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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 151
内容 (問題が山積みだ)
 果たして式典までに終わらせることが出来るのか。ギルガッソーが何を仕掛けてくるのか、はっきりとしていない現状では、勝率は五割を切っているとみてよい。
(やはり情報が命か……。どう動くにしても、それがないと何も出来ない)
 先のことを考え塞ぎ込むボブの横で、一矢が捜査官達を前ににっこりと微笑んだ。邪気のないどこからどうみても微笑ましい、例えるならば天使の笑顔だ。
「そういう訳で、暫くよろしくお願いします」
 にっこり、ほこほこ。笑顔満開のよそ行き100%の姿だ。これだけを見ると、一矢はとても可愛くて華奢で、綺麗な何の穢れも知らない子供に見える。実際はまったく逆なのだが、捜査官達がそんなことまで知っているはずもない。
 だからあっさりと、その姿に騙されてしまった。一矢が見た目のままの子供で、扱いやすい存在なのだと。注意すべきは横にいる厳しい柄のボブの方であると……。
 ある意味これも誘導だ。ボブ一人に注意を向けさせ、一矢から注意をそらすための。そうやって内通者の油断を誘うつもりなのだ。

[182] 2006/06/20/(Tue) 00:14:03

名前 MUTUMI
題名 150
内容  それが分かっているだけに、溜め息しか出なかった。
(リックを巻き込むべきだったか……)
 本部詰めを言い渡してきた【03】を連れて来るべきだったと、ボブは少し後悔した。連れて来てさえいれば、ボブの負担を少しは肩代わりさせることが出来ただろう。
(はあ……)
 先を思うと、妙に頭が痛くなってくる。
 星間中央警察のフォローもしなければならないし、それとなくこちらの言い分も反映させなければならない。内通者の件もあるし、やり難いことこのうえもない。
[181] 2006/06/19/(Mon) 00:27:05

名前 MUTUMI
題名 149
内容  一矢の言葉に、捜査官達は皆押し黙った。おや?というような顔をしている。自分達を非難しているのではないと、ようやく悟ったらしい。
「僕らの敵は恐らくギルガッソーです。変幻自在にテロを起こす彼らをくい止める為には、僕らとあなた達がきちんと連携を組む必要がある。あなた達の中には、僕らを歓迎しない者も多いでしょう。僕らに関して、あまり良い噂がないことも承知しています」
 一矢の言葉に触発され、捜査官達の胸中に幾つもの単語が浮かんだ。闇の部隊、死の招き手、廃虚のハイエナ……。呼ばれ方は様々だが、どれもこれも酷い単語ばかりだ。だから全員で揃って、無意識の内に酷く顔を歪めてしまっていた。
 そして改めて理解する。目の前にいるのが、その噂の部隊の者である事を。そして一矢が、すぐそこに座っている少年が指揮官をしている事を。
 鈍い頭で全員がほぼ同じ思考をし、ほぼ同じ考えに行き着き、やがてハッと気付いた。どうしてその年で、特殊部隊の指揮官が出来るのかと。一矢はどう見ても未成年で、なおかつ16歳を下回っているとしか思えない。
 通常は年齢規制条項に引っかかり、部隊の指揮をとるどころか、軍にも入れないはずだ。18歳以上でないと星間軍には入れない。
(どういうことだ?)
 捜査官達が互いに顔を見合わせる。そんな動きを知ってか知らずか、一矢は最後の言葉を放った。ある意味大型爆弾な発言を。
「そういう訳で、僕らはレミング女史との約束もあり、独断で突出して何かをするつもりはありません。僕らは、セイファード捜査官の指揮下に入ります」
「え?」
 ロンが驚いて一矢を見つめる。一矢はロンと目を合わせると、静かに一つ頷いた。
「基本的にはそうなると思って下さい。勿論、桜花部隊の指揮権は僕にあります。でも、合同捜査に関してはあなたがトップです」
「よろしいのか?」
 意外な言葉に戸惑いつつ、ロンが確認する。
「はい。軍が機構の上に立つのは、好ましくありませんから」
 過分に政治家的な判断の結果、一矢はそう告げた。ボブはそれを聞きながら、内心で苦虫を噛み潰す。
 一矢の判断が間違っているとは思わないが、実務的な角度から言わせてもらえば、愚かとしか言い様がない。経験の少ない星間中央警察に、総合的な指揮権を譲り渡したのだ。この弊害は幾らでも思い浮かぶ。
(冗談ではなく本気でしたか……)
 事前に聞いていたとはいえ改めてそう言われると、なんだかがっくり来てしまう。どう考えても、どう転んでも、このしわ寄せはボブに押し寄せて来るだろう。
[180] 2006/06/15/(Thu) 22:34:24

