脂肪の塊と化している。でぷりと出た腹肉が、三重の段差を作っていた。過去はともかく、現在はどこからどうみても肥満そのものだ。
 男は手探りで長さを調節すると、コードの一端を膝の上に置いた個人用端末の端子口へと挿した。
「いけそうか?」
 車椅子の男の側に佇んでいた、別の男が尋ねる。
「なんとかな」
 口元を歪めて車椅子の男は応じる。
[160] 2006/04/20/(Thu) 23:48:40

名前 MUTUMI
題名 131
内容 (さてさて、一矢が俺のガードに気付くのが先か、内通者が見つかるのが先か……)
 ボブの口角が少しだけ歪む。
(どっちが先だろうな?)
 埒もない事を飄々と考えつつ、ボブは廊下を進んだ。
 ロン・セイファード捜査官の目的地は、どうやら長い廊下の突き当たりのようだ。扉の開閉スイッチに手を翳しつつ、彼は二人を振り返る。
「盗聴防止機能のついた部屋はここだけだ。重要な話は、なるべくここでして欲しい」
「わかりました」
 素直に頷いて、一矢はそっとロンを見上げた。
「何か?」
 穴の開くほど見つめられて、ロンが些かたじろぐ。
「いえ、別に」
 「シロっぽいな」と、ぼそりと呟いて、一矢は開いた扉から中へと入って行った。苦笑を浮かべたボブもその後に続く。
 どうやら一矢の評価では、ロン・セイファード捜査官はシロ、内通者ではない可能性が高いらしい。別に根拠があるわけではないが、テレパシー能力のある一矢ならではの感受性で、違うと思ったようだ。
 その感覚がどこまで信用できるものなのか、実に微妙だが、捜査官達を率いる人間が内通者ではないことを、ボブは痛切に願った。
[159] 2006/04/19/(Wed) 21:29:56

名前 MUTUMI
題名 130
内容 (それに)
 と、顔をしかめる。
(かまをかけても、出て来たものは大したものじゃなかったしな)
 星間中央警察の動向を探らせていたジン・ラッシェンバーからは、一見した所すぐにわかるような行動は何も無かったと、報告を受けている。
 確認出来た事といえば、慌てふためく警察の姿と、巧妙な内通者のおぼろな影。
(獅子身中の虫は手強そうだ)
 一矢の後を忠実に付いて歩きながら、ボブはそんな風に思った。先を行く一矢の直ぐ後を、付かず離れず絶妙な距離を保ち廊下を進む。
 例えここが星間連合の庁舎であっても、周囲に居るのが警察の捜査官だとしても、決して安全ではない事をボブは知っている。どこにギルガッソーの手が忍び込んでいるか、わからないからだ。
 故に、随分昔に委員会に言われていた事が、チラチラと頭の隅を翳めて、ボブの何かを刺激していた。
(委員会の命令にのるのもしゃくだが……。今一つ面白くないのだが……)
 ほとんど本能的に、身体が勝手に要人警護の所定の位置を取る。
(職業病か、俺は)
 自分で自分に呆れるが、前を行く一矢の姿を見て、気持ちを引き締めた。
(……亡くせないと思っているのは、最早俺も同じか)
 案外委員会を笑えないなと思いつつ、ボブは周囲を警戒しながら歩いた。
 もしも一矢が背後を振り返っていれば、それを知ったかも知れない。「必要ない」と拒否したガードをボブが密かに続けている事を。だが生憎一矢は振り返らず、ボブはそれを一矢に気取らせる程野暮でもなかった。

[158] 2006/04/17/(Mon) 21:22:47

名前 MUTUMI
題名 129
内容 「たまたま通りかかったんですよ。メディックカーを待つよりも、こちらで処置したほうが早そうだったので、軍病院に運び込みました」
「そうだったのか」
 メイファーの行方を気にしていたのだろう、一矢の言葉を受けてロンは安堵の息を吐き出した。
「手間をかけたようだな」
「いえ、それほどでも」
 曖昧に一矢は言葉を濁す。幸いにもロンは、昨日の通信の相手が一矢だとは気づいていないようだ。パニックを起こしていた声と、今の落ち着いた声とでは、受ける印象がそれほど違うのだろう。
 一矢の後ろを歩きながら、ボブは内心ハラハラとしていた。実に際どい会話だと思う。
(一矢、それ以上は黙っていたほうが良いぞ。絶対墓穴を掘る)
 昨日の星間中央警察に対するかまかけが発覚すれば、桜花部隊に対する敵意は、いやがうえにも強くなる。ただでさえやり難そうなのに、これ以上ゴタゴタするのは御免だった。
[157] 2006/04/11/(Tue) 23:58:48