名前 MUTUMI
題名 148 再開でっす
内容  捜査会議はとても静かに始まった。ロの字型の机上につき、互いに簡単な紹介から始める。進行は一矢もボブもやりたがらなかったので、ロンが務めることになった。
「はじめまして、桜花です」
 椅子に座ったまま自らそう名乗り、一矢は威圧するかのように捜査官達を見る。
「お気付きと思いますが、特殊戦略諜報部隊の指揮をとっています。裏方である僕らがこのような席につくことは、本来はありません。警察との連携を含めて、これは異常なことです」
 一矢の言い様に、ピクリとロンを含む全員がいささか眉を寄せた。どうやら、非難されていると思ったらしい。一見したところ、そうとれなくもない発言だ。
 一矢の横で無言を通しながら、ボブは少し心配そうに一矢を見遣った。一矢はそんな雰囲気を気にもせず、淡々と話し続ける。
「僕らとあなた方は水と油です。お互いに混じりあう事は永遠にない。けれどそれをわかっていても、協力し合わなければならない時があります。今回がまさにそれです。僕はテロを防ぎたい。そしてあたた達も同じはずだ」
 一矢は一度言葉を切る。その目には静かで厳しい理性的な光が宿っていた。
「全面的に僕らを受け入れろとは言いません。そんな事は無理でしょう。でも、僕らを信用して下さい。少なくともこの捜査に関しては」
 
[179] 2006/06/14/(Wed) 21:09:38

名前 MUTUMI
題名 お知らせ
内容 あと数日、お休みします。
構想練り練り中。
昔書いたのとはかなり違ってくるかも‥。

[178] 2006/05/25/(Thu) 17:54:44

名前 MUTUMI
題名
内容  同刻、惑星エネ星間連合総代官邸。

 執務室はクリームホワイトの落ち着いたインテリアで統一され、ゆったりとくつろげる空間になっていた。右手はテラスで、咲き乱れる小さな花々がひっそりと育てられている。
 明るい室内の中央には、木製の一枚造りの使い古した感のある、巨大な長テーブルがあった。テーブルに付属するアンティークな椅子は、計10脚。その内の2脚が今使用されていた。
 外の喧噪とは無関係、音といえば微かに稼動している電子端末の発するものだけの世界で、二人の人物は向き合って座っていた。
 一人は30代後半のブロンドの髪の女性、もう一人は40代前半の灰色の髪の男性だった。二人は重苦しい雰囲気で、真剣な表情をして分厚い報告書に目を通している。報告書の表題には、『惑星ハルクに関する分析と対応』と書かれていた。
 無言の二人は、熱心に食い入るようにそれを読み続ける。電子書類をスクロールさせる衣擦れの音だけが部屋に響き、時間はあっという間に過ぎていった。
 数十分後、ようやく分厚い報告書を一読した女性は、電子書類を無造作に机の上に放り出し、ごりごりと目を擦った。
「だいぶお疲れのようですね」
 その行動の意味する所に気付いた男性が、女性にそう声をかける。女性は苦笑を浮かべて、男性に答えた。
「ここの所、何やら忙しくってね」
「わかりますよ。寝る暇もないのでしょう?」
 男性は「無理は禁物ですよ」と女性に告げ、側に置いてあった携帯端末を取ると別室にいる秘書官を呼び出した。コール3回で出た秘書官に、男性はコーヒーを二つ頼む。
「少し休憩しましょう」
「そうね。かなり頭の回転が鈍くなってきているみたいだし、少し休みましょうか。ところで、ディアーナの生誕式典には、参加をするおつもりかしら?」
 星間連合上院に席を置くファレル・アシャー議員は、女性にそう尋ねられ心持ち首を傾げた。
「式典ですか? 勿論行きたいとは思っていますが。何か気にかかる事でもあるんですか、総代?」
 ブロンドの髪の女性、星間連合総代表という肩書きを持つイクサー・ランダムは、くすっと笑って唇に指を当て呟く。
「内緒よ。今回の式典がどうやらテロの標的になっているみたいなの。一矢が連絡してきたわ」
「本当に?」
 ファレルは初めて聞く話に、驚いて目を丸くする。
「ええ、そうみたいよ。桜花部隊が動いているわ」
 イクサー・ランダムはファレルにそう告げ、シニカルな笑みを唇の端に浮かべた。
「今度の式典ではもしかしたら、命を落とす者が出るかもしれないわね。出席を止めるのなら今のうちよ」
 ファレルはそんなイクサーの発言に怯えるでもなく、悠然とした笑みを浮かべる。それはかつて死線を越えたことがある、ファレルだからこそ出来る包容的な笑みだった。
「総代、何故私が逃げなければならないんです? それに一矢がいて何かが起こるとは、到底考えられませんが」
 一矢を信用しきったファレルの解答に、イクサーはかなりの脱力を覚え、目の前の有能だが、どこかずれている男をまじまじと見つめた。
「あなたって、……本当にあの子を信じているのね」
 言葉には出さずイクサーは続ける。
(甘いけれど、人を見る目は確かなこと)
 一矢が仕事をしくじる事なんて、まずありえない。それは経験上イクサーも良く知っている。けれど……。
(テロを計画していると思われるのは、ギルガッソーだわ。一矢は本当に大丈夫なのかしら?)
 何となく心がざわついた。
(……でもこれは一矢の領分の話。こちらは、信じて任せるしかないのでしょうね)
 官邸の主はそう思い、秘書官が運んで来た湯気の立つコーヒーを、優雅に口元に運ぶのであった。
[177] 2006/05/20/(Sat) 22:02:47