名前 MUTUMI
題名 128
内容 「あ、はあ」
 どもりつつもロンが頷く。
「では早速ですが、情報の突き合わせと、現状の分析に入りましょう。時間もないことですし」
 ボブはロン達を促す。現状認識に戸惑っていたロン達も、その言葉にハッとした。
「そうだな。時間は有効に使わないと」
「ではこちらに」
 ロンは廊下の奥の会議室へと、二人を手招いた。先を歩きながら、呼びに来た捜査官に指示を出す。
「ハミルトンとカイ、それに裕斗とシェリーも呼んでくれ。ああ、それからお前も入れよ」
「わかった」
 案内役の捜査官は頷き、三人から離れて行った。名前の上がった捜査官達を呼びに行ったのだろう。先を行くロンが申し訳なさそうに二人に告げる。
「バタバタしていて申し訳ない。色々とあってな」
「多少はこちらでも把握しています」
「そうなのか?」
「ええ、メイファー・リン捜査官を昨日保護しましたから」
「!」
 ロンが驚きに目を丸くした。
「どういう事だ?」
「どうと言われても……」
 一矢は言葉を濁して、肩を竦める。
[156] 2006/04/09/(Sun) 17:13:13

名前 MUTUMI
題名 127
内容  戸惑うロン達を察して、一矢が更に言葉を重ねる。
「冗談抜きで、僕が指揮官です。担いでいる訳でも、騙している訳でもありません。正真正銘の本物です」
 言い切って、まだ呆然とするロンの手を問答無用で握った。
「よろしくお願いします」
「……はあ」
 曖昧な惚けた声が、かすれた喉から絞り出される。なかなか硬直の解けない二人を無視し、次に一矢は、自分の背後に立つボブを指差した。
「こっちは副官の【02】です」
「どうも」
 軽く敬礼し、一矢の短い紹介を補足する。
「本名は勘弁願います。自分のことは、【02】と呼んでもらえれば結構ですので」
[155] 2006/04/06/(Thu) 18:19:54

名前 MUTUMI
題名 126
内容 「……っ!」
 眼鏡の男がその場で息をのんだ。
 まさか昨日の今日で来るとは、流石の男も思わなかったのだろう。まあそれは仕方ない。普通は応援要請をしても、最短でも二、三日はかかる。桜花部隊の到着が異常に早過ぎるのだ。
「随分と早いんだな」
 故に、落ち着いた後に出て来た男の第一声は、これだった。
「元々この星にいましたから」
 爽やかな笑みさえ浮かべて、一矢が片手を差し出す。
「初めまして、ロン・セイファード捜査官。僕は【桜花】。特殊戦略諜報部隊の指揮官をしています」
「え!?」
「な……?」
 眼鏡の男ことロンと、二人をここ迄案内して来た捜査官が共にポカンと口を開けた。
「君が……」
「指揮官?」
 魂の抜けたような呟きが、二人から同時に発せられる。互いに今聞いた事が信じられないという表情をしていた。
「冗談だよな?」
 ロンがパチパチと瞬きを繰り返す。
 あの悪名高き部隊の指揮官が、目の前のこの綺麗な少年だとは、到底思えなかったからだ。何しろ眼前にいるのは、可愛くて華奢で綺麗で、儚気な外見を持った幼い少年だ。血なまぐさいイメージの対極に位置するといっても、過言ではない。
[154] 2006/04/05/(Wed) 23:02:05

名前 MUTUMI
題名 125
内容  そう言いおくと、奥にある扉へと向かった。一矢とボブは大人しくその後を追う。その間、値踏むような視線が、あちこちから二人に注がれた。



「ロン、起きているか?」
 軽いノックの後、男が扉を開ける。薄明かりの中、雑魚寝状態の人影が幾つか見えた。恐らく夜勤明けの捜査官達が、仮眠をとっているのだろう。
「……ん、ああ。何とかな」
 額をグリグリとマッサージしながら、ワイシャツ姿の男が姿を見せる。目の下にはくっきりと隈が出来ていた。かなり疲労が蓄積しているようだ。
「客だ。というか、例のあれだ」
「?」
 「あれ」呼ばわりに小首を傾げつつ、机の上に置いてあったヨレヨレの上着を脇に抱え、男は薄暗い部屋を出て来る。室内灯に何度か目をしばだたせ、胸ポケットに仕舞ってあった眼鏡を男はかけた。
 眠そうな細い目が、二人を見つめる。
「こちらは?」
「星間軍特殊戦略諜報部隊だそうだ」

[153] 2006/04/05/(Wed) 18:54:32






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