名前 MUTUMI
題名 146
内容  だからこそルキアノ・フェロッサーは、ディアーナを舞台に選んだ……。
(さあて、これからが本番だ)
 惑星ディアーナの軍事防衛システムの目前に立ち、エリクソンはイメージ上で腕を捲る。
(来るべきその時の為に、少し細工をさせてもらおうか)
 ニタリと、現実の世界のエリクソンが唇を歪める。
 脳の中に浮かぶシステムを取り囲んだ円状の壁に、エリクソンは意識の手を伸ばした。ゆらりと壁がゼリーの様にたわわむ。イメージ上の指先がずぶりと壁にめり込んで行った。
 一度目のエリクソンの攻撃は、ついに最終局面を迎えようとしていた。Dネットの管理を行うサイバー管理センターも、ディアーナ軍の防衛システムコントロールセンターも、エリクソンの動きには気付いていなかった。
 恐らくサイバー管理センターは、エリクソンが先程から破壊していたデータベースの復旧で忙しいのだろう。そして防衛システムコントロールセンターは、異常が起こっている事も知らない。いや、気づけない。なぜなら先程とは違い、ここでは静かに慎重にエリクソンが侵入しているからだ。
 指が壁を突き抜けると、エリクソンは黒い種を取り出し、躊躇いもなく軍事防衛システムの中へと埋め込んだ。黒い種は、静かに落ちて行く。ゆっくりとゆっくりと、だが確実に。
(このウイルスが目覚める時に、全てが終わる)
 種が完全に視界から消えると、エリクソンは満足げに頷いた。それで良いと、何度も何度も確認するかの様に。そしてエリクソンは、静かにその場を後にした。意識が現実の世界へと立ち返って行く。
[176] 2006/05/20/(Sat) 21:04:45

名前 MUTUMI
題名 145
内容  Dネットは世にも稀な、多重構造の一元型システムなのだ。
 このネットワーク方式は、独立型に比べて管理がたやすく、人件費なのど費用も抑えられるという、実に魅力的な特性を持っている。財政難で予算に悩む惑星にとっては、素晴らしいものとして映る。
 しかしその反面、致命的な弱点も合わせ持っていた。セキュリティーが弱過ぎるのだ。
 司法・行政・軍・民間の各階層ごとに、ある程度の防壁は組み込まれていたが、とりあえず関係者以外から見え難くした、その程度の物でしかない。
 一元型は一度入り込んでしまえば、幾らでもバックドアを構築出来る。民間の監視の緩いデータベースを経由し、パスワードを割り出して、司法のデータベースにアクセスする事も出来るのだ。
 開かれているが故に脆い、それが一元型だった。
[175] 2006/05/20/(Sat) 20:13:45

名前 MUTUMI
題名 144
内容  本来そういった物は、独立型のネットワークで管理されることが多い。司法、行政、軍。この三つは各自が各自のネットワークを持っており、それに互換性はない。ハッカー及びクラッカー対策の意味も入っており、星間の多くの惑星では、独立型のネットワークが大勢を占めた。
 だが何事にも、例外は存在する。ディアーナは独立型ではなく、一元型を採用していたのだ。司法、行政、軍、そして民間が同じラインで繋がっている。
[174] 2006/05/17/(Wed) 22:39:48

名前 MUTUMI
題名 143
内容  まあエリクソンの場合、視覚が失われてしまっているのでそんな事はどうでもいいのだが……。
 エリクソンが頭の中で展開する電子空間は、どちらかというと論理的な方に近かった。データベースは円柱、システムはその円柱を囲む様に配置された円。円は幾重にも重なり、頑丈な輪となっている。
 時々その円柱が光り、輪が大きく、或いは小さく動く。動いているのは稼動している証拠だ。
(何度見ても、不思議な光景だ)
 電子の空間、個人のイメージで展開される空間を、エリクソンは歩き回る。歩くとは言っても実際に動いているわけではない。そんな風にイメージをし、システム間を移動しているのだ。
(おっと、発見)
 階層化されているDネットの中でもっとも厳重な区域で、エリクソンはそれを発見した。惑星ディアーナの軍事防衛システムを……。
[173] 2006/05/17/(Wed) 22:25:33






